まぁ、長時間空いたおかげで色々とプロットは練れたので良しとしましょう。ドフラミンゴも失態も悲劇も”起きちまった事”が現実…誰も戻れねェと言ってましたし…。
では、どうぞ。あと、スマホで観ている方は今回見にくいかもしれません。長文なので、しおりも使うのもいいかもしれません。
~前回のあらすじ~
警視庁の”大会議室”で、啓達は警視総監達と会い会議を始めるのであったが…、警視総監の口から出た言葉……。
《詰み》…それは、諦めに等しい言葉であった。
その言葉によって、絵里は警察が矢澤一家を救出出来るのか疑問に思う。同様に疑問を抱いていた啓は…詰みと言い切る理由をしろうとする。そして…大門寺から出た返答は実際に転龍会に出会っているという事実であった。
その日、警察組織は転龍会から警察がμ’sに関わる事を禁止し…もし、禁を破れば《地球》を破壊するという余りにもぶっ飛んだ脅迫を言い渡されていたのであった。
ともすれば、このままでは…明日、μ’sは転龍会に渡ってしまう。
その時、いきなり大門寺が倒れてしまい混乱するにこ達。
犯人は当然の如く”覇王色の覇気”を持つ‥‥《桐生 啓》であった。
某時刻 ~警視庁”大会議室”~
「《腑抜け》に喝を入れてやった。」ドン!!
啓の一声とほぼ同時に、警視総監の身体がドンッと音を立ててその場に意識無く横たわる。文字通りピクリとも動かず、第三者から見ても気絶していると良く分かる程だ。
この啓の驚愕の一喝に、元音乃木坂学院生徒会長と副会長は‥‥。
絵里「えっ、ちょっと。 えっ…。」
絵里は立っている啓と倒れた警視総監を思わず何度もみ返した。
希「…。」
希は開いた口が塞がらないとはこの事。この状況にただ呆然と座りつくした。
2人が現状固まっている中、にこはいち早く反応した。
にこの反応が絵里や希よりも早いのは、以前に覇王色の覇気で実に三回気絶するという不幸な経験をしていたのだ。
最初の自身の誘拐事件に出会った早々に気絶、μ’s崩壊ライブ事件の後…転龍会会長によって気絶。…最後の三回目は仕方がなかったとはいえ、音乃木坂白いドーム事件で啓本人に気絶させられている。
だから、意識が無くなるが為に”驚いた”事はないのは無いが…通算3回気絶するだけあって、啓の覇王色の覇気に対して追及はしなくてもいい。
‥‥問題は気絶させた”相手”なのだ。
にこ「な、なにが腑抜けに喝なのよっ!?」
「警察の目の前で、警察のトップを気絶させるなんて…即逮捕じゃないのよっ!? こんなばかな事をする人間なんて…世界中探してもいないわよ!!」
「あんたのやったのは…”犯罪”じゃない!?」
にこの鋭い指摘が啓に向かって言い放たれる。そして、この言葉に今の今まで反応が遅れていた希は意識を戻すと真っ先に絵里に話しかけた。
「エリチ、エリチっ。 こういう時、どうすればいいかな?」
希に話しかけられて、絵里も現状に意識を向け始めれた。
「えっ‥私に言われても…そうだ、ともかく謝りましょう。」
「そ、そうやな。 誠意みせよう、うんうん。」
「啓、にこっ!! 聞こえたわよね? 直ぐに謝るのよっ!!」
悪い事をすれば、まずは相手に謝罪する。当然のすべき行動を絵里は2人に促した。
三人とも、すぐさま謝罪の姿勢になると鷲尾警部達に謝罪の言葉を言い出す。
「本当にごめんなさい!! この怪力バカとはまだ会って間もないんですが、見た目通りで口より手が直ぐに出る男なんです!! ホントに単純だからついカッとなってやっただけなんです!!」
鷲尾「…。」
「で、でも…!! こんな人ですが…私を助けてくれた大恩人なんです!! 啓を捕まえるんだったら、私が代わりますから!!」
「私達からも、お願いします!! どうか、桐生君を許してやってください…!!」
啓「…。」
武内「…。」
柿谷「う~ん。」
三娘の謝罪にそれぞれ何とも言えぬ表情を見せる。
「ゴホンッ!!」
そろそろの反応を見せようと思ったた鷲尾警部は大きな咳払いをする。
「「「ビクッ!!」」」
啓をこれから逮捕すると大声で言うつもりだというのか、三娘は戦々恐々した。
だが…その答えは。
「逮捕? ハハッ、大丈夫だ、そんな心配は要らない。」
えっ?と三娘共に言葉を発した。
「ちょ、ちょっと待て下さい。 どうして。」
思わず、にこは鷲尾の返答に疑問を投げかけようとしたが…。
次の言葉に、三娘は驚愕の声を出した。
「警視総監を気絶させる様に頼んだのは、俺が桐生に頼んだんだよ。」ドン!?
