神々の戦争   作:tuki21

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第110話:支配統治の星光巨神

 咲夜(さくや)の攻撃宣言が下り、E・HERO(エレメンタルヒーロー) アナザー・ネオスへの攻撃命令が下された。

 アナザー・ネオスが地を踏みカーラに肉薄。固めた右拳を振りかぶった刹那、天空から振り下ろされた光の鉄槌がアナザー・ネオスを叩き潰した。

 

「何が……」

 

 起こったのか、視線を上に向ければ答えはあった。

 頭上、天空から聞こえるのは機械じみた駆動音。

 咲夜の視界に映ったのは巨大な影。

 まず目についたのは金色の玉座。玉座の底面には丸い、巨大な宝玉のようなものが嵌っており、おそらくそれが先程の一撃を下した原因だろう。宝玉から熱気を今もまだ放たれている。

 そして玉座と一体化するのは機械の身体。

 銀色の体躯。人間に当たる筋肉や装甲らしいものは薄く、人間の上半身の骨格を丸ごとメタリックシルバーの金属――人類未踏の代物だろう――に変えたような印象、あばらの隙間には玉座底面にはめ込まれているものを、バスケットボール大に縮めた宝玉。

 五指が握るのは染色を落とした鉄色の杖。先端には天球図のようなものがはめ込まれていた。

 これだけは頭蓋骨ではなく、人間のような顔。ただし機械の物なので、冷たさと恐ろしさが浮かび上がっている。

 

「紹介しよっか」

 

 頭上に気を取られていた咲夜の耳に、カーラの声が届いた。

 視線を向けるとカーラがにこにこと笑っていた。よく見れば二枚あった手札が今は一枚しかない。

 

()はね、支配統治の星光巨神クレイオス。お察しの通り、ティターン神族の一柱だよ」

『補足』

 

 頭上から降ってくる、人工音声じみた声音。これがクレイオスの声だと分かった。

 

『我が効果は相手ダイレクトアタック時に手札か墓地から特殊召喚される』

「その後、相手攻撃モンスターをゲームから除外するんだよ」

『補足。モンスターが除外された時、一体につき一枚、カーラにドローさせる』

「というわけで、一枚ドローだよ」

 

 ニコニコ笑いのまま、カードをドロー。咲夜は苦い表情を浮かべた。そんな咲夜を見下ろすように、クレイオスが言う。

 

『我が司るは星と星座、そして統治。星々の高みから見下ろす我が目を逃れること(あた)わず。

 心せよ我らが敵よ。すでに我の眼は貴様を捕えた。敗北まで恐怖せよ』

「そんなつもりは毛頭ないわ! バトルは終了。カードを一枚伏せて、ターンエンド!」

 

 

支配統治の星光巨神クレイオス 神属性 ☆10 幻獣神族:効果

ATK0 DEF4000

このカードはこのカードの効果で特殊召喚できる。このカードは3体のモンスターをリリースしてのみ通常召喚できる。このカード名の(3)の効果は1ターンに1度しか発動できない。(1):このカードは神属性、幻神獣族モンスターの効果以外のカード効果ではフィールドを離れず、コントロールも変更されない。(2):このカードが相手のカードの効果を受けた時、エンドフェイズにこのカードに対するそのカード効果を無効にする。(3):相手がモンスターの直接攻撃を宣言した場合に発動できる。手札、または墓地からこのカードを特殊召喚する。その後、相手攻撃モンスターをゲームから除外する。(4):フィールドのモンスターがゲームから除外された時に発動する。除外されたモンスター1体につき、カードを1枚ドローする。

 

咲夜LP5500手札1枚

ペンデュラムゾーン赤:なし青:なし

モンスターゾーン 

魔法・罠ゾーン 伏せ2枚

フィールドゾーン ネオスペース

 

カーラLP7500手札2枚

ペンデュラムゾーン赤:なし青:なし

モンスターゾーン 支配統治の星光巨神クレイオス(守備表示)

魔法・罠ゾーン 

フィールドゾーン なし

 

 

「あたしのターン、ドロー!」

 

