神々の戦争   作:tuki21

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第1話:這い寄る非日常

 地獄があるならば、ここ(、、)こそがまさにそうだ。

 当時まだ九歳だった岡崎和輝(おかざきかずき)は、その地獄をただ歩いていた。

 上を見て、それから周囲を見た。

 世界は黒と赤に色分けされていた。

 空の黒と、大地の赤。

 周囲は燃えて、燃えて、燃え堕ちて。

 まさしくここは灼熱地獄。罪のある者もない者も、等しく焼け死んでいく。ただそれだけの場所。

 そんな中を、歩いていく。

 まだ十歳にもならない子供の歩幅は小さく、歩みは遅々として進まない。

 その歩みの間にも、あらゆる音が耳に届く。

 呻き声。

 死に瀕した人たちの断末魔、死にきれない人たちの助けを呼ぶ声。救われないことに対する嘆き。

 それと同時に、視界に映るモノたち。

 全て元々人間だったなんて信じられない。もしかしたら今日の昼間、学校から帰る途中にあいさつしたおばさんたちかもしれないなんて信じられない。

 赤ん坊みたいに丸まって、黒く炭化した誰か。全身重度の火傷で、服も癒着してしまったのに痛みで気絶もできず、死ぬまでの呻くことしかできない誰か。

 炎ではなく崩れた瓦礫に潰された誰か。煙に巻かれ呼吸困難になった後に熱を持った空気で肺を焼かれ、苦しみぬいて死んだ誰か。

 すべて、振り切るように無視して先に進んだ。もしかしたら、この地獄に終わりがあるんじゃないかと思って。

 進み、進み、そして倒れた。

 仰向けに倒れ、空を見る。

 熱かった。でも寒かった。当時の和輝には、血を流しすぎたためだとわからなかった。

 苦しかった。喉が渇いて、犬みたいに舌を出した。

 左のほうからがたがたを音がした。身体はほとんど動かなかったので苦労して首だけをその方向に向ける。

 焼け落ちた家が見えた。その中も。

 

「――――――!」

 

 見えた。見えてしまった。

 焼け残った人。たぶん(、、、)女の人。そして、たぶん(、、、)、知ってる人。

 

「おかあ……さん……?」

 

 呟いた声は自分の耳にも聞こえぬほどに小さなもの。だが幼い和輝は己が必死になって歩いていても、結局は同じところをぐるぐる回っていただけだったのだと気付いた。

 なんと滑稽か。地獄から逃げ出そうとして、結局元の場所に戻ってきてしまった。

 逃げ場などない。行ける場所などない。お前はここで、周囲の者たちと同じように死んでいくしかないんだ。

 自分の心の中の冷たい部分がさっきから声を上げている。いつの間にか聞こえてきた、嫌な声。

 ――――楽しい(、、、)楽しいなぁ(、、、、、)。こんな危険はめったにないぞ。ここにいろ。そうすれば、パパやママのところに行けるぞ?

 怪物の声。それから逃げるように、和輝は動こうとした。

 だが動けない。変わり果てた母の姿が、和輝から何か大切なものを奪ってしまったかのようだ。

 肉体は死を受け入れた。だが心はそうではなかった。

 死にたくない。まだ、生きたい。そう叫んでいた。

 そして――――――――

 

 

 

 

 

◆◆◆◆◆◆

 

 

 

 

 

 枕元に置いた目覚まし時計がけたたましい音を立てて自分の仕事をこなしていた。

 こうして夢は終わり、岡崎和輝の朝がやってくる。

 

「…………あー」

 

 しばらく無視していた和輝だったが、突発的にやってきた頭痛に顔をしかめ――何しろ、最悪な夢を見た――起き上がる。

 カーテンの隙間から、四月の春の日差しが差し込んできた。

 和輝はそれでもしばらく放心していた。

 ベッドの上に座ったその姿。

 十六か七歳ほどの少年だ。

 百七十センチ少々の身長、精悍な顔つき。それなりに真面目にふるまい、真面目な格好をしていれば、二枚目といってもよかろう。実年齢よりも大人びた雰囲気も悪くない。

 ただ、今は瞼が半分垂れ下がっており、覇気がない。おまけに顔色も悪い。髪もぼさぼさで、その茶色がかった黒い瞳はどこを見ているのかまるで分からない。もっとも、寝起きなのだから仕方のない部分もあるが。

 また、彼には一つ、大きく人目を引く要素があった。髪の色である。

 雪のような白。脱色しているのではない。地毛だ。

 ただ、元々こんな髪の色ではなかったのだが―――――

 

「七年たっても昔のことを夢に見る。我ながら過去を振り切れない男だ」

 

 自嘲気味に笑う和輝。いい加減ボーっとしているのもやめようとベッドから降りたところで、部屋の扉を叩くノックがあった。

 

「兄さん? 起きてますか? 朝食の準備ができましたけれど……」

 

 鈴を鳴らすような可憐な声。和輝は「おーう」とだけ答えた。

 

