真・女神異聞録 ペルソナ -Wild of Shadow-   作:日陰。

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0-3 忍び寄る悪意

 

「で?今日も相変わらずなの?」

 

談話室にあるソファーに俺を案内したカレンさんは、二人分の紅茶とお茶菓子を手際よく用意すると。

こちらに話しかけてきた。

 

「そうなんですよ、もう毎日退屈で困っちゃいます」

 

「ふーん、確かに今は退屈だろうけど。そのうち好きなように動けるわけでしょ?

ならがんばって大きくなるまで待ちましょ?」

 

「まあそうですね、昔にやっておけばよかったこととか実際に

やり直せるわけですし、恵まれてるのかもしれないです」

 

「うんうん、そうやってポジティブに考えるのは大切よ。なんだって、

暗いこと考えてたら詰まらなくなっちゃうわ。人生楽しくしないとね♪」

 

綺麗な金髪を押さえつけていたブーケを外し、完全な休憩モードに突入したカレンさんに。

やさしく諭された、これが本職のシスターの実力かっもう何度も味わったはずだが、今日は妙に感動が強い。

 

「?、どうしたの急にボーっとしちゃって?」

 

「あ、あぁいや。ちょっとカレンさんに見とれちゃっただけですよ。真面目にシスターやってるんだなって」

 

「え?な、なによ急に///でもありがとう。うれしいわっ…て私真面目に見られてなったの!?」

 

こちらの言葉に反応して、百面相しているカレンさんを見て。

少し心の重荷のようなものが減ったような気がした。

 

「あーすいません。いつも昨日見たテレビがどうとか、そんな話しかしてなかったから新鮮で」

 

「ぬぅ…それは明君が聞き上手で話しやすいからついね」

 

「話しかけやすいですか僕?」

 

それは意外だ、自分では自己中で好き勝手話すイメージだが。若返って変わったのだろうか?

 

「それと妹に似てるからかな?明君と会うと色々話したくなっちゃうのよね」

 

「へー妹さんですか。カレンさんの妹さんなら可愛いんでしょうね」

 

「アリサって言ってねー明君と同じくらいの歳なんだけどおねえちゃんって可愛いくてねー」

 

 

《ゴーンッ  ゴーンッ》

 

 

どこからか鐘の音が聞こえてくる…どうやら結構な時間話していたようだ。

壁に掛けられた時計は6時を示している。小学生が出歩くにはもう遅い時間だ。

 

「あーもうそんな時間かー 明君帰らないとねー」

 

「そうですね、あんまり遅くなるとさすがに…」

 

食器をかたずけるカレンさんを手伝う。いくら小学生の体でもやりようはあるのだ。

2人で手分けしたため5分もかからずに綺麗になった。

 

「じゃあ帰ろっか?私も上がらせてもらうし一緒に帰ろ。送ってくよ」

 

「え、いやいいですよっ歩いて帰れますから」

 

「ダメだよぉ。中身が大人だって言っても体は小学生なんだから、

暗い中放り出したら私が神父様に怒られちゃうわ」

 

どうやら憧れのカレンさんとのドライブが確定したようで、

私服に着替えてきたカレンさんに、案内された先に合ったのは真っ赤なスポーツカーだった。

 

 

 

「それじゃあまたねっ明君。またお話しようねー」

 

そんな軽い言葉で締められたお話のおかげで、なんだか心が軽くなった気がする。

多少晴れやかになった心にうれしく、にこにこしながら玄関をあけ、盛大に母親に怒られた。

 

 

*  *  *

 

身体がナニかにゆっくりと沈んでいく。この感覚には覚えがある、なんせいつものことだ。

うっすら目を開けるとどす黒い闇とドキツイ赤が俺を招き入れる。

 

-ああ、また始まった。

 

すぐさま黒いヤツがやってくるであろうが、俺はかまわずその場で寝転がった。

どうせ逃げても無駄だ、自分が取れる行動は今までの悪夢(ユメ)でやりきった。

それでも捕まったのだ。既に逃げる気力など無くなっていた。

 

-アイツに捕まれば悪夢(ユメ)から覚めるのは分かってるんだ。なら、なにもしなけりゃこれで終わりさ

 

静かに目を閉じ、アイツが来るのを待つ。頭の方角から何かを踏みしめる音がする。

きっと近くまで来ているのだろう、恐怖でドキドキと高鳴る心臓を無視しきつく目を閉じる。

 

 

〈サク… サク… サク…〉

 

 

まだか?まだかっ!マダか‼今すぐ逃げ出したい衝動を抑えその場で待機する。どれくらいたった?5分?10分?

