終わりのセラフと鬼の手   作:六甲山のココア

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戦闘描写を字で表すのってめっちゃ難しいですね。

これが私にできる限界です。はい。


吸血鬼とのセントウ

《緊急警報 緊急警報

 全生徒及び職員にお知らせします 隣接している生体実験施設から吸血鬼が一匹脱走しました 吸血鬼は血を吸うと力を取り戻します 見つけても決して近寄らぬように》

 

 

突如として起きた爆発と、避難を勧告する警報。

 

 

「眠鬼」

 

 

右手に封じている鬼、眠鬼を呼ぶ。

 

 

「あー…ごめん。今気付いた…」

 

 

どうやらボケッっとしていたようだ。

眠鬼は吸血鬼から感じる霊気で、吸血鬼の存在を探知できるそうだ。事実、俺も眠鬼には何度も助けられている。おかげで、危険だった任務もなんとか生きて帰ってこれた。

 

 

「こ、この学校に吸血鬼がいるの…?」

 

 

早乙女が震え声で言う。

無理もない。軍所属を希望とはいえ、実際に吸血鬼と出会うことなど早々ない。

 

 

「二人とも避難してください!氷くんは吸血鬼の処へ行って時間稼ぎを! 

 私は月鬼ノ組に出動要請を…!」

 

 

シノアが指示をだす。

すると、

 

 

「いらねぇ!! 吸血鬼は俺が殺す!!」

 

 

百夜がそう言って校舎の方へ走りだして行ってしまった。

 

 

「眠鬼、吸血鬼の場所はわかるか?」

 

「建物の中と… もう一匹、屋上だ!」

 

「二匹もいるのか…。多分校舎内にいるのは百夜が先に会うだろ。

 …俺は屋上の方へ行こう」

 

「気をつけて。屋上にいるヤツは中にいるのとは段違いだよ」

 

「そうか… それは眠鬼でも勝てないくらいか?」

 

「馬鹿言うな。私は地獄の鬼よ? 吸血鬼がどんなのか知らないけど、余裕に決まってるじゃん」

 

 

笑いながらそう言う眠鬼。

こういう時の眠鬼は本当に頼もしい。

 

 

「シノアは早乙女を安全な場所まで送ってから月鬼ノ組に出動要請を頼む。俺は時間が間に合えば百夜を助けに行く」

 

「わかりました! 与一さん、こちらへ!」

 

 

眠鬼からおおよその場所を聞いた後、シノアに頼んで校舎へと向かう。

聞いたところだと、百夜は一人でヨハネの四騎士の一匹を倒したという。弱っている吸血鬼一匹くらいならなんとかできるだろう。

 

 

(段違いの強さ… 貴族の吸血鬼か…?)

 

 

貴族だろうが、眠鬼の力をもってすれば弱いものは弱い。

それはこれまでの任務で経験したことがある。できる限り早く切り上げて百夜の救援に向かうとしよう。

 

 

(なんとか耐えろよ… 百夜!)

 

 

 

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「なんでこんなとこに吸血鬼がいるんだよ!」

 

「帝鬼軍の首都は安全じゃなかったのかよっ!」

 

 

廊下は大量の生徒達でごった返しになっていた。

 

 

(くそっ!

 人が多すぎる! どいつもこいつも自分可愛さに走りやがって…!)

 

そんな中、一人の教師が優一郎をとめる。

その教員は、優一郎のクラスの担任だった。

 

 

「百夜! どこ行くんだ!」

 

「うるせぇ! 吸血鬼はどこだよ!」

 

「俺の教室だ! 俺の教室が襲われたんだ!」

 

 

それを聞いた百夜は自らの教室へと走りだした。

 

 

 

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「クローリー…ユースフォード……」

 

 

屋上まで走って行った先に待っていたもの。

一言でいえば、絶望。

過去に戦ったことがあり、二度と戦いたくはないと思っていた敵だった。

 

 

「おやぁ? すごい勢いでこっちにくるのがいると思ったら… 氷介くんじゃないか。こんな所で会うなんて偶然だね」

 

「クローリー様ぁ。この人間のことを知ってるんですか?」

 

「昔、ちょっとね…」

 

 

しかも一人じゃない。

クローリーの付き人と思われる吸血鬼がさらに二匹。…眠鬼の探知はこの二匹は捉えられなかったのか?

 

 

「ごめん氷介… そいつの妖気がデカ過ぎてこの二匹は探知できなかった…」

 

「なら仕方ないな… 潔くやっちまうか」

 

 

どうせ見逃してはもらえないだろう。

ならば最善を尽くすのみ。

 

 

「眠鬼、鬼人化… 70%」

 

 

 

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押し寄せる生徒達をかき分け、教室の前まで辿りついた優一郎。

教室の前にある自分のロッカーから、一般装備の刀を取り出し、教室の中へ駆け込む。

 

中にいたのは、女子生徒の血を今にも吸おうとしている、少女の外見をした吸血鬼。

そしてさっき世話になった山中という男。

 

 

「4年ぶりか… やと会えたな、吸血鬼!」

 

 

鞘から刀を抜き、鞘を投げ捨てて吸血鬼へ突っ込む。

 

 

「……人間が…」

 

 

吸血鬼は優一郎の振った刀を後ろに飛んで避ける。

避けられてしまったが、女子生徒から吸血鬼を離すことができた。

 

 

「山中! この女を連れて逃げろ!

