よくある転生の話~携帯獣の話~   作:イザナギ

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三話  初めての相棒

 ――あのクソ親父……帰ってきたら一発ぶん殴る……。

 

 

 ゾクッ!!?

 な、なんだろう、この悪寒は……。

 しかも空耳でカナタさんの声が聞こえたし……。

 すごい恨みつらみがこもってたしっ……!!

 とりあえず、オダマキ博士って人に会うことがあったら、今は帰らないように言っておこうかな……。

 

 そんなオレは今、101番道路に来ています。

 なんでこんなところに来てるのか、と言われれば、ただの雑用。

 母さんから頼まれて、隣町のコトキタウンまで雑貨を買いだしてきたわけです。

 用事は無事に終わって帰ってくる途中なんですけど。

 

「た、助けてくれぇ~~~………」

 

 ……なんか聞こえた。

 周りを見渡せば、その声の主は近くの大木にいるようす。

 ……なんで分かったかって、木の根元によく知らないポケモンが三匹、上へ向かって吠えてるから。

 三匹とも小さくてかわいいんだけど、口元から覗く鋭い牙が痛そうだ。

 それはともかく。

 

「そ、そこの君ぃ~~……」

 

 あ、オレに気付いたらしい。声のする方を見てみると、誰かが木の上にしがみついているのが見えた。枝や葉っぱにさえぎられてよく見えないけど、体格と声の感じからして男の人だろう。

 とりあえず雑貨を近くの木の根に置いて、ポケモンたちが気付かないように近づく。

 俺が近づいたことが分かったのか、木の上の人がまた声をかけてきた。

 

「わ、私のカバンがそこにあるから、中を探ってくれぇ~~」

 

 木の上から頼み込むように指示を出してくるので、とりあえず良心の命ずるまま、言うとおりにすることにする。

 ん~、近くに落ちてるカバン……あった。男の人がしがみついている木から少し離れた草むらに放り投げられている。

 それを拾って中身を探ってみると、変わった機械とモンスターボールが三つ入っていた。

 これをどうしろと。

 まぁ薄々感じてはいるけど……。

 

「その中から一匹使って、追い払ってくれぇ~」

 

 あ、やっぱり。

 そう思って、ボールの中身を見た。

 モンスターボールは赤と白に分けられていて、赤が上、白が下。上の赤い部分は透明で、中に入ってるポケモンを見ることができるようになっている。

 三匹とも縮小されてボールに入っているけど、多分ボールの外に出しても目の前のポケモンたちと同じくらいの大きさにしかならないだろうと当たりを付けた。

 それにレベルも少々心許(こころもと)なさそうだ。

 相手にするポケモンはすばしっこそうだけど、小柄だし撃たれ弱そうにも見える。なら一撃一撃が重い方が良いのかな?

 

 うーんそれなら……よし。この子にしようか。

 決めたポケモンが入っているボールを手に取り、近くに落ちていた枝をポケモンたちに投げつける。

 ……こっちに注意が向いた。

 ただし怒ってるのだろうか、こっちに唸り声をあげてきてる。

 三匹同時は面倒だな、とか思ってると、一匹だけ前に出てきた。どうやら、一騎打ちをご所望の様子。

 まぁ数のハンデがなくなるからいいんだけど、これに勝ったら三連戦になるのかな。

 それは面倒だけど……それでも、やるしかない!

 

「出ておいで!」

 

 そう言ってボールを放り投げる。

 するとボールが二つに割れて、水色や青を主体とした小柄な影が飛び出した。

 しかし小柄といえども、ボールには入りきらない大きさだ。……何度も見てきた光景だけど、本当に、モンスターボールってどうなってるんだろ。

 

 まぁその思考は隅っこにおいて、戦闘に集中しよう。

 技が分かればいいんだけどなぁ……なんて思ってたら、カバンの中に入っていた変な機械を思い出した。

 こっちが出したポケモンを警戒してるのか、なかなか襲いかかってこないポケモンたちに注意しながら、機械を手に取る。

 手に取ってすぐ、作動音をあげて機械の表面が開いた。カバーが開いてその下から、携帯ゲーム機のようにボタンが配置された操作盤のようなものが現れる。

 と、端っこにある白いモンスターボールを模した部分に触れた瞬間、シャッター音が鳴ると同時に画面が点灯して、何かを表示し始めた。

 

