元ネタは比叡の時報ボイスと二周年記念ボイス、完全にオリ提督の鎮守府での出来事なんでそこら辺ご注意を。
皆さんは、艦これに、どんな思い出がありますか?
「……くぅ…………んん……」
ふと、目が覚めた。といっても、まだ意識がうっすらとしたままだ。ぐわん、と頭が揺れる。まだ寝たりないのだろう。私の体がまだ布団を求めているのがよくわかる。
ぐりぐりと米神を弄り、無理やり意識を覚醒させる。視界に映ったのは、暗くてわかりにくかったが司令の書斎机だった。天井の電灯も、書斎机の電気スタンドも、明かりは皆消えている。部屋を照らしているものは、幾つかの窓から差し込む灯や月の光ぐらいしかなかった。
……あれ、まだ夜かあ。ううん。
体を起こし、くいっと肩を捻る。軽くほぐした後、目覚まし時計を見てみると、何と、まだ二時半ぐらいだった。私が寝たのは零時頃だったはずだから、二時間しか寝てないじゃあないか。ひええ……とあまりに早く起きすぎた事に驚いていると、ある事に気がついた。
あれ……司令がいない?
確か、私が寝る前は書斎机の椅子に座っていたはずだ。少し作業を行ったら寝る、とかも言っていた。近くに布団を敷いたのかなぁ、と周りを見回してみるけど、それっぽいものは見えない。あれえ?
何処いったんだろうなあ……と思っていると、視界の端に誰かがいることに気がついた。というか、司令だ。窓を開けて、腕を組みながら体を前に倒している。何をしてるんだろう?
「……司令?」
私が声をかけると、司令はゆっくりと首を曲げて顔をこちらに向けてきた。
「ん、起きたのか比叡。……いや、起こしてしまったかな」
「いえ、なんだか突然目が覚めてしまって……何をしてるんですか?」
「いやな。作業も終わったし寝ようと思ったんだが、何となく、な」
軽く笑うと、また司令は窓の向こうへと視線を戻した。何を見ているんだろう? 気になった私は司令の下へと歩き、肩越しから景色を見てみることにした。司令の肩に顎が乗っかるような形になったが、司令が気にしているような様子はないから良しとしよう。
「………………」
視界に映った景色は、真っ暗な泊地で作業員の皆さんがクレーン等を使って作業をしている、いつも通りの光景だった。特別綺麗というわけでも、目を引くというわけでもない、ただの日常だ。
だけどそれらを見ていると、何だか気分が落ち着いてくる。何も変わらない。何も可笑しな事はない。だからなのかな、凄くホッとする。この鎮守府にいるんだって言う気持ちになれる。
「本当、色々思い出すよ…………」
ぼうっと眺めていると、司令が昔を懐かしむように呟いた。……うん。
「そうですねぇ。初めてここにきた時の事とか、改二改装を受けた時の事とか、色々」
とても懐かしい。憶えれば、限りなく脳裏に浮かび上がってくる。幾つもの思い出が、幾らでも。
「お前は、此処に一番最初に着任した戦艦だったよな。……あん時は、まだ提督業務になれてなかったのもあったからかね、酷く緊張したもんだよ。とうとう、俺の鎮守府にも戦艦が着任するのかってな」
目を細め、クッと低く笑った司令。確かに今考えてみれば、着任して最初のころは、私的公的に関わらず、会話の時の言葉がかたかったと思う。無理して威厳を出そうとしていたような、そんな印象だった。
「此処には建造されたばかりだったからな。まず練度を高めておこうと二艦程随伴をつけて、近海に出せばほぼ一人で深海棲艦を殲滅。旗艦として出てもらえば、戦艦が居るという安心感や比叡自身の雰囲気も相まってか、見事なリーダーシップを発揮。そして補給させれば、重巡の倍以上の資材消費……本当、何度も驚かされた」
「いや最後、『驚く』の意味違いますよね?」
「驚いたのには変わらんから良いんだ。本当に吃驚したよ。今でも戦艦を運用する時は備蓄がそれなりにないと不味いからな……」
ふう、と溜め息をついて目を細める司令。昔を懐かしんでいるのだろうか、それとも今に対して何かを思っているのか。まあ、多分私のことだろう。それも資源絡みで。
「……むぅ」
いや、確かにあまり燃費は良くないとは思うけど、それに見合った活躍はしてるはずだし。…………何だか、私だけが資源を消費してると思われてるみたいで、あんまり良い気持ちはしない。何かしら司令に対して言えることはないか、と軽く思考を巡らせる。……ああ、一つあった。
「そうだ。驚いたといえば、あの時の事を思い出しますね」
「ん? あの時って……」
「私が始めて大破した時、ですよ」
司令の顔がゲッとしたような顔になった。あからさまに歪んでいる。実際、彼にとっては良い思い出ではない。今ではたまに笑い話にされる程度のものではあるが。
