神々の戦争   作:tuki21

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第20話:絶望的な戦い

 和輝(かずき)咲夜(さくや)神々の戦争(デュエル)は二ターン目にして早くも白熱してきた。

 だが二人は気づかない。本当の脅威は、すぐそばまで迫ってきていることに。

 

 

和輝LP8000手札2枚

ペンデュラムゾーン赤:なし青:なし

場 閃珖竜(せんこうりゅう)スターダスト(攻撃表示)、

伏せ 1枚

 

咲夜LP7300手札2枚(うち1枚はE・HERO ブレイズマン)

場 E・HERO(エレメンタルヒーロー) プリズマー(攻撃表示)

伏せ 0枚

 

閃コウ竜 スターダスト 光属性 ☆8 ドラゴン族:シンクロ

ATK2500 DEF2000

チューナー+チューナー以外のモンスター1体以上

1ターンに1度、自分フィールド上に表側表示で存在するカード1枚を選択して発動できる。選択したカードは、このターンに1度だけ戦闘及びカードの効果では破壊されない。この効果は相手ターンでも発動できる。

 

E・HERO プリズマー 光属性 ☆4 戦士族:効果

ATK1700 DEF1100

(1):1ターンに1度、エクストラデッキの融合モンスター1体を相手に見せ、そのモンスターにカード名が記されている融合素材モンスター1体をデッキから墓地へ送って発動できる。エンドフェイズまで、このカードはこの効果を発動するために墓地へ送ったモンスターと同名カードとして扱う。

 

 

「あたしのターン、ドロー!」

 

 ドローカードはE・HERO クレイマン。

 

(ナイスドロー!)

 

 内心でガッツポーズ。咲夜はちらりとフィールドを一瞥で確認し、一つ頷くと即座に動いた。

 

「ブレイズマンを召喚。効果でデッキから融合をサーチ。さらにプリズマーの効果発動! エクストラデッキからE・HERO グランネオスを提示して、デッキのE・HERO ネオスを墓地に送るよ。これでプリズマーはエンドフェイズまでE・HERO ネオスとして扱われる」

「E・HERO ネオス……、国守(くにもり)プロのエースモンスター」

 

 和輝の表情に警戒の色がありありと浮かんできた。国守咲夜は、E・HEROによる融合と、E・HERO ネオスを用いた戦術で知られているのだ。

 

「いくわよ! まずは場のプリズマーとブレイズマンをオーバーレイ!」

 

 エクシーズ召喚。咲夜の頭上に渦を巻く、星々煌めく宇宙のような空間が出現。その空間の中心点に向かって、プリズマーが白の、ブレイズマンが赤の光となって飛び込んだ。

 

「二体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築! エクシーズ召喚!」

 

 虹色の爆発が起こる。そして、二体の魂を掛け合わせ、新たなモンスターが現れた。

 

「出でよ大自然の導き手! 希望を紡げ! ダイガスタ・エメラル!」

 

 虹色の向こう側から現れたのは、エメラルドグリーンの鉱石の身体を持ち、翼を大きく広げた戦士。その周囲を衛星のように旋回する光球が二つ、即ちオーバーレイユニット。

 

「ダイガスタ・エメラル効果発動! オーバーレイユニットを一つ取り除き、墓地のネオスを復活!」

 

 ダイガスタ・エメラルの周囲を旋回していたオーバーレイユニットが一つ消失。同時、咲夜の墓地から勇ましい声とともに復活したのは、昔の特撮ヒーローに酷似したデザインのモンスター。

 白を基調とし、赤いラインで彩られた姿、その胸にある青い宝珠が誇らしげに輝いていた。

 

「来たか、E・HERO ネオス! 次はなんだ? コンタクト融合?」

「これよ! 手札から融合発動! 手札のクレイマンとスパークマンを融合!」

 

 咲夜の頭上、再び空間の歪みが渦を作り、その渦の中に岩のような体をした“土”のヒーローと雷撃を操る“光”のヒーローが飛び込み、一つに混ざり合う。

 

「大地のヒーロー! その雄々しき拳で出来を砕け! 融合召喚、E・HERO ガイア!」

 