「「「‥‥えっ?」」」
「「「な、なんでええええ!!!???」」」
三娘とも、まるで予定でもしていたかのように同じ言葉、同じくらいの声量で驚いたのであった。
その驚きぶりは声だけでなく、身体でオーバーリアクションを無意識に取っている程だ。
「いやいやいや…!! 可笑しいじゃない、なんで警察が警視総監を気絶させるんですかっ!?」
「にこの言う通りよ、こんなの絶対認められないわっ!!」
「はっ…もしかして、これを機に警視総監の椅子に座る気やないん!?」
「待て、落ち着けお前ら。 特に希、こんな事で座れねェよ。」
宥めつつ、希にツッコミを入れる啓は三娘を一先ず落ち着かせると話を切り出す。
「まぁ、急にこんな事をすれば…焦るのは当然か。」
「焦るって、あんたのせいじゃない! って、そんな事より‥あんた、さっきのは頼まれてやったことなの?」
にこの視線は気を失ったばかりの警視総監に向けられた。
「ああ、言葉通りだ。 …ちょっと待ってろ。」
啓はスーツの内ポケットからメモを取り出すと、三娘に見える様に見せた。
「ほらよ、これが証拠だ。」
そこには”会議途中で、君の力で警視総監を含めた俺達以外の警察関係者を気絶させてほしい。 合図は俺が日本最高戦力と言った時にタイミングを合わせてくれ。この事は矢澤さん達に黙ってて欲しい。 鷲尾”と鷲尾警部直筆のメモが確かに書かれていた。
三娘は、メモをまじまじと読むと…希がある文章に対して真っ先に気が付く。
「…あっ、啓君!! よく読んだら、これって!?」
希が驚いた声をまたしても出した。
「希!? 急に驚いた声出してd」
「だって、前文を良く読んでみてやっ!!」
「「‥…ああっ!!」」
希の言葉通り読む2人は遅れながら、反応を示した。
「気が付いたか。」
「あんた…!!」
にこはプルプルと手を震わせていた。
「警視総監どころか…ここに居る警察の人も気を失わせたのっ!!??」ドン!?
「その通りだ。」
啓は否定することなく答える。
「さっきの鷲尾さんの”日本最高戦力”って言うのと同時に警視総監のおっさんだけじゃなく…この警視庁に居る人間も気絶させた。」ドン!!
