神々の戦争   作:tuki21

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第104話:凍える少女

 愛情って何? よく分からない。

 触れ合いって何? そんなのしてもらったことないよ。

 両親? いつも朝、顔を見る男の人と女の人のこと?

 でもあの人たちに何かをしてもらったことってあったっけ?

 ああ、お金。貨幣を使った経済活動。あれは教えてもらった。

 後は何かあったっけ?

 読み書きや身の回りの世話については、保育園の先生に教えてもらった。

 そこに愛情はなかったと思うよ。

 同情と、職務に対する義務感くらいかな。感謝はしてるけど。

 ああ、寒いなぁ……。誰もいない部屋に独りでいるのは、すっごく寒い。

 なんでだろう?

 

 

 

 

 

◆◆◆◆◆◆

 

 

 

 

 

 エーデルワイスは眼前の少女が強敵であることをはっきりと認識した。

 早乙女春。名前の通り、春のように朗らかで、ほわほわしていそうな印象なのに、戦術はトリッキーで()()()()

 油断なんて微塵もできない。けれど負けるつもりはもっとない。

 さぁ、落ち着いて。焦らず、まずはこの戦況を覆そう。

 

 

エーデルワイスLP4300手札2枚

ペンデュラムゾーン赤:なし青:なし

モンスターゾーン なし

魔法・罠ゾーン なし

フィールドゾーン なし

 

早乙女LP8000手札4枚

ペンデュラムゾーン赤:なし青:なし

モンスターゾーン 魔弾の射手 カスパール(攻撃表示)、魔弾の射手 スター(攻撃表示)、魔弾の射手-ドクトル(守備表示)

魔法・罠ゾーン 

フィールドゾーン なし

 

 

「私のターンです、ドロー!」

 

 劣勢を覆そうと、エーデルワイスは気合を込めてカードをドローする。

 ドローカードを確認。手札抹殺。

 このカードを使えば春が手札に温存している魔弾を処理できる。

 だが彼女の手札には相手の魔法、罠を無効にする魔弾-デスペラードがある。あれを発動し、止めてくるか。それともどの道防御札として使えなくなる考えて、使わないか。

 しばし考えて、エーデルワイスは手札抹殺を発動した。

 

「んー、どちらにしても、デスペラードは潰されちゃうな……」

 

 どうやら、今度はこちらが選択を突き付けられるらしい。そう思った春は、あまり深く考えずに結論を出した。

 手札抹殺が苦し紛れの一手なのか、こちらの手札にあるデスペラードを消費させるための囮なのか、判断がつかないなら考えるのはやめて、テキトーに動く。いつだってそうしてきた。

 

「それでいいかな、イアペトス?」

「構わん。人間同士の駆け引きはオレには向かんことがよく分かっている。適当に選べ」

「じゃ、発動しない。どうぞ」

 

 手を差し出されて、エーデルワイスは相手がカウンターをしないことを理解した。

 妨害されることなく、手札抹殺の効果が適用される。互いの手札が捨てられ、その枚数、新たにドロー。

 

「ここで、今捨てられた代償の宝札の効果を発動します。二枚ドロー!」

「あらら。失敗だったかな? まぁいいや、とりあえず、ぼくもドローするね」

 

 相変わらず相手のペースに乗せられている気がする。そんな軽い危機感を抱きながら、エーデルワイスは増えた手札を見て、こくりと小さく頷いた。

 

「これなら、いけるはずです……! 手札の二枚目の銀河眼の光子竜(ギャラクシーアイズ・フォトンドラゴン)を見せて、銀河剣聖(ギャラクシー・ブレイバー)を特殊召喚します!」

 

 エーデルワイスのフィールドに、新たなモンスターが現れる。

 青白く発光する身体を青いアクセントの入った白銀の甲冑に包み、右手には両刃の直剣を携え、冑の奥から見えない眼光を鋭く輝かせた。

 

