東方異聞噺 豊穣神の柿
注意
※グロい
※自己責任でご覧ください
※閲覧注意
「あーはらへったぁ」
見渡す限りの枯れた大地と禿山。さんさんと照りつける太陽の下。1人の女が歩いていた。普通の魔法使いこと、霧雨魔理沙はただひたすら歩いていた。彼女は旅の真最中である、自分が求める魔法の真髄を求め、故郷を出てあてもなく歩き続けていた。幼い頃から魔法の才能に恵まれていたのだが、故郷の魔法に関する教養は低く、己の夢を叶えるには不十分だと思ったためこの旅を始めたのだ。しかし、魔法に秀でた都市の名前も場所も知らないのに故郷を出たために、行き当たりばったりの旅が続いていた。少なからず路銀はあるが、先の町で買った食料はとうに底をついていた。そして今は、飲み水すらままならぬ大地を延々と歩き続けていたのであった。
「くっそー、早く次の町に着かないかなぁ。本気で餓死にしちまう。」
独り言にも慣れてきた。1人旅の醍醐味というか宿命というか、やはり1人は寂しいものだ。それ故か、どうしても独り言が溢れてしまう。
「ん?あれは?」
地平線の彼方程ではないが、遠くの方にみすぼらしい門のような、鳥居のようなものが見える。この灼熱の大地によって形成される蜃気楼などといったものもあるが、そんなぼんやりとしたものではなく、明らかに門のような物があった。
「よっしゃぁ!町だ!」
遂に見つけた次の町に、少し元気を取り戻し、彼女は少しだけ軽い足取りで町に向かった。
「なんじゃこりゃ?」
その町の門と思わしきそれは、門というには不十分であった。直径1尺はありそうな枯れた30寸ほどの高さの木を二対に建て、その上に5寸程の細い木を縄で両端をくくっただけの本当にみすぼらしい門だった。しかし、その門以外の外壁はその様な物ではなかった。20寸程の木を丁寧に板状にし、上には木を槍の様に尖らせて作られていた。とても門と外壁のバランスのとれた物とは言えない。そんな奇妙な疑問の出る門と外壁であった。
「な、なんだこりゃ?」
門をくぐると、更に魔理沙を驚かせる。魔理沙の目に入ったのは巨大な釣り針の様な物だった。その太さは、魔理沙の腕ほどある。それが門の柱の上の方から、太い鎖で垂らされていたのだ。余りの大きさに戦慄の様な、人の本能的なものが恐怖した。
それを通り過ぎると、目の前にはそれはそれは大きな大きな木があった。もう葉は殆ど無いが。生命力を大きく感じる木が、そこにあった。そしてその木には。
「あっ!か、柿だ!!」
木の上の1番上の方に、たわわに実った柿があった。それを見た魔理沙は、一目散に木に登り始めた。木の中頃の注連縄に手をかけ、太い枝に手を伸ばし、猿の様に器用に登っていく。あっという間に頂上付近に上り詰め、その柿に手を伸ばした。
「すっげぇ...でっけぇ」
その柿を目の前にして気が付いた。己の握り拳3つ分ほどの大きさ。その柿は、今まで見たものを遥かに凌駕する大きさであった。
「へっへっ、うまそうだぜぇ」
その柿に手を伸ばすと、音もなくその柿は魔理沙の手に落ちてきた。優しく掴み、まじかで見ると、それはそれは美味しそうな柿であった。
「へへ、いっただっきまーす!」
ガブッ!