「嘘っ…。」
にこ達はそこまでするのと言わんばかりに、引いていた。
「今、動けてんのは…この部屋にいる人間だけだ。 要は俺とにこ達と鷲尾さん達の”7人”以外は全員、俺が気絶させた。」
「で、でも…あの力で本当に気絶しているの? 啓を見てる訳でもないのに…。」
絵里が疑問を出した。直接、啓を見ている訳でも無いのに本当に気絶させたのか分からないのだ。
「いや…”覇王色の覇気”は俺を直接見ていなくても関係ねぇ。 タダの壁に阻まれる程、俺の覇王色の覇気は大人しくねェんだよッ。」
「ほ、ホンマに…?」
「だったら、見て来たらいいぜ。」
啓はドアの方へ指差す。
そして、数分も経たぬうちに…希は帰ってきた。その顔は、さっき程のやや怪しげな顔は…やや青ざめた表情になっている。
「…有言実行とはこの事やね。 ホンマに、誰も起きてないんよ‥。」
にこと絵里の表情も希に感化されたのか、青ざめる。
そして、青ざめた中…にこは一つの疑問を思付いた。
「そ、そもそも…あんた、こんな事何時指示されたのよ!!」
「そう言えばそうね。 この会議室に着くまで、他の部屋に寄らず真っ直ぐ歩いてたけど…警部さんに会った時に渡されたの? 私と希とにこは2人の後を付いていったから、見えなかったし。」
そう、絵里の言う通り。啓と鷲尾が並んで歩いており、三娘は後を付いて来ていた。その際、他の部屋に寄らずに真っ直ぐ大会議室に入ったのだ。
「‥いや、その前だ。 …このスーツは誰が用意した。」
「えっ、そのスーツ? …確か、警察が用意したって言ってたわね。 …あっ、そう言えば!!」
にこは、ある言葉を思い出した。
”桐生君、そのスーツ似合っているな。 俺が選んだんだが…やはり、俺の目に狂いは無かったよ。”
※第47話 警視庁にて、矢澤家救出会議 ”前編”より
「そうよ、そうだわ…!! 選んだっていってたわ!!」
「そうだ。」
移動し、軽々と肩に警視総監を担ぐ。
「‥じゃあ、あんた最初から‥‥《警察》を”気絶”させるつもりでここに来たのね…!!」ドン!!!
「まあな。」
啓は腕組みをしながら答えた。
「流石にキレただけで、警視総監に覇王色の覇気を使わねぇよ。 理由も無しにな。」
「…まぁ確かに、俺は鷲尾さんに警視総監を気絶するようにメモで頼まれたがな…。」
「実際に警視総監を気絶させるのに俺は疑問を持ってた。いくら何でも唐突だったから余計にな。」
「だが、鷲尾さんが見せたあの”土下座”に‥俺は男の”決死の覚悟”を見聞色で感じた。 どうして、そこまでしなけりゃいけなかったかのかは分からねェが…。」
「男があんな土下座をすんのは、鷲尾さんの裏に深い事情がある筈だ。 だから、俺はそれに応じたまでだ。」
「それで、警視総監を気絶する事にしたのね…啓。」
「…ああ、そうだ。 さてと、鷲尾さん…そろそろ《本題》に入っていいッスか?」
啓は三人の警察関係者を見渡す。
「あんたが警視総監以外を気絶させるって事は”敵同士”って事なのか?」
「‥ああ、俺達は”敵対”している。 だから、頼んだ。」
「だったら、ワケを教えてくれ。 気絶させなけりゃならねェ理由と俺やにこ以外の2人が呼ばれた理由をよ。」
「ともかく時間がねェ…俺達に”必要な真実”を話してくれ。」
啓は、鷲尾警部のメモから警察を気絶する様に頼まれた。
だが、しかし…何故に警察のトップや他の警察関係者達を気絶させなければならなかったのか‥?
それを知らされてない啓と三娘はどうしても知る必要があった。
そして、2人がここに呼ばれた理由も然り…。
「‥ああ、そうだ。 今は何に於いても”明日”に備える事だな。 …よし、必要な真実を話そう。」
鷲尾は煙草に火を付け、少し一服すると理由を話し始める。
「俺が警視総監を気絶させた理由は…。」
「”国と転龍会の交渉”を止める為だ。」ドン!!!
