新次元ゲイムネプテューヌVⅡ SSRと言う名のG(凍結)   作:藤和木 士

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どうも、皆様お元気でしょうか。現在社会の波にのまれてストレスもたまり始めている、藤和木弘です\(^o^)/

ジャンヌ「本当ですよね。でも少しずつですが成長している藤和木もいいですっ!どうも、皆様。ジャンヌ・ドラニエスですっ」

レイ「そしてバトスピにも新たな環境と情報到着!藤和木も日曜日が休みになったから心が躍ってるよっ!どうも、みんな!レイ・オーバだよっ」

とりあえずこれ書けたら即詩姫プレミアムボックスの購入ボタンぽちっとしにいく。というわけで第153話の更新です。

レイ「あー、確か先週はノワールちゃんの服を舐めた変態兵士がいたよね」

ジャンヌ「もしレイさんの服を舐めていたら、悪・即・滅していましたっ。わたくしも藤和木以外にされるのは嫌ですっ!……藤和木でも恥ずかしいですけれど……///」

さて、それではそろそろ本編へ!あ、あとあとがきで重要発表があるので最後まで見ていただけると助かります。


第153話 白い猫と危機一髪

 

 

 道中のモンスターを倒しながら、ノワール、理恵、真奈の3人は西風の吹く渓谷を進んでいた。いくら山道とはいえ、ここはダンジョン。モンスターとの接敵はある程度は覚悟しなければならなかった。加えて、今ここ一帯を捜索しているラステイション国防軍の監視の目を潜りながら行動するのはなかなか大変なことであった。

 だが、彼女らも伊達にいくつもの戦いを潜り抜けてきたわけではない。モンスターとの戦闘を行いつつも、あまり派手に音が上がらないようにしつつ、周囲への警戒を強めて国防軍の追っ手から逃れていた。今もまた、道を塞ぐモンスターとの戦闘の最中だった。

 

「ノワール様、理恵、今っ!」

 

「えぇ」

 

「了解」

 

 真奈の持つレーザーガンの連射弾が、タワーのように積み重なる岩を殻とする「メカドラワター」と「ヒヨコ虫」の動きを止める。攻撃を受けた反動で鈍った2体のモンスターにノワールと理恵の2人が持つ片手剣、そして黄金と黒の剣「聖魔剣デュランダル」が振り抜かれる。片手剣の鋭い一撃と、聖魔剣の一刀はそれぞれモンスターに直撃し、モンスターを斬った後から光の粒子と血が噴き出す。吹き出した血は地面に付くもすぐに乾いていく。そして斬られたモンスターの体は地面へと体を付けたのち、消滅する。

 モンスターとの戦闘が終わると、3人はそれぞれ武器を収納する。ノワールと理恵の剣は光となって消滅し、真奈のレーザーガンはジャケットを開いた内側に備えられたホルスターにしまい込む。

 うん、モンスターとの戦闘も大変だなぁ、と私は思う。あまりガンダムは使えない関係で、私達は生身で使用できる武器を使っている。そのため、どうしてもモンスターとの戦闘に掛かる時間が多くなる。先を急ぐノワール様のためにも早く抜けたいところだけど、そうもいかない。だって、ガンダムで戦闘を行えば、2つの点ですぐさま国防軍が駆けつけるかもしれないんだから。

 真奈の挙げる、ガンダムになれない2つの理由とは「戦闘規模」と「AN粒子の特性」によるものであった。まず1つ目の戦闘規模は、言うまでもなくガンダム、MPとNPが起こす戦闘が大きすぎることだ。実弾や格闘兵装はともかくとしても、大出力ビームを主兵装とする理恵と真奈のガンダムはこういった隠密行動優先の作戦には向いていなかった。