皮も剥かずにむしゃぶりつく魔理沙。少し熟れすぎた感はあるが、ただひたすらに甘く。空腹なうえ、疲労困憊の体に染み渡る旨さと甘さであった。
「んん〜うめぇぇ」
口周りが果汁だらけになるのも気にせず、ガツガツとかぶりつく魔理沙は、大きなその柿を早くも完食する。残ったのはヘタとこれまた大きな柿の種。右腕で顔を拭い。その柿の種を乱雑に木の下に捨てると、魔理沙は木の上から飛び降りた。
「よっと。」
捨てた柿の種の手前に降り立った魔理沙は。目の前に少女がいたのに気が付いた。黄色と赤色の2色で彩られた可愛らしいおべべに、真っ赤な帽子を被った、薄い栗色の髪の毛の少女だった。その顔は無表情のような、少し怒っているような、そんな顔をしていた。少なくとも、上機嫌といった顔ではなかった。
「それ、私の柿。」
「ん?」
少女が指差す先には、先ほど魔理沙が喰らい捨てた、柿の残骸があった。
「ああ、すまんすまん、私はら減っちまってさ、旨そうなこの柿見たら止まんなくてさ。食べちゃった、はは」
少女は弁解する魔理沙に目もくれず、いそいそと柿の種を拾い上げると、そのままポケットにしまった。
ポケットに種をしまった少女は、今度はまっすぐに魔理沙を見つめる。その目は少しだけだが、明らかな怒気を含んでいた。
「あれ?もしかして怒ってる?」
「...................」
「もぉ柿くらいで怒んなよ。また来年になれば一杯なるだろ?」
「.........どうだろね。」
「そんなことよりお嬢さん、この辺りに宿とかないかい?あと銭湯と旅の道具を揃えられそうな店とかさ。」
「そんなこと、か。」
そう言うと少女は踵を返し、ひたひたと足音をたてながら、町の中に走っていった。
「お、おい、ちょっと待ってくれよ。」
すかさず魔理沙も追い掛けるが、柿一つ食ったくらいでは腹が膨れるはずも、体が癒されるわけでもないため、すぐにばててしまった。
「はぁ、はぁ、はぁ、どこ行っちゃったんだぜ?あの子」
少女を追いかけたために回りを見渡すと、今来た道もよく分からないとこまで来ていた。
「まいったなぁここどこだぜ?」
入口に戻る必要もないので、仕方なく町に散策に出ることにした。
想像以上にこの町は閑散としていた。市場を探すがどこを見ても長屋の民家ばかりであった。そして驚くほど人がいなかった、民家をたまに覗き見してみるも、人が生活した後はあるが、人そのものを見つけることができなかった。
「なんか変な町。」
長屋に挟まれた道の終わりに一回り大きな民家があった。そしてその民家の前に、小さな老婆が座っていた。
(第二村人発見だぜ。)
早足で老婆に近づき、話しかける。
「ねぇおばーちゃん。」
「.............」
「私さ、旅のもんなんだけどさ。」
「.............」
「あー、あのさ、喉が渇いちゃってさ、よかったら水を一杯だけでいいから貰えないかな?」
「.............」
「あの、おばーちゃん?」
すくっと老婆が立ち上がると、魔理沙の方を一瞥もせずに民家に戻っていった。
「ええ、なんで?」
常に疑問が生まれるこの町に、少し苛立ちを覚える魔理沙。そして特に何も考えずに、老母が入っていった民家を覗き込んだ。
「...........ばち.......だ」
「ああ.............だ」
そこでは、先ほどの老婆と、おそらく息子かなにかだと思うが、筋骨隆々な大男が話していた。
(何話してんだ?小さくて聞こえん。)
「.......わ.....だか......」
「ああ........わ....るだ」
「..........殺せ」
(!!?え?今殺せって言った?)
ガラッ!!
(!!!?)
勢いよく扉が開き、大男が出てくる。咄嗟に身を隠す魔理沙。壁の陰から見ると、大男の手には、草刈り用の鎌が握られていた。
(!!?ヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバい絶対ヤバい!!)
息を殺し、物をと立てないように魔理沙はその民家から逃げた。
さいわい、大男には気づかれなかったようで、追って来る気配は無かった。
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、ここまでくれば大丈夫か?」
一目散に逃げ出したため、ここが何処だか見当もつかないところに来てしまった。周りは先ほどと同じような民家が立ち並ぶばかり。道標や市場らしき物は無かった。
「はぁぁぁ。まったく、この町はどうなってるんだ?」
深いため息をして、この町の悪口をつぶやく。だが当然、事態は一向に良くなる兆しは無かった。
「とりあえず歩くか。」
この場にいるのも手持無沙汰なので、はんば仕方なく歩き始める魔理沙。そうすると、いくらも歩かないうちに、前の方から牛と牛飼いが歩いてきた。
「!」
(いや落ち着け、ただの牛飼いだ。見たところ武器を持ってるわけじゃないし、大丈夫だぜ魔理沙。大丈夫。)
先ほどの民家での一件により、この町の人に対し、疑心暗鬼になる魔理沙。心に不安を募らせ、自身を鼓舞させる。走り出したいのを抑えながら、牛飼いの横を通り過ぎる。
(ほらな、大丈夫だろ?)
