神々の戦争   作:tuki21

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第117話:HERO連撃

 目の前の少年は得体が知れない。咲夜(さくや)平月(ひらつき)と相対しながらそう思った。

 すでに彼と戦ったことのある岡崎和輝(おかざきかずき)の印象も、あまり自分と違いはないだろう。

 何しろ、こうして目の前に立って、デュエルまでしているのに相手の内面が何も伺えない。

 何を思い、どのような思考で戦術を組み立て、自分の有利不利を判断し、次にどのような手を打つか。反撃か、防戦か。それさえも見えてこない。

 底の無い(うろ)を覗いている気分にさせられる。

 

(余計なことは考えない方がいいぞ、咲夜)

 

 傍らで、半透明の姿をしたアテナが言ってくる。

 その通りだ。今はこの決闘(デュエル)に勝つことが先決。

 できればこの少年をこの場で神々の戦争失格にしたい。

 この場から逃し、解き放つには、目の前の少年も、這いよる混沌も、危険すぎる。

 

 

咲夜LP8000手札2枚

ペンデュラムゾーン赤:なし青:なし

モンスターゾーン E・HERO ネオス(攻撃表示)

魔法・罠ゾーン 伏せ1枚

フィールドゾーン なし

 

平月LP5700手札2枚

ペンデュラムゾーン赤:なし青:なし

モンスターゾーン 黄金卿エルドリッチ(攻撃表示)、

魔法・罠ゾーン 呪われしエルドランド、伏せ3枚(永久に輝けし黄金卿含む)

フィールドゾーン なし

 

 

「あたしのターン!」

 

 ターンは咲夜に移り、彼女はドローフェイズを消化し、フィールドの状況を一瞥した。

 自身の効果によって強化されたエルドリッチは返り討ちにした。伏せカードは気になるが、今は一気に攻めるべきタイミングだ。

 そう思い、フェイズを切り替えて攻勢に移ろうとした咲夜に待ったをかけるように、平月に手が上がった。

 

「貴方のスタンバイフェイズ、伏せていた黄金郷のコンキスタドールを発動します」

 

 平月が場に伏せていた三枚のカードのうち、一枚が翻る。次の瞬間、彼のフィールドに現れたのは、黄金の鎧を身に着けた黒馬に跨った、死霊の騎士。

 右手で手綱を握り、左手で掴んだ片手剣を天に向かって力強く振り上げて、進撃の意を声高々に放っている。

 

「知っているでしょうが、コンキスタドールは通常モンスター扱いで、守備表示でぼくのフィールドに現れます。

 さらにぼくのフィールドにエルドリッチが存在するため、追加効果でE・HERO(エレメンタルヒーロー) ネオスを破壊しましょう」

 

 パチン。平月が右の指を鳴らすと、咆哮を上げたコンキスタドールが馬を駆り、手にした剣でネオスの首を跳ねた。

 

「ッ! まぁ、このくらいはするわよね。改めて、スタンバイフェイズを終えて、伏せていた戦線復帰を発動! 今破壊されたネオスを守備表示で特殊召喚するわ」

 

 この程度の妨害は予測積みだ。何しろ三枚も伏せカードがあるのだから。だからこれはどうだと、咲夜は伏せカードを翻す。

 

「これは止めておきましょうか。リバーストラップ発動。永久に輝けし黄金郷。コンキスタドールをリリースして戦線復帰を無効にします」

 

 二枚目の妨害カード。だが永久に輝けし黄金郷が伏せてあることは分かっていた。目に見える妨害をここで使わせられたことは大きい。

 おかげで次の行動ができる。

 

「これならどう!? O-オーバーソウル発動! 墓地のネオスを復活させるわ!」

 

 今度は妨害はない。平月は微笑を浮かべたまま手振りで「どうぞ」と咲夜の行動を促す。

 デュエルディスクが正常に作動し、立体映像(ソリットビジョン)がネオスの姿を露わにする。

 だがネオスのステータスではエルドリッチを破壊できない。そして咲夜の手札は一枚。融合を主体とする彼女のデッキで、ここからの展開は難しいのではないか? 平月のそんな考えに反逆するように、咲夜は残った手札をデュエルディスクにセットした。

 

「ネオス・ギフトを発動して、二枚ドロー! さらにコール・ネオスペーシアン発動! デッキからN(ネオスペーシアン)・グラン・モールとフレア・スカラベを特殊召喚!」

 

