神々の戦争   作:tuki21

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第101話:復讐の原点

 城崎隼人(じょうざきはやと)の人生は、転機になるようなものもなく、よく言えば平和、悪く言えば平凡なものだったと、本人は思っている。

 平凡で、だけど順風満帆で、幸せだったのだ。

 地方都市に生まれ、優しくも芯の強かった母と、厳しくも暖かな父の間で育てられた。

 年頃になると素直さが薄れてしまったが、常にそばにいて、面倒を見てやらなくてはと思わせる妹がいて。

 子供のころから一緒だった幼馴染の少女がいた。

 成長して、小中高と幼馴染と一緒で、笑って、泣いて、怒って、喧嘩して、仲直りして、遊んで――――恋をして。

 好きだった。ずっとずっと。幼馴染に告白したのは高校卒業と同時。今更かと呆れられたけれど、喜んで受け入れてくれた。

 温和な気質で、どちらかといえば大人しく、物静かな青年だった城崎は、地元の企業に就職。彼女もそれを是としてくれた。

 仕事は楽ではなかったがやりがいがあった。まだ若かった城崎は、とにかく精力的に働いた。

 そうしているうちに、幼馴染に結婚を申し込んだ。

 プロポーズを受け入れられたときは幸せの絶頂だっただろう。

 穏やかで、平穏で、満ち足りて幸せな人生。城崎は自分の生をそう思っていた。

 

 

 一年前までは。

 

 

 その日は彼女も交えて、五人で食事をとることになっていた。

 少し早いが、結婚を祝ってのことだった。

 その日、運悪く人身事故で電車が遅れ、約束の時間よりも遅くなってしまった。

 

「しまったな……。まぁ、連絡は入れたけど、彼女、怒ってないかな……」

 

 妹は確実に怒ってるなと、苦笑する。

 家路を急ぐ。見えてきた。そこで、ふとおかしなことに気づいた。

 

「あれ?」

 

 家の明かりが消えていた。

 おかしいな、と思った。もう辺りは暗い。現に周囲の民家では明かりがもうついている。

 

 

「僕の帰りを待ってるって、連絡があったのに……」

 

 今日、家にいるのは両親、妹、そして婚約者。

 父は今日、仕事を休むといっていた。母や専業主婦で家にいる。妹も、今日は早く帰ってくるといっていた。彼女も今日は仕事が休みだという。

 だから、みんな家にいるはずなのだ。

 妙な胸騒ぎがした。心臓が、ドクンドクンと痛いくらい高鳴った。

 

「ッ!」

 

 走り出す。玄関の門扉を潜って、敷地内に。

 玄関口までの数歩を、ほとんど低く跳躍するように、前のめりになりながら駆け抜ける。 

 玄関扉のドアノブに手をかける。鍵はかかっていなかった。

 ドアを乱暴に開けば、鼻を衝く臭いに思わず呻いた。

 くらりときた。それが何なのか、城崎は分からなかった。

 喉が渇く。心臓の音がうるさい。

 視線を下に送ると、赤黒いペンキで書かれた矢印があった。

 

「違う……」

 

 ペンキではなかった。それは、血だ。乾いて変色した血文字。

 

「うあ……」

 

 吐きそうだった。胃が逆流するような不快感が喉からせりあがってくる。

 不快感に耐えながら、矢印にしたがって進んだ。

 手足が痺れる。耳の奥からキーンと音がする。

 はぁはぁうるさい。それが自分の口から洩れていると気づかない。

 矢印の向こうにある部屋はリビング。

 扉は閉まっていた。けれど、臭いはもうごまかせない。

 鼻を衝く刺激臭。今ならわかる。多分これは、血の臭いだ。

 

紗友里(さゆり)……」

 

 婚約者の名を呼ぶ。返事はない。あるとも思ってない。

 

「父さん、母さん……」

 

 両親を呼ぶ。返事はない。あるとも思ってない。

 

香苗(かなえ)……!」

 

 妹の名を呼ぶ。返事はない。あるとも思ってない。

 震える手でリビングに繋がるドアを開けた。

 視覚よりも先に嗅覚に刺激が来た。

 鼻を突く、むせかえるような血の臭いにえずきそうになる。腹を抑え、必死に耐えた。

 明かりのついていない、真っ暗は部屋。これでは何も見えない。電灯のスイッチはどこだったか。

 呆けてしまったような頭では、何も働かない。

 壁伝いにスイッチを押す。

 電灯が付き、部屋の中が照らされた。

 