 現れる新たな融合ヒーロー。

 黒鉄(くろがね)色の体躯、末端肥大型の両拳、力強さと堅牢さを併せ持つ、大地の力を振るうヒーローの登場だ。

 

「ガイア効果発――――」

 

 発動。といいたかったのだろう。だが咲夜がその言葉を吐くことができなかった。突然の炎が奔流となって、和輝と咲夜を分断するように流れ込んできたからだ。

 

「なんだ!?」「何!?」驚愕と混乱の和輝と咲夜。

「これは――――」困惑のロキ。

「まさか、アレスの、炎……」そして、恐怖に凍りついたアテナ。

 

 炎が二組を分断する。そして――――――

 

 

 バトルフィールド境界面。アレスが放った炎の奔流が収まった後、彼は一歩後ろに引いた。

 入れ替わるように前に出たのはアレスの契約者(にんぎょう)兵藤(ひょうどう)。彼は魔法カードを一枚、人差し指と中指の間に挟んでいた。

 

「魔法カード発動。地割れ」

 

 瞬間、神々の戦争参加者の特権によってカードの効果が実体化。「地割れ」がバトルフィールドを駆け抜けた。

 

 

 突然の炎の奔流によって大きく距離を離すことになった和輝たちと咲夜たち。その二組をさらに引き離すように、大地が割れた。

 

「ッ! 誰かが魔法カードを使ったのか!?」

 

 ロキの推測は意味がない。既に効果は現実化し、皆の頭上――いや、足元――に顕現している。

 

「うお……ッ!」

 

 大地が割れずれ、和輝組と咲夜組との距離がさらに分かれる。和輝はたたらを踏み、断面から遠ざかるように後ろに下がった。

 

 

 和輝たちを地割れが襲った直後、今度はオデッサが前に出た。その手には当然、魔法カード。

 

「地盤沈下、天変地異、発動」

 

 気だるげながらその内側に嗜虐的な愉悦を秘めたオデッサの声音。先の兵藤と同じく、実体化した魔法がさらに綻びが広がったバトルフィールド内を荒れ狂う。

 

 

 ガクンと、和輝は己の視界が急激に下がったことを自覚した。

 

「な!?」

 

 抗えない。とっさに近くのスターダストにしがみつこうとするも、ほぼ同時に上空から雨、火山の噴火のごとき溶岩の奔流、そして竜巻が襲い掛かった。

 

「なんじゃこりゃぁ!?」「カードの実体化!?」

 

 あまりにも現実離れした事態に絶句する和輝。ロキの驚愕の声。そして、天から降り注ぐ天変地異が和輝を完全に飲み込んでしまった。

 

「あ――――――」

 

 あまりのことに咲夜は呆然。その手を、実体化したアテナがつかんだ。

 

「アテナ!?」

「デュエルは中止だ! アレスたちが来た。逃げ――――――」

 

 

「どこに逃げるつもりだ?」

「奈落の底に落ちてしまった坊やは見殺し? 仕方がないかしら、だって、敵なんですもの」

 

 

「!」

 

 覆いかぶさるように響いてきた声に、一人と一柱の動きが止まる。振り向くアテナ。その視線の先に四つの人影。即ち兵藤とアレス。オデッサとエリスの二組の参加者たち。

 

「アレス……、エリス……」

 

 絶望に表情を青ざめさせるアテナ。嘲りの表情を浮かべるアレス。エリスもまた、嘲笑を浮かべている。

 対して、戦意を失わない咲夜が歯をくいしばりながら前に出る。

 視線の先は神々ではなく、その契約者。無表情でどこを見ているかわからない兵藤と、茫洋とした視線を中空に向けているオデッサ。

 咲夜は思う。彼らが洗脳されているのなら、言葉を交わすのは無駄。そして、逃げることはまず出来まい。

 だがここは神々の戦争のバトルフィールド内。勘違いから始まった戦いとはいえ、ロキの契約者の少年とデュエルをしていたのは僥倖だった。そのおかげでこいつらはバトルフィールド内に入ってこざるを得なくなった。

 無言で、デュエルディスクを再起動。デュエルターゲットを、契約者の二人に固定する。

 

