神々の戦争   作:tuki21

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第129話:悪食毒花

「意外だな。君はてっきり、テミスと波長が合うと思っていたよ」

 

 ティターン神族との契約を交わした時、幼馴染であり、現在の雇用主、射手矢弦十郎(いでやげんじゅうろう)はそう言った。

 テミス。裁判や公平性を現す女神として、彼女をモチーフにした彫刻や絵画が裁判所に飾られている。

 確かに、司法の世界に関わる自分とは、波長の合う部分も多いかもしれない。

 自分はどう答えたか、覚えている。苦笑を浮かべて、

 

「私は公平性が何より求められる裁判官ではないよ。私はゾディアックの……、いや、君の専属弁護士だ。すでに私の中の天秤は傾いている。だったら、私はテミスの契約者として外れているだろう」

 

 弁護士や検事は裁判官と違って、勝利を目指す。ならば、公平性とは大きく外れているだろう。

 そう答えたつもりだったし、射手矢はその意図を察してくれた。

 

「確かにそうだ。だとすればレアと契約したのも頷けるな」

 

 レア。クロノスの妻にして、ゼウス、ポセイドン、ハデスら三兄弟の母。

 かつては息子たちへの愛情を取り、夫を裏切り、ゼウスを庇い、結果としてクロノスは当時のギリシャ世界の王の座を追われた。

 今回、ティターン親族の一柱として、最後まで夫のために動くのだと、以前言っていた。

 今度は、夫への愛を貫くのだと。

 対象が変わるだけで、彼女の愛は何も変わらない。

 ならば自分も、それに恥じぬように在らなければ。

 

 

 

 

 

◆◆◆◆◆◆

 

 

 

 

 

 ゾディアック本社、その外見を装っていたパルテノン式の神殿。

 本来は純白のはずのそれは、今は毒々しい漆黒に代わり、所々に血管のような赤い光がラインとして走っている。

 足裏から伝わってくる感触は石のようだが、印象としては臓物の上を歩いているようだ。

 そんな、不気味さと醜悪さがひどくミックスされた神殿(もど)きの、横幅も天井も高い廊下を歩く人間一人と神一柱。

 人間は少女。

 17、8の年齢、背にかかるかどうかの長さをした薄茶色のポニーテール、青みがかかった瞳。白の半そでTシャツに、大胆に左脚部だけカットしたジーンズ。いつも羽織っているジャケットは脱いで、腰に巻いているため、彼女の年齢よりも豊かな胸が強調され、健康的な色気と自分のプロポーションに対する自信を漂わせている。

 その傍らを歩く神の姿は、あろうことか十歳前後の子供の姿であった。

 ウェーブのかかった赤髪、雪のように穢れを知らぬ白肌、黄金色の瞳、小柄な体は花柄のワンピースに包んでいる。未成熟ながらも開花前から美しさが窺える花の蕾つぼみの風情。

 人間の名は国守咲夜(くにもりさくや)、神の名はアテナ。

 今、ティターン神族との戦いで、最も因縁深い一組だろう。

 何しろアテナは神々の戦争開始前、神界から人間界に来る際にクロノスの襲撃を受け、子供の姿まで戻されてしまったのだ。

 そんなアテナを拾い、契約を交わした咲夜もまた、クロノスと、その配下の神に狙われ、心身ともに消耗し続けた。

 そんなどん底と絶望の中にいた彼女を救ったのが、岡崎和輝(おかざきかずき)と、その契約神、ロキだった。

 咲夜はあたりを見回し、

 

「不気味な場所ね。ティターン神族全体のセンスの問題かしら?」

「さぁな。それより油断するな、咲夜。神の気配が近い。この場に入った時から感じていたから、十中八九、敵だろう」

 

 傍らのアテナは険しい表情でそう言った。緊張と敵愾心が、咲夜にも伝わってくる。

 

「そうね。気を引き締めていきましょう」

 

 咲夜も表情を引き締めた。だが緊張で力が入りすぎてしまってもいけない。特に隣を歩くアテナは、因縁の宿敵の巣窟に攻め込んだとあって、肩に力が入りすぎているのが目に見えていた。

 なので話題を変える。

 

