神々の戦争   作:tuki21

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第109話:プロ同士の戦い

 狙い通り。

 その人影は目の前の結果を見て、満足げに頷いた。

 見るからに快活そうな女だった。

 褐色の肌、赤いショートヘア、金の瞳、唇に赤いルージュ、大胆にカットを入れたホットパンツにボディラインを惜しげもなくさらす黒のタンクトップ、上着を腰に巻き付けたその姿は自信に満ち溢れており、優美でしなやかなガゼルの風情。

 彼女は目の前の光景を見て、もう一度頷いた。

 破壊、だった。

 先ほどまで咲夜(さくや)とエーデルワイス、そしてアテナとルーがいた喫茶店は、今や跡形もない。

 当事者の主観からは何が起こったのか理解できていなかっただろうが、それを成した彼女からは一目瞭然。

 天空から降り注いだ一筋の光。まるで天の裁きの様なそれが物理的な圧力を伴って喫茶店を直撃。轟音と極光、そして衝撃波をまき散らして喫茶店を中にいる二人と二柱ごと圧搾したのだった。

 残るは天井か床を構成していたと思われる木片や、運よく残ったガラス片。そして瓦礫の山。

 

「さてと。狙い通り油断してるところから上からドーン! てなもんだけど―――――」

 

 女は上を向いた。空に向かって声をかける。

 

「どう思う? クレイオス?」

 

『解答不要』

 

 空から降ってきた男の声は重厚さを持ちながらも、人口の合成音声染みていた。

 

「?」

 

 女が訝し気に眉をひそめた時、瓦礫と化した喫茶店後から、先程の返礼とばかりに地上から天空に向かって光の柱が立ち昇った。

 

「な、なに!?」

 

 いきなりの現象と、目を焼かんばかりの閃光に女が面食らっていると、光を浴びた瓦礫が音もなく消滅していく。

 その向こうから四つの人影が現れる。

 光の槍、ブリューナクを構えたルーと、その傍らにいるエーデルワイス、アテナ、そして咲夜。

 

「ありがとうございます、ルー」

「構わない。だがいきなり天空から不意打ちとは、やってくれるな」

 

 そう言ってルーは女を睨みつける。女はどこ吹く風と肩をすくめただけだった。

 

「あなたは……」

 

 ルーのブリューナクが放った光によって、一時的に目がちかちかしていた咲夜は、視力が戻ってくるにしたがって相手の姿が鮮明になってきた。

 見覚えのある姿だった。というか、会ったことがある。

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。スポンサーだって同じだから、懇親会だったか何かで会食したことがある。

 

「カーラ・ジェミニスプロ……?」

 

 信じられないものを見た、というように声を出す咲夜に対して、カーラと呼ばれた女は笑顔で手を振った。

 

「ヤホ、咲夜ちゃん。久しぶり。てゆーか、咲夜ちゃんも参加者だったんだね。しかも敵」

 

 にこにこと笑うカーラ。とても先程不意打ちしてきた人物とは思えない。

 

「咲夜さん……、お友達ですか?」

 

 事態にまだ頭が追い付いていないのか、困惑したような声でエーデルワイスが訪ねてきた。

 

「友達って程じゃないけどね。同じスポンサーで、同じランクのプロだから、会えば話をするし、一緒に食事にも行くらいかな」

「それが今じゃ敵味方ってわけだね。まぁそんなこともあるよ。其れよりも、ここから先はショウの時間さ」

 

 ニコニコと、カーラは手を振った。

 咲夜の記憶では、カーラはショウデュエルを生業としており、何より観客を楽しませることを第一に考え、その上で勝つことを信条にしていたはずだ。

 なのに、今の彼女は違う。

 こんなギャラリーのいないところで、一体何のショウをやろうというのだろう?