 これ、本当なら悠達チームホワイトの領分だったほうが良かったんじゃないかなぁ。あっちのガンダムは白兵戦を主眼としてるガンダムばっかりだから、比較的この状況でも戦いやすいだろうし。……まぁ、こっちも一応「隠密に動く」ことが出来ないわけじゃないけどさ。とはいえ、それは1人でないと色々と難しい方法だから、2人をまとめて運んだりとかが出来ないんだよね。

 国の情勢を見てから判断しなかったのは迂闊だったと思う真奈。遠くから派手に暴れまわることを得意とする真奈達チームレッドのガンダムに、隠密行動を行いつつの敵との対決は難しいものであった。とはいえ、それは合流してようやく分かった事。ならば対応して見せるのが一流の装着者というもの。それに関しては真奈達も自覚していた。

 だが、そこに更にガンダム特有の問題がかかってくる。それこそが第2の理由、AN粒子の性質だ。AN粒子は、とあるガンダムの世界で機動兵器の動力機関として運用されている特殊粒子「GN粒子」のセントラルワールド版とも言える粒子である。その性質も似たところがあり、その中の1つに、粒子散布領域における、通信機器の電波遮断というものがあった。これは粒子の構成に電波に干渉するものがあり、それらのせいで使えなくなるというものだ。

 電波遮断による影響でレーダーもAN粒子発見前の物は使えないためこの世界でもおそらくその影響が強く出る。だが、それは逆に言えばレーダーでこちらの位置を知られないということも意味していた。ではなぜ、それが隠密行動に邪魔なのか。それは電波が使えないことを利用しての位置の特定が行われる、ということであった。

これは簡単に例えると、電波が使えない地域があるということは、そこにガンダムがいるということを逆に証明する確証ともなりえる。電波をかく乱されると、その近くを高速で動く物の動きは見えないが、遠くならばその領域がどこまで伸びているのかを調べれば、そこには目的のMP・NPがいるということを自然と教えてくれる。こういったものの応用として、GN粒子があった世界では双方向の通信機能を持った端末を利用してのGN粒子運用組織の場所を掴み、攻撃を仕掛けたという実績があった。

 このような例があった以上、同じような性質を持つAN粒子を運用するのならばそれらを考慮して行動しなければならない。それらの例を知らないとしても、ラステイション国防軍がそれらに対し、同じような対策を取ってこないとも限らない。隠密に行動したいこちらとしても、なるべくガンダムで場所を探られたくはなかった。だからこそガンダムを使わず、生身での戦闘を行っていたのだ。

 しかし、最悪の事態に遭遇した場合、ガンダムを使わざるを得ない可能性はある。例えば、この世界で危険種とされるモンスターに対しては、ガンダムがなければ厳しいところもある。先程から転戦している最中にも危険種の1体である「フェンリル」と呼ばれる種族のモンスターの1種を見かけている。ノワールも女神化は出来るものの、その時間が限られている。ノワールが女神化しないといけない、かつ長引く戦闘では自分達もガンダムを使わなければならない。ともかく、ここを抜ける間に起こる戦闘だけは激しくないものを真奈、そして理恵は願っていた。

2人がそんなことを心の中で思っている中、モンスターを倒して後方の道を見たノワールが息をついてもうすぐ逃げられるのではないかということを言及する。

 

「……ふぅ。このあたりまで来れば大丈夫かしら」

 

 ノワールの言葉には、真奈達もそうでありたいと思った。だが、油断は禁物であるということを理恵が告げる。

 

「そうですね。でも、まだ油断していると……っ!」

 

 すると突然、葉っぱが擦れる音が響く。その音にひと段落しようとしていた3人も驚きを露わにする。

 

「!?見つかった!?」

 

「嘘っ!?」

 

「ノワール様、下がっ……て?」

 

 最初はまたラステイション国防軍の兵士達が物陰から襲ってきたのかと、大きく身構える3人。だが、茂みから現れた物を見た途端、近いところにいた人物達の顔から緊張の表情が薄れていく。

 というのも、茂みから現れたのは、兵士ではなく……。

 

 

 

 

「なー……」

 