確か、沖ノ島海域の作戦の時だった。私が旗艦で出撃し、主要艦隊と交戦したのだ。相手が撤退を開始するまでに追い詰め、とことんまで殲滅せんと追撃、夜戦に突入。敵残存艦は中破した戦艦タ級二体。此方は中破艦が一名。残りの艦の被害は微々たるもの、問題なく終わると思っていた。
ところがそううまくはいかないもので、私が片方に主砲を打ち込み、もう一撃叩き込もうとしたところに、もう一方のタ級に主砲をぶち込まれ、私の砲撃に怯んでいたタ級は体勢を立て直し、反撃。艤装につけられた巨大な砲を私に向けて発射。結果、至近弾直撃により大破したというわけだ。
「あの時は本当取り乱していましたよねえ、私が大破したことが信じられないのか、無線上で何度も聞きなおしてきましたし。私達が帰還すると母港まで走ってきて、対面したら、驚いているのか恥ずかしいのか、顔を青くしたり赤くしたり……」
「やめろ、あの頃の事を思い出させるな」
「そしてそれ以降は大破させるのが怖くなったのか、小破でも場合によってはすぐに撤退命令を出すようになりましたし。それで引き癖がついたのかいざという時に踏ん切りがつかなくなってしまいましたし。その事を皆に指摘されたりしてましたねえ、勿論、私にも」
「だからやめろって! おい、聴いてるのか!」
さっきまでのクールな姿は何処へやら、うがーっと声を上げる司令官。この司令、あまり煽り耐性がないのだ。そんなわけで少し弄るとすぐにヘタれたりこんな風になったりする。司令の方から弄ってくることが多いせいか、鎮守府の民にもあまり知られていない情報だ。怒った司令が何だか可笑しくて、クスクスと笑ってしまう。やっぱり、こういう所は意外と可愛いんだよなあ。
「ふふっ、良いじゃないですか。今ではこんな風に笑い話にできるんですから」
「俺は笑えないんだよ! まったく、口がうまくなったもんだ、昔はからかっても反撃なんぞできやしなかったのに……」
うまくなったのも司令のせいですけどね。ちょくちょくからかわれるのが悔しくなったから、がんばって言い返せるように色々司令の事を参考にしたのだ。上司の方々との対話をこっそりメモに書き込んで、その時の会話の内容を自分なりに解釈してみたり、司令が何時もどの様にしてからかっているのか分析してみたり。そのかいあってか、少しは司令に対して言い返せるようになった。……まぁ、その代償として、皆から「ちょっと胡散臭くなった気がする」とか言われるようになってしまったんだけど。
しかし、こう、色々考えていると、司令とも本当に長い付き合いなんだなあ、としみじみ思う。まだ司令が佐官の時からいた身としては、大将の地位まで上りつめて見せた司令の姿を見ると、非常に感慨深いものを感じる。「司令」
そう思うと、一つの気持ちが湧いた。思えば、この気持ちはあんまり伝えていなかったと思う。言い出す機会がなかったってのもあるんだろうけど。
「いつも、ありがとうございます」
「……ん、どうした、いきなり」
怪訝そうな表情で司令が私を見つめてきた。まあ、さっきまで全くこんなこと言い出す空気じゃなかったし、仕方ないんだけど。ちゃんと話せるように、窓から離れて司令の背後に立つ。司令は景色を見るのをやめて、窓を背にするように此方に体を向けた、有難い。
「ほら、こういうった機会ってあまりなかったじゃないですか。私が秘書艦の時は一緒に事務仕事はしてますけど、此処までのんびりと話すことは多くないですし。何と言うか、そんな雰囲気に中々なりませんから」
言い出してから、何だか恥ずかしくなって頬をかく。ストレートに話すことは、やっぱり緊張するし、勇気があるなあ。でも、ここで退いちゃあだめ。ちゃんと、この気持ちは伝えておこう。
「だから、いえるときにしっかりと伝えておかないと、って思ったんです。……幾つも至らないところだらけで、たくさん迷惑をかけてしまいました。その事で何度も怒られたり、呆れられたりもしましたが、司令は決して私の事を見捨てず、真剣に考え、見ていてくれました。おかげで、辛く、厳しい戦いが幾つもありましたが、乗り越え、今日を迎えることができました。……本当に、ありがとうございます」
感謝の意、敬愛の意、その他もろもろの気持ちをこめて、深く、司令にお辞儀をした。話しているうちに何でか、ちょっとだけ涙も出てきてしまったので、それを隠すためでもあるけれど。
頭を下げて、たった少ししか経ってないけれど、もともと静かだったこの部屋が、さらにしんとなった気がする。司令は、私の言葉を聞いて何を思ったんだろう?