「ほう」

 

 面白そうにアレスが目を細めた。エリスも、口角を吊り上げる笑みを浮かべる。どちらも読み取れる感情は同じだった。即ち、愉悦。

 

「面白い、面白いわ。今まで震えて逃げ回るだけだった小兎が、今は勇ましく戦おうというの?」

 

 促されるように、二柱の神のパートナーもまた、デュエルディスクを構える。兵藤に至ってはすでにオートシャッフルを起動。臨戦態勢だ。

 エリスの笑み。「ねぇ貴方。ここは勇敢な少女に報いてあげましょう」

 アレスの笑み。「迅速で徹底的で一方的な蹂躙もいいが、たまにはエリス好みにじわじわと嬲るもいいか」

 嗜虐的な笑みが二重に咲夜とアテナを嬲る。

 

「アテナ、戦おう。相対できるから、今こそ!」

「…………ああ、もう、後には引けん!」

 

 震えながらも勇ましく答えるアテナ。咲夜の胸元に桃色の宝珠の輝きが宿る。兵藤にはエボニーの、オデッサにはオーキッドの輝きが宿る。そして――――――

 

決闘(デュエル)!』

 

 咲夜たちにとって圧倒的に不利な戦いが始まった。

 

 

 

 

 

◆◆◆◆◆◆

 

 

 

 

 

 和輝が意識を失っていたのは、ほんの五分ほどのことだとロキは言った。

 

「多分、バトルフィールドの外から何かしてきたんだろうね。まず間違いなく、カードの実体化だ。くっそ、バトルフィールドの綻びか。アテナめ、そこまで弱っていたなんてな」

「厄介な。偶然こいつを伏せていて助かったぜ」

 

 そう言って、和輝はデュエルディスク――対戦相手だった昨夜の反応はもうロストしていた――の魔法・罠ゾーンにセットされていたカードを手に取った。

 強制脱出装置。

 「地割れ」によって隔離され、「地盤沈下」によって脱出を困難にされ、閃コウ竜スターダストで飛んで脱出する前に「天変地異」で沈められそうになった和輝だったが偶然セットしてあった「強制脱出装置」を発動。その効果の実体化によって、難を逃れたのだ。

 

「けど、おかげでずいぶん離されたな。どこだここ?」

「ドームから結構離れたね」

 

 ロキの声は和輝の位置から若干低い位置から聞こえてきた。それもそのはず、彼は今、地面に両手をついて何かを探るように大地に、そして周囲に目を配っているのだ。

 

「で、何やってるんだロキ?」

 

 咲夜たちの元に戻るでもなく、このまま去るでもないロキに訝しげな視線を送る和輝。ロキは困ったような表情を浮かべて、

 

「実はこのバトルフィールドなんだけどさ、崩れかかってる(、、、、、、、)

「な――――――」

 

 和輝は目を見開き驚愕。事の重大性に戦慄する。

 バトルフィールドの崩壊は、即ち現実世界にも影響を及ぼす。

 和輝の脳裏をよぎる七年前の記憶。東京大火災。そこで失われた多くの命。犠牲者だった和輝が失ったもの、得たもの。

 

「どうすればいい?」

「ボクがこの場にとどまって、フィールドを修復する。その間動けないから、彼女たちのサポートにはいけそうにないね」

 

 すでに和輝もロキも、咲夜とアテナを助けに行くことを決定していた。

 怯えている女神と、彼女を守ろうとする少女。見捨てればさぞかし後味が悪い。

 

「フィールドの修復自体は可能だ。問題があるとすれば、二つ。一つ目はバトルフィールドの修復が終わるまでにアテナのパートナーがやられていないかどうか。アテナたちに向かった敵の気配は二つ。二対一はきつい」

「そっちは多分大丈夫だ。国守プロなら、不利な状況でも簡単にやられないだろ」

 

 デュエルディスクを起動させ、デッキのオートシャッフル機能を使って、和輝は己のデッキを調整、そして前を見た。

 

「そう、なら問題はもう一つの方だね」

 