「ッ!」

 

 そこに何があるのか。はじめ城崎は理解できなかった。

 知に満たされたフローリングの床。血を湖に例えるならば、ぷかぷかと浮かぶ誰の物かもわからなくなった肉片や臓器の破片は池に浮かぶ小島か。

 

「―――――――――!」

 

 絶叫が自分の喉から出てきたとはとても信じられなかった。

 バラバラにされて、部屋の中にばらまかれた、両親と、妹、そして婚約者の肉片がそこにあった。

 ご丁寧にも、首から上だけは、傷一つつけずにリビングにあったテーブルの上に置かれていた。そこは、家族がよく団欒のために使っていた場所だった。子供のころから使っていた場所で、まだ子供だった紗友里も一緒にいて、そこで遊んだり、他愛のないことを語ったりした場所。

 そこに、物言わなくなった、生気のない四つの首が行儀良く、まるでそこの席についているように等間隔に並べられていた。

 何が起こったのか分からなかった。何を見たのか理解できなかった。だから()()()()に気づくのが遅れた。

 ソファの上に座った、ダークスーツ姿の男。そして、その傍らで立ったまま、まるで美術品を鑑賞するような眼差しをこの地獄と、そして城崎自身に向けていた少年の姿。

 

「なかなか素晴らしいですね、ナイアルラトホテップ。神の力、神々の戦争の参加者が得た特権というものは」

 

 クスリと、少年が笑う。葉巻を加えた男がにこりと笑った。

 

「そうだろう。この力は君のものだ。好きに使うといい」

 

 言っている意味は分からなかった。だが犯人はこいつらだと、城崎は本能的に理解した。

 

「―――――――――!」

 

 獣のような咆哮が、自分の喉から出たのだと信じられなかった。

 一直線に二人に向かって駆ける。

 少年が慌てず動じず、一枚のカードを掲げた。

 次の瞬間、城崎は己の身体に衝撃が走ったのを感じた。

 何が起こったのか分からないまま、城崎の身体は背中から床に落ちた。起き上がろうとして、肩から斜めに走った痛みのせいでまた床に突っ伏した。

 仰向けのまま、天井だけが見える。

 電灯の光をさえぎって、少年がこちらに顔を向けてきた。

 口元にうっすらと笑みを浮かべている。この惨状を引き起こした張本人なのに、なぜ笑える? なぜ?

 

「申し訳ありません。貴方の家族を襲ったのはたまたまです。力を手に入れたので、試してみたくなった。戯れに選んだのがこの家でした。ええ、ごめんなさい」

 

 お前の家族や婚約者は大した意味もなく死んだ。そう突き付けられた。

 城崎は何かを言いたかった。だが血が流れ過ぎている。息をすることも辛く、身じろぎ一つできない。

 

「起き上がろうとしても無理ですよ。腰骨まで届いてますから。このまま失血死しますね。止めは、いらなそうだ」

「では、帰るかね?」

 

 男が言う。少年は「ええ」と頷いた。

 二人が出ていくのが分かった。

 去っていく。なにもできぬまま、城崎は涙を流した。

 

「お――――」

 

 唇の間から小さく声が漏れた。それを足掛かりに、吠える。

 

「あ――――――――!」

 

 慟哭を聞くものは誰もいない。城崎は、それでもただ叫び続けた。命の限りを尽くして。

 ただただ、叫ぶことしかできなかった。

 命の限りを、ここで使い果たそうとして。

 届け、繋がれ。僕の、この無念が。僕の……オレの、怒りが。憎しみが!

