ハイスクールD×D 勇者の絆を持つ神の子が往く 作:始まりの0
~???~
ボクは零さんが言った通りに光の向かって歩いてきたんだけど………此処は何処かな?
大きなお屋敷………アレ?これってボクの実家?
ギャスパーはその屋敷に見覚えがあった。この屋敷はどうやらギャスパーの実家の様だ。
「あらっ……やっと来たんですねギャスパー」
「えっ?」
ギャスパーは声がした方向を見てみると、金髪の女性が座っていた。
「だっ誰ですか?」
「私?私はアスティアと申します……紅茶はいかが?」
女性は優しい笑みを浮かべて、ギャスパーにそう聞いた。ギャスパーは何故か見知らぬ女性に声を掛けられ安心していた。夢の中とは言え普通ならいきなり現れた見知らぬ赤の他人に警戒するのが普通だ。なのにギャスパーは彼女を警戒しなかった。
「はっはい……いただきます(なんでだろう?この女の人、知っている様な気がする)」
「フフフ、どうぞ(カチャ」
アスティアと名乗った女性はギャスパーに紅茶を差し出した。
「頂きます……あっ美味しい……夢なのに?」
「此処はギャスパーの夢であり、彼の神によって創られた世界でもあります」
「彼の神?……もしかして天王理先輩の事ですか?」
その応えにアスティアは笑みで返事を返す。
「あの方が与えてくれた一夜きりの奇跡という所でしょう。私はあの方のお蔭で貴方とこうして会う事ができました」
アスティアは嬉しそうに笑みを浮かべる。
「貴方は何を悩んでいるのですか?」
アスティアは突然、ギャスパーにそう尋ねた。ギャスパー本人はそれを聞くとビクッと身体を反応させる。
「ぼっボクは弱いです………ボクは呪われています。僕は産まれてきちゃいけなかったんです、こんな忌々しい力を持つボクはなんかが産まれきたからボクのお母さんも、皆も不幸に」
ギャスパーは涙を流し始める。それを見たアスティアは椅子から立ち上がると、ギャスパーを抱きしめた。
「ボクが産まれた事で誰も……誰も幸せにならなかった。ボクが産まれた事で皆が不幸になった……父様も……他の
ギャスパーは子供の様に泣き出した。アスティアは優しく抱き締め、ギャスパーの頭を撫でた。
「泣いたっていい……転んだっていい……そしたらまた立ち上がればいいんです」
アスティアは優しくそう言うと、更に続けた。
「ひっく……うぐっ……ぐすっ…………」
「ギャスパー、貴方は自分は居て皆が不幸になったと言いました。けどそれは少し違いますよ」
「えっ?」
ギャスパーはアスティアの言葉に驚いた。自分の知る限り誰かを不幸にした事しかないからだ。
「少なくとも私は貴方が居て嬉しかった、幸せでしたよ。私の此処に宿ってくれて、毎日成長して、一生懸命に私のお腹を蹴って………」
「えっなっ……何を言ってるんですか?……貴女は……もしかして」
「でも貴方に宿ってしまった存在によって私は狂い、貴方を残して逝ってしまった。ごめんなさい………あの人だって貴方ができた事が分かったら喜んでくれましたよ。でもあの人も当主として一族を守る為に貴方の事を護る事ができなかったの……許して上げてね」
「そっそんなこと……父様は一度だって……」
アスティアは首を横に振って更に続けた。
いいえ。あの人は貴方ができて、一番喜んだのはあの人ですもの。
私が人間と分かっていて、私を愛してくれた。何があっても護ると言ってくれましたよ。それに貴方がお腹にいる時には毎日、貴方に喋りかけていたんですよ。それはもうデレデレな顔で。
でもあの人は一人の男である前に当主。貴方に宿ったものは一族に不幸を齎すと思ったあの人は、貴方を護る為にも幽閉するしかなかった。周りに害さない為にも、害されない為にも貴方を幽閉するしかなった。あの人にはそれしか思いつかなかったんですね。
それが貴方を苦しめる事になっても、貴方を護る為にはそれしかなかったのは言うまでもありませんけども……。
せめて私が生きていれば少しは変わっていたと思うのですが………私が弱かったために貴方を残してしまった。けど私はずっと貴方の傍にいましたよ。
ギャスパーの父、自分に宿っていた、ギャスパーを知る女性。そんな人物はこの世で1人しかいない。
「おか………あ……さん……?」
「はい………ぁあ……もう時間が来たのですね。楽しい時間とは早いものですね」
ギャスパーの母、アスティアは光に包まれる。そして段々と姿が薄くなっている。
「ギャスパー……私を母にしてくれてありがとう。私達の元に産まれてきてくれてありがとう。例え弱くたっていい、泣いてもいい、貴方が元気に生きていてくれれば。ギャスパー、これだけは覚えておいて下さい。例え姿が見えなくとも私はずっと貴方を見守っています。愛していますよ、私の愛しい子、ギャスパー」
アスティアはそう言ってギャスパーを抱き締めると光と共に消えた。