「それにしても、まさかクロノスの契約者が、あたしのスポンサーの社長だったなんてね……。世界は狭いというか……、そりゃ行く先々で襲われるわけだわ。スケジュールばれてるどころか、向こうが決めてる時だってあったわけだし」

「確かに……。まさか身内が最大の敵だとはな。いやまて、そういう話なら、咲夜。こうして本格的に敵対したら、プロとしてのお前の立場も悪くなるのではないか?」

「いまさらといえば今更ねー」

 

 後頭部を軽く掻きながら、咲夜は「ははは」と苦笑い。

 

「まぁそれは覚悟してたことだし、後悔もないわ。たとえスポンサーを降りられても、だったら別のスポンサー探すだけだし」

「その心配は無用だ」

 

 あるはずのない、第三の声。咲夜とアテナの表情が強張り、一瞬で戦闘態勢へと移行する。

 一人と一柱から見て右側、壁だったはずの場所が()()()()と歪み、大口を開けた入り口となった。

 

「いらっしゃい、ってことね」

 

 呟いて、咲夜はアテナを見る。険しい表情のまま見返したアテナも、力強く頷き返した。

 咲夜コンビは開かれた部屋に足を踏み入れた。

 そこに、想像通り一人と一柱。待ち構えていた形から、間違いなくティターン神族の一味だ。

 人間も、神も、どちらも咲夜とアテナの知る存在だった。

 人間は男。グレイの髪、スーツ、青い瞳、長身痩躯に銀縁眼鏡。神経質そうな外見。神経質に糸を張り巡らせる痩せ蜘蛛の風情。

 咲夜はこの男を知っている。面識もあった。

 秤正治(はかりまさはる)。ゾディアック社長、射手矢弦十郎から紹介された、ゾディアック顧問弁護団のトップ。そして、自分の幼馴染だと、どこか誇らしげに紹介していたのを覚えている。

 

「秤先生。やっぱり、あなたもティターン神族の契約者……」

「社長がそうならば、私がいるのもまた当然だ。そして先ほどの続きだ、国守プロ。神々の戦争は表に出ることはない。そのため、神々の戦争での敵対行為を理由に契約を解除することは不当解雇に当たる。

 そしてそもそも、社長は将来有望な若者を支援することに公私は混ぜない。君を切ることはデメリットのほうが大きい」

 

 銀縁眼鏡の位置を神経質そうに直しながら、秤は言う。瘦身の左腕にはすでにデュエルディスクが起動状態であり、臨戦態勢であることを物語っていた。

 そして、その傍らに佇む女神の姿。

 蔓草でできたドレスで身を包んだ女神。地面まで届く金の髪、緑樹のような碧眼、透き通るような白い肌。靴は履いておらず、素足のまま。なのに、彼女の足には傷一つなく、どころか、足元からまっすぐ背伸びをした草花が生えだした。

 何百年とそびえ続ける、聖域に生えた神樹の風情。

 その女神の姿を見た時、アテナの目が見開かれた。

 だが次の瞬間には頭を振って、

 

「レア様……。主神ゼウスの母として、彼を守り、クロノス打倒の一助となったはずの貴方が、なぜクロノスに与しているのだ……」

 

 驚愕を振り切って、それでも絞り出すような声でアテナは言った。

 レア。ギリシャ神話においてはティターン神族の長、クロノスの妻にして、ゼウス、ポセイドン、ハデスの兄弟神の母に当たる女神だ。

 つまり、ゼウスの額から生まれたアテナによって、彼女は祖母に当たる。

 女神、レアは微笑みながら頷いた。

 そして言う。

 

「そうね。私はかつて神代のころ、夫であるクロノスよりも、我が子、ゼウスへの愛情を貫いた。だから今回は逆。夫への愛を貫くことにしたの」

 

 ごめんなさいねと、レアは微笑む。アテナは苦々しい顔をしながらも黙した。守護を専門としているとはいえ、アテナは戦の神。だとすれば、立場の違いからの敵味方に分かれることはショックではあっても受け入れがたい事実ではないということだ。

 だが人間である咲夜はそう簡単には割り切れない。

 

「ねえ、秤先生。聞きたいことがあるんだけど、いいかしら?」

「手短に頼む」

 