 ――ふんふん、目の前の三匹は『ポチエナ』という名前のポケモンらしい。シャッター音はポケモンの姿を確認するために使用するカメラのもののようだ。

 ついでに自分が出したポケモンも撮影してみると、こちらには『ミズゴロウ』と出た。

 さらにありがたいことに、今現在使える技まで表示してくれるらしい。

 ……といっても“たいあたり”ぐらいしかなんだけどね。

 さてどうしようか。

 

 と、ポチエナが一吠えして、ミズゴロウに飛び掛かってきた。ゆっくりしてる場合じゃないや!

 

「ミズゴロウ、かわして!」

 

 一声鳴いて返事をすると、ミズゴロウは横っ飛びをしてポチエナの攻撃を回避する。

 ポチエナは前足から軽やかに着地。見積もった通り、身のこなしは軽いようだ。

 

「“たいあたり”!」

 

 鳴いて答えるとミズゴロウは“たいあたり”を繰り出すが、ポチエナは軽くかわすと、逆に“たいあたり”をミズゴロウに当てる。

 ミズゴロウにはそれほどダメージが入っていない様子。なら、まだ行けるね。

 でも相手に(かわ)されっぱなしじゃ、(らち)があかない。

 

 じゃあどうしよう……。

 ――――『相手が躱せない状態』で攻撃を当てればいいのか。

 

「ミズゴロウ、そこで待機して」

 

 ミズゴロウにその場にとどまるよう指示。

 意図は分かってないながらも作戦の一環であることに感づいているのか、ミズゴロウはその場にとどまり、体の方向だけはポチエナに向ける。

 自分の攻撃が当たったことに味を()めたのか、ポチエナはもう一度“たいあたり”を仕掛けるようだ。

 

 半分飛び上がりながら、重力を味方に付けての“たいあたり”。

 食らえば結構な打撃になりそう。……でも!

 

「今だ、“たいあたり”!!」

 

 空中にいたんじゃ、飛行ポケモンでもないと技を避けられないでしょ?

 

 ゴツッ! と鈍い音がして頭同士がぶつかった二匹はともにフラフラとよろめくが、先に倒れたのはポチエナの方だった。

 やっぱりスピードがある代わりに防御力や体力面はあまりないようだ。ミズゴロウの方は、けっこうダメージを喰らっちゃったなぁ。

 ――まぁ大丈夫だろうけど。まだ残りが二匹もいるのに肉を切って骨を断つ指示を出したのは、“三連戦を考慮する必要がなかった”からだ。

 

 ……ほら、気絶した一匹を除いて、文字通り尻尾を巻いて逃げてしまった。ちょっと薄情だなぁ。とりあえず、さっきの戦いで気を失ったらしいポチエナの体にできた傷に、さっき買ってきたばかりのきずぐすり(人間用)を塗っておいた。

 モンスターボールは持ってなかったから野ざらしのまんまだけど、ミズゴロウ君に見張っててもらおう。

 とにかく当面の危険がなくなったと判断して、木の上の人に声をかけた。

 

「いなくなりましたよー」

「――あ、ありがと……うわっ!!」

 

 あ、木の枝から滑り落ちちゃった。擬音で表すなら『ズデェーン!!』って感じかな。

 ……大丈夫なのか? ……けっこうな高さからだったけど……。

 

「あいたたたぁ~……」

 

 ……大丈夫っぽい。

 でも、一応聞いとこう。

 

「大丈夫ですか?」

「いやぁ~、うっかり彼らのテリトリーに足を踏み入れちゃってね。追いかけられて木に登ったは良かったんだけど、カバン落として対抗手段を無くしてたんだ」

「いや、木から落ちた事の方なんですけど……」

 