 

「その憎悪、私が受け取ろう。お前の想いを繋げる為に」

 

 命の限りの超えなく叫びは、復讐の女神に聞き届けられた。

 

 

 後にこの事件を捜査した警察に残された資料によると、城崎家の両親と長女、そして長男の婚約者は、全部で五十九のパーツに分けられていたらしい。

 長男は行方不明。ただし現場で長男の血液が発見された。

 とても生きてはいられない失血であったことから、長男も死亡したものと思われていた。

 こうして、城崎隼人は、復讐の女神に出会い、その憎悪を抱えながら、闇に堕ちた。

 

 

 

 

 

◆◆◆◆◆◆

 

 

 

 

 

「そして、私と隼人は出会ったのだ」

「絶望の底で、な」

「そんなことがあったとは、ね」

 

 話を聞いて、ロキは納得したように頷き、和輝は青ざめた。

 この男も同じだ。自分と同じ、神々の理不尽によって大切な人を奪われている。

 

「だからオレは、全てを奪われたあの日から、ナイアルラトホテップとその契約者を探し求める」

「黄泉野平月、か……」

 

 拳を握る城崎の手が力の入れ過ぎで白く変色していく。そうでなくとも、彼の声音から、底知れぬ怒りと癒えることのない悲しみが伝わってきた。

 すでに、いきなり攻撃されてデュエルに持ち込まれた怒りは、和輝の中から消えていた。

 あるのは共感と疑問。

 なぜ、こうして憎しみで戦わなければならないのか。

 

「あんたの、話は分かったよ」

 

 声に力はない。それを自覚しながら、和輝はそれでも言葉を紡ぐ。

 

「だけど、本当に俺はナイアルラトホテップと接点はさっき話した一度だけだ。これ以上渡せる情報なんてない」

「それはどうかな?」

 

 返答は城崎ではなく、ネメシスから。

 

「私は神の権能として、復讐者とその対象を繋げる糸を紡ぐことができる。復讐対象本人にすぐさま届かせることは簡単ではないが、これまで何度か成功している。

 そしてそれとは別に、対象に繋がる手がかかりを掴むことができる。我々は今回、後者の効果で君にたどり着いた。ならば、君はナイアルラトホテップについて近しいか、何らかの手掛かりを()()()()()()()()()()()()()()

「さぁ、デュエルを続けろ。貴様のターンからだ」

「だから――――」

 

 なおも言葉を言い募ろうとする和輝を制したのは、他ならぬ彼のパートナー、ロキだった。

 

「ロキ?」

「言葉を重ねても無駄さ。彼らは必死なんだ。そして本気なんだ。だったら、こっちも行動するしかない。それにナイアルラトホテップへの繋がり、手掛かりが本当にかつて一度会っただけかどうか、まだ分からないよ?」

「なんだって?」

「ジェネックス杯そのものにも、あのトリックスターの影がちらつくかもしれないってことさ。まぁ、いろいろ考えてみよう。そして、本気でぶつかろう。とりあえず、言葉じゃなくて、カードでね」

 

 ロキの言う通りかもしれない。言葉でしか伝わらない想いもあれば、言葉にしては伝わらない感情もある。今回は後者だ。

 気持ちを切り替える。ガチリとスイッチを切り替える。まずはデュエルのことを考えるのだ。全ての答えは、デュエルの先にしかない。

 

 

和輝LP1100手札2枚

ペンデュラムゾーン赤:猿渡の魔術師(スケール4)青:牛刺の魔術師(スケール8)

モンスターゾーン ブラック・マジシャン(攻撃表示)

魔法・罠ゾーン なし

フィールドゾーン なし

 

城崎LP5200手札2枚

ペンデュラムゾーン赤:なし青:なし

モンスターゾーン RR(レイド・ラプターズ)-エトランゼ・ファルコン(攻撃表示、ORU:)、RR-レヴォリューション・ファルコン-エアレイド(攻撃表示、ORU:RR-ライズ・ファルコン、RR-バニシング・レイニアス、)、

魔法・罠ゾーン RR-ネスト、伏せ1枚

フィールドゾーン なし

 

 

「俺のターンだ、ドロー!」

 

 思考を切り替えれば、和輝は冷静だった。

 戸惑いも何もかもを、全て棚上げする。そして冷静に戦況を眺める。

 状況は圧倒的に不利。相手のモンスターはいずれも強力で、しかも下手に倒せばあっさり後続が出てきて更なる窮地に立たされるだろう。

 

「まぁとにかく、手札を交換してみようか?」

 

 ロキの言うことは一理ある。今の手札では城崎の布陣を突破できないなら、多少賭けでも前に出るしかない。

 

