真・女神異聞録 ペルソナ -Wild of Shadow-   作:日陰。

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0-4 運命に食われる日

-俺がいったい何をっ、どうしてこうなったんだ‼

 

身体の節々から焦げた臭いを発しながら。恐怖に駆られる足を動かしていく。

頬に当る風に感化され、涙と共に心の音が漏れ出していく。

相手の口ぶりからして直接当てる気は無いようだが、周囲に火球がぶつかるたび、

爆風にこかされ土まみれになっていく。

 

そのたびに身も心もボロボロになっていくが足を止めれば待っているのは〈死〉だ。

よしんば生きていたとしても、ひどい目に合わされるのは目に見えている。

 

 

-死にたくないっ…

 

 

『生への渇望』その思いを胸に、痛みと恐怖で震える足に鞭を撃つ。

 

 

そんな行動をあざ笑うかのようにまた一つ火球が己をかすめていった…。

 

 

 

 

 

同時刻:カレン

 

「よいしょっと。だいたい食材はこんなものね… 飲み物はいいって言われたし帰りますか」

 

神父様から渡されたお使いのメモを見ながら、買った品物に足りないものが無いか確かめていく。

歩いて買い物に行くなんて何年振りだろうか、それもこれも神父様が

『君の車は目立つからさぁ歩いて行ってよ。そんな遠くないし重いものはいいからさ』

なんて言うからだ。正直めんどくさいけれど偶にはいいかなんて思った数分前の自分を少し恨む。

シスター服のままスーパーに入るのは精神的に来るものがあった。

 

まぁぶつくさ言ってもしょうがないし、このまま立ち止まっていると

どんどん周囲の目が集まってくるから早急に教会に帰ろう。

 

 

真っ直ぐスーパーをでてレジ袋を片手に近所の商店街を歩く。

周りから聞こえてくるたたき売りや客寄せの声に耳を傾け、にぎやかな雰囲気に顔がほころぶ。

八百屋の大将はいつも元気だねぇ、でも昔よりちょっと声が衰えたかな なんて考えを浮かばせてると。

 

 

[ドォーン] と遠くの方で何かが破裂するような音が耳に届いた。

 

 

「ん?なんだろ、花火かな?でも昼間だしなぁ…気になる。時間はあるし見に行ってみようか」

 

 

若干持っている荷物のせいで腕が痛いが。どうやら好奇心には勝てなかったようで。

時たま聞こえてくる音を頼りに、横道へとそれていくのであった。

 

 

 

一度その場で立ち止まりあらかたの方角を決め、感覚を頼りに歩いていく。

どうやら音源は動いてるらしい、だんだんとこちらへ近づいてくる。

これは楽でいいやなんて思っていると、なにやらおかしいことに気づく。

 

-人気が遠のいていく?それにさっきから火薬の臭いがしない。

 

いくら田舎町といえど、数本横道をそれただけで人の気配が全くしないというのはありえない。

だが、先ほどから響く音がこちらへと近づくたび、まるでその音から逃げるように気配がとざかっていく。

 

 

-それにさっきからかすかにだけど魔力を感じる。誰かが戦ってる?こんな町中で何考えてんのよっ‼

 

 

本音を言うと行きたくはない。が、周りに何とかできそうな人物が見当たらないため、自分が行くしかない。

この近辺で裏側の関係者は自分だけだ。一般人に被害が出たら教会に責任が出てしまう。

 

-力があるって言っても浄化とかそんなんばかりで攻撃魔法なんてないし…、けど行くしかないか

 

心に浮かぶ好奇心は警戒心へ変わり、不信感を怒りに変わった。

精神面での準備を終えた彼女は、爆発音から戦闘音へと切り替わった発生源へと走り出した。

 

 

 

*  *  *

 

 

「-もういいです。飽きました」

 

 

数刻前に開始された鬼ごっこは、突如背中に当てられた火球によって終わりを告げた。

 

 

「がぁぁあああぁっ‼」

 

 

真後ろからの衝撃で前のめりに吹き飛ばされ、背中から腕にかけて強烈な痛みが襲う。

おそらく焼けただれているのだろう、身体の背面からじゅくじゅくと嫌な感触が熱と共に脳に伝わってくる。

痛みに耐え、なんとか逃げようとするがもはや動けそうにない。

 

