終わりのセラフと鬼の手   作:六甲山のココア

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遅れまして申し訳ない。

確認はしましたが、誤字・脱字があれば、お手数ですがご指摘願います。


学校でのイチニチ

(納得いかねぇ……。バケモノ倒したのに命令違反で謹慎ってどいうことだよ…)

 

 

現在、百夜優一郎は以前の作戦で勝手な行動をした処分として、渋谷第二高校への通学を強制されている。

 

優一郎は片ひじをついて窓の外を見る。

 

 

「だいたい、軍人の俺が一般高校に行ってどうすんだっての。俺は吸血鬼に復讐することしか興味ねぇんだよ」

 

 

彼の愚痴はいつの間にか口に出てしまっていたようだ。

前で授業をしていた教師が優一郎の方を見た。

 

 

「おーい百夜、なにブツブツ言ってる? いま授業中だぞ?」

 

 

注意を受けた優一郎はチラリと教師を一瞥し、すぐにプイと視線を窓の外へ戻した。

 

 

「おっ、お前! その態度はなんだ!? 転校してきたばかりで緊張しているのかと大目に見てたが…っ、あんまり態度悪いと停学にするぞ!!」

 

 

優一郎の態度にキレてしまった教師が大声をあげる。

すると優一郎は途端に目を輝かせ、席を立った。

 

 

「え!? 停学にしてくれんの!!? マジで!? じゃあそれでお願いしま…」

 

「ふざけんなぁぁぁぁぁぁ!! お前先生を馬鹿にしてんのかぁ!?」

 

「んだよ…」

 

 

テンションが下がったところで、不意にトントンと後ろからつつかれる。

振り向くと後ろの席の女生徒が怪訝そうな目で見ていた。

 

 

「……なんだよ。ってかお前誰だよ?」

 

 

聞くと、少女はノートを優一郎へ向けて立てて見せた。

そこには…

 

 

『私は柊シノア。軍からの監視官です』

 

 

そう書かれていた。

 

 

「あ? 監視官?」

 

 

何を言ってるのかわからない、という表情の優一郎。

シノアは優一郎の前で、新たに書き始める。

 

 

『もしあなたが協調性がなさそうな行動をしたら 軍に報告して謹慎を延長することになっています。』

 

「ああ!?」

 

「百夜!!」

 

 

思わず叫んでしまう優一郎とその声を注意する教師。

 

 

「くそが…」

 

「くそが!!?」

 

 

またしても声に出てしまっている。

するとシノアが子供に言い聞かせるような口調で告げる。

 

 

「協調性」

 

 

それを聞いた優一郎はドサッと席へ座った。

 

 

「ちなみに、協調性の欠片もないあなたの謹慎は、この一般校で友達ができない限り解けないことになっています。……頑張ってお友達をつくってくださいね」

 

 

追い打ちをかけるように言うシノア。

 

 

「……」

 

(なんなんだよ………。こんなところで、俺はいったい何をしてるんだよ…)

 

 

 

------------------------------------------------------------------------

 

 

 

「はぁ…… チカレタ…」

 

 

緊張の編入初日を終え、心身共に疲弊していた。

正直、こんなに疲れると思っていなかった。ただ座っているだけの50分は退屈で仕方がない。座学に関しては姉さんのおかげで高校の範囲ならすでに頭に入っているため、本当にどうでもいいのだ。

 

 

「やぁやぁ氷くん。どうでした?記念すべき初登校は」

 

 

そんな俺の表情を読み取ってか、シノアが悪戯っぽい笑顔でこっちへ来る。

 

 

「しなくていいから…。見ての通り、何もしてないのに謎に疲れただけだよ」

 

「無駄に力んでるからですよぉ。そんなんじゃ一週間も耐えれるか心配ですね」

 

「ご親切にどうも。…まぁ、適当にやっていくよ」

 

 

初日だから張り切りすぎていただけだろう。

もう2,3日もすれば慣れる。…と思う。

 