「俺はイリュージョン・マジック発動! フィールドのブラック・マジシャンをリリースし、デッキから二枚のブラック・マジシャンを手札に加える。

 さらに闇の誘惑を発動! カードを二枚ドローし、ブラック・マジシャンを除外する」

 

 ドローカードを確認する。和輝の口の端がかすかに上に吊り上がった。

 

「このカードなら、いけるな。だがまずは下準備だ。ペンデュラム召喚! 再び現れろ、俺のモンスターたち! EXデッキから群鳥の魔術師を、手札からブラック・マジシャンを特殊召喚!」

 

 和輝の頭上に、異界への門が開かれる。門から光が二つ飛び出し、それぞれ群鳥の魔術師とブラック・マジシャンの姿を露わにした。

 

「そして、高等儀式術発動! デッキからレベル4の跳兎の魔術師と、レベル2のギャラクシーサーペント、そしてレベル1のガード・オブ・フレムベル二体を墓地に送る!」

「儀式召喚か」

 

 城崎の眼差しは鋭く、油断はない。

 それは和輝が一気に墓地を肥やした事実を見て、気を引き締めているからか。元々緩むような余裕が心にないからか。

 和輝のフィールドに、幾何学的な文様が描かれた魔法陣が展開。その魔法陣を金の燭台(しょくだい)が囲み、青い炎を灯らせる。

 食害と炎の数は全部で八つ。中央の魔法陣が淡いエメラルドグリーンの光を放つ。

 

「契約は結ばれた。四つの魂は混沌を高めた魔導師へと生まれ変わる。光を飲み、来たれ闇の大家! 儀式召喚、マジシャン・オブ・ブラックカオス・MAX!」

 

 エメラルドグリーンの光から、浮上するように現れたのは、マジシャン・オブ・ブラックカオスと同じような顔つきと衣装を持ったモンスター。

 二股の帽子は三又帽子に代わり、その身を包むレザーのような衣装はコート状に代わり、長い髪がたなびき、意外と引き締まった体をベルトで拘束する。

 手には杖ではなく、複雑な形状をした肉厚の太刀。柄まで歪曲したその太刀は異様だ。

 

「マジシャン・オブ・ブラックカオス・MAXの効果発動! 群鳥の魔術師をリリースし、あんたのモンスター効果を封印する!」

「よっし! これで厄介なXモンスターが後続として出てくることはない!」

 

 つまりここが攻め時だ。

 

「俺は手札から、闇の量産工場を発動し、墓地のブラック・マジシャンとガード・オブ・フレムベルを回収し、ガード・オブ・フレムベルを召喚!

 レベル7のブラック・マジシャンに、レベル1のガード・オブ・フレムベルをチューニング!」

 

 和輝の右手が力強く天へと振り上げられる。

 

「集いし八星が、星海切り裂く光の竜を紡ぎだす! 光さす道となれ! シンクロ召喚、響け、閃珖竜(せんこうりゅう) スターダスト!」

 

 光が辺りを包みこんだ。光の(とばり)の向こうから、星屑のような燐光を振り広げながら現れる首の長い細身のシルエットをした美しいドラゴン。

 

「バトルだ! マジシャン・オブ・ブラックカオス・MAXでRR-レヴォリューション・ファルコン-エアレイドを攻撃!」

 

 攻撃宣言が下り混沌の魔導師が手にした大剣を振るう。

 黒い斬撃が、剣の軌跡に従って飛ぶ。飛ぶ斬撃を喰らった機械の隼は、頭頂部から尻尾までを真っ二つに両断された。

 

「く……!」

「ブラックカオス・MAXの効果により、あんたはエアレイドの遺言効果を発動できない! そしてブラックカオス・MAXの効果発動! 墓地の墓地の闇の量産工場を回収する。さらに! スターダストでエトランゼ・ファルコンを攻撃!」

 

 追撃。スターダストが上体を逸らし、口内に光をため込む。

 状態を前に突き出す動きで、息吹(ブレス)が放たれる。白い閃光の一撃がエトランゼ・ファルコンに直撃。機械の隼を爆発炎上させた。

 ここでもブラックカオス・MAXの効果でエトランゼ・ファルコンの効果は発動しない。

 ()()()()()()()()

 城崎が、獣のように叫んだ。

 

「この瞬間! リバース速攻魔法発動! RUM(ランクアップ・マジック)-デス・ダブル・フォース!」

「ここでRUMだと!?」

 