だめだ嫌だ、立つんだっ動いてくれ‼

 

そう何度も思っても次身体は土に沈んだまま。内なる叫びは声にならぬまま虚空に消えていく。

 

 

「-はぁ、大事な時間を費やしてまで遊んだ価値はありませんでしたね。所詮、

〈一般人〉などこの程度、放っておいても野垂れ死ぬ。記憶を吸いだして目的地へと急ぎましょうか。」

 

 

ゆったりした速度で男が近づいてくる。恐らく俺の脳みそから情報を吸い出す気だろう。

こんなところで死んでしまうのか?そんなの… いやだ。

 

 

「…た…すけて だれか…助けてくれ」

 

 

心から溢れた思いが口から零れ落ちる。

 

 

「た…すけ…て たす…けて 誰か、誰…か」

 

「-ふむ?未だ言葉を発する気力があるとは、少し弱くし過ぎたか。無駄なことはやめたまえ少年、

ここには誰も来やしない誰も救ってなどくれはしない。」

 

 

目の前にまで迫った男が最後の思いまでも否定するが、一度溢れた言葉は止まらない。

 

 

「助けて…たすけて、タスケテたすけてっだれか。だれかぁあああ たすけてくれえぇえええええ」

 

 

溢れた言葉は叫びに変わり、周囲に響いていく。が答えてくれる者はいない。

 

 

「-その生命力は称賛するが耳障りだ。静かにしてもらおうか」

 

 

いい加減うんざりだ。そんな雰囲気を携えて男は俺へと手を伸ばす。

もっと遊びたかった、経験したかった、生きたかった。

せっかくやり直せるチャンスが来たってのに、こんなところで終わりだなんて。

 

-期待させるだけさせといてこんな早く終わるなんて…、ひどいよ神様。

 

もうできることは何もなく完全に諦めモードに入ったその時。

 

 

『お願いっ スラオシャ‼〈スラッシュ〉』

 

 

目の前に天使が舞い降りた。

 

 

俺の頭上に突如現れた天使と思しきものは、先端に十字架が付いた長杖を上段に構え

男に向かい振り下ろした。

 

「-ぬっ‼」

 

おそらく不意を突いたであろうその攻撃は、とっさに防がれたものの男を後ろへと弾き。

道端のブロック塀ごと吹き飛ばした。

その行動で生まれた猶予の間に、誰かが近づいてくる。その足音に反射的に目を向けると、

霞んだ視界に見慣れた青い基調のシスター服が映った。

 

 

「ちょっとこんな町中でなにしてん…っ明君‼しっかりして‼ひどい傷…えと治療、そうだ〈ディア〉」

 

 

絶望的な鬼ごっこに乱入してきた女性は、自身の服が汚れるのも構わず、地べたに沈んだままの俺を抱き寄せる。

そして、先ほどあの男を吹き飛ばしたまま空中に静止していた天使に一言何かを伝える。

すると暖かな光が全身をつつみこみ痛みを和らげていった。

 

「…カレ…ン、さん。なん…でここ」

「なんでとかどうでもいいからっ まずはそのけがなんとかしないと…とにかくここを離れなきゃ」

 

軽く様態を確認したカレンさんは、自力で動くことは不可能と判断したらしく。

そのままお姫様抱っこの状態で俺を持ち上げた。

 

常時なら恥ずかしがって抵抗してしまいそうだが、ほぼ全身が火傷している今痛みに耐えるので精いっぱいだ。

そのままおとなしく抱えられたままの俺を心配そうに見つめ、この場から離れようとしたとき

 

 

「-どこへ行こうというのかね?」

 

 

そんな言葉が後方から聞こえた瞬間、カレンは走り出した。

 

「ごめんね明君 けが人にムチ打つようで悪いけどもう少しだけ我慢しててっ」

(相手の実力が高すぎる、私レベルじゃどうにもできない… なんだってあんな化け物がこんなとこにいるのよっ)

 

日々教会に訪れる巡礼者相手に培った観察眼で相手の力量を察した。

自分との差は比べ物にならない、まさしく絶望的だ。ここは逃げに徹するしかない。

 