 ドローブーストで引いたカードを一瞥で確認し、すぐさま行動に移す。現れたのは肩にドリルのような装甲パーツを背負ったモグラ――グラン・モール――と、人間のような端正な顔立ちに二足歩行を行う黒い体躯のスカラベ――フレア・スカラベ――が共に戦う戦士としてネオスの両脇に現れた。

 咲夜の右手が力強く、天高く掲げられた。

 

「ネオスとグラン・モール、そしてフレア・スカラベでコンタクト融合!」

 

 咲夜の頭上の空間が渦を巻いて歪みだす。その歪みに、彼女の三体のモンスターが飛び込み、一つになる。

 

「異星の戦士よ、大地と炎の力をその身に受けて、マグマのごとく雄々しく、力強く燃え突き進め! トリプルコンタクト融合、E・HERO マグマ・ネオス!」

 

 渦の中心部から現れる新たなヒーロー。

 全体的にマッシブになったネオスを素体に、グリーンとシルバーの装甲を装着、増強させ、背中にはウィングパーツ。頭部はフレア・スカラベを思わせる、甲虫の黒い頭。グラン・モールを彷彿とさせる、黒い鉤爪が揃った右手に、煮え滾るマグマを彷彿とさせる、左腕。

 攻撃力は3000。元々の攻撃力でもエルドリッチを倒せるが、さらにマグマ・ネオスは自身の効果によって攻撃力が上昇している。

 

「バトルよ。マグマ・ネオスでエルドリッチを攻撃!」

 

 咲夜の攻撃宣言を聞き受け、マグマ・ネオスは勇ましい咆哮と共に両腕にマグマの熱量を宿す。

 炎の両腕を用いた近接戦闘による一撃。だがそこに、平月が動いた。

 

「その攻撃、通すのもうまくありませんね。リバースカードオープン! 黄金卿のガーディアンを発動! その効果で、マグマ・ネオスの攻撃力を0にします!」

 

 平月の伏せカードが翻り、彼のフィールドにトラップモンスターが新たに現れる。

 黄金の身体に白銀の体毛、生物というよりも、鉱石のような体は所々に棘のような突起が生えており、爪牙は鋭く、両目は攻撃性の高い赤い色。

 黄金のモンスターの咆哮によって、マグマ・ネオスの動きが止まる。その無防備なヒーローに不意打ちをかまそうと、黄金郷のガーディアンが地を蹴る。

 

「させない! チェーンして手札からコンタクト・アウトを発動! マグマ・ネオスをEX(エクストラ)デッキに戻して、素材となった三体のモンスターをデッキから特殊召喚するわ」

 

 マグマ・ネオスの身体が光に包まれ、三つに分かれる。光が晴れた時にはマグマ・ネオスの融合素材三体。ただし、グラン・モール以外の二体は守備表示だ。

 

「バトルは続いている。グラン・モールでエルドリッチを攻撃!」

 

 咲夜の攻撃宣言が下り、グラン・モールが自身をドリルに変えて突撃。結果として二体のモンスターは持ち主の手札に戻った。

 

「バトル終了。メインフェイズ2に入って、壺の中の魔術書を発動。三枚ドローするわ」

「おっと、ぼくも三枚ドローです。ありがとうございます」

 

 笑顔での世辞には何も言わない。神経を逆なでされるだけだ。

 

「カードを一枚セットして、ターンエンド」

「ならあなたのエンドフェイズに、墓地に送られた黄金郷のコンキスタドールの効果を発動しましょう。デッキから赤き血染めのエルドリクシルをセットします」

 

 

黄金郷のコンキスタドール:永続罠

このカード名の(1)(2)の効果は1ターンに1度、いずれか1つしか使用できない。(1):このカードは発動後、通常モンスター(アンデット族・光・星5・攻500/守1800)となり、モンスターゾーンに特殊召喚する。このカードは罠カードとしても扱う。自分フィールドに「黄金卿エルドリッチ」が存在する場合、さらにフィールドの表側表示のカード1枚を選んで破壊できる。(2):自分・相手のエンドフェイズに墓地のこのカードを除外して発動できる。デッキから「エルドリクシル」魔法・罠カード1枚を選んで自分フィールドにセットする。

 

戦線復帰:通常罠

(1):自分の墓地のモンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターを守備表示で特殊召喚する。

 