 クレイオスの登場で、一気にペースはカーラのものになった。彼女はドローカードを一瞥で確認し、すぐさま行動に移った。

 

「んー。せっかくクレイトスがいても、この手札じゃあ面白くないや。ということで、ごめんねクレイオス。アドバンスドロー発動! クレイオスをリリースして、二枚ドロー!」

「ッ!」

 

 自身の効果とはいえ、場に出した神を早々に破棄するカーラ。神によっては冒涜として怒り狂いそうなものだが、クレイオスは『生贄了承。良き戦いを』と受け入れ、光の粒子となって消えていった。

 

「いいねえ、来てるね流れ! 手札から壺の中の魔術書発動! さ、咲夜ちゃんも三枚ドローどうぞ。一方的な展開じゃあギャラリー(あたし)も満足しないしね♪」

 

 咲夜は無言。険しい表情でカードをドロー。次に来るだろうカーラのアクションに対して身構えた。

 

「じゃ、行こうか! スケール1のEM(エンタメイト)スマイル・マジシャンと、スケール8のEMカード・ガードナーを、Pゾーンにセッティング!」

 

 カーラの両隣りに、再びP召喚のための光の柱が屹立する。モンスターの足元にある数字は1と8。つまりカーラはレベル1から7モンスターを同時に召喚可能。

 さらに彼女のEXデッキにはオッドアイズ・ファントム・ドラゴンとオッドアイズ・ペルソナ・ドラゴンが存在し、増えた手札にもPモンスターがいるだろう。

 壁となるモンスターがいない咲夜にとって危険な状況だ。

 

「レディースアーンド・ジェントルマン! 融合召喚の次はこちらを御覧じろ! ペンデュラム召喚! EXデッキから復帰戦だ、オッドアイズ・ファントム・ドラゴン、ペルソナ・ドラゴン! そして手札から出演さ、EMオッドアイズ・シンクロン、二体目のEMゴールド・ファング!」

 

 カーラの頭上から異界へのゲートが開く。そこから現れたのは四つの光。

 光は地上に到達後、モンスターの姿を現した。

 オッドアイズ・ファントム・ドラゴン、オッドアイズ・ペルソナ・ドラゴン、二体目のEMゴールド・ファング、そして新顔の丸まっこいモンスター。

 一頭身の本体に羽根のは会えたシルクハット、左右で違う大きな瞳の色、片方は歯車のような形をした片眼鏡(モノクル)

 畳みかけるように、カーラが叫ぶ。

 

「お次はこれさ! レベル5のオッドアイズ・ペルソナ・ドラゴンに、レベル2のEMオッドアイズ・シンクロンをチューニング!」

 

 右手を天へと振り上げる。それを合図にカーラの場にいた二体のモンスターが宙を舞う。

 オッドアイズ・シンクロンが二つの緑の光の輪となり、その輪を潜ったペルソナ・ドラゴンが五つの白い光星となる。

 光星を、一筋の光の道が貫いた。

 

「さぁご覧あれ! これにございますは世にも珍しい二色(ふたいろ)の眼を持つ二頭の竜! これらを響き合わせ、誕生させますは爆炎生み出す炎熱竜! この希少性を語るは無粋! 目にもの寄ってみよ! シンクロ召喚、オッドアイズ・メテオバースト・ドラゴン!」

 

 光の向こうから炎を纏った咆哮が轟いた。

 現れたのはやはりオッドアイズ・ドラゴンを思わせるフォルムのドラゴン。

 揺らめく炎のような形を持った外殻に赤い体躯。鋭い双眸。ただし、その効果は補助的だ。

 

「メテオバースト・ドラゴンの効果発動! Pゾーンのスマイル・マジシャンを特殊召喚!」

 

 パチン。カーラが指を鳴らすと、それを合図に光の柱を抜け出し、スマイル・マジシャンがフィールドに降り立つ。

 シルクハットの栗色の髪の男性。マジシャンじみた衣装を身に纏い、衣装の裾をマントのように翻した。

 

