霧雨魔理沙をはじめ、数々の追手が返り討ちに会っていた。
そんな中、狐憑きの女性は傍観者に徹していた。
輝針城の異変から数日が経ちました。異変の裏にいた鬼人正邪さんは未だに捕まっていません。私の周りでも、彼の者に挑戦しては敗れているという報告を受けています。
「―で、良いとこまで行ったんだけど、運悪くやられちまったんだぜ。」
「さっきからそればかりね。」
魔理沙さんの話をうんざりとした様子で聞いている霊夢さん。なんでも、魔理沙さんも正邪さんに挑んだものの、あと少しというところでやられてしまったそうです。
「―だそうですよ、針妙丸さん。」
私は縁側に置いてある竹編みでできた籠に話しかけました。中から出てきたのは小さな小人さんです。彼女は少名針妙丸さんです。彼女は異変を起こした本人であると同時に被害者でもある娘です。
「正邪…。大丈夫かな…。」
「どうでしょうねぇ。」
この娘は正邪さんに利用されたのですが、それでも彼女を友達として大切に思ってくれています。優しすぎる娘ですよね。
「さて、そろそろ寺子屋に行く時間ですね。」
「お?もう行くのか?」
「気を付けるのよ。」
「いってらっしゃい。」
「はい。では、みなさん。行ってきます。」
「ふむ。今日はここまでだ。」
はい、というわけで授業は終わりました。え?この時間の間は何かって?気ニシタライケマセンヨ?
「お疲れさまです、慧音さん。」
慧音さんが授業を終えてきたので、私は彼女にお茶を出しました。
「あぁ、ありがとう霙。」
お茶に手を付け、喉を潤してますね。では、早速…。
「そうそう慧音さん。」
「うん?」
「そろそろ家を移ろうと思っています。」
「ブーっ!?」
お茶を吹き出しました。はい、これを狙ってました。こうやって人を弄るの、本っ当に楽しいですね。あ、ちゃんとお盆でガードしましたよ?
「けほっけほっ…。み、霙、それは本気なのか?」
「えぇ、はい。」
「霊夢には言ったのか?」
「勿論言ってませんよ?」
あの霊夢さんですからね。お金の手に入る唯一のルートである私を手放したくないと思いますし、私はそろそろ当代の博麗に全て任せておいても大丈夫だと思いますからね。ちなみに後半の部分は言いませんよ?いうわけがないじゃないですか。
「ちゃんと言うんだぞ。そういうことは。」
「えぇ、言いますよ?」
引っ越しの当日にですがね。
「…変なこと考えている顔をしているぞ。」
「…ふふ。そんなことないですよ?」
その後、他愛のない会話を終え、私は帰路につくことにしました。
「それでは、慧音さん。また。」
「あぁ、また明日な。」
さて、最近暗くなるのが早いですし、早めに帰りましょうか。
「あれは…。」
帰りの途中。うろうろしている人影を見つけました。その人影は少し消耗しているようですね。足取りが少し覚束ないようです。ちょっとつけてみましょうか。人影を人気のない林の中にあった岩に腰掛けると休憩に入ったようです。これは私の気づいていませんね。ではちょっと驚かすとしましょうか。
「みぃつけたぁあ…。」
「―ッ!?」
その人の周りに青白い炎がいくつか浮かび上がりました。あ、勿論私ですよ?