 

「…………」

 

 考えても無駄だと、咲夜は(かぶり)を振った。

 目の前にいるのは自分と所属を同じくするプロではなく、ティターン神族の契約者。つまり敵だ。

 悩む必要はない。もう、自分は立つ側を決めたのだから。

 

「エーデルちゃん。ここはあたしに任せて」

「え、ですが……」

 

 言いよどむエーデルワイス。理由は分かる。顔見知りと戦うのは辛いのではないかと、そう思ったのだろう。

 優しい子だな、と思う。咲夜は安心させるように微笑を浮かべ、

 

「大丈夫、顔見知りだからって躊躇はしないよ。それに、あたしはカーラさんのデュエルも、デッキも知ってるの。其れって有利に働くでしょ?」

 

 そう言って、咲夜はデュエルディスクを起動させた。

 

「あれ、咲夜ちゃんだけが戦うの? あたしは二人同時でもいいなー」

「ふざけないでくださいよ、カーラさん。あたしとカーラさんのランクは同じB、だったら、一対一でだって余裕はないでしょ?」

 

 挑発めいたカーラの言葉に対して、咲夜もまた返礼の挑発を投げかける。カーラの目がすっと細まった。

 

「言うねえ。じゃ、まずは咲夜ちゃんとだね」

 

 言外に負けるつもりはないといっているようなものだったが、咲夜は取り合わなかった。

 カーラもまた、デュエルディスクを起動する。

 咲夜の胸元に桃色の輝きが宿る。神々の戦争参加者の証、宝珠の輝きだ。

 カーラにも光があったがそれには色がない。無色の宝珠、これがティターン神族の契約者の証だった。

 ごくりとエーデルワイスが唾を飲み込んだ。その瞬間――――――

 

決闘(デュエル)!』

 

 神々の戦争内で、プロ同士の戦いの火ぶたが切って落とされた。

 

 

咲夜LP8000手札5枚

カーラLP8000手札5枚

 

 

「あたしの先攻!」

 

 先攻を勝ち取った咲夜は即座にドローフェイズを消化、動いた。

 

「コンバート・コンタクト発動! 手札の(ネオスペーシアン)・グロー・モスを、デッキからN・アクア・ドルフィンを墓地に送って、二枚ドロー。そしてネオスペース・コネクターを召喚!」

 

 現れたのは、咲夜のデッキのエース、E・HERO(エレメンタルヒーロー) ネオスを彷彿とさせるモンスター。

 ネオスよりも子供で、頭身も低く戦闘能力も低そうだ。同じ種族の子供、思えばいいのかもしれない。

 

「ネオスペース・コネクターの効果発動! デッキから、E・HERO ネオスを守備表示で特殊召喚するわ!」

 

 咲夜の右手が勢いよく天へと振り上げられる。彼女の行為に応えるように、咲夜のフィールドに光の柱が屹立、中から現れたのは、白のボディに赤のライン、胸元の青い宝珠を手にした戦士。咲夜のデッキの中核を担うモンスター、E・HERO ネオス。

 咲夜は畳みかけるように右手を横に振るった。

 

「まだよ! ネオスペース・コネクターの第二の効果発動! このカードをリリースして、墓地からN・アクア・ドルフィンを特殊召喚!」

 

 光の粒子となって消えていくネオスペース・コネクター。代わりに現れたのは、海豚の頭部に人間の胴体を持った宇宙生命体。カカカカカと甲高い声を上げながらフィールドに参上した。

 

「アクア・ドルフィンの効果発動! さ、カーラさん、手札を見せて」

「うわー、容赦ないね。嫌いじゃあないよ」

 

 そう言って、カーラは己の手札を公開した。

 さらされた手札はEM(エンタメイト)コール、EMゴールド・ファング、オッドアイズ・ファントム・ドラゴン、強欲で貪欲な壺、オッドアイズ・ペルソナ・ドラゴン。

 咲夜の場にはネオスが陣取っているのでカーラの手札の中で、破壊できるモンスターは多い。

 

「…………EMゴールド・ファングを破壊して、カーラさんに500のダメージを与えるわ」

「あうち」

 