 神経質そうに、メガネの位置を調整しながら、秤が先を促す。

 

「あなたは社長の親友でしょ? こうして、大勢を傷つける行為をしている社長を、止めようと思わなかったの? 友達で、幼馴染だっていうなら、間違った方向に行こうとしている友人を、止めるのも友情じゃない?」

「友人とともに、どこまでも墜ちていくのもまた、友情ではないかね?」

 

 秤はわけもなくそう言った。右手人差し指でメガネの位置を調整しながら、

 

「すでに私の心の中の天秤は傾いている。いまさら何を言われたところで支柱は折れず、皿は揺れず。故に問答に意味はない。余計な手順は省こう。ここは、裁判の場ではないのだから」

 

 取り付く島もない。咲夜もそれは理解したし、アテナもとっくに戦闘態勢だ。

 

「分かった。なら、やることは一つ。決着は、ここでつける!」

 

 叫び、咲夜もデュエルディスクを起動させた。

 

「それでいい。始めよう」

 

 咲夜の胸元で桃色の輝きが発せられる。彼女の宝珠の輝きだ。

 同じく秤の胸元にも宝珠が現れる。こちらは無色だ。

 沈黙が辺りを支配する。

 一瞬後――――――

 

決闘(デュエル)

 

 戦いの火ぶたが、切って落とされた。

 

 

咲夜LP8000手札5枚

秤LP8000手札5枚

 

 

「あたしの先攻! EN(イーエヌ)-エンゲージ・ネオスペース発動! デッキからE・HERO(エレメンタルヒーロー) シャドー・ミストを、手札から(ネオスペーシアン) ブラック・パンサーを墓地に送り、デッキからE・HERO ネオスを特殊召喚して、融合を手札に加えるわ。来て、ネオス!」

 

 現れる彼女のデッキの代名詞。白銀色の体に赤いライン。胸には青い宝珠。勇ましい表情をし、同じく勇ましい声を上げ、握り拳とともに咲夜のフィールドに降り立つ。

 

「エンゲージ・ネオスペースの効果によって、ネオスの攻撃力は1000アップするわ。そしてこの瞬間、墓地に送られたシャドー・ミストの効果で、デッキからE・HERO スパークマンを手札に加える。E・HERO エアーマンを召喚!」

 

 デッキ圧縮、サーチ、さらにサーチ。それを経ての召喚。

 咲夜のフィールドに現れたのは、彼女のデュエルで何度も登場した、空中戦仕様のHERO。飛行ユニットと一体化したスーツを身に纏い、空中を自在に飛び回る仮面のヒーロー。

 

「エアーマンの効果で、E・HERO スピリット・オブ・ネオスを手札に。そして融合発動! 手札のスパークマンと、場のエアーマンを融合!」

 

 咲夜が手札からカードを一枚抜き取って、それをデュエルディスクに挿入した瞬間、彼女の頭上の空間が歪み始めた。渦潮を思わせる歪みに、咲夜のHERO二体が躊躇なく飛び込んだ。

 

「異なる力合わさる時、希望の太陽が天へと昇る! 融合召喚! 絶望を切り裂いて、E・HERO サンライザー!」

 

 渦から飛び出す赤いヒーロー。

 赤いアーマー。手足に生えたブレード、青いマントに肩や頭から生えた角。その名の通り、太陽のごとき光を背負い、膝と右手のひらをついて着地する。

 

「サンライザーの効果で、デッキからミラクル・フュージョンを手札に加えて、発動! 墓地のスパークマンとシャドー・ミストを除外融合! おいで、E・HERO THEシャイニング!」

 

 光とともに現れる新たなヒーロー。白いスーツ、赤い色どりが加わったマスク、背後には後光を思わせる金色のパーツ。

 

「除外されているあたしのE・HEROは二体。よってシャイニングの攻撃力は600アップ。さらにサンライザーの効果によって、あたしのモンスターたちは全て攻撃力が200アップ。カードを一枚伏せて、ターンエンド」

 

 