 俺の心配とは別のことを話す男の人に言ってみると、

 

「フィールドワークにはこのくらいのことは当たり前なんだよ」

 

 そういって豪快に笑われたら、なんかそんなことを心配したオレが馬鹿らしくなってきた……。

 

「そういえば、なんであのポケモンたちは逃げ出したのかな?」

「ああ、それはこれに書いてあったんですよ」

 

 二匹が退却したことに不思議がる男の人に、機械を使ってポチエナの項目を呼び出して、画面に映し出された文字を見せる。

 

「『動く物に対してしつこく噛み付く習性を持つが、反撃されると尻尾を巻いて逃げ出すなど気の弱い部分も併せ持つ』、か。だから逃げ出したのか」

「はい。だから挑みかかってきた一匹を倒せば、あとは逃げるんじゃないかと思ってました」

 

 もっとも、この機械を持ってなかったらごり押ししてたかも。

 ……それにしてもフィールドワークしてるって言ってたな。カナタさんもフィールドワークが主な仕事だって言ってたけど、この人も研究者だったのか。

 カナタさんとも知り合いだったりするのかな?

 

「あ、そうそう、私の名前はオダマキだ。オダマキ博士って呼ばれてる」

 

 ……はい、思いっきり身内でした。

 それにしても、白衣に半ズボン、サンダルのような履物をはいて頭はボサボサ、揉み上げ付近から顎にかけて無精ひげが生えてるこの人が、あのカナタさんやハルカの親だとはちょっと思えないな。

 でも失礼だから口にしない。

 

「本当に、ありがとね」

「帰る途中でしたから、何でもないですよ」

 

 そう言いながら、ほったらかしてた雑貨を抱えると軽く会釈をして帰ろうかと思ったんだけど。

 

「いや、お礼がしたいから、研究所へ来てくれないか?」

「…………えっ」

 

 いやでもあの悪寒がよみがえる。なぜかと言えば、カナタさんの今後の予定を知っていて、研究所にいることは分かっているからだ。

 部屋で話していた時も、カナタさんから愚痴のように「消えたら困るのに放浪癖持ってる」、「親父がいなけりゃ迷惑を(こうむ)るのは俺たちだ」など、博士がいなくなってた場合の苦労も聞いていた。

 そしてその「消えたら困る」本人がこんなところにいる。

 

 ……なんとなく研究所に行きたくない……。

 いや、怒られるのは博士だけだと思うけど、それでも行きたくない……。

 でも他人の頼みを無碍(むげ)にはできないし、オレはそのまま研究所へついて行くことに。

 どうかカナタさんの怒りが収まってますように、と祈りながら。

 

 

 十分ほどで研究所の到着。

 ……なんか、ものすごく負のオーラを感じます。

 その異様な雰囲気に気づいていないのか――実際気づいていないらしい――そのまま研究所の扉を開けるオダマキ博士。

 

 能天気に――

 

「ただいまー」

 

 ――なんて言ったものだから、なんか眼を血走らせたカナタさんの

 

 ゴスッ!

「ウゴッ!」

「どこほっつき歩いてやがったんだ、このクソ親父ィ!!!」

 

 ドスの効いた怒声と、顔面への辞書並みに太い本――ちなみに角――の直撃がお出迎えしました。

 カナタさんが怖えぇ……。

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 どうにか目途(めど)がついてきたころ、

 

「ただいまーー」

 

 なんて声が聞こえたので、手近にあった『ポケモンの生態』(600ページ超)を全力で叩き込んでやった。

 

「どこほっつき歩いてやがったんだ、このクソ親父ィ!!!」

 

 後ろにいたユウキ君に当てなくてよかった、と妙に冷静な頭が語る。

 ちなみに頭の中に親父を心配する声はない。どうせ復活するから。

 

「あいたたた~……」

 

 ほらね。

 

「まったく……何を怒ってるんだい、カナタ」

 

 てめぇが原因の9割じゃ、放浪癖。

 後ろで苦笑いを浮かべていたユウキ君の顔色が段々青褪(あおざ)めてくる。

 そらそうだ。今の俺は鬼みたいな形相をしてるだろうからな……。

 

「あの、理由あってのことですし……」

「君の証言は後で聞くよ、ユウキ君」

 

 笑みを浮かべながらドスを効かせた声でユウキ君の発言を封殺し、親父に詰め寄る。

 ……さぁ、事情聴取といこうじゃないか?