 修復作業を続けながら、ロキも和輝の視線の先を追った。

 そこに、一人の男が立っていた。

 三十代前半の男、斬り揃えられた黒髪、黒い瞳、どこにでも売っていそうな白いシャツ、ベージュのチノパン姿。

 ただし、恐ろしく無表情。和輝は最初、人形が立っているのかと思った。

 

「何者だ?」

「分からない。神の気配は感じない。けどこの場所(バトルフィールド)にいる以上、ただの人間じゃないね」

 

 そう言っている間も、男は左腕のデュエルディスクを起動。デュエルターゲットを和輝に指定した。

 

「ッ! 逃がさないってことか?」

 

 相手が何者かわからないが、この場にいるということは、カードの実体化も使えるかもしれない。だとすれば放置しておけない。余計な衝撃はこのバトルフィールドの崩壊を早めることになるかもしれないのだ。

 

「やってやんぜ!」

 

 吠える和輝。デュエルディスクを起動させ、一拍の沈黙で場を満たす。

 そして――――――、

 

決闘(デュエル)!」

 

 和輝だけが一方的に、戦いの開始を宣言した。

 

 

 

 

 

◆◆◆◆◆◆

 

 

 

 

 

 バトルロイヤルルール。

 プレイヤーは、まだ最初のターンを開始していないプレイヤーに攻撃できない。

 全てのプレイヤーはフィールド(フィールドカードゾーン含む)、墓地を共有しない。

 乱入プレイヤーは、他プレイヤーのターン終了時か、プレイにチェーンする形でのみ、デュエルに乱入できる。

 乱入プレイヤーはプレイにチェーンする形で乱入する時のみ、手札から魔法、罠、モンスター効果を発動できる。ただし、カードをフィールドから離す効果を持つカードは発動できない(この時、乱入プレイヤーのターンはまだ開始していないものと扱う)。

 乱入プレイヤーのターン順は、乱入した際のターンプレイヤーの次の順番にターンが回ってくる。

 乱入プレイヤーは自分の最初のターン、ドローフェイズにカードをドローできない。

 フィールド全体に効果を及ぼすカード効果は参戦しているすべてのプレイヤーに及ぶ。

 タッグデュエルの場合、パートナーのモンスターをリリース、融合素材・シンクロ素材・エクシーズ素材として使用できる。

 自分が伏せた通常魔法、装備魔法はパートナーのターンにも発動できる。

 

 

ターン順

咲夜→兵藤→オデッサ

 

 

咲夜LP8000手札5枚

兵藤LP8000手札5枚

オデッサLP8000手札5枚

 

 

「あたしの先攻!」

 

 咲夜は勇ましく叫び、先攻を勝ち取った。だがその叫びはどこまでも虚勢。

 咲夜の脳裏を様々な思いがよぎる。

 敵。アレスとエリス。今まで幾度も襲い掛かってきた追手。ついにその手が肩に触れた。足を止めさせられた。逃げることはできなくなった。

 アテナ。守るべき存在。守ろうと誓った存在。

 二対一。絶対的に不利な状況。負けられないのに敗色は濃厚。

 ともすれば膝から頽れてしまいそうになる。心を奮い立たせる。恐怖で押し潰されないために。

 

「カードを二枚セット、それからモンスターをセットして、ターンエンド!」

 

 

「オレのターンだな。兵藤、ドローしろ」

「はい。アレス様」

 

 意気揚々と、笑みさえ浮かべたアレスの指示。従順に従う兵藤(にんぎょう)が無表情、静かなアクションでカードをドローする。

 

「モンスターを召喚だ。そして攻撃」

「了解しました。ジュラック・グアイバを召喚」

 

 兵藤=アレスのフィールドに現れたのは、手先や足先、そして背びれに炎をまとわせた、赤や青に着色されたグアイバサウルス。実物よりもややデフォルメされているが、恐竜としての風格は損なわれていない。

 

「ジュラック・グアイバで攻撃」

 

