真・女神異聞録 ペルソナ -Wild of Shadow- 作:日陰。
地べたに盛られた黒い固まりの上を真新しいスニーカーが通り過ぎていく。
「ぅぐっ...」
足元から感じる不快感に、男は小さく呻き声を漏らす。
一瞬立ち止まったものの、チラリと後ろを振り返るとすぐ様走り出した。
視界の端に映る水溜まりはまるで血のように紅く。周囲の闇と混ざりあい、グロテスクな様相を己に魅せつけている。遠くに見える鉄塔は黒く塗り潰され、まるで影絵のようで立体感が無く。人の気配が感じられない。
『一寸先は闇』
ことわざや比喩表現ではない。本物の闇に覆われ、自分が何処に向かっているかもわからないまま、男は走り続ける。何者かに追い立てられるように…
「はぁっ はぁっ」
長時間走っていたため男の息が段々と荒くなっていき、限界が近づいた時、逃げていた男の足が止まる。
注意深くあたりを見回し、自分を追いかけていたナニカが居ないのを確認すると、大きく息を吐き出した。
〈ピシャリ〉
-…‼
一息ついて油断したのか。一瞬気が抜けたと同時、後方の血だまりをなにかが踏み抜いた。
急いで走り出そうとするが、肩を掴まれ挙動を止められる。相手の腕を外そうと振り向いた先には…
-金色の瞳を輝かせ、こちらを覗き込む自分と目があった。
「…うわぁっ‼」
勢いよく飛び起きた俺は、ドキドキと暴れる胸を押さえつける。
数年前から同じ内容の悪夢を見始めた、以前は月に一度見るかどうかだったが。
次第に頻度が増していき、今ではほぼ毎日見るようになった。
こんな調子では身体的に休めても、精神的に参ってしまう。
未だ精神を病んでいないのは、前世の記憶があるおかげだろうか。
朝から多少重くなった頭に手を当てながら、のそのそとベッドから起き上がった。
「あら、おはよう 大きい声が聞こえたけど大丈夫?」
1階からリビングに降りると、先ほどの声が聞こえたのか母親が心配そうに声を掛けてくる。
「う、うん。大丈夫だよありがとう」
心配させまいと声を繕うが自信がない。
-俺は今上手に笑えてるだろうか?
朝から集団登校なんて、疲れるイベントを乗り越えた俺は。
授業が始まり騒がしくなった教室の中で暇を持て余していた。
端から見ると小学生なんてものは、楽でいいかもしれないが。
いざ当事者になると苦悩することが大半だ。
なにより授業がつまらない。
担任である竹内先生が黒板に数式を書いて。説明らしきものをしているが、俺はすべて聞き流していた。
2ケタや3ケタの足し算引き算なんぞすんなり解けてしまう。
有名所ではないにしても、そこそこのランクの大学に通っていたのだ。
今更小学生の授業なんて簡単すぎてあくびが出てしまう。
そんな心の葛藤をまとめて溜息と一緒に吐き出すと、退屈そうに窓の外を眺めるのであった。
* * *
今日も一日退屈な学校を乗り越えた俺は。とある場所に向かっていた。
『メシア教会龍箕支部』
そう、〈あの〉メシア教である。最初見つけた時はかなりびっくりした。
なんせとある世界で日本の首都にミサイルを撃ち込んで崩壊させた集団なのだ。
警戒するなと言う方が無理だ。だがいざ足を踏み入れるとそうでもなく、
常識人な神父さんが常駐する普通の教会だった。
(メシア教会本部は分からないが末端はマトモなようだ)
そうこうしてるうちに教会前へとたどり着くと、勝手知ったる家とばかりに揚々と足を運ばせるのであった。
「ようこそメシア教会へ…ってなんだ君か」
「なんだとはひどいじゃないですか高杉さん」
豪快に開け放たれている扉をくぐると。青と白2色で飾られた教団服を身に着けた男性が歩いてくる。
彼の名は 高杉 慶介(たかすぎ けいすけ)この小さな教会の神父である。
「僕は前々から神父を付けろと言ってるだろう明君」
「わかりました高杉さん」
「いや、だからさ… 全くどうして君はそう素直になれないのかね?