 

「ていうか、お前ら騒ぎすぎ」

 

「仕方ないじゃないですかぁ。ああでもしないと多分一生謹慎解けませんよ?」

 

 

たしかに、あの様子では何のヒントもなしに謹慎は解けそうもない。

まぁ、知ったところでいきなり友達つくろうとするタイプでもないだろうし。

 

 

「授業終わったー!」

 

「部活だり~」

 

「ねぇ、帰りアイス食べようよー」

 

 

生徒達は部活や帰宅で教室から出ていき、だんだん教室内の人数は減ってくる。

ほとんど全員が出た段階で、シノアは百夜優一郎の方へ行った。

 

 

「待ってて♪ 僕ちんもアイス大好きなんだよね~」

 

 

いかにもぶりっ子、といった感じの声でシノアが話しかける。

 

 

「って、声をかけに行ったらどうです?」

 

「何なんだよお前は… 初対面なのに馴れ馴れしい…」

 

「グレン中佐は言われてました」

 

 

シノアは百夜の言葉を全く意に介さない様子で、言葉を続ける。

 

 

「あなたは幼少時代に吸血鬼に家族を皆殺しにされたせいで、他者と触れ合えなくなってしまった……と」

 

 

………どこかで聞いたような話だ。

どこもかしこも吸血鬼の被害を受けて、大切な何かを失ってしまっている。

 

だが、俺はその代わりに得られたものもあった。

だからこうして、今ここにいられる。

 

 

「仲良くなった後、再び失うのが怖いから。だから怖くて怖くて、仲間も友達も恋人も作ることができない」

 

 

そこまでシノアが言うと、堪えきれなくなったのだろう。

百夜がシノアの胸倉を掴み、シノアにせまる。

 

 

「てめぇ…! 他人のことベラベラ喋んじゃねぇよ…。

 くだんねぇこと言ってないで早く俺を吸血鬼殲滅部隊に入れろって馬鹿グレンに伝えろ。俺にはもうヤツらをやれるだけの力があるってな」

 

 

と、そこでグレンさんに言われていたことを思い出した。

 

 

『どうせあのアホのことだ。俺を早く入れろ、とか言い出すに決まってる。だからそん時は……これを渡せ』

 

 

そして預かったものをポケットから取り出し、二人のところへ行く。

 

 

「そう言うだろうと思って、これ」

 

「あ? お前… 転校生か?」

 

 

なぜうろ覚えなんだろう。

わざわざ前で自己紹介やらされたっていうのに。

 

 

「そうだよ。で、そのグレン中佐からの預かりもんだ」

 

 

そう言って一枚の紙きれを百夜に渡す。

 

 

『仲間も友達も恋人もできないような童貞くんは軍にはいりませーん

 悔しかったら一人でも友達つくって俺に紹介してみろっての プップー』

 

 

……子供かあんたは。

 

 

「だぁっ!!」

 

 

百夜が紙をくしゃくしゃにしてぶん投げる。

 

 

「どいつもこいつも馬鹿にしやがって…! っていうか、なんで転校生がこんなの持ってんだよ!」

 

 

今思えば至極当然の疑問だ。

俺はまだ百夜に自分のことは何も言ってなかった。

 

 

「俺が月鬼ノ組の人間だからだよ」

 

「は…っ、え…? マジで?」

 

「マジマジ。で、どうすんの? ふざけてるように見えるけど割とガチだぞあの人」

 

 

グレンさんは仲間意識が高い。家族だというくらいだし。

過去に何かあったのだろうが、あんまり詮索するようなことじゃないから何も聞かなかったが。

 

だから命令を無視し、単独で突っ走るようなヤツはいらないということだろう。

 

 

「グレン中佐はそういうところ気にしますからね~」

 

「まぁそういうことだ」

 

「っざけんな! そもそも…「きゃあっ!」

 

 

