神々の戦争   作:tuki21

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第100話:復讐するは我にあり

 機械仕掛けの怪物が、崩れ落ちていく。

 様々な機械をより合わせて蜘蛛のような形にした化け物、チクタクマンは、ガラガラと体のパーツを剥落させ、崩れ落ちていく。

 これが生物ならさぞ悍ましい断末魔が響き渡るだろうが、機械にはそんな機能はない。無言のまま崩れ落ちていく。

 やがて、さっきまで機械仕掛けの蜘蛛だった化け物は、ただのうずたかく積もったガラクタの塊になり、一陣の風が屋上に吹いた時、そのガラクタさえもが幻だったかのように消え去った。

 

「ナイアルラトホテップは?」

「いない。すでにこの場を去ったようだ」

 

 女の声が男に返答した。姿はなかったが、それに奇妙を感じることなく、男は唇を噛んだ。

 その表情からは苛立ちの念がありありと浮かび上がっていた。

 

「また、逃げられた……」

 

 呟きながら、右掌を見る。何も掴めない手。掴んでも零れ落ちてしまう求めたもの。男は悔恨を滲ませる声音で言葉を吐いた。

 

「いったい、いつになったらこの手は奴らの首にかかる……」

「諦めるな。私は復讐の女神。この私がいる限り、貴殿の復讐は完遂させる。この私の誇りにかけてな」

「期待している」

 

 男は多くの感情を振り切るように(きびす)を返した。

 夜明けが近い。一度眠って体力を回復させるべきだ。

 

「オレは絶対に諦めん。必ず息の根を止めてやるぞ、ナイアルラトホテップとその契約者……!」

 

 怨念のこもった言葉を落として、男は屋上を後にした。

 

 

 

 

 

◆◆◆◆◆◆

 

 

 

 

 

 ジェネックス杯二日目、午前十時七分前。

 コンビニ前で、岡崎和輝(おかざきかずき)は左腕にデュエルディスクを装着した状態でスマホを眺めていた。

 といっても何かアプリを起動しているわけではない。スマホの画面に映っている時計で時刻を確認していたのだ。

 目立つ少年だった。

 中肉中背、茶色がかった黒の瞳、目立つ装飾の類は着けておらず、夏場なので薄手のシャツの上に、白と黒のリバーシブルのジャケットを、白の面を表にして着用している。

 整った顔立ちなので、真面目な顔をしていれば道行く異性の何人かは足を止め、彼の姿を眺めるだろう。

 もっとも、彼の容姿を目立たたせているのは、眉目秀麗さというよりも、その髪の色か。

 白い。脱色しているのではなく、今はこれが彼の地毛なのだ。

 そのため一見すると年齢が測りにくく、年齢不詳にさせる。

 和輝は神々の戦争の参加者として、今日も行われる強敵の戦いを思う。

 ティターン神族のうち、倒したのは三柱。だがこちらも友人である黒神烈震(くろかみれっしん)は戦闘不能で、復帰の目途はたっていない。

 そしてその烈震を倒したのは、単純な力ならティターン神族さえも上回るとされる、ギリシャ神話最強の怪物、テュポーン。

 まだ見ぬ強敵も含めて、敵は多い。

 だがいいニュースもある。

 もう一人の友人、風間龍次(かざまりゅうじ)の師であるAランクプロデュエリスト、穂村崎秋月(ほむらざきしゅうげつ)が今日からジェネックス杯に参戦するという。

 彼女についてもフレデリックから聞いていた。こちらの味方だという。心強い戦力になってくれるとのこと。

 戦いは続く。怖気づいている暇など無いほど早く、そして容赦なく。

 

「にしてもおせーな、綺羅(きら)の奴」

 

 スマホをしまって、和輝は独りごちた。

 彼がコンビニの前にいるのは、このコンビニに義妹の綺羅が入っていったからだ。

 熱中症対策に飲み物を買いたいといっていたが、多分他にもおやつとかいろいろ買っているんだろう。大人ぶった言動や態度が多いが、まだ子供なところがあるので――だからパジャマも猫柄なのだ――、いろいろ買おうかやめようか迷っているのかもしれない。

 

「暑いな……」

 

 今日も三十五度を超える猛暑日になるらしい。綺羅に先んじてすでに飲み物を購入していた和輝だったが、顎に滴り落ちる汗の感触は不快だ。

 なのでいったん冷房の効いたコンビニの中に避難しようかと、ついでに綺羅に声をかけようと思った和輝だったが――――

 瞬間、世界が一変した。

 

 

「お待たせしました、兄さん。すみません、ちょっとお菓子を何にするか悩んでしまって――――あれ?」

 

 十時三分前。兄の姿を求めてコンビニから出た綺羅は、和輝の姿が消えていることに気づいた。

 周囲を見回すが、兄の姿はない。

 

「兄さん?」

 

 ()()()()()()()()に行ってしまった兄を思い、綺羅は不安げに呟いた。

 

 

「これは!?」

 

 一方、和輝は周囲の人々が全て消えてしまったことに気づいた。

 何が起こったのか、というのは考えるに及ばない。こんな景色はもう何度も見てきた。

 

「神々の戦争の、バトルフィールドだね」

 

 和輝の傍ら、さっきまで誰もいなかった場所に、一人の美丈夫が現れた。

 金髪碧眼、涼やかな笑みを口元に貼り付けた姿はただただ美しく、簡素なシャツに夏用のスラックスもまた、その簡素さが逆に、何の飾り気もない、男が本来持つ外見の美しさを引き立てているように思える。