 咲夜のフィールドには二枚の伏せカードがあるが、アレスは躊躇なく攻撃を指示した。二対一の状況故に、たとえ手痛い反撃を受けてもすぐに立て直せると思ったのだ。

 攻撃宣言を受けたジュラック・グアイバが疾走、跳躍。炎を宿した爪を振り下ろした。

 衝撃、そして熱量が咲夜の頬を叩いた。咲夜の守備モンスター、E・HERO シャドー・ミストはあっけなく破壊された。

 アレスが嵩になって吠えたてる。

 

「この瞬間、ジュラック・グアイバの効果発動! デッキから新たなジュラック、ジュラック・デイノを特殊召喚する!」

 

 ジュラック・グアイバの傍らに、新たな炎の恐竜が現れる。

 頭部の小さな角、足先の炎を漲らせたディノニクス。デフォルメされ、やや大きな瞳が咲夜を睨みつける。

 

「こっちのモンスターを減らしたうえに、自分のモンスターは増やしたってわけね。けど、あたしだってただじゃやられない! シャドー・ミストが破壊されたことにより、リバーストラップ、ヒーロー・シグナルを発動! デッキからE・HERO ブレイズマンを守備表示で特殊召喚!」

 

 咲夜も黙ってはいない。彼女の足元に伏せられた二枚のカードのうち一枚が翻り、天に「H」の文字が記される。

 ヒーローたちの交信サインを受けて現れたのは炎のヒーロー。己の身を盾にして咲夜を守ろうと膝をつき、守備体勢をとっている。

 

「ブレイズマンとシャドー・ミストの効果発動! デッキから融合と、E・HERO エアーマンをサーチ!」

 

 咲夜のデッキから二枚のカードが排出され、彼女の手札に加えられる。これで、二枚だった昨夜の手札は四枚にまで回復した。

 

「壁を破壊されても、新たに後続を呼び、さらに少なくなった手札さえ補うか。伊達にプロデュエリストを名乗っているわけではなさそうだ」

 

 相手の抵抗に、アレスは満足げに頷いた。

 

「ならばこちらは攻め手を強化する。バトルフェイズを終了。メインフェイズ2に入り、レベル4のジュラック・グアイバに、レベル3のジュラック・デイノをチューニング!」

 

 シンクロ召喚。三つの緑色の光の輪となったジュラック・デイノ。その輪をくぐり、四つの白い光星(こうせい)となったジュラック・グアイバ。四つの光星はやがて一筋の光さす道となる。

 

「蹂躙せよ、獰猛なる暴君! シンクロ召喚、ジュラック・ギガノト!」

 

 輝かしい光の(とばり)が辺りに落ち、それが荒々しい咆哮とともに引き裂かれる。

 現れたのは、頭部に冠の様に炎を揺らめかせた巨大なギガノトサウルス。

 

「ジュラック・ギガノトは墓地のジュラック一体につき、攻撃力を200アップさせる。今は二体だけなので、400アップにとどまるが、これからどんどん増強していくぞ。カードを一枚伏せ、ターンを終了しろ、兵藤!」

 

 アレスの指示に無言で従う兵藤。咲夜は険しい視線で伏せられたカードを睨みつけた。

 

 

ジュラック・グアイバ 炎属性 ☆4 恐竜族:効果

ATK1700 DEF400

このカードが戦闘によって相手モンスターを破壊した場合、デッキから攻撃力1700以下の「ジュラック」と名のついたモンスター1体を特殊召喚できる。この効果で特殊召喚したモンスターは、このターン攻撃宣言できない。

 

ジュラック・デイノ 炎属性 ☆3 恐竜族:チューナー

ATK1700 DEF800

このカードが戦闘によって相手モンスターを破壊したターンのエンドフェイズ時に1度だけ、自分フィールド上の「ジュラック」と名のついたモンスター1体をリリースして発動できる。デッキからカードを2枚ドローする。

 

ヒーロー・シグナル:通常罠

(1):自分フィールドのモンスターが戦闘で破壊され墓地へ送られた時に発動できる。手札・デッキからレベル4以下の「E・HERO」モンスター1体を特殊召喚する。

 