「悪い、綺羅(きら)。すぐ行く」

 

 言いながら扉を開ける。

 眼前に少女が一人。

 和輝と同じく、十六か七歳ほどの少女。肩にかかるかかからないかくらいの長さのオレンジの髪に、くりくりとした大きな黄色い瞳は青白い和輝の表情を見て、心配そうに瞼を下げたが目をそらすことなくしっかりと彼の顔を見ている。

 礼儀正しくきっちり着こなした和輝と同じ高校の制服姿。すらりとしたスタイルで姿勢がいいためか、凛とした、風雨に負けずに咲き誇る野生の草花のような印象を与える少女だった。

 岡崎綺羅。和輝の義理の妹、そして岡崎家の血のつながった娘。

 

 

 制服に着替えた和輝は一階のリビングに移動。鼻孔をくすぐる朝食の香りに最悪の目覚めからくる最低の気分も徐々に和らいでいく。

 食事に使うテーブルに並べられているのは二人分の朝食。白米を使ったごはんに玉ねぎの味噌汁。これに一品加えて納豆をつけた、軽めでありながらも腹にたまるメニューが岡崎家の朝食の定番だった。

「さ、席についてください、兄さん」

「ああ」

 

 二人して席に。

 

「いただきます」

「いただきます」

 

 ほぼ同時に手を合わせて一礼。それぞれ箸をつけていく。

 しばらくはつけっぱなしのテレビの朝のニュースだけが二人の間を行きかった。

 

「兄さん。……また、例の夢を見たんですか?」

 

 心配げな声音の綺羅。和輝は一瞬食事の手を止め、ため息を共に「ああ」と言葉を絞り出した。

 

「我ながら情けないよ。もうすぐ七年たつっていうのに、いまだに振り切れてない」

 

 約七年前。深夜の、東京のとある住宅街を襲った大火災。

 深夜の出来事故に逃げ遅れ焼かれた者、煙に巻かれ窒息死した者が大勢出ており、結果、死者三百名以上を出した大災害となり、生存者は僅か数十名という最悪の結果となったため、当時は大きく取り上げられた。

 出火原因不明、火元も不明。あまりにも不可解のことが多すぎるこの一件は放火という見方もあったものの、建築物の燃え方があまりにも奇妙であったが故、その可能性も低いのではないか、と結論付けられた。

 誰が信じよう。住宅の全てが、まるで炎の津波でも浴びたかのように上から下に掛けて燃えていたなどと。

 和輝はその火事の数少ない生存者だった。まだ一桁の年齢だった彼はこの災害で両親を失い、施設に預けられ、岡崎の家に引き取られることになったのだった。

 

「そんなの、当然だと思います。だって、兄さんは、それだけの体験をしたのですから……。また父さんに頼んでカウンセリングを受けたらどうですか?」

「大丈夫だよ、綺羅。あれから七年。確かにたまに夢に見るけれど、それだけだ。顔色悪いのだってすぐに治る。悪夢を見る回数だって減ってるし。それに、大丈夫だと思ったから、養父(おやじ)養母(おふくろ)だって、イギリスに行けたんだ」

 

 今現在、岡崎家に両親はいない。彼ら、正確には和輝と綺羅の父――和輝にとっては養父――がイギリスのある大学の教授職についているが、いかんせん彼の生活能力は恐ろしく低かった。ゆえに放っておけなかった二人の母もまた、イギリスについていったのだ。

 そして、血の繋がっていない兄妹の二人だけが岡崎家に住む様になって、もう一年以上たっていた。

 

「それより早く飯食っちまおうぜ。急がないと遅刻する」

 

 もうこの話は終わりとばかりに食事のペースを上げる和輝。兄の強引ともいえる会話のかじ取りに引きずり込まれ、綺羅も食事を再開する。

 そんな二人の耳に、つけっぱなしのテレビのニュースが流れ込んできたが、二人はさして意識することなく食事に集中ていた。

 

 

『○×町で、一週間前から発生している集団昏倒事件の続報です。

 被害者はいずれも正常な脈拍、脳波を保ち、目立った外傷もないにもかかわらず、意識だけが戻っていない状態が続いております。原因不明のウィルスの可能性もあるとのことで、付近の皆様にはくれぐれも注意を呼び掛けており――――』

 

 

 それは、和輝たちの住む街の隣町で起こった出来事だった。

 

 

 

 

 

◆◆◆◆◆◆

 

 

 

 

 

 星宮(ほしみや)市、それが和輝たちが住んでいる街の名前だ。

 かつては一地方都市にすぎなかったが、五年ほど前から急速に発展し、今ではある業界では有名な街だ。

 その業界とは。デュエルモンスターズと呼ばれるカードゲーム界。

 デュエルモンスターズは世界中の人々から愛されるカードゲームで、登場から十五年の歳月が過ぎた今もなお、その熱は冷めるどころかますますヒートアップしている。今では老若男女、人種や年齢。性別さえ超えて数多くのプレイヤーがおり、カードゲーム人口は空前の右肩上がり。