「「「!!!」」」」
冊冊冊冊冊冊冊冊冊冊
♪Unrest
~警視庁”大会議室”~
鷲尾警部の言葉に、驚きの表情を晒す面々…。
そんな中、啓は一早く反応を示す。
「”転龍会との交渉”を止める…それが、警察を気絶させる理由なのか? 鷲尾さん。」
「そうだ、桐生。」
鷲尾は啓の言葉に頷いた。
「…じゃあ、今から私達に話すのはその《交渉》の内容なんですか?」
「ああ…それも入ってる。 それじゃあ、聞きたいことは質問してくれ。」
鷲尾は勿体ぶらず話を進めることにし、啓達に催促する…対して、同い年組はしっかりと肯定した。
「…さて、君達も周知の通り、国は転龍会を完全に恐れている。…国が恐れを抱く最大の理由は転龍会が非常に高い戦闘力を有しているからだ。」
「その戦闘力の高さは…こちらが手を出すどころか、
「どの事件も超人的な強さを持つ桐生が居なければ、μ’sは1人残らず連れ去られているといっても過言じゃない。」
「「「‥‥。」」」
鷲尾のこの言葉に何とも言えない表情になる三年生メンバー。現に啓が現地で戦わなければ、
「…だが、超人的な強さを持つ桐生が味方にいながら…俺達は矢澤家の面々を転龍会に人質として奪われる最悪の事態になった。」
「こうなってしまうと、いくら桐生が強くても…迂闊に手が出せる筈がない。
なにせ、彼女達の命は奴らに握られている。」
つまり、…啓を含めたμ’s側は現状、転龍会の言う事を絶対に聞かなければいけないのだ。
舌の根の乾かぬ内に、希は恐る恐る口を開いた。
「じゃあ…ウチらはやっぱり渡されるという事なんですか?」
希の言葉に皆緊張が走る。今の話通りなら…三娘共に渡される事は確定的だ。
「‥‥君達だけじゃないんだよ。
「「「!!!???」」」
「ど、どういう事ですか? 私達以外に渡される人達がいるんですか!?」
「そうだ…そして、今から話すのが本題だ。」
「もし…君達が転龍会に渡されるとしたら…誰が最も怒り、悲しむと思う?」
鷲尾は、三年生組を見渡し質問する。
「それはやっぱり‥‥私たちの家族。」
「まさか…!!」
「そうだ、国はμ’sの家族も転龍会へ渡す事に決定している。」ドン!!
「ええっ!?…そんなん無茶苦茶やんっ!?」
「そんな事…どうして渡す事なんてっ!?」
絵里が感情的に理由を問いだす。
そんな感情的な絵里とは対象に鷲尾は答えを導く。
「理由は情報漏洩を防ぐ為だ。 まず、転龍会との交渉自体が極秘事項。」
「‥その上で絶対にμ’sを渡さなければならない。 …だが、それに身内が最も反対するのは当たり前の話。」
「当然、国へ抗議する筈だ。 そうなると、他の人間にも知られてしまう。」
「つまり、大多数の人間に知られる事こそが、国にとって一番厄介だ。 μ’sを極悪組織に売ったとなると…国として重大すぎる責任を追及されてしまうからだ。」
「国の根幹に関わる御偉方はそれを避けたい。 その為に、非常事態宣言を国中に広めたんだ。」
「非常事態宣言が発令されているのは、皆知っているな?」
「はい、知ってます。…それも情報を漏らさない様にするためですか?」
「その通り、今街がゴーストタウンの様に静まり返っているのは、被害を出さない様にする為ではなく…。」
「東京港で行われる交渉を目撃するであろう人間を限りなく”ゼロ”にする為だ。」ドン!!
「「「!!!」」」
「今の世の中、簡単に情報が行き来する時代だが…それは現地の人間が情報を発信しなければまず知られる事はない。」
「だからこそ、東京港を中心に一切立ち入り禁止にし、交渉を進めていくわけだ。」
鷲尾は一旦中断すると、飲水した。
「ちょっといいか? 鷲尾さん。」
それまで聴いていた啓が質問を投げた。
「なんだ?」
「国が転龍会と交渉しようとするのは分かった。」
「…だがよ。その交渉自体がこっちの都合だろ。金剛山の野郎はμ’sを連れてきて、俺と闘えと言っただけだぜ。」
「それに
「交渉自体…俺は奴らが納得すると思えねェ。 奴らの目的はμ’sだ…μ’sの家族は眼中にねぇ筈だ。」
止め止めなく出てくる啓の言葉。そして、極めの一言。
「ハーレムを築こうとする奴らに‥‥
「…。」
転龍会の目的は、μ’sを手に入れる事は間違いない。だから、国は奴らの望む通りにμ’sを渡す事を決めている。
だが、μ’sの家族を手に入れるとは一言も発して無い。
もし、欲しくも微塵に思わないものを渡されたとしたら、あの凶暴な連中を速攻でキレさせる事になる。
「…いや、1人だけ交渉に適している男がいる。それが分かってる上で、国は交渉を進めようとしていた。」
「1人…? 誰なんだそいつは?」
啓の返答に鷲尾は指差しながら言った。
「お前だ、桐生。」ドン!!