「スマイル・マジシャンのモンスター効果で、デッキからスマイル・ワールドを手札に加えて、発動!」

 

 カーラがカードをデュエルディスクにセットした瞬間、笑顔のシールのような物体がカーラと咲夜、二人のフィールドに大量の出現した。

 

「な、なにこれ?」

 

 立体映像(ソリットビジョン)としてもあんまりな演出に、咲夜が困惑の声を上げた。

 

「そんな顔しちゃだめだよ咲夜ちゃん。スマイル、スマイル」

 

 そう言って、カーラは自分の両人差し指で口の端を吊り上げて笑みの形を作った。

 本人は笑顔のつもりかもしれないが、どことなく歪なのは、やはりカーラ本心からの行動ではないからだろうか。少なくとも、咲夜の知っているカーラはこのように相手に笑顔を強要したりはしなかった。

 

「ま、いーや。とりあえずスマイル・マジシャンの効果発動で、四枚ドロー!」

 

 

「四枚!?」

 

 破格なドローを見て、観戦していたエーデルワイスが驚愕の声を上げた。

 

「P召喚から繋がる展開、Pモンスター、その他諸々の使用したカード、それらの消費を、一気に取り返した。これでアテナの契約者はさらに厳しい。壁がいないならなおさら、な」

「咲夜さん……」

 

 祈るように両手を握り締めるエーデルワイス。少女の色が届いたわけでもないだろうが、咲夜はエーデルワイスに向かって微笑んだ。

 

「咲夜さん?」

「そんな顔しないで。あたしのライフはまだ0じゃない。まだ負けてないんだから、心配顔はしなくていいわ」

 

 気丈な笑顔に胸を突かれる思いがする。祈るのをやめ、見届けようと思った。

 

 

「格好いいことを言ってくれるじゃないの。だけどまだあたしは通常召喚を行っていない! スマイル・マジシャンをリリースして、オッドアイズ・アドバンス・ドラゴンをアドバンス召喚!」

 

 スマイル・マジシャンの姿が光の粒子となって消え、代わりに現れたのはさらに巨大な体躯となったオッドアイズ・ドラゴンだろうか。

 大きくそびえるように生えた翼。鎧のような外殻、鋭い双眸。全てがオッドアイズ・ドラゴンの上位互換と言わんばかりだ。

 

「バトルと行こうか! ゴールド・ファングでダイレクトアタック!」

 

 パチン、カーラの指が鳴らされ、それを合図にゴールド・ファングが狼よろしく咲夜に向かって飛び掛かった。

 

「宝珠を守れ、咲夜!」

「言われるまでもないわ!」

 

 その名の通り、牙を剥き出しに飛び掛かってくる狼に対して、咲夜はデュエルディスクを装備した左手を盾代わりに構えた。

 ガキンという音がしたが、牙が止まる。痛みに顔をしかめながら、咲夜はフルスイングするように左手を振るう。

 勢いでデュエルディスクを噛んでいた牙が離れ、ゴールド・ファングが飛ぶ。

 

「くぅ……!」

 

 大きく左手を振るったためか、咲夜の体勢がかすかに流れ、宝珠の光輝く胸元が開いた。カーラはそのタイミングを見逃さなかった。

 

「宝珠頂き! オッドアイズ・ファントム・ドラゴンでダイレクトアタック!」

 

 命令を受けて。オッドアイズ・ファントム・ドラゴンが地を駆ける。

 弾丸のごとき速度で跳躍して距離を殺し、咲夜に肉薄。エーデルワイスはその様を見て声を上げそうになったが寸でで堪えた。咲夜は心配しなくていいといった。ならば信じるだけだ。

 

「このくらい、想定済みよ! リバースカードオープン! パワー・ウォール!」

 

 咲夜の伏せカードの一枚が翻ると同時、彼女のデッキトップから六枚のカードが飛び出した。

 内訳はフェイバリット・ヒーロー、E・HERO ブレイズマン、N・エアハミング・バード、ダブルヒーローアタック、沼地の魔神王、E・HERO ソリッドマン。

 飛び出したカードは背中をカーラ側に見せながら空中で停止。直後、肉薄してきたオッドアイズ・ファントム・ドラゴンが即席で作られたカードの壁にぶち当たる。

 ガンと大きな音を立てて、ファントム・ドラゴンの巨体は弾かれた。

 