 そして星宮市はこのデュエルモンスターズを中心に発展した都市で、A~Eの五段階のうち、プロの花形、Aランクプロデュエリストのデュエルの中継をのみならず、切磋琢磨するBランク、未来のトップデュエリストや見込みのある若手プロの試合であるCランクプロのデュエルも余すところなく放映し、一部カードは世界に先駆けて、この街でのみ先行販売されることもある。中にはこの先行販売カードを目当てに外国からこの街を訪れる者もいるほどだ。

 そのため、街頭テレビにはプロデュエリストの演説や中継予定の番組表などが映し出され、何人かの通行人は――通勤途中のサラリーマンでさえも――足を止め、テレビに見入っている。

 和輝も綺羅も、この世界の常識にもれず、デュエルモンスターズのプレイヤーだ。特に和輝は、プロデュエリストを目指している。

 

「兄さん、急がないと、本当に遅刻してしまいますよ」

 

 ほかの通行人と同じく足を止めて街頭テレビに視線を向けかけていた和輝を綺羅が促す。

 

「ああ」

 

 和輝もまた、後ろ髪を引かれる思いを抱きながら学校へと足を向けた。

 

 

 十二星(じゅうにせい)高校。それが和輝たちの通う高校の名前だった。

 十二の企業が合併した複合企業であり、多くのプロデュエリストのスポンサーでもあるゾディアックの出資を受けた高校のためか、デュエルモンスターズのカリキュラムに特に力を入れており、毎年卒業生の中で、三年間の成績優秀者にはプロへの推薦状をもらえるため、和輝はこの学校への入学を決めたのだ。例え両親とともにイギリスに行くという選択を放棄しても。

 校庭を歩く和輝を見るいくつかの視線。全員先月入学したばかりの新入生たちのものだ。

 当然といえば当然だろう。何しろ高校生なのに白髪なのだ。既に一年を共に過ごした二年、三年の在校生たちには見慣れた色でも、まだ一か月しかたっていない新入生たちには珍しい。

 

「兄さん……」

「綺羅、お前もいちいち反応するな。珍しいのは本当なんだし、目立つから見ちゃっても仕方ないだろ。だからいちいち心配そうな声を出すんじゃない」

「いえ、兄さん。私が心配しているのは、この無遠慮な視線からのストレスに、兄さんが爆発してしまわないかです。中学時代や、小学生時代のころのように」

「喧嘩はもう卒業したっつーの。あんな若気の至り、二度とするか」

 

 微妙に痛いところと消してやりたい過去をつかれて、顔をしかめる和輝。去年も同じようなことを言われたが、結局騒ぎは起こしていないのだから少しくらいは信用してほしいものだ。

 和輝も綺羅も十二星高校の二年生。ただしクラスは違うため、廊下で二人は分かれた。

 

「お」

 

 二年三組、和輝は己の教室に入った時、クラスメイトの中で一際目立つ姿を見た。

 黒髪の群の中、一人だけ、鮮やかな金髪がいた。

 和輝よりも背の高い、百八十センチを超える長身、明るい金に染めた髪に、灰色をした鋭い目つきは餓えた狼を思わせる。学校指定の制服であるが、上着は着ずにワイシャツ姿で第三ボタンまで外した状態。眠いのか半分くらい瞼が落ちた状態で、どこを見ているのかわからない。そのためクラスの喧騒にも加わっていないので、ますます一匹狼の風情が強くなる。

 風間龍次(かざまりゅうじ)。見た目は完全に教師から目をつけられるものだが、これでも成績優秀者で通っている、実に要領のいい少年だった。

 

「おい、起きろ龍次、椅子に体預けたまま寝てるけど半端に姿勢がいいからちょっと不気味だぞ」

「あー」

 

 バンバン机の上を叩かれて、一瞬びくりと体を震わせながら、龍次はその視線の焦点を和輝に合わせた。

 

「……和輝か。いや、ちょっと昨日バイト夜番でな。終わったら朝だった」

「相変わらずバイト掛け持ちかよ。ばれたらやばいんじゃないのか?」

「一応、学校主催の奉仕活動とかにも出て適当にゴマ擦ってるし、ある程度黙認状態だからまぁ何とかなるだろ。つーか、カードの金以外に生活費を稼がにゃならんからこーでもしないと回らねぇんだ。

 ……すまん和輝。マジで眠い。昼まで寝る。確か、今日の午後はデュエルカリキュラムだったろ? それまで体力温存だ」

「あいよ。ノートはあとで見せてやるよ」

 

 サンキュと呟いて、龍次は机に突っ伏した。

 静かな寝息が聞こえてくるころ、教師が入ってきたのだった。

 

 

 昼休みも終わった午後。この時間から十二星高校特有のデュエルカリキュラムが行われる。

 今回は学年別に分かれ、指定の場所でランダムの組合せのデュエル。エントランスホールの電光掲示板に表示された生徒は指定のデュエル場に移動し、デュエルすることになる。

 

