転生要素、原作知識、ちょいご都合?
本文2万字
その『世界』は、海の世界だった。
星を縦断する赤色の大陸『
東西南北に区切られた四つ海は、それぞれ
─────フレバンス王国。
4つの海の中で
地層から採取される「珀鉛」という鉛の影響で国全体が童話の雪国のように一面白一色なため「白い町」とも呼ばれ、人々の憧れの的であった。
加えて珀鉛から作られる食器・塗料・甘味料・化粧品・武器などは極めて良質で、それこそ世界中から買い手がつくほど。
珀鉛は、この国の一大産業と化していた。
そんな王国の宰相と財務大臣が、まるで顔を隠す様な出で立ちである喫茶店に訪れていた。
街角外れた老舗なのだろう、老夫婦がひっそりと営みつつ、常連に愛されている店だ。
その店のこれまた最奥の個室に、まるで誰かに指示された様に二人が揃っていた。
「「…………」」
本来こんな店に来る様な立場の人間では無いのに、宮中で良く顔を合わせる人間と鉢合わせたからだろうか。
青褪めながら、お互い懐に思わず手を添えてしまう。
そこには、全く同じ内容の手紙があった。
現状のフレバンスは平和な国だ。精々王族の質が悪化している程度。
そんな王族が少しばかり横領していようが、国民の生活に支障が出ない程度にはこの国は豊かだった。
それ故に、大臣と宰相の自宅は少し探せば簡単に見付かるだろう。
無論警備やセキュリティは確りしているし、そもそもフレバンスには態々貧困から窃盗を行う様な人間が居ない。
それこそ、ポストに手紙を入れる程度なら造作も無いだろう。
問題は、その手紙の内容が国の存亡に関わるものだったということなのだが。
『─────珀鉛病の概要と、パンデミックの際の周辺国家と世界政府の対応。その展望について。
詳しくは、指定した場所でお話を』
フレバンスの膨大な国庫を握る者と、国の差配を握る者が揃って絶句したその手紙は、二人に絶望と一縷の光を見せた。
珀鉛に含まれる毒は過度に掘り起こすことで人体に悪影響。
身体や髪が白くなっていき、全身の痛みとともに死ぬ鉱毒による公害病のリスク。
珀鉛病にかかった者が子供を作ると、その子供にも感染し、子孫の寿命が短くなっていく性質。
珀鉛が有毒であり、それが百年単位で国民全員に潜伏しているのなら医学的にも不治に近い─────など、珀鉛による人体への害の数々。
同時に世界政府に助力を請う、そんな選択肢にも手紙で釘を打たれていた。
─────『現行秩序である世界政府の加盟国である以上、政府はフレバンスが窮地に陥れば助けてくれる』
そんな安易な希望を、手紙の主は当たり前のように磨り潰していた。
王族と世界政府は珀鉛産業が始まる百年以上も前、国の地質調査でその事実を知りながら珀鉛が生み出す巨万の富に目が眩み、一切を隠蔽しているという指摘で以て。
正義と善を志している者達の集まりである、政府傘下の海軍なら兎も角。
近年オハラという学者達の島を焼き払った世界政府が、毒となった人々を抱えるフレバンスをどうするか?
今より九百年前から八百年前までの間の、一切の歴史が喪われた『空白の百年』。
オハラはその散逸した、明確に世界政府が禁じている歴史を探り、古代兵器という危険な物品を復活させようとした罪で滅ぼされた島だ。
だがマフィア犇めく北の海で莫大な富を築いているフレバンスは、当たり前のように他国への情報網を持っている。
オハラの学者達が、古代兵器を復活させようとした?
────そんな訳がない。
オハラの学者達の知恵は、フレバンスとて喉から手が出る代物。
その範囲は、当たり前のように地質学を含んでいる。
より効率的な珀鉛の生産が行えればと、接触したのは一度や二度ではない。
恐らくオハラは、『空白の百年』を研究しただけで島ごと滅ぼされたのだ。
無論世界政府が禁じた法を破った以上、罰せられるのはオカシイ訳ではないが、研究者以外の島民丸ごと消し去られたとなると話は変わる。
ならば考えられるのだ。
一件と珀鉛病そのものに蓋をする為、滅菌と称してフレバンスを滅ぼし得る可能性を。
同時に、それをフレバンスの王ではなくこの二人にだけ伝えた理由。
二人は確信していた。
この手紙を出した者は、明確な解決方法を知っているのだと。
「─────やぁ。お待たせしたかな、御両人」
そんな二人に声が掛けられる。
国の滅亡を回避し得る可能性を見た二人は、思わず呆気に取られた。
「見て呉れに関しては、敢えて問わないで貰えると助かるよ。重要なのは僕自身ではなく、珀鉛病と今後起こり得る世界政府、及び周辺国家への対策。即ち、この国の存続保証なのだから」
珀鉛のように白い髪と、それ程までではないが十二分に白い肌。
そして何より三つか四つ程度の齢の、整った容姿の童子が其処にいた。
年齢不相応の知性を湛えた笑顔に、まるで子供の皮を大人が被っている様な不気味さ。
それで二人は、その幼児が手紙の差出人なのだと理解した。
「解決策は無論あるとも。そして今のフレバンスの財力と伝手なら、必ずやソレを手に入れられると。
あぁ。序にこの僕の脳がセットなのは、前提としてね」
─────その『会談』の後、フレバンスは密かにある悪魔の実を入手した。
同時期に生活必需品やそれの製造基盤といった輸入品を激増させた。
それこそ、幾ら裕福なフレバンスといえど採算度外視と言えるほどに。
その数年後、フレバンス王国は島ごと
当時世界屈指の輸出大国の、突然の消失に世界が揺れる間もなく。
そんな事が些事となる程の大事件が、世界に衝撃を与えた。
海賊王
大海賊時代を齎したその処刑から、数年ほど後の話である。
◆
問:【ONE PIECE】世界の舞台装置にして、主人公達の事実上敵陣営『世界政府』って、どんな組織~?