EN-エンゲージ・ネオスペース:通常魔法

このカード名のカードは1ターンに1枚しか発動できず、このカードを発動するターン、自分は融合モンスターしかEXデッキから特殊召喚できない。(1):手札及びデッキからそれぞれ1体ずつ、「N」モンスター1体と「E・HERO」モンスター1体を墓地へ送って発動できる。デッキから「N」モンスターまたはレベル5以上の「E・HERO」モンスター1体を特殊召喚し、自分のデッキ・墓地から「融合」1枚を選んで手札に加える。この効果で特殊召喚したモンスターが「E・HERO ネオス」の場合、その攻撃力は1000アップする。

 

E・HERO ネオス 光属性 ☆7 戦士族:通常モンスター

ATK2500 DEF2000

 

E・HERO シャドー・ミスト 闇属性 ☆4 戦士族:効果

ATK1000 DEF1500

「E・HERO シャドー・ミスト」の(1)(2)の効果は1ターンに1度、いずれか1つしか使用できない。(1):このカードが特殊召喚に成功した場合に発動できる。デッキから「チェンジ」速攻魔法カード1枚を手札に加える。(2):このカードが墓地へ送られた場合に発動できる。デッキから「E・HERO シャドー・ミスト」以外の「HERO」モンスター1体を手札に加える。

 

E・HERO エアーマン 風属性 ☆4 戦士族:効果

ATK1800 DEF300

(1):このカードが召喚・特殊召喚に成功した時、以下の効果から1つを選択して発動できる。●このカード以外の自分フィールドの「HERO」モンスターの数まで、フィールドの魔法・罠カードを選んで破壊する。●デッキから「HERO」モンスター1体を手札に加える。

 

融合:通常魔法

(1):自分の手札・フィールドから、融合モンスターカードによって決められた融合素材モンスターを墓地へ送り、その融合モンスター1体をエクストラデッキから融合召喚する。

 

E・HERO サンライザー 光属性 ☆7 戦士族:融合

ATK2500 DEF1200

属性が異なる「HERO」モンスター×2

このカードは融合召喚でしか特殊召喚できない。このカード名の(1)(3)の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。(1):このカードが特殊召喚に成功した場合に発動できる。デッキから「ミラクル・フュージョン」1枚を手札に加える。(2):自分フィールドのモンスターの攻撃力は、自分フィールドのモンスターの属性の種類×200アップする。(3):このカード以外の自分の「HERO」モンスターが戦闘を行う攻撃宣言時に、フィールドのカード1枚を対象として発動できる。そのカードを破壊する。

 

ミラクル・フュージョン:通常魔法

(1):自分のフィールド・墓地から、「E・HERO」融合モンスターカードによって決められた融合素材モンスターを除外し、その融合モンスター1体をエクストラデッキから融合召喚する。

 

E・HERO THE シャイニング 光属性 ☆8 戦士族:融合

ATK2600 DED2100

「E・HERO」と名のついたモンスター+光属性モンスター

このカードは融合召喚でしか特殊召喚できない。このカードの攻撃力は、ゲームから除外されている自分の「E・HERO」と名のついたモンスターの数×300ポイントアップする。このカードがフィールド上から墓地へ送られた時、ゲームから除外されている自分の「E・HERO」と名のついたモンスターを2体まで選択し、手札に加える事ができる。

 

 

E・HERO ネオス攻撃力2500→3700

E・HERO サンライザー攻撃力2500→2700

E・HERO THEシャイニング攻撃力2600→3400

 

 

「私のターンだ。ドロー」

 

 気合とともに声を上げていた咲夜に対して、秤は静かにカードをドロー。それから咲夜のフィールドを一瞥して、一つ息を吐く。

 

「大型モンスターが三体か。いきなり飛ばされたものだ」

「さすがアテナの選んだ契約者。攻撃こそ最大の防御、といったところかしら?」

 

 半透明のレアが微笑み交じりにそう言った。

 

「恐ろしいので、守りを固めるだけにしよう。モンスターをセット。カードを二枚セットし、ターンエンドだ」

 

 モンスターを展開するでも、咲夜のモンスターを除去するでもなく、ただ裏側のセットカードを三枚追加しただけ。仮に一ターン目だとしても消極的だと言わざるを得ない布陣だった。

 

「やけに消極的な。臆したわけではなかろうが……」

 

 半透明のアテナのセリフに、咲夜も頷く。

 