 

「-また鬼ごっこかな?多少飽きてきたが付き合ってやろう、その変わり少年よりは長く持たせてくれたまえよ?そうそうに倒れられてもつまらないからな」

 

 

先ほどより多少強くなった火球に踊らされながら、二人は人気のない路地を必死に掛けていく。

 

「だめだ… カレンさんだけでも 逃げて」

 

「っ次そんなこと言ったら怒るよ‼今は生き延びる事だけ考えてなさいっ」

 

このまま二人とも死んでしまうくらいなら、少しでも戦えるカレンさんの方が生き延びる確率は高いだろう。

そう考え言葉を伝えるがすぐに一掃される。

 

「私だって〈関係者〉なんだから体力には自信があるわ、心配しないで。

それに教会まで行けば神父様もいるわ、ああ見えて私の何倍も強いんだからきっと守って下さるわ。」

 

教会、誰かも用があると言っていたような… 誰か?そういえば追いかけまわされた原因はっ

 

「ダメだ…カレンさん、あいつ… 教会に用があるって俺を」

 

「なんですって‼ でも、私だけじゃどうすることも出来ないし。このまま教会に向かうしかないわ」

 

あの男の要望通りになるのは癪だけどね。

 

そう最後に苦虫を噛みつぶしたような表情でつぶやいて、カレンさんは再び俺を抱えたまま走り出した。

 

 

 *  *  *

 

 

命からがら逃げ延びた俺とカレンさんは龍箕教会のすぐ近くまで来ていた。

 

「やっと… ここまで…」

 

いくら子供といえど人一人抱えながら、数分走り続けたカレンさんの息は絶え絶えで疲れ果てていた。

 

「協会が見えたわ、もうすぐだからがんばってね」

 

視界に教会が映った瞬間、張りつめていた空気が一瞬緩んだ気がした。

相手にとってはその一瞬を逃す道理はなくすかさず火球が飛び込んでくる。

 

-まずっ 今のままじゃ避けられないっ

 

安堵からか後ろからせまる火球に反応が遅れたカレンさんは先ほどの天使を射線上に呼び出す。

 

 

「うぐぅっ‼」

 

 

そのまま防御するような格好の天使の身を、業火が焦がすと同時に

俺を抱えたままのカレンさんの口から苦痛が漏れる。

 

「-悪魔にしては反応が弱く、不安定だと思っていたが。なるほど〈ペルソナ〉か」

 

「っだったら…なんだって言うのよ」

 

先の攻撃を受け完全に足を止めたカレンさんの前に男が姿を見せ。

俺達を逃がさないように前へと立ちふさがる。

 

「-高名なサマナーやデビルバスターならともかく、闘いもろくに知らん素人など一般人と同じだ。

故に私がとる行動も変わらん」

 

「-ここまでよくがんばったな褒めてやろう、褒美にここで殺してくれる」

 

男の手のひらに炎が集まっていく、どうやら本気で殺しに来るようだ。

高まった熱量がこちらに放たれる寸前。

 

 

「悪いがそれは許容できないね」

 

 

横から何かが火球を貫いた。

 





サマナー:女神転生シリーズ
正式にはデビルサマナーであり悪魔召喚師のことを指す。
様々な方法で悪魔と意思疎通を行い「契約」を結び召喚、使役する能力者のことを言う。
基本的に悪魔召喚プログラムを用いるのが一般的であり、それをデバイスに入れて使う。
悪魔をもって悪事を働くダークサマナーもいる。


デビルバスター:女神転生TRPG
サマナー以外の方法で悪魔と戦うもの達の総称。
超能力や魔法、封神変化や化学兵器など色々とバリエーションが豊富。
ペルソナ使いもこちらに属する。



スラオシャ:古代ペルシャ ゾロアスター教

その名は「聞くこと」を意味し、「聴取」と「従順」を守護する大天使。
アンリ・マンユの手先によって苦しめられる人々の叫びを聞き届ける役目を持ち、
そのことからアフラ・マズダ耳とみなされていた。

また怒りと暴力の悪魔アエーシュマと敵対し、それを討つために太陽が沈んだ後地上に降り立つ。 (Wikipediaより抜粋
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