「はぁぁ」
妙な緊張が切れ、ついため息が漏れる。
ガタッ!
「!!?」
物音に驚き、咄嗟に後ろを振り返る魔理沙。しかし、変なことはない。牛が立て掛けてあった木材を蹴っただけであった。
「はは、私ってばビビリだぜ。」
ゴッ!!
「!いっつ.....」
突如後頭部に走る痛み。見ると、握り拳ほどの石を投げつけられたみたいだった。
「くっそぉ!だれだ!!」
遠くの長屋と長屋の間から顔を覗かせる少年。魔理沙と目が合うと、一目散に走り出した。
「あ!おい!待ちやがれ!!」
対する魔理沙も少年を追いかけ始める。石をぶつけられた怒りもあるが、少年相手なら殺されることもないだろうという自尊心によって魔理沙は行動していた。
少年が顔を出していた長屋と長屋の間に来ると、先ほどの少年が、路地の突き当たりを左に曲がるのが見えた。
「おい!待てって言ってるだろ!」
待てと言われて待つものなどいないだろう。だが人としてのサガか、言わずにはいられなかった。
曲がり角めがけて走り出す魔理沙。突き当たりに差し掛かり、スピードを殆ど落とさずにそこを曲がった。
ぶにゅ!!
「!!?」
何かを踏んだ。それを思った瞬間には全て遅かった。突然地面との摩擦が弱まり。走るスピードもかさなり。魔理沙は前のめりにバランスを崩した。
(やべっ!転ぶ!!)
咄嗟に手を出す、が。そこにはたくさんの毬栗が落ちていた。転ぶと思って手を出した瞬間に気づくが、それに反応出来る程、魔理沙の反射神経は良く無かった。
ずしゃゃゃゃゃぁぁ!!!!
「!!っつあぁぁぁぁあ!!いてぇ!いってぇぇぇぇ!!」
両の手の平と顔面に、毬栗が文字通り突き刺ささる。激痛が走り、血が噴き出した。
「ああぁぁぁぁ!いてぇ!くっそぉ!」
怒りに任せて毬栗を引き抜く。さらに血が噴き出してきた。自前のエプロンドレスを破ると、それを乱暴に手に巻きつけ、止血を図った。顔面からも流血していたが、手の止血を済ませると、先ほどの少年をまた探し始めた。
「おい糞餓鬼ぃぃ!!何処にいきやがったぁぁ!!」
怒りに任せて怒鳴り散らすが。先ほどの少年の、姿どころか気配すら感じられ無かった。包帯を巻いている間に逃げられたようだ。
シーンとした静けさとジンジンと照りつける太陽。先ほど踏んだなにかから漂う悪臭。そして顔からドクドクと流れる血。これら全てが、魔理沙を苛立たせた。
「すぅぅぅぅはぁぁぁぁ。落ち着け私。」
顔面に手をあて、深呼吸をし、気持ちを落ち着かせる魔理沙。これまでの人生でここまで腹が立ったことは何度かあったが、そのたびに怒りに任せて行動し、結果ロクなことがないことはよくあった。だからこそ、怒り心頭に発した魔理沙は、深呼吸で気持ちを落ち着かせた。
「.........とりあえず、顔、なんとかしないとだぜ.......」
旅路で多少は汚れてはいたが、魔理沙自身、このエプロンドレスは気に入っていた。故郷にいた頃から着ていたのもあり、愛着があったのだ。生憎、包帯のようなものを持ち合わせてなかったために、仕方なくエプロンを破り。包帯代わりにしていた。
「よし、これでいいな。」
毬栗により、軽く蜂の巣になったのは額と頬と眉間付近。破いた布で作った包帯で乱雑に手当てしたために、酷い顔だ。
「とにかく、宿を捜さねぇと」
傷の手当てをしている間に頭は冷えたようで、先ほどの少年に対しての怒りは殆どなかった。
地べたから立ち上がり、スカートの泥を落とすと、とりあえず路地から出ることにした。
路地から出ると、相変わらず閑散とした長屋が続いていた。いやな静寂が漂う。魔理沙は自分だけが、この空間の中で異物であるような感覚を覚える。実際、その考えは的中していた。
「....................」
この嫌な静寂の中、独り言を喋る気にもなれない。もし独り言を喋り、自分だけが異物として扱われるこの世界に干渉しようものなら、制裁を受けるのではないか。そんな被害妄想にまで取り憑かれていた。
この嫌な静寂の中で立ち往生をするのは気分が悪い。本能的にそう思った魔理沙は目的を不明確にしたまま歩き出した。自然と道の真ん中を歩く。魔理沙の性格を表していた。
(だれかみてる?)