「俺は……第六デュエル場か。しかも相手は綺羅」

「俺も第六だ。相手は……知らない奴だな」

 

 電光掲示板で相手と場所を確認した後はさっさと移動するだけだ。

 第六デュエル場に和輝と綺羅は対峙する。周りには対戦待ち兼観戦者の生徒達。彼らが見守る中、和輝と綺羅は対峙した。

 二人の左腕に着けられた機械こそデュエルディスク。これこそが、デュエルモンスターズが世界中で流行した一因である。

 

「そろそろ始めるか、綺羅」

「ええ、兄さん。手加減しませんよ?」

「したら俺が勝つだけだよ」

 

 にっこりと笑い、互いに待機モードのデュエルディスクを起動。折りたたまれていた本体が展開し、モンスターゾーンと魔法・罠ゾーンとなるスロットが出来上がる。

 

決闘(デュエル)!』

 

 

和輝LP8000手札5枚

綺羅LP8000手札5枚

 

 

「俺の先攻だな。召喚僧サモンプリーストを召喚」

 

 和輝の指が五枚の手札からカードを一枚抜き取り、デュエルディスクのモンスターゾーンにセット。カードの絵柄を読み取ったデュエルディスクが、その機能を発揮する。

 和輝のフィールド、先ほどまで無人だった場所に、人影が一つ現れる。

 紫の衣に身を包んだ老人。赤い右目が禍々しく輝くその姿から発される雰囲気はとても人間のものではない。

 立体映像(ソリットビジョン)。これこそデュエルディスクの機能。実際に現実世界に実体化し、戦い合うモンスター、飛び合う魔法、発動する罠は、人々の心を、魂をがっちりと掴んだ。

 

「サモンプリーストの効果発動。召喚成功時に守備表示になる。さらにもう一つの効果を発動。手札のスケープ・ゴートを捨てて、デッキからレベル4モンスター、E・HERO(エレメンタルヒーロー) プリズマーを特殊召喚するぜ」

 

 和輝の手札から魔法カードが一枚、デュエルディスクの墓地スロットに入れられる。それが合図となったか、サモンプリーストがぶつぶつと聞き取れない呪文を詠唱しだし、彼の傍らに幾何学模様で描かれた複雑精緻な魔法円が出現した。

 魔法円はやがて輝きを増し、その中から召喚される影。

 全身を鏡のような反射物でできた無機的な鉱石と有機物の融合体のようなヒーローモンスター。鏡面は、あらゆるものを映し出すか。

 

「プリズマーのモンスター効果発動。エクストラデッキの融合モンスター、超魔導剣士-ブラック・パラディンを提示、その融合素材のブラック・マジシャンを墓地に送る。これでこのターン、プリズマーのカード名はブラック・マジシャンとなるが、今は関係ない」

 

 にやりと、和輝が口の端を釣り上げる。不敵な笑みに綺羅がひくりと頬を震わせた。

 

「サモンプリーストとプリズマーをオーバーレイ!」

 

 和輝の宣言と同時、彼のフィールドの上方に渦を巻くに宇宙を思われる空間が展開、その空間に向かって紫色の光となったサモンプリーストと白い光となったプリズマーが展開した空間に吸い込まれていく。

 

「二体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築、エクシーズ召喚!」

 

 虹色の爆発。そして和輝のフィールドに新たな影が現れる。

 

「大自然の守護者、能なき者達の導き手! 来たれダイガスタ・エメラル!」

 

 爆発の粉塵から現れる新たなモンスター。

 エメラルドグリーンの体躯を持ち、風を纏った鉱物の戦士。緑の翼を広げ、両手の盾を守護の証とする。

 エクシーズモンスター。二体以上の同じレベルのモンスターを使って行われる特殊なモンスター。その周囲を舞う二つの光の玉は、エクシーズモンスターの(かなめ)、オーバーレイユニットだった。

 

「ダイガスタ・エメラルの効果発動。オーバーレイ・ユニットを一つ取り除き、墓地の通常モンスター一体を特殊召喚する。蘇れ、ブラック・マジシャン!」

 

 ダイガスタ・エメラルの周囲を衛星のように旋回する光球の一つが消失する。そして、蘇生の風に運ばれて、墓地から黒衣の魔術師が現れる。

 黒紫に近い衣装と帽子、手にした杖を己の手足の延長のごとく扱いその先端を綺羅に突き付け、その美麗な顔をさらに笑みで彩る。

 ブラック・マジシャン。デュエルモンスターズ最初期から登場するモンスターであり、多くのファンを持つ有名な魔法使い族モンスターだ。

 綺羅の表情がまた一掃険しくなる。

 

「来ましたねブラック・マジシャン。兄さんのエース……」

「俺はカードを一枚セットして、ターンエンドだ」

 

 