答:真っ先に消えるべきゴミカス。
と、一読者として答えるのは簡単である。
だが「ほぼ諸悪の根源」と形容するには、些か簡潔がすぎるだろう。
ONE PIECE。
日本史上屈指の世界的大人気漫画であり、海賊に憧れる主人公モンキー・D・ルフィが海賊『赤髪』のシャンクスに身を挺して命を助けられた事を皮切りに、浪漫を求め『海賊王』を目指す冒険物語である。
様々な海流と気候で冒険者を阻む『偉大なる航路』。
それらを中心に、悪の海賊達と戦いながら進む冒険譚───それがONE PIECEである。
週刊少年ジャンプの金字塔の一つだが、そんな「ONE PIECEの世界に生まれたいか?」という質問があるとしよう。
もし物語終盤まで読了した人は、必ずこう答えるだろう。
「絶対に嫌どす」と。
その原因は、恐ろしい海賊でも自然環境でもない。
───世界政府。
四つの海と偉大なる航路に存在する170国以上の加盟国と、創設者である二十の王国の王家、その内『
それらによって構成されている、全世界に影響力を持つ国際組織である。
ソレだけなら、所謂国際連合の様なものと考えられるだろう。
実際表向き最高権力である五老星が登場した辺りは、読者諸兄らもそう思っていたのではないだろうか。
しかし所謂『シャボンディ諸島編』にて、平然と奴隷売買が行われた辺りで雲行きが怪しくなる。
天竜人。
世界政府の設立者達である20の王家の内、聖地マリージョアに移り住んだ十九の家が発端の特権階級。
自分達を神と称し、ソレ以外を『下々民』と物扱いする『世界貴族』だ。
この時点で世界を纏め上げたかつての栄光に巨大な影と、存在していたであろう聡明さは堕落し腐り切っていると判る。
この世界の八割の胸糞案件や悲劇は、この連中が原因といっても過言ではない。
控え目にいって、創造神オダセン聖の悪い処が出ていると言わざるを得ない。
幾らなんでも、少年誌でやっていい胸糞ではない。青年誌でも限度がある。
非加盟国は人権が無く当たり前のように略奪、虐殺対象。
三年に一度は島民皆殺しゲームが開催され、より多くの島民を殺した者がランキング上位者となる。
海軍が絶対正義名乗ってるんですけど、道徳的正義が蔑ろにされすぎ問題。そりゃ
秩序的正義と巨悪が両立しているよぉ~。
挙げ句、天竜人最高位の『五老星』は「人間など虫と思え」「私の身にもなってみろ。“虫ケラ”の気持ちを理解しろと言うのか? 不可能だ……」などと、そんな虫ケラの統治者の一人が発言。統治者として終わっているのは言うまでもない。
尚、黒幕との契約に事実上の洗脳効果が含まれているのなら、この程度で済んでいる事に驚くべきなのだろうか。
各国の平等を表した象徴である19本の武器が周囲に突き立てられた『虚の玉座』。本来誰も座ってはいけないソレに、当たり前の様に座る
挙げ句そんな奴が推定『オペオペの実』によって不老となり、最低八百年存命。世界を裏で牛耳っている始末。
本来悪辣な海賊が善良に見える醜悪な『権力者の純心』の煮凝りが、世界を支配しているのである。
そんな世界の被害者たる、とあるキャラクターの過去エピソードのサブタイトルは『死んだ方がいい世界』。
終わってんねぇ!
以上。物凄く端的に述べるならば、後半の【ONE PIECE】とは「世界征服を実行した世界政府と、世界への反逆者である海賊達の戦い」を描いた物語と言えるだろう。
さて、何故ここまで世界政府の話をしたかというと───。
本日一般転生者であるワタクシ、天竜人の根城である聖地マリージョアに来ております!
さて。話は急に変わりますが、此処でONEPIECE読者に一つ質問。
───貴方が思う「最強の悪魔の実」は、何かな?
◆
聖地マリージョア。
『
煌びやかで壮大な建造物が並ぶ其処は、しかし悪徳と頽廃に塗れたソドムとゴモラ。
加盟国の国民数に応じて増減する莫大な加盟基金『天上金』によって、加盟・非加盟を問わず各国を磨り潰しながら維持された悍ましき綺羅びやかさ。
自分たちを神と錯覚し、人を物か虫同然の認識によって尊厳を蹂躙する。
とある海賊に「権力者の純心」と表現された、この世で最も醜悪な者共の巣窟。
本来そんな天竜人とその奴隷たち、そして役人や一般従業員の喧騒や悲鳴、作業音は─────今、奇妙なまでの闇夜の静寂に満ちていた。
宮殿と呼ぶべき住居の中で、主人たる天竜人達はしかし。
贅や快楽を貪る筈だった表情を苦悶に歪めながら倒れ伏し、鎖で繋がれている筈の奴隷と労働に縛られる職員は一人たりとて存在していなかった。
そしてマリージョアの中心、パンゲア城に居る五老星と彼らの主は、その一切に気付いていない。
少なくとも、その様な些事に興味はない。
全ては、マリージョア上空に夜闇に紛れ佇む存在が原因だった。
二メートル近い長身*1を、スーツに身を包んでいる男は楽しげに表情を緩ませながら、一息ついていた。
「さて。ついでに金銀財宝も頂き、一応マスト目標は達成できた訳だが……。回収した奴隷の状態はどうかな?」
『まだ混乱してる感じかな。衰弱している人や重傷患者は、ドクター・くれはさんやイッシー100が対処しているけど……』