 

 

 

 ~三十分後~

 

「フィールドワークの基本は現場の状況確認だろ。むやみやたらに入ってくからそうなったんだよ。ちょっとは反省しろ」

「いや~、けっこう生態系に変化があったから、居ても立ってもいられなくてね……」

「仕事終わってからでも良いだろ!! 生態系は一日やそこらで変わらねーんだからよ!!!」

「そんなこと言ってたら、重大な変化に気付けないだろう? そうなったら学者としての名が廃る!!」

「それをまとめるデスクワークやんねーと、なんか見つけたって報告も何もできねーだろ!!! 学者云々(うんぬん)以前に人間としての名が廃るぞ!!!!」

 

 俺は、説教していた。

 何が悲しくて一回り二回り離れた実の親を説教せにゃならんのだ。どっちかっていうと俺の方が説教される側だったのに……。

 

 ちなみに親父が襲われてた時間帯は、ユウキ君が通りかかる直前。長い間木の上にいたわけじゃなかった。

 つまりユウキ君が助けなければ、俺の労働時間や負担がさらに増えてたことになる。

 ありがとう、ユウキ君。

 

 ちなみに、

 

「それにしても、本当に良いんですか? ミズゴロウ、もらっちゃって」

「良いんだよ。言ったでしょ? お礼だって。それに初心者用のポケモンだから、扱いも簡単なはずさ」

 

 ミズゴロウはユウキ君の手持ちポケモンとなっていた。

 なんでも、持ってた三匹の中で一番なついてしまったんだとか。

 まぁユウキ君も満更(まんざら)でもなさそうだし、大切に育ててくれそうだと思う。

 

「俺からも、そいつをよろしく頼む」

「はい、しっかり育てます!」

 

 うん、良い返事だ。

 

 ユウキ君はまだ家の手伝いが残ってるそうなので、ここで帰ることとなった。

 そして俺は、仕方ないので一段落するまで親父を手伝うことに。

 もちろん、比重は親父の方が圧倒的に多い。

 本当は全部押し付けたかったが、今日は我が家でセンリさん一家の歓迎パーティがある。近所の奴らも何人か参加するらしいし、親父と言えどもほっとくのはかわいそうだ。

 助手二人もパーティに招待することで手伝ってもらってる。

 

「……賑やかになりそうだな」

 

 などと一人ごちれば

 

「ん? さっさと手を動かせよ」

「そっくりそのまま返すぜ、親父」

 

 ……さっさと終わらせるか。

 

 

 

 

 

 

 そして夕刻。

 

『ようこそホウエンへ! ようこそミシロタウンへ!!』

 

 クラッカーの音とともに、この場に集まったみんながセンリさん一家に向けて、言葉を贈る。

 と同時にこれは、パーティ開始の合図だ。みんなおもむろに行動しはじめる。

 うちには結構広い庭があるし近くにはユウキ君の家ぐらいしかないので、主な目玉は庭で行われるBBQだ。

 もちろん家の中にも、母さんが腕によりをかけて(そしてハルカやユウキ君のママさんも手伝って)作った料理が並ぶが、思いのほか人が多く集まってしまったので、急遽バーベキュー用のコンロや肉、野菜などを調達して、バーベキュー大会を開くことになった。

 大人たちによるBBQの準備ができるまでの間、子供たちや手の余った大人たちはジュースやお酒を飲みながら、母さんたちの手料理に舌鼓を打っている。

 あと、目ぼしい物と言ったらハルカの友達がユウキ君に自己紹介してたり、バーベキューの後に行われることになっている花火を心待ちにしているちびっ子たちがいるぐらい。

 俺もユウキ君と同年代の男衆をけしかけて、ユウキ君に声をかけさせていた。

 