 

 

 

 和らげな声で鳴く、純白の毛並みを揃えた1匹の子猫だったのだから。こちらに顔を出した子猫は、そのまま茂みからその体全てをこちらに見せる。それによりようやく真奈達も緊張を解く。

 

「な、こ、子猫……」

 

「驚いた。てっきり敵かと思った……」

 

「本当ね。……もう、脅かさないでちょうだい」

 

 ノワール様の言葉はもっともだ。先程まで一切殺気とかも感じずにいきなり音がしたから、本当に暗殺部隊とか、特殊部隊がノワール様を狙いに来たのかと思っちゃったなぁ。けれど、こんなところに子猫なんて、ちょっと珍しいかも。

 完全に警戒心を解いた3人に対し、その子猫は恐れることなくノワールの下へと近づいていく。

 

「なーなー……」

 

 まるで、自分達に対し、何をやっているのかと聞くかのように、鳴き声を発してノワールの足元までやってくる子猫。しかし、見たところ危険そうでもないので、理恵と真奈もその様子を傍観する。一方、自分の元までやって来た子猫に対し、ノワールは優しく声をかける。

 

「あなたはこんなところで何やってるの。もしかして迷子?」

 

 一部の人が見れば「猫と会話するなんてナンセンス」だったり「ロマンチスト」と言われそうな光景ではあったが、理恵と真奈はそんなことなく、その光景を微笑ましく見ていた。ノワールも緊張の連続であったので、少しくらい気を抜く時間があってもいいと思っての事だった。しかしながら、理恵の方は周囲の方に少し警戒を張っていた。それを感じ取ったのか、ノワールの手にじゃれついていた猫が不安そうな声を出す。

 

「なー。……なー?」

 

「理恵、少し気を張り過ぎじゃない?」

 

「真奈……分かった」

 

 真奈からの言葉を受けて、少し殺気を収める理恵。それにより、猫の方も落ち着いた様子でノワールの手にじゃれついていく。理恵の事については聞こえていなかったノワールは、そのまま猫の反応に対し心中を加えて話しかけていく。

 

「んー?そうか、そうか迷子か。実は私も迷子なんだ……」

 

「なー」

 

「……あなただけよ、こんな不条理な世界で、優しく語りかけてくれるのは……。……あれ、何でだろう、急に、涙が……」

 

 迷子と涙と言う言葉に、見ていた真奈は少し負い目を感じる。

 そうだ、もし私達があの場で助けていたなら、ノワール様もユニちゃんと別れることはなかった。本当は私達も2人を助けた方がいいのではと思っていた。いや、正確には、私は助けようとしていた。けれど助けるためにビルの上から飛び出そうとしていたのを、理恵が止めた。理恵は小声で「今出て行ったら、私達も逮捕される。それに無暗に別世界の中で行動するのは世界の秩序が乱れる可能性がある。それは次元世界への過度な干渉を禁止するGKSWAXPには許されない」と諭した。

 2つの状況は、私達にとって避けなければいけない。まさかSSRのマスターとしては先輩な私が、後輩の理恵に諭されるなんて思わなかったけど。でも、あの状況でも冷静に状況を見られるのはすごいと思う。……ん?

 と、そこで真奈は理恵の手元を見る。その視線の先で理恵はノワールに見えないようにしながら拳を固く握りしめていた。更に顔を見ると、その表情はうっすらとながらもどこか暗く見えた。

 ……そっか。理恵も同じ気持ちなんだね。もしかすると、あの時も心の中で迷ってたのかも……。

 理恵の気持ちを察して、真奈は静かに微笑む。彼女のためにもそして、ノワールのためにも本人には黙っておこうと決める。

 そして、ノワールの方の気持ちにも共鳴したのか、子猫が首を傾げて鳴く。

 

「なー?」

 

「ノワール様……」

 