「提示した銀河眼の光子竜のレベルは8、よって銀河剣聖のレベルも8になります。さらに私のフィールドにフォトンモンスターが存在するので、手札の銀河騎士(ギャラクシー・ナイト)をリリースなしで召喚します!」

 

 銀河剣聖の傍らに、新たな影が現れる。

 サーフボードのような乗り物に乗った、スマートな鎧姿の騎士。その様は中世の騎士よりも、SF的だ。

 

「銀河騎士の効果発動! 自身の攻撃力を1000ダウンさせ、墓地から銀河眼の光子竜を守備表示で特殊召喚します!」

 

 一気にレベル8モンスターが三体並ぶ。その光景はさすがに壮観で、春も「へー」と声を上げた。

 

「行きます! 銀河眼の光子竜、銀河剣聖、銀河騎士をオーバーレイ! 三体のモンスターで、オーバーレイネットワークを構築! エクシーズ召喚!」

 

 祈るように両手を合わせるエーデルワイス。その頭上に渦巻く銀河のような空間が展開され、そこに、彼女のフィールドにいる三体のモンスターが白い光となって飛び込んだ。

 三つの光が立て続けに飛び込み、虹色の爆発が起こった。

 

「逆巻く銀河よ。今こそ我が力となりて、化身の龍となってこの地に来たれ! これが私の祈り。私が出せる全て! |超銀河眼の光子龍《ネオ・ギャラクシーアイズ・フォトン・ドラゴン》!」

 

 爆発を、咆哮で切り裂いて、現れる巨大な影。

 今までのフォトンモンスターのような青い発光ではなく、赤い輝きを全身から発している三つ首のドラゴン。

 元となった銀河眼の光子竜と比べ、一回りも二回りに巨大になり、より攻撃的で暴力的な外見だった。

 

「銀河眼の光子竜を素材にしてX召喚に成功したため、超銀河眼の光子龍の効果発動です! このカード以外の表側雹所カードの効果を無効にします!」

 

 三つ首から放たれる咆哮は、空気を震わせ、その振動が叩きつけられた自分以外の全ての表側カードが色を失った。

 

「手札に残った銀河眼の光子竜を捨てて、二枚目のトレード・インを発動します。二枚ドロー。

 行きます! 超銀河眼の光子龍でカスパールに攻撃!」

 

 攻撃宣言が下り、赤く輝く巨龍の三つの口が大きく開かれた。

 放たれる三連の竜砲。赤い光が激流となってカスパールに殺到する。

 着弾、轟音、そして粉塵が天高く巻き上がる。

 

「ぐ、くぅ……!」

 

 襲い来るダメージのフィードバックに、春が苦悶の表情を浮かべ、苦痛の呻きを漏らす。

 自分が相手に痛みを与えているという事実に、エーデルワイスの表情もまた曇る。

 

「エーデルワイス……」

「分かって、ます。痛みを与えることから、私は逃げません! バトルを終了し、私は超銀河眼の光子龍でオーバーレイ! 一体のモンスターで、オーバーレイネットワークを再構築! フルアーマード・エクシーズ・チェンジ!」

 

 右手を掲げるエーデルワイス。彼女の眼前で、盛大な一撃を与えて反撃の口火を切った超銀河眼の光子龍の姿が粒子状に分解され、エーデルワイスの頭上に展開された先程と同じ空間に飛び込んでいく。

 

「逆巻く銀河よ、今鋼鉄の鎧を身に纏い、我が障害を打ち砕く暴力となってこの地に来たれ! これが、私の怒り! ギャラクシーアイズ・FA(フルアーマー)・フォトン・ドラゴン!」

 

 超銀河眼の光子龍が生まれ変わる。

 現れたのは、ベースは銀河眼の光子竜。その全身に黒鉄(くろがね)の鎧を身に纏い、鎧の隙間から青い光を漏れ輝かせているドラゴン。

 

「ギャラクシーアイズ・FA・フォトン・ドラゴンの効果発動! ORU(オーバーレイユニット)を一つ使い、スターを破壊します!」

 