永久に輝けし黄金卿:カウンター罠

このカード名のカードは1ターンに1枚しか発動できない。①:自分フィールドに「エルドリッチ」モンスターが存在し、モンスターの効果・魔法・罠カードが発動した時、自分フィールドのアンデット族モンスター1体をリリースして発動できる。その発動を無効にし破壊する。

 

O-オーバーソウル:通常魔法

(1):自分の墓地の「E・HERO」通常モンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターを特殊召喚する。

 

ネオス・ギフト:通常魔法

(1):自分フィールドに「E・HERO ネオス」が存在する時にのみ発動できる。カードを2枚ドローする。

 

コール・ネオスペーシアン:通常魔法

「コール・ネオスペーシアン」は1ターンに1枚しか発動できない。(1):自分フィールドに「E・HERO ネオス」または「E・HERO ネオス」を融合素材としたモンスターが存在する時に発動できる。デッキから「N」モンスター2種類を選択し、特殊召喚する。

 

N・グラン・モール 地属性 ☆3 岩石族:効果

ATK900 DEF300

(1):このカードが相手モンスターと戦闘を行うダメージステップ開始時に発動できる。その相手モンスターとこのカードを持ち主の手札に戻す。

 

N・フレア・スカラベ 炎属性 ☆3 昆虫族:効果

ATK500 DEF500

このカードの攻撃力は、相手フィールド上の魔法・罠カードの数×400ポイントアップする。

 

E・HERO マグマ・ネオス 炎属性 ☆9 戦士族:融合

ATK3000 DEF2500

「E・HERO ネオス」+「N・フレア・スカラベ」+「N・グラン・モール」

自分フィールド上の上記のカードをデッキに戻した場合のみ、エクストラデッキから特殊召喚できる(「融合」魔法カードは必要としない)。このカードの攻撃力は、フィールド上のカードの数×400ポイントアップする。また、エンドフェイズ時、このカードはエクストラデッキに戻る。この効果によってこのカードがエクストラデッキに戻った時、フィールド上のカードを全て持ち主の手札に戻す。

 

黄金郷のガーディアン:永続罠

このカード名の(1)(2)の効果は1ターンに1度、いずれか1つしか使用できない。(1):このカードは発動後、通常モンスター(アンデット族・光・星8・攻800/守2500)となり、モンスターゾーンに特殊召喚する。このカードは罠カードとしても扱う。自分フィールドに「黄金卿エルドリッチ」が存在する場合、さらにフィールドの表側表示モンスター1体を選んで攻撃力を0にできる。(2):自分・相手のエンドフェイズに墓地のこのカードを除外して発動できる。デッキから「エルドリクシル」魔法・罠カード1枚を選んで自分フィールドにセットする。

 

コンタクト・アウト:速攻魔法

自分フィールド上に表側表示で存在する「ネオス」と名のついた融合モンスター1体を融合デッキに戻す。さらに、融合デッキに戻したモンスターに記された融合素材モンスター一組が自分のデッキに揃っていれば、この一組を自分フィールド上に特殊召喚する事ができる。

 

壺の中の魔術書:通常魔法

「壺の中の魔術書」は1ターンに1枚しか発動できない。(1):互いのプレイヤーはカードを3枚ドローする。

 

 

「ぼくのターンですね。ここらで反撃させてもらいましょう。

 墓地のエルドリッチの効果を発動します。場にいる黄金郷のガーディアンを墓地に送り、エルドリッチを手札に戻し、今戻したエルドリッチを特殊召喚します」

 

 瓦礫の山をかき分けて、己の身体を這い出して、黄金に狂った王が現れる。この不死性が、エルドリッチの特に厄介なところだ。

 もっとも、エルドリッチの厄介なところは、それだけではないが。

 

「手札にあるもう一枚のエルドリッチの効果を発動しましょう。このカードと手札の黒き覚醒のエルドリクシルを捨て、貴方の伏せカードを破壊しますよ」

 

 咲夜の伏せカードは一枚のみ。ここでバックを割られると平月の不死者たちに一気に追いつめられる。咲夜は停滞なくデュエルディスクのボタンを押した。

 

「チェーンするわ。手札を一枚捨てて、リバーストラップオープン! 早すぎた帰還! これで除外されていたE・HERO ソリッドマンを、裏側守備表示で特殊召喚! さらに捨てた代償の宝札の効果で、二枚ドロー!」

 

 結果として平月のカードは躱された。だが懸念材料である伏せカードの除去はできたと、平月の笑みは変わらない。どちらにせよ、咲夜を守るカードは減ったのだ。

 