召喚僧サモンプリースト 闇属性 ☆4 魔法使い族:効果

ATK800 DEF1600

(1):このカードが召喚・反転召喚に成功した場合に発動する。このカードを守備表示にする。(2):このカードがモンスターゾーンに存在する限り、このカードはリリースできない。(3):1ターンに1度、手札から魔法カード1枚を捨てて発動できる。デッキからレベル4モンスター1体を特殊召喚する。この効果で特殊召喚したモンスターはこのターン攻撃できない。

 

E・HERO プリズマー 光属性 ☆4 戦士族:効果

ATK1700 DEF1100

(1):1ターンに1度、エクストラデッキの融合モンスター1体を相手に見せ、そのモンスターにカード名が記されている融合素材モンスター1体をデッキから墓地へ送って発動できる。エンドフェイズまで、このカードはこの効果を発動するために墓地へ送ったモンスターと同名カードとして扱う。

 

ダイガスタ・エメラル 風属性 ランク4 岩石族:エクシーズ

ATK1800 DEF800

レベル4モンスター×2

1ターンに1度、このカードのエクシーズ素材を1つ取り除き、以下の効果から1つを選択して発動できる。●自分の墓地のモンスター3体を選択して発動できる。選択したモンスター3体をデッキに加えてシャッフルする。その後、デッキからカードを1枚ドローする。●効果モンスター以外の自分の墓地のモンスター1体を選択して特殊召喚する。

 

ブラック・マジシャン 闇属性 ☆7 魔法使い族:通常モンスター

ATK2500 DEF2100

 

 

ダイガスタ・エメラルORU:1個

 

 

「私のターンですね、ドロー!」

 

 ターンは移り、綺羅の元へ。彼女はドローカードを確認し、「うーん」と渋い表情を作った。

 

「来ませんね……。仕方がありません。天空の宝札を発動します。手札の勝利の導き手フレイヤを除外して、二枚ドローします。カードを二枚セットして、モンスターをセット。これでターン終了――――」

 

 しようとした綺羅に対して、和輝が待ったをかけた。

 

「お前のエンドフェイズ、俺はセットしてあった永続罠、永遠の魂を発動。その効果を使用し、デッキから黒・魔・導(ブラック・マジック)のカードを手札に加える」

「あっ」

 

 和輝がデッキから手札に加えたカードを見て、綺羅が思わず声を上げた。

 和輝の、笑みを伴った声が続く。

 

「迂闊だったな、綺羅。俺の場にブラック・マジシャンがいる以上、永遠の魂(このカード)への警戒は怠るべきじゃなかった」

「うぅ……。改めて、ターン終了です」

 

 

天空の宝札:通常魔法

手札から天使族・光属性モンスター1体をゲームから除外し、自分のデッキからカードを2枚ドローする。このカードを発動するターン、自分はモンスターを特殊召喚する事ができず、バトルフェイズを行う事もできない。

 

永遠の魂:永続罠

「永遠の魂」の(1)の効果は1ターンに1度しか使用できない。(1):以下から1つを選択してこの効果を発動できる。●自分の手札・墓地から「ブラック・マジシャン」1体を選んで特殊召喚する。●デッキから「黒・魔・導」または「千本ナイフ」1枚を手札に加える。(2):このカードが魔法&罠ゾーンに存在する限り、自分のモンスターゾーンの「ブラック・マジシャン」は相手の効果を受けない。(3):表側表示のこのカードがフィールドから離れた場合に発動する。自分フィールドのモンスターを全て破壊する。

 

 

「俺のターンだ、ドロー」

 

 俄然優位に立つ和輝。一気に攻め込む。

 

「永遠の魂の効果でデッキから千本ナイフ(サウザンドナイフ)を手札に加える。そしてまずは黒・魔・導を発動!」

 

 予定通りに発動される魔法カード。そして和輝のフィールドのブラック・マジシャンが杖を綺羅のフィールドに向ける。

 直後に放たれる黒い旋風が、彼女のフィールドにセットされていたガード・ブロックと奇跡の光臨を破壊。綺羅のフィールドを丸裸にした。

 

「さらに千本ナイフを発動。これで裏守備モンスターを破壊する」

 

 次いで魔術師が見せるは無数のナイフによる投擲。彼の背後に展開されたナイフの群が、ブラック・マジシャンの合図を受けて一斉に綺羅の守備モンスターに殺到。その白刃が裏側守備表示だったアルカナ・フォース0-THE FOOLを破壊。綺羅のフィールドを完全にがら空きにする。

 

「バトルだ。ダイガスタ・エメラル、ブラック・マジシャンの順番でダイレクトアタック!」

 

 二体のモンスターが綺羅へと殺到する。ダイガスタ・エメラルは放ったエメラルドグリーンの光弾が綺羅を打ち付けた。

 

「きゃあ!」

 

 悲鳴を上げる綺羅。とはいえ立体映像なので実際にダメージを受けているわけではない。それでも自分に向けて攻撃してくるモンスターに対して無反応とはいくまいが。

 

「まだだ。まだブラック・マジシャンが残っているぜ!」

 

 続く一撃。ブラック・マジシャンが放った黒い稲妻が綺羅を襲う。

 