 兜の奥の眼光が睨みを利かせる。

 ターゲットは魔弾の射手 スター。鎧を纏ったドラゴンは口内から青白い光を砲弾のような球状に加工して放った。

 抗う術を持たず、スターは破壊された。

 

「カードを二枚伏せて、ターン終了です」

 

 

手札抹殺:通常魔法

(1):手札があるプレイヤーは、その手札を全て捨てる。その後、それぞれ自身が捨てた枚数分デッキからドローする。

 

代償の宝札:通常魔法

(1):手札からこのカードが墓地に送られた時に発動する。カードを2枚ドローする。

 

銀河剣聖 光属性 ☆8 戦士族:効果

ATK0 DEF0

このカード名の(1)(2)の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。(1):手札の「フォトン」モンスター1体を相手に見せて発動できる。このカードを手札から特殊召喚する。このカードのレベルは見せた「フォトン」モンスターのレベルと同じになる。(2):このカードが召喚・特殊召喚に成功した場合、自分の墓地の「ギャラクシー」モンスター1体を対象として発動できる。このカードの攻撃力・守備力はそのモンスターのそれぞれの数値と同じになる。

 

銀河騎士 光属性 ☆8 戦士族:効果

ATK2800 DEF2600

(1):自分フィールドに「フォトン」モンスターまたは「ギャラクシー」モンスターが存在する場合、このカードはリリースなしで召喚できる。(2):このカードの(1)の方法で召喚に成功した場合、自分の墓地の「銀河眼の光子竜」1体を対象として発動する。このカードの攻撃力はターン終了時まで1000ダウンし、対象のモンスターを守備表示で特殊召喚する。

 

超銀河眼の光子龍 光属性 ランク8 ドラゴン族:エクシーズ

ATK4500 DEF3000

レベル8モンスター×3

「銀河眼の光子竜」を素材としてこのカードがエクシーズ召喚に成功した時、このカード以外のフィールド上に表側表示で存在するカードの効果を無効にする。1ターンに1度、このカードのエクシーズ素材を1つ取り除いて発動できる。相手フィールド上のエクシーズ素材を全て取り除き、このターンこのカードの攻撃力は取り除いた数×500ポイントアップする。さらに、このターンこのカードは取り除いた数まで1度のバトルフェイズ中に攻撃できる。

 

ギャラクシーアイズFA・フォトン・ドラゴン 光属性 ランク8 ドラゴン族:エクシーズ

ATK4000 DEF3500

レベル8モンスター×3

このカードは「ギャラクシーアイズ FA・フォトン・ドラゴン」以外の自分フィールドの「ギャラクシーアイズ」Xモンスターの上にこのカードを重ねてX召喚する事もできる。(1):1ターンに1度、このカードの装備カードを2枚まで対象として発動できる。そのカードをこのカードの下に重ねてX素材とする。(2):1ターンに1度、このカードのX素材を1つ取り除き、相手フィールドの表側表示のカード1枚を対象として発動できる。そのカードを破壊する。

 

 

エーデルワイスLP4300手札0枚

早乙女LP8000→4600手札4枚

 

 

「あいたたた……、やってくれたね。でも、まだまだだよ」

 

 まだまだ、という割に春の顔色は悪い。すぐにどうこうなるわけではなさそうだが、ダメージはダメージとして堪えたようだ。

 

「巻き返しは可能。ぼくのターン、ドロー!」

 

 自分の身体を振り回すような大仰な動作でカードをドローする春。ドローカードを確認後、すぐさまカードを繰り出した。

 

「ドクトルをリリースして、魔弾の悪魔 ザミエルをアドバンス召喚!」

 

 ただ一体残ったドクトルの姿が、白い光の粒子となって消えていく。そして、粒子を踏み荒らして現れたのは、貴族服に赤い翼、赤い仮面、両手に鈍い金色の巨大な銃を携えた悪魔。仮面の奥の双眸がエーデルワイスを見据え、口元が酷薄に吊り上がった。