 てめぇ一応軍人候補なんだろ! とっとと…」

 

「…嘘なんだ…」

 

「は?」

 

「軍に入るって言えばみんなビビると思って…… きゅ、吸血鬼となんて…戦えな…」

 

 

山中が涙声でそう言った。

 

 

「はぁぁぁぁぁぁぁ!!? うぜぇぇぇ!!だから仲間なんかいらねえんだよ! …もういい、俺が…」

 

「…小賢しい、家畜の分際で」

 

 

吸血鬼が口を開き、優一郎の言葉を遮る。

 

 

「邪魔をするなら、まずは貴様の血からすすってやる」

 

 

そう言うと、吸血鬼が優一郎目がけて突進してきた。

ギリギリで刀を振るも、上に飛んで避けられてしまう。

そして上空から吸血鬼が攻撃のために手を伸ばしてきたところを、優一郎が斬りおとした。

左手が吹っ飛んだ吸血鬼は、すぐに拾いに向かい、拾った後、切れたところに押し当ててひっつける。

 

 

吸血鬼の治癒力を見た優一郎は驚き、攻撃を止めてしまった。

その隙に吸血鬼は倒れていた女子生徒の所へ飛んだ。

 

 

「ふ…ふふ…… 遊びは終わりだ…。お前は誰も救えない

 こいつの血で回復すれば、お前などわらわの敵ではない」

 

 

言いながら女子生徒の首をつかむ。

 

 

「ま…まずい!」

 

 

優一郎は急いで走った。

だが、この距離では間に合わない。吸血鬼が首の方へ口を開けた。

 

 

(ダメだ… 間に合わねぇ……!)

 

 

覚悟したその時、誰かが吸血鬼に体当たりをして吸血鬼を吹っ飛ばした。

 

 

「与一!!」

 

「百夜くん! 早くコイツを…!」

 

 

吸血鬼が大勢を崩しているうちに、もう一度左手を斬り落とす。

 

 

「おのれ…!」

 

 

が、吸血鬼は右手で優一郎の首掴み、そのまま窓を突き破って下へ落ちて行った。

だが、落下の際に優一郎が吸血鬼の胸へと刀を突き立てていた。

 

 

「惜しかったな… 頭ならわらわを殺せていたのに……

 だがもう終わりだ。お前の血を吸って力を回復し、わらわは逃げるぞ…… 

 月鬼ノ組が来る前に…」

 

 

吸血鬼が優一郎の方へと顔を近づける。

もうダメかと思ったその時、黒い刀が吸血鬼を突き刺した。

 

 

「よう、呼んだか」

 

 

グレンだった。

どうやらシノアの出動要請がギリギリ間に合ったようだ。

 

 

「くそ… 傷が回復しない…。鬼呪のかかった装備か……」

 

「キーキーうるせぇんだよ。ヴァンパイア」

 

 

次の瞬間、吸血鬼は消滅した。

跡形もなく。

 

 

「何だそのザマ、お前アホか。抗吸血呪もかかってない一般兵器で吸血鬼狩れるわきゃねぇだろ」

 

 

グレンが嘲笑しながら言う。

 

 

「邪魔すんじゃねぇよ。もうチョイで殺せたんだ」

 

「へー」

 

「ホントだぞ!」

 

「あーそー。だがまぁ、今回はガキのわりにはよくやった。お前のおかげで犠牲が少なく済んだ。 

 …学校の友達を守ったな」

 

 

グレンはそう言って刀を納めて、帰っていった。

 

 

 

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「氷くん… 大丈夫?」

 

 

こうして姉さんに膝枕してもらえるなら、この程度なんともない。

しかし、要請が間に合ってよかった。あのままいくと体がどうなっていたかわからない。

 

眠鬼を右手に宿す俺は、任意で鬼の力を引き出すことができる。

鬼人化、と俺は呼んでいる。引き出す力の量は加減ができ、30%でおおよそ、二級装備の吸血鬼を倒せるほど。

 

たしかに便利な力だ。だがそれ故に代償も大きい。鬼の力に耐えるのに、生身の体ではどうも無理があるようだ。

今回は70%の力を引き出して戦ったが、本気でクローリー・ユースフォードを殺そうと思えば、100%の開放が必要になるだろう。

だが今の段階で100%解放すれば間違いなく体は木っ端みじんになる。

70%を3分でこの体たらくなのだから。

 

 

「あんまり力を使わないようにって言ったのに…」

 

「ごめん…、けどさすがに使わずに生きてられる自信がなかった」

 

 

全身の激痛に耐えながら、精一杯の笑顔をつくる。

だが、姉さんは気付いているようだ。俺がかなり無理をしてることに。

 

 

「それは仕方ないけど… いい? 次からは一人の時には絶対に使わないこと」

 

「わかったよ……。ところで姉さん」

 

 

必死に声を振り絞る。

 

 

「何?」

 

「ちょっと疲れた…。このまま寝ていいかな…?」

 

 

そう尋ねると姉さんは花のような笑顔で言った。

 

 

「うん…! 頑張ったね、氷くん…!」

 

 

そこで俺の意識は途絶えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




小百合さんホント可愛い。出番と活躍が少ないのがなんとも残念です。
…小説版買おうかなぁ…。




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