神々の戦争   作:tuki21

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第15話:進撃の巨竜

 夜の公園に展開されたバトルフィールド。

 神々の戦争のためのその場所で、対峙するのは二人の少年。

 岡崎和輝(おかざきかずき)黒神烈震(くろかみれっしん)

 互いのデュエルディスクは起動済み、最初の宣言も終了。和輝の胸元には赤の、烈震の胸元には緑の宝珠の輝きが見られる。

 準備万端。後はただ、カードを剣に見立てて雌雄を決するのみ。

 

 

和輝LP8000手札5枚

烈震LP8000手札5枚

 

 

(オレ)の先攻だ。―――――カードを一枚セットし、ターンエンド」

「何?」

「モンスターを出さないの?」

 

 カードを一枚セットしただけでターンを終えた烈震に対し、和輝はわずかな警戒をにじませた怪訝な表情を、半透明のロキは単純に困惑した表情を浮かべた。

 

「どうした? お前のターンだ」

 

 対して烈震は泰然とした姿勢を崩さない。和輝は「そうだな」と気を取り直し、己のターンを開始した。

 

「俺のターンだ、ドロー」

 

 カードをドローした和輝は、思考を再び烈震の行動についてに戻す。

 

「手札事故かな?」

 

 ロキが一番単純な可能性を示した。もっとも、口に出したロキにしても、この可能性は低いだろうと思っていた。ただ、一応一番最初に頭によぎる思考を口にしてみた程度だ。

 

「むしろ、手札に防御なりカウンター用のカードを抱えているか、だ。あの伏せカードがフリーチェーンなら、こちらの攻撃に合わせて発動。あえて無防備になったところで一撃を受け、手札から冥府の使者ゴーズの特殊召喚とかな。もしくは護封剣の剣士で半端な攻撃に対してカウンター、次のあいつのターンで一気に攻勢に出る、か」

 

 いずれにしてもすべて可能性。確かめるには、

 

「虎穴に入らざれば虎子を得ず。踏み込むか。俺はレスキューラビットを召喚し、効果を発動。このカードをゲームから除外して、デッキから魔法剣士ネオを二体、特殊召喚する」

 

 和輝のフィールドに、額にゴーグルをかけ、首からお守りを下げた兎が現れ、すぐに背景に溶け込むように消えていった。

 代わりに現れたのは、金髪に、文様が描かれた鎧を身に纏った剣士が二体、現れる。いずれも右手に剣を、左手の人差し指に、白い光を宿らせている。

 

「魔法剣士ネオ、か。だが、レスキューラビットの効果で特殊召喚するレベル4魔法使いなら、より攻撃力の高いヂェミナイ・エルフがいたはずだが?」

「あっちじゃ属性が俺のデッキと会わなくてな。その結果、こっちになったわけだ。

 

 さぁバトルだ! まずは魔法剣士ネオ一号でダイレクトアタック!」

 和輝の命令が下り、魔法剣士のうち、一体が剣を淡い白い光で輝かせながら地を蹴り、烈震に向かって肉薄した。が、烈震は慌てず、デュエルディスクを操作した。

 

「リバーストラップ発動。針虫の巣窟。デッキから五枚のカードを墓地に送る」

 

 翻ったのは和輝の予想の一つにあった、フリーチェーンの(トラップ)カード。烈震のデッキトップから五枚のカードが一気に墓地に落とされる。落ちたのはカードガンナー、スキル・サクセサー、ボルト・ヘッジホッグ、レベル・スティーラー、ラブラドライ・ドラゴン。次のターンの反撃の布石にはなりそうだが、防御カードはなかった。

 そのままネオの剣が振り下ろされる。烈震はネオの肉薄に合わせて僅かに腰を落とした。避けるのではなく、その姿は迎撃の意思を表していた。

 

「まさか――――」

 

 ロキの声が、僅かに驚嘆を含んでいた。それはある予感のためだ。

 剣が、烈震の左肩口に向かう。が、烈震の身体が僅かに揺らぎ(、、、)、次の瞬間、掲げられた左(こぶし)の甲が剣の側面に添えられ、ほんの少しの力でエネルギーの流れ(、、)を乱された剣撃の軌道が変化、烈震の肩口を狙っていたそれは大きく姿勢が崩れて地面に当たった。

 同時、烈震はさらに腰を落とし、膝を曲げてネオの懐に入りこみ、左肩を使ったショルダータックルを見舞う。

 肉薄の勢いを利用されたカウンターによって、攻撃を仕掛けた側のネオの身体が冗談に様に吹き飛んだ。

 数値の上では、烈震のライフは確かにネオの攻撃力分削られた。だがこれでは、どちらがダメージを負ったのか分からない。

 

「な―――――」

「これは―――――」

 

 驚愕に目を見開く和輝。そして驚嘆と呆れ、そしてわずかな賞賛の念を混ぜた複雑な声音で呟いたロキ。

 確かに驚愕すべき場面だろう。バトルフィールド内故に身体能力が上がっているとはいえ、まさかただの人間が、モンスターの攻撃をいなすばかりか、カウンターでふっとばすなど。

 

「……どっちがモンスターかわからないな」

「……人間の可能性を見たね」

 

 若干思考がフリーズした一人と一柱。その様子を烈震は淡々と見据え、その背後で透けていたトールが爆笑した。

 

「やっぱオマエらも驚くよなー。つか、今まで戦った奴らみんなそうだったわ」

「そりゃ……、そうだろ。まさか――――――」

「まさか、などということは存在しない」

 

 まだ驚愕から立ち直れない和輝に対して、烈震はさもなんでもないことの様に告げた。

 