 目を見開く和輝の眼前で、城崎の足元に伏せられていたカードが翻る。次の瞬間、城崎のフィールドに、渦を巻く銀河を思わせる空間が展開させる。

 

「オレは! エトランゼ・ファルコンでオーバーレイ! 一体のモンスターで、オーバーレイネットワークを再構築! ランクアップ・エクシーズ・チェンジ!」

 

 破壊されたはずのエトランゼ・ファルコンが紫の光となって城崎の頭上に展開された空間に飛び込んだ。

 虹色の爆発が起こる。

 

「怨讐の果てより、来たれ究極の翼! 我が怒りを熱に変えて輝け! 我が憎悪を力に変えて迸れ! あらゆる敵手を滅ぼし散らせ! RR-アルティメット・ファルコン!」

 

 爆発の余韻を突き破って、飛翔するのは金色の体躯を持つ機械の隼。 

 翼を広げ、背後に仏の後光を思わせる光輪を備え、無機質な機械の眼光で眼下、和輝のモンスターを見下ろした。

 

「こ、攻撃力3500で完全耐性……。このタイミングで出してくるのかい!?」ロキもまた、驚愕と呆れを入り混ぜたような声音で叫ぶ。

「隼人の恨みは深く、怒りは激しい。生半可な切り返しでは届かぬばかりか更なる刃を引き抜かせるのみと知れ」誇るように、ネメシスが切り返した。

「くそ……! もう俺のモンスターじゃどうにもできねぇ。

 バトルを終了! メインフェイズ2に入り、もう一度闇の量産工場を発動。墓地のブラック・マジシャンとギャラクシーサーペントを手札に加える。手札抹殺を発動、互いに手札を全て捨てて、捨てた枚数分ドローだ」

 和輝は三枚、城崎は二枚、それぞれ捨ててその分ドロー。うまく手札交換を果たした和輝は三枚の手札を眺め、小さく息を吐いた。

 今の手札、フィールドにアルティメット・ファルコンを打倒できるカードはなかった。耐えなければならない。

 

「カードを二枚伏せて、ターンエンドだ」

 

 

イリュージョン・マジック:速攻魔法

「イリュージョン・マジック」は1ターンに1枚しか発動できない。(1):自分フィールドの魔法使い族モンスター1体をリリースして発動できる。自分のデッキ・墓地から「ブラック・マジシャン」を2体まで選んで手札に加える。

 

闇の誘惑:通常魔法

(1):自分はデッキから2枚ドローし、その後手札の闇属性モンスター1体を除外する。手札に闇属性モンスターが無い場合、手札を全て墓地へ送る。

 

高等儀式術:儀式魔法

儀式モンスターの降臨に必要。(1):レベルの合計が儀式召喚するモンスターと同じになるように、デッキから通常モンスターを墓地へ送り、手札から儀式モンスター1体を儀式召喚する。

 

マジシャン・オブ・ブラックカオス・MAX 闇属性 ☆8 魔法使い族:儀式

ATK2800 DEF2600

「カオス・フォーム」により降臨。このカード名の(1)(2)の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。(1):このカードが特殊召喚に成功した場合、自分フィールドのモンスター1体をリリースして発動できる。このターン、相手はモンスターの効果を発動できない。(2):このカードが戦闘で相手モンスターを破壊した時、自分の墓地の魔法カード1枚を対象として発動できる。そのカードを手札に加える。

 

闇の量産工場:通常魔法

(1):自分の墓地の通常モンスター2体を対象として発動できる。そのモンスターを手札に加える。

 

ガード・オブ・フレムベル 炎属性 ☆1 ドラゴン族:チューナー

ATK100 DEF2000

 

閃珖竜 スターダスト 光属性 ☆8 ドラゴン族:シンクロ

ATK2500 DEF2000

チューナー+チューナー以外のモンスター1体以上

1ターンに1度、自分フィールド上に表側表示で存在するカード1枚を選択して発動できる。選択したカードは、このターンに1度だけ戦闘及びカードの効果では破壊されない。この効果は相手ターンでも発動できる。

 

