神々の戦争   作:tuki21

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第13話:炎の選択

 和輝(かずき)の眼前に立つ神、ウェスタ。

 相対した神はこれで三柱目。いずれも心が折れそうな圧倒的な存在感に加え、こちらを圧殺せんばかりの圧力(プレッシャー)を感じる。

 しかし和輝はその場に踏んばる。折れてはならない。負けてはならない。

 不敵に笑え、前を向け、そして、決して後ろに下がるな。下がれば、心折れて、負けるのだから。

 

 

和輝LP3100手札3枚

ペンデュラムゾーン赤:なし青:なし

場 ブラック・マジシャン(攻撃表示)、ブラック・マジシャン(攻撃表示)、永続罠:永遠の魂、

伏せ 0枚

 

鷹山LP2300手札1枚

ペンデュラムゾーン赤:なし青:なし

場 守護の炎神ウェスタ(攻撃表示)

伏せ 1枚

 

 

ブラック・マジシャン 闇属性 ☆7 魔法使い族:通常モンスター

ATK2500 DEF2100

 

永遠の魂:永続罠

「永遠の魂」の(1)の効果は1ターンに1度しか使用できない。(1):以下から1つを選択してこの効果を発動できる。●自分の手札・墓地から「ブラック・マジシャン」1体を選んで特殊召喚する。●デッキから「黒・魔・導」または「千本ナイフ」1枚を手札に加える。(2):このカードが魔法&罠ゾーンに存在する限り、自分のモンスターゾーンの「ブラック・マジシャン」は相手の効果を受けない。(3):表側表示のこのカードがフィールドから離れた場合に発動する。自分フィールドのモンスターを全て破壊する。

 

守護の炎神ウェスタ 神属性 ☆10 幻神獣族:効果

ATK3000 DEF3000

このカードは特殊召喚できない。このカードは3体のモンスターをリリースしてのみ通常召喚できる。(1):このカードは神属性、幻神獣族モンスターの効果以外のカード効果ではフィールドを離れず、コントロールも変更されない。(2):このカードが相手のカードの効果を受けた時、エンドフェイズにこのカードに対するそのカード効果を無効にする。???

 

 

「俺のターン、ドロー!」

 

 ターンは和輝へと移る。ふっと息を短く吐いて、手札を見る。そこには、既に(ロキ)のカードがあった。

 カードから、かすかな鼓動のようなものが聞こえてくる。半透明でいちいち賑やかしてくるロキとは別に、カードのほうもこう言っているようだった。

 早く、ボクを戦わせてくれ。と。

 

「オーケイ。いいぜ、お前の出番だ。まずは死者蘇生を発動し、墓地のE・HERO(エレメンタルヒーロー) シャドー・ミストを復活!」

 

 和輝のフィールドに現れたのは、長い黒髪に黒いバトルスーツを身に纏った女のヒーロー。もっとも、彼女は戦力ではないが。

 

「シャドー・ミストの効果は発動しない。俺は二体のブラック・マジシャンとシャドー・ミストをリリース!」

 

 三体のモンスターが白い光の粒子となって、世界に溶けるように消えていく。だが「力」は場に残り、上位存在を呼び出すための「門」となる。

 力が集約された門。門が開かれ、新たな「場」が形成、力が具現していく。

 

「さぁ、来い! 閉ざせし悪戯神ロキ!」

 

 力は、さらに人の形をとって顕現した。

 いつもと同じ、金髪碧眼。幾重にも白のローブ姿。ローブの中心部、丁度ロキの胸の中心に当たる部分には拳大の大きさの紫の宝珠。両腕には複雑な刻印が刻まれた金の腕輪。ローブの下は闇を凝縮し、形にしたような紫に淵に金のラインの入った鎧姿。普段飄々とした雰囲気は鳴りを潜め、神としての威厳と力に満ちたロキの姿だった。

 

「来たかー」

 

 相対する神に対して、鷹山(たかやま)は悠然と構えている。これは、彼が重ねた年月の重さゆえか、それともロキが神の血を半分しか受け継いでいないうえに心臓を半分和輝に与えているので、神としての力の発露がほかの神に比べて弱いのか。

 

「さぁウェスタ! 決着をつけよう! 具体的にはボクと和輝の濡れ衣を払させてもらう!」

「パートナーの少年はともかく、貴様の女癖の悪さは事実だろう!」

 