突然の悲鳴が優一郎の言葉を遮る。

声のする方を見ると、一人の男子生徒が倒れていた。そして彼の前には3人の男達が。

 

 

「や…やめてよぅ……」

 

 

男子生徒は弱々しい声で言った。

 

 

「やめてだ? 何だよそれ。それじゃ俺らがお前いじめてるみてぇじゃねぇか」

 

 

3人いる内の主犯格的男が言う。

 

 

「俺ら友達だからジュース買ってきてって頼んだだけだろ? なによその態度は」

 

「ううう…」

 

 

……ああいうのって、いつになってもあるもんなんだな。

正直俺はいじめられた経験もないし、されたとしても自分でなんとかできるつもりだ。

だからああやってなされるがままになっているヤツの気持ちはよくわからん。

 

 

(…が、さすがに見過ごせないな)

 

 

助けでようとしたその時、シノアの手によって制止された。

なぜかと思い、シノアの顔を見ると、スッと百夜の方を顎でさした。

 

 

(なるほど。ここで百夜にあの生徒を助けさせてお友達にしてしまおうと)

 

 

確かに妙案だ。

気弱そうなあの子なら助けられた後、そのまま百夜にくっついていきそうなもんだしな。

 

 

「平和だねぇ… じゃ、俺帰るわ」

 

 

あれ? これは想定外だ。

 

 

「あれを見てその感想じゃ… 当分友達を作るのは無理そうですね…」

 

「当分ってか一生無理じゃないか?」

 

 

こういうのに関わりたくない気持ちもわからんでもないが…

これはちょっと… ねぇ……?

 

 

「だいたい、俺らの仲間になりたいって言ったのはお前だろ? なら働けよ、家畜みてーに」

 

 

まだやっているようだ。

百夜があの様子だし、仕方がないので止めに行こう。

 

 

「おい」

 

 

と思った矢先、百夜の声が聞こえた。

 

 

「ん?」

 

「その辺にしとけよ」

 

「あ? なんだお前?」

 

 

どうやら百夜の気が変わったようだ。

けど、どうして急に…?

 

 

「あれ、情報と違って意外と良いヤツですね」

 

「………」

 

 

朝の登校中、シノアが言っていたことを思い出す。

 

 

 

『そういえば、その百夜優一郎ってどんなヤツなんだ?』

 

『元々吸血鬼のの支配下にあったそうですよ』

 

『なるほど… それはまた苦労してんだな』

 

『氷くんも似たようなもんじゃないですか』

 

『まぁ多少は。…吸血鬼に管理されるのは絶対ヤだけどな』

 

 

 

吸血鬼の連中は人間のことを家畜と見下している。

…おそらく、あの男の「家畜」という発言が百夜をキレさせたのだろう。

 

 

「おいおいおーい。 え?何? まさか正義の味方? ミカタっすか?」

 

「いやぁ… お前らわかりやすくていいわぁ…。 俺こういうの得意だからなんか嬉しいわぁ。いいよ、喧嘩か?やるか?」

 

「てめぇ…! 完全になめてんだろ!!」

 

 

そういえばこいつ、普通に軍人なんだよな。

謹慎中に民間人に暴力はマズイんじゃあないか。

 

 

「言い忘れてましたが…」

 

 

百夜が殴りかかろうとした時、シノアが言葉を放った。

 

 

「民間人に手を出したら、謹慎延長ですから」

 

「はああああああああぁっ!!?」

 

 

あ、やっぱり?