少しだけ、だが、気のせいでは決してない、視線を感じた魔理沙。同じような長屋に囲まれた道を歩いていたら。少しづつ視線を感じたのだ。最初は気のせいかと思っていたが、なんの根拠もなく。それが気のせいではないと魔理沙は思い始めていた。それほどまでに、この魔理沙はこの異質な空間に蝕まれたのだ。
歩きながら、長屋の窓を覗く。奥は暗く、よくは見えない。続いている長屋全てに目を配るが、どこも同じように、奥は暗く、よくは見えなかった。だが、何故か感じる視線。なんの根拠もないが、その不安だけは拭えなかった。嫌な緊張感がはしる。
少し歩くと、遂に行き止まりまで来てしまった。外壁が高くそびえ立ち、この先は通れないと主張していた。当然ながら、長屋もそこで終わっていた。
(!!?)
突然、何かの気配を感じた魔理沙。慌てて後ろを振り返る。だが、目視で映るものは何もなかった。あるのは先ほどまで歩いていた道と、延々と続く長屋だけだった。
しかし、道の真ん中で、何か動くのを感じた。陽炎ではない。小さい何かが。一瞬、魔理沙に緊張が走った。だが、すぐにそれはほぐれる。ぶーんと、飛んできたそれは、魔理沙が何か動いたと思ったところから現れた。
(は.....蜂?)
それはただのスズメバチ。ただのはちが飛んでいて、そこに陽炎が重なったために、何かが動いていたように見えていた、ただそれだけだった。
「すぅぅぅぅはぁぁぁぁ.........あほらし..........」
ただの虫におどおどしていた自分に呆れ、ため息がでる。深く呼吸したためか、先ほどの視線のような、嫌な緊張感は自然とほぐれた。
(そうだよな、考えすぎだよ。視線なんて感じないじゃないか。)
根拠のない視線を自分の考えすぎと自己解決をする。実際、先ほどの視線は感じなかった。
「はぁ、なんか疲れた。」
ため息をすると、柄にもない弱音を吐く。
カタ....
「?」
なにか、小さな物音。少し上の方から聞こえた。視線を上げると。右手の長屋の屋根の上に男が立っていた。よく見ると、反対側の屋根の上にも男がいた。
(あんなとこで何やってるんだ?)
バッ!!
突如飛び上がる2人の男。こちらに飛んできて、何かを振り下ろしているような格好だ。
(あれ?)
空間が少しの間。スローモーションで動き始める。魔理沙の視線は飛んでくる男に向けられていた。少しずつ、視覚から情報が入ってくる。そして気がついた。2人の男が持っているものに。
(あれは....斧?)
「!!?わぁぁぁぁ!!」
一瞬で危機感を感じた魔理沙は、後ろに転げて回避した。
ガン!ガン!
そして、先ほどまで立っていた所に視線を戻すと、男達の斧が、深々と地面に振り下ろされていた。
「お、おい!なにすんだ!!あぶねぇじゃねぇか!」
「「.........」」
何も言わない2人の男。その顔からは感情が感じられない、完全なる無表情であった。
(ヤバい!まじで殺される!!)