「スマイル・ワールドを発動してくれたから、オッドアイズ・ファントム・ドラゴンの攻撃力は2500を超えてくれた。おかげでパワー・ウォールで墓地を肥やせるカードも増えたわ。こういう時、笑顔になるものかしらね?」

「つまんないよー。それにパワー・ウォールで防げる戦闘ダメージは一度だけ。あたしのモンスターはまだ残ってるよ! オッドアイズ・アドバンス・ドラゴンでダイレクトアタック!」

「いいえ! パワー・ウォールで落ちたカードこそが、あたしの天命だったのよ! リバースカードオープン! 死魂融合(ネクロ・フュージョン)! 墓地のネオスと沼地の魔神王を除外融合!」

「えぇ!?」

 

 驚愕に目を見開くカーラの眼前で、咲夜の頭上の空間が歪んで渦を作った。

 渦に飛び込む二体のモンスター。そして渦から現れる影が一つ。

 

「異星の戦士よ、愛憎深き魔嬢と一つとなり、闇を滑る光の使者となりて現出せよ! 光は闇を纏い、魔を穿つ! 来て、E・HERO ネオス・クルーガー!」

 

 現れたのはネオスの新たな姿。

 ネオスを素体にユベルの要素を足したような姿。

 血管のような赤い線が走る、黒の鎧、悪魔を思わせる鎧。顔は大きな翼の生えたマスクをしているので分からない。

 禍々しささえ感じさせるはずの外見だが、そこに不吉な印象は一切ない。

 

「ネオス・クルーガーもネオスを素材にした融合モンスター。よってネオスペースの効果の適用内だから、攻撃力は3500!」

「あー、これじゃああたしのモンスターじゃ倒せないね。いや、さすがだよ咲夜ちゃん。パワー・ウォールで墓地を肥やしたと同時に、こうして逆転のための布石を打っていたわけだね。運を天に任せたの?」

「かもしれないです。だけどこの方が()()()()()()でしょう?」

「アハ」

 

 楽しそうにカーラが笑う。まさにこれこそが()()()()()()だと言わんばかりに。

 

「まぁ仕方ないかぁ。咲夜ちゃんの悲鳴を聞けないのは残念だけど、欲張ってもいけないからね。カードを二枚伏せて、ターンエンド」

 

 

アドバンスドロー:通常魔法

自分フィールド上に表側表示で存在するレベル8以上のモンスター1体をリリースして発動できる。デッキからカードを2枚ドローする。

 

壺の中の魔術書:通常魔法

「壺の中の魔術書」は1ターンに1枚しか発動できない。(1):互いのプレイヤーはカードを3枚ドローする。

 

EMスマイル・マジシャン 光属性 ☆8 魔法使い族:ペンデュラム

ATK2500 DEF2000

Pスケール1

P効果

このカード名のP効果は1ターンに1度しか使用できない。(1):元々の攻撃力より高い攻撃力を持つ自分フィールドのモンスターが戦闘・効果で破壊された場合に発動できる。Pゾーンのこのカードを特殊召喚する。

モンスター効果

このカード名の(1)(2)のモンスター効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。(1):このカードが召喚・特殊召喚に成功した場合に発動できる。デッキから「スマイル」魔法・罠カード1枚を手札に加える。(2):自分フィールドのモンスターが「EM」モンスター、「魔術師」Pモンスター、「オッドアイズ」モンスターのみで、このカードの攻撃力が元々の攻撃力より高い場合に発動できる。元々の攻撃力より高い攻撃力を持つ自分フィールドのモンスターの数だけ自分はデッキからドローする。このターン、自分はモンスターを特殊召喚できない。

 