 

 

 

--------------------------------------------------------------------

 

 

 

 

「なんで俺がパシリ…… なんで俺が…」

 

「ご、ごめんね僕のせいで…」

 

 

結局、為す術なく一発殴られた百夜は、先ほどの男子生徒、早乙女与一とパシられていた。

 

 

「おいシノア!氷介! お前らも持てよ!」

 

「やだよ。負けたのお前じゃん」

 

「面白い冗談ですね~」

 

 

監視官ということもバレてるし、コソコソ監視する必要がないので、こうして百夜と普通に歩いている。これが一番楽でもあるし。

 

 

「てめぇら…!」

 

「ご…、ごめんね…」

 

 

こっちへ向けてキレる百夜にひたすら謝る与一。

面白いくらい対照的だ。

 

 

「おめーもさっきからヘコヘコ謝ってくんな! だいたい、なんであんなヤツらにいじめられてんだ?」

 

 

言っちゃなんだが、早乙女のような気弱そうな子は、意味もなくいじめられるもんだよ。

理由なんかあるハズない。

 

 

「い、いじめられてた訳じゃないんだ…。僕が山中君にお願いがあって…それで…」

 

「山中… 誰だっけ」

 

「なるほど、脳ミソ猿ですね」 「鳥レベルの脳味噌だな」

 

 

俺とシノアの突っ込みが同時にきまった。

すると百夜こちらへ来て腕を振り上げる。

 

 

「…さっき百夜くんを殴った人だよ」

 

「ああ、あいつか…。で、何? 頼み事?」

 

 

百夜が尋ねると、早乙女がおどおどろしく答える。

 

 

「んと、その…。僕、帝鬼軍の入隊試験…落ちたんだけど…… どうしても入りたくて…。

 山中君… 実はあの月鬼ノ組入りが内定してるらしくて…」

 

「…」

 

 

シノアと顔を見合す。

どうやら彼女もそんなことは知らないそうだ。わざわざ俺達に伝える程の事でもないが、同じ第二渋谷校にいるのなら、グレンさんや姉さんから何も聞かされていないハズはない。

…思い過ごしだといいが。

 

 

「あいつが!? マジで!? 俺も入れてねぇのに!」

 

「だから山中君のツテでもう一度、試験を受けさせてもらおうって…」

 

 

早乙女が経緯を話しているが……

 

 

「あのゴリラがOKでなんで俺がダメなんだよ!」

 

「さぁ? 童貞だからじゃないですか?」

 

「ぶっ殺すぞ!!」

 

 

聞いちゃいなかった。

 

 

「なんでそこまでして入りたいんだ?」

 

 

気になっていたことを聞いてみた。

正直この子に軍など、ましてや月鬼ノ組など似合わない。

どう見たって「守られる側」の人間だ。

 

 

「どうしても、お姉ちゃんの敵を取りたいんだ…」

 

 

相変わらず弱々しいが、そこにはハッキリとした意思が感じられた。

 

 

「敵?」

 

「うん。お姉ちゃん… 僕をかばって吸血鬼に殺されたんだ…… 僕、怖くて動けなくて…」

 

「…後悔してるのか」

 

 

俺が言うと、早乙女はコクリと頷いた。

 

 

「後悔する必要はない。むしろ賢明な判断だ。助けに行ったところで、死体が一つ増えてただけ。君は間違ってはいない」

 

「でも…」

 

「でもじゃねぇよ」

 

 

いつの間にか落ち着いた百夜が、早乙女の言葉を切った。

 

 

「氷介の言うとおりだ。…それに、復讐なんて、お前の姉ちゃんも望んじゃいないだろ」

 

 

お前がそれを言うのか…。

同じ養護施設だった友達のために吸血鬼に復讐を誓ったお前が。

 

…俺だって人のことを言えた義理じゃない。家族の敵を追って月鬼ノ組に入ったから。

だから、何も言えなかった。

復讐というのは、肯定も否定もできない。いや、するべきではないんだ。

結局は本人の自己満足でしかないのだから…。

 

 

「お前みたいなひ弱な坊ちゃんは、吸血鬼退治の邪魔なんだよ…」

 

 

百夜がそう吐き捨て、踵を返したその時。

 

 

 

 

 

 

校舎の方から、爆音が鳴り響いた。

 

 

 

 

 

 

 

 





ご一読ありがとうございました。
まだまだ書くのは不慣れで、怪しいところも多々ありますが、お付き合いいただけると幸いです。



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