肩で涙を拭い、代わりに笑顔を顔に浮かべ、頭を上げて司令を見てみた。
「…………あー、うん、……あー」
そこには、目を見開いて此方を見つめ、顔を真っ赤にした司令の顔があった。パクパクと口を動かしているけど、酷く動揺しているらしく、ちゃんと言葉になっていなかった。照れてるのかな。
すう、はあ、と大きな深呼吸が一つ聞こえた。やっと落ち着いたらしい。よし、と言って、まだ顔をほんのりと赤くしたまま、司令は口を開いた。
「俺もお前ら……、んん、比叡にはたくさん迷惑をかけた。そもそも、俺がここまでこれたのは俺の力だけじゃない。比叡が精一杯努力をして、深海棲艦を打ち倒し、まだまだ拙かった俺のことを、支え、サポートし続けてくれたおかげだ」
真剣な眼差しで此方を見つめながら、ゆっくりと話す司令。一区切りをつけたところで、また一つ息を吐き、うん、と強く頷き、口を動かした。
「……俺も、比叡には感謝している。ありがとう。できれば、これからも一緒に戦ってくれ」
小さいけれど、はっきりと、その言葉は確かに聞こえ、私の心に強く響いた。ああ、さっき司令が感じた気持ちって、こういうものだったのか。これなら、あそこまで動揺するのもわかる気がする。ドキドキして顔が熱い、少し、冷静になろう。……うん、よし、大丈夫。次は、司令にお返事だ。勿論、私の気持ちが伝わるように。
「はい、よろしくお願いします、司令!」
いつもの様に元気いっぱいに、そして何より思いをこめて、力強く!
「まだまだ未熟ではありますが、比叡、これからも、気合、いれてっ、いきます! はぁむぅっ」
「馬鹿、流石に喧し過ぎる、今は深夜だ」
〆の言葉を言おうとした所で、司令に口を塞がれた。直ぐに手は離されたけれど、最後まで言い切れなくて消化不良である、むーっと司令に無言で抗議してみるけど、そんな事知らんと何処吹く風だ。
「せっかくいいムードだったのに……いいじゃないですか、もう」
「言うのはいいが、時間と場所をわきまえろ。俺の部屋が騒がしかったら怪しんだり、駆け込んできかねない奴もいるだろう。…………そういや、今は何時だ?」
露骨に話をそらそうとしてくる司令、まあ、長引かせるつもりでもないし、いいんだけれど。近くの時計を手に取って見てみる。うーん、三時かなぁ? 三十分くらい話し続けていたのか、数分程度しか経ってないと思ってた。
「三時です、……何だか、目が冴えちゃいましたね、たくさん話したからでしょうか」
「そうか、まあ、そうかもな」
目を細めて薄く笑いながら、曖昧な返事を返してきた。適当に返しているのか、何かしらの意を込めているのか、まあ前者だろうけど。
さて、改めて時間を意識してみると、早く寝なきゃいけないという使命感が生まれてくる。というか、そろそろ寝ないとキツそうだ。明日も秘書艦だし、気合を入れられるようにしておかないと!