「欠損レベルは流石に僕が必要か。まぁ、それは帰ってからにしよう。
一人上空に佇みながら、彼に返事をしたのはスーツに生えた子供の耳や口だった。
ニコ・ロビン。
悪魔の子として指名手配されている、世界政府に滅ぼされたオハラ唯一の生き残り。
政府により罪を擦り付けられた彼女は、一億に迫る懸賞金を掛けられ周囲全てを疑いながらの逃亡生活を強いられていた。
勿論この男に居場所を特定され、当たり前の様に保護されたのだが。
悪魔の実『ハナハナの実』の能力によって、自身の部位を花のように咲かせる事のできる彼女は、現在男の共犯者として自身の役割を熟していた。
即ち、奴隷解放を。
「ロビン。君はこの世界の、強者の共通点を知っているかい? あぁ、問題形式にしようか。強者の共通点は何でしょう?」
『えっと……知識?』
「はは、君らしい答えだね。だけど残念ながら、無知な強者はそこそこ居る」
覇気? 悪魔の実? 技術? 成る程、全部揃えば最強に見えるが───男の結論はこうだった。
必要なものは、それらを積み重ねる為の土台である。
「答えは────生命力だ」
生命力という礎あってこそ、それら装飾を飾り付けられるのだと。
教壇に立っているかの様に指を立てつつ、高度的に雲一つ無い空を当たり前の様に歩きながら講釈を垂れる。
「僕は妄想だけは一丁前の凡夫。『
─────無いなら、余所から持ってくるしかない」
男が口にした悪魔の実の名は、『ブキブキの実』。
余りに多種多様な武器に変形できる為、「一つの武器への習熟度」さえ無視すれば刃物限定の変身が可能な『スパスパの実』。爆弾限定の『ボムボムの実』など、複数の能力の上位種となる悪魔の実である。
そしてこの「変形種数が多すぎる」という長所自体が、「一つの武器を極めた方が最終的に強い」という欠点を持つのだが。
さて、男はどんな武器に変身するのか。
「奴隷達の救出作戦中に、既に仕込みは済ませているさ」
世界最強の兵器とは何か。
その問いの答えが、その悪魔の実こそ男が「最強の能力」と断言する理由だった。
「“
それは天才ドクター・ベガパンクが将来発明する、緑色の人工血液。
超人系悪魔の実能力者の血統因子から作成されるもので、投与することで超人系の能力を得ることが出来る。
つまりこれまで不可能とされていた能力の複製が可能なそれは、しかし血液を媒介とする以上再現できる能力は一つ。
だがそれを改造し、血液ではなく血統因子を媒介にすることに成功。
『悪魔の実こそ、この世界最強の兵器である。あと古代兵器もね』─────それが、答えだった。
悪魔の実の能力を兵器と定義することによって、男は男が知る全ての悪魔の実の能力を体現するに至ったのだ。
「ナノマシンは武器。Gガンは見てないけど、ブラックキャットで覚えた」
こと能力という分野に於いて完成した姿となった男は、未来に於いてとある天才が発明する武器を
媒介を血液ではなく、因子単位に。赤血球や細胞核などといったチョコザイな事は言わない。
血液内を流れるそれらの中に、能力を齎すナノマシンを精製しているだけである。*2
「念の為に五老星とイムを除き、“
『ハナハナの実』の能力で出力起点を、自在に毒を精製できる『ドクドクの実』によって生み出された気化毒で、その全てが成すすべ無く呻き声すら漏らせず倒れ伏している天竜人。
その全てに、万が一覇気で能力を無効化されない様に『ホロホロの実』の能力で生み出した、触れた者を極度のネガティブ思考に陥らせる霊体に襲わせる。
更に無音と透明化という、『ナギナギの実』の能力と『スケスケの実』の能力を同時併用。
仮に未来視の見聞色を有していようが、見えるのは自分が毒で倒れる姿のみ。
勿論、『ホロホロの実』の能力下でマトモな思考ができればだ。
五老星とイムに関しては、能力を弾く程の覇気を持っていると判断。
元よりパンゲア城で政務で忙しい彼らに、今の状態でちょっかいを掛ける理由はない。
奴隷を解放するのが最優先だ。
「“
『くれは先生には、すっごいお金を要求されたけれど……』
「天竜人の金品財宝を、ついでに頂戴して良かったネ!」
更に『ミラミラの実』の能力で、鏡の中の世界『
本来約十年後、脱走奴隷である魚人フィッシャー・タイガーによって行われる奴隷解放事件とは、比較にならない鮮やかさで反抗は行われた。
加えて云うなら、天竜人を敢えて生かさず殺さずの状況に陥れているのは、勿論理由がある。
何故、男はマリージョアへ前代未聞*3の大犯罪を成すに至ったのか。
Q:貴方は強大な力と自由を得て、偉大なる海に羽搏きました。これから何をしたいですか?
A:取り敢えず天竜人を皆殺しにしよう(使命感)
─────というのも、勿論ある。
男にとって、天竜人は皆殺し確定である。
一般市民にとって、天竜人を害するのに強い忌避感がある。
それは彼らを護衛する海軍の存在もある。天竜人達の残虐極まりない理不尽な報復を恐れたからというのもある。
そんな状況が八百年続けば、必然「天竜人を傷つけてはならない」という刷り込みが存在しているからなのだろう。
しかし転生者である男にとって、そんな刷り込みは無く。
天竜人を殺すのに、一切の躊躇はない。
では何故一思いに殺さないのか?