 ロキの虚言とそれに対するウェスタの正統な怒りは、あえて無視することにする。

 

「ロキの召喚に成功したこの瞬間、ロキと、シャドー・ミストの効果が発動! まずはシャドー・ミストの効果で、デッキからE・HERO プリズマーをサーチ。そしてロキの効果。デッキからカードを五枚めくり、その中の一枚を手札に加え、残りを墓地に送ります!」

 

 和輝のデッキから五枚のカードが一気に引き抜かれ、提示される。

 提示されたのはタスケルトン、輝白竜ワイバースター、ワンダー・ワンド、カードガンナー、虹クリボー。

 

「よっし! 俺はワンダー・ワンドを手札に加えます。そして、永遠の魂の効果を発動し、ブラック・マジシャンを復活」

 

 永遠の魂は、絆は決して色褪せない。死してなお忠誠を見せる黒衣の魔術師が、和輝のフィールドに現れる。

 

「バトル! ロキでウェスタに攻撃!」

 

 攻撃宣言が下され、ロキが遠心からオーラを迸らせ、両手を前にかざす。

 手と手の合間に、黒い球体が出現、稲妻を放ちながら、力と、威力ごと凝縮されていく。

 

「さあ、受けなよウェスタ!」

 

 黒球が放たれる。大気を削るようにして迫る一撃を前に、鷹山は考えた。

 わざわざ攻撃力で劣るロキでウェスタを攻撃した来たならば、狙うはコンバットトリックだと思うのだが――――

 

(さっきの岡崎君の反応……)

 

 ロキの効果で五枚のカードを見た時に反応。「よっし!」という喝采の声。だが手札に加えたのは何の変哲もない装備魔法、ワンダー・ワンド。あれではブラック・マジシャンはともかく、神であるロキは強化できない。なら、落ちたカードの中に、喝采の理由があるはずだ。

 

(五枚のカードの、どれが――――)

 

 思考は一瞬。そして、鷹山に電撃が走った。

 

勇次(ゆうじ)! 私の効果を! 奴ら、何か企んでいるぞ!」

「いや、そのタイミングはここじゃない」

 

 振り返り叫ぶウェスタに対して、鷹山は冷静だった。彼の言葉を証明するかのように、和輝が動く。

 

「この瞬間、墓地のタスケルトンの効果発動! このカードをゲームから除外することで、ロキの攻撃を無効にする!」

 

 和輝の墓地から飛び出した黒いブタ。それがロキの攻撃からウェスタを庇い、身代わりに直撃。肉も骨も全て溶解し、消えていった。

 

「な―――――、なぜ自分の攻撃を――――」

 

 訳がわからないウェスタ。だが和輝は不敵な表情。そして、ここだ! と叫んで手札から一枚のカードを引き抜いた。

 

「この瞬間、速攻魔法、ダブル・アップ・チャンス発動! ロキの攻撃力を倍にして、もう一度攻撃できる!」

「なんだと!?」

「これが狙いさ! 和輝!」

 

 驚愕するウェスタ。会心の笑みを浮かべるロキ。和輝が、二度目の攻撃宣言を下した。

 

「ロキで、もう一度ウェスタを攻撃!」

 

 ロキの全身から、さきほどに倍する量の紫のオーラが噴出。オーラは炎の龍となってウェスタに向かって突き進む。

 直撃。黒い炎龍は炎に戻り、巨大な柱となる。

 

「やったか!? いやいや、確認するまでもない。これなら確実さ!」

「お前は敵の回し者かぁ!」

 

 もう突っ込むのも疲れてきた。ロキのフラグは早速回収されるのだった。

 

「なんだ?」

 

 黒い炎が晴れ、爆煙が立ち込める。その向こうから、紅蓮の炎が蛇のようにうねりながらロキを襲う。

 

「え――――」

 

 呆然とするロキ。その上半身と下半身が食い千切られた(、、、、、、、)

 

「ロキ!?」

「こ、攻撃が、完全に入ったのに……」

 

 和輝の眼前でロキは身体が半分に千切られるという衝撃的な退場をした。

 しかも炎の蛇は今度はその標的を和輝に変更、和輝に向かって牙を剥いた。

 

「ッ!」

 

 とっさにバックステップ。追いすがる炎蛇。右足が先に地面につくと同時に強引に方向転換。倒れながらも、蛇の牙を躱した。

 

「さて、説明していいかな?」

 