 和輝が契約した神、北欧神話の悪戯の神、ロキである。

 神々の力はすさまじく、現実世界で思う存分振るえば被害は計り知れない。

 そこで通常は現実世界とは位相の違う異世界を展開。神々の戦争の参加者はここで戦う。

 和輝自身もこのバトルフィールドを展開したことがあるし、逆に敵の展開に取り込まれたこともある。

 ただ、今までのケースとは違う点があり、それは――――

 

「相手がいない。どこだ?」

 

 今まで敵は邪悪であれそうでなくとも、その姿を正面から堂々と晒していた。それが神としての矜持、誇りであるといわんばかりであった。

 だが今は誰もいない。周囲を見渡しても、影さえ掴めない。

 

「ロキ! 神の気配は!?」

「する。近い。場所は――――」

 

 上だ。ロキが言った直後、一人と一柱の頭上に影が映った。

 

「和輝!」

「分かってる!」

 

 和輝はすぐにロキが言いたいことを察した。左手に装着したデュエルディスクのデッキトップからカードを引き抜く。

 引きを祈りながら、デュエルディスクにセット。

 直後に頭上の影が和輝の直近に迫る。

 激突音。和輝の視界に映ったのは太陽を背に迫る機械の猛禽の翼と爪。そしてそれを迎撃する杖。

 和輝を守るために現出したのは、彼のデッキのエースカード、ブラック・マジシャン。

 

「何しやがる!」

 

 叫ぶ和輝。視線は爪を振り下ろしてきたモンスターからそらさない。

 和輝は見た。襲い掛かってきたモンスターの上に、人が乗っているのを。

 人影がモンスターから飛び下りた。

 

 ――――楽しい楽しい楽しいなぁ!

 

「!」

 

 その人影を見て、和輝の胸の内から、怪物が歓喜の声を上げた。

 久しぶりに聞いたような気がする。窮地に陥ると聞こえてくる怪物の声。死を誘惑してくる恐ろしい声。

 だが今までは神々の戦争で追い詰められたり、精神が不安定だった時期だったりと、とにかく客観的に見て脅威が目の前にあり、窮地にいる時に聞こえてくることがほとんどだった。

 こんな、まだ何も始まっていない状況で声がするとは―――――

 

(それだけ、こいつが危険だってのか?)

 

 歯を食いしばって、和輝は襲撃してきた人影を観察した。

 男だ。

 前髪の一房が赤い、燃え尽きた灰のような灰白色の髪、刃のように鋭い、何もかもが凍り付いたような青い双眸、喪服を思わせる黒のダークスーツ、白のワイシャツ、黒のネクタイ姿。右耳に女物のイヤリング。

 燃え盛り、燃え尽き、それでもなお対象を燃やし尽くさんとする遺灰の風情。

 その男の姿を見た途端、和輝の身を悪寒が貫いた。

 

「く……!」

 

 ヒトの形をしているが、それが人間だとは思えなかった。

 全てを燃やし尽くさんとする炎が何かの間違いでたまたま人の形をとった、そんな印象だ。

 

「答えろ……」

 

 男が口をきいた。地獄の底から響いてくる死者の声のような声音。和輝はさっきから寒気が止まらなかった。

 

「ナイアルラトホテップはどこだ?」

「なんだと?」

 

 ナイアルラトホテップ。その名に聞き覚えはあった。

 イギリスの、ウェールズの森。あそこで戦った神々の戦争の参加者、黄泉野平月(よみのひらつき)。あの男が契約した神の名だ。

 

「知っているはずだ。貴様からは奴の気配がする。答えろ。答えなければ―――殺す」

 

 物理的圧力(プレッシャー)さえ感じさせる殺気の奔流。和輝は後ろに下がってしまいそうな身体を押さえつけながら、不敵に笑った。

 

「笑わせるなよ。いきなり攻撃してきたうえにそんな脅し文句キメてくる奴に、素直に答えるかよ」

「なら、死ね」

 

 男に躊躇も迷いもない。デュエルディスクを構え、和輝に向かって突き出した。

 お前も構えろ、そう言っているようだ。その提案に乗るのは癪だが、すでにバトルフィールド内に取り込まれている場、()()()意味はない。

 そして人の話を聞かない精神状態にある者は、えてして一度殴り倒した方がいい。

 

「ふざけた野郎だな」

 

 怒りはある。いきなり襲われたのだから当然だ。

 それ以上に困惑がある。この男の憎悪の源が分からない。

 なぜ、こんなにも憎悪を発散しているのか。何が憎いのか。誰が憎いのか。

 今にして思えば、和輝はすでにこの男に、この男の異様な雰囲気に引き込まれていた。

 デュエルディスクを起動する。和輝の戦士をその眼差しに感じ取って、男は口を開いた。

 

城崎隼人(じょうざきはやと)、その名を髄まで刻め」

「岡崎和輝。別に覚えなくていいぞ」

 

 初手の手札となる五枚のカードがデッキから排出された、二人のプレイヤーはそれを手に取る。

 

「和輝、気を付けて。姿を見せないだけで神は間違いなくいる。そして何より、姿を見せない神よりも、今目の前にいるあの男の方が危険だとボクは思う。

 あの憎悪、怨嗟。人の身でよくぞここまで練り上げたものだよ」

「ああ。それは俺も思うよ」

 

 ロキの忠告に素直に頷きを返しながら、和輝は視線を男、城崎から外さなかった。

 和輝の胸元に宝珠の赤い輝きが灯る。男、城崎の輝きは鈍色(にびいろ)だった。

 一拍の間。そして――――

 