 小石でもぶつけたように顔をしかめるカーラ。咲夜の選択に、エーデルワイスは首を傾げた。

 

「どうして攻撃力の高いオッドアイズ・ファントム・ドラゴンや、P召喚の幅が広くなるペルソナ・ドラゴンを選ばず、ゴールド・ファングを破壊したのでしょうか?」

「恐らくだが、ゴールド・ファングのP効果を嫌ったのだろう。あのカードはEMモンスターが相手モンスターを戦闘破壊した時、追加で1000のダメージを与える。P召喚で不死身のようにどんどん復活するEMデッキ相手なら、この追加ダメージは馬鹿になるまい」

「なるほど……」

 

 こくりと頷き、エーデルワイスは咲夜の背中を見つめた。

 そんなパートナーを見て、このデュエルはエーデルワイスにとって得るものが多いかもしれないなとルーは思った。

 良いことだ。素直な気質のこの契約者は、これから多くのことを吸収し、強くなるだろう。それが好ましく、望ましかった。

 

「悪いけど、まだ終わってないわ! 今捨てたE・HERO シャドー・ミストの効果を発動し、デッキからE・HERO オネスティ・ネオスを手札に加える!

 そしてネオスとアクア・ドルフィンをコンタクト融合!」

 

 咲夜の両手が握り合わされる。彼女の頭上でネオスとアクア・ドルフィンが渦上に混ざり合うように一体となる。

 

「異星の戦士よ、水の力を受け、凶兆を配する堅固なる盾となれ! コンタクト融合! 水よ、押し流せ! E・HERO アクア・ネオス!」

 

 光の向こうから現れたのは、ベースはネオスのまま、青いカラーリングとなり、どこかアクア・ドルフィンの面影を見せる。

 

「フィールド魔法、ネオスペース発動! そしてアクア・ネオスの効果発動! 手札を一枚捨てる! あたしは、一番右端の手札を破壊する!」

「うーわー、EMコール。まぁ仕方がないや」

 

 あちゃーと顔を覆うカーラ。その表情からは邪悪な気配は見当たらない。だが最初の不意打ちから見るに、どう考えてもまともじゃない。

 

「カードを一枚伏せて、ターンエンド」

 

 

コンバート・コンタクト:通常魔法

(1):自分フィールドにモンスターが存在しない場合に発動できる。手札及びデッキから「N」カードを1枚ずつ墓地へ送る。その後、自分はデッキから2枚ドローする。

 

ネオスペース・コネクター 光属性 ☆4 戦士族:効果

ATK800 DEF1800

このカード名の(1)(2)の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。(1):このカードが召喚に成功した時に発動できる。手札・デッキから「N」モンスターまたは「E・HERO ネオス」1体を守備表示で特殊召喚する。(2):このカードをリリースし、自分の墓地の、「N」モンスターまたは「E・HERO ネオス」1体を対象として発動できる。そのモンスターを守備表示で特殊召喚する。

 

E・HERO ネオス 光属性 ☆7 戦士族:通常モンスター

ATK2500 DEF2000

 

E・HERO シャドー・ミスト 闇属性 ☆4 戦士族:効果

ATK1000 DEF1500

「E・HERO シャドー・ミスト」の(1)(2)の効果は1ターンに1度、いずれか1つしか使用できない。(1):このカードが特殊召喚に成功した場合に発動できる。デッキから「チェンジ」速攻魔法カード1枚を手札に加える。(2):このカードが墓地へ送られた場合に発動できる。デッキから「E・HERO シャドー・ミスト」以外の「HERO」モンスター1体を手札に加える。

 

N・アクア・ドルフィン 水属性 ☆3 戦士族:効果

ATK600 DEF800

(1):1ターンに1度、手札を1枚捨てて発動できる。相手の手札を確認し、その中からモンスター1体を選ぶ。選んだモンスターの攻撃力以上の攻撃力を持つモンスターが自分フィールドに存在する場合、選んだモンスターを破壊し、相手に500ダメージを与える。存在しない場合、自分は500ダメージを受ける。