「ならこここそが、一気に攻めるタイミング。白き宿命のエルドリクシルを発動! 墓地のエルドリッチを特殊召喚しますよ。

 さぁバトルです。二体のエルドリクシルで、守備表示のフレア・スカラベとネオスを攻撃しましょう!」

 

 黄金の王が、二体揃ってその剛腕を振り下ろし、咲夜のモンスターを叩き潰した。これで彼女の壁モンスターは裏守備表示のソリッドマンのみ。

 ただし、平月の攻撃もまだ終わってはいない。

 

「ここでリバースカード、赤き血染めのエルドリクシル発動! デッキから、三体目のエルドリッチを特殊召喚し、ソリッドマンに攻撃します!」

 

 まるで指揮者のような大仰な仕草で手指を振るう平月。そのフィールドに三体目のエルドリッチが出現。平月の指が裏守備表示のソリッドマン指し示すと、三体目のエルドリッチが両腕を合わせ、ハンマーのように振り下ろしてソリッドマンを粉砕した。

 

「く……ッ!」

 

 これで咲夜を守るモンスターはいない。だが平月の場にも、攻撃可能なモンスターはいない。

 凌いだ。咲夜はそう思った。だが――――――

 

(まだだ咲夜! まだ、奴の攻撃の気配は終わっていない! 気を抜くな!)

 

 半透明のアテナから警告が飛ぶ。その言葉に、咲夜は緩みかけた気を引き締めた。平月の微笑が少しだけ深くなった。

 

「手札から速攻魔法、超融合発動! 手札を一枚捨て、ぼくの場にいる強化されていない二体のエルドリッチを素材に融合召喚!

 狂え狂え黄金に。満たせ満たせ欲望を! 堕ちた先より来るは征服者! 其の名は黄金狂エルドリッチ(エル・レイ・コンキスタエルドリッチ)!」

 

 平月の頭上の空間が歪み、渦を作る。その渦に二体のエルドリッチが吸い込まれ、一つとなる。

 渦から現れたのは黄金に狂い、征服に憑りつかれ、支配に溺れた不死者の王。紫のマントを翻し、異形と化した黄金の鎧を身に纏い、狂笑を張り憑かせた兜をかぶったその姿は見る者にの恐怖を与えずにおれない。

 

「では、黄金狂エルドリッチでダイレクトアタック!」

 

 平月の攻撃宣言が下り、黄金狂エルドリッチの両腕が胸の前で翳される。その掌の間に発生した黒い光が咲夜に向かって放たれる。

 咲夜は全力でその場から離脱。足の力の続く限り掛け、一気に身体ごと前に飛び出し、黒い光の着弾地点から逃れた。

 

「くぅ……ッ!」

 

 逃げることはできたが受け身のことも考えずに身体を飛び出したので身体が痛む。だが宝珠を守るためにはこれが最適だと思ったのだ。この、神々の戦争の結界内で向上した身体能力がなければ、それもできなかっただろうが。

 

「さすがに躱しますよね。ではバトルを終了。メインフェイズ2に入り、墓地の黒き覚醒のエルドリクシルの効果を発動し、デッキから三枚目の永久に輝けし黄金郷をセットしましょう。さらにエルドランドの効果を発動。800ライフを払い、黄金卿のワッケーロを手札に加え、セットします。そしてエンドフェイズに黄金郷のガーディアンの効果で三枚目の白き宿命のエルドリクシルをセット。ターンエンドです」

 

 

早すぎた帰還:通常罠

(1):手札を1枚除外し、除外されている自分のモンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターを裏側守備表示で特殊召喚する。

 

代償の宝札:通常魔法

(1):手札からこのカードが墓地に送られた時に発動する。カードを2枚ドローする。

 

超融合:速攻魔法

このカードの発動に対して魔法・罠・モンスターの効果は発動できない。(1):手札を1枚捨てて発動できる。自分・相手フィールドから、融合モンスターカードによって決められた融合素材モンスターを墓地へ送り、その融合モンスター1体をEXデッキから融合召喚する。

 