決闘(デュエル)!』

 

 戦いの幕は唐突に切って落とされた。

 

 

和輝LP8000手札5枚

城崎LP8000手札5枚

 

 

「オレの先攻だ!」

 

 先攻を勝ち取ったのは城崎。ドローフェイズ、スタンバイフェイズを即座に消化し、メインフェイズ1に入るや否や、手札からカードを繰り出した。

 

RR(レイド・ラプターズ)-ナパーム・ドラゴニアス召喚!」

 

 城崎のフィールドに、エンジン音と噴射音と、ついでに風を切る音を響かせて、頭上から影が降り立った。

 露わになったその姿は機械の翼竜。翼を大きく広げ、身を羽ばたかせ、口元から火を吐いている。

 ただその外見に反し、種族は鳥獣族だった。

 

「ナパーム・ドラゴニアスの効果発動! 貴様に600のダメージを与える!」

 

 荒々しい宣言とともに、城崎の右手が前に振るわれる。それを合図に、ナパーム・ドラゴニアスが火炎弾を和輝に向かって放った。

 和輝は腕をクロスさせてガード、宝珠を守る。直後に炎弾が和輝の防御に激突した。

 

「ぐ……!」

 

 食い縛った歯の間から呻き声が漏れる。

 重い。今までも多くの敵と戦ってきたが、たかが600のダメージでここまで重いのは初めてだ。

 

「プレイヤーの精神力によって、モンスターや魔法による攻撃は激しく、鋭く、重くなる。彼の憎悪は伊達じゃない。あの怨嗟が恐ろしく貫通力のある矢になって襲ってきているんだ……。和輝、くれぐれも気を付けて。もしも宝珠に直撃したら、ライフが残っていても宝珠を砕かれてしまうかもしれない」

「ああ、身をもって体感したぜ……」

 

 ロキの忠告に慄く和輝。その眼前で、城崎が更なるカードを繰り出した。

 

「オレのフィールドにRRが存在するため、手札のRR-ファジー・レイニアスを特殊召喚!」

 

 ナパーム・ドラゴニアスの傍らに現れたのは、やはりメカニカルな外見をしたモンスター。

 暗い紫を基調にしたカラーリング、広げられた機械の翼。感情のこもらない赤い瞳。モチーフはモズと思われる。

 

()()()()にされそうだなぁ」

「笑えねぇんだよその冗談」

「オレは! ナパーム・ドラゴニアスとファジー・レイニアスでオーバーレイ! 二体のモンスターで、オーバーレイネットワークを構築! エクシーズ召喚!」

 

 迸る叫び。城崎の右手が天へと突き上げられた。

 彼の声に呼応するように、城崎の頭上に渦を巻く銀河を思わせる、黒い背景の空間が展開され、その中に二体のRRモンスターが紫の光となって飛び込んだ。

 虹色の爆発が起こる。

 

「怨嗟の彼方から飛び立て猛禽の翼よ! その羽ばたきで数多の同胞を導け! RR-フォース・ストリクス!」

 

 爆発の向こうから巨大な影が現れる。

 モチーフはおそらくフクロウだろう。今まで出てきたRRの中ではややずんぐりした体形。それだけ巨体で、翼も大きい。翼の付け根にあるバーナーが火を噴いてバランスを整え、滞空する。

 その周囲を衛星のように旋回する二つの光球、即ちORU(オーバーレイユニット)

 なお、攻撃力はたったの100なので、守備表示でのX召喚となった。

 

「フォース・ストリクス効果発動! ORUを一つ使い、デッキからRR-バニシング・レイニアスを手札に加える。さらにこの瞬間、ORUとして使われ、墓地に送られたファジー・レイニアスの効果発動! デッキから二枚目のファジー・レイニアスを手札に加える。カードを一枚セットし、ターンエンドだ」

 

 

RR-ナパーム・ドラゴニアス 闇属性 ☆4 鳥獣族:効果

ATK1000 DEF1000

(1):1ターンに1度、自分メインフェイズに発動できる。相手に600ダメージを与える。この効果の発動後、ターン終了時まで自分は「RR」モンスター以外のモンスターの効果を発動できない。(2):このカードが戦闘で破壊され墓地へ送られた時に発動できる。デッキから「RR」モンスター1体を特殊召喚する。この効果で特殊召喚したモンスターの効果は無効化される。

 

RR-ファジー・レイニアス 闇属性 ☆4 鳥獣族:効果

ATK500 DEF1500

「RR-ファジー・レイニアス」の(1)(2)の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できず、このカードの効果を発動するターン、自分は「RR」モンスターしか特殊召喚できない。(1):自分フィールドに「RR-ファジー・レイニアス」以外の「RR」モンスターが存在する場合に発動できる。このカードを手札から特殊召喚する。(2):このカードが墓地へ送られた場合に発動できる。デッキから「RR-ファジー・レイニアス」1体を手札に加える。

 

RR-フォース・ストリクス 闇属性 ランク4 鳥獣族:エクシーズ

ATK100 DEF2000

レベル4モンスター×2

(1):このカードの攻撃力・守備力は、このカード以外の自分フィールドの鳥獣族モンスターの数×500アップする。(2):1ターンに1度、このカードのX素材を1つ取り除いて発動できる。デッキから鳥獣族・闇属性・レベル4モンスター1体を手札に加える。

 

 

RR-フォース・ストリクスORU×1

 

 

和輝LP8000→7400手札5枚

城崎LP8000手札4枚

 

 

「俺のターンだ、ドロー!」

 