 

「魔弾の悪魔……、名称からするに、射手たちの上位存在か?」とルー。肯定するように春が頷いた。

 

「射手たちは射手に過ぎない。与えられた魔弾を放つのが仕事。彼は違う。射手たちが使う魔弾を生み出し、与える制作者。契約したものに魔弾を与える狡賢い悪魔だよ。さらに死者蘇生を発動! 墓地からカスパールを蘇生させる」

「反撃の手段は整った、というわけか……」

 

 険しい表情でルーが言う。春が頷き、イアペトスが己の契約者に発破をかける。

 

「行け、春。その銃弾で敵を射抜き、ハチの巣にしてしまえ」

「りょーかい。バトルフェイズ、ザミエルでFAフォトン・ドラゴンに攻撃」

 

 にこりと微笑を浮かべて、春が攻撃宣言を下す。指さす先にいる鎧を身に纏ったドラゴンに対して、魔弾の悪魔が両手の銃を向けた。

 銃声とともに魔弾は放たれる。だがこのまま攻撃しても、ザミエルは返り討ちだ。

 ならば当然、手札から別の“魔弾”が飛んでくる。

 それはエーデルワイスにも分かっていた。

 

「まだクロス・ドミネーターですか!?」

「んー、ちょっと違う。今度はこれさ。手札から速攻魔法、魔弾-ネバー・エンドルフィンを発動! ザミエルの攻撃力を倍にする! さらに魔法、罠が発動した。この瞬間、カスパールの効果が発動。デッキから二枚目の魔弾-クロス・ドミネーターを手札に加えるよ!」

「ッ!」

 

 春が速攻魔法を発動した瞬間、ザミエルが放った魔弾が三倍近くに巨大化する。

 速度も貫通力も、面での破壊力も増した弾丸がフルアーマーのドラゴンに直撃した。

 轟音と、鉄が擦れて軋む音が空気を掻き毟った。鎧を破壊され、本体を貫通されたドラゴンが、断末魔の悲鳴を上げて消えていった。

 

「こ、ここで伏せていた強者の遺産を発動! このカードは、私のフィールドのORUを二つ以上持っているXモンスターが相手によって破壊された時に発動できるカード! 破壊されたXモンスターのランクの半分の枚数、カードをドローします!」

 

 ギャラクシーアイズ FA・フォトン・ドラゴンのランクは8、よって四枚のドローだ。破格といっていいだろう。しかも発動したカードはカスパールと同じ縦列。すでに自身の効果で新たな魔弾をサーチしているので、カスパールの効果は発動しない。運が、ほんの少しエーデルワイスに味方してくれていた。

 

「返しのターンで破壊されることも織り込み済みか。大量ドローは抜け目ない。だけどこれで面倒な大型モンスターは消えたね」と春。

「次は本人に魔弾をお見舞いしてやれ」とイアペトス。武器と職人の神は、人類の最先端にある武器。即ち銃が十分に威力を発揮している様にご満悦だった。

「言われなくても。カスパールでダイレクトアタック!」

「さ、させません! 手札の護封剣の剣士の効果発動! 手札のこのカードを守備表示で特殊召喚し、カスパールを破壊します!」

 

 防御札は手札にあった。エーデルワイスの手札から、日本の鎧武者に似た青い鎧に、カード、光の護封剣を思わせる剣を楔のように生やした戦士がフィールドに参上、直後に光の剣をカスパールに向けて投擲した。

 

「今カスパールが破壊されるのはうまくない。手札から魔弾-デビルズ・ディールを発動。これで、カスパールの破壊を防ぐ」

 

 防御札を用意していたのは春も同じ。だがモンスターは残せた。それでよしとするしかない。

 

「バトル終了。カードを一枚伏せて、ターンエンド」

 

 