EMカード・ガードナー 地属性 ☆3 岩石族:ペンデュラム

ATK1000 DEF1000

Pスケール8

P効果

(1):1ターンに1度、自分フィールドの表側守備表示モンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターの守備力は、自分フィールドの全ての表側守備表示モンスターの元々の守備力を合計した数値になる。

モンスター効果

(1):このカードの守備力は、このカード以外の自分フィールドの「EM」モンスターの元々の守備力の合計分アップする。

 

EMオッドアイズ・シンクロン 闇属性 ☆2 魔法使い族:ペンデュラムチューナー

ATK200 DEF600

EXデッキから特殊召喚したこのカードは、S召喚に使用された場合に除外される。(1):このカードが召喚に成功した時、自分の墓地のレベル3以下の、「EM」モンスターまたは「オッドアイズ」モンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターを特殊召喚する。この効果で特殊召喚したモンスターの効果は無効化される。(2):1ターンに1度、自分のPゾーンのカード1枚を対象として発動できる。そのカードを効果を無効にして特殊召喚し、そのカードとこのカードのみを素材としてSモンスター1体をS召喚する。

 

オッドアイズ・メテオバースト・ドラゴン 炎属性 ☆7 ドラゴン族:シンクロ

ATK2500 DEF2000

チューナー+チューナー以外のモンスター1体以上

「オッドアイズ・メテオバースト・ドラゴン」の①の効果は1ターンに1度しか使用できない。(1):このカードが特殊召喚に成功した時、自分のPゾーンのカード1枚を対象として発動できる。そのカードを特殊召喚する。このターン、このカードは攻撃できない。(2):このカードがモンスターゾーンに存在する限り、相手はバトルフェイズ中にモンスターの効果を発動できない。

 

スマイル・ワールド:通常魔法

(1):フィールドの全てのモンスターの攻撃力はターン終了時まで、フィールドのモンスターの数×100アップする。

 

オッドアイズ・アドバンス・ドラゴン 闇属性 ☆8 ドラゴン族:効果

ATK3000 DEF2500

このカードはレベル5以上のモンスター1体をリリースしてアドバンス召喚できる。このカード名の(2)の効果は1ターンに1度しか使用できない。(1):このカードがアドバンス召喚に成功した場合に発動できる。相手フィールドのモンスター1体を選んで破壊し、そのモンスターの元々の攻撃力分のダメージを相手に与える。(2):このカードが戦闘でモンスターを破壊した時に発動できる。自分の手札・墓地から「オッドアイズ・アドバンス・ドラゴン」以外のレベル5以上のモンスター1体を選んで守備表示で特殊召喚する。

 

パワー・ウォール:通常罠

(1):相手モンスターの攻撃によって自分が戦闘ダメージを受けるダメージ計算時に発動できる。その戦闘で発生する自分への戦闘ダメージが0になるように500ダメージにつき1枚、自分のデッキの上からカードを墓地へ送る。

 

死魂融合:通常罠

(1):自分の墓地から、融合モンスターカードによって決められた融合素材モンスターを裏側表示で除外し、その融合モンスター1体をEXデッキから融合召喚する。この効果で特殊召喚したモンスターはこのターン攻撃できない。

 

E・HERO ネオス・クルーガー 光属性 ☆9 魔法使い族:融合

ATK3000 DEF2500

「E・HERO ネオス」+「ユベル」

このカードは融合召喚でしか特殊召喚できない。このカード名の(2)の効果は1ターンに1度しか使用できない。(1):このカードが相手モンスターと戦闘を行うダメージ計算前に発動できる。その相手モンスターの攻撃力分のダメージを相手に与える。(2):表側表示のこのカードが相手の効果でフィールドから離れた場合、または戦闘で破壊された場合に発動できる。手札・デッキから「ネオス・ワイズマン」1体を召喚条件を無視して特殊召喚する。

 

 

E・HERO ネオス・クルーガー攻撃力3000→3500

 

 

咲夜LP5500→3300手札4枚

カーラLP7500手札3枚

 

 

「あたしのターン、ドロー!」

 

 ネオス・クルーガーの召喚によって、咲夜のライフは首の皮一枚繋がった。

 首の皮一枚。まさにそうだ。4000を切ったライフなど、カーラのデッキからすれば風前の灯火も同然。

 

「だけど、壺の中の魔術書のおかげで、あたしもいいカードが手札に来たわ。戦士の生還を発動! 墓地のE・HERO ソリッドマンを手札に加えて、召喚!