「己によって、神々の戦争は自己を高める修練の場だ。(おのれ)が身につけた心技体、全てを生かせる場所として。そして、岡崎。お前は、己を高めてくれるか? トールおすすめのロキのパートナーよ。期待している。

 ―――――ゲームの続きだ。己のフィールドにカードがない際に戦闘ダメージを受けたため、手札から冥府の使者ゴーズを特殊召喚する」

 

 烈震のフィールドに、新たなモンスターが現れた。

 肩を晒した軽装鎧に前腕部に刃の付いた篭手を備え、肉厚の大剣を持った男性の騎士。装備したバイザー故に顔は窺えない。

 

「さらに、己のフィールドに、冥府の使者カイエントークンを守備表示で特殊召喚する」

 

 新たに、ゴーズの傍らに現れたのは、漆黒の甲冑をまとった女騎士。ゴーズと違い、手にした剣は普通の長剣だ。

 

「カイエントークンの攻守は己が受けたダメージとなる。よって1700だ」

 

 カイエントークンは守備表示。魔法剣士ネオにとっては超えられない壁になる。

 だが――――

 

ゴーズ(そいつ)が出ることは想定済みだ! 手札から速攻魔法、ディメンション・マジック発動! 攻撃を終えたネオ一号をリリースし、手札からブラック・マジシャンを特殊召喚!」

 

 人型の棺が和輝のフィールドに現れ、攻撃を終えた魔法剣士ネオをその中に収納する。棺が次に開かれた時、そこにはネオの姿はなく、代わりに眉目秀麗な、黒衣の魔法使いが存在していた。

 ユーモアと不敵さとわずかな冷徹さを備えていながらもどこかすっきりする淡い笑みを浮かべて、和輝のフィールドの降臨した。

 

「ディメンション・マジックの効果で、ゴーズを破壊。さらにブラック・マジシャンでカイエントークンを攻撃」

 

 パチンと和輝が指を鳴らす。それを合図とし、ブラック・マジシャンが無手の左手をゴーズに向かって突きつけた。

 次の瞬間、突き付けられた左掌から放たれた黒い波動が冥府の使者に直撃。鎧も武器も、その向こうの生身の身体もひっくるめて文字通り粉砕した。

 追撃。黒衣の魔法使いが杖を振るい、その軌跡に沿って黒い稲妻が出現、稲妻は猟犬と化して黒い女騎士に殺到、その全身に食らいついた。

 

「…………」

 

 烈震は無言。しかし彼への道は再び開いた。

 

「ネオ二号でダイレクトアタック!」

 

 がら空きになった烈震のフィールドを、二体目の魔法剣士が突き進む。

 結果は先程と同じ。烈震のライフこそ削れたものの、ネオが振り下ろした一閃は容易くいなされ、カウンターの一撃を受けて吹き飛ばされた。

 

「でたらめに過ぎる……」

「だが、ライフは削っている。前進はしているんだ。バトルフェイズを終了し、手札から魔法カード、馬の骨の対価を発動。魔法剣士ネオを墓地に送り、カードを二枚ドロー。カードを一枚セットして、ターンエンド」

 

 

レスキューラビット 地属性 ☆4 獣族:効果

ATK300 DEF100

「レスキューラビット」の効果は1ターンに1度しか使用できない。このカードはデッキから特殊召喚できない。(1):フィールドのこのカードを除外して発動できる。デッキからレベル4以下の同名の通常モンスター2体を特殊召喚する。この効果で特殊召喚したモンスターはエンドフェイズに破壊される。

 

魔法剣士ネオ 光属性 ☆4 魔法使い族:通常モンスター

ATK1700 DEF1000

 

針虫の巣窟:通常罠

自分のデッキの上からカードを5枚墓地へ送る。

 

冥府の使者ゴーズ 闇属性 ☆7 悪魔族:効果

ATK2700 DEF2500

自分フィールド上にカードが存在しない場合、相手がコントロールするカードによってダメージを受けた時、このカードを手札から特殊召喚する事ができる。この方法で特殊召喚に成功した時、受けたダメージの種類により以下の効果を発動する。●戦闘ダメージの場合、自分フィールド上に「冥府の使者カイエントークン」(天使族・光・星7・攻/守?)を1体特殊召喚する。このトークンの攻撃力・守備力は、この時受けた戦闘ダメージと同じ数値になる。●カードの効果によるダメージの場合、受けたダメージと同じダメージを相手ライフに与える。

 

ディメンション・マジック:速攻魔法

自分フィールド上に魔法使い族モンスターが存在する場合、自分フィールド上のモンスター1体を選択して発動できる。選択した自分のモンスターをリリースし、手札から魔法使い族モンスター1体を特殊召喚する。その後、フィールド上のモンスター1体を選んで破壊できる。

 

ブラック・マジシャン 闇属性 ☆7 魔法使い族:通常モンスター

ATK2500 DEF2100

 

馬の骨の対価:通常魔法

効果モンスター以外の自分フィールド上に表側表示で存在するモンスター1体を墓地へ送って発動できる。デッキからカードを2枚ドローする。

 

 

和輝LP8000手札3枚

烈震LP8000→6300→4600手札3枚

 

 

「己のターンだ、ドロー」

 

 一気にライフを半分近くまで減らされた烈震だったが、彼に動揺は一切ない。それどころか、高揚感すら伝わってきた。これからの戦いに、彼の血が湧き、肉が踊っているのだ。

 

「まずは永続魔法、天輪(てんりん)の鐘楼を発動する。これにより、シンクロ召喚に成功したプレイヤーはカードを一枚ドローできる」

 

 烈震のフィールドに、少女を象った鐘が現れる。両腕が小さな鐘に、下半身が大きな鐘になっており、祝福の音色を奏でる。

 