「な、なんだっ!?誰だ!?」
相当気が立っているのでしょうね。結構荒れています。まぁ、しょうがないことでしょうけど。私は影から姿を現すことにしました。
「こうして会うのははじめてですね、鬼人正邪さん。」
そう。そこにいたのは幻想郷で指名手配されている鬼人正邪さんでした。今までかなりの数とやりあってきたのでしょうね。
「お、お前は誰だっ!」
「私は古城霙。聞いたことはないですか?」
「博麗神社に住んでいる妖怪だったか…。」
「概ねそんな感じですね。」
「アンタも私とやろうってのか?」
思った通りです。今までと同じで戦闘になると思っているのでしょう。
「そうですねぇ。戦ってもいいのですが、私に勝てますか?」
「はっ、これだから強者はっ!それをひっくり返すために革命を起こしてんだよっ!」
「ご尤もですね、ふふ。」
私が戦闘態勢に入らないことにイライラしてきたみたいですね。あちらから見れば、強者の余裕に見えるのでしょうね。
「鬼人正邪さん。貴方は革命の先に何が見えますか?」
「なに?」
そうですね。ここは理不尽な現実と屁理屈を少々叩きつけるとしましょうか。
「貴方の下剋上、弱者が支配する世界の先に何があるのでしょう?」
「何が言いたいんだ。」
「弱者はいずれ強者、少なくとも力を持つようになります。まぁ、努力次第ですが。」
「……。」
睨んでますね。怖くはないですが。
「貴方自身はどうなのでしょうね。」
「私がなんだよ。」
「貴方は今までの逃亡でたくさんの方と戦ったそうですね。そして過程はどうあれ勝利しています。貴方は強者ではないのでしょうか?強者が弱者の支配する世界を作ろうとしているなどと、信憑性がないですよ。」
「アンタに何がわかる…。」
「何もわかりませんよ?だからこそ純粋に論じているのですから。」
屁理屈がある時点で純粋じゃないって?気にしたら負けです。
「それに強者よりも強い強者がいますし、弱者よりも弱い弱者がいます。」
「ご託はいい。私に諦めさせようってか?」
「どう捉えようが、貴方の自由です。」
そろそろ帰らないと霊夢さんが心配するでしょうし、そろそろ行きましょうか。
「なんだ?逃げるのか?」
「…そうですね。ちょっとカチンと来ちゃいました。焔。」
名前を呼ばれ、具現化する青白い炎の狐。突然現れた焔に再び警戒し出しちゃいましたね。でも、そんなに固くなっていいのでしょうか?
『なんの用でいやがりますか?』
「そこの天邪鬼の相手をお願いします。」
『巷の弾幕勝負でいやがりますか?』
「紫さんは手段を問わないと言っていましたからね。痛めつけるくらいで結構です。」
『炎だけに痛め(炒め)つけるですか?』
おかしそうに笑ってくれちゃって…。はぁ。まさか焔に揚げ足を取られるとは…。
「それではお願いします。」
『りょーかいでいやがります。』
「焔、もういいですよ。」
頃合いを見計らい、焔を私の中に戻してっと。ほとんど一方的でしたね。危惧していたことをしなかったのでよかったですが。もしかして、それほど力がないのでしょうか?
「気分はどうですか?」
「はぁ…はぁ…。」
「まぁ、こちらは完全な幽体ですからね。本来の私、二つの能力を有している時の私が相手でなくてよかったですね。」
私に見下され、屈辱って感じですね。…ふふふ、そそりますね。
「私を…スキマ妖怪、に…はぁ…突き出さ、ない、のか?」
「私は幻想郷の過去。過ぎ去った存在です。今のことは当代に任せますよ。」
「……?」
「言って理解できるとは思っていません。それではいずれ。」
「…礼はいわねぇよ。」
流石は天邪鬼。俗にいうツンデレさんですね。誰かさんに似ています。
「針妙丸さんたちに貴方のことを伝えておきます。仕留めることが出来る絶好のチャンス、と。」
そこまで私は甘くありませんからね。あ、あの人の前では別ですが。
「正邪にあったのっ!?」
「はい。」
針妙丸さんは友達の話に喰らいついてきました。大切な友達ですからね。当たり前でしょう。
「―で、倒したの?」
「倒していませんけど?」
倒してはいませんよ。倒しては、ね?
「…何考えてるの、霙?」
「私はできるだけ異変に関与しないようにしているので。」
「それとこれでは話は別でしょっ!幻想郷にも関係してるのよ?」
「霊夢さんにしては随分なやる気ですね。」
「…はぁ。まぁいいわ。魔理沙とか早苗もやられてるみたいだし、そろそろ行こうかと思ってたのよ。」
お祓い棒を手に持つと、何処かへ出かけていきました。狙いは正邪さんでしょうね。
「…針妙丸さんはどうしたいですか?」
「…どうって?」
「正邪さんをどうしたいですか?勿論友人として。」
「……。」
考えこんじゃいましたか。幻想郷として考えれば、反乱分子。この娘から考えれば、大切な親友ですからね。
「どうするかは貴方次第です。私は傍観者、当事者は貴方です。」
さてと、私はいい空家がないか探さないといけませんからね。場所としては寺子屋の近くがいいですね。
本文を左右反転させようと思ったのは秘密。
禁初幻譚のフラグをちゃっかり入れるスタイル。