 そしてソリッドマンの効果発動! 手札からE・HERO エアーマンを特殊召喚!」

 

 咲夜のフィールドに新たに現れる二体のHEROモンスター。

 黒のボディスーツに白銀色のバトルアーマーを身に纏ったヒーロー。鉄鋼部分は巨大で、両腕に装備した盾という印象を受ける。

 光輝く新たなヒーロー、即ちソリッドマン。

 そのソリッドマンに率いられ現れるファンを回転させる翼持つヒーローエアーマン。

 

「エアーマンの効果発動!」

 

 ここで選択だ。今回はエアーマン以外の二体のHEROモンスターがいるので、サーチ以外もカーラの伏せカード二枚を破壊できる。

 カーラもまた、それを察していたのか、すかさずデュエルディスクのボタンを押した。

 

「じゃ、咲夜ちゃんの選択が完了する前に、伏せていたダメージ・ダイエットを発動♪ これでアタシがこのターンに受けるダメージは全部半分ね」

「だけど、もう一枚は発動しないみたいね。エアーマンの効果、あたしはダメージ・ダイエットを含んだカーラさんの魔法、罠カード二枚を破壊する!」

 

 エアーマンのウィングパーツのフィンが回転を始め、そこから放たれた竜巻が切り裂きの刃となってカーラのダメージ・ダイエットと、伏せられたままのEMリバイバルを破壊した。

 

「これで邪魔はなし。融合発動! 場のソリッドマンとエーマンで融合召喚!

 嵐のヒーロー! 吹き荒れ、敵を切り裂く刃となれ! 融合召喚! 疾風登場、E・HERO Great TORNADO(グレイトトルネイド)!」

 

 瞬間、咲夜のフィールドに竜巻が巻き起こり、その中から現れたのは黒いマントを羽織り、緑と黄色に、黒のアクセントを加えたストライプカラーの風のHERO。

 

「Great TORNADOの効果発動! カーラさんのモンスターの攻守を半減させる!」

 

 咲夜の叫びに呼応するようにGreat TORNADOが両腕を天高く振り上げた。

 すると次の瞬間、凄まじい突風がカーラのフィールドを駆け抜ける。

 暴風の鞭を喰らったモンスターたちが叩きつけられるように地面にへばりついた。

 

「さらにソリッドマンの効果を発動するわ。墓地のE・HERO ブレイズマンを守備表示で特殊召喚し、ブレイズマンの効果も発動して、デッキから二枚目融合のカードを手札に加えるわ。

 そして融合発動! 場のブレイズマンとGreat TORNADO、そして手札のオネスティ・ネオスを融合召喚!」

 

 

「どうしてオネスティ・ネオスを素材にしたのでしょうか? 手札に握っていれば牽制になったと思うのですが……」

 

 首を傾げ、疑問の声を上げるエーデルワイス。返答は隣に立つルーから来た。

 

「牽制にはなるが、相手は乗ってこないからな。それにメテオバースト・ドラゴンがいる限りオネスティ・ネオスは使えない。ここで倒しても復活は容易だ。だったらここで融合素材にするのは悪い選択ではない。それに、これで召喚されるモンスターがクレイオスの契約者の陣形を確実に殲滅できると踏んでいるなら、手札も心もとない現状、オネスティ・ネオスを切り捨てる選択は十分あり得る」

 

 

 そんなエーデルワイスとルーの眼前で、融合が完成する。咲夜は現れるモンスターの名を高らかに叫んだ。

 

「三つの魂が今一つとなり、現れるは三位一体の尊き力! 融合召喚、現れよ、V・HERO(ヴィジョンヒーロー) トリニティ!」

 