 

ネオスペース:フィールド魔法

このカードがフィールド上に存在する限り、「E・HERO ネオス」及び「E・HERO ネオス」を融合素材とする融合モンスターの攻撃力は500ポイントアップする。また、「E・HERO ネオス」を融合素材とする融合モンスターは、エンドフェイズ時にエクストラデッキに戻る効果を発動しなくてもよい。

 

E・HERO アクア・ネオス 水属性 ☆7 戦士族:融合

ATK2500 DEF2000

「E・HERO ネオス」+「N・アクア・ドルフィン」

自分フィールド上の上記のカードをデッキに戻した場合のみ、エクストラデッキから特殊召喚できる(「融合」魔法カードは必要としない)。1ターンに1度、手札を1枚捨てる事で、相手の手札をランダムに1枚選んで破壊する。また、エンドフェイズ時、このカードはエクストラデッキに戻る。

 

 

E・HERO アクア・ネオス攻撃力2500→3000

 

 

咲夜LP8000手札2枚

カーラLP8000→7500手札3枚

 

 

「んじゃ、あたしのターンだね、ドロー!」

 

 一ターン目から相手の手札を削るのは、後のデュエルの展開を有利に運ぶ一番有用な手段だ。エーデルワイスはそう考えるし、じっさい師であるクリノ・マクベスにもそう教わった。

 そしてそれは事実だ。現に今、咲夜のフィールドには攻撃力3000のモンスターが立っているが、カーラの手札はオッドアイズ・ファントム・ドラゴン、強欲で貪欲な壺、オッドアイズ・ペルソナ・ドラゴンの三枚。

 P召喚は難しく、ただ場に出しただけでは咲夜のモンスターに対抗できない。

 懸念材料は強欲で貪欲な壺だった。序盤で使うのはキーカードを除外されてしまうのでリスクがあるかもしれないが、使わなければ負ける場面ならば使うだろう。

 だがそれ以外ではできることは何もないように思えた。

 

「つまり、今デュエルは咲夜さんが圧倒的有利に立ったと、そう考えていいのですよね?」

「その通りだ」

 

 観戦しているエーデルワイスも、ただ黙ってみているだけではない。

 咲夜とカーラ、プロ同士のデュエルを間近で見られる機会はそうそうない。だからここで見て、彼女たちの思考を読み、どう考えて戦術を展開しているのか、少しでも学ぼうとしていた。

 自分はまだ未熟であるという自覚はある。だからこそ、こうして少しでも差を詰めたい。

 

「しかしエーデルワイス、君は一つ忘れている」

 

 じっと見つめるエーデルワイスの耳朶を、ルーの冷静な声が叩いた。

 

「え?」

「手札を削られたからといって、そこで終わってしまうほど、プロの底は浅いのだろうか? まして相手はBランク。不利な状況からでも、ドロー一枚で覆してくるのでは?」

 

 ルーの一言にエーデルワイスは背筋を寒くした。

 それは彼の言葉に肝を冷やしたのではなく、眼前で行われた光景故だった。

 

「いいドローだったよ! あたしはスケール1のオッドアイズ・ペルソナ・ドラゴンと、スケール4のオッドアイズ・ファントム・ドラゴンを、ペンデュラムゾーンにセッティング!」

 

 瞬間、カーラのフィールド、彼女の両隣りに青白い光の柱が屹立する。柱はそれぞれのモンスターを内包しており、モンスターたちの足元には楔形文字にいた数字が刻まれていた。

 

「そして今引いたお楽しみはこれ! ペンデュラム・フュージョン発動! あたしのPゾーンにいるペルソナ・ドラゴンとファントム・ドラゴンで融合!」

「ッ! よりによって今引いたの!?」

 

 咲夜から驚愕の声が飛ぶ。驚愕はエーデルワイスもまた同様。まさか本当に、一枚のドローカードで状況を覆すカードが来るとは……。

 唖然とするエーデルワイスの眼前で、カーラが両手を大きく広げた。

 