「「「「!!!???」」」」
「俺が交渉をするだとッ…。」
冊冊冊冊冊冊
場内の空気は一気に核心に向かおうとしていた。
鷲尾達と啓の連携で、警察関係者を総気絶。
国と転龍会の交渉。隠蔽工作。
…そして、その交渉の鍵を握る人物こそ。
”啓自身”であった。
「国と転龍会の交渉を成功させるには‥‥ズバリその交渉内容を勧める”交渉人”こそが重要なんだ。」
「いくら、腕利きの交渉人を呼んだとしても…奴らを眼の前にして、一切ビビらない人物。」
「そう、相手に気絶させられない人物をな‥。」
「き、”気絶されない人物”…? それって、啓の。」
「”覇王色の覇気”か…。」ドン!!
「そうか、覇王色の覇気というのが…お前の力の一つなのか、桐生。」
「鷲尾さん、アンタは‥俺の力に気付いてたのか?」
「手紙に俺の力を使えと書いてあったからな。」
「ああ、今思えば違和感があったのは…お前と初めて会った高速道路の時だ。」
「あの時、お前は戦闘機を落とすどころか…パイロットと戦闘機を無傷で落としていた。」
木ノ内「ああ、俺もそれには違和感があったもんだ。」
木ノ内も賛同する。
「俺が搭乗したあの戦闘機には無傷そのものだった。それでいて、パイロットも無傷。 なにか、道具を使った訳でも無いし…あの一瞬で、両方とも無傷に終わらせるなんてあり得んからな。」
「だから、俺としては桐生自身に何か力が備わっていると考えた。」
「おう、その通りだ…木ノ内。 俺自身も転龍会がヤバいと思う一つの要因が、桐生の言う”覇王色の覇気の存在”だ。」
「今までの事件…その力は遺憾なく発揮された筈だ。 ライブ会場の客や昨日の避難場所しかり、俺達自身も外傷がある訳でもないのに気絶してたからな。」
覇王色の覇気はノーモーションで、労せずして大多数の人間の意識を奪う事が出来る力。この力こそが、国にとっても最悪の力であった。
「
「…それで俺が選ばれたのか?」
「ああ…警視総監はこの後、君に交渉人になって貰う事を説得するつもりだった。」
「前途の通り、君しか闘えないという事になる。まして、人質を取られている中…君より強い連中がまだ多く残っている筈だ。」
「俺より強い連中…確かにそうだ。」
啓の脳内には、幾人かの強者の顔が想起される。
「警視総監は将棋が趣味でね…。 君は将棋でいう”龍”という駒だと俺に言っていた。」
「俺が”龍”?」
「龍という駒は飛車から成る最強の駒だ。 全方向を移動できる。」
「言い換えれば、警察やμ’sにとっての”最高戦力”という事にもなる。…だがな、警視総監はそれに加えてこうも述べていた。」
「いくら”龍”が最強でも‥一駒では”将棋”にはならない。」ドン!!
「君がいくら強くても、独りでは限界が来る。 それを国は交渉をしようと考えた。」
「そして、考えついた。 龍を闘わせるのでなく…女神達と共に。」
「転龍会の一員として、渡すことをなッ!!」ドン!!