魔弾の悪魔 ザミエル 光属性 ☆8 悪魔族:効果

ATK2500 DEF2500

このカードは「魔弾」モンスター1体をリリースして表側表示でアドバンス召喚できる。このカード名の(2)の効果は1ターンに1度しか使用できない。(1):このカードがモンスターゾーンに存在する限り、自分・相手ターンに自分は「魔弾」魔法・罠カードを手札から発動できる。(2):相手エンドフェイズに発動できる。このターン、このカードが表側表示で存在する間に自分が発動した「魔弾」魔法・罠カードの数だけ、自分はデッキからドローする。

 

死者蘇生:通常魔法

(1):自分または相手の墓地のモンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターを自分フィールドに特殊召喚する。

 

魔弾-ネバー・エンドルフィ①:相手モンスターの直接攻撃宣言時に発動できる。このカードを手札から特殊召喚する。その後、特殊召喚したこのカードの守備力がその攻撃モンスターの攻撃力より高い場合、その攻撃モンスターを破壊する。②:フィールドのこのカードを素材としてX召喚したモンスターは以下の効果を得る。

●このカードは1ターンに1度だけ戦闘では破壊されない。になる。このカードを発動するターン、対象のモンスターは直接攻撃できない。

 

強者の遺産:通常罠

(1):X素材を2つ以上持っている自分Xモンスターが相手によって破壊された時に発動できる。そのモンスターのランクの半分(小数点以下切り捨て)の枚数、カードをドローする。

 

護封剣の剣士 光属性 ☆8 戦士族:効果

ATK0 DEF2400

(1):相手モンスターの直接攻撃宣言時に発動できる。このカードを手札から特殊召喚する。その後、特殊召喚したこのカードの守備力がその攻撃モンスターの攻撃力より高い場合、その攻撃モンスターを破壊する。(2):フィールドのこのカードを素材としてX召喚したモンスターは以下の効果を得る。

●このカードは1ターンに1度だけ戦闘では破壊されない。

 

魔弾-デビルズ・ディール:永続罠

このカード名のカードは1ターンに1枚しか発動できない。(1):このカードが魔法&罠ゾーンに存在する限り、自分フィールドの「魔弾」モンスターは効果では破壊されない。(2):このカードが相手の効果で墓地へ送られた場合に発動できる。自分のデッキ・墓地から「魔弾-デビルズ・ディール」以外の「魔弾」カード1枚を選んで手札に加える。

 

 

エーデルワイスLP4300→3300手札3枚

早乙女LP4600手札2枚

 

 

「私のターン、ドロー!」

 

 予想していたとはいえ、あっさりと陣形を崩された。その事実を飲み込んで、エーデルワイスはカードをドローする。

 

「やはりティターン神族がわざわざ見つけただけのことはある。簡単には押し切れん。とにかく、立て直しを、エーデルワイス」

「はい! フォトン・クラッシャーを召喚し、リバースカードオープン! フォトン・チェンジを発動! そして、フォトン・チェンジの効果を発動! フォトン・クラッシャーを墓地に送って、デッキから三枚目の銀河眼の光子竜を特殊召喚します!」

 

 咆哮を上げて、勇壮なドラゴンがエーデルワイスのフィールドに現れる。何度も主を守るという気概を感じさせるその立ち姿は、やはりエーデルワイスに安心感を与えた。

 このゲームのカードに初めて触れた時から、ずっとこのカードを主軸にしたデッキを作っている。まだ日は浅いが、それでも思い入れの深いカードだ。

 

「行きます! 銀河眼の光子竜と、護封剣の剣士で、オーバーレイ! 二体のモンスターで、オーバーレイネットワークを構築! エクシーズ召喚!」

 

 X召喚のエフェクトが走り、虹色の爆発が起こる。エーデルワイスの声が響く。

 

「出でよNo.(ナンバーズ)38! その身に希望を乗せて、銀河の海を雄々しく、誇らしく行け! 私の祈り、私の希望、ここに顕現します! 希望魁竜タイタニック・ギャラクシー!」

 