ジリジリと距離を詰めてくる2人に、魔理沙も後ずさりを始める。先ほどの比べ物にならない緊張が走る。
ダッ!!
最初に動いたのは男の方。右手に持った斧を魔理沙めがけて大振りに横に振った。頭を下げ、寸前でかわす魔理沙。その勢いで男の後ろに走り出した。もう1人も動き出す、こちらは魔理沙めがけて斧を振り下ろしてきた。
(おそいぜ!)
そこまで早くない動きであったので、寸前に勢いよく前転で回避した。その勢いのまま走り出し、すぐの路地へと魔理沙は走った。
(逃げ足なら負けねぇぜ。)
この辺りの路地には詳しくはないが。迷路のような路地をただひたすら走った。曲がり角に差し掛かれば必ず曲がり、とにかく後ろからの追っ手を蒔くためだけに走り続けた。
「はぁ、はぁ、はぁ。」
息も絶え絶えなまま、魔理沙は長屋に立て掛けられた木材の陰に身を隠していた。小さな体を押し込み、人の目のつかない所に隠れていた
(畜生!なんなんだあいつら、私になんか恨みでもあるのか)
先ほどのことを思い出し、体が震える魔理沙。本気で殺される。そんなふうに思ったのは生まれて始めてのことであったし、年頃の少女であった魔理沙には、耐えられないほどの恐怖であった。
(考えろ!あいつら絶対私の事を恨んでる!どっかで恨みを買ったはずだ、思い出せ!思い出せ!)
「アリス、この本借りてくぜー」
「あぁ魔理沙!待ちなさい!!この前もそう言って持ってったもん返してからにしなさい!」
「まぁまぁ、いつか返すからよ。」
「魔理沙ぁぁ!!待ちなさーい!!」
「けっ、なんでぇ霊夢のやろー、しけた賽銭箱だぜ。」
「しけた賽銭箱で悪かったわね。」
「げっ!れ、霊夢!」
「ねぇ、魔理沙。2個だけ教えて、何で魔理沙は私神社の素敵な賽銭箱の蓋を開けてるのかな?そこを開けるには鍵が必要なはずなんだけどな?そしてその手に持ってる針金と小銭は何かな?」
「ダラダラダラダラダラ」
「ねぇ魔理沙。」
「逃げるが勝ちぃ!!」
「待ちやがれ泥棒猫ぉぉぉ!!」
「おっ?香霖、なんだこれ。」
「あ!ま、魔理沙!それだけは駄目だ!!!」
「へへ、なんだか怪しいな。ちょっと死ぬまで借りてくぜぇ 」
「ま、待て魔理沙!それは僕の最高傑作!!」
(だめだぁ!恨み買った心当たりがあり過ぎる。香霖はともかくあの2人etcは殺し屋を雇ってもおかしくないぜ.....)
汗が噴き出してくる魔理沙。今更ながら、自分の今までの行動を悔いた。
(畜生。こうなったら。逃げるが勝ちだ!)
だんだんと日が落ちてきた。日没まではもう少し。
(よし、動くか。)
魔理沙はこの時を待っていた。日が落ちてからでは、道もわからない上ので、夕日が落ちる前まで待っていたのだった。日が落ちてからでは、前も良く分からない上に、向こうは松明を使い始めるのでこの時間は、逃げるのには絶好の時間であった。
木材の下から這い出て。周りを見渡す魔理沙。人の気配は相変わらずない。何処までも静寂が続いていた。
頭を低くし、足音をできる限り立てずに走り出す。しかし、薄暗いうえ、知らない町の路地をスムーズに走ることはできなかった。
「くそっ!また行き止まりか。」
走っても走っても、この町から逃げられる気がしなかった。何度目かの行き止まり。流石に心が折れそうであった。
(しかたねぇ、目立つかもだけどこれしか手はねぇな)
辺りは薄暗いが、決して真っ暗ではなかった。そのため、この手段に出るのは気が引けた。完全に真っ暗になればいい手だったのだが。
辺りを見渡し、手頃な木材を立てかけてあるのを探す。近くの民家に立て掛けられていた竹を一本拝借すると。長屋に立てかける。
「よっと」
立て掛けた竹に手を伸ばし、するすると登っていった。屋根の上に上がるのは、暗い時ほど有利に働くからだ。
屋根の上を先ほどよりも気をつけて走る。天井から足音が聞こえれば、たちまち家主が出てくるかもしれない。それを危惧し、魔理沙は物音を立てないよう細心の注意を払った。
(おっあれは)
薄暗い中、微かにだが少し離れたところに、それは見えた。
(間違いねぇ、あのデカさ。入り口の柿の木だ!)