 ドローカードを確認後、和輝は相手、即ち城崎を一瞥した。

 ただ立っているだけでも漂ってくる圧倒的な敵意。ただそこに悪意は介在していない。その憎悪がどこから来るのか知らないがおそらく――――

 

「根っからの悪人、ってわけじゃないみたいだね。あの憎悪がどこから来ているのか分からないけど、()()が彼の雰囲気も内面も、人生も歪めてしまっている」

 

 ロキの考察は正しいと思う。だが事情も何も知らないし、今問いただしても答えないことは明白だ。

 とにかくデュエルを進めよう。デュエルを通じて相手の感情がこちらに伝わってくるなら、こちらの感情も相手に伝わるかもしれない。

 

「俺は、魔道化リジョンを召喚する」

 

 現れたのは、木製のような体をした道化人形。赤い帽子をかぶり、その先には青い球。とんがった鼻にケタケタ笑い表情。どこからどう見ても道化そのものだった。

 

「魔道化リジョンを召喚したターン、俺はもう一度だけ魔法使い族モンスターを表側表示でアドバンス召喚できる。

 俺は魔道化リジョンをリリースし、群鳥(むれどり)の魔術師をアドバンス召喚!」

 

 道化人形が白い光の粒子となって、消えていく。代わりに現れたのは、すらりとした肢体を鳥の羽根を模した赤と緑の色とりどりなローブで包んだ女の魔術師。黄色いメッシュの入ったセミショートの髪、赤い瞳、頬に翼を広げた鳥のような小さなペイント、ローブの下はビキニ水着のような露出の激しい衣装、腰回りにパレオ。どちらも色は明るい赤。

 

「魔道化リジョンの効果発動! リジョンの効果でデッキから通常魔法使い族、牛刺(ぎゅうし)の魔術師を手札に加える。

 さらに群鳥の魔術師の効果発動! アドバンス召喚に成功した場合、デッキからレベル6以下の魔法使い族一体を特殊召喚できる! 俺は幻想の見習い魔導師を特殊召喚する!」

 

 群鳥の魔術師が、右手に握ったステッキのような杖を振り上げた。

 次の瞬間、どこから現れたのは、無数の鳥たちが羽ばたき、空を埋め、それぞれの嘴で、一つの巨大な魔法陣を描いた。

 次の瞬間、魔法陣がエメラルドグリーンの光を放つ。光の向こうから、人影が現れた。

 現れたのは、ブラック・マジシャン・ガールによく似た少女モンスター。

 違うのは年齢が何歳か幼くなり、髪は白金色、肌は褐色に。衣装も装いは似ているがカラーリングが桃色がかった紫が多めの配色だ。

 

「幻想の見習い魔導師の効果発動! デッキからブラック・マジシャンを手札に加える!」

「ほう! 通常、モンスターが増えるはずのないアドバンス召喚をしながら、モンスターを増やし、さらにデッキからカードをサーチすることで損失したアドバンテージを即座に回復か! 考えてるね、和輝」

 

 はしゃぐようなロキの言葉を和輝は無視。城崎も喚く邪神を一瞥しただけで特に反応は返さなかった。

 

「あー、なんか寂しいね。ちょっとでいいから反応してよ」

 

 やはり反応はない。ロキは黙って肩をすくめた。

 隣の邪神は無視して、和輝は手札からカードを二枚、一気に引き抜いた。

 

「俺はスケール4の猿渡の魔術師と、スケール8の牛刺の魔術師を、Pゾーンにセッティング!」

 

 和輝の両脇に、青白く光る柱が屹立する。柱の内部にはその名を呼ばれた魔術師が収まり、それぞれのモンスターの下方に、Pスケールと同じ4と8の文字が浮かび上がった。

 

「振り子は揺れる。避けえぬ宿命を乗せて! 天空に描かれる光のアークが、異界への門へと変じる! ペンデュラム召喚! 手札から現れろ、ブラック・マジシャン!」

 

 和輝の頭上に、異界へとつながる門が出現し、門が開いた。

 そこから光を伴って飛び出したのは、黒衣の魔術師。端正な顔つきを涼やかな微笑で飾り、手にした杖を手の延長であるかのように自在に振るい、和輝のフィールドに降り立った。

 

「バトルだ! ブラック・マジシャンでフォース・ストリクスを攻撃!」

 

 ブラック・マジシャンが出現するのとほぼ同時に、和輝は動いた。彼の攻撃命令を受けて、黒衣の魔術師は浮遊から杖を回し、先端をフォース・ストリクスに突き付けた。

 黒い稲妻が幾筋にも分かれて、無数の蛇のようにフォース・ストリクスに殺到する。

 

「リバースカードオープン! RR-レディネス発動! このターン、RRは戦闘で破壊されない!」

 

 城崎の伏せカードが翻る。次の瞬間、フォース・ストリクスに何らかのコーティングが施された。それを確認しても、和輝は止まらない。

 

「残念だがダメージは受けてもらう! 牛刺の魔術師のP効果により、俺の場の魔法使い族モンスターは貫通効果を持つ! そして俺は、場にいる幻想の見習い魔導師の効果発動! このカードをリリースして、ブラック・マジシャンの攻撃力を2000アップさせる!」

 

 ブラック・マジシャンの雷に、魔力で作られた爆炎が追随する。それは幻想の見習い魔導師による援護だった。

 魔導師たちの連携がフォース・ストリクスに直撃する。

 

「ぐぅぅぅ!」

 

 心を強く。槍のように鋭く。フレデリックとのデュエルで学んだこと。相手が危険極まりないなら、こちらも相手を(おもんぱか)ってはいられない。和輝は精神を鋭く研ぎ澄まし、攻撃の意志を乗せた。