「デブリ・ドラゴンを召喚。効果でカードガンナーを特殊召喚。さらにカードガンナーの特殊召喚に成功したこの瞬間、手札のドッペル・ウォリアーの効果発動。このカードを特殊召喚する」

 

 立て続けに烈震のフィールドにモンスターが召喚される。そのどれもが、和輝がシンクロ召喚によく使うモンスターたちだった。和輝の表情が複雑な色を帯びた。

 

「デッキからカードを三枚墓地に送り、カードガンナー効果発動」

 

 カードガンナーの身体が効果を発動しようとするが。デブリ・ドラゴンによって特殊召喚されたモンスターは効果を無効化されている。カードガンナーは一瞬身震いした後に沈黙した。

 だがこれでいい。効果は無効になっていても、効果の発動はできた。当然、発動に伴って発生するコストも払う。この場合はデッキトップから三枚のカードを墓地に送ること。この墓地肥しこそが烈震の狙いなのだ。

 落ちたカードはローンファイア・ブロッサム、ライトロード・マジシャン-ライラ、召喚僧サモンプリースト。

 だが、烈震はここで終わらなかった。

 

「墓地のボルト・ヘッジホッグの効果発動。己のフィールドにはチューナーモンスター、デブリ・ドラゴンが存在しているため、墓地からこのカードを特殊召喚する」

「四体目……」

 

 苦い表情の和輝。その眼前で、針の代わりにボルトを背中から生やしたハリネズミが現れる。

 

「シンクロ召喚、だね……」

「何が来る!?」

 

 身構える和輝とロキ。烈震はゆっくりと指先でカードを操った。

 

「レベル2、ドッペル・ウォリアー、ボルト・ヘッジホッグに、レベル4のデブリ・ドラゴンをチューニング」

 

 レベルは8。四つの緑の輪となったデブリ・ドラゴン。その輪をくぐり、それぞれ二つずつ白い光星(こうせい)となった二体のレベル2モンスター。そして、一筋の光の道が走った。

 

「連星集結、星屑飛翔。シンクロ召喚、出でよスターダスト・ドラゴン」

 

 光が辺りを照らし、その(とばり)を切り裂き、咆哮とともに現れるドラゴンが一体。

 白銀色の体躯、人に近い細身のフォルム、それでいながらも竜としての誇り高さ、強大さ、神秘さを失わない存在感。その姿には力強さ、畏怖、そして何より美しさを感じさせた。

 

「スターダスト・ドラゴン……。和輝が使っている閃珖竜(せんこうりゅう)スターダストの原型、だね……」

「ああ。効果は相互互換だな。もっとも、スターダスト・ドラゴンのほうが、進化や派生のような専用カードが多いが」

「このカードが俺のデッキのエース、そして切り札だ。まずは天輪の鐘楼の効果で一枚ドロー。さらにドッペル・ウォリアーの効果が発動し、ドッペルトークン二体を特殊召喚。ボルト・ヘッジホッグも自身の効果で除外される。

 悪いが己のシンクロはまだ終わらない。手札から速攻魔法、緊急テレポートを発動。デッキからサイコ・コマンダーを特殊召喚」

 

 烈震のデッキから直接フィールドに現れたのは、巨大な砲身がついたUFOに乗った、軍服を着た宇宙人のようなモンスター。見た目に反して種族はサイキック族なので、緊急テレポートでの特殊召喚は十分可能だ。

 

「二回目のシンクロ召喚……ッ!」

「いや、三回だ。そうだろ烈震?」

 

 ロキの戦慄に、トールが応える。にやりと不敵な笑みを浮かべるトールに対して、烈震は僅かに首を傾げて頷いた。

 

「レベル1のドッペルトークン一号に、レベル3のサイコ・コマンダーをチューニング」

 

 今度はレベル4のシンクロ召喚。先ほどのように、緑の輪と白い光星、そして白い光さす道が走る。

 

「連星集結、音子振幅。シンクロ召喚、出でよ、シンクロチューナー、波動竜フォノン・ドラゴン」

 

 新たに現れたシンクロモンスター。青や金などの極彩色に彩られたドラゴン。頭部に稲妻を思わせる突起があり、妙に細い声で吠える。

 

「天輪の鐘楼の効果で一枚ドロー。フォノン・ドラゴンの効果は使用しない。よってレベルは4のままだ。

 レベル3のカードガンナーとレベル1のドッペルトークンに、レベル4のフォノン・ドラゴンをチューニング」

 

 三回目のシンクロ召喚。前二回と同じシンクロエフェクトが辺りを照らした。

 

「連星集結、廃棄竜起動。シンクロ召喚、出でよスクラップ・ドラゴン」

 

 三体目のシンクロドラゴン。軋んだ咆哮とともに現れたのは、廃材を組み合わせてできた体躯にトタンの翼、白い蒸気を噴き上げるチューブパイプをたらしたその姿はまさに瓦礫、廃棄物の山から生まれた異形のドラゴン。赤く光る双眸が訴えるのは、怒りか嘆きか。

 

「天輪の鐘楼の効果で一枚ドロー。さらに墓地のレベル・スティーラーの効果発動。スクラップ・ドラゴンのレベルを一つ下げ、墓地からこのカードを特殊召喚する」

 

 烈震のフィールド、スクラップ・ドラゴンの傍らに現れたのは、大きなテントウムシ。背中に大きな星印があった。

 

「スクラップ・ドラゴンの効果発動。己の場のレベル・スティーラーとお前の場の伏せカードを破壊する」

 

 スクラップ・ドラゴンがレベル・スティーラーを砲弾にして砲撃。和輝の足元に増えられたカードに着弾。爆破炎上。炎と土砂の柱を上げた。

 