 新たなギャラクシーの名を持つドラゴンが出現する。

 エネルギーの奔流のような光の翼、尻尾。青く、漲る膨大なエネルギー状の本体と、それを覆う鎧のような白い装甲。その左肩に自身のナンバーである38を刻み、希望を名に背負ったドラゴンは、出航を告げる帆船のように高らかに咆哮を上げた。

 

「バトルです! タイタニック・ギャラクシーでザミエルを攻撃!」

 

 大きく開かれる口。その喉奥から放たれる青白い光の奔流。それは熱とエネルギーを伴って、まっすぐ突き進む。

 

「春!」対抗せよとイアペトスが声を上げる。春もこくんと頷いた。

 

「ザミエルの効果発動! 手札から、魔弾-クロス・ドミネーターを発動! タイタニック・ギャラクシーの効果を無効にし、攻撃力を0にする!」

 

 放たれる魔弾。光の奔流もものともせずに、タイタニック・ギャラクシーめがけて突き進む。

 

「せっかく召喚したところ悪いんだけど、ぼくの手札に魔弾があることを忘れてたのかな?」

「いいえ、忘れてなんていません! タイタニック・ギャラクシーの効果発動! 一ターンに一度、フィールドで発動した魔法カードの効果を無効にし、そのカードをタイタニック・ギャラクシーのORUにすることができます!」

「あっ!」

 

 魔弾が急激に力を失っていく。声を上げる春の眼前で、放たれた魔弾はカードごと色を失い、タイタニック・ギャラクシーの三つ目のORUとなった。

 そして魔弾の妨害がないくなった以上、タイタニック・ギャラクシーの攻撃は止まらない。放たれた一撃が魔弾の悪魔を捕え、焼き尽くした。

 

「くぅ……! ザミエルが……! だけどね、魔弾は発動しているんだ! カスパールの効果発動! デッキから魔弾-デスペラードを手札に加える!」

「まだだエーデルワイス! 攻撃の手を止めてはならない!」

「はい! 手札から速攻魔法、宿縁の再訪を発動します! このカードはレベル、またはランク8のモンスターが破壊された時に発動でき、デッキ、または墓地からレベル8モンスター一体を効果を無効にして特殊召喚できます! そしてこの効果で特殊召喚されたカードは、このターン、ほかのカード効果を受けない! 墓地から来てください、銀河眼の光子竜!」

 

 主のためなら何度でも。そういうかのような、歓喜と戦意がないまぜになったような咆哮を上げて、またしても銀河眼の光子竜が戦場に舞い戻る。

 

「まだバトルフェイズは続いています! 銀河眼の光子竜でカスパールを攻撃!」

 

 今の銀河眼の光子竜に魔弾は効かない。放たれた光の奔流が、魔弾の射手を飲み込み、消失。その威力はとどまらず、余波が春自身をも襲った。

 

「うわっ!」

 

 直撃はなかった。ただ掠めた一撃に、彼女の軽い身体が浮き上がる。

 

「あっ!」

 

 思わずエーデルワイスは声を上げ、一歩前に出た。手をかざし、駆け寄ろうとした。ただ、春は受け身を取ったらしく、地面に落ちてもすぐに立ち上がった。

 ほっとした。それが正直な気持ちだ。だって敵はティターン神族で、そのパートナーを傷つけることは、できればしたくなかった。

 

 

フォトン・クラッシャー 光属性 ☆4 戦士族:効果

ATK2000 DEF0

このカードは攻撃した場合、ダメージステップ終了時に守備表示になる。

 

フォトン・チェンジ:永続罠

このカードは発動後、2回目の自分スタンバイフェイズに墓地へ送られる。このカード名の(1)の効果は1ターンに1度しか使用できない。(1):自分フィールドの表側表示の、「フォトン」モンスターまたは「ギャラクシー」モンスター1体を墓地へ送り、以下の効果から1つを選択して発動できる。「銀河眼の光子竜」を墓地へ送って発動した場合、両方を選択できる。●そのモンスターと元々のカード名が異なる「フォトン」モンスター1体をデッキから特殊召喚する。●デッキから「フォトン・チェンジ」以外の「フォトン」カード1枚を手札に加える。