「それでは比叡、またお休みしますね。……ぞうだ、司令も一緒に寝ましょうよ。もう、執務のほうは終わっていますよね? なら、明日に備え、確りと睡眠をとりましょう!」
思えば、司令と一緒に寝ることはあまりない……というか、一切なかったと思う。いつもは司令が執務を終わらせてから寝たりして、時間が合わなかったりするし。同じ時間に寝るときも、それぞれ布団を敷いてから――なぜかそこそこ距離を離して――寝るからなあ。
なら、せっかくだし一緒に寝て、親睦を深めておこう。そう思って提案したら、「んなっ!?」と声を上げて、司令が思い切り体を後ろに反らした。え、なんで? っていうか声大きくないかな。
「いや、いいよ。まだあまり眠たくないんだ。あと少しだけここを見てから、布団を敷いてぐっすり寝るさ」
「いやいや、そうしてると寝れなくなっちゃいますよ? ほら、早くお休みしましょう。数時間程度ですが、十分休憩にはなりますよ」
「おまっ、マジでそういう意味かよ! ……いいから、先に寝てろ。何といおうが、俺は後数分景色を楽しんでから寝る」
布団を開いてアピールしてみるが、どうやら逆効果だったみたいだ。早口で一気に言いたいことを言うと、司令は窓のほうに体を戻してしまった。
私は金剛姉さまや霧島、榛名、偶に駆逐艦の子と寝たりするんだけど、それとは違うのかなあ? 司令は男性だし、何かしら思うところでもあるんだろう、多分。
多分、もう何を言っても聞かないだろうなあ、諦めよう。仕方なく、私は布団を被り、枕に身を任せることにした。ふんわりとした感覚が体を包みこむ。気持ち良いなあ、ぐっすり眠れそう。
「それでは、お休みなさい」
お休み、という司令の言葉を聴いて、私は目を閉じた。真っ暗闇、何も見えないこの空間は、夢で彩られていくのだろう。今日はどんな夢を見るのかな、前の夢の続きか、新しい夢か、期待に胸を膨らませながら、私の意識は闇に溶けていった――――
――――――――溶けていった。うん、溶けない。むしろはっきりとしすぎてる。まだまだ私の意識はパワフルだ。視界も真っ暗なまま、全然眠くない。
「寝れない……」
ガバッと体を起こし、時計を見てみる。時間は四時。…………えっ? いや、えっ? つまり、一時間弱は布団の中に篭っていたわけだ、ええ?
この意味がわからない現実から逃げようと、布団の中にまた入ってみる。もちろん、目はぎゅうぎゅうに瞑って。
無駄だった。脳が覚醒して全く寝むれない。その癖体は休憩を求めていて、凄くつらい。
「何故か寝れない……!」
「お前もか、比叡」
悶々としていると、司令が話しかけてきた。顔には苦笑が浮かんでいて、なんというか、ああ、やっぱり、って顔してる。って、
「司令、まさか、三時からずっと起きてたんですか!?」
「ああ、全然眠くならん、寧ろ目が冴えてくる、……なんでだろうなあ」
あはは、と乾いた笑いをこぼす司令。多分眠れないのは、クレーンの作業風景とか見ていたせいだろう、何でそれを見ていると眠くならないのかわからないが……って、まさか。
「私が寝れないのも、寧ろ目が冴えてくるのも全部これのせい!? どう責任とってくれるんですかぁー!」
「ちょっ、落ち着け比叡、煩い! というか何で俺のせいなんだ、意味がわからんぞ!」
そりゃあ、あんな事につき合わされたから私は寝れなくなったわけで、いや、あんな事じゃない! あれはいつか話すべきことで、大切なことだったんだ。ああ、でもでも、ああもう、こんなんじゃまともに思考できないよ!
「ああもう、俺だってきついんだよ、今日も仕事がたくさんあるのに……そうだ、仕事だ。比叡!」
「は、はいって、何で電気を!?」
何かを思いついたのか、突然顔を上げ、執務室の明かりを点け始めた司令。凄く、嫌な予感がする。
「他の奴らが起きるまで後一時間、つまり、多少のズレはあるだろうが、鎮守府全体が活動しはじめるまで後一時間……そして、ここには本日の昼に行う予定だった事務処理の仕事が残っている。勿論、わかるよな?」
「ま、まさか……」
いつの間にか、司令の両手には幾つかの紙が抱えられている。本来、昼に行うということは……いや、一部だけとはいえ、それは!?
「ここからは仕事だ! もう日も出てくる時間だ、朝と変わらん、やってるうちに眠くなるかもしれないし、気合を入れれば多分一時間程度で終わる! さあ、やるぞ!」
「ひえーっ! それ、眠くならなかったら、ほぼ完徹になるじゃないですかああああ!」
――こうして、私は眠ることができないまま、そのまま朝の五時を迎えることとなった。一応仕事は終わったが、正直、もの凄くきつかった。今は六時、今頃眠気がきて頭がくらくらする。
「うう、むくんでる……」
窓に映るのは、目元がクマで黒くなった私の顔。こんなの、お姉さまに見せられないよ…………
今日はなるべく、執務室から出ないようにしようかなあ。……司令もかなりしんどそうだったし、大丈夫かなあ。他愛のないことを考えながら、私は顔を洗いはじめた、クマ、落ちたら良いんだけどなあ………………はぁ。
二周年ということで。一年前に着任はしてたんですけどね、ほぼ放置状態だったんで最着任しました。
大体二ヶ月程度、春イベ終了、ユーちゃんでないぞちくせう。
深夜の時報ボイスは色々妄想が捗ります、特に榛名。エロじゃなくてどうしてそうなったかの経緯的な。