「さぁご覧あれ! これにございますは世にも珍しい二色(ふたいろ)の眼を持つ二頭の竜! これらを混ぜ合わせ、誕生させますは旋風を纏い迅雷を放つこれまた希少な二色眼のドラゴン! おいでませい、オッドアイズ・ボルテックス・ドラゴン!」

 

 カーラのフィールド、光の柱の中に納まっていた二体のモンスターが柱の中から飛び出し、互いに混ざり合う。

 そしてあられた姿はオッドアイズ系列のドラゴンに酷似している。

 体をライトグリーンを基調に金の縁取りを成した鎧で覆い、体から稲妻を発生させる。翼を得た姿は大空を悠々と泳ぐ力強き竜。

 

「ボルテックス・ドラゴンの効果発動! 咲夜ちゃんのアクア・ネオスを手札に戻すよ! ま、融合モンスターのアクア・ネオスは手札じゃなくてEXデッキに戻るけどね♪」

 

 カーラが右手の指を鳴らすと、その音に応じて天空を遊泳していたボルテックス・ドラゴンが一声咆声を上げた

 翼を大きく羽ばたかせれば、発生したのは巨大な竜巻。咲夜のフィールドのアクア・ネオスは竜巻に飲み込まれて吹き飛ばされてしまった。

 

「しまった……!」

「場にモンスターがいなくなっちゃったら、さすがのオネスティ・ネオスも役に立たないもんね。

 じゃあ、バトルフェイズ! ボルテックス・ドラゴンでダイレクトアタック!」

 

 攻撃宣言が下り、オッドアイズ・ボルテックス・ドラゴンの全身が発光。それが発電だと気づいた瞬間、咲夜は走り出した。

 喫茶店跡地はまだ瓦礫があって動きにくい。下手に足を取られたら宝珠が丸見えになってしまう。とっさに近くの民家に逃げ込む。

 

「無駄だよ!」

 

 雷が咲夜が逃げ込んだ民家に降り注いだ。

 轟音と閃光。雷が民家の屋根を粉砕し、壁を紙のように破り、内部を蹂躙。縦横無尽に暴れまわる。

 数秒前まで民家だったものは二階部分を吹き飛ばされ、床にして天井を貫かれ、中の家具や衣類を粉砕、焼失させた。

 舞い上がった粉塵。それを突き破って出てきた咲夜は地面に叩きつけられ、そのままゴロゴロと転がった。

 

「う……」

「咲夜!」

 

 半透明のアテナがパートナーを気遣って声を上げる。咲夜は心配ないというようにアテナに向かって親指を立てた。

 

「いいね咲夜ちゃん。とっさに屋内に逃げたのはこっちに狙いを絞らせないため?」

「そのつもりだったんだけど……、カーラさんの攻撃が速すぎて脱出が遅れたわ」

「なるほどね……。でも今度はちゃんと、アタシに見えるところで攻撃を受けてほしいな。そうじゃないと、ギャラリーは盛り上がらないでしょ?」

「カーラさん?」

 

 咲夜は眉根を寄せてカーラの方を見た。

 違和感のある言い回しだった。カーラのデュエルはショウデュエル。観客を楽しませることを第一にしたもので、以前インタビューでギャラリーの歓声こそが何よりも素敵なプレゼントと笑顔で語っていた。

 今、カーラは笑顔だ。しかしかつて見せていた爽やかで優し気なものではない。

 己の快楽のみに耽溺(たんでき)している笑顔。それは、咲夜が知っているカーラが浮かべるはずのないものだった。

 

「……ずいぶん嬉しそうだね、カーラさん。そんな顔をするとは思わなかった」

「あたしもだよ」

 

 笑顔のまま、カーラは語る。

 