 と、ほとんど準備が終わったのか、大人たちがコンロで肉を焼き始める音がする。

 その音を聞きつけ、子供たちが我先にと庭へ駆け出した。こけたりコンロ倒したりするなよ~。

 そして家の中が、一気に静かになる。

 家に残ったのは、昔話に花を咲かせているのだろう飲み合ってる親父とセンリさんと、気が合ったのか、おしゃべりに興じる母さんとママさん。ユウキ君とハルカもいるな。

 マサトはちびっ子たちに連れられて、バーベキューの方に行っていた。

 

 親父とセンリさん、母さんとママさん、ユウキ君とハルカ。マサトは外でちびっ子たちと戯れる。

 ……あとは言わなくてもわかるな? そう、いわゆる『ボッチ』状態だ。この“悪意はないけどハブられる”状態が、一番つらい。だってどこにも入っていけないしさー。タイミングも悪いし……。

 

 これで俺にも相手がいればこの状態は解消されるんだが、そんな存在が―――いるんだな、これが。

 つまりは『彼女』ってやつだ。まぁけど、ぶっちゃけいろいろ都合があって、そう名乗ってるだけなんだよね。

 だから、本当の意味での『恋人』じゃないんだなこれが。

 で、その『彼女』っていうのは

 

「カナタさん、お久しぶりです」

「おう、前に旅先で会った以来だな、“ソラ”」

「……ごめんなさい」

「……はぁ、またか」

 

 俺の魂を取り違えて、俺が転生することになった原因の張本人の『天使』だったりする。

 だから顔を合わせる度にこんな風に謝罪の言葉を述べてくるけど、正直俺はこの世界に来れて良かったと思っているので、この“ソラ”が謝るのは筋違いだとも思ってる。

 まぁ原因作っちゃったしかなり怒られたしで、罪の意識を持つな、と言われても無理だろうとも思う。

 

 それでも

 

「俺はこの世界に来れて良かったぜ? むしろ感謝してんだよ。だからもう謝んなって」

 

 特にこいつを恨む気は起きない。

 だから、逆に感謝の言葉を返す。

 

「でもっ……」

 

 ……女の子の涙目は卑怯ですよ、ソラさん。

 

「気にしてないって言ってんだろ。気楽に行こうぜ。俺を今度は正式に送り届けてくれるんだろ? なら今は肩の力を抜いて、まだ楽しもうぜ」

 

 そう言って、椅子を引いて席を用意する。

 まだ自責の念が抜け切れていないのか、下手したら泣きそうな顔のまま、俺の用意した席へ座った。 

 俺が料理をよそって差し出すと、また小さく謝りながら受け取って、申し訳なさそうに食べ始める。しばらくすれば自責の念も多少は薄れるだろう。

 その様子にちょっとホッとして、ユウキ君とハルカの方を見た。

 

「これ、食べてみて! ママに教えてもらったんだ!!」

「へぇ、すごくおいしそうだ……うん、おいしい」

「えへへぇ~。こっちも食べてみて!」

「あ、こっちもおいしい!」

「……よっしゃッ!」

 

 お、小さくガッツポーズした……ほう、ハルカが積極的になってるな。これはいい傾向だ。

 ハルカは料理が得意だし、俺と違って片付けもできる。母さんに言わせれば、『いつでもお嫁に出せるわ』とのことらしい。

 しかし……残念なことにハルカは親父の放浪癖を受け継いだらしく、一か所に留まることがあまりできないし外で遊ぶ方が好きらしいから『主婦』にはなれないだろうな。

 まぁそれを受け入れるような奴でなきゃ、俺は認めねぇけど!!