 まるで、どうしたの?と聞くような声のかけ方だと思った。そんな声に続けて理恵も不安になって声をかける。それらの声にノワールも目元を拭って、言い聞かせるように大丈夫だと答える。

 

「……大丈夫よ。大丈夫、女神だもの。大丈夫よ。だから、あなたも心配しないで、って言ってもわからないか。理恵も真奈も、私は大丈夫だから……ただ、少しの間、これからすることは見なかったことにして?」

 

「見なかったことに……?」

 

「……分かりました。見なかったことにしますので、どうぞ」

 

 理恵はノワールからの発言に疑問符を浮かべていたが、真奈は思い当たる物を見出し、遠慮なくと言葉を返した。

 決意をする前に見なかったことに、と言うのは大抵涙を流す流れだ。大きなものを失って、それでも前に進むために今その時だけは多くの涙を流したい、流さなければ、また同じような場面で泣いてしまい、周りの人を不安にさせてしまう。そういったドラマを見たり、そのような流れがあった世界に任務で行ったことがあったりしたため、よく覚えている。

 だからこそ、ノワールもこれ以上涙を流して、子猫はもとい自分達に迷惑を掛けないようにと涙を流そうとして言ったのだろう。真奈はそう思った。

 ……が、それは予想外の方向に事態が流れることとなった。2人に言ったのち、ノワールは子猫を抱く。そして、涙声が聞こえて――――

 

 

 

 

「にゃー、にゃにゃにゃー、にゃにゃ!」

 

 

 

 

 ……くることはなかった。代わりに聴こえてきたのは、ノワールの声の調子の高い猫の鳴き声のものまねである。簡単に言ってしまえば、ノワールは子猫に対し、猫の鳴きまねでコミュニケーションを図ろうとしていたのだ。

 普通なら、そんなことで猫の言葉が分かるわけはない。とはいえ、そのようなことをする人は少なかれいる。そういったものは大抵はおふざけ半分でやるのが当たり前だ。そして、おそらくノワールも、寂しい気持ちを上げるためにそのようにしているのだろう。だが、先程までの暗い感じからの移り変わり、そしてそれを勝手に感動的なシーンにしようとしていた真奈の妄想もあって、不意を突くのには十分すぎた。

 の、ノワール様もこういった一面があるんだなぁ……別の次元のゲイムギョウ界で、コスプレ好きっていうのは知ってたけど……やっぱり別次元の同じ人を見ると、こういったのもあって飽きることはないなー。あー、勝手に涙の出るシーンだと思ってた自分が恥ずかしい!けど、その様子が可愛いからもう少し見ていたい!

 心の中で盛り上がる真奈であったが、身体の方は反応が付いていけておらず、少し放心状態で口を半開きにしていた。

 

「………………」

 

「ねぇ、これって真奈が予測していたこと?」

 

 そんなところに理恵が尋ねてくる。放心状態だったこともあり反応に少し遅れ、慌てて真奈に言葉を返す。

 

「……へ!?え、あ……うん!やっぱ女の子って、不安になるとああいう風に誰かににゃんにゃんって言いたくなっちゃうものなのよ!」

 

 しかし、慌てながらの返答はところどころおかしな文章として口から出ていく。おそらく、記憶の戻った光樹あたり聞けば「へぇー……ニヤニヤ」と含み笑いと共に後々まで弄ってくるだろう。光樹が現時点で記憶を失っていたこと、そしてなにより、この場に光樹が居なかったことは幸いだった。

 とはいえ、その誤解のある解釈を、聞いていた理恵はそのまま納得する。

 

「へぇ……まぁ、それが普通なら止めはしないけれど」

 

 この誤解がそのままというのが少し怖いが、今はその様子を見守るのと辺りの警戒をするのが先だ。とはいえ、真奈の視線は未だ戯れるノワールと子猫の方に視線がいっていたが。

 

「なー、なー」

 

「にゃにゃにゃにゃー」

 

 ……流石にこんな姿、誰かに見られでもしたら……。そんな不安は、最悪の形でかなえられようとすることとなる。

 