 完全に爆煙が晴れた時、そこには無傷のウェスタと鷹山の姿。

 否、ウェスタの身体は、薄い朱色のヴェールに包まれていた。そしてその後ろで表側表示になっている伏せカード、攻撃の無敵化。

 

「なんだ……あれは……?」

「俺は、君の二回目の攻撃に対して、まずは攻撃の無敵化を発動した。選択したのは戦闘ダメージの無効化。そしてそれにチェーンして、ウェスタの効果も発動したのさ」

「ウェスタの効果?」

「一ターンに一度、カードを一枚選択する。選択したカードはこのターン、戦闘、カード効果では破壊されない。俺はこれをウェスタ自身に使った。これでウェスタはロキの攻撃から守られ、俺のライフも減らなかったわけだ」

 

 たしかにそうだ。これで和輝の攻撃が不発だった理由は分かった。だが、

 

「それでロキが返り討ちにあった理由が分からない。いや、想像はつく。ウェスタの効果か」

「そう。ウェスタのもう一つの効果はな、戦闘で相手モンスターを破壊できなかった時、そのモンスターをゲームから除外し、元々の攻撃力分のダメージを相手に与えるのさ」

「通りで。俺のライフが残り600しかないわけだ」

 

 苦笑する和輝。だが神を破壊され、彼は今、圧倒的窮地に立たされている。このまま何もしなければ彼の敗北は必至だ。

 

「メインフェイズ2、俺はワンダー・ワンドをブラック・マジシャンに装備して、効果を発動します。このカードとブラック・マジシャンを墓地に送り、二枚ドロー。……カードを一枚セットして、ターンエンド」

 

 

死者蘇生:通常魔法

(1):自分または相手の墓地のモンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターを自分フィールドに特殊召喚する。

 

E・HERO シャドー・ミスト 闇属性 ☆4 戦士族:効果

ATK1000 DEF1500

「E・HERO シャドー・ミスト」の(1)(2)の効果は1ターンに1度、いずれか1つしか使用できない。(1):このカードが特殊召喚に成功した場合に発動できる。デッキから「チェンジ」速攻魔法カード1枚を手札に加える。(2):このカードが墓地へ送られた場合に発動できる。デッキから「E・HERO シャドー・ミスト」以外の「HERO」モンスター1体を手札に加える。

 

閉ざせし悪戯神ロキ 神属性 ☆10 幻神獣族:効果

ATK2500 DEF2500

このカードは特殊召喚できない。このカードは3体のモンスターをリリースしてのみ通常召喚できる。(1):このカードは神属性、幻神獣族モンスターの効果以外のカード効果ではフィールドを離れず、コントロールも変更されない。(2):このカードが相手のカードの効果を受けた時、エンドフェイズにこのカードに対するそのカード効果を無効にする(3):このカードの召喚に成功した時発動できる。自分のデッキの上からカードを5枚めくる。その中からカードを1枚選んで手札に加えることができる。残りのカードは墓地に送る。(4):このカードを手札から墓地へ送り、相手フィールドの効果モンスター1体を対象として発動できる。その相手モンスターの効果をターン終了時まで無効にする。この効果は相手ターンでも発動できる。

 

タスケルトン 闇属性 ☆2 アンデット族:効果

ATK700 DEF600

モンスターが戦闘を行うバトルステップ時、墓地のこのカードをゲームから除外して発動できる。そのモンスターの攻撃を無効にする。この効果は相手ターンでも発動できる。「タスケルトン」の効果はデュエル中に1度しか使用できない。

 

ダブル・アップ・チャンス:速攻魔法

モンスターの攻撃が無効になった時、そのモンスター1体を選択して発動できる。このバトルフェイズ中、選択したモンスターはもう1度だけ攻撃できる。その場合、選択したモンスターはダメージステップの間、攻撃力が倍になる。

 

攻撃の無敵化:通常罠

バトルフェイズ時にのみ、以下の効果から1つを選択して発動できる。

●フィールド上のモンスター1体を選択して発動できる。選択したモンスターはこのバトルフェイズ中、戦闘及びカードの効果では破壊されない。

●このバトルフェイズ中、自分への戦闘ダメージは0になる。

 