黄金狂エルドリッチ 光属性 ☆10 アンデット族:融合

ATK3800 DEF3500

「エルドリッチ」モンスター+レベル5以上のアンデット族モンスター

このカード名の(3)の効果は1ターンに1度しか使用できない。(1):このカードはモンスターゾーンに存在する限り、カード名を「黄金卿エルドリッチ」として扱う。(2):フィールドのこのカードは戦闘・効果では破壊されない。(3):自分フィールドのアンデット族モンスター1体をリリースし、相手フィールドの表側表示モンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターのコントロールを得る。そのモンスターはターン終了時まで、攻撃できず、効果を発動できない。

 

 

咲夜LP8000→4200手札4枚

平月LP5700→4900手札2枚

 

 

「あたしのターン!」

 

 形成は咲夜に圧倒的に不利。ライフの差はまだわずかだが、黄金狂の前では紙屑に等しい。

 さらに追い打ちが、平月から掛けられた。

 

「貴方のスタンバイフェイズ、伏せていた黄金卿のワッケーロを発動。発動時の効果で、貴方の墓地にいるE・HERO ネオスを除外しましょう」

 

 翻るリバースカード。同時に現れた亡者によって、咲夜の墓地にあったネオスのカードがずたずたに引き裂かれた。蘇生による特殊召喚の手段が豊富という、ネオスの利点さえもこれで潰されたわけだ。

 

「さぁ、どうします?」

 

 問いかける平月。だがその微笑は、獲物を前に舌なめずりをする捕食者のようだ。

 が、咲夜とてプロのデュエリスト。やすやすと非捕食者に甘んじたりはしない。

 その証拠に、彼女の口元には勝気な笑みが浮かんでいた。

 

「勿論、このターンで君に勝つつもりよ。

 あたしのフィールドにカードは存在しないため、このカードは手札から発動できる。NEXT(ネオスペースエクステンション)!」

 

 発動されたのは罠でありながら特定条件下で手札から発動できるカード。

 その効果は破格の一言。手札か墓地からネオス、またはNを任意の数だけ特殊召喚できるのだ。

 だが平月のフィールドには妨害手段の永久に輝けし黄金郷がある。

 

「止めるしかありませんね。カウンタートラップ、永久に輝けし黄金卿! 黄金卿のワッケーロを墓地に送り、NEXTを無効にします」

 

 

 そうだ、ここはとめるだろう。これは咲夜の予想通りだ。

 だがらこそ、妨害はもうない。

 

「貪欲な壺を発動。ヴァイオン、Great TORNADO、ソリッドマン、フレア・スカラベ、オネスティ・ネオスをデッキに戻して、二枚ドロー」

 

 咲夜の墓地から、五枚のカードが排出され、デッキやEXデッキに戻され、二枚のドロー。それを咲夜は一瞥するだけで留め、次のカードを手札から繰り出した。

 

「ネオスペース・コネクターを召喚、効果でデッキからE・HERO ネオスを特殊召喚。そして融合を発動! 場のネオスと、手札のグラン・モールで融合!」

 

 咲夜の頭上の空間が、融合の渦を巻く。その渦に飛び込んだネオスとグラン・モールが混ざり合い、新たなモンスターとなって現出する。

 

「大地のヒーロー! その雄々しき拳で出来を砕け! 融合召喚、E・HERO ガイア!」

 

 現れたのは黒鉄(くろがね)色の体躯、末端肥大型の両腕、鎧が動いたような重厚で力強さを感じさせる、大地のヒーロー。

 

「ガイアの効果発動! 黄金卿エルドリッチの攻撃力を吸収! そしてミラクル・コンタクトを発動! 墓地のネオスとグラン・モールでコンタクト融合!

 異星の戦士よ、大地の力を得てどこまでも掘り進む一矢となれ! コンタクト融合! 天元を突破せよ、E・HERO グラン・ネオス!」

 

 ガイアの両腕が振り下ろされ、大地が隆起する。隆起した大地が拘束となり、エルドリッチの攻撃力を半分にし、その数値分、ガイアの攻撃力がアップする。

 そして強化されたガイアの傍らに、深緑の鎧を身に纏い、右腕がドリルに、左腕が鋭いクローになったネオスが現れる。

 

「まだよ! 手札からネオス・フュージョン発動! デッキからネオスとE・HERO シャドー・ミストを墓地に送って、来たれ新たなHERO! E・HERO ブレイヴ・ネオスを特殊召喚!」

 

 ガイアとグラン・ネオスの傍らに現れた新たなヒーロー。

 その姿はノーマルのネオスをより先鋭化させ、マッシブとなった姿。三体のHEROが並ぶ光景に、平月の表情が僅かに硬くなる。

 