「だけどこうして神々の戦争で、実際にダメージの出るデュエルをしててさ、対戦相手が痛みで叫んだり、苦しんでるのを見たらさ、なんだか、お腹の底から笑いたくなっちゃったんだよ。()()()()()()()()()()()

 

 気付かなかった二面性だねとカーラは締めくくった。

 咲夜は悲しそうな表情を浮かべ、

 

「それは、神に歪められたからだよ、カーラさん」

「そうかな? じゃあ、今あたしが感じている楽しいって感情はなんだろ? あたしの中から出たんじゃないんなら、どこから出たんだろ? 考えるのもどーでもいいや。

 それよりデュエルを続けよう? 頑張って抵抗して、だけど敵わなくて、痛がって、苦しんで、ギャラリー(あたし)を満足させて?」

「お断り!」

 

 悲しげな表情から一転、不敵に笑って見せる咲夜。その様を格好いいなぁと思いながら、エーデルワイスが思案することはこの後のカーラの行動だ。

 咲夜の大型モンスターを切り伏せたなら、状況打開の切り札になる強欲で貪欲な壺は温存し、ターン終了なのだろうか?

 

「じゃ、メインフェイズ2に入って、強欲で貪欲な壺発動。デッキトップから十枚除外して、二枚ドロー」

「ッ!」

 

 違った。相手は躊躇なくドローブーストを使ってきた。公開された手札を考えるに、キーカードは手札にきていない。ここで十枚も除外してしまえば、デッキの中核カードを除外してしまう危険があるのに――――――

 

「この程度で自分のデッキは崩れないという自信か、あるいはこの程度で自分のデッキのキーカードは除外されないと、そんな確信があるのかもしれぬ」

 

 ルーの言うことはエーデルワイスにはまだ分からない。

 プロの持つ運命力ともいうべき豪運、その発露ということだろうか。そんな領域の相手が、プロの世界にはごろごろいるいう事実に圧倒されそうになる。

 

「ふふん、ターンエンド」

 

 

オッドアイズ・ペルソナ・ドラゴン 闇属性 ☆5 ドラゴン族:ペンデュラム

ATK1200 DEF2400

Pスケール1

P効果

(1):自分フィールドの「オッドアイズ」Pモンスター1体を対象とした相手の効果が発動した場合、そのターンのエンドフェイズに発動する。Pゾーンのこのカードを特殊召喚し、自分のエクストラデッキから「オッドアイズ・ペルソナ・ドラゴン」以外の表側表示の「オッドアイズ」Pモンスター1体を選び、自分のPゾーンに置く。

モンスター効果

(1):1ターンに1度、エクストラデッキから特殊召喚された表側表示モンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターの効果をターン終了時まで無効にする。この効果は相手ターンでも発動できる。

 

オッドアイズ・ファントム・ドラゴン 闇属性 ☆7 ドラゴン族:ペンデュラム

ATK2500 DEF2000

Pスケール4

P効果

(1):1ターンに1度、もう片方の自分のPゾーンに「オッドアイズ」カードが存在する場合、自分の表側表示モンスターが相手モンスターと戦闘を行う攻撃宣言時に発動できる。その自分のモンスターの攻撃力はバトルフェイズ終了時まで1200アップする。

モンスター効果

「オッドアイズ・ファントム・ドラゴン」のモンスター効果は1ターンに1度しか使用できない。(1):P召喚したこのカードの攻撃で相手に戦闘ダメージを与えた時に発動できる。自分のPゾーンの「オッドアイズ」カードの数×1200ダメージを相手に与える。

 

ペンデュラム・フュージョン:通常魔法

「ペンデュラム・フュージョン」は1ターンに1枚しか発動できない。(1):融合モンスターカードによって決められた融合素材モンスターを自分フィールドから墓地へ送り、その融合モンスター1体をエクストラデッキから融合召喚する。自分のPゾーンにカードが2枚存在する場合、自分のPゾーンに存在する融合素材モンスターも融合素材に使用できる。

 