「おい、今こっちで声がしなかったか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

「ひゃい!?」

 

「っ!真奈」

 

「う、うんっ!」

 

 真奈と呼吸を合わせて、ノワールと子猫を含めて、咄嗟に岩陰に隠れる3人と1匹。岩陰から除いた先に見えたのは、予測していた人物達。男の声を聞いた時に真っ先に思い浮かんだ人物達……そう、ラステイション国防軍の兵士達だった。

 危なかった……もう少し気づくのが遅かったら、確実に見つかってた。とはいえ、今もこの状況は少し危険なのは明白。ともかく、分かりやすい声を上げてくれたのだけは命拾い。

 岩陰で目標達が隠れているのも知らずに、兵士達は言葉を交わす。

 

「そうか?何も聞こえなかったと思うが。確認だけしてみるか」

 

 そう言いつつ、こちらの方にじりじりと近づいてくる兵士達。このままの流れだと、これは確実に戦闘になる。

 

「こっちに来る……」

 

「流石に戦闘は避けられないかもしれないわ。2人とも、ごめんなさい。私が迂闊で……」

 

「ノワール様は気にしないでください。注意が散漫になってた私達にも問題が……」

 

 岩陰で兵士達に聞こえない音量で謝罪し合う3人。しかし、その間にも兵士達が近づいてくるのを悟って、理恵が目を細めてその場を収める。

 

「覚悟は当に出来ています。とりあえず、私が先行して……」

 

 だが、指示が真奈に通達する前に、状況が動く。

 

「にゃー」

 

 唐突な鳴き声。それはノワールに抱えられていた子猫のものだった。鳴き声を上げると共に、子猫はノワールの抱きかかえから抜け出し、岩陰から出て行ったのだ。その行動に、ノワールも不意を突かれた様子で子猫を制止しようとする。

 

「あ、こら、ちょっと!今、出ていったら!」

 

 ノワールの言いたいことは分かる。今出て行けば確実に怪しまれる。まさか、こんなタイミングで子猫が出ていくなんて、理恵も思わなかった。

 不味い、まさか、あの猫はわざと?ってことは、あの猫は敵……!だとしたら、この場所もすぐに知らされる。それを避けようと私はレーザーガンによる狙撃を敢行しようとする。動物に銃を向けるなど、あってはならないことだけど、それでも今の状況が悪くなったら……。

 ところが、銃口を向けようとしたところで、子猫は岩による死角に隠れてしまう。もし今攻撃しようとするなら、確実に相手に身をさらすこととなってしまう。もう少し、早く動いていたなら。だが、結果的にそんなことをしなくても、問題ない、むしろ良かったものになろうとは思ってもなかった。

 突然岩陰から出てきた子猫に慌てて視線を向ける兵士達。

 

「ん、なんだ!?」

 

「なー」

 

 兵士達に怖気づくことなく、子猫はそのまま鳴いて見せる。すると、それを見た兵士が、何か声がしたと言った兵士に笑いながら先程の声の正体について触れる。

 

「おいおい、お前が聞いた声ってもしかしてこれじゃないのか?」

 

 よし、これは僥倖。相手は子猫が出てきたことで、逆に子猫が先程の声の主だと誤解している。さっきは焦ったけど、まさか子猫がこんな機転を利かせた行動を取ってくれるなんて。

 そして、声を聴いたという兵士も相方の兵士にため息交じりに子猫に対し文句を言う。

 

「みたいだな。全く、紛らわしいことしやがって。しっしっ、あっち行け」

 

「なー」

 

 その兵士の言葉に従うように、子猫はそのままこちらの岩陰近くまで後退する。子猫を見送ったところで、兵士達は元の目的であるノワールの捜索に戻っていく。

 

「向こうを探してみるぞ。そこまで遠くには行ってないはずだからな」

 