目上の人には敬意を払うものだよ普通は」
「なに言ってるんですか。僕はちゃんと〈さん〉付けで呼んでいるじゃないですか」
思えば俺も慣れたものだ、メシア教という単語でびくびくしていた昔とは違い。今ではすっかりこの調子である。
「その敬意はうれしいけどね。一応僕はこの教会の司祭なんだ、出来れば神父って呼んでほしいね」
「それこそメシア教徒でもない僕に、そっちの理屈押し付けないで下さいよ。
それに高杉さん見てるとどうしても、神父って感じに見えないんですよね。」
「うん?それは少し心外だなぁ。こうみえても僕は昔、名の知れたテンプルナ…
ごほっ神の使徒として迷える子羊達を導いてきたものだよ。」
なにやら危ない単語が聞こえてきたがスルーしよう、〈深く踏み込んではいけない気がする〉。
「そんなことよりカレンさん居ますか?」
「あぁ、いつものあれかい?カレン君なら奥の談話室にいるよ。
ほんとは教会内部に部外者を入れちゃダメなんだけどね」
肩を竦めつつもこちらの問いに答えてくれるあたり、一応の信頼は築けているようだ。
「毎度すみません、今日もお邪魔します」
「いやいいんだよ、目の前に救うべき子羊がいるなら、手を差し伸べるのが僕の仕事だ。
それに、僕は柔軟な神の使徒だからね。本国の連中みたいに〈異教徒〉は
ダメだなんて固いこと言わないさ」
こちらに向けウインクをしながら、またもや危ないことを言い出した神父を後目に。
俺は苦笑いを浮かべながら本堂の傍らにある扉に向かい歩き始めた。
上質な木材で作られた扉を2回ほどノックする。コンコンと小気味いい音が人が少ない本堂にこだまする。
[ハーイッ]扉の向こうから返事と共にパタパタと足音が聞こえてくる。
ガチャッ「どうしたんですかー神父様…ってあら?」
目の前の扉を開けて顔を出したのは、この教会のシスターであるカレン・雨宮さんである。
イギリスかどっかのハーフである彼女は、金髪ロングが似合うナイスバディなお姉さんである。
「明君‼いらっしゃい。今日も愚痴りに来たの?」
「恥ずかしながらそんな感じです。中入ってもいいですか?」
そう、俺がここに通う理由はこの人に愚痴を聞いてもらうためなのだ。
いくら外見的に子供といえど、中身が成人であるため生活そのものにストレスを感じてしまう。
そのため、精神年齢と近い彼女と会話をすることで、疲れた心を癒してもらうのが目的なのだ。
もっとも、ここに通うことになったのは表にいたおもしろ神父に、前世の記憶を見破られたからなのだが。
『君、何か隠してることあるでしょ』
そんな言葉を掛けられたのは何時だったか… 今となってはだいぶ懐かしい。
出会い頭にそんな言葉を言われ戸惑いはしたが、嘘偽りは許さないと。厳しい眼光を突きつけられれば。
ただの一般人である俺には抗うことなどできず、前世の記憶があることを打ち明けた。
始めは険しい目で見ていた高杉さんも、こちらが話し終えると鋭さを抑え。
『大変だね』と優しく微笑んでくれた。
あまりのあっけなさに、話を聞いて驚かないのかとつい聞くと。
『うーん、魔神や女神の転生体なら問題だけど。ただ生まれ変わっただけでしょ?そんなの普通の人と一緒さ』
なんて、のんきな返事を返してくれたのだから。それを聞いた俺の顔は唖然として、
さぞおもしろかったに違いない。
この世界はペルソナよりもデビルサマナーに近い世界なのだっ‼
というわけで舞台はペルソナでも世界そのものはデビルサマナーでした。
なのでトールマンもゴトウも当時のライドウがなんとかしたため東京にICBMは落ちてませんし、悪魔の存在も公にはなっていません。
今のところ主人公はペルソナしか使わせないつもりですが、気が変わったらCOMPでも持ち出すかも?
またこれから先戦闘シーンに入るにつれメガテンシリーズの魔法や悪魔名などが入ってくると思います。
そのため後書きで簡単な説明でも書けたらいいなと思っとります。