RUM-デス・ダブル・フォース:速攻魔法

(1):このターンに戦闘で破壊され自分の墓地へ送られた「RR」Xモンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターを特殊召喚し、そのモンスターの倍のランクのXモンスター1体を、対象のモンスターの上に重ねてX召喚扱いとしてエクストラデッキから特殊召喚する。

 

RR-アルティメット・ファルコン 闇属性 ランク10 鳥獣族:エクシーズ

ATK3500 DEF2000

鳥獣族レベル10モンスター×3

(1):このカードは他のカードの効果を受けない。(2):このカードのX素材を1つ取り除いて発動できる。このターン、相手フィールドのモンスターの攻撃力は1000ダウンし、相手はカードの効果を発動できない。(3):このカードが「RR」モンスターをX素材としている場合、以下の効果を得る。●お互いのエンドフェイズ毎に発動できる。相手フィールドの全てのモンスターの攻撃力は1000ダウンする。相手フィールドに表側表示モンスターが存在しない場合、相手に1000ダメージを与える。

 

手札抹殺:通常魔法

(1):手札があるプレイヤーは、その手札を全て捨てる。その後、それぞれ自身が捨てた枚数分デッキからドローする。

 

 

和輝LP1100手札1枚

城崎LP5200→4400→3900手札2枚

 

 

「オレのターンだ、ドロー!」

 

 ドローカードの確認を一瞥で済ませ、城崎は即座に行動に移った。

 

「アルティメット・ファルコンの効果発動! ORU(オーバーレイユニット)を一つ使い、貴様の場のモンスター全ての攻撃力を1000ダウンさせ、相手のカード効果を封じる!」

 

 ここでこの効果を通されれば負ける。しかもほかのカード効果も封じられてはなす術がない。

 ただし、今はまだ、その効果が確定していない。

 

「和輝!」ロキの叫び。パートナーが何を言いたいのか察して、和輝もまたすぐさまデュエルディスクのボタンを押した。

「させるか! アルティメット・ファルコンの効果にチェーンして、リバーストラップ発動! 和睦の使者! これでこのターン、俺と俺のモンスターへの戦闘ダメージは全て0になる!」

 

 させじと和輝の伏せカードが翻る。瞬間、彼のモンスターが戦闘から守られることになった。

 和輝の残りライフは僅か1100。ここでアルティメット・ファルコンの効果をそのまま通せば次の攻撃で確実にライフが0になる。ここでの発動は必須だった。

 チェーンが組まれ、逆順処理で和輝の和睦の使者の初同と効果が適用され、次にアルティメット・ファルコンの効果が発動する。これで、和輝のモンスターの攻撃力はダウンしたが、和睦の使者は問題なく発動できた。まさに九死に一生だ。

 

「手札抹殺で引けて良かったね。日頃の行いかな?」

「まだ負けるなってことさ。色々とな。さぁ、あんたはこれからどうする!?」

「フン……。威勢だけではないか、。ならば、カードを二枚セットし、ターンエンドだ!」

 

 

和睦の使者:通常罠

(1):このターン、自分のモンスターは戦闘では破壊されず、自分が受ける戦闘ダメージは0になる。

 

 

マジシャン・オブ・ブラックカオス・MAX攻撃力2800→1800

閃珖竜スターダスト攻撃力2500→1500

 

 

「俺のターンだ、ドロー!」

 

 ドローカードを確認し、フィールドを確認する。

 相変わらず窮地だ。しかしいいこともある。アルティメット・ファルコンは効果を使いきった。

 

「けど相変わらず完全耐性はあるわけだ。攻撃力も3500あるし。攻撃力に頼らない君のデッキだと、突破は難しいかな?」

「どうかな。やってみなければ分からないさ。俺は揺れる眼差しを発動!」

 

 和輝が手札から、速攻魔法をデュエルディスクにセットする。デュエルディスクがセットされたカードの画像を読み取り、立体映像(ソリットビジョン)として場に投影する。

 その瞬間を、まさに猛禽類のように狙いすまし、城崎の声が迸った。

 

「させん! カウンター(トラップ)発動! ラプターズ・ガスト! 貴様の揺れる眼差しを無効にする!」

 

 翻るリバースカード。その効果が即座に発動。どこからともなく響き渡った羽ばたきが、和輝が発動した速攻魔法を吹き飛ばそうと吹き荒れる。

 