「だけど進まなければ、その狙いだって分からない。あたしのターン! このままバトル! ネオスで裏守備モンスターを攻撃! この瞬間、サンライザーの効果を発動して、裏守備モンスターを破壊!」

 

 攻撃態勢に入っていたネオスを追い越して、サンライザーが秤の守備モンスターに肉薄。右腕の刃を振りぬき一刀両断にした。

 守備モンスターの正体は超電磁タートル。バトルフェイズを強制終了させる超守備型モンスター。

 

「超電磁タートル。追撃は確実に阻まれるわね……」

「だが、奴の盾は砕ける。行け、咲夜!」

「オーケイ。バトル続行! 相手モンスターの数が変わったため、ネオスで再攻撃! ダイレクトアタック!」

 

 アテナの進言を受け入れて、咲夜が追撃を下す。秤は冷静に、メガネの位置を直しながら、デュエルディスクのボタンを押した。

 

「当然、ここで墓地の超電磁タートルの効果発動。このカードを除外し、バトルフェイズを終了させる」

 

 予定調和の防御札。咲夜もアテナも、予想通りのことが目の前で起こっても眉一つ動かさない。

 

「これ以上できることはないわね。ターンエンド」

 

 この瞬間、秤の目が細められ、指がデュエルディスクのボタンを押した。

 

「ではここで、伏せていたカードを発動しよう。捕食計画(プレデター・プランニング)、そして捕食惑星(プレデター・プラネット)

「ッ! このタイミングで……っ!」

 

 秤の足元に伏せられた二枚のカードが一斉に翻った。どちらも罠カード。ただし一枚は通常罠だが、もう一枚は永続罠だ。

 

「捕食計画の効果で、デッキから捕食植物(プレデター・プランツ)ドロソフィルム・ヒドラを墓地に送り、君のモンスター全てに捕食カウンターを置く」

 

 歯噛みする咲夜。だがすでにターン終了を宣言してしまっている。彼女にできることは何もない。

 

 

超電磁タートル 光属性 ☆4 機械族:効果

ATK0 DEF1800

このカード名の効果はデュエル中に1度しか使用できない。(1):相手バトルフェイズに墓地のこのカードを除外して発動できる。そのバトルフェイズを終了する。

 

捕食計画:通常罠

このカード名の(1)(2)の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。(1):デッキから「捕食植物」モンスター1体を墓地へ送って発動できる。フィールドの表側表示モンスター全てに捕食カウンターを1つずつ置く。捕食カウンターが置かれたレベル2以上のモンスターのレベルは1になる。(2):???

 

捕食惑星:永続罠

「捕食惑星」の(1)の効果は1ターンに1度しか使用できない。(1):このカードが魔法&罠ゾーンに存在し、捕食カウンターが置かれているモンスターがフィールドから離れた場合に発動する。デッキから「プレデター」カード1枚を手札に加える。(2):墓地のこのカードを除外して発動できる。自分の手札・フィールドから、融合モンスターカードによって決められた融合素材モンスターを墓地へ送り、その融合モンスター1体をエクストラデッキから融合召喚する。この効果で融合召喚する場合、「捕食植物」モンスターしか融合素材にできない。

 

 

「私のターンだ。さて、そろそろ()()()、というやつだな」

「では、行きましょう? 私の草花を咲かせてくださいまし?」

 

 眼鏡の蔓を指で押し上げた秤に対して、レアが微笑みながら言う。

 

「では、そうしよう。墓地のドロソフィルム・ヒドラの効果発動。捕食カウンターが乗っているシャイニングをリリースし、ドロソフィルム・ヒドラ(このカード)を私のフィールドに特殊召喚する」

 

 咲夜のフィールドに佇んでいたシャイニングが、突然胸を押さえて苦しみだした。いったい何が起こったのか、咲夜が確認する前にシャイニングの胸が裂け、中から四つの頭部らしき器官と牙のそろった口、足らしき触手を持った植物と怪物の中間のようなモンスターが現れる。

 モンスター、捕食植物ドロソフィルム・ヒドラは聞くに堪えない甲高い咆哮を上げて、崩れ落ちていくシャイニングの体を踏み台に跳躍。秤のフィールドへと降り立った。

 改めてみると食虫植物と、神話の怪物、ヒドラを掛け合わせたようなモンスターだった。

 見るも悍ましい光景に咲夜とアテナの表情が曇る。

 