「おかあさん…………ボクは……ボクは」
ギャスパーは知った。
自分は望まれて産まれた事を、愛されていた事を。
幾つもの偶然がかさなり死んでしまった母は、自分を怨んでいない事を、ずっと見守っていてくれた事を。
他の誰でもないこの世界で自分を拒絶せずに「愛している」と言ってくれた母の温もりを、愛を。
ギャスパーは母の光に包まれそこで意識を手放した。
~ギャスパーside out~
~深夜 天王理家~
零は庭にいた。そして星空を見上げ涙を流していた。
その涙の理由はつい先程戻ってきたギャスパーに入れていた魂の一部の記憶を見たからだ。ギャスパーとその母アスティアの会話を見ていた。
「この俺でさえも敵わない……偉大なる母の愛か。昔を思い出すな……」
「どうかしましたか零?」
零が振り返ると、天照がいた。
「いぇ……少し昔の事を思い出していました。子供の時の事を………あの時、母様や叔父上達がいなければ俺は完全に闇に堕ちていたでしょう」
「アレからかなり時が経ちましたね………昔の零は可愛かったですね~『ははしゃま~、らぁ~いすき』『えっとね、僕ね、大きくなったら母様をお嫁さんにするの』「うわぁぁぁぁぁっぁぁぁぁ!」あらあらあまり五月蠅いとご近所の皆様にご迷惑ですよ」
天照が袖の中から取り出したのはボイスレコーダー。中身は零の恥ずかしい過去の音声だった。
「………零、貴方は幸せでしたか?」
天照は突然に零にそう聞いた。その表情には影がかかる。零はそれを見て、その場に膝を付き天照の両手を掴む。
「はい、俺は母様の息子で幸せですよ。確かに辛いことも、苦しいことも一杯ありました。けど俺は母様の子供で良かったと思っています。母様が俺を貴方の本当の子供にしてくれたお蔭で、俺は多くの事を知れた、仲間達と出会い絆を紡ぐ事ができた。それで十分ですよ」
「零………ありがとう。私の愛しい息子(なでっなでっ」
「あっあの……この年齢になって頭を撫でられるのは恥ずかしいのですが」
「あらあら、どんなに貴方が生きても貴方は私の可愛い息子ですよ」
零は恥ずかしそうに顔を赤くしている。この世界で最強の力を持つ伝説の戦士もどうやら母親には弱い様だ。
俺にとって母様は絶対の存在。己が腹を痛めて俺を産んでくれた存在。元は人間とは言え俺は捨てられた存在。小さい頃から周りの神の子供達にその事で馬鹿にされた事も在る。何故捨てられたのかは分からないが、母様はその理由を知っているらしい。小さい頃にそれを聞いたら母様は珍しく怒っていた。
『貴方の母は私だけです。他の言う者の事など気にしてはいけません』
笑みを浮かべて俺にそう言った母様だったが、眼が笑っていなかったな。次の日には顔を青ざめさせた子供の親神達が必死に母様や叔父上達に謝っていたな。因みに母様は目の笑ってないドス黒い笑み、叔父上と伯母上は邪神も裸足で逃げ出す程の憤怒の顔だったな。
俺は人と神の身体と魂を持つ。故に他の神々に忌み嫌われた、だが母様や叔父上達が守ってくれた。だから俺は決めた。俺の様な子供達の味方になると決めた。例えこの身が血で染まったとしても。
この世界に居る者達は知る。
例え人智を越える悪魔や天使達であっても、ドラゴンであっても決して怒らせてはならぬ存在がいる事を。
その紅き姿は全てを恐怖させる。その雄叫びは全てを震え上がらせる。
怒り狂うそれを止める事はできない。例え神であっても、邪神であっても、魔王であっても絶対に止める事はできない。彼の者の前では全てが等しく無力であることを。
・キャラ紹介
名前:アスティア
種族:人間
年齢:不明
亡くなったギャスパーの母親。
吸血鬼であるギャスパーの父親と愛し合い結ばれたが、ギャスパーを産むと同時にギャスパーに宿る存在により精神が狂い死んでしまった。
死んでからは魂だけとなってもギャスパーの傍に居続けた。自分が弱いせいでギャスパーを苦しむ事になっていると死んだ事を後悔している。
しかし今回は零の協力の元、ギャスパーの精神に干渉する事ができた。そしてギャスパーに「貴方は望まれて生まれた」と伝えた。
零は魂だけの彼女の姿が見えていた様で、彼女がギャスパーの母親である事も見抜いていた様だ。
ギャスパーの父
名前:不明
種族:吸血鬼
年齢:不明
ギャスパーの父。
純血を重んじる吸血鬼の一族である筈だが、何故か人間であるアスティアを愛した。アスティアの為なら本気で家を捨てようともしたらしいが、当主であったため、そう言う訳にもいかず周りの者達が止めた。
ギャスパーが出来て、一番喜んでいたが、産まれた時にギャスパーに宿る危険な存在に気付いた。ギャスパーを幽閉したのもギャスパーの身を他の者達から守る為であったらしい。
今回の話はギャスパーと母親の話でした。
母親と父親の設定はオリジナルの設定です。