 攻撃の意志、敵を倒すという誓い。これが功を奏し、和輝の攻撃は鋭く、抉るように城崎に届いた。

 RR-レディネスによって破壊は免れたが、貫通ダメージのフィードバックが城崎を襲った。城崎は苦痛の呻きを上げた。

 だが、踏みとどまった。膝を付くこともなく、ギラギラとした眼差しで和輝を射抜いてきた。

 

「凄いね、彼。普通、2000オーバーのダメージを(じか)に食らえばもっときついだろうに、あれで済ませた。何よりあの眼光からあふれ出る執念が凄い」

「それだけ普通じゃない相手ってことだ。そもそも残りの神も五十を切った。普通なんて奴がいるかよ。

 まだ俺のバトルフェイズは終了してないぜ! 群鳥の魔術師でフォース・ストリクスを攻撃!」

 

 続く攻撃も、城崎は踏みとどまった。和輝の攻撃を大したことがないとでも言わんばかりに、和輝を()めつけた。

 

「カードを一枚伏せて、ターンエンドだ」

 

 

魔道化リジョン 闇属性 ☆4 魔法使い族:効果

ATK1300 DEF1500

このカード名の(2)の効果は1ターンに1度しか使用できない。(1):このカードがモンスターゾーンに存在する限り、自分は通常召喚に加えて1度だけ、自分メインフェイズに魔法使い族モンスター1体を表側攻撃表示でアドバンス召喚できる。(2):このカードがフィールドから墓地へ送られた場合に発動できる。自分のデッキ・墓地から魔法使い族の通常モンスター1体を選んで手札に加える。

 

群鳥の魔術師 風属性 ☆6 魔法使い族:ペンデュラム

ATK2300 DEF1500

Pスケール3

P効果

このカード名の(1)の効果はデュエル中、1度しか発動できない。(1):自分フィールドのカード1枚を破壊して発動できる。Pゾーンのこのカードを特殊召喚する。その後、カードを1枚ドローする。

(1):このカードのアドバンス召喚に成功した場合に発動できる。デッキからレベル6以下の魔法使い族モンスター1体を特殊召喚する。

 

幻想の見習い魔導師 闇属性 ☆6 魔法使い族:効果

ATK2000 DEF1700

(1):このカードは手札を1枚捨てて、手札から特殊召喚できる。(2):このカードが召喚・特殊召喚に成功した場合に発動できる。デッキから「ブラック・マジシャン」1体を手札に加える。(3):このカード以外の自分の魔法使い族・闇属性モンスターが相手モンスターと戦闘を行うダメージ計算時、手札・フィールドのこのカードを墓地へ送って発動できる。その自分のモンスターの攻撃力・守備力はそのダメージ計算時のみ2000アップする。

 

牛刺(ぎゅうし)の魔術師 闇属性 ☆4 魔法使い族:ペンデュラム

ATK1900 DEF1900

Pスケール8

P効果

(1):自分の魔法使い族モンスターが守備表示モンスターを攻撃した場合、その守備力を攻撃力が超えた分だけ相手に戦闘ダメージを与える。

モンスター効果

なし

 

猿渡の魔術師 闇属性 ☆5 魔法使い族:ペンデュラム

ATK500 DEF2500

Pスケール4

P効果

このカード名のP効果は1ターンに1度しか使用できない。(1):Pゾーンのこのカードが破壊された場合に発動できる。このカードをモンスターゾーンに特殊召喚する。

モンスター効果

(1):このカードが相手モンスターの攻撃対象となった時に発動できる。このカードを手札に戻す。

 

ブラック・マジシャン 闇属性 ☆7 魔法使い族:通常モンスター

ATK2500 DEF2100

 

RR-レディネス:通常罠

(1):このターン、自分フィールドの「RR」モンスターは戦闘では破壊されない。(2):自分の墓地に「RR」モンスターが存在する場合に墓地のこのカードを除外して発動できる。このターン、自分が受ける全てのダメージは0になる。

 

 

和輝LP7400手札2枚

城崎LP8000→5500→5200手札3枚

 

 

「オレのターンだ! ドロー!」

 

 荒々しいドロー。ドローしたカードをすぐさま手札に加えた城崎は、射殺さんばかりの視線を和輝に向けた。

 

「フォース・ストリクスの効果発動! ORUを一つ使い、デッキからRR-トリビュート・レイニアスを手札に加える。

 そしてRR-バニシング・レイニアス召喚! 効果を使い、手札からRR-トリビュート・レイニアスを特殊召喚!」

 

 フォース・ストリクスの両隣りに、新たな翼の影が現れる。

 やはりどちらも翼を広げた機械仕掛けの猛禽類。

 緑の翼、そこから延びる配管、青いボディのバニシング・レイニアス。猛禽よりもより飛行機に近いフォルム、青いボディカラー、ジェット噴射を続ける翼、随伴機のような小型のビットを持つトリビュート・レイニアス。

 

「トリビュート・レイニアスの効果発動! デッキからRR-ミミクリー・レイニアスを墓地に送る。さらに今墓地に送ったミミクリー・レイニアスの効果発動! このカードをゲームから除外し、デッキからRR-ネストを手札に加え、発動!