「それが、レア様の草花……」

 

 思わず漏れたようなアテナの声が苦々しい。

 

「捕食カウンターが乗ったモンスターがフィールドから離れたため、捕食惑星の効果を発動。デッキから捕食植物(プレデター・プランツ)サンデウ・キンジーをサーチ。そして召喚」

 

 ドロソフィルム・ヒドラの隣に新たに現れる捕食植物。見た目はドロソフィルム・ヒドラほど怪物時見ておらず、モウセンゴケとエリマキトカゲを掛け合わせたデザインとなっている。

 

「サンデウ・キンジーがいる限り、捕食カウンターが置かれているモンスターは全て闇属性として扱われる。手札を一枚捨て、超融合発動。私の場にいるドロソフィルム・ヒドラと、君のサンライザーで融合!」

 

 空間のゆがみを思わせる、融合召喚のエフェクトが秤と咲夜の中間地点に展開される。

 渦に吸い込まれる二体のモンスター。混ざり合い、溶け合って、新たなモンスターとして生まれ変わる。

 

「腐肉より咲け、毒持つ仇花(あだばな)よ。融合召喚、捕食植物(プレデター・プランツ)キメラフレシア!」

 

 現れるのはその名の通り、巨大なラフレシアの怪物。蔓の先には牙の並んだ口。花びらの中央部にもさらに大きな牙の並んだ口。

 

「く……! あたしのモンスターを素材にするなんて……。ずいぶん悪食なんじゃない?」

「ああ、その通りだ。そして大喰らいなのだよ。サウデウ・キンジーのモンスター効果。このカードと、君の場に残ったネオスで融合召喚!」

「またか! 卑しい悪食にもほどがあるぞ!」

 

 怒りを滲ませて叫ぶアテナの眼前で、再び融合召喚のエフェクトが発動。咲夜と秤のモンスターが一体ずつ渦の中に吸い込まれる。

 

「毒を喰らわば骨身まで。出でよ暴食の毒竜! スターヴ・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン!」

 

 現れる巨体。

 毒々しい緑と紫の体、翼にも、硬質な花びらにも見える外骨格。体やその周囲に浮かぶ、血のように赤い宝珠。

 口を開き、毒交じりの吐息を吐くその姿は竜と植物の混合生物に見える。

 

「バトルだ。二体のモンスターでダイレクトアタック」

 

 二体の大型モンスターが、聞き入れがたい咆哮を上げて咲夜に襲い掛かる。咲夜は即座に手札からカードを一枚抜き放った。

 

「手札のE・HERO スピリット・オブ・ネオスの効果発動! このカードを守備表示で特殊召喚する!」

 

 咲夜とアテナを守るように現れたのは、その名の通り、魂のように半透明なネオス。腕を組み、堂々としたたたずまいで秤のモンスターたちの前に立ちはだかる。

 

「スピリット・オブ・ネオスの効果で、デッキからENウェーブを手札に加えるわ。さらに自身の効果で特殊召喚されたスピリット・オブ・ネオスは戦闘では破壊されない」

「今我らが出せる最高の防御札だ。だが――――」

 

 アテナの表情は苦い。スピリット・オブ・ネオスを使わされたことを、彼女も分かっているからだ。

 当然、想定通りの事態になっているため、攻撃を防がれた秤に動揺はない。キチキチと眼鏡の位置を調整し、

 

「知っている。ならばそれ以外の手段で排除するのみ。バトルを終了し、キメラフレシアの効果を発動。スピリット・オブ・ネオスを除外する」

 

 キメラフレシアが蔓を器用に使い、スピリット・オブ・ネオスを捕獲、そのまま花びらの口までもっていき、頭から捕食してしまった。

 

「あらあら、食欲旺盛ね」

 

 頬に手を当てて、レアが微笑む。どう見てもそんな微笑ましい光景ではないのに、その反応。彼女の何かが狂ってしまったのか。アテナが顔をしかめたのは、目の前のグロテスクな光景からか、それとも自分の祖母に当たる女神の姿故か。

 

「私は、これでターンエンドだ」

 

 