「融合素材になったシャドー・ミストの効果で、オネスティ・ネオスを手札に加えるわ。

 いくわよ! グラン・ネオスの効果発動! 黄金狂エルドリッチをバウンス!」

 

 グラン・ネオスの右手のドリルが唸りを上げて振るわれた。そのドリルは物体だけでなく、空間にさえ穴をあける。

 大穴を開けられた空間から、圧倒的な吸引力が発揮され、黄金狂エルドリッチはその力に抗えず、穴の中に吸い込まれ、虚空の彼方へと吸い込まれてしまった。

 

(戦闘、効果による耐性を持っていようと、バウンスには無力だというわけだな!)

 

 半透明のまま、ガッツポーズをとって喜ぶアテナ。咲夜も力強く頷く。

 

「バトルよ! ガイアで黄金卿エルドリッチを攻撃!」

 

 ガイアの両腕が再び振り下ろされ、隆起した大地が今度は質量兵器となって黄金卿エルドリッチ自身を圧し潰した。

 

「ぐ、か……ッ!」

 

 ダメージのフィードバックが平月を襲い、彼の華奢な体が揺らぐ。

 その隙を見逃さず、咲夜が一歩踏み出した。

 

「グラン・ネオスでダイレクトアタック!」

 

 揺らぐ平月の身体に、ドリルを回転させてグラン・ネオスが肉薄する。平月は顔をしかめながらもデュエルディスクのボタンを押した。

 

「白き宿命のエリドリクシル発動! 墓地の黄金卿エルドリッチを守備表示で特殊召喚しますよ」

 

 両腕をクロスさせた防御態勢をとって、エルドリッチが再度現れる。

 ただし、これは平月自身、通用しないことは分かっていた。シャドー・ミストの効果で手札に加えたあのカードがあるからだ。守備力の壁など何の意味もない。

 

「ダメージ計算時、手札のオネスティ・ネオスの効果発動!」

 

 これでグラン・ネオスの攻撃力はエルドリッチの守備力を上回った。ドリルの一撃が黄金の王の胴体部に巨大な風穴を開ける。

 これで平月のフィールドはがら空き。そして彼のライフは残り2700。今、平月の眼前で構えている最後のHERO、ブレイヴ・ネオスの攻撃力も、丁度2700。

 

「これで、終わり! ブレイヴ・ネオスでダイレクトアタック!」

 

 平月は微笑みながら、両手を広げた。、まるで咲夜の一撃を甘んじて受け入れようとしているようだ。

 咲夜からは、平月のそんな微笑はすぐに消えた。拳を振り抜いたネオスの背中がその姿を隠したからだ。

 だがネオスの一撃が平月の胴体部に激突し、彼の華奢な体躯を吹き飛ばしたのは確認できた。

 

 

NEXT:通常罠

このカード名のカードは1ターンに1枚しか発動できない。自分フィールドにカードが存在しない場合、このカードの発動は手札からもできる。(1):自分の手札・墓地から、「N」モンスター及び「E・HERO ネオス」を任意の数だけ選んで守備表示で特殊召喚する(同名カードは1枚まで)。この効果で特殊召喚したモンスターの効果は無効化される。この効果で特殊召喚したモンスターが自分フィールドに表側表示で存在する限り、自分は融合モンスターしかEXデッキから特殊召喚できない。

 

貪欲な壺:通常魔法

(1):自分の墓地のモンスター5体を対象として発動できる。そのモンスター5体をデッキに加えてシャッフルする。その後、自分はデッキから2枚ドローする。

 

ネオスペース・コネクター 光属性 ☆4 戦士族:効果

ATK800 DEF1800

このカード名の(1)(2)の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。(1):このカードが召喚に成功した時に発動できる。手札・デッキから「N」モンスターまたは「E・HERO ネオス」1体を守備表示で特殊召喚する。(2):このカードをリリースし、自分の墓地の、「N」モンスターまたは「E・HERO ネオス」1体を対象として発動できる。そのモンスターを守備表示で特殊召喚する。

 

融合:通常魔法

(1):自分の手札・フィールドから、融合モンスターカードによって決められた融合素材モンスターを墓地へ送り、その融合モンスター1体をエクストラデッキから融合召喚する。

 

