今回はあの2人
「ふざけんなぁ!」
カウンターに思いっきりグラスを叩きつける
割れるだろ!っと思ったが加減はしていたようだ
そしてうな垂れていた
彼は後醍醐天皇さん
かつて鎌倉幕府を倒し天皇中心の国にしようとした人
しようとした、だからまぁ察してあげてください
「俺は倒幕したんだぞこんにゃろ!なんで....なんで...幕末のあいつらより人気ないの?」
「......」
なんとも言えない
だって幕末は歴史好きにはたまらないものだ
英雄と呼ばれた人たちがそれぞれ思いを持って駆け抜けた
だからこそかがやいていた
「なぁ....マスター、建武の新政って知名度低くない?」
「いや、そんなことは.....教科書には載ってますし」
「内容は?」
「確か楠木さんや新田さん、そして足利さん達と共に鎌倉幕府を
倒した後に興した天皇中心政治です」
「マ、マスタァァ....」
後はどうなったか敢えて言うまい
天皇中心すぎて武士からブーブー言われたのだ
怒らせると手をつけられなくなる人達だ
「さっきググったら 建武の新政 失敗の理由 とか上がって萎えた」
「まぁ、貴族を優遇しすぎただけだと思いますよ」
武士の土地を貴族に上げたらそりゃ怒るでしょう
家に帰ったら知らない人の家になってるのと同じだ
「マジなんなんだよあの脳筋共!反乱なんかしやがって!」
さっきから口悪いなこの人
一応天皇の筈だが......
いや、酒のせいだな
建武の親政は約2年半続いた
短い、とても短い、何も出来ない
歴史の教科書でも一行チラッと書いてあるくらいだ
高校ではしっかりやるが
脳筋共とは多分足利尊氏さん一派だろう
倒幕成功したら土地を上げると言われ協力したが
いざ終わってみれば公家達に上げすぎてもう土地がなかった
これにより不満が高まった
また、征夷大将軍の位を武士に授けなかった事もあり
不満が爆発寸前となった
いや、既に爆発していたのだろう
「気付けばタイマン張れる力をつけたんですよね」
「あれは驚いた、マジかよって素直に思った」
関東で鎌倉幕府執権だった北条家の子、北条時行が関東で反乱を起こした時、弟である足利直義さんが鎮めに行ったが負けてしまった
それで、自分が征夷大将軍として行こうと天皇に直訴した尊氏さん
しかし天皇の答えはノーであった
あぁそうですか、わかりましたよ!
そう言わんばかりに怒っていた
そして怒ったまま関東に行ってしまった
この時一緒に反天皇の武士が付いて行った
「ふぁ!ワレ天皇やぞ?ワレ天皇やぞ?っと当時は思った」
「弟見殺しには出来んだろ」
聞きなれない声だった
いつの間にか後醍醐天皇の横の椅子に座り水をグラスで飲む男
ギラギラの目つきは肉食系男子を彷彿とさせる
顔立ちも悪くなく一部の女子から需要がありそうだ
その人は足利尊氏さんだった
「おま....尊氏!」
「久しぶりだな、後醍醐天皇」
尊氏さんはそう言うとニカっと笑う
この表現がよく似合うほど純粋に笑う
それに対し後醍醐天皇は顔を歪ませている
引き攣ったままの顔で適当に頷いている
「俺らだって生活かかってるんだよ、土地くれないと仕事やっていけない」
「とんだブラック企業だったよ、完全に派遣社員扱いだった」
「......申し訳ない」
平謝りだった
カウンターに突っ伏しごめんなさいとお経のように唱えている
さっきまでの威勢はどこえやら
「だって....だって、天皇中心の国造りにしたかったもん!」
「いや、それもう何年前だと思ってるんだよ、時代の流れだ」
鎌倉幕府も武家中心の国造りだった
平安時代後期から鎌倉後期までかその期間
となるとやはり時代の流れは武家中心になる
実際応仁からまた武家中心になる
平安時代も天皇中心だった
平安時代が天皇中心だったから遡ればどれくらいだろう.....
えっと、1000年だから300年前になる
現代で計算すれば300年前は江戸時代
将軍中心にしようとするのと同じか、無理がある
「頑張ったもん、天皇頑張ったもん、皆が喜ぶ様に」
「公家は喜んだな」
冷静な指摘
淡々と針を刺すように発する一言一言に後醍醐天皇さんがぐったりしてきた
「やめてくれ、マジで」
「ハッハッハッハッハッハッ、武家の恨みだ」
「うるせえ裏切り者」
「そっくりそのまま返そう、ブラック企業」
ヒートアップして立ち上がる
この下り前に見ました
「俺らがいないと倒幕なんかできなかっただろう!」
「はぁ?できてるしー、天皇パワー使って武士ホイホイだ」
「それで負けてますしおすし」
「むむむ....」
「何がむむむだ!」
後醍醐天皇は一回倒幕運動して失敗してたっけ
これを元弘の乱という
罰は島流し、承久の乱の後鳥羽上皇と同じだ
「隠岐の島のバカンス楽しかったですか?」
「黙れ田舎侍」
「ふぁーww北の朝廷に逆らうのか?」
「上等だ、エセ天皇のいる朝廷など一捻りだ」
その後は朝廷が分断した
尊氏さんら北の朝廷(京都)
後醍醐天皇の南の朝廷(奈良)
この時代を南北朝時代と言う
「もう終わってませんか?」
決着だのもうついている
終わっているのだ
「「ですよねー」」
2人は顔を天に向け気の抜けた声で言った
「俺の孫の義光が統一しました、わっしょい」
「わっしょいわっしょい、金閣寺わっしょい」
だめだ、何かリミッターらしきものが外れた
わっしょい祭りだ
「銀閣寺地味だな、8代目は何か質素だな」
「徳川のところも8代目は質素生活してたもんな」
「質素生活wwどこぞの無人島番組ww」
「「ハッハッハッハッハッハッ」」
さっきまでの殺気はどこえやら
笑い声がBARに響く
お互い肩を叩き大笑いだ
「いやーまぁそれにしてもな」
「なんだ急に声のトーンおとして」
後醍醐天皇は尊氏さんの顔を覗き込んだ
尊氏さんは染み染みと噛みしめる様に言った
「天皇の建武の親政さ、もっと見てみたかった」
「え.....?」
顔が驚きを隠せない様子
それを尻目に淡々と尊氏さんは言う
「やっぱり天皇は日本の歴史になくてはならないし、
何よりあなたのその倒幕の熱意が好きだった」
「そうか.....尊氏....こちらこそすまんかった」
こうして和解した
長い歴史でいがみあった2人はてをとりあった
ことはない
「なーんて言うか!返せ!倒幕の時間返せコンニャロー!」
「こちらこそ返せ!感動した時間返せ」
天皇は尊氏さんにつかみかかる
負けじと尊氏さんは天皇の耳を引っ張る
あぁ、泣けそうだったのに
でもこの2人が倒幕という同じ目標があった時は
背中を託せる仲間だったのだろう
背中を託すか.....
かっこいいな、単純にそう思えた
天皇ごめんなさい
本当にごめんなさい