「「「「はぁっ!!!???」」」」
「えっ…啓をあいつらの仲間にするんですか?」
にこは慌ててふためいていた。まさか、啓を渡すと思う筈が無いのだ。
「えげつないわぁ…。」
「”桐生”という男を交渉人として、そして”日本最高戦力”として転龍会に渡すのが…。」
「この国の最大の秘策。」
「金剛山との闘いに勝っても負けても、交渉に応じさせるには…桐生自身を売り込む必要がある。」
「桐生はまだまだ強くなる。それは闘った転龍会が良く分かっている筈。」
「かなりの確率で喰いつく。 そうなると、交渉開始になるというのが…。」
「
席から立つ鷲尾。
「「「あれっ?」」」
急に話が終わってしまい、釈然としない三娘。と同時に、話が話の為に少しばかりの疲労感を覚えた。
「あの…今ので話が終わったんですか?」
「ああ、そうだ。 さっき桐生が警視総監を気絶させた時点で、国の策は失敗に終わったからな。失敗した話をこれ以上話しても仕方ない。」
「そういえば…ウチらがここに連れてこられたそもそもの理由って。」
「…それは君達が三年生メンバーで、両親が近くに居なかったからだ。」
「μ’sの活動の時は、メンバー全体でなにかしら決めていたと思うが…こういった
「要は年長者である君達が交渉に応じれば、他の1,2年生メンバーも続いて応じやすいと考えた。」
「そして、矢澤さんは言わずもがな、綾瀬さんや東條さんも両親が近くにいないから、上手く抱き込みやすかったからだよ。」
「‥そうだったんですか。」
三年生メンバーが連れて来られた理由が分かったところで、啓が質問した。
「鷲尾さん。」
「‥んっ、なんだ?」
「アンタは、警察でありながら国のやる事を裏切った。 どうして、行動に移してまで…。」
「簡単だ。国の策には決定的な失敗があったからさ。」
「”決定的な失敗”‥。」
「答えは簡単だ。
「!!」
「俺は奴らがお前とμ’sを手に入れたとしても、そこで犯罪を辞める筈が無いと確信してる。 終われば、次の”ターゲット”に変わって襲うだけだ。」
「そして、新たに戦力としてお前自身も出す。 言う事を聞かせる為に、μ’sの命を懸けてな。」
「結局、転龍会を止めるどころか、手助けする最悪の形になる…。」
「アンタ、そこまで考えてたのか。」
…この男はそこまで考えていたのか。自分の心が少し熱くなるのが分かる。
「…俺は只考えるしか出来ない。 本当に闘ってくれるのはお前だからな。」
鷲尾は啓の前面に、手を伸ばした。
「彼女達の命を守る為には、お前の力が要る。 力を貸してくれ、桐生!!」ドン!!
「当たり前だ…だから、俺は此処にいる。」ドン!!
啓は、鷲尾の手を力強く握り、互いに握手を交わした。
全ては護りたい人達の為に…男達は、決意の重みをまた一つ重くするのであった。
「ねぇ、啓っ!!」
声を上げたのは、にこであった。
「どうした?」
「国の事は今は置いとくとして、肝心なのは”明日”じゃない…。 それが分からないんじゃ、私達安心なんて出来ないわよ。」
にこの言う通り、国の策が”おじゃん”になった以上…明日の東京港での一件は、必然的に彼らの肩に掛かる事になる。
そんな不安なにこに対して、龍は臆せず返答する。
「不安がるな。 …”作戦”を考えた。」
「「「作戦…?」」」
一同に、声を上げる三娘。
「作戦って、あんた考えてたの? 意外ね…。」
「おい、意外ッて言うな。 俺は昨日から考えてたんだ、明日の事をな。」
啓はにこの口ぶりに、反抗しつつ切り出した。
絵里や希がその事を気になり、啓を急かす。
「ねぇ、早う教えてよ、啓君。」
「どんな作戦を考えたの?」
「おう、教えてやる…。」