「く……ッ! 次元幽閉が……ッ!」

「バトルだ。スクラップ・ドラゴンでブラック・マジシャンを攻撃」

 

 攻撃宣言を受け、廃材のドラゴンがゆっくりと身を起こす。

 開かれた口内から放たれたのは鉄片交じりの息吹(ブレス)。ブラック・マジシャンは抵抗できず鋼の奔流に飲み込まれてしまった。

 

「くそ……ッ!」

 

 ダメージのフィードバックは微々たるものだが、発生した痛みに顔をしかめる和輝。だが真の痛みと驚愕はこの後に来た。

 

「スターダスト・ドラゴンでダイレクトアタック」

 

 がら空きの和輝のフィールドに、星屑の竜が迫る。

 上体をそらし、口内に白い輝きを溜め込んでいく。次の一撃に対して和輝が身構えていると、なんと、攻撃を宣言した烈震が大地を蹴り、和輝に向かって肉薄してきた。

 

「何!?」

「なんで――――」

 

 驚愕の和輝とロキ。彼らの思考を置き去りに、烈震がその巨体に似合わぬスムーズな動きでするりと和輝の懐に入ってきた。

 とっさに胸の宝珠の前で腕をクロスさせ、和輝は防御の姿勢をとった。それが功を奏した。

 

「!」

 

 腕が爆発したのかと思った。

 烈震が放ったのは掌底の一撃。バトルフィールドで身体能力が上昇している現状で受けた一撃は、和輝の身体を後方にふっとばした。

 

「な――――」

 

 和輝は声が出ず、ロキも驚愕の一言を漏らすので精いっぱいだった。

 吹き飛ばされた和輝はそのまま空中で見た。スターダスト・ドラゴンが今にもその口腔に溜め込んだ光を解き放つのを。

 空中では自由な動きがとれない。烈震はそれを見越して和輝をかちあげたのだ。タイミングが狂えば自分もドラゴンの一撃に巻き込まれるのに。

 

「くっそ!」

 

 和輝はそれでも空中で強引に身をひねった。とにかく、攻撃を前に宝珠を晒すのはまずい。

 辛うじて迫る極光に対して背中を向けることには成功した。だが直後の衝撃によって和輝は地面に叩きつけられ、さらに息吹(ブレス)と地面の間に挟まれてしまった。

 

「ぐあああああああああああああああ!」

「和輝!」

 

 ロキの叫びが衝撃と轟音、そして光の迸りにかき消された。

 

「生きてるかい?」

「ぐ……、な、なんとかな」

 

 和輝は衝撃に何とか立ち上がった。ダメージはひどい。ただ立ち上がるだけで軋むような激痛が走った。

 楽しい楽しい楽しいなぁ。このままこいつと戦い続ければ、パパとママのところに行けるぞ?

 怪物の声が聞こえてきた。全力で無視した。

 

「は……」

 

 何とか息を吐く。呼吸は痛みを和らげる。ゆえに、乱してはならない。

 和輝の耳にトールの声が届く。

 

「烈震は自分を高めるために神々の戦争に参加した。文字通りの修行だ。モンスターの攻撃を捌く、防御。そして、自身のモンスターの攻撃範囲、タイミングを見切ったうえで相手の懐に飛び込んで、一撃。ってな具合にな。ずっとそうしてきた。イカスだろ?」

「イカレてるよ……」

 

 和輝は辛うじてて吐き捨てた。烈震はスクラップ・ドラゴンのレベルを下げてレベル・スティーラーを守備表示で特殊召喚し、その後カードを一枚セットしてターンを終えた。

 

 

天輪の鐘楼:永続魔法

「天輪の鐘楼」はフィールドに1枚しか表側表示で存在できない。(1):自分または相手がS召喚に成功した場合に発動できる。そのプレイヤーはカードを1枚ドローする。

 

デブリ・ドラゴン 風属性 ☆4 ドラゴン族:チューナー

ATK1000 DEF2000

このカードをS素材とする場合、ドラゴン族モンスターのS召喚にしか使用できず、他のS素材モンスターは全てレベル4以外のモンスターでなければならない。(1):このカードが召喚に成功した時、自分の墓地の攻撃力500以下のモンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターを攻撃表示で特殊召喚する。この効果で特殊召喚したモンスターの効果は無効化される。

 

カードガンナー 地属性 ☆3 機械族:効果

ATK400 DEF400

(1):1ターンに1度、自分のデッキの上からカードを3枚まで墓地へ送って発動できる。このカードの攻撃力はターン終了時まで、この効果を発動するために墓地へ送ったカードの数×500アップする。(2):自分フィールドのこのカードが破壊され墓地へ送られた場合に発動する。自分はデッキから1枚ドローする。

 

ドッペル・ウォリアー 闇属性 ☆2 戦士族:効果

ATK800 DEF800

(1):自分の墓地のモンスターが特殊召喚に成功した時に発動できる。このカードを手札から特殊召喚する。(2):このカードがS素材として墓地へ送られた場合に発動できる。自分フィールドに「ドッペル・トークン」(戦士族・闇・星1・攻/守400)2体を攻撃表示で特殊召喚する。

 

ボルト・ヘッジホッグ 地属性 ☆2 機械族:効果

ATK800 DEF800

(2):自分メインフェイズに発動できる。このカードを墓地から特殊召喚する。この効果は自分フィールドにチューナーが存在する場合に発動と処理ができる。この効果で特殊召喚したこのカードは、フィールドから離れた場合に除外される。

 