 RR-ネストの効果発動! デッキからRR-ラダー・ストリクスを手札に加える!」

「うーん、手札に加えたりモンスターを並べたり忙しいデッキ。というか厄介だねあれ。モンスター効果が別のRRを呼び寄せて、戦力が尽きない。モンスター同士の連携が高い」

「ああ。しかも数を並べやすいから(エクシーズ)モンスターも召喚しやすい。こりゃ、押し込まれると手が付けられないかもな……」

 

 和輝とロキが相手のデッキについて意見を交わしている間にも、城崎はプレイを続けた。

 

「闇の誘惑を発動。カードを二枚ドローし、ラダー・ストリクスを除外する!」

 

 ドローカードを確認した時、城崎の両目が細まり、口の中だけで「来たか」と呟いた。

 

「行くぞ! RUM(ランクアップ・マジック)-レイド・フォース発動! フォース・ストリクスをランクアップさせる!

 オレは! フォース・ストリクスでオーバーレイ! 一体のモンスターで、オーバーレイネットワークを再構築! ランクアップ・エクシーズ・チェンジ!」

 

 X召喚のエフェクトが再び城崎のフィールドに展開される。虹色の爆発が起こり、辺りを照らした。

 

「怨念の虚空より、来たれ異邦の隼よ! その翼羽ばたかせ。我が敵我が仇、悉く打ち壊せ! RR-エトランゼ・ファルコン!」

 

 虹色の粉塵の向こうから飛び立ったのは、今までのRRモンスターと比べると異質なモンスター。

 機械だが、鳥の面影は薄れており、何らかの飛行ユニットのように見える。

 翼も猛禽の物ではなく、かといって飛行機の類とも違う。鎧の肩当ような外見が近い。黒いボディにマゼンタの光のラインが走り、ウィングパーツの付け根には砲塔が左右に一門ずつ装備されている。

 

「エトランゼ・ファルコン効果発動! ORUを一つ取り除き、貴様の場にいるブラック・マジシャンを破壊し、その元々の攻撃力分のダメージを与える!」

 

 城崎の命令が下る。エトランゼ・ファルコンが両砲門を和輝の場にいるブラック・マジシャンに向けた。

 砲撃。飛び出したのは実体のある砲弾ではなく、青白いエネルギーの塊。それが一切の停滞なくブラック・マジシャンに向かって殺到する。

 

「させるか! リバースカードオープン! ブラック・ミラージュ! このターンのエンドフェイズまでブラック・マジシャンをゲームから除外することで、このターン、相手は俺のモンスターに攻撃できない!」

 

 ブラック・マジシャンの姿が蜃気楼のように消えていく。その幻影を射抜くエトランゼ・ファルコンの砲撃。だが幻影はしょせん幻影。見当違いの方向に着弾し、和輝も、彼のブラック・マジシャンも無事だ。

 

「うまい! エトランゼ・ファルコンの効果を躱しつつ、相手の攻撃も防いだ。君の場にはまだ群鳥の魔術師がいるからね。これで彼はこのターン、攻撃を封じられたようなもの。しかもエンドフェイズには除外したブラック・マジシャンも帰ってくる。実質、君は無傷だ」

「そんな甘い考えが通用するものか! オレはRR-ファジー・レイニアスを自身の効果により特殊召喚! そして、バニシング・レイニアス、トリビュート・レイニアス、ファジー・レイニアスでオーバーレイ! 三体のモンスターで、オーバーレイネットワークを構築! エクシーズ召喚!

 憎悪の彼方より飛び立て復讐の翼! その爪、獲物を逃がさず、その瞳、敵を逃さず、その翼、仇を逃がさず! 捕えて殺せ! RR-ライズ・ファルコン!」

 

 エトランゼ・ファルコンの傍らに現れる隼をモチーフにした機械仕掛けの翼。青と緑のボディ、広げられた大きな翼、鋭い爪、無機質な――なのに怒りを感じさせる――双眸。一度力強く翼を羽ばたかせて、城崎のフィールドに降り立った。

 

「手札のRUM-レヴォリューション・フォースを捨て、ライズ・ファルコンでオーバーレイ! 一体のモンスターで、オーバーレイネットワークを再構築!

 憎悪の空より来たれ焼滅の翼! 汝一切を焼き尽くす怨讐の炎なり! ランクアップ・エクシーズ・チェンジ! RR-レヴォリューション・ファルコン-エアレイド!」

 

 大きく翼を広げて現れる、隼モチーフのマシンバード。

 夜空に溶け込むような漆黒の体躯、敵意を灯したような赤い瞳、骨組みのような翼。否、骨に見える部分は全て焼夷弾の発射口で、砲塔の角度によって焼き尽くす範囲を調整するのだ。

 

「レヴォリューション・ファルコン-エアレイド効果発動! 群鳥の魔術師を破壊し、その攻撃力分のダメージを与える!」

「何!?」

 

 目を見開く和輝の頭上、一気に肉薄してきたレヴォリューション・ファルコン-エアレイドが、翼の砲塔から焼夷弾を雨のようにばらまいた。

 爆撃、炎上、衝撃と熱風、そして轟音が駆け抜け、周囲の建物を崩していく。

 

「ぐ、が、ああああああああああああああ!」

 

 和輝の体中から痛みが走る。激痛は皮膚の下に潜り込んだ目に見えない百足のように暴れまわり、和輝の肉体と魂に焼けるような熱と痛みを刻み込んでいく。

 

「ぐ、うぅ……」

 

 思わず膝を付く和輝。その耳朶をロキの警告が叩いた。

 

「膝を付くな! 次が来るぞ!」

「ッ!」

 

 そうだった。ブラック・ミラージュで封じられたのはモンスターへの攻撃のみ。そのモンスターがいなくなった今、城崎のモンスターを縛る枷は消えた。

 