そう言うと、啓は作戦の首尾を皆に伝えるのであった。
‥‥数十分後。
「ハラショー…随分、凝った作戦ね。」
「けど、まさか…そんな”弱点”があるなんて。」
絵里と希は感心した声を出す。
「でも、啓…あんた無茶しちゃダメよ。」
にこは、心配した声色を出す。
「任せとけ…にこ。」
啓はサムズアップを繰り出す。
「そうだ、にこ、希、絵里。 ここじゃあ、心配だから…俺に着いてきてくれ。」
「何処か行くの?」
「ああ、他のμ’sだ。 穂乃果達が俺には心配だ。」
今此処に居ない、μ’sメンバーの安否が啓達は心配なのだ。
(それに堅物野郎の言った言葉が気掛かりだ。)
”護りきれん貴様の代わりにあの《お二方》が護ってくれるそうだがな…。”
金剛山が別れ目にあったこの言葉が今の啓にとって、気掛かりだった。
「‥確かに、穂乃果達が心配だわ。」
「そうだろ? 此処に残って貰ったとしても、他の阿保共が襲ってくるからもしんねェ。」
「だから、お前ら…何があっても俺の傍にいろ。 遠くに行かれたら、護れなくなる。」
「分かったわ。 じゃあお願いね、啓。」
そう言い、三娘は啓の後を付いていくことにした。
「先ずは穂乃果の家だな、確か…ことりや海未も家が近いんだな?」
「ええ、3人とも家からそんなに離れていないわ。」
「よし、3人の家を目指そう。」
「じゃあ、俺が送ろう。 どっちにしろ、運転手がいるからな。」
「頼むぜ、隊長。 鷲尾さんも準備を急いでくれ。」
「ああ、今柿谷が離れて用意してくれているそうだ。 さぁ、早く行ってこい。」
”b”
啓達は、そういい穂乃果達の家を目指した。
それを見終わった後、鷲尾は未だに倒れている大門寺に近づいた。
「アンタの気持ちも分かるよ。 けど、上の連中に逆らえないんだろ? 責任のある人間はいつだってなにかしら求められるんだからな。」
「まぁ…結局、アンタらの策は失敗に終わったがな。 それでお終いの話なんだが、続きがあるんだ。」
(さっき、桐生が話してたんだけどよ‥。)
”鷲尾さん、俺は国がやった事はムカつきはするが、責める事はしねぇ。”
”どうしてだ? 国はお前やμ’sとその家族を売ろうとしたんだぞ。”
”だが、それは他の国民を護る為だろ? 理由がどうあれ、国が国自身と国民を護るのは当たりめェだ。”
”国があんな馬鹿な事をしようとしたのは、転龍会っていう敵がいたからだ。 相手が悪魔なら、こっちも心を鬼にしなきゃならなかった。”
”悪魔の様な敵の存在が、国に馬鹿な事をしでかそうとした。 敵を無くす為に人は冷たくなれる。”
”…敵か。”
”そうだ。 敵の存在が人にバカな事をさせるなら、先ずは敵を絶滅させて、その後で馬鹿な事を正してやる。”
”それをやるのが俺だ。 頼れる人間が今は居ない以上、俺がやる。 ”
啓は左上腕の赤きバンダナを力強く見た。
”駒一つでも、龍は龍だ…。 一匹の力を思い知らせてやるぜ。”ドン!!
転生の龍は気合いの入った声で発した。
…会議室。
「‥‥。」
鷲尾は、煙草を一服した。
”フゥ~‥‥。”
「一匹の力…だが、龍一匹。」
「だが、おめえの生き方は”長生き”しねぇぞ…。」
「死ぬなよ、桐生。」
鷲尾は独り呟いた。
時間は正午をとうに周り、日光が静まり返った都市をどこか元気なく照らす。
それは街がまるで意思を持ち、これからの行く末を不安がるかのように‥‥。
続く…。
啓は鷲尾警部と裏で繋がっていたんですね。 だから、覇王色の覇気を発し国の策を失敗させた訳です。
そして、国の策がおじゃんになり…啓の策とは?
不安を抱え‥啓達は一路、穂乃果の家へ向かう。
次回、第50話 狙われた”太陽一家” 次回も乞うご期待b