スターダスト・ドラゴン 風属性 ☆8 ドラゴン族:シンクロ

ATK2500 DEF2000

チューナー+チューナー以外のモンスター1体以上

(1):フィールドのカードを破壊する魔法・罠・モンスターの効果が発動した時、このカードをリリースして発動できる。その発動を無効にし破壊する。(2):このカードの(1)の効果を適用したターンのエンドフェイズに発動できる。その効果を発動するためにリリースしたこのカードを墓地から特殊召喚する。

 

緊急テレポート:速攻魔法

(1):手札・デッキからレベル3以下のサイキック族モンスター1体を特殊召喚する。この効果で特殊召喚したモンスターは、このターンのエンドフェイズに除外される。

 

サイコ・コマンダー 地属性 ☆3 サイキック族:チューナー

ATK1400 DEF800

自分フィールド上のサイキック族モンスターが相手モンスターと戦闘を行うダメージステップ時に1度だけ、100の倍数のライフポイントを払って発動できる(最大500まで)。このターンのエンドフェイズ時まで、戦闘を行う相手モンスター1体の攻撃力・守備力は払った数値分ダウンする。

 

波動竜フォノン・ドラゴン 闇属性 ☆4 ドラゴン族:シンクロチューナー

ATK1900 DEF800

チューナー+チューナー以外のモンスター1体以上

このカードがシンクロ召喚に成功した時、1~3までのレベルを宣言して発動できる。このカードのレベルは宣言したレベルになる。この効果を発動したターン、自分はこのカードをシンクロ素材としたシンクロ召喚以外の特殊召喚ができない。自分は「波動竜フォノン・ドラゴン」を1ターンに1度しか特殊召喚できない。

 

スクラップ・ドラゴン 地属性 ☆8 ドラゴン族:シンクロ

ATK2800 DEF2000

チューナー+チューナー以外のモンスター1体以上

1ターンに1度、自分及び相手フィールド上に存在するカードを1枚ずつ選択して発動する事ができる。選択したカードを破壊する。このカードが相手によって破壊され墓地へ送られた時、シンクロモンスター以外の自分の墓地に存在する「スクラップ」と名のついたモンスター1体を選択して特殊召喚する。

 

レベル・スティーラー 闇属性 ☆1 昆虫族:効果

ATK600 DEF0

(1):このカードはモンスターゾーンに存在する限り、アドバンス召喚以外のためにはリリースできない。(2):このカードが墓地に存在する場合、自分フィールドのレベル5以上のモンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターのレベルを1つ下げ、このカードを墓地から特殊召喚する。

 

 

スクラップ・ドラゴンレベル8→6

 

 

和輝LP8000→7700→5200手札3枚

烈震LP4600手札2枚

 

 

「俺のターンだ、ドロー!」

 

 ライフ差は一気に縮まった。まだ数値の上では和輝が勝っているが、フィールドの状況は完全に烈震に傾いている。

 手からこぼれ落ちそうな勝負の流れ。これを掴み留めるには――――

 

「打って出るしかないよな! デッキトップからカードを三枚墓地に送り、光の援軍を発動! デッキからライトロード・メイデンミネルバを手札に加える。さらに今手札に加えたミネルバを捨てて、ソーラー・エクスチェンジを発動。カードを二枚ドロー。ソーラー・エクスチェンジとミネルバの効果で、合計三枚のカードをデッキトップから墓地に送る」

 

 和輝は次々に墓地を肥やしていく。落ちたカードはガード・オブ・フレムベル、黒白の魔導師、見習い魔術師、ライトロード・マジシャン-ライラ、ゴブリンのやりくり上手、ブラック・マジシャン・ガールの六枚。

 

「もう少し、肥やすか。ライトロード・アサシン ライデンを召喚」

 

 和輝のフィールドに現れたのは、褐色の肌をした男。

 上半身は衣服は纏っておらず、マフラーのように濃い青い布を巻き、黒のズボンには白銀の腿当てとすね当て、右手に握っているのはやや歪な形状の黄金の短剣。

 

「ライデンの効果発動。デッキトップから二枚のカードを墓地に送る」

 

 和輝のデッキからさらに二枚のカードが墓地に送られる。落ちたのはギャラクシーサーペントと次元連結術式。

 

「墓地の魔法剣士ネオを除外し、暗黒竜 コラプサーペントを特殊召喚する」

「レベル4チューナーと、レベル4モンスター。お前もシンクロか、それともランク4のエクシーズか?」

 

 烈震が静かに、淡々と問いかける。和輝は不敵な微笑で返した。

 

「勿論、目には目を。シンクロいはシンクロさ。レベル4の暗黒竜 コラプサーペントに同じくレベル4のライトロード・アサシン ライデンをチューニング!」

 

 和輝の右手が天へと掲げられ、その仕草に従うように、彼の二体のモンスターもまた宙を舞った。

 まず、ライデンが緑の光の輪となり、その輪をくぐったコラプサーペントが四つの光星となる。

 次いで、光さす道が走った。

 

「集いし八星(はっせい)が、深淵に潜みし暗黒竜を紡ぎだす! 光さす道となれ! シンクロ召喚、深き闇より現れよ、ダークエンド・ドラゴン!」

 

 光の向こう側から、二重の咆哮が轟いた。

 現れたのは、漆黒の体躯に、やや肥満気な胴体。そして本来の頭部の顔とは別にもう一つ、腹部にも顔を持つ闇の竜。

 

「天輪の鐘楼の効果で一枚ドロー。コラプサーペントがフィールドから墓地に送られたことで効果発動。デッキから輝白竜(きびゃくりゅう) ワイバースターをサーチ。そして墓地のコラプサーペントを除外して、ワイバースターを特殊召喚。

 バトル! まずはワイバースターでレベル・スティーラーを攻撃!」

 

 一撃目。ワイバースターが口からはなった白い光線がレベル・スティーラーを貫き、その小さな体を蒸発させる。熱風が頬を叩いても、烈震は微動だにしなかった。

 