沈みゆく夕陽を背景に、その木は見えた。この町を歩き続けて、あれ程大きな木は1度しか見ていない。見間違いはないだろう。
(あそこまでの道は....なんだ、そんなに入り組んだ道じゃないじゃないか。)
屋根の上に登って気がついたが、ここは入口からさほど離れてはいなかった。ほんの少し、道を曲がれば入り口に繋がる大通りに行けた。
(へっへっへ、やっとこさこのイカれた町からおさらばできるぜ。)
突然現れた希望に、つい口角が上がる。
(善は急げだぜ。)
大まかな道を頭に叩き込み、魔理沙は屋根の上から飛び降りた。
すたっ
周りを見渡す、人影はない。できる限り物音を立てずに魔理沙は走り出した。
(よしっ!ここを曲がれば出口が見えるはずだぜ。)
見覚えのある角を曲がる、その先にはあの柿の木があるはずだった。しかし。
「な...なんじゃこりゃ」
その先には確かに柿の木があった、だがその前には見上げるほど高く積み上げられた木臼の山があった。
(なんなんだよまったく。)
近づいて見てみれば、それの異常さがよく分かった。何度も見たこのある木の臼。それが見上げるほど高く積み上げられていたのだ。道幅いっぱいに積み上げられたそれは、避けて通ることすら出来そうになかった。この臼が固定されていれば、身軽な魔理沙なら簡単に登れただろう。しかし、幾ら重いとは言え、ただ積み上げただけの臼を登る気にはなれなかった。登ってる時に、もし臼が後ろに倒れでもしたら、最悪死ぬだろうから。
「どうやって積み上げたんだ?」
ゴッ!!
「??!!いっつぅ!!なんだぁ!?」
後頭部に走る、覚えのある痛み。咄嗟に振り返る。
「!!?」
驚きと絶望が魔理沙を襲う。そこにはこの町の男衆だろうか、20人程の男達が道を塞いでいた。各々が握り拳程の石と、農具を持っていた。
ヒュッ!
「!あぶねっ!!」
先頭の男が、魔理沙に向かって石を投げた。咄嗟にそれを躱す。すぐに視線を男達に戻すが、男達は皆、石を投げようと振りかぶっていた。
「ちっくしょう.......こうなったら!!」
魔理沙は懐に手を入れ、それを取りだす。一瞬、男達が頭に疑問を浮かべた。おそらく、その道の者しか、それの正体は分からないだろう。
「もう....謝ってもおせぇからなぁ!!!」
昔、香霖から借りた、ミニ八卦炉。それに力を注ぐ。魔理沙は、これの全力の威力はよく知っていた。全力でただの人間に放てば、確実にタダでは済まない。それを知ってもなお、魔理沙は全力を八卦炉に注いだ。死を直感していた魔理沙は、手心を加える気など、微塵もなかった。八卦炉に力が集約されていき、眩い光を放ち始めた。男達に動揺が走る。
「くらえぇぇ!!『恋符』マスタースパーク!!!」
超極太のレーザーが射出される直前。魔理沙は、自身の足元に影が落ちるのを感じた。ほんの少し、ほんの少しだけ、上を一瞥した。そこにあったものは、無情にも。
(う.......す.......?)
ガラガラガッシャーン!!!