「バトルだ! エトランゼ・ファルコンと、レヴォリューション・ファルコン-エアレイドでダイレクトアタック!」

 

 無防備になった和輝に、砲撃と爆撃が叩きこまれた。

 

「がああああああああああああああああ!」

 

 恐ろしく鋭い精神の波状攻撃。城崎の刃のような、槍のような研ぎ澄まされた攻撃が、和輝の身体を切り刻むようだった。

 とっさに精神の防壁を張ることで防御はできた。宝珠を強固なものにできた。

 ()()()()()()()()

 部分的にガードをしたし、宝珠も庇ったが、それでも衝撃は宝珠にダメージを与えた。

 背中から地面に激突した和輝、慌てて自らの胸元を見てみると、赤い宝珠に罅が入っていた。

 

「く……!」

「和輝、気をしっかり持って。大丈夫、デュエルが終われば宝珠は元に戻る。だから気を乱さないで。君の精神の乱れ、心の弱みが、宝珠の傷を広げる。罅はやがて亀裂になって、砕けてしまう」

「分かってる!」

 

 和輝の心は折れていない。宝珠に軽く手を触れる。鉱石に触れている感触はない。だから罅の状態もいまいちわからない。

 まぁいい。罅など気にするな。どうせまともに受ければ砕けかねないのは変わらない。

 

「まだ、まだぁ……!」

「ふん。バトルを終了。オレはエクシーズ・ギフトを発動。レヴォリューション・ファルコン-エアレイドのORU二つを取り除き、二枚ドロー。そしてこの瞬間、墓地に送られたファジー・レイニアス効果発動。デッキから三枚目のファジー・レイニアスを手札に加える。カードを一枚セットし、ターンエンドだ」

 

 

RR-バニシング・レイニアス 闇属性 ☆4 鳥獣族:効果

ATK1300 DEF1600

(1):このカードが召喚・特殊召喚に成功したターンの自分メインフェイズに1度だけ発動できる。手札からレベル4以下の「RR」モンスター1体を特殊召喚する。

 

RR-トリビュート・レイニアス 闇属性 ☆4 鳥獣族:効果

ATK1800 DEF400

このカード名の(1)(2)の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。(1):このカードが召喚・特殊召喚に成功したターンの自分メインフェイズに発動できる。デッキから「RR」カード1枚を墓地へ送る。(2):このカードが戦闘で相手モンスターを破壊したターンの自分メインフェイズ2に発動できる。デッキから「RUM」速攻魔法カード1枚を手札に加える。この効果の発動後、ターン終了時まで自分は「RR」モンスターしか特殊召喚できない。

 

RR-ミミクリー・レイニアス 闇属性 ☆4 鳥獣族:効果

ATK1100 DEF1900

「RR-ミミクリー・レイニアス」の(2)の効果は1ターンに1度しか使用できない。(1):このカードが召喚・特殊召喚に成功したターンの自分メインフェイズに1度だけ発動できる。自分フィールドの全ての「RR」モンスターのレベルを1つ上げる。(2):このカードが墓地へ送られたターンの自分メインフェイズに、墓地のこのカードを除外して発動できる。デッキから「RR-ミミクリー・レイニアス」以外の「RR」カード1枚を手札に加える。

 

RR-ネスト:永続魔法

「RR-ネスト」の効果は1ターンに1度しか使用できない。(1):自分フィールドに「RR」モンスターが2体以上存在する場合にこの効果を発動できる。自分のデッキ・墓地の「RR」モンスター1体を選んで手札に加える。

 

闇の誘惑:通常魔法

(1):自分はデッキから2枚ドローし、その後手札の闇属性モンスター1体を除外する。手札に闇属性モンスターが無い場合、手札を全て墓地へ送る。

 

RUM-レイド・フォース:通常魔法

(1):自分フィールドのXモンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターよりランクが1つ高い「RR」モンスター1体を、対象の自分のモンスターの上に重ねてX召喚扱いとしてエクストラデッキから特殊召喚する。(2):墓地のこのカードと手札の「RR」カード1枚を除外し、「RUM-レイド・フォース」以外の自分の墓地の「RUM」魔法カード1枚を対象として発動できる。そのカードを手札に加える。

 

RR-エトランゼ・ファルコン 闇属性 ランク5 鳥獣族:エクシーズ

ATK2000 DEF2000

レベル5モンスター×2

(1):このカードがXモンスターをX素材としている場合、以下の効果を得る。●1ターンに1度、このカードのX素材を1つ取り除き、相手フィールドのモンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターを破壊し、その元々の攻撃力分のダメージを相手に与える。(2):このカードが相手によって破壊され墓地へ送られた場合、「RR-エトランゼ・ファルコン」以外の自分の墓地の「RR」Xモンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターを特殊召喚し、このカードをそのカードの下に重ねてX素材とする。

 

ブラック・ミラージュ:通常罠

(1):自分フィールドの「ブラック・マジシャン」1体を除外して発動する。このターン、相手は自分モンスターに攻撃できない。エンドフェイズにこの効果で除外された「ブラック・マジシャン」を同じ表示形式で場に戻す。相手はこのカードの発動に対してカードの効果を発動できない。

 

RR-ライズ・ファルコン 闇属性 ランク4 鳥獣族:エクシーズ

ATK100 DEF2000

鳥獣族レベル4モンスター×3

(1):このカードは特殊召喚された相手モンスター全てに1回ずつ攻撃できる。(2):1ターンに1度、このカードのX素材を1つ取り除き、相手フィールドの特殊召喚されたモンスター1体を対象として発動できる。このカードの攻撃力は、対象のモンスターの攻撃力分アップする。