「次だ。ダークエンド・ドラゴンでスターダスト・ドラゴンを攻撃」

 

 二撃目。ダークエンド・ドラゴンの頭部の口から黒い炎が放たれた。

 炎は枝分かれして我先にとスターダスト・ドラゴンに殺到。その身を捕まえ、飲み込み、焼き尽くした。

 スターダスト・ドラゴンは確かに高い防御力を持つがその攻撃力はレベル8にしては低めだ。ならば戦闘破壊は容易。この後はダークエンド・ドラゴンの効果でスクラップ・ドラゴンを墓地に送れば、脅威は去る。

 そのはずだった。

 

「スターダスト・ドラゴンが破壊されたこの瞬間、伏せていたレベル・レジスト・ウォールを発動する。このカードは己のフィールドのレベル7以上のモンスターが戦闘破壊された時に発動し、デッキから破壊されたモンスターと合計レベルが同じになるよう、モンスターを二体以上特殊召喚できる。己はレベル1のスポーア、レベル3のダンディライオン、そしてレベル4の超電磁タートルを特殊召喚する」

「何!?」

 

 和輝は驚愕に目を見開いた。

 その眼前、新たに現れたのは綿毛に愛らしい大きな目がついたようなモンスターと、たんぽぽの花弁のような(たてがみ)をした二足歩行のライオン、そして放電し、尻尾の先にU型磁石をつけた機械の亀。

 一気に三体のモンスターが展開され、和輝は歯噛みした。

 

「これは……、次のターンのシンクロ召喚は防げそうにないね」

 

 ロキの言葉は真実だ。今の和輝の陣営、手札では、次に来るだろう烈震の大量展開、多重シンクロを防ぐことはできない。

 

「なら、当初の予定通りに動くだけだ。バトルフェイズを終了し、メインフェイズ2に入る。ここで、ダークエンド・ドラゴンの効果発動。自身の攻守を500下げ、スクラップ・ドラゴンを墓地に送る」

 

 ダークエンド・ドラゴンの腹部の口が開き、そこから闇そのものが怒涛の奔流となって放出される。闇の奔流は地面を走り、スクラップ・ドラゴンを飲み込み、その闇の奥底へと引きずり込んでしまった。

 

「カードを一枚セットし、ターンエンドだ」

 

 

光の援軍:通常魔法

自分のデッキの上からカードを3枚墓地へ送って発動できる。デッキからレベル4以下の「ライトロード」と名のついたモンスター1体を手札に加える。

 

ソーラー・エクスチェンジ:通常魔法

手札から「ライトロード」と名のついたモンスター1体を捨てて発動できる。デッキからカードを2枚ドローし、その後自分のデッキの上からカードを2枚墓地へ送る。

 

ライトロード・メイデン ミネルバ 光属性 ☆3 魔法使い族:チューナー

ATK800 DEF200

このカードが召喚に成功した時、自分の墓地の「ライトロード」と名のついたモンスターの種類以下のレベルを持つドラゴン族・光属性モンスター1体をデッキから手札に加える事ができる。このカードが手札・デッキから墓地へ送られた時、自分のデッキの上からカードを1枚墓地へ送る。また、自分のエンドフェイズ毎に発動する。自分のデッキの上からカードを2枚墓地へ送る。

 

暗黒竜 コラプサーペント 闇属性 ☆4 ドラゴン族:効果

ATK1800 DEF1700

このカードは通常召喚できない。自分の墓地から光属性モンスター1体を除外した場合のみ特殊召喚できる。この方法による「暗黒竜 コラプサーペント」の特殊召喚は1ターンに1度しかできない。(1):このカードがフィールドから墓地へ送られた場合に発動できる。デッキから「輝白竜 ワイバースター」1体を手札に加える。

 

ライトロード・アサシン ライデン 光属性 ☆4 戦士族:チューナー

ATK1700 DEF1000

自分のメインフェイズ時に発動できる。自分のデッキの上からカードを2枚墓地へ送る。この効果で墓地へ送ったカードの中に「ライトロード」と名のついたモンスターがあった場合、このカードの攻撃力は相手のエンドフェイズ時まで200ポイントアップする。「ライトロード・アサシン ライデン」のこの効果は1ターンに1度しか使用できない。また、自分のエンドフェイズ毎に発動する。自分のデッキの上からカードを2枚墓地へ送る。

 

ダークエンド・ドラゴン 闇属性 ☆8 ドラゴン族:シンクロ

ATK2600 DEF2100

チューナー+チューナー以外の闇属性モンスター1体以上

1ターンに1度、このカードの攻撃力・守備力を500ポイントダウンし、相手フィールド上に存在するモンスター1体を墓地へ送る事ができる。

 

輝白竜 ワイバースター 光属性 ☆4 ドラゴン族:効果

ATK1700 DEF1800

このカードは通常召喚できない。自分の墓地から闇属性モンスター1体を除外した場合のみ特殊召喚できる。この方法による「輝白竜 ワイバースター」の特殊召喚は1ターンに1度しかできない。(1):このカードがフィールドから墓地へ送られた場合に発動できる。デッキから「暗黒竜 コラプサーペント」1体を手札に加える。

 

レベル・レジスト・ウォール:通常罠

(1):自分フィールドのレベル7以上のモンスターが戦闘で破壊され、墓地に送られた時に発動できる。合計レベルが破壊されたモンスターと同じになるように、デッキから2体以上のモンスターを特殊召喚する。

 

スポーア 風属性 ☆1 植物族:チューナー

ATK400 DEF800

このカードが墓地に存在する場合、このカード以外の自分の墓地の植物族モンスター1体をゲームから除外して発動できる。このカードを墓地から特殊召喚し、この効果を発動するために除外したモンスターのレベル分だけこのカードのレベルを上げる。「スポーア」の効果はデュエル中に1度しか使用できない。