 

No.38 希望魁竜タイタニック・ギャラクシー 光属性 ランク8 ドラゴン族:エクシーズ

ATK3000 DEF2500

レベル8モンスター×2

(1):1ターンに1度、魔法カードの効果がフィールドで発動した時に発動できる。その効果を無効にし、フィールドのそのカードをこのカードの下に重ねてX素材とする。(2):相手の攻撃宣言時、このカードのX素材を1つ取り除いて発動できる。攻撃対象をこのカードに移し替えてダメージ計算を行う。(3):自分フィールドの他のXモンスターが戦闘・効果で破壊された場合、自分フィールドのXモンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターの攻撃力は、破壊されたそのモンスター1体の元々の攻撃力分アップする。

 

宿縁の再訪:速攻魔法

(1):フィールドのレベルまたはランク8のモンスターが戦闘、カードの効果で破壊された場合に発動できる。自分のデッキ、または墓地からレベル8モンスター1体を効果を無効にして特殊召喚する。この効果で特殊召喚されたモンスターはこのターン、ほかのカード効果を受けない。

 

 

エーデルワイスLP3300手札2枚

早乙女LP4600→4200→2400手札2枚

 

 

「うーん……」

 

 起き上がった春は特に気にした様子もなく、服の汚れを払う。

 

「やっぱり楽しいねえ、デュエルって」

 

 春はそう言って、屈託なく笑った。敵味方に分かれている状況とはとても思えない、朗らかで純粋な笑みだった。

 そこに悪意の類は一切感じられない。なのに、エーデルワイスはその目を見て、とても()()()だと思った。

 まるで、物悲しい、寂しさしか感じさせない風を送る洞窟のようだった。

 

「楽しい、ですか?」

「そう。ぼくはデュエルが好きだよ。だって、デュエルは一人じゃできないからね。()()じゃないと寒くなくていい」

「寒い……?」

「そうだよ」

 

 相変わらず、寒くて薄暗い瞳をしたまま、春は言う。

 

「家にいた時も、ずっと寒かった。あそこは()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。だからいつも寒かった。父さんと母さんがいても、寒くてたまらなかった。どこに行ってもそうだった。

 でもデュエルは違ったよ。対戦相手は絶対にぼくを見てくれた。そうするとね、寒くなくなるんだ」

 

 孤独に震えた少女の言葉。それは確かな実感を伴ってエーデルワイスの胸を打った。それに、と春は続ける。

 

「今はデュエルの時以外もあまり寒くないんだ。だって、イアペトスがいる。()()()()()()()()。だから今はあまり寒くない」

 

 春の背後で、半透明のイアペトスが笑う。それは暖かな微笑とは違っていた。邪悪とも言えないが、自分になついた愛玩動物(ペット)を見るような、どうしようもない小動物に向けるような笑みに感じられた。

 エーデルワイスは、春に対して何か言わなければならないという焦燥に駆られた。

 だが何を言えばいいのか分からなかった。自分は、他人に何かを告げられるほど、強い人間だろうかと、ふと暗い気持ちが過ってしまったのもあったし、家の都合もあってあまり多くの種類の人と接してこなかったので、こういう時にどういう言葉を駆ければいいのか分からなかったこともあった。

 その逡巡の内に、事態は進んでしまった。

 

「そして、神様が言っている。そろそろ、神を出すころなんじゃないかってね」

 

 その一言で、空気が変わった。

 春と名乗った少女が、遠くに踏み出そうとしているように感じられた。

 

「気をつけろ、エーデルワイス。この気配の変化。ここからだ。神が来るとすればな」

 

 ルーが警告の言葉をかけてくる。エーデルワイスは春にかける言葉を飲み込んでしまった。飲み込んだ時に、言葉はぐちゃぐちゃと絡まり合って、何を言いたかったのかもわからなくなってしまった。

 戦いは、佳境に入っていた。

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