「ここで揺れる眼差しを無効にされるのはまずくない?」

「ああまずい。だからこうだ! こっちもカウンタートラップ発動! 魔宮の賄賂!」

「ッ!」

 

 応じるように翻る和輝のカード。次に瞬間、荒れ狂っていた暴風は嘘のように静まり返った。代わりに、城崎はカードを一枚ドローしたが。

 

「これで、揺れる眼差しは問題なく発動された。俺の(ペンデュラム)ゾーンのPカード二枚を破壊し、あんたに500のダメージを与え、デッキから小鼠の魔術師を手札に加える! それと、猿渡の魔術師はPゾーンで破壊された時、モンスターゾーンに特殊召喚できるけど、その効果はここでは使わない。

 だってこいつの条件を満たせなくなるからな! 手札から、ペンデュラム・ホルト発動! 二枚ドロー!」

「……なるほど、ペンデュラム・ホルトはEXデッキに表側表示のPモンスターが三枚以上なければ発動できない。その条件を満たすため、猿渡の魔術師の効果を使わなかったわけか」

 

 ネメシスが、値踏みするように和輝の行動を考察する。観察されることは愉快な気分ではなかったが今は無視。それよりもデュエルの方が重要だ。

 ドローカードを確認する。にやりと笑った。

 

「来たぜ、逆転のカードが! 手札から、龍の鏡(ドラゴンズ・ミラー)発動! 墓地のブラック・マジシャンとギャラクシーサーペントを除外融合!」

 

 和輝の頭上、空間が捻じれ、渦のような回転を造り出す。和輝の墓地からブラック・マジシャンとギャラクシーサーペントが飛び出して、渦の中心に向かって勇ましく飛び込んだ。

 

「黒衣の魔術師よ、銀河を泳ぐ海蛇よ! 今一つとなって魔を断つ竜魔導士へと変じよ! 融合召喚、現れろ、呪符竜(アミュレット・ドラゴン)!」

 

 

 渦の向こう、二体のモンスターが一つに溶け合い、新たなモンスターへと生まれ変わる。

 現れたのは、体中に魔術文字が浮かび上がった、緑の体色のドラゴンと、その背に跨ったブラック・マジシャン。

 

「呪符竜の効果発動! あんたの墓地からRUM-デス・ダブル・フォース、RUM-レイド・フォース、RUM-レヴォリューション・フォース、エクシーズ・ギフト、闇の誘惑を、そして俺の墓地からも闇の誘惑を除外! これで呪符竜の攻撃力は600アップ!」

 

 つまり攻撃力3500。アルティメット・ファルコンと互角。上げようと思えばもっと上昇できただろうが、そうはせず、敢えてアルティメット・ファルコンと相打ち止まりを狙った。

 つまり、それは――――

 

(呪符竜の効果を最大限し使うこと。墓地から新たな魔法使いを蘇生し、残ったモンスターともども追撃するためか!)

 

 決めに来る。敵は今、こちらに持てる最大限の攻撃を放とうとしていた。

 火力ではない。だが抗いにくい、数という攻撃だ。

 

「バトル! 呪符竜でアルティメット・ファルコンに攻撃!」

 

 攻撃宣言が下る。主の命を受けて、呪符竜が動く。背に跨ったブラック・マジシャンが杖を振りかざし、目標を指定。ドラゴンが大口を開いて、奥から黄金色の炎を放った。

 

「迎え撃て、アルティメット・ファルコン!」

 

 アルティメット・ファルコンが待機状態から起動。全身からスパークを迸らせて、光輪から数十に拡散したレーザーを放った。

 攻撃が交差。それぞれの一撃が対象に直撃。完全に消滅させた。

 

「この瞬間、呪符竜の効果発動! 墓地からブラック・マジシャンを特殊召喚する!」

 

 黒煙を振り払い、黒衣の魔術師が復活する。眉目秀麗なその顔に涼やかな笑みを貼り付けて、チッチッチと舌を鳴らした。

 

「だがこちらも、伏せていたRR-リターンを発動していた! 墓地のRR-バニシング・レイニアスを手札に加える!」

「しかし! まだバトルフェイズは続いている! 俺はブラック・マジシャンでダイレクトアタック!」

「チッ、墓地のRR-レディネスの効果発動! このカードをゲームから除外し、このターン、オレが受けるダメージを0にする!」

 