「この一撃は、防ぎます! 手札のアルカナフォースⅩⅣ-TEMPERANCEの効果発動! この戦闘ダメージを0にします!」

 

 ブラック・マジシャンの一撃を、綺羅の手札から飛び出した半透明の形容しがたい女性型モンスターが食い止める。これで和輝のモンスターの攻撃は終了と、綺羅がほっと息を吐く。

 だが和輝の不敵な笑みは消えないどころかますます深まった。

 

「攻撃が終わったと思ったか。甘いぜ。手札から速攻魔法、光と闇の洗礼を発動! ブラック・マジシャンをリリースして、デッキから混沌の黒魔術師を特殊召喚! ブラック・マジシャンよカオスの洗礼を受け、新たな進化の扉を開け!」

 

 攻撃を阻まれたブラックマジシャンの身体が、黒と白のマーブル模様の光に包まれ、そのフォルムを変化させた。

 光が弾け飛び、内側から新たな魔術師が現れる。

 二股の帽子、体全体を覆う黒衣にそれらを拘束する無数のベルト。手にした杖を構え、険しい表情を綺羅へと向ける。

 

「バトルフェイズ中に特殊召喚されたモンスターには、まだ攻撃の権利が残されている。混沌の黒魔術師でダイレクトアタック!」

 

 無防備となった綺羅に向けて、混沌の黒魔術師が杖を向ける。

 放たれたのは全てを削り取る黒球。強大な一撃が綺羅に叩き込まれた。

 

「くぅぅぅぅ!」

 

 とはいっても所詮立体映像。リアルな音と光だけで、実際に何か害をもたらしているわけではない。

 

「バトルフェイズ終了、メインフェイズ2に入り、もう一度ダイガスタ・エメラルの効果発動。ユニットを一つ使って、ブラック・マジシャンを蘇生する。エンドフェイズに、混沌の黒魔術師の効果で墓地のスケープ・ゴートを回収、改めてターンエンドだ」

 

 

黒・魔・導:通常魔法

自分フィールド上に「ブラック・マジシャン」が存在する場合に発動できる。相手フィールド上の魔法・罠カードを全て破壊する。

 

千本ナイフ:通常魔法

自分フィールド上に「ブラック・マジシャン」が存在する場合に発動できる。相手フィールド上のモンスター1体を選択して破壊する。

 

アルカナフォースⅩⅣ-TEMPERANCE 光属性 ☆6 天使族:効果

ATK2400 DEF2400

戦闘ダメージ計算時、このカードを手札から捨てて発動できる。その戦闘によって発生する自分への戦闘ダメージは0になる。このカードが召喚・反転召喚・特殊召喚に成功した時、コイントスを1回行い、その裏表によって以下の効果を得る。●表:このカードがフィールド上に表側表示で存在する限り、自分が受ける戦闘ダメージは半分になる。●裏:このカードがフィールド上に表側表示で存在する限り、相手が受ける戦闘ダメージは半分になる。

 

光と闇の洗礼:速攻魔法

自分フィールド上の「ブラック・マジシャン」1体をリリースして発動できる。自分の手札・デッキ・墓地から「混沌の黒魔術師」1体を選んで特殊召喚する。

 

混沌の黒魔術師 闇属性 ☆8 魔法使い族:効果

ATK2800 DEF2600

「混沌の黒魔術師」の①の効果は1ターンに1度しか使用できない。①:このカードが召喚・特殊召喚に成功したターンのエンドフェイズに、自分の墓地の魔法カード1枚を対象として発動できる。そのカードを手札に加える。②:このカードが戦闘で相手モンスターを破壊したダメージ計算後に発動する。その相手モンスターを除外する。③:表側表示のこのカードはフィールドから離れた場合に除外される。

 

 

ダイガスタ・エメラルORL0個

 

 

和輝LP8000手札3枚(うち1枚はスケープ・ゴート)

綺羅LP8000→6200→3400手札2枚

 

 

「さ、さすが兄さん。いきなりライフが半分切ってしまいました。ですが、まだまだ私に反撃の目は残されています。私のターン! ドロー!」

 

 シュパッと音が出そうなほど切れのいいドローをした綺羅だったが、まあその表情は晴れない。

 

「ここは、使うしかありませんね。魔法カード、壺の中の魔術書を発動! 互いにカードを三枚ドローです! さらに手札抹殺を発動! 互いに手札を全て捨てて、その枚数分、ドローします。私は四枚捨てて、四枚ドローします」

「俺は今の壺の中の魔術書で手札が増えたから、六枚捨てて六枚ドローだ」

 

 それぞれ、綺羅が堕天使スペルビア、光神テテュス、光神化、リビングデッドの呼び声を、和輝が調和の宝札、貪欲な壺、デブリ・ドラゴン、ブラック・マジシャン・ガール、闇の誘惑を捨てて捨てた枚数分新たにカードをドローする。

 