 

ダンディライオン 地属性 ☆3 植物族:効果

ATK300 DEF300

(1):このカードが墓地へ送られた場合に発動する。自分フィールドに「綿毛トークン」(植物族・風・星1・攻/守0)2体を守備表示で特殊召喚する。このトークンは特殊召喚されたターン、アドバンス召喚のためにはリリースできない。

 

超電磁タートル 光属性 ☆4 機械族:効果

ATK0 DEF1800

「超電磁タートル」の効果はデュエル中に1度しか使用できない。(1):相手バトルフェイズに墓地のこのカードを除外して発動できる。そのバトルフェイズを終了する。

 

 

ダークエンド・ドラゴン攻撃力2600→2100守備力2100→1600

 

 

和輝LP5200手札2枚

烈震LP4600→4500手札2枚

 

 

「己のターンだ、ドロー」

 

 ドローカードを一瞥で確認した烈震は、即座に行動に出た。

 

「レベル4の超電磁タートルと、レベル3のダンディライオンに、レベル1のスポーアをチューニング」

 

 都合四回目のシンクロ召喚。先ほどと同じシンクロエフェクトが宙に走り、白い光が辺りを満たした。

 

「連星集結、焔王竜(えんおうりゅう)出陣。シンクロ召喚、吠えろ、レッド・デーモンズ・ドラゴン」

 

 光の向こうから現れたのは、人型に近い、悪魔を思わせるすらりとした体型のドラゴン。赤をメインに、黒で周りを固めた色彩に、力強く広げられた両翼、拳は人間の様に五指で握られ、三本角を誇らしげにさらして大きく吠えた。

 

「天輪の鐘楼の効果で一枚ドロー。ダンディライオン効果発動。己のフィールドに二体の綿毛トークンが特殊召喚される」

 

 レッド・デーモンズ・ドラゴンの傍らに、勇ましげな表情をした漫画チックな二体の綿毛が現れる。これもまた、烈震の次なる展開のための一手だ。

 パートナーの頼もしさに笑うトールを背後に置いて、烈震はさらに言葉を重ね、カードを操る。

 

「墓地のスポーアの効果発動。墓地のローンファイア・ブロッサムをゲームから序除外し、スポーア(このカード)を特殊召喚する。この際、スポーアのレベルは除外したローンファイア・ブロッサムのレベル分アップするので、レベルは4となる」

「合計レベルは、6か」

 

 ロキの声が和輝の背中に聞こえる。和輝は苦い表情だった。

 

「レベル1の綿毛トークン二体に、レベル4となったスポーアをチューニング」

 

 二つの光星が光さす道となり、新たなモンスターを紡ぎだす。

 

「連星集結、東洋竜結実。シンクロ召喚、出でよオリエント・ドラゴン」

 

 光の向こうから、咆哮とともに青白い炎が放たれる。炎はダークエンド・ドラゴンを直撃、その身体を焼き尽くした。

 

「な、なに!?」

 

 ロキの驚愕に応えるように、それを成したモンスターが現れる。

 それは、東洋の龍によく似ていた。ただし、東洋の龍には珍しく、足が生えており、背には猛禽類を思わせる翼をはやしていた。

 

「オリエント・ドラゴンはシンクロ召喚成功時、相手シンクロモンスターを一体除外する。カードの知識を仕入れようぜ?」

 

 トールがにやりと笑って説明する。ロキはぐっと言葉を詰まらせた。

 

「トールの説明があったので。次に行こう。ジャンク・シンクロンを召喚。効果で墓地からスポーアを特殊召喚。レベル4以下のモンスターの特殊召喚に成功したこの瞬間、手札からTG(テックジーナス) ワーウルフを特殊召喚する」

 

 現れたのはまたも和輝もよく使っているチューナーモンスター。オレンジの耐火服のようなスーツに身を包み、背中にエンジンを背負って降り立つ、ちょっとコミカルなモンスター。その手が烈震の墓地に突っ込まれ、今二回ほどシンクロ素材になったスポーアを引っ張り上げた。さらにスポーアの傍らに現れたのは、体の各所――特に左腕を重点的に――機械化した人狼(ワーウルフ)。瞬く間にシンクロ素材が揃った。

 

「レベル3のTG ワーウルフに、レベル1のスポーアをチューニング。――――連星集結、魔剣士出現。シンクロ召喚、出でよ魔界闘士バルムンク」

 

 現れるのは鎧状の黒い皮膚にマント姿、剣を備えた剣士。赤く光る眼光が鋭い。

 

「天輪の鐘楼の効果で一枚ドロー。さらにレベル4のバルムンクに、レベル3のジャンク・シンクロンをチューニング!」

 

 烈震は止まらない。シンクロモンスターさえも踏み台にした連続召喚。光のさす道が新たなモンスターを導く。

 

「連星集結、色即是空。シンクロ召喚、出でよクリアウィング・シンクロ・ドラゴン!」

 

 シンクロドラゴンが風を切って夜の自然公園に出現する。

 透き通った青い結晶のような背翼と尾翼に白と黒のストライプカラー、長い尻尾を鞭のようにしならせて烈震のフィールドに現れた。

 

「ドラゴンが、三体か……ッ!」

「やりがいがあるじゃねぇか」

 

 不敵に笑う和輝。だが不利は否めない。

 

「天輪の鐘楼の効果で一枚ドロー。バトルだ。クリアウィング・シンクロ・ドラゴンでワイバースターに攻撃」

 