守護の炎神ウェスタ 神属性 ☆10 幻神獣族:効果

ATK3000 DEF3000

このカードは特殊召喚できない。このカードは3体のモンスターをリリースしてのみ通常召喚できる。(1):このカードは神属性、幻神獣族モンスターの効果以外のカード効果ではフィールドを離れず、コントロールも変更されない。(2):このカードが相手のカードの効果を受けた時、エンドフェイズにこのカードに対するそのカード効果を無効にする。(3):1ターンに1度、自分フィールドのカード1枚を選択して発動できる。選択したカードはターン終了時まで戦闘及びカードの効果によって破壊されない。この効果は相手ターンでも発動できる。(4):このカードが戦闘で相手モンスターを破壊できなかったダメージステップ終了時に発動する。戦闘した相手モンスターをゲームから除外し、除外したモンスターの元々の攻撃力分のダメージを相手に与える。

 

 

和輝LP3100→600手札4枚(うち1枚はE・HERO プリズマー)

鷹山LP2300手札1枚

 

 

「俺のターンだ、ドロー」

 

 ドローしたカードはサイクロン。鷹山としては、追撃できるモンスターが欲しかったが、贅沢は言えまい。何よりサイクロンは有用だ。

 伏せカードがあるが、ウェスタの耐性はほぼ最上位。ならばここは、何度でも壁――または剣――を呼び出せる永遠の魂を取り除くべきだ。

 

「速攻魔法、サイクロン発動。岡崎君、君の場にある永遠の魂を破壊しよう」

 

 一陣の風が竜巻となり刃となって、和輝の場にあった永続罠を切り刻む。永遠の絆とも、忠義の証ともいえる石板が砕け散った。これで、ブラック・マジシャンは何度も蘇ることができなくなった。

 

「バトルだ。ウェスタでダイレクトアタック!」

 

 神が動く。ウェスタは両掌の上に炎を漲らせ、同時にはなった。

 炎は中空で一つにまとまり、全てを焼き尽くし、飲み干さんばかりの轟炎となって和輝に襲い掛かった。

 

「墓地の虹クリボーの効果発動! このカードを守備表示で特殊召喚する!」

 

 和輝の墓地から、ポンという軽やかな音とともに、虹色を基調とした小さな生物が現れる。

 和輝を守るために立ちはだかった小生物は、一瞬にして焼き尽くされてしまった。

 

「ひっどい光景」

「デュエルモンスターズには付き物だよ。自身の効果で特殊召喚された虹クリボーがフィールドを離れたため、ゲームから除外される」

「まだ、敗北を受け入れぬか。お前の守りは全て失ったぞ、契約者の少年。いや、岡崎和輝よ」

 

 ウェスタの声が和輝の耳朶を叩く。そう。虹クリボーを失った時点で、和輝にはもう身を守る手段はない。

 

「お前は、どうするつもりだ?」

「勿論。こっから、逆転する」

 

 前を見る和輝の瞳は力強く、己の勝利を疑っていない。ウェスタは口元に笑みを浮かべた。

 

「面白い。面白いぞ少年! ならば、私を突破してみろ! さぁ勇次、まずはターンを終了するんだ! もうできる事はあるまい!」

「はいよ。俺はこれでターンエンド」

 

 言いながらもやはり鷹山は和輝に対して好感を抱いていた。こんな風に、力に屈さない強い瞳を持つ少年。そんな少年と知り合えたのは幸運だ。

 

 

サイクロン:速攻魔法

(1):フィールドの魔法・罠カード1枚を対象として発動できる。そのカードを破壊する。

 

虹クリボー 光属性 ☆1 悪魔族:効果

ATK100 DEF100

「虹クリボー」の以下の効果はそれぞれ1ターンに1度ずつ発動できる。

●相手モンスターの攻撃宣言時に発動できる。このカードを手札から装備カード扱いとしてそのモンスターに装備する。この効果でこのカードを装備しているモンスターは攻撃できない。

●相手モンスターの直接攻撃宣言時に発動できる。このカードを墓地から特殊召喚する。この効果で特殊召喚したこのカードは、フィールド上から離れた場合ゲームから除外される。

 

 

「俺のターン、ドロー!」

 

 勝つために、和輝はカードをドロー。そして、

 

「和輝、勝算は?」

「ある! さっきのターン、鷹山さんが俺の伏せカードを破壊しなかったことが、勝機につながった! 魔法カード、龍の鏡(ドラゴンズ・ミラー)発動! そしてそれにチェーンして、伏せていたトラップカード発動! マジック・キャプチャー! 手札のプリズマーを捨てて、今発動した龍の鏡を回収する!」