「来ました! まずは天輪の葬送士を召喚です! その効果で、墓地のFOOLを特殊召喚します!」

 

 綺羅のフィールドに現れたのは、棺桶に頭と両手が生えたような外見のモンスター。そして綺羅の効果発動宣言に従い、ボディである棺桶の蓋が開き、その中からさきほど破壊されたFOOLが守備表示で復活した。

 

「特殊召喚に成功したFOOLの効果が発動します。コイントスを行い、表と裏で効果が決定します」

 

 本来はここでコイントスを行うが、デュエルディスク独自の判定機能が効果を発揮、FOOLのカード画像が時計回りに回転しだす。

 回転はしばらく続き、やがて止まった。

 

「逆位置。よってFOOLは兄さんのカード効果に対象になった時、その効果を無効にして破壊します。さぁ、これが私のデッキのキーカード! 永続魔法、コート・オブ・ジャスティス発動です!」

 

 綺羅のフィールド、その頭上に、天使の輪を思わせる、小さな羽根がついたわっかが出現する。その輪っかから光が降り注ぎ、まるで祝福するように綺羅のフィールドを輝かせた。

 

「さぁ、一気に行きますよ兄さん! ちょっと黙っていてくださいね! コート・オブ・ジャスティスの効果を発動し、手札のアテナを特殊召喚します。

 アテナの効果発動。天輪の葬送士を墓地に送って、墓地から堕天使スペルビアを蘇生、スペルビアの効果で、墓地から光神テテュスを蘇生、アテナの効果で、兄さんに1200ポイントのダメージを与えます」

「な、なんか黙ってるうちにあかんことに!」

 

 変なリアクションをとる和輝。その眼前、白い戦衣に身を包み、断罪の槍と守護の盾を持った女神が、その槍の穂先を突き付ける。

 次の瞬間、槍から放たれた光の矢が二発、和輝に突き刺さった。

 

「ぐぉぉ。地味バーンが効く」

「次は派手に行きます。アテナでブラック・マジシャンを、スペルビアで混沌の黒魔術師を、そしてテテュスでダイガスタ・エメラルを攻撃です!」

 

 綺羅の天使たちの総攻撃が、和輝の陣営に壊滅的な打撃を与えていく。

 三体のモンスターは一方的に破壊され、和輝にもダメージを与える。和輝は、モンスターが破壊されたことで生じた疑似的な突風から顔を庇いながら、険しい表情で言った。

 

「くそっ。混沌の黒魔術師の黒魔術師が場を離れたため、ゲームから除外される……ッ!」

 

 このターンの天使たちの猛攻で、一気に立場は逆転したといっていいだろう。

 

 

壺の中の魔術書:通常魔法

「壺の中の魔術書」は1ターンに1枚しか発動できない。(1):互いのプレイヤーはカードを3枚ドローする。

 

手札抹殺:通常魔法

お互いの手札を全て捨て、それぞれ自分のデッキから捨てた枚数分のカードをドローする。

 

天輪の葬送士 光属性 ☆1 天使族:効果

ATK0 DEF0

このカードが召喚に成功した時、自分の墓地の光属性・レベル1モンスター1体を選択して特殊召喚できる。

 

アルカナ・フォース0-THE FOOL 光属性 ☆1 天使族:効果

ATK0 DEF0

このカードは戦闘では破壊されず、表示形式を守備表示に変更できない。このカードが召喚・反転召喚・特殊召喚に成功した時、コイントスを1回行い、その裏表によって以下の効果を得る。●表:このカードを対象にする自分のカードの効果を無効にし破壊する。●裏:このカードを対象にする相手のカードの効果を無効にし破壊する。

 

コート・オブ・ジャスティス:永続魔法

自分フィールド上にレベル1の天使族モンスターが表側表示で存在する場合、手札から天使族モンスター1体を特殊召喚する事ができる。「コート・オブ・ジャスティス」の効果は1ターンに1度しか使用できない。

 

アテナ 光属性 ☆7 天使族:効果

ATK2600 DEF800

1ターンに1度、「アテナ」以外の自分フィールド上に表側表示で存在する天使族モンスター1体を墓地へ送る事で、「アテナ」以外の自分の墓地に存在する天使族モンスター1体を選択して特殊召喚する。フィールド上に天使族モンスターが召喚・反転召喚・特殊召喚された時、相手ライフに600ポイントダメージを与える。

 

堕天使スペルビア 闇属性 ☆8 天使族:効果

ATK2900 DEF2400

(1):このカードが墓地からの特殊召喚に成功した時、「堕天使スペルビア」以外の自分の墓地の天使族モンスター1体を対象として発動できる。その天使族モンスターを特殊召喚する。

 

光神テテュス 光属性 ☆5 天使族:効果

ATK2400 DEF1800

このカードがフィールド上に表側表示で存在する限り、自分がカードをドローした時、そのカードが天使族モンスターだった場合、そのカードを相手に見せる事で自分はカードをもう1枚ドローする事ができる。

 

 