捕食植物ドロソフィルム・ヒドラ 闇属性 ☆5 植物族:効果

ATK800 DEF2300

このカード名の、(1)の方法による特殊召喚は1ターンに1度しかできず、②の効果は1ターンに1度しか使用できない。(1):このカードは自分または相手フィールドの捕食カウンターが置かれたモンスター1体をリリースした場合に手札・墓地から特殊召喚できる。(2):このカードがフィールド・墓地に存在する場合、このカード以外の自分の墓地の「捕食植物」モンスター1体を除外し、フィールドの表側表示モンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターの攻撃力は500ダウンする。この効果は相手ターンでも発動できる。

 

捕食植物サンデウ・キンジー 闇属性 ☆2 植物族:効果

ATK600 DEF200

このカード名の(2)の効果は1ターンに1度しか使用できない。(1):このカードがモンスターゾーンに存在する限り、自分が融合素材とする捕食カウンターが置かれたモンスターの属性は闇属性として扱う。(2):自分メインフェイズに発動できる。闇属性の融合モンスターカードによって決められた、フィールドのこのカードを含む融合素材モンスターを自分の手札・フィールド及び相手フィールドの捕食カウンターが置かれたモンスターの中から選んで墓地へ送り、その融合モンスター1体をEXデッキから融合召喚する。

 

超融合:速攻魔法

このカードの発動に対して魔法・罠・モンスターの効果は発動できない。

(1):手札を1枚捨てて発動できる。自分・相手フィールドのモンスターを融合素材とし、融合モンスター1体を融合召喚する。

 

捕食植物 キメラフレシア 闇属性 ☆7 植物族:融合

ATK2500 DEF2000

「捕食植物」モンスター+闇属性モンスター

(1):1ターンに1度、このカードのレベル以下のレベルを持つフィールドのモンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターを除外する。(2):このカードが相手の表側表示モンスターと戦闘を行う攻撃宣言時に発動できる。ターン終了時まで、その相手モンスターの攻撃力は1000ダウンし、このカードの攻撃力は1000アップする。(3):このカードが墓地へ送られた場合、次のスタンバイフェイズに発動できる。デッキから「融合」魔法カードまたは「フュージョン」魔法カード1枚を手札に加える。

 

スターヴ・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン 闇属性 ☆8 ドラゴン族:融合

ATK2800 DEF2000

トークン以外のフィールドの闇属性モンスター×2

(1):このカードが融合召喚した場合に発動できる。相手フィールドの特殊召喚されたモンスター1体の攻撃力分だけ、このカードの攻撃力をターン終了時までアップする。

(2):1ターンに1度、相手フィールドのレベル5以上のモンスター1体を対象として発動できる。このカードはエンドフェイズまで、そのモンスターの元々のカード名・効果と同じカード名・効果を得る。

(3):融合召喚したこのカードが破壊された場合に発動できる。相手フィールドの特殊召喚されたモンスターを全て破壊する。

 

E・HERO スピリット・オブ・ネオス 光属性 ☆7 戦士族:効果

ATK2500 DEF2000

このカード名の(1)(2)(3)の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。(1):相手モンスターの攻撃宣言時に発動できる。このカードを手札から守備表示で特殊召喚する。この効果で特殊召喚したこのカードは戦闘では破壊されない。(2):このカードが特殊召喚に成功した場合に発動できる。デッキから「E・HERO」モンスターのカード名が記された魔法・罠カードまたは「融合」1枚を手札に加える。(3):自分メインフェイズに発動できる。このカードを持ち主のデッキに戻し、デッキから「E・HERO」通常モンスター1体を特殊召喚する。

 

 

「さて、私のフィールドには大型モンスターが二体。対して君のモンスターはこうして私の植物たちの養分になってしまったわけだが……。絶体絶命というやつかね?」

 

 相手の戦意をくじくためか、秤が声をかける。

 だが咲夜は笑う。自暴自棄の笑みではなく、挑戦的で、不敵な笑みを。

 

「冗談。この程度の逆境で参ってちゃ、ヒーローじゃない。アテナの味方なんてできない。何より、プロにとって、こんなのピンチでも何でもない。あたしのターン!」

 

 一切の怯えなく、咲夜はそう言い放った。

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