 その言葉を残し、兵士達は更に奥の方へと進んでいった。人気がなくなったところで、理恵達が息を大きく吐いて、逃れられたことを口にする。

 

「……行ったみたいね」

 

「ですね……危機一髪」

 

「本当本当。子猫ちゃんのおかげだね」

 

 真奈が示した子猫の方に目を向ける。出て行ったときはどうなることかと思ったが、結果的に助けられる形になった。いや、もしかすると、この子猫は自分達を助けるために出て行ったのかもしれないと感じた。ノワールがやっていたように猫語を話せれば子猫がどういう思考をしていたのか分かったかもしれない。

 一方、3人を助けた子猫はそんな緊張感溢れる状況だったのも知らずに、ノワールの元に再び寄っていく。

 

「なー」

 

「そうね。あなたのおかげで戦わずにすんだわ。ありがとう」

 

 ノワールも子猫にそんな言葉を掛けつつぎゅうっと抱きしめる。そんな様子は幸せのひと時だが、またこんなところで立ち止まっていたばかりに見つかった、なんてことになってしまえば、せっかくの子猫の働きも無駄になってしまう。理恵はノワールに先を急ぐことを勧める。

 

「ですが、ここにいつまでもいるのは危険です。今のうちに」

 

「ええ。彼らがいない隙にここを抜けないとね。2人とも、行くわよ?」

 

「はい!」

 

「了解」

 

 3人はその場から再び移動を開始しようとする。すると先程の子猫がまたその鳴き声を響かせる。

 

「なー」

 

「あ、子猫ちゃん、どうしたの?」

 

 真奈がしゃがみ込んで、子猫に対し尋ねる。当然ながら、相手は子猫であるため、言葉として返ってくることはありえない。しかし、鳴き方から大体の気持ちは分かるものだ。それはまるで、何処へ行くの?と聞くかのような声である。

 ノワールも子猫の方に体を向け、姿勢を少し低くして上から覗き込むような態勢で、子猫に声をかける。

 

「さて、私達はもう行くけど、あなたも一緒に行く?」

 

 理恵としては、本当ならあまり余計な物は付いてきてもらうと困る。特に子猫のような小動物は、特別なことがない限り、物理的にも、政治的にも強くはないからだ。しかしながら、この子猫は自分達を助けてくれた。それが意図的かどうかはともかくとして、そんな恩人ならぬ恩猫を無下に扱うことは出来ない。

 そしてなにより、付いて行く、連れていくを決めるのは理恵ではなく、子猫自身、そしてノワールである。ノワールからの問いに、子猫は喜びの鳴き声を聞かせてくる。

 

「なー!」

 

「そう。なら、一緒に行きましょ」

 

 ノワールの返事ののち、子猫はノワールの両腕の中に抱きかかえられる形で収まる。こうして、子猫も加えて逃走劇が再び開始されることになった。

 

 

TO BE CONTINUED

 




今回もお読みいただきありがとうございます。

レイ「白い猫ちゃんナイス!ノワールちゃんを助けちゃったよ!」

ジャンヌ「飛び出したときには理恵さんの思っていた通り、もうだめかと思いましたが……運がよかったですね」

まぁ、兵士の方も単純に鵜呑みにしたからこそだと思うけどね。……さてそれでは少し重要な話をしようかな。それは、しばらくSSRと言う名のGの投稿を休載します!
というのも、実は現在私、藤和木弘は小説の執筆に全く手が付いていません!

レイ「仕事が忙しすぎるんだよねー。帰ってきても風呂に入ってゲームを少ししてそれでねるっていうのが常習化しているし」

ジャンヌ「藤和木との甘い時間が減るのは少し寂しいです……。ということで、今回は次回予告が無いようです」

休載期間はとりあえず1か月をめどにします。その間に私の方も仕事の慣れと小説を書く時間のバランスをとれるようにしたいと思います。それでは、いつになるかはまだ分かりませんが、次回の投稿を気長に待っていただけると幸いです(´・ω・`)

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