明くる日、ふと、彼女は。
「な、なのだにゃ……」
東雲なのが、姿見の前でポーズを決めていた。
両手を頭の横で丸め、ちょっと傾いでみたりする。
「……にゃん」
物置がわりに使っている小部屋に置かれた姿見。こまめに掃除しているために埃は皆無だが、カーテンを閉めきっているためにその部屋は昼の今頃でも薄暗い。
「や、やっぱり恥ずかしすぎますっ」
大方はかせが開けっ放しにしたのだろうその部屋の襖戸を閉めようとして、中の姿見に気付いたなのは、先日洗濯物を干していたときにはかせがした"萌え"な行動を、なんとなく自分でしてみたのだった。
「にゃ、にゃん」
機械である筈の彼女の顔が、真っ赤に染まる。
「だめです。やっぱり私は萌えませんっ」
そう言って意味もなくエプロンの裾で手をぱしぱしとぬぐってみる。
「じ~」
「ひゃあ!?」
だが、気づかないうちに、くだんのはかせが後ろでしゃがんでこちらを見ていた。
「娘……お前……」
そのはかせの腕の中から、赤いスカーフの阪本さんがなんとも言いがたい眼で見つめる。
「い、い、い、いつのまにいたんですか」
「なのだにゃっていったとこ~」
「最初からじゃないですか!!」
恥ずかしすぎてちょっと目尻に涙を浮かべながら抗議する。
「そんななのに、はかせはこれをあげちゃいま~す」
一転してはかせは立ち上がり、ぺかーっと擬音がしそうな勢いでネコ耳とネコしっぽを頭の上で支え上げる。
もしかして、最初からこうなることは読まれていたのだろうか。
なのはちらりとそう考えるが、一層顔を真っ赤にしてオーバーヒート気味になり、なぜか後ろのねじまきもクルクル回っているためそんなことを省みる余裕はない。
「はい、なの」
と渡された萌えグッズは、先日のはかせのものとは対になるように白猫チックな物。
やっぱり読んでいたんじゃないんですかー!?
そのことに気付いて内心つっこむが、やはりそんなことを言う余裕はない。
「なの、なの」
そしてとどめにはかせが言った。
「はっかせーだにゃん♪」
「も、萌えです!!」
阪本さんはいつの間にか呆れて何処かへ行っている。
「ほらほら~、いっしょになのもなーのーもー。
しゃがんでしゃがんでっ」
なのは求められるまま身体を屈め、はかせがネコ耳をあてがうと、
*カチン、カチン、ウィー*
と、メカい音を立てて直接頭にネコ耳がひっつく。
「え、えぇぇぇぇぇぇ!?」
「うしろうしろ」
だがそんな戸惑いの言葉を気にすることもなく、はかせはとてとてと彼女の後ろにまわり、尾てい骨の辺りに今度はネコしっぽをあてがう。
するとズボンの該当部が円形にプイーンとひらき、再びしっぽが接続される。
「ぅえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?!?」
服まで連動しているのはどういう事なのだろう。
だがそれ以上に衝撃的だったのは、その驚きに連動して耳と尻尾がピンと伸ばされたことだった。
いつもながらはかせの発明は完璧過ぎる。
「ねえねえ。じゃあほら、いっしょにやろーよー」
そしてはかせにそんな事を言われつつ脚にまとわりつかれ、なのは完全に観念した。
「な、なーのっだにゃん♪」
その夜、なのは一晩中枕に顔をうずめてじたばたもきもき恥ずかしがっていた。