 攻撃宣言が下される。クリアウィング・シンクロ・ドラゴンの全身が淡い緑に輝き、そのまま突撃(チャージ)。猛烈にして無慈悲な一撃が叩き込まれ、ワイバースターは抵抗もできず消滅した。

 

「まだだ! ワイバースターの効果で、デッキから二枚目のコラプサーペントをサーチ!」

「オリエント・ドラゴンでダイレクトアタック」

 

 追撃は容赦ない。がら空きになったフィールドに、和輝めがけて放とうと、オリエント・ドラゴンが口内に青白い炎を溜め込んだ。

 同時に烈震も動きだしていた。先ほどと同じく、まず和輝の動きから自由を奪ったうえで、モンスターの攻撃を当てようというのだ。

 だが――――

 

「ぬ?」

 

 烈震が訝しげに眉を寄せた。その身体が疾走の途中で不自然に停止していた。

 見ればオリエント・ドラゴンも同じだ。今にも口内の炎を放とうとしているところで、動きを止めていた。

 種明かしは単純。和輝が今、手札から発動したカードの効果だ。

 

「……手札のバトルフェーダーの効果発動。バトルフェイズを終了し、このカードを守備表示で特殊召喚する」

 

 カチコチと、規則正しいリズムで左右に揺れるメトロノームを悪魔化したようなモンスター。それが和輝のフィールドに現れ、全ての攻撃を止めていたのだった。

 

「なるほどな。ならばメインフェイズ2、カードを三枚セットする。これでターン―――――」

「まった。お前のエンドフェイズ、俺は伏せいてたトゥルース・リインフォースを発動する。デッキから、ドッペル・ウォリアーを守備表示で特殊召喚する」

 

 和輝も負けない。次の反撃に対する手はずを整えるとばかりに、伏せカードを翻した。

 烈震はにやりと笑った。楽しそうに。ここで終わるはずがないよなと、そう期待を込めるかのように。

 

「面白い。改めて、ターンエンドだ」

 

 

レッド・デーモンズ・ドラゴン 闇属性 ☆8 ドラゴン族:シンクロ

ATK3000 DEF2000

チューナー+チューナー以外のモンスター1体以上

(1):このカードが相手の守備表示モンスターを攻撃したダメージ計算後に発動する。相手フィールドの守備表示モンスターを全て破壊する。(2):自分エンドフェイズに発動する。このカードがフィールドに表側表示で存在する場合、このカード以外のこのターン攻撃宣言をしていない自分フィールドのモンスターを全て破壊する。

 

オリエント・ドラゴン 風属性 ☆6 ドラゴン族:シンクロ

ATK2300 DEF1000

チューナー+チューナー以外のモンスター1体以上

このカードがシンクロ召喚に成功した時、相手フィールド上のシンクロモンスター1体を選択してゲームから除外する。

 

ジャンク・シンクロン 闇属性 ☆3 戦士族:チューナー

ATK1300 DEF500

(1):このカードが召喚に成功した時、自分の墓地のレベル2以下のモンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターを守備表示で特殊召喚する。この効果で特殊召喚したモンスターの効果は無効化される。

 

TG ワーウルフ 地属性 ☆3 獣戦士族:効果

ATK1200 DEF0

レベル4以下のモンスターが特殊召喚に成功した時、このカードを手札から特殊召喚する事ができる。フィールド上に存在するこのカードが破壊され墓地へ送られたターンのエンドフェイズ時、自分のデッキから「TG ワーウルフ」以外の「TG」と名のついたモンスター1体を手札に加える事ができる。

 

魔界闘士バルムンク 闇属性 ☆4 戦士族:シンクロ

ATK2100 DEF800

チューナー+チューナー以外のモンスター1体以上

このカードがカードの効果によって破壊され墓地へ送られた時、自分の墓地からこのカード以外のレベル4以下のモンスター1体を選択して特殊召喚できる。

 

クリアウィング・シンクロ・ドラゴン 風属性 ☆7 ドラゴン族:シンクロ

ATK2500 DEF2000

チューナー+チューナー以外のモンスター1体以上

(1):1ターンに1度、このカード以外のフィールドのレベル5以上のモンスターの効果が発動した時に発動できる。その発動を無効にし破壊する。(2):1ターンに1度、フィールドのレベル5以上のモンスター1体のみを対象とするモンスターの効果が発動した時に発動できる。その発動を無効にし破壊する。(3):このカードの効果でモンスターを破壊した場合、このカードの攻撃力はターン終了時まで、このカードの効果で破壊したモンスターの元々の攻撃力分アップする。

 

バトルフェーダー 闇属性 ☆1 悪魔族:効果

ATK0 DEF0

(1):相手モンスターの直接攻撃宣言時に発動できる。このカードを手札から特殊召喚し、その後バトルフェイズを終了する。この効果で特殊召喚したこのカードは、フィールドから離れた場合に除外される。

 

トゥルース・リインフォース:通常罠

デッキからレベル2以下の戦士族モンスター1体を特殊召喚する。このカードを発動するターン、自分はバトルフェイズを行えない。

 

 

和輝LP5200→4400手札2枚(うち1枚は暗黒竜 コラプサーペント)

烈震LP4500手札2枚

 

 

 この相手は強いと、ロキは思った。

 もともとトールが選んだ相手だ、いままでよりも苦戦は必至と思っていたが、想像以上だった。

 シンクロ召喚を自在に使いこなし、数多の竜を従えるのは脅威だ。

 しかし、それでも。自分のパートナーはこの程度で折れない。神の圧力に真っ向から対峙するのだ。高々ドラゴン三匹、なにすることでもない。

 

(でしょ? 和輝)

 

 ロキは反撃の準備を虎視眈々と整えるパートナーに、心の中でそう問いかけた。

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