「融合カードを、二連続で使うか!」

 

 どこか嬉しそうな声音の鷹山が叫ぶ。和輝はにやりと笑った。

 

「一体目! 墓地のダークエンド・ドラゴンとE・HERO ブレイズマンを除外融合!」

 

 和輝のフィールド、その頭上に、空間の捻じれのような渦が出現、その渦の中に、和輝の墓地からダークエンド・ドラゴンとブレイズマンが飛び込んでいく。

 

「深淵の暗黒竜よ、炎熱の英雄よ。今一つとなって波動の竜騎士へと変じよ! 融合召喚、現れろ、波動竜騎士 ドラゴエクィテス!」

 

 渦の向こうから現れる新たなモンスター。

 金縁の青い鎧、広げられた両翼、大地を打ち据える赤い尻尾、肩に担ぐように構えた突撃槍(ランス)。威風堂々とした姿の竜人型の騎士。

 だが、これ一体だけではない。

 

「もう一度、龍の鏡を発動! 墓地のブラック・マジシャンと竜騎士ブラック・マジシャン・ガールを除外融合!」

 

 二度目の融合召喚。今度もまた、空間のゆがみに二体のモンスターが飛び込んでいく。

 

「黒衣の魔術師よ、竜騎士の少女よ! 今一つとなって魔を断つ竜魔導士へと変じよ! 融合召喚、現れろ、呪符竜(アミュレット・ドラゴン)!」

 

 そして現れたのは、全身に金色の、魔術的文字が浮かび上がる緑の竜と、その背に跨るブラック・マジシャン。和輝のデッキのエースカード、ブラック・マジシャンの新たな可能性。

 

「この瞬間、呪符竜の効果発動! 俺と鷹山さんの墓地にある魔法カードを全て除外して、除外した数×100ポイント、呪符竜の攻撃力をアップさせる! 除外したカードの合計は十三枚、よって攻撃力は1300ポイントアップします!」

 

 攻撃力4200の呪符竜。そして、鷹山は「ああ」と頷いた。

 彼には見えたのだ。このデュエルの結末が。

 

「こりゃあ、俺の負けかなぁ」

 

 参った参ったと、鷹山は後頭部を掻く。

 ドラゴエクィテスには、カード効果によるダメージを相手に反射する効果を持っている。

 そして、ウェスタの効果は強制効果。ウェスタが自身の効果で身を守れば、バーンダメージを反射されて鷹山の敗北。

 ウェスタを守らなければ、そのままダイレクトアタックを受けて、やはり鷹山の敗北。

 

「すまんウェスタ。負けちまった」

「いや、まだ負けではない。そうだろう勇次? 宝珠を砕かれなければ、神々の戦争は継続するのだ」

 

 燃え盛る炎の髪を振り乱し、ウェスタは雄々しく笑う。その笑みに引かれ、鷹山も笑った。おおらかな笑みだった。

 

「さぁ、来なさいよ岡崎君!」

「行きます! 呪符竜でウェスタを攻撃!」

 

 竜に跨った魔術師が杖を振るう。応えた竜が(アギト)を開き、内部から黄金の息吹(ブレス)を放つ。

 ここで選択が上がる。鷹山はウェスタの効果を使い、彼女を守るのか、どうか。

 守れば呪符竜はその後の強制効果で排除できる。だが直後、バーンダメージはドラゴエクィテスによって反射され、鷹山の敗北だ。

 守らなければそのままがら空きのフィールドを、やはりドラゴエクィテスによって進軍され、鷹山は負ける。

 ようは、どういう負け方を選ぶか、だ。

 ウェスタが鷹山を振り返る。その眼が言っていた。お前の判断に従うと。

 ふっと、鷹山は口元に笑みを浮かべた。

 

「だったら、これだな。ウェスタの効果発動! ウェスタ自身を守る!」

 

 鷹山の選択の結果。ウェスタを囲む様に薄赤色のヴェールが展開。呪符竜の金色の奔流を防ぎ切った。

 

「この瞬間、ウェスタの強制効果が発動。呪符竜を除外し、その元々の攻撃力分のダメージを与える」

 

 ウェスタが、自信に満ちた身を浮かべて両手を振るう。その動きに合わせて炎が踊り、蛇となって呪符竜を、竜も魔術師ももろともに焼き尽くす。

 炎は消えず、意志ある物のごとく蠢き、和輝自身に向かって襲い掛かった。

 