 現れる新たなモンスター。

 真紅に染め上げられた、肩が肥大化しているマッシブなデザインのバトルアーマー、宝珠の嵌ったヘルメット、自信満々に両手を腰に当てて、僅かに露出している口元には不敵な笑みを浮かべていた。

 強敵を打倒し、困難に立ち向かいながらなお笑みを失わないタフガイを思わせる。

 

「トリニティの攻撃力は、自身の効果によって倍になり、さらに三回攻撃が可能!」

 

 攻撃力5000。ステータスが半減しているカーラのモンスターでは、束になっても出せない数値だ。

 

「バトル! トリニティでオッドアイズ・メテオバースト・ドラゴンを攻撃!」

 

 攻撃宣言が下り、トリニティが地を蹴って跳躍。頂点から一気に急降下し、右足の蹴りを放つ。

 ()()。HEROの一撃はオッドアイズ・メテオバースト・ドラゴンの背中に直撃。衝撃が背中から内部に突き抜け、腹部から爆発する。

 ドラゴンの断末魔の叫びが轟き、消えていく。

 

「かは……!」

 

 ダメージのフィードバックがカーラを襲い、彼女の身体が前のめりに折れ曲がった。

 

「続いて、ゴールド・ファングに攻撃!」

 

 オッドアイズ・メテオバースト・ドラゴンを踏み潰した地点から、トリニティが蹴りに使った右足を軸に旋回。アーム部分のパーツが展開し、ブレードとなってゴールド・ファングの首を切断した。

 

「ぎ……!」

 

 知り合いの苦悶の表情を見て、咲夜の心がかすかに軋む。

 だが痛みを振り払う。ここで攻撃の手を止めては、それこそカーラを永遠に元に戻すことができない。

 ()()()()()()()()()。覚悟を背負い、痛みを受け入れろ。

 

「さらにトリニティでオッドアイズ・ファントム・ドラゴンを攻撃!」

 

 HEROの胸の宝珠が赤く光り輝き、一筋の光線が放たれた。

 光線はまっすぐに突き進み、オッドアイズ・ファントム・ドラゴンの額に直撃。ドラゴンを爆散させた。

 

「ぐ……」

 

 たてつづきの大ダメージに、ついにカーラが膝を付いた。

 今。ここで、ネオス・クルーガーでオッドアイズ・アドバンス・ドラゴンを攻撃すればカーラを追いつめられる。

 だからそうした。

 

「ネオス・クルーガーでオッドアイズ・アドバンス・ドラゴンを攻撃!」

 

 ネオス・クルーガーが頭部の翼を大きく広げた。

 両手に黒い光を凝縮させる。それが放たれる時が攻撃の時。

 次の瞬間――――――()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「え!?」

 

 先に驚愕の声を発したのはエーデルワイスだった。彼女は慌ててカーラのフィールドに目を向ける。

 伏せカードはなく、モンスターたちはなす術なく倒されるだけだったはず。

 なのにいつの間にか、カーラのフィールドには再びクレイオスが鎮座していた。

 

「どうして……」

「お嬢ちゃんと、咲夜ちゃんの疑問に答えよっか」

 

 ニコニコ顔のカーラ。膝を付いたことで服についた埃を払う仕草を見るに、先程見せた隙もこの演出を盛り上げるための演技だったのか。

 

「まぁ、簡単なことだよ。あたしは咲夜ちゃんの攻撃に合わせて、手札からこの罠カード、クレイオスの采配を発動したの。このカードはあたしのモンスターが相手よりも少ない場合、手札から発動できるの。そして効果は手札か墓地からクレイオスを召喚情感を無視して特殊召喚して、その後クレイオス以外の全てのモンスターをゲームから除外する。把握したかな?」

『返答不要。結末のみがここにある。

 さらに捕捉。カーラは三枚ドローだ』

 

 機械音性の様なクレイオスの声が冷徹に響く。攻め手を一気に失った咲夜に術はない。

 

「……ネオス・クルーガーの効果で、ネオス・ワイズマンを守備表示で特殊召喚するわ。カードを一枚伏せて、ターンエンド」

 

 