「うぎゃぁぁぁぁぁ!!」
魔理沙は、男達に気を取られ、後ろの臼のことをすっかり忘れてしまっていた。その隙をつかれ、臼の山を崩されてしまい、下敷きとなったのだった。
「ううぅぅ、いてぇ...ちき..しょー.....」
体の節々が悲鳴を上げており、呼吸も辛かった。おそらく身体中の骨が折れてるのだろう。額が割れ、出血も酷い。目に血が入り、視界が赤に染まっていった。ぼんやりとした意識の中。魔理沙は、己に降りかかる、さらなる不幸を感じた。
(なん...だ...あつい?)
右手から、だんだんと温度が上がるのを感じる。遂には、火傷しそうな程まで熱くなってきた。
(しまった!!八卦炉!!)
ドッカーン!!!
魔理沙によって注がれた魔力は、八卦炉の中で増幅され。強力な魔力となって、発射されるのを待っていた。しかし、発射はされず、それどころか強い衝撃を受けたために八卦炉内が不安定となった。それによっておきた暴発。閑静な大通りの真ん中で、強い閃光が走った。
「うう.....うん?」
全身に走る痛み。切れているのか、折れているのかも分からない痛みが、魔理沙の全身に走る。痛みの中、魔理沙は意識を覚醒させた。
「あれ...あたし.......生きてる?」
身体中は痛いが、目は見えている。まだ、魔理沙は生きていた。あの爆破の中心にいながら、生きていたのは幸運と言えるだろう。
「へへへ、生きてるぜ.....へへへ....」
激痛が走る体に鞭を打って仰向けに転がり、自分が生きていることに心底安心し、つい笑みが溢れる。だが、その笑みも長くは続かない。顔を滴る汗を拭おうと、右手を顔に持ってきた時、遂に魔理沙は自身の異変に気がついた。
「??あれ?.....手....私の手!!私の手がぁぁぁ!!!」
先ほど爆発の中心地は、正確には魔理沙の右手であった。それも、右手で持っていたものが爆発したのだ。彼女の右手が爆散したのは、当たり前のことであった。
「!!!!??ううぅあああぁああぁ!!いてぇ、いてぇぇぇぇ!!」
爆散した右手を脳が目視した瞬間。脳が忘れていた、右手の痛みを思い出す。うるさいくらいに鳴る心臓の鼓動に合わせ、右手から血が噴き出していた。
「ううぁぁ......そうだ!ひ、左手は!!?」
なぜか体を起こすことが出来ず、背中から走る痛みに耐えながら、魔理沙は左の方に体を向けた。幸い、左手はあった。だが、肘から、人間ではあり得ない方へ曲がっており、骨が飛び出していた。
「くっそぉぉ......なんでだよぉぉ!!??」
立ち上がろうと体を起こそうとするが、なぜか力が上手く入らず、起き上がることができない。足は自由に動くが、足だけでは魔理沙は立ち上がることが出来なかった。
ひた、ひた、ひた、ひた
「くっそぉ、まずい、ほんとに死んじまう!」
ひた、ひた、ひた、ひた
「うう、まだ...まだ死にたくねぇよぉ.....」
ひた、ひた、ひた。
「!!?あっ!!おっお嬢ちゃん!!助けてくれ!!い、医者だ、医者を呼んでくれ!!」
横たわっている魔理沙の頭の横に、魔理沙を見下ろすように、あの時の少女が歩いてきた。その顔は、またもや無表情。
「お嬢ちゃん??なにしてんだよ、医者を呼んでくれよ!!」
「................」
「お、お嬢ちゃん??」
「................」
ひた、ひた、ひた
「ちょ!ちょっと!待ってぇ!おねがい!!おねがいだから見捨てないでぇ!!!」
ひた。
「お嬢ちゃん??」
魔理沙の頭の横から足元に、少女は移動した。魔理沙からは、少女の背中と後頭部しか見えない。
ガッシ!!