ただ殺すのでは、気が済まないからだ。
奴隷にされ、その尊厳を奪い尽くされた人々を見て、その意思はより強くなった。
『全て奪い尽くさなければ気が済まない』
それが、
「“
変ずる悪魔の実は、
神獣たる麒麟に変身できると、同時に他人の夢や空想を具現化できる『夢具現人間』。
無論彼の『グリーンジーン』では、
そして『グリーンジーン』による
「“
そして同時に、『グリーンジーン』での『ハナハナの実』の能力で右肩にもう一つの頭部を出現させる。
そうする事で、彼は自身の夢の中から己が知る存在を引き出せる。
引き出したのは、
それは200年前、聖地マリージョアを襲撃した伝説を持つ巨大なロボットの内部に収納されているもの。
世界政府からは完全な廃棄を命じられたが、当時のジェイガルシア・サターン聖を筆頭とした科学者たちの手で秘匿され、今尚実在する過去の遺物。
即ち約千年前に、
勿論そんなモノをサイズ的に持ち運べないので、ソレを直ぐ様『フワフワの実』の能力で浮遊させる。
男が当たり前の様に対空しているのは、この能力のお蔭だ。
「“
咲かした頭部を消し、そのまま『ドアドアの実』の能力で扉を開ける様に空間を開き、その中に姿を消す。
だが僅かに扉を締め切る前に、巨大な紐に能力を使用する。
「“
それを『ワプワプの実』の能力でパンゲア城に転移させ、扉を締め切ったと同時に
『 バ リ ッ!!!!!! 』
「えっぐ。空間越しでも少し響くとは」
まるで世界に轟くと思わせるほどの、絶大な覇気。
毒で苦しんでいようと、意図的に意識を保たされていた天竜人は勿論、神の騎士団も問答無用で昏倒させる。
だがソレを解放した男の目的は、五老星とイムを明確に恐怖させ、無防備な状態を作ること。
「うーん、余韻がまだ響いてる。だが好機だ、イムや五老星は今の覇気に
扉を開き異空間から戻る。覇気の強弱問わず、完全な安全圏の確立は予め検証済み。
雷鳴の如くマリージョア全域に轟く覇気の残滓を尻目に、即座に最重要の一手を打つ。
「仕上げだ、“
そして、自他問わず対象の年齢を変えることができる『トシトシの実』の能力は、自分の理想の未来の姿になる事もできる。
この能力を指して、
これは「無知な子供だからこそ真価を発揮できる、現実を知り絶望したら無価値と成る」という皮肉ではあるが、男にとっては戯言だった。
この世界を
逆に言えば、限界など有って無いようなもの。
「“覚醒した未来”」
あらゆる能力を体現できる男が、『あらゆる悪魔の実を使い熟し、覚醒に至った未来』に変貌し、限界を超越した。
「この姿は消耗が激しい、手早く済まそう。“
男────シガラキ・ゼンと自身に名付けた者は、現在マリージョアに存在する天竜人全員から総てを
「『
『チユチユの実』の能力でその生命力を絞り上げ。
『カゲカゲの実』の能力でその影を切り取り。
『ソルソルの実』の能力でその寿命を奪略し。
『ヨミヨミの実』の能力でその魂を抽出する。
それらを全ての工程を覚醒故に触れずに、マリージョア全域の残存生命に行い全てを奪う。
覚醒に至った能力に、毒と虚霊に苛まれた者たちに抵抗の余地はない。
「うーん、バッチイ。精製法のイメージ元はハガレンの賢者の石もあるんだが、影も加えているとはいえ余りに汚い」
天竜人の欲望を現すような汚物に塗れたソレに、顔を顰めながら業者の様に手を動かし続ける。
といっても、ソレに直接触れる神経は持ち合わせていなかったが。
「さて、毒抜きしようか。“
その、世界で最も醜悪なソレを『ウォシュウォシュの実』の能力で洗濯浄化。
より強く不純物を絞り出し、更に『ニキュニキュの実』の能力で汚物を弾き出していく。
そしてその作業そのものを、『ククククの実』の能力で行い食材として加工していく。
ドス黒い色をした天竜人の総ては、色鮮やかな真紅に純化していく。
「チャルロス聖があれだけボロボロにされて死ななかったのは、やはりその血筋由来の生命力なんだろうか。人数に対して徴収量が遥かに多い。まぁ五老星や神の騎士団なんかは、不死身かつ覇気使いだからかな」
しかし能力で抽出こそすれ、ソレは能力者に還元できないものを含む。
『ソルソルの実』の能力がその筆頭だ。
その能力の本来の保有者
例外は、自身の寿命のみだ。
「“
その前提を覆す為に、如何なるものをも捕食しエネルギーに変えられるようになる、『バクバクの実』の能力を使う。
「この状態も、そろそろキツくなって来たな。流石に能力を連発し過ぎた。ロビン、一旦目と耳を閉じるんだ」
『分かった』
一分にも満たない、しかし連続複数の覚醒能力を同時行使。
望む未来なら、
だが、その全てを解決する方法がコレだった。
「さぁ、いただきます」
ロビンの咲いた部位が散ると同時。バクリ、とその結晶が呑み込まれる。
『ブキブキの実』の能力を得て一年程度の鍛錬しか積んでいない、本来の姿は
即ち、
それらを、文字通り取り込み、糧とする事を意味していた。
瞬間、まるで限界まで引き絞られた縄が大量に千切れたような、バツンッッ! と轟音が響く。
マリージョア全土に、再び赤黒い稲妻が縦横無尽に駆け巡る。
その強大さは、先程の覇気に決して遜色無いもの。
「────フ、アハハハ。凄いな、制御仕切れず漏れ出たのでこの覇気か。ジョイボーイやイムとどっちが上だろうか」
『だ、大丈夫? 人格に問題は無い?』
「真っ先に人格の確認か。まぁ天竜人の影を取り込む以上、当然の懸念だね。大丈夫、問題ない。万が一『
先程まで、その姿を維持する事もギリギリであったゼンに、今は存在感と生命力に裏付けされた余裕が溢れている。
いや、余裕だけではない。
本来当人が持ち得ていなかった、覇王色の覇気が漲っていた。