E・HERO ガイア 地属性 ☆6 戦士族:融合

ATK2200 DEF2600

「E・HERO」モンスター+地属性モンスター

このカードは融合召喚でしか特殊召喚できない。(1):このカードが融合召喚に成功した場合、相手フィールドの表側表示モンスター1体を対象として発動する。ターン終了時まで、そのモンスターの攻撃力を半分にし、このカードの攻撃力はその数値分アップする。

 

ミラクル・コンタクト:通常魔法

(1):自分の手札・フィールド・墓地から、融合モンスターカードによって決められた融合素材モンスターを持ち主のデッキに戻し、「E・HERO ネオス」を融合素材とするその「E・HERO」融合モンスター1体を召喚条件を無視してEXデッキから特殊召喚する。

 

E・HERO グラン・ネオス 地属性 ☆7 戦士族:融合

ATK2500 DEF2000

「E・HERO ネオス」+「N・グラン・モール」

自分フィールド上の上記のカードをデッキに戻した場合のみ、エクストラデッキから特殊召喚できる(「融合」魔法カードは必要としない)。1ターンに1度、相手フィールド上のモンスター1体を選択して持ち主の手札に戻す事ができる。また、エンドフェイズ時、このカードはエクストラデッキに戻る。

 

ネオス・フュージョン:通常魔法

(1):自分の手札・デッキ・フィールドから、融合モンスターカードによって決められた融合素材モンスターを墓地へ送り、「E・HERO ネオス」を含むモンスター2体のみを素材とするその融合モンスター1体を召喚条件を無視してEXデッキから特殊召喚する。このカードの発動後、ターン終了時まで自分はモンスターを特殊召喚できない。(2):「E・HERO ネオス」を融合素材とする自分フィールドの融合モンスターが戦闘・効果で破壊される場合、または自身の効果でEXデッキに戻る場合、代わりに墓地のこのカードを除外できる。

 

E・HERO ブレイヴ・ネオス 光属性 ☆7 戦士族:融合

ATK2500 DEF2000

「E・HERO ネオス」+レベル4以下の効果モンスター

このカードは融合召喚でしか特殊召喚できない。(1):このカードの攻撃力は自分の墓地の「N」モンスター及び「HERO」モンスターの数×100アップする。(2):このカードが戦闘で相手モンスターを破壊した時に発動できる。「E・HERO ネオス」のカード名が記された魔法・罠カード1枚をデッキから手札に加える。

 

E・HERO シャドー・ミスト 闇属性 ☆4 戦士族:効果

ATK1000 DEF1500

「E・HERO シャドー・ミスト」の(1)(2)の効果は1ターンに1度、いずれか1つしか使用できない。(1):このカードが特殊召喚に成功した場合に発動できる。デッキから「チェンジ」速攻魔法カード1枚を手札に加える。(2):このカードが墓地へ送られた場合に発動できる。デッキから「E・HERO シャドー・ミスト」以外の「HERO」モンスター1体を手札に加える。

 

 

平月LP4900→2700→0

 

 

 手応えありだ。ひょっとしたら宝珠も砕けたかもしれない。

 だが平月は受け身と取れずに吹き飛ばされ、近くの民家の窓を突き破って中に叩き込まれた。

 或いは、命に関わるかもしれない。

 

「大丈夫!?」

 

 思わず駆け寄る咲夜。だが民家の中に入ってみても、平月の姿はない。

 

「え?」

 

 一体どこに? 疑問が浮かんだ時、どこからともなく平月の声がした。

 

『さすがは国守プロ。手強い』

 

 声はすれども姿は見えない。だが仕留めそこなったことだけは分かった。

 

『今回はここまで、これで失礼させていただきますよ』

 

 何か言い返してやろうか。そうも思ったが、この手の輩は何を言っても無駄だ。自分が安全圏にいると思っているのだから。

 

「……アテナ、相手はどこに行ったか分かる?」

「いや、気配が途絶えた。これ以上は追えそうもない」

 

 そう、とだけ答えて、咲夜は拳を握り締めた。

 あの少年は危険だ。できればここで宝珠を砕き、神々の戦争から脱落させたかった。

 だが終わってしまったのなら仕方がない。後悔は振り払い、切り替えていこう。

 何より、まだ咲夜も知らないことだが、水面下で進行していた仲間の危機は今この瞬間、その深い悪意を伴って浮上し始めていたのだった。

 彼女たちの仲間、黒神烈震(くろかみれっしん)が入院している病院。そこにギリシャの悪霊(エンプーサ)達や、テュポーン神族の一柱が迫っていたのだった。

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