いつまで待てばいいんだっ早く俺を解放しろっ!

 

俺の頭上で足音が止む、が何も起こらない。

何時までも来ない衝撃にいぶかしんで目を開けると…

 

アイツが俺の顔を覗き込んでいた。

 

-…っ‼

 

びっくりして飛び起きる。が、アイツは何もせずこちらを見ているだけだ。

しばらくにらみ合いが続く。と不意に相手の口が弧を描く。

 

【ニヤリッ… コンナ所デジットシテイテイイノカ?】

 

まさか声を掛けて来るとは、そもそも声を出せたことに驚く。

 

-どういうことだ?お前は何を言っているんだっ‼

 

【急グノダ若人、汝ガ紡イダ絆ノ先ニ。災厄ガ降リ立トウトシテイルゾ?】

 

-待ってくれっ いったいなn…

 

 

「待ってくれっ‼」

 

 

昨日と同じように飛び起きた俺は、言い知れぬ恐怖感に襲われていた。

夢で会った奴の言葉が頭の中を駆け巡る。意味は分からないがとにかく怖いのだ。

だが、現状どうすることも出来ないため。いつもより青ばんだ顔のまま学校へと向かうのだった。

 

 

「はーいお疲れ様―。皆よくがんばったねー、今日の授業はこれでおしまいだよー」

 

 

いつもより速い竹内先生の挨拶が聞こえ、そういえば今日は土曜日だったと思い出した。

今日は体調がすぐれないのだ。通常と違い半日で終わる日は正直うれしい。

 

「あーそれと、不審者って言っても分かんないか。なんか危ない人が目撃されてるから、

気を付けて帰るんだよー」

 

いくら子供だからってその言い方はどうなんだ先生… 俺以外の奴全員、意味が解らず首かしげてるぞ。

 

 

*  *  *

 

 

無事に授業を終えた俺は、昨日も向かった教会へ歩いていた。

アイツの言葉に当てはまる〈絆〉とやらの相手がカレンさん達しか思い浮かばないからだ。

決してボッチなどではない。周りが子供すぎてテンションについていけないだけだ。

 

ふと、そんなことを考えながら歩いていると、視界に奇妙なものが映る。

 

マントだ、春先でポカポカしている陽気の中。真っ黒なマントを付けた男が立っている。

 

…あんな格好をして暑くないのだろうか?おそらくあれが竹内先生が言っていた不審者だろう。

ついさっき話題に出たばかりなのに、出くわしてしまうとは運がない。

幸いにも不審者はこちらを見ていないようだ。見つからないうちに違う道にそれようと身を翻したその時。

 

 

「-失礼。そこの君、少し聞きたいことがあるのだが」

 

その声を耳にした途端、全身を恐怖が駆け巡った。ただ声を掛けられただけだ。

それだけで恐怖に侵されてしまった。見えない何かに心臓が掴まれているように、

キュウキュウと鈍い痛みと動悸を脳へと伝えていく。

 

「-この町にある教会に行きたいのだが、どこにあるか知らないかね?」

 

逃げろにげろニゲロッ‼全身の細胞が警告を発しているような感覚。

今すぐここから逃げ出したいが、足がすくんで動けない。

 

「-ふむ、答えないのか答えたくないのか…。どちらにせよ直接聞けばいい話だ」

 

男の手がこちらに伸ばされる。半ば諦めかけたとき12時を知らせる鐘が鳴る。

 

 

「ツッッ-‼‼ 知らないっ‼」

 

動くようになった足を必死に動かす。身体を蝕んでいた恐怖から逃げるために必死に。

 

 

「ハッ‼… ハッ‼… なんだあれ、なんだあれっ‼」

 

 

見慣れた道を走りながら思わず愚痴をこぼす。これまで怖いと思う時は多々あったが、

本当の意味での恐怖を味わったのは初めてだ。

 

「俺だけじゃぁ、どうすることもできない… 二人に、教会にっ」

 

「-ほぅ、やはり知っていたか。ならばそのまま案内してもらおうか」

 

「えっ?… ぐぅっ‼」

 

後ろから飛んできたなにかによって吹き飛ばされる。辺りに肉が焼けるようなにおいが広がる。

 

 

「-普段はこんな弱い魔法使わないがな。今のような狩にはちょうどいい」

 

 

〈アギ〉その単語が聞こえた瞬間、俺の足元が爆発した。

 

 

「-さあ、がんばって走りたまえ少年。あまり遅いと手元が狂ってしまうかもしれんぞ?」

 

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