ドン!! と。同時にパンゲア城から異形が五体、城壁を破壊しながら現れる。
恐らくマリージョアで起こっている異常を察知したのだろう。
当然だ。あれだけの覇気を撒き散らし、あの五人にも『徴収』は行われたのだから。
本来影を奪われればその時点で意識を失い、一定時間絶対にまともに動けなくなる筈。
だが『深海契約』で不死身となっている以上、即座に復帰しても不思議ではない。
「五老星か、イムは様子見かな。
だがゼンは、まるで彼らを脅威と認識しない。
もう、数秒前に居た凡夫は何処にも居ない。
一人一人が海軍最高戦力である海軍大将に匹敵し、全てが虚王との契約で不死の肉体を有する怪物達。
其れ等を、魔王となった者が牙を剥く様に凄惨に嗤う。
「さぁ、
◆
パンゲア城から飛び出した五体の怪物は、それぞれの異形の眼を以て世界の頂点に唾吐いた狼藉者を睨み付ける。
最初に行動したのは、唯一飛行能力を有するマーカス・マーズ聖。
極彩色の翼と鋭い歯が生えた嘴、首は長く蛇のような青い尻尾を持つ巨大な怪鳥。
飛翔しながら、嘴から熱線を射出する。
「っは」
それを片指を結ぶだけで、無色透明の障壁を形取る。
『バリバリの実』の能力で作り出したバリアは、マーズ聖の熱線を容易く防ぎ切った。
こと単純防御に於いては、ワノ国の大名おでんの剣戟を防ぎ切ったこの能力。
如何に覇王色の覇気が込められていようが、唯の熱線如きに打ち破れる道理は無い。
そして覇王色の威圧で意識を失わせたかったら、些か遅すぎた。
「何!?」
「お返しだ。“
「「「「「ぐわッ!!?」」」」」
超磁力を『ジキジキの実』の能力で生成。同時に『ニキュニキュの実』で弾き飛ばされた空気が、超気圧を生み出す。
そして『アロアロの実』の能力によって、ソレ等があり得ざる軌道で怪鳥以外も跳び出さんとした怪物達を押し潰す。
不死身である五老星が、衝撃波に押し潰されながら頭を抱え、思わず嘔吐する。
一部変身が解けて人の姿を晒している者も居る始末だ。
彼らに生じている症状は、単なる体調不良。
だが全天竜人の魂、影、寿命、生命力を奪い超生物と化した存在が、覚醒した複合能力で行っている。
相手が一般海賊ならば、即座に各器系が断末魔と共に機能不全を起こし、失神からショック死さえあり得る威力だ。
単純な加重であればこうはいかなかった。
不死身の肉体を与えられ、幾ら試行錯誤しても再生を遅らせるだけが限度な以上、正道で殺し切るのは不可能。
しかし痛覚を筆頭に、感覚器官は不死身になっても失われる事はない。
耐えられても、限度はある。
『ぐぅうぅおぉオオオおおッ……!?』
「高山病レベルカンストみたいなものだ、不死身でも辛いだろう? ……うーん。カイドウ相手なら悲鳴を上げても、リアクション芸後にすぐに起き上がってそうだな」
だがそれは同時に、幾ら殴っても自動で直っていくサンドバックとも取れた。
つまり、露骨に嬲っていると言える。
押し潰された怪物達の中で、
より正確には、下半身が骨で出来たケンタウロスといった異形の、イーザンバロン・V・ナス寿郎聖。
彼がその手に持つ刀だ。
「権力者としては、貴金属は身に付ける必要があるのは分かる。まぁ、其処の刀持ちは手放せば楽だろうに」
「くッ」
「勿論手放したが最後、その鬼徹は貰い受けるが。僕は必要ないが、欲しいね『
「ッ、──────ォオオオおおッ!!」
その明らか様な侮りに、
覇王色の覇気が込められた咆哮は、超圧力と磁界を僅かだが引き裂く。
一瞬能力に出来た隙間、正常な脳機能を取り戻した瞬間。
それに呼応するのは槍玉に挙げられたナス寿郎聖。
これまた渾身の覇気を込めた斬撃を放ち、島一つ真っ二つにし得るソレが能力を完全に引き裂いた。
斬撃はそれだけに留まらず、そのままゼンの体を真っ二つに切り裂く。
しかし、表情に張り付いた笑みは消えない。
「何!?」
「“
『……!!』
将来、世界最強の剣士と畏れられる男の斬撃を、能力オンリーで
純粋な斬撃・切断能力に対して、『バラバラの実』の能力は無敵に近かった。
「さて、まだまだ能力のレパートリーはあるんだ。どんどん試させて貰うよ」
「嘗めるなッ! 貴様の様な賊、すぐにでも引き摺り落として磨り潰して「おや、地上戦がお望みかい?」───!?」
その巨体故に、既に『ワプワプの実』の能力で懐に転移していたのに、彼らは気付けない。
『見聞殺し』。「他者の意を見る覇気」と称される見聞色の覇気を擦り抜ける技術を、ゼンは悪魔の実の能力で為していた。
「“
標的にされたのは、五老星で最硬強度を誇る
武装色の覇気を流し込み、内部破壊を行う「纏う覇気」、あるいは「触れない攻撃」。
それを奪った影から当たり前の様に習得したゼンは、ソレに能力と覇王色の覇気を重ね続ける。
それを『リキリキの実』の能力で、山とさえ表現できる大岩を持ち上げられる程に腕力を増強。
『バネバネの実』の能力で筋骨をバネにすることで推進力を上げ、『アロアロの実』の能力で矢印の示す方向に向けて攻撃そのものを加速。インパクトのタイミングで数万トン単位で重量を増やし、威力を更に向上。
そしてそれら全てを、超人系最強の攻撃力を誇る『グラグラの実』の能力に相乗する。
「ごッッ……ッ!?」
「『
マリージョアの一角が、空間と共に罅割れ放射線状に粉砕。破壊が行われた。
巨大な猛猪が原型を留めず粉砕され、覇王色の覇気で復元を阻害されて都市全域に散逸する。
この時点で、恐らく特別頑丈に作られたパンゲア城以外の聖地マリージョアは崩壊していた。
「────!」
「おっと」
衝撃にたたらを踏む三人を尻目に、拳を振り抜いたゼンの首元に初代鬼徹の刃をナス寿郎聖が叩き込む。
だが、刃が首を切り裂く前に刀身がガキンッ! と阻まれる。
指を結ぶだけで発動可能なバリアは、斬撃と共に込められた冷気を見事防ぎ切っていた。