 

 おっと。俺も食うか。

 

 

 

 

 

 時間は過ぎて、夜の七時くらいか。

 もうすっかり日も暮れたし、初夏に入りかけた季節なので、あとは締めのイベントに近くの河原で花火でもしようかね。

 ソラもつれて、ちびっ子たちの安全を確認しながら近くの河原へ向かう。

 

 到着した河原で、さっそく綺麗な光が瞬きだした。

 子供たちの楽しそうな声をBGMに、俺は坂に寝っころがって夜空を見上げる。ちなみにソラは花火が珍しいのか、子供たちと一緒に騒いでいた。楽しそうで何よりだ。

 今日は綺麗に晴れて、目の前には天の川の大パノラマ。

 田舎のいいところは、ふと思い立った時にきれいなものが見られるところなんだろうな。前世では、こんな夜空を見た記憶もない。

 ふと、近づいてくる足音が聞こえた。

 その方向を見ると、ユウキ君がこちらに向かってくる。

 ユウキ君も隣で座りこむと俺と同じように空を見上げ、ゆっくりと口を開いた。

 

「……綺麗ですね」

「ああ、都会じゃまず見られないぜ」

「……このホウエンは、どんなところですか?」

 

 フィールドワークをやってる俺に、ホウエンのことを聞くのか。

 ふむ、そうさなぁ……。

 

「……広いな」

「広い?」

「ああ。分かったつもりがまだ分かんないことがあったり、まだ見たこともないような場所もあったり。

 とにかく、何があるか分からないくらいに広い。俺たち人間がちっぽけに見えるくらいにな。これで、まだ世界には他にもいっぱいあるんだから、気が遠くなりそうだ」

「…………」

 

 黙って話を聞くユウキ君。ふと思い当って、聞いてみた。

 

「――見てみたい?」

「えっ?」

「このホウエンの……いや、この世界の果てを」

 

 さすがに“世界の果て”は言いすぎかな、と思ったけど

 

「……そうですね。見てみたいです、世界の果て」

 

 なんて答えが返ってきた。

 ……『少年よ、大志を抱け』って誰か言ってたよな。

 まぁ俺も今は少年だけど、俺は大きな夢を持つ奴の手助けをしよう。足場が無ければ、誰も飛び上れない。

 誰かが勇気を持って決断したいとき、背中をポンと押してやろう。それでも立ち止まったら、勢いが出るまでその背中を押し続けてやる。

 もちろん、ただ単にそいつに勇気がないだけの話なら、だけど。

 ユウキ君なら、背中を押しただけで……いや、きっと押さなくても勝手に動き出してたはずだ。なんたってこの世界の『主人公』は、君なんだから。

 

「でもまだ、ホウエンでさえ分からないことだらけなので、まずはホウエンから、旅をしたいです」

「……親御さんの了解ぐらいは取っとこうな」

 

 そう言って、草を払いながら立ち上がり、ユウキ君の方を向いた。

 

「ようこそ、大冒険(ポケットモンスター)の世界へ」

 

 俺の差し出した右手を、ユウキ君はしっかり握り返す。

 

 彼の(ものがたり)が、始まろうとしていた。

 

 




はい、ユウキ君の旅立ち前夜?です。
そいえばBW及びBW2の主人公って14歳なんですね。それを考えると10歳11歳で旅をするってどうなのよ……と思いますがまぁ15年以上10歳やってる超人少年トレーナーもいますし、良いんでしょう。
はぁ……BWやりたい……2からじゃなくてBWからやってBW2をやりたい……そんでもってそれ参考に小説書きたい……何そのキチガイ
今更ながらBW2のPV見ました。何あの映画。声優陣も豪華なんてもんじゃねぇよ。もう映画化してしまえ。ライコウ伝説みたくしてしまえ

御金稼ぐようになったらDS買ってやろう。

次は……たしかユウキ君の旅立ちの話だったはず。
まだ不安定なようなので、八月下旬くらいの投稿になるかも?(じゃあ今投稿すんじゃねぇよ

ちなみに『原作知識あり』とありますが、廃人級ではございません。作者がそこまでの知識を持ち合わせておりませんので。努力値とか種族値とか言われても「なにそれおいしいの」状態です。ポケモンWikiに書いてあるのを参考にするぐらいしかできません。
なんか矛盾してること書いてましたら、教えてくださいますと幸いです。

それではっ

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