死霊使いの従者   作:マサオ02

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十三位と十四位

「大変だぞ。決闘が始まるらしい」

「決闘? どうせトータス寮の落ち零れ男子共の喧嘩でしょ」

「いや、それがなんと手袋持ち同士が戦うらしいぜ」

「あの<螺旋槍(ジャベリン)>に挑む奴が現れたそうだぞ」

「マジかよ!? どこのどいつだ?」

「ついこないだ入って来た新入生だと。なんでも、編入試験でいきなり十四位に入った超新星らしいぜ」

「人形みたいに小さい女の子だってよ。派手なゴシックドレス着た」

「おまけに可愛いらしいぜ」

「ゴスロリの後輩美少女・・・やべえ萌える」

「ぺろぺろしたいよね」

「誰か警備員呼んできて。ここに変態がいます」

 

 学院内にある野戦演習場には見物人が集まっていた。

 お昼時であれば食事に来た生徒で賑わうのはいつものことだが、今日のはいつもよりも活気に満ちている。

 それもそのはず。今から手袋持ち同士の決闘が始まろうというのだからだ。厳しい勉強と魔術に没頭する日々において、こうした一時の娯楽に飛びつかない生徒はいない。

 演習場の中心には二人の生徒がいた。

 一人はドロシー。例の如く漆黒のドレスで着飾り尊大な態度を崩さない。小柄な体で懸命に見栄を張ろうとする様はどことなく微笑ましいと思える。

 対するは青い髪を伸ばした長身の青年であった。制服の上着を脱いで腕捲りをしている。袖の下から見える屈強な二の腕が逞しく、精悍な顔付きと相まって男らしさ溢れる印象の男子だ。

 右手には特徴的な長槍が握られている。柄の長さは二メートルを超え、先端の矛は一般的な刃物の形状とは異なり螺旋のような捻じれが入っている。突くも斬るも難しいであろう謎の形をした刃。一体どういった意味があるのか。

 

「逃げずに来たこと、まずは褒めといたげる。でも、今日であんたの地位も名声もおしまいよ」

「・・・地位や名声など我は知らん。だが、おしまいとはどういう意味だろうか」

 

 重厚のある声で青年がドロシーに尋ねる。

 

「決まってんでしょ。あんたに取って代わって私が<十三人>に入るって言ってんの」

「それは、我を倒すということだろうか」

「他にないじゃない。なに、そんな単純なことも分からないなんて脳味噌詰まってないんじゃないの。これだから男って嫌いなのよ。見た目や腕っ節だけでしか自分の能力を誇示できない猿ばっかり」

「よく分からんが、気分を害したのならば謝罪しよう」

「あら、案外しっかりしてーー」

「そんなに背丈の低さを気にしているとは思わなかった。我の身長はこの通り下げることも分けることもできん。貴殿には申し訳ないが、今度カルシウムの多い食材を差し入れするので許してはくれないだろうか」

「やっぱコロス。足元からうなじまで順に一頭身にバラしてやるから覚悟しなさい」

 

 一気にドロシーの沸点が跳ね上がった。

 挑発した青年(本人には挑発のつもりはまるでない)は、なぜ謝罪したのに相手がさらに怒っているのか分からずに首を傾げている。

 そんな彼女たちの様子を、見物人に混じって離れた位置から黒鵜が眺めていた。カトレアは用事があったのでの別宅へ残っている。付き添いで来たのは黒鵜一人だ。

 

「ドロシー、またつまらないことで冷静さを欠いてるよ。相手のペースに乗せられやすいところはあの子の悪い癖だな」

 

 黒鵜は立場上、勝手にドロシーの戦いへ口出しすることはできない。何より他人からの助言などプライドの高い彼女は聞き入れないだろう。

 

「ゲイザー・ロウ。学院内での成績は第十三位で<十三人>の末席にあたる男子。登録コードは〝薙ぎ落す螺旋槍(ブレイカージャベリン)”。自動人形ではなく魔術回路を搭載した槍を用いて自ら交戦する根っからの武闘派魔術師。調べがついたのはここまでだった」

 

 もっと時間があれば戦闘スタイルや能力の詳細も把握できたかもしれない。でも、待たされるのが嫌いなドロシーが我慢できるわけもなくさっさと決闘を仕掛けてしまった。

 

「無理はしないって言ってたけど、大丈夫かな」

 

 黒鵜が一末の不安を抱える中、戦いの火蓋は切って落とされた。

 

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