「バラバラの能力で油断していると思ったかな? 残念、
「ぬぅッ────!」
「どんどん行くよ。“
『────────────』
今度は全方位、まるでゼン自身がスピーカーとなった様に。
否。事実『ブキブキの実』の通常能力、武器化によって
凶悪なのは、其処に声量を増幅し物質破壊までに至らせる『ゴエゴエの実』の能力。音が聞こえる範囲であれば、防御力を無視して攻撃が可能な『オトオトの実』の能力。そして説明不要な、しかし本質が『振動』である『グラグラの実』の能力と覇王色の覇気で更に相乗。
マリージョア全域が、衝撃波に呑まれていった。
◆
それからも、戦いは続いていた。
あるいは、蹂躙だったのかもしれない。
「……しかし“
「ッ……!」
「これが、強者の見る景色か」
五老星達が無事なのは、彼らが不死身だからだ。
それでも、覇王色の覇気が込められた攻撃は彼らの核を捉え、その復元を遅々とさせている。
幾重にも繰り出される能力に、見下されている彼らは未だ五体満足では無かった。
不死身でさえその有り様だ。他の建造物は、決してその様な理外ではない。
戦い、あるいは蹂躙の爪痕と瓦礫の山。辛うじて原型を留めているパンゲア城。
世界の頂点の都は、とっくに壊滅状態となっていた。
そして一向に問題が解決しなければ、元より現場気質の猿山の大将が出張らない理由は無い。
『──────いつまで賊に拘っている!』
「イム様……!」
「おや、漸くの出勤かな」
五老星の脳裡に響く声に、見聞色の覇気と『ギロギロの実』を筆頭とした知覚系能力でゼンが察知する。
ネロナ・イム聖。
虚の玉座に座り得る、今も隠し庭園に座す現行世界の王がその腰を上げんとしていた。
だが、存在を秘しているが故に決して表に出ず、かつて庭園にさえ足を踏み入れた者が居た際も傍観に徹していたその姿勢が、今回仇となる。
「流石に御大将が出張るなら、遊んでいられなくなるか。まぁそろそろ頃合いだしね」
『!』
その存在の脅威、何より敵対者を一方的に支配下に置く『
現在『四皇』と呼ばれる大海賊達を束ね、『海賊島ハチノス』にて一大勢力を誇った大海賊ロックスを抵抗の末に支配。妻子を殺めさせようとした実績は余りに重い。
仮に所謂『四皇級』と呼ぶべき覇王色の覇気を持つ者であっても、能力に抗するのは至難だと言えるのだ。
ゼンは、その脅威を正しく理解していた。
「コチラも増援を呼ぼうかな。流石に六対一だ、卑怯とは言うまい?」
だから、迷わず札を切る。
今回、『
「“
「何だ……女、か?」
『ドアドアの実』の能力で開いた空間から、一人の女性が現れる。
怪物しか居ない戦場に、決して不相応ではない参入者が。
一人の長い黒髪に青い瞳、歌姫といったデザインと道化師という風体を合わせた服に身を包んだ、美しい女性。
だが美しい容姿は、この戦場でなんの脅威にもならない。
しかし五老星は決して油断しない。自分たちの根城を壊滅させた賊の増援が、脅威足り得ないなどあり得ないのだから。
彼女が口を開き、その歌声を響かせた瞬間、そんな警戒は無意味だった。
『───ᚷᚨᚺ ᛉᚨᚾ ᛏᚨᚲ ᚷᚨᚺ ᛉᚨᚾ ᛏᚨᛏ ᛏᚨᛏ ᛒᚱᚨᚲ────』
歌姫の歌声に、正確にはその歌詞に。
五老星の、恐らくイムも含め全員が青褪めた。
途端、歌姫の周囲を黒い覇気の様なオーラが包み、渦を巻く。
まるで、何か強大な何かが現れる様に。
「……馬鹿な、貴様どうやって。いや、何を考えている!?」
「あらゆるモノは能力の対象下。覇気でさえ、能力が噛み合えば一度は確実に効果は出る。そう、お前達の飼い主がデービーの末裔に外道を働いた様に。
五老星が動揺に叫ぶも、ゼンは穏やかに嗤いながら己の成果を語る。
それは封印されし『歌の魔王』。
「寂しい」「認められたい」「誰かに見つけてほしい」といった、歌を愛する人々の負の感情の集合体。
「言ってしまえば、唯の承認欲求モンスター。なら話は簡単だ。各種能力を総動員し、人受けする外見とそれに相応しい舞台を与えれば良い。最近エレジアじゃあ、絶賛大人気公演中だぜ?」
その禁忌の楽曲の名は────『TotMusica』。
そこに封じられた魔王は、しかし新たな魔王に人の姿を与えられた。
「”
黒いハットを被ったピエロとも竜とも見える頭部の、両腕がピアノの鍵盤になっている異形の怪物。
しかしその頭部に、本来存在しないステージが有った。
そのステージ上に、歌姫はその音色を奏でる。
「”歌姫トットムジカ”。能力者を媒介とせずに、自ら歌え。その傲岸無礼な慟哭を」
◆
怪物という名のステージが、ムービングライトやスポットライトと云う様に光線となって五老星を襲う。
歌姫とそれを乗せる怪物、その両方が同一のトットムジカ。
楽譜と共に『ソルソルの実』の能力で擬人化させられた彼女は、その欲求を満たした主人の願いを叶える事を望む。
それが「音楽」によって成されるというのなら、喜んで歌おう。
『───!』
五老星がそれぞれ攻撃を防ぐも、その顔は酷く険しい。
何せトットムジカは、『ウタウタの実』の能力者が作り出す夢境『ウタワールド』と現実、複数に跨り存在している。
それ故に、現実世界と『ウタワールド』双方に存在するトットムジカを同時に攻撃しなければならない。
五老星とは異なる不死身、だが───。
「逆に言えば、夢境に誰も入れなければ撃破不可能という訳だ」
「貴様……ッ!」
あり得たかもしれない、しかしもうあり得ない可能性に於いて、未来で『四皇』となる『赤髪海賊団』。
彼らは暴走したトットムジカを相手にし、しかし能力者が力尽きたことで辛うじて事態を収拾できた。
即ち、その戦闘力は『四皇』という一大勢力に匹敵する。