 防がれた。だがこれは予想通りだ。デュエル序盤で城崎がRR-レディネスを使った時点で、見えている防御札となっていた。ここで虎の子の防御札を使わせられたのは大きい。

 

「バトルを終了。俺はスターダストとマジシャン・オブ・ブラックカオス・MAXを守備表示に変更。そして小鼠の魔術師をPゾーンにセットする!」

 

 和輝の右隣。そこに青白く光る柱が屹立。中には鼠の尻尾をつけ、袖や裾を短くして動きやすくした、巫女のような紅白の袴姿の少女。即ち小鼠の魔術師。

 

「小鼠の魔術師のP効果! あんたの墓地のアルティメット・ファルコンを除外し、その攻撃力分、俺のライフを回復する! カードを一枚セットして、ターンエンド!」

 

 

揺れる眼差し:速攻魔法

(1):お互いのPゾーンのカードを全て破壊する。その後、この効果で破壊したカードの数によって以下の効果を適用する。

●1枚以上:相手に500ダメージを与える。

●2枚以上:デッキからPモンスター1体を手札に加える事ができる。

●3枚以上:フィールドのカード1枚を選んで除外できる。

●4枚:デッキから「揺れる眼差し」1枚を手札に加える事ができる。

 

ラプターズ・ガスト:カウンター罠

(1):自分フィールドに「RR」カードが存在し、魔法・罠カードが発動した時に発動できる。その発動を無効にし破壊する。

 

魔宮の賄賂:カウンター罠

(1):相手が魔法・罠カードを発動した時に発動できる。その発動を無効にし破壊する。相手はデッキから1枚ドローする。

 

ペンデュラム・ホルト:通常魔法

(1):自分のEXデッキに表側表示のPモンスターが3種類以上存在する場合に発動できる。自分はデッキから2枚ドローする。このカードの発動後、ターン終了時まで自分はデッキからカードを手札に加える事はできない。

 

龍の鏡:通常魔法

(1):自分のフィールド・墓地から、ドラゴン族の融合モンスターカードによって決められた融合素材モンスターを除外し、その融合モンスター1体をEXデッキから融合召喚する。

 

呪符竜 闇属性 ☆8 ドラゴン族:融合

ATK2900 DEF2500

「ブラック・マジシャン」+ドラゴン族モンスター

このカードは上記カードを融合素材にした融合召喚または「ティマイオスの眼」の効果でのみ特殊召喚できる。(1):このカードが特殊召喚に成功した場合、自分・相手の墓地の魔法カードを任意の数だけ対象として発動する。そのカードを除外し、このカードの攻撃力はその除外したカードの数×100アップする。(2):このカードが破壊された場合、自分の墓地の魔法使い族モンスター1体を対象として発動できる。その魔法使い族モンスターを特殊召喚する。

 

RR-リターン:通常罠

「RR-リターン」の(2)の効果は1ターンに1度しか使用できない。(1):自分フィールドの「RR」モンスターが戦闘で破壊された場合、自分の墓地の「RR」モンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターを手札に加える。(2):自分フィールドの「RR」モンスターが効果で破壊された場合、墓地のこのカードを除外して発動できる。デッキから「RR」カード1枚を手札に加える。

 

小鼠の魔術師 闇属性 ☆1 魔法使い族:ペンデュラム

ATK500 DEF400

Pスケール1

P効果

(1):1ターンに1度、相手の墓地のモンスター1体を対象に発動できる。そのモンスターをゲームから除外し、その攻撃力分ライフを回復する。その後、このカードを破壊する。

モンスター効果

このカード名のモンスター効果はデュエル中1度しか発動できない。(1):このカードがEXデッキに表側表示で存在する時に発動できる。このカードを、空いた自分Pゾーンにセットする。

 

 

和輝LP1100→4600手札0枚

城崎LP3900→3400手札3枚

 

 

「彼の牙城を、これで少しは崩せたかな?」

「さぁな。だが切り札を一つ潰せたことは間違いないと思う。そして、これで終わるとも思えない。だから、ここからもっと、気を引き締めないとな」

 

 和輝の言う通り、城崎の眼光は微塵も衰えていない。この戦いは、まだ波乱があるだろう。

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