ハイスクールD×D 勇者の絆を持つ神の子が往く 作:始まりの0
~駒王学園 旧校舎 ギャスパーの部屋~
この部屋の主、ギャスパーは、零と二人きりになると、部屋の端にあった段ボール箱に入っていた。そしてビクッビクッと震えながら零を見ている。
零はそんなギャスパーを見て、段ボール箱の横に腰を降ろした。
「そう怖がるな、俺はお前をどうこうするつもりはない。ギャスパー、お前は吸血鬼と人間のハーフと聞いたが本当か?」
零は優しい口調でギャスパーにそう尋ねた。何故かその口調も、放つ雰囲気も優し過ぎるのが不思議だ。リアス達と話す時は何処か棘のある話し方が多いが、今はまるで白音達と話す時の様な雰囲気で話している。
「はっはい……そうです」
ギャスパーは悲しそうに肯定的する。それを見た零も目を細めている。
「1つ聞きたい。ギャスパー、お前はこれからどうしたい?」
「これから?」
「そうだ。これからどうしたいのかを聞きたい」
ギャスパーは「これから」という言葉にかすかに反応した。しかし直ぐに震え始め、入っている段ボールに潜り込み蓋を閉めた。
「……………フム。そうだ、ギャスパー、1つ昔話をしてやろう」
ギャスパーの様子を見た零は急ぐ必要はないと思ったのか、零は話しを始めた。
昔々、ある所に世界一偉く、美しく、強く優しい女神が居ました。その女神は神々の中でも頂点に立つ存在でした。
その女神は世界を見守りながら日々を過ごしておりました。そんな日々の中で女神は暇を持て余したのか、地上に出ました。
女神にとって世界に生きとし生ける者を愛しておりました。しかしそんな中でも自分達に似せて生み出した「人間」という存在が気になっていました。
何の力もなく、儚い存在。なのに毎日を楽しく、嬉しそうに過ごしている人間達。
万能の力を持っている
そんな時に、1人の捨てられた赤ん坊を見つけました。その時女神は思いました。
【何故、こんなにも儚いのにお前はそんなにも笑っているのだ?】
女神は自分に笑いかける赤ん坊を抱き上げると、その時に感じた。
【あぁ……この弱く儚い。少しの力で死んでしまうのに………なのにこんなにも重く、暖かい】
そして女神はとてつもない事を考えた。この子供を育ててみようと。
そんなこんなで女神は子育てを始めた。人間の子供を育てるのに神の力を使わずに全て自分の手で育てる事にしました。
というものの初めての事ばかりで子供の命が危機にさらされた事も数知れず。
『今考えると良く生きてたな俺(ぼそっ』
コホン………そんなこんなで赤ん坊は成長していきました。その中で女神にも予想外な事が起きた。それは本当に赤ん坊を愛したという事だ。
女神は育て始めた赤子を本気で愛してしまった事は誰にも予想できなかった。
しかし女神に溺愛された赤ん坊は生まれつき弱かったため、弱り始めた。それを見た女神は何とか助けようとするがそれはできなかった。神の掟によって……。
本来、神は地上に生きる個を愛してはならない。世界を、生きとし生ける者達を平等に愛さなければならないからだ。女神はその掟を破ってでも赤ん坊を助けようとする。だが周りの神もまたそれを見過ごす訳にはいかず必死で止めた。
【何が掟だ……掟でこの子が救えるのか?答えは否。この子を救えるのは母である私だけ……人間だから救ってはならないのか……ならこの子を神にすれば……私の本当の子にすればいい】
突拍子もない女神の考えにより、赤ん坊を自分の胎に宿しました。そうして赤ん坊は女神の子供として再び生を受けました。
本当の母となった女神は、己が子供であるならば他の神も文句が言えない。それに最高神の子供を蔑ろにする神は自分の力で排除すると決めていた。
【この子は私の子だ………これで誰にも文句は言わせない。文句を言う者は私の力で排除する、この子は私が守る。愛しい私の子……これから私が本当の母ですよ】
『でも本当の子供になったからこそ溺愛され過ぎて死にそうになった事もあったな(ぼそっ』
赤ん坊は女神の子供とは言え、元は人間故に女神の妹・弟以外の神々から忌み嫌われていた。
言葉の分からぬ内はそれでよかった。しかし子供は成長し言葉を理解する。
【汚らわしい子が】
【忌み子めが……近付くな】
【何故あの方はこの様な忌々しい存在を】
【この様な者、即刻消すべきだ】
【滅多な事を言うな。あの方々に聞かれたら消されるのは我等ぞ】
【死ね、神を堕落させた忌み子が!】
女神やその弟妹神にとって大切な存在であっても神々にとって子供は忌々しい存在でしかなかったのでした。
しかし子供は母や叔父達に護られ、成長し幾多の世界を旅し仲間達と絆を紡ぐのでした。
「めでたし、めでたし」
「えっ!?そこで終わるんですか!?」
「まぁ間の事は……長くなるから省いた」
突然話が終わった事に驚いたギャスパー。しかし零は長くなるからという事で話を終わらせた。
「あっあの……その子供はそんなに嫌われて何で僕みたいにならなかったんですか?」
「その子供には護ってくれる母がいた、叔父がいた、叔母がいた。………引き籠らなかった訳じゃないよ。嫌な時は布団から出なかった事もあったし、怒り狂って暴れた事も在ったよ。そんな時は母様や叔父上達が傍にいてくれた、優しく抱き締めてくれた。だから何が在っても諦めなかったんだ」
「でも僕には誰もいないです……僕は……僕は」
「いいや……そんな事はないさ。確かにお前は色々な事が重なって今の境遇になったかもしれない。けどお前が居てくれて喜んだ人もいるよ」
「そんな人……そんな人、僕にはいないです……」
ギャスパーは涙を流し始める。零はそれを見ると、ギャスパーの頭に手を置いた。
「居るよ……お前の眼には見えないけど、確かにお前の傍にいる人がいるよ」
「ぅ……ぅう……そんな人い……な……すぅ……」
ギャスパーはそのまま眠ってしまった。零は立ち上がると、ギャスパーを抱え部屋の中央にある棺桶型のベッドに寝かせた。
「お休み……ギャスパー」