「ドラゴエクィテスの効果発動! 俺への効果ダメージを、相手に跳ね返す!」

 

 和輝を襲う炎の前に立ちはだかる波動竜騎士。手にした槍を風車のように回転させ、炎を食い止め、あまつさえ、そのまま鷹山に向かって跳ね返す。

 

「これで終わりです!」

 

 ウェスタの炎が鷹山に向かう。なんと、鷹山は腰を据え、迎え撃った。

 着弾、そして、爆発。粉塵が舞い上がり、鷹山のライフを0にした。

 

 

龍の鏡:通常魔法

自分のフィールド上または墓地から、融合モンスターカードによって決められたモンスターをゲームから除外し、ドラゴン族の融合モンスター1体を融合デッキから特殊召喚する。(この特殊召喚は融合召喚扱いとする)

 

マジック・キャプチャー:通常罠

自分が魔法カードを発動した時、手札を1枚捨ててチェーン発動する。チェーン発動した魔法カードが墓地へ送られた時、そのカードを手札に戻す。

 

波動竜騎士 ドラゴエクィテス 風属性 ☆10 ドラゴン族:融合

ATK3200 DEF2000

ドラゴン族シンクロモンスター+戦士族モンスター

このカードは融合召喚でのみエクストラデッキから特殊召喚する事ができる。1ターンに1度、墓地に存在するドラゴン族のシンクロモンスター1体をゲームから除外し、エンドフェイズ時までそのモンスターと同名カードとして扱い、同じ効果を得る事ができる。また、このカードがフィールド上に表側攻撃表示で存在する限り、相手のカードの効果によって発生する自分への効果ダメージは代わりに相手が受ける。

 

呪符竜 闇属性 ☆8 ドラゴン族:融合

ATK2900 DEF2500

「ブラック・マジシャン」+ドラゴン族モンスター

このカードは上記カードを融合素材にした融合召喚または「ティマイオスの眼」の効果でのみ特殊召喚できる。(1):このカードが特殊召喚に成功した場合、自分・相手の墓地の魔法カードを任意の数だけ対象として発動する。そのカードを除外し、このカードの攻撃力はその除外したカードの数×100アップする。(2):このカードが破壊された場合、自分の墓地の魔法使い族モンスター1体を対象として発動できる。その魔法使い族モンスターを特殊召喚する。

 

 

鷹山LP2300→1000→0手札1枚

 

 

 バトルフィールドが消失し、和輝と鷹山は元の空間に戻っていた。

 

「どうやら、宝珠は守られたみたいだね。まさかあの炎を受け止めるとは……」

 

 和輝の背後に出現したロキが、呆れと感嘆を混ぜた声音でそう言った。

 ロキの言葉通り、鷹山は自分の宝珠を守り切った。その証拠に、彼の背後には不機嫌な表情を浮かべたウェスタの姿があった。

 

「ま、何とか無事だったな」

 

 朗らかに笑う鷹山。かなりの激闘だったが、彼は一切の疲れをにじませない。寧ろダメージは和輝より多そうなのに、だ。

 

「あの、これで俺たち戦う必要ないですよね? もう、どちらかが脱落するまで戦うってのは―――――」

「心配せずとも、そのようなことは言わない」

 

 不機嫌そうなウェスタだったが、和輝の危惧にはそう答えてくれた。それから和輝に向かって頭を下げた。

 

「すまなかったな、岡崎君。一方的すぎた」

「あれあれあれ? ボクに対する謝罪なくない?」

「黙れロキ。貴様の下半身のだらしなさは真実であろう。よいか岡崎君、この男のようにはなるな。女にだらしない男は滅びの原因だ」

「気をつけます」

 

 「ひどくない!?」というロキの叫びを全員が無視。徐々にざわつき始める廊下の方を見て、鷹山が肩をすくめた。

 

「そろそろ撮影が再開されるな。岡崎君」

 

 和輝に向かって手を差し出す鷹山。

 

「お互い、生き残ろう。神々の戦争について何かあったら、連絡する。」

「はい!」

 

 和輝は差し出された手を握り返した。

 誓いの握手。戦いの合間に歳の離れた友情を結んだ二人は笑顔で交わし合った。

 

 

 ちなみに、ロキと和輝はその後、ちゃんと鷹山からサインをもらえた。しかも和輝は綺羅(きら)の分も貰えた。綺羅の和輝への評価が上がった。

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