 

RR-レヴォリューション・ファルコン-エアレイド 闇属性 ランク6 鳥獣族:エクシーズ

ATK2000 DEF3000

鳥獣族レベル6モンスター×3

このカードは手札の「RUM」魔法カード1枚を捨て、自分フィールドのランク5以下の「RR」Xモンスターの上に重ねてX召喚する事もできる。(1):このカードがX召喚に成功した場合、相手フィールドのモンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターを破壊し、その攻撃力分のダメージを相手に与える。(2):このカードが相手によって破壊され墓地へ送られた場合に発動できる。エクストラデッキから「RR-レヴォリューション・ファルコン」1体を特殊召喚し、このカードを下に重ねてX素材とする。

 

エクシーズ・ギフト:通常魔法

自分フィールド上にエクシーズモンスターが2体以上存在する場合に発動できる。自分フィールド上のエクシーズ素材を2つ取り除き、デッキからカードを2枚ドローする。

 

 

和輝LP7400→5100→3100→1100手札2枚

城崎LP5200手札2枚

 

 

「さぁ、貴様のターンだ! カードを操れ、モンスターを出せ、その牙を俺に向けてみろ! 全て捻じ伏せ、粉砕し、くたばった貴様の身体から、ナイアルラトホテップとその契約者の情報を搾り取ってやる!」

 

 怒りに満ちた城崎の言葉。身に覚えのないことで狙われて、さすがに和輝も困惑が怒りに代わっていく。

 

「デュエルの開始から思ってたけどよ。そこまで殺意満点の視線を向けられる覚え何てねぇぞ!」

 

 和輝のその言葉は思わず口をついて出た言葉に過ぎなかった。だから相手の反応など期待していなかった。

 だが城崎はピクリとこめかみのあたりを動かして、動きを止めた。

 

「……貴様が、ナイアルラトホテップの化身ではないことは、ここまでのデュエルで()()()()()()。この熱量は、自身を化身だと認識した人形どもにはないものだ。

 だがそれでも、貴様からあの邪神の気配を感じる! 微かだが、間違いようがない。ことナイアルラトホテップに関しては、奴への憎悪がオレの身の内にある限り、決して違えることはない!」

「ならはっきり言ってやる。俺は確かにナイアルラトホテップとその契約者に会ったことがある! だがそれは一度だけだし、奴は明らかに俺の敵だった!」

「それに、その一回の接触だけで気配が移るものかな? 残り香だってそうそう長くはないはずだよ?」

 

 和輝の反論に、ロキが捕捉を加える。だが城崎の返答は激しいものだった。

 

「とぼけるな! その程度の接触で、色濃く気配が残るものか!」

 

 聞く耳持たず、とはこのことだった。城崎の激昂は収まることはなく、その体から発散される気配はどんどん大きくなっている。

 それに伴って、和輝の胸の内に住み着いた怪物が楽しそうに笑う。

 ――――楽しい楽しい楽しいなぁ! このままじっとしてろよそうすれば――――パパとママの所に行けるぞ?

 黙れ。怪物の囁きに屈するつもりはない。だがいつかでも無視してもいられない。対決するのだ。これは、和輝が岡崎和輝として生きていく限り絶対に避けられない戦いだ。

 

「和輝、今は目の前に集中しよう。彼を――――あの()()()の目を覚まさせよう」

「復讐者?」

 

 今まで一方的に怒りと憎しみを向けられていたので、相手のことに対して考えるということをしなかった。和輝はここで初めて、城崎について思いを馳せた。

 

「あんたは、何かを奪われたのか?」

 

 怒りによる反射的な問いかけではなく、相手の事情を知ろうとしての問いかけだった。

 一瞬、超攻撃的だった城崎の気配から、棘がほんのわずかに綻んだ。

 その隙間にねじ込むように、ロキが声を飛ばす。

 

「いい加減姿を現したらどうだい? 復讐者を導く神は少ない。そして神々の戦争本戦に出場しているとなればもっと少ない。彼の契約者は君だろう? ギリシャ神話に名を刻む、義憤と復讐の女神、ネメシス!

 そして語れ! 城崎君の襲撃はフェアではない。それは君だってわかっているはずだろう? 事ここに至って、和輝に無理矢理話を聞くなんてできるはずがない!」

 

 ロキが、相手の神の名を叫ぶ。

 数瞬の沈黙。やがて、一つの気配が城崎の傍らに現出した。

 ロングストレートのきめ細かな銀髪。アメジストをはめたような紫の瞳、罰を下される者たちの血を啜ったような赤黒い全身鎧はまさしくギリシャの女戦士を思わせる。

 鎧の下から覗く穢れを知らぬ白い肌。手にしたのは身の丈よりもさらに巨大なハルバード。背中からは刃を束ねたような銀色に輝く翼。

 自分にも他人にも厳しく凛としている。常に処刑者を待つギロチンの刃の風情。

 

「あいつ、が……」

「やっぱりそうか。ネメシス。復讐の女神。義憤にかられるものに手を貸すか」

「そうだ」

 

 潤いを持つ唇から、冷たい声音で言葉が放たれた。鉄の刃が話しているような印象を和輝は受けた。

 

「我が名はネメシス。隼人の復讐に手を貸すもの。ナイアルラトホテップとその契約者は隼人の獲物だ。

 ――――――この復讐は、我々のものだ」

 

 鉄のような冷たさの奥に、熱せられた感情を乗せて、復讐の女神はそう言い放った。

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