オッドアイズ・ボルテックス・ドラゴン 風属性 ☆7 ドラゴン族:融合

ATK2500 DEF2000

「オッドアイズ」モンスター+Pモンスター

「オッドアイズ・ボルテックス・ドラゴン」の(1)(2)の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。(1):このカードが特殊召喚に成功した時、相手フィールドの表側攻撃表示モンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターを持ち主の手札に戻す。(2):このカード以外のモンスターの効果・魔法・罠カードが発動した時に発動できる。自分のエクストラデッキから表側表示のPモンスター1体をデッキに戻し、その発動を無効にし破壊する。

 

強欲で貪欲な壺:通常魔法

このカード名のカードは1ターンに1枚しか発動できない。(1):自分のデッキの上からカード10枚を裏側表示で除外して発動できる。自分はデッキから2枚ドローする。

 

 

咲夜LP8000→5500手札2枚

カーラLP7500手札2枚

 

「あたしのターン、ドロー!」

 

 一気に不利になった咲夜だが、その目には闘志があふれていた。

 

「悪いけど、この程度で痛い痛いって言ってられないのよ! 墓地のネオスペース・コールの効果発動! 墓地のこのカードを除外して、デッキからネオスを特殊召喚する! これはカードの発動じゃなくて、効果の発動だからボルテックス・ドラゴンじゃ防げない!」

「ん、その通りだね。抜け目ないなぁ、アクア・ネオスの時に捨ててたね?」

「そういうことです! 来て、ネオス!」

 

 虹色の光とともに、再びネオスが咲夜のフィールドに現れる。勇ましい声とともに、咲夜を守るようにカーラの前に立ちはだかった。

 

「E・HERO アナザー・ネオスを召喚し、バトル! ネオスでボルテックス・ドラゴンに攻撃!」

「攻撃力は互角、迎え撃って、ボルテックス・ドラゴン!」

 

 咲夜の右手が前へと振るわれる。応じるようにカーラもまた、右手を振るう。 

 瞬間。双方のモンスターが同時に動いた。

 胸の宝珠の前に手をかざし、虹色の光線を放つネオスに対して、ボルテックス・ドラゴンは羽ばたきで旋風を巻き起こし、口腔から紫電の息吹(ブレス)を放った。

 互いの攻撃が交錯。それぞれに威力を減少させながらも消えることなく直進。それぞれのターゲットを撃ち抜いた。

 

「くぁー! これで相討ちかぁ、だけど――――――」

 

 心底楽しんでいるといった表情を浮かべるカーラはちらりと咲夜のフィールドを見た。

 

「まだよ! アナザー・ネオスでダイレクトアタック!」

 

 カーラの視線の先、攻撃態勢をとっていたアナザー・ネオスが、咲夜の命令を受けて弾丸のように地を蹴り、カーラに肉薄した。

 狙いは宝珠。へらへら笑いを浮かべるだけで防御しようともしないカーラに向かって、固めた右拳の一撃を今にも振り下ろさんとした刹那――――――

 

「え!?」

 

 目をも開く咲夜の眼前で、上空から降り落ちた鉄槌のごとき光の一撃が、アナザー・ネオスを飲み込んだ。

 

 

ネオスペース・コール:通常魔法

このカードの発動後、自分は融合召喚でしかモンスターを特殊召喚できない。(1):デッキから「N」と名の付くモンスター1体を特殊召喚する。(2):墓地のこのカードをゲームから除外することで発動できる。デッキから「E・HERO ネオス」1体を特殊召喚する。

 

E・HERO アナザー・ネオス 光属性 ☆4 戦士族:デュアル

ATK1900 DEF1300

(1):このカードはフィールド・墓地に存在する限り、通常モンスターとして扱う。(2):フィールドの通常モンスター扱いのこのカードを通常召喚としてもう1度召喚できる。その場合このカードは効果モンスター扱いとなり以下の効果を得る。

●このカードはモンスターゾーンに存在する限り、カード名を「E・HERO ネオス」として扱う。

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