「───だが、どうやら足りないかな?」
瓦礫の山を更地に変える勢いの破壊を、しかし新たな魔王は満足しない。
その不死身は脅威だが、残念ながら攻撃能力という一点でトットムジカはそこまで突出しては居ない。
無論相手が不死身で、かつ『四皇』という基準に於いては、だが。
そもギミックボスとギミックボスをぶつけても、千日手が始まるだけ。
つい自慢したくて呼んだが、失敗だったとゼンが自嘲する。
「早速で悪いが、トットムジカ。曲調を変えよう」
ゼンの言葉に歌うのを止め、彼の指示を待つ
『! 今だ、変われサターン!!』
それの隙に、ジェイガルシア・サターン聖の背から黒い影が伸びる。
他者を媒介とした顕現。
ネロナ・イムの意思の出現だが、続けられた言葉にソレが止まる。
「タイトルは────『
『………………は?』
サターン聖の身体から顕れたイムの溢れんばかりの覇気の、その不意と共に勢いが止まる。
その動揺を嘲笑うかのように
「『“麒麟”とウタウタの実は好相性』。そう言った筈だが?」
プロデューサーからの指示に歌姫から一転、指揮者となったトットムジカは創り出したタクトを振るい、喜んで曲を奏でる。
『TotMusica』の様な、アグレッシブに動きながらもダークさや神秘的な雰囲気から一転。
ドンドットット♫ ドンドットット♪ と、太鼓の様な音色と共にポップなリズムが響く。
その鼓動に呼応する様に、壊滅したマリージョアがゴムの様な弾力で弛めく。
それが、イムにとってどれほどトラウマか。
この賊は分かっているのだろう。
すでにジョイボーイの覇気を再現され、イム当人が近くにいるのにも関わらず。
あくまで他者の身体越しでしか、この場に顕れていない事実に。
本人がこの場に出られていない状況に。
そこに、更なる追い打ちを掛けられる。
『あり得ぬ、あってはならぬ……!!』
「何分実物をほとんど知らないからね、かなり僕の脚色が入っている。要は先程君たちの肝を冷やした開戦の号砲、
黒い稲妻を思わせる覇王色の覇気が集い、『
白い蒸気の様な羽衣を纏う、髪や服も純白の出で立ち。
飛び跳ねる様なポージングが、背後で輝く月に似合っていた。
「『
『あひゃっひゃっひゃっひゃっ!』
『ジョイ、ボーイ……!』
解放の戦士。太陽の神。そして先代が約千年前、“空白の百年”にてイムと戦った『原初の海賊』ジョイボーイ。
そして未だ生まれていない、未来の海賊王。
悪魔の実『
人々を笑顔にする太陽の神は、しかし支配と圧政を齎す者にはどう見えるか。
「【夢を見るな!! ……あんな奴らは二度と現れぬ……!】だったかな。じゃあ夢を見れば現れるのかな? ははははは! 能力さえ有れば現れると、再現性が出来てしまったねネロナ・イム!!」
『きッ、様ぁ……っ!!』
「これから毎日ジョイボーイとデービーの夢を見よう!夢枕に立ってくれるかもしれないぜ!!」
『キサマァアアアアアァァッ!!!』
────そこからも、蹂躙だった。
半狂乱となった、サターン聖が依り代となったイムが暴れるもトットムジカは勿論、ゼンも徹底的に距離を取って遠距離攻撃に徹していた。
近付こうにも両者共に飛行能力を有し、挙げ句『ズシズシの実』の重力操作で叩き落される。
勿論、地上では白い神が大暴れ。
『物語の主人公』の様に、
挙げ句、覇気だけで五老星を圧倒出来てしまう始末。
そしてゼンの
「“
「「「「「『!』」」」」」
壊滅したマリージョアに『オペオペの実』と『バリバリの実』の能力によって巨大な結界が展開され、マリージョア外とは完全に遮断された。
その内部で起こっている全てを、領域内に密閉されたが故に。
何かする気だ。
そう判断した五老星は、しかしトットムジカとニカによって妨げる事も叶わない。
だが、内心油断が有った。
彼らは不死身。どれだけ刻まれようと、すぐに逆行するが如く再生する。
これまでの攻防でどれだけ圧倒されようが、不死身の攻略自体はまだ成されていない。
だから、敢えてソレをしなかったゼンは凄惨に嗤う。
「“
変ずるのは、世界一の頭脳を持つ男が未来で兵器研究に於ける『究極の人類』と定義する、人型兵器。
ゼンの白い肌が褐色に、背中に黒い翼が羽ばたき炎が灯る。
それは『ルナーリア族』と呼ばれる、自然界のあらゆる環境下で生存できる種族の模倣。
能力再現である『グリーンジーン』の再現段階で変化可能だった、偽神の兵器。
そんな熾天使の名を冠する兵器は、とある炎を動力源としているそうな。
製作者曰く、創るべきではなかった無尽の炎。
その炎は、太陽の様だった。
「“マザーフレイム”」
その本質は、核融合反応。
炎の形状をしているが故にメラメラの実の能力で再現できたが、その危険性は元日本人であるゼンがこの海で誰よりも理解していた。
本来上位関係であるマグマグの実の能力相性を、容易く覆す核炎を弓矢の様に形状を整える。
そして、マリージョアへ解き放った。
「【硫黄と火を神の所より、即ち天よりソドムとゴモラに雨しめ。其邑と低地と其邑の居民、及び地に生る処の物を盡く滅したまへり】───さぁ、終幕だ」
そうして、この戦い最後の衝撃が奔る。
瞬間、全てが宙に届かんばかりの火柱に呑まれた。
『─────』
目撃者であるロビンの瞳が、息を呑むように揺れる。
結界という遮蔽物があるが故に、放射能汚染を免れるのだ。
もしソレが無ければ、能力で増やした部位が致命的な後遺症を受けていただろう。
バスターコールという、海軍中将5人以上・軍艦10隻以上という国家間の戦争クラスの大戦力で無差別攻撃。
それで故郷を滅ぼされたロビンだが、それと比較して尚次元が違う。
もしマリージョアが島国だったのなら、島ごと消滅して余りある前代未聞の大破壊。