戦士の生還:通常魔法

(1):自分の墓地の戦士族モンスター1体を対象として発動できる。その戦士族モンスターを手札に加える。

 

E・HERO ソリッドマン 地属性 ☆4 戦士族:効果

ATK1300 DEF1100

このカード名の(2)の効果は1ターンに1度しか使用できない。(1):このカードが召喚に成功した時に発動できる。手札からレベル4以下の「HERO」モンスター1体を特殊召喚する。(2):このカードが魔法カードの効果でモンスターゾーンから墓地へ送られた場合、「E・HERO ソリッドマン」以外の自分の墓地の「HERO」モンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターを守備表示で特殊召喚する。

 

ダメージ・ダイエット:通常罠

このターン自分が受ける全てのダメージは半分になる。また、墓地に存在するこのカードをゲームから除外する事で、そのターン自分が受ける効果ダメージは半分になる。

 

融合:通常魔法

(1):自分の手札・フィールドから、融合モンスターカードによって決められた融合素材モンスターを墓地へ送り、その融合モンスター1体をEXデッキから融合召喚する。

 

E・HERO Great TORNADO 風属性 ☆8 戦士族:融合

ATK2800 DEF2200

「E・HERO」モンスター+風属性モンスター

このカードは融合召喚でしか特殊召喚できない。(1):このカードが融合召喚に成功した場合に発動する。相手フィールドの全てのモンスターの攻撃力・守備力は半分になる。

 

E・HERO ブレイズマン 炎属性 ☆4 戦士族:効果

ATK1200 DEF1800

「E・HERO ブレイズマン」の(1)(2)の効果は1ターンに1度、いずれか1つしか使用できない。(1):このカードが召喚・特殊召喚に成功した場合に発動できる。デッキから「融合」1枚を手札に加える。(2):自分メインフェイズに発動できる。デッキから「E・HERO ブレイズマン」以外の「E・HERO」モンスター1体を墓地へ送る。このカードはターン終了時まで、この効果で墓地へ送ったモンスターと同じ属性・攻撃力・守備力になる。この効果の発動後、ターン終了時まで自分は融合モンスターしか特殊召喚できない。

 

V・HERO トリニティ 闇属性 ☆8 戦士族:融合

ATK2500 DEF2000

「HERO」モンスター×3

(1):このカードは直接攻撃できない。(2):このカードが融合召喚に成功したターン、このカードの攻撃力は元々の攻撃力の倍になる。(3):融合召喚したこのカードは1度のバトルフェイズ中に3回攻撃できる。

 

クレイオスの采配:通常罠

自分フィールドのモンスターの数が相手フィールドのモンスターよりも少ない場合、このカードは手札から発動できる。(1)自分の手札、墓地から「支配統治の星光巨神クレイオス」1体を選んで召喚条件を無視して特殊召喚する。その後、「支配統治の星光巨神クレイオス」以外のモンスターをゲームから除外する。

 

ネオス・ワイズマン 光属性 ☆10 魔法使い族:効果

ATK3000 DEF3000

このカードは通常召喚できない。自分のモンスターゾーンの表側表示の、「E・HERO ネオス」と「ユベル」を1体ずつ墓地へ送った場合のみ特殊召喚できる。(1):フィールドのこのカードは効果では破壊されない。(2):このカードが相手モンスターと戦闘を行ったダメージステップ終了時に発動する。その相手モンスターの攻撃力分のダメージを相手に与える。その相手モンスターの守備力分だけ自分のLPを回復する。

 

 

咲夜LP3300手札0枚

カーラLP7500→5625→3625→1750手札5枚

 

 

 再び現れるティターン神族の姿に、しかし咲夜は奮い立った。

 やはりこの巨神を撃破しなければ、カーラは正気に戻らず、ティターン神族によって蹂躙される人々は増えるだろう。

 思い出すは不利な状況でもなお不敵に笑う少年の姿。

 あの白髪の少年なら、こんな状況で膝を屈しない。

 だから咲夜も心を燃やす。口のに笑みを浮かべ、言い放った。

 

「上等じゃない。やってやるわ!」


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