和輝LP8000→6800→6700→6600→6000手札6枚

綺羅LP3400手札1枚

 

 

「どうです兄さん! 逆転して見せましたよ!」

 

 陣営を壊滅させられた兄に対して、綺羅はやや控えめな胸を張って言った。

 

 

 

 

 

◆◆◆◆◆◆

 

 

 

 

 

 和輝と綺羅がデュエルカリキュラムで戦っている頃、非日常は確実に迫っていた。

 星宮市にいくつかある、路地裏の一つ。

 

「あっはははははは! どーしたんですかぁ? もう鬼ごっこはおしまいですかぁ?」

 

 どこか甘ったるい、そして、確実に狂気を内包した声が路地裏を駆ける。声を発しているのは二十歳前後と思われる女。

 三つ編みにした黒髪に、黒い瞳、大きな丸眼鏡をかけたその姿は文学少女といった印象が強い。

 が、着ている衣装が、その印象を裏切っていた。

 黒を基調に、白のフリルをあしらったゴスロリドレス。この衣装が、彼女の印象をひどくちぐはぐなものにしている。彼女自身の雰囲気とひどく乖離しているのだ。

 女は一人の青年を追い詰めていた。

 金髪碧眼。百八十センチを超える長身に、異性どころか同性の目も惹きつける美丈夫。着ている物こそ簡素な白いシャツに黒のスラックス姿と平凡なものだが、そんなものでは彼が持つ本質的な輝きを損なうことはない。

 たが、彼の姿はそれでも異様だった。

 一言で言うならボロボロだ。

 シャツの右のわき腹からは血が滲み出ており、白いシャツは半分以上赤く染まっている。額から流れる血が左目を汚し、彼の顔の左半分を朱に染めている。

 それでも、青年はほのかな笑みを崩さなかった。そしてその視線は、女ではなくその背後に注がれていた。

 女の背後、そこにまた、奇妙な影が宙に浮いていたのだった。

 この影もまた、異様な外見だった。

 まず一番最初に目につくのは、異様に長い前髪。荒んだ金髪で、顔がほとんど隠れるほどに長く、辛うじて分かるのは髪の隙間から覗く赤い左目のみ。

 全身を雁字搦めに鎖で封じ込めた黒い甲冑を着込んだ姿で、異様に巨大。何しろ、女の三倍はある巨大さだ。

 腕や肩などに直接時計が埋め込まれており、カチコチとでたらめな時間を刻み、さらに背後には影よりもさらに一回りは巨大な時計の文字盤があった。

 数十を超える時計たちがばらばらの時間を刻み、周囲を威圧するようにカチコチとここだけは規則正しい音を奏でる。

 

 女が言う。

「それにしても情けないですねぇ。仮にも神様でしょぉ? なのに逃げ回ってばっかりでぇ。私のカイロス様とは大違いですよぉ」

『黙っていろ、人形』

 

 カイロスと呼ばれた影が言葉を放った。

 低く、重く、くぐもった声だった。

 

『無様なものだな、ロキよ。我がこうして貴様を襲うがゆえに、貴様は人間どもから離れざるを得なかった。おかげでパートナーとなる人間さえ見つけられず、一方的に嬲られるしかない』

 

 嘲りを多分に込めたカイロスの言葉に、ロキと呼ばれた青年は微笑した。

 

「馬鹿なこと言うなよカイロス。ボクは人間が大好きだ。そんな彼らを不必要に巻き込むなんて、冗談じゃない」

 

 出血のためか声は弱弱しかったが、その瞳の意思は、力は、いささかも衰えてはいなかった。

 

『愚かな答えだ。人間など、神々の気まぐれでいくらでも増減できるというのに。所詮は混ざりもの(、、、、、)か。やれ、人形』

「はぁい、カイロス様ぁ」

 

 カイロスの命令に従い、女が懐からカードを一枚取り出した。

 デュエルモンスターズのカード、カード名は40 ギミック・パペット-ヘブンズ・ストリングス。

 

「いらっしゃぁい、ヘブンズ・ストリングス」

 

 女の呼びかけに応えるかのようにカードが光った。次の瞬間、ロキの眼前に、新たな影が現れた。

 背中の左側から天使のような翼をはやした男性型の機械人形。右手に巨大な両刃剣を備え、首下から左肩までの胴体部が展開し、間に竪琴の弦を思わせる糸が張り巡らされていた。

 デュエルモンスターズのモンスター。だが空気を押しのけて現れたその現実感はどう考えても立体映像のものではない。現実に、モンスターが実体化しているのだ。

 

「いってぇ、ヘブンズ・ストリングス」

 

 女の命令一下、ヘブンズ・ストリングスがその剣を大きく振り上げた。




初めまして。この度こちらの方で小説を投稿させていただきます。
この作品はオリジナル世界、オリキャラのみで原作のキャラは出ません。
また、基本はOCGのカードをメインに使っていきますが、オリカやいわゆる神のカードが多く出てきます。
未熟な面が多くあると思いますが、よろしくお願いします。
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