トットムジカとニカが大暴れした時点で、既にマリージョアという悪徳と背徳の都は既に跡形も残っていない。
それを、更に跡形もなく焼却する。
「さて検証しよう、醜悪な舞台装置」
それはただ、闇夜を照らす太陽の如く。
核熱とは、即ち太陽が自身を燃やす炎である。
つまり、日の光。
それはゼンが思い付いた、神の騎士団や五老星といった不死身の存在への対応策。
超人系の悪魔の実の中でも、
この能力によって影を奪われた者は、日光を浴びると消滅する運命を強いられるという。
「能力によって不死身となった者が
巨大な火柱が途絶え、かつて聖地と呼ばれた場所を閉ざす領域を能力ごと解除する。
まだ燻っていた核熱が放射能汚染ごと消失したのは、ソレが能力由来であったからだ。
でなければこんな高所で使えば世界中が壊滅的被害を受けていただろう。
密閉されていた煙が、『
漸く灰燼が収まった後。五体の異形は勿論、墨で塗り潰されたかのような黒塗りの怪物も─────何も、存在していなかった。
◆
マリージョア消滅。
その一報は、予め『ギロギロの実』の能力で選別。『ニキュニキュの実』の能力によって海軍本部に弾き飛ばされた者たちによって異常を知らされ、駆け付けた海軍が最初に把握した。
飛行能力、特に速度に於いて最速を誇る当時海軍中将であったボルサリーノが、最初に惨状を確認。
マリージョアが有った場所に「何もなかった」、これまで世界政府が行っていた「国や島を地図から消す」という所業と同じ事が行われていた。
その後当時マリージョアを不在とし、シャボンディ諸島を筆頭とした各地に出ていた天竜人が次々に襲撃を受ける。
その末路は目撃した政府役人曰く、影を奪われ日光の下で塵も残さず消え去るものだったという。
コレを以て件のマリージョア消滅と、その場に居たであろう五老星を含めた『天竜人連続殺人事件』────否、『天竜人絶滅事件』を同一犯と海軍は位置付けた。
犯人はその姿を隠そうとせず、短い白髪に黒いスーツの壮年の男性だったという。
無論それが、悪魔の実の能力で偽られた未来の姿だとしても。
世界政府も、本拠地が特権階級ごと消失した以上、再建は根幹レベルで行われなければならない。
現在は世界政府全軍総帥のコングが全権を代行。残された役人と共に再建中の世界政府の指揮を行っていた。
史上最悪の大罪人の誕生は、しかし世界に密かに歓迎される。
海軍は犯人を、犯行時に呟いていた言葉から『“魔王”オールフォーワン』と名付け、史上最高の懸賞金を掛けた。
しかし天竜人の悪行を知る人々には、海軍内部を含め『“竜殺し”』と秘かに讃えられる。
恐い竜から、人々の安寧を取り戻してくれたのだと。
一方その頃、その大罪人は───。
「抱けえっ! 抱けっ! 抱けーっ!」
「な、どうしたんだい? 初めて会ってからずっとその調子じゃないか……!?」
「はよオメェが幸せにすんだよォ!? 今日にでも式を挙げろやハァン!?」
「えぇっ!?」
「あの子は一体どうしたのさ? あ、ウチは大歓迎だよくまちー!」
「あはは……、私もわかんないかも……」
南の海の島の、
解放した奴隷達の治療の為に滞在していたとある革命軍幹部へ、盛大にきぶっていた。
ゼン・シガラキ
海賊王処刑と同時期にフレバンス王国に発生。外見があまりにまんまなので、某ヒーロー作品のラスボスの名前を名乗る。まぁ転生者。
「このままやとこの国滅びるやんけ!」と、孤児よりも背景が怪しい自分に、金銭的余裕有ってこそだが親身に接してくれた国と人々を護るため行動。
当時のフレバンスの財力で、強引に『ブキブキの実』を確保。フレバンスの全住民に『ウォシュウォシュの実』や『ニュキュニュキュの実』で珀鉛を摘出、根治は兎も角一端の治療に成功する。
ついでに、当時口減らしで捨てられたベビー5を確保。
また能力の試運転に『ギロギロの実』と『ワプワプの実』、保険に『ラキラキの実』でロビンを確保。
その後『グリーンジーン』開発し、一年の訓練と革命軍との接触を経てマリージョアを襲撃。
そのまま得た力で、フレバンス王国を『フワフワの実』で島ごと青海を脱出する。
原作を盛大に破壊したが、反省も後悔もしていない。
なのでギリギリワノ国にも介入し、掻き回した後にヤマトを拐かす。
ニコ・ロビン
バスターコール後の、人間不信がまだ軽度の最中にゼンに保護される。
その後はドラゴンに預けられたりしたが、マリージョア襲撃時にゼンのサポートに。
ゼンに深い恩義を感じているが、同時に何もかも掌で転がす姿に不安と不審が混ざっていた。
が、くまにきぶり倒して結婚を強要しようと錯乱している姿に払拭、内心かなりホッとする。
トットムジカ
エレジアで封印されていた、映画『ONE PIECE FILM RED』のラスボス。
本作では『ソルソルの実』によって擬人化、支配系能力を総動員されて従属された。
それはそれとして、エレジアを中心にライブ公演を行い、映像電伝虫こそ時代的にそこまで普及していないが、それでも絶大な人気を博している。
くま&ジニー
マリージョアへの奴隷解放計画をドラゴンと話している姿と、自分たちにきぶり倒している子供姿に困惑が止まらない。
なおジニーはどんと来いで、これで少しでもくまの自己肯定感が増すのを期待している。
本当は二話分書き上がってから投稿予定だったけど、切り処が無かったので二万字に膨れ上がるという。何で?(自問自答)
本作は原作ONEPIECEの鬱展開への鬱憤の発散の為に書きました。
オダセン聖はそろそろエエ加減にしてもろて。
次の話は……色々出し切ったので、予定は今の処はありません。
やるとしてもワノ国関連かなぁ。
二万字なので誤字脱字、文章の修正損ないによる謎の文章などが多発するかと思いますので、随時修正予定。
いつも感想有難うございます。