「いっ!いでぇ!」
突然少女は、魔理沙の右足を片手で掴み持ち上げた。少女は、その見た目からは想像出来ないような怪力で、魔理沙の足は掴まれただけなのに激痛が走った。
ズルズルズルズルズルズル
万力のような力で足を掴まれ、そのまま少女は魔理沙を引きずっていった。とても怪我人の魔理沙を労っているようには見えない。
「いてぇ!ちょっとお嬢ちゃん!!!いてぇよ!!」
ズルズルズルズルズルズル
「いやぁ!おねがいぃ!!痛いから離してぇ!!!」
ズルズルズルズルズルズル
「................」
魔理沙の懇願はつゆ知らず。少女は魔理沙を一瞥もせずに引きずって行った。そして、あの柿の木の下まで引きずられ、少女は、乱雑に魔理沙を放り投げた。
ドサッ!
「ふげぇ!!」
入り口の門の柱付近まで投げられた魔理沙。もはや頭を動かす気力すらなかった。仰向けのまま、夕日の空を見上げることしか出来なかった。
ひた、ひた、ひた、ひた、ひた。
また、魔理沙の頭の横に歩いてきた少女。その顔は、やはり無表情であった。
「お、お嬢ちゃん.....教えてくれ、なんで、なんで私はこんな目にあうんだ?私が一体なにしたっていうんだ?」
「!!.........」
魔理沙の問いに、少し動揺する少女。その顔には影が落ち、表情はよく見えない。
「..........おまえが.....」
「??」
「おまえが柿を喰ったんだろおぉぉがああぁぁぁ!!!!」
「ひっ!!!」
鬼のような形相。まさにその言葉の通り、純粋な怒りが爆発した瞬間であった。少女は、先ほどまでよりさらに乱雑に魔理沙の右足を両手で掴むと、軽々魔理沙の体を持ち上げる。
「おわぁ?!!ちょ、やめて!!」
そして、少女は入り口の門の柱に近づいていく。その柱には、巨大な釣り針が垂らされている。
「え??うそ....いやぁ!!いやぁぁぁ!!やめてぇぇぇぇぇ!!!」
魔理沙は、これから自分がされるだろう事を直感的に感じた。必死に抵抗するも、両手で人を持ち上げるほどの怪力相手には無駄であった。
そして遂に、柱の前まで持ってこられた魔理沙。その顔は恐怖で歪み、血と涙と失禁した尿でグチャグチャであった。
「えっく....ごめんなさい......ゆるひてくだひゃい.......」
泣きながらの、魔理沙の意地もプライドも投げ打った懇願。それに対し、少女は無表情なまま、魔理沙を自分の顔の高さまで持ち上げた。
「.....絶対に、許すわけないでしょう。」
「ひっ!!!」
そのままの高さから、巨大な釣り針に向かって魔理沙の太ももを振り下ろした。
グサァァ!!!!
「ぎゃぁ゛ぁ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ!!!!!」
鋭く、巨大な釣り針は、魔理沙の右足の太ももに突き刺ささった。肉と骨を貫き、自重で更に深く刺さっていく。ドス黒い血が流れ出た。
「い゛た゛い゛!!!い゛た゛い゛よ゛ぉぉぉぉぉぉ!!!だれかぁぁ!!!助けてぇぇ!!!助けてぇぇぇぇぇぇ!!!!」
断末魔をあげる魔理沙に、侮蔑の視線を送る少女。そして、魔理沙の顔の高さまでしゃがむと、目をつむり、両の手の平を音を立てずに合わせた。
「いただきます。」
「へ???」
魔理沙が最期に見たのは、風呂桶より大きな少女の口であった。
「はーやく芽を出せかっきのたね♪だっさねばはっさみでちょん切るぞ♫はーやく芽を出せかっきのたね だっさねばはっさみでちょん切るぞ 」
上機嫌な歌が聞こえる。歌う少女は、沈みゆく夕日を眺めていた。傍の血だまりの真ん中には、柿の種が埋められている。来年は、豊作だろう。
本来はR18専門のサイトである東方夜伽話というサイトで作品を投稿させていただいています。この作品はそのサイトには適さないとのご指摘がありましたのでこちらに移転させて頂きました。
http://easy2life.sakura.ne.jp/yotogi2/
上のURLで東方夜伽話のサイトに行けます。私の他の作品を読んでいただけたら幸いです。R18作品のみですので閲覧される際は十分注意し、18歳未満の方の閲覧はご遠慮ください。