E・HERO ブレイズマン 炎属性 ☆4 戦士族:効果

ATK1200 DEF1800

「E・HERO ブレイズマン」の(1)(2)の効果は1ターンに1度、いずれか1つしか使用できない。(1):このカードが召喚・特殊召喚に成功した場合に発動できる。デッキから「融合」1枚を手札に加える。(2):自分メインフェイズに発動できる。デッキから「E・HERO ブレイズマン」以外の「E・HERO」モンスター1体を墓地へ送る。このカードはターン終了時まで、この効果で墓地へ送ったモンスターと同じ属性・攻撃力・守備力になる。この効果の発動後、ターン終了時まで自分は融合モンスターしか特殊召喚できない。

 

E・HERO シャドー・ミスト 闇属性 ☆4 戦士族:効果

ATK1000 DEF1500

「E・HERO シャドー・ミスト」の(1)(2)の効果は1ターンに1度、いずれか1つしか使用できない。(1):このカードが特殊召喚に成功した場合に発動できる。デッキから「チェンジ」速攻魔法カード1枚を手札に加える。(2):このカードが墓地へ送られた場合に発動できる。デッキから「E・HERO シャドー・ミスト」以外の「HERO」モンスター1体を手札に加える。

 

ジュラック・ギガノト 炎属性 ☆7 恐竜族:シンクロ

ATK2100 DEF1800

チューナー+チューナー以外の恐竜族モンスター1体以上

このカードがフィールド上に表側表示で存在する限り、自分フィールド上の「ジュラック」と名のついたモンスターの攻撃力は、自分の墓地の「ジュラック」と名のついたモンスターの数×200ポイントアップする。

 

 

ジュラック・ギガノト攻撃力2100→2500

 

 

「次はあたしのターンか、ドロー」

 

 気だるげでどこか突き放したような雰囲気のまま、しかしその仕草はどこまでも(つや)っぽい。カードをドローする仕草もまた。

 

「オデッサ。アレス様に続いて、(わたくし)たちも、攻めて、そして屈服させましょう?」

 

 半透明のエリスの、嗜虐に満ちた言葉。

 頷くオデッサ。「きみがそうしたいなら」そう言いながらカードを繰り出す。

 

「まずはこれ。魔法カード、おろかな埋葬。デッキからトリック・デーモンを墓地に送る。――――――トリック・デーモンの効果発動。デッキからデーモンの宣告を手札に加える」

「デーモンの宣告?」

 

 デッキから排出されたカードを、オデッサが咲夜と兵藤=アレスに向けて提示する。

 提示されたのは間違いなくデーモンの宣告。500のライフコストを払いデッキトップを宣言。当たれば手札に加えられ、外れれば墓地に送られるもの。天変地異のようなピーピングカードがあるならいざ知らず、ただ発動しただけでは無駄にライフを払うことになりかねない。

 

「そうね――――――」

 

 オデッサの指が、自身のデッキにそっと添えられた。

 

「宣言するのは、伏魔殿(デーモンパレス)-悪魔の迷宮-」

 

 デッキトップがめくられ、皆に提示される。

 提示されたのは、まさしく宣言した伏魔殿-悪魔の迷宮-。

 

「正解!?」

 

 驚愕に目を見開く咲夜。こんなのは当たり前だという顔をするオデッサ。そして、得意げに笑うエリス。

 

(わたくし)の契約者、オデッサはちょっと特別な人間なの」

 

 半透明のエリスの得意げな微笑。アテナが苦々しい表情を浮かべる。

 

「……神代の時代から続く、神々の系譜か」

「神々の、系譜?」

 

 アテナの台詞に咲夜が疑問符を浮かべる。

 

「遥かな昔のこと」

 

 エリスが割り込んでくる。さらに話が続く。

 

「神は多くの人間を作りました。いわば人間は神のコピー、現身。だからこそ、神々の力を内包した人間も少なからずいたわけね」

「それが、今の透視みたいな展開につながるわけ?」

「触れたものの内容を読み取る、限定的な透視能力。幾千の月日と世代の重なりが、神の力をここまで後退させたそう、だよ」

 

 気だるげなオデッサが、己の手を見つめながらそう言った。

 

「大したことないけど、ね。さ、続き続き。正解したことで、伏魔殿を手札に加え、発動」

 

 瞬間、周囲の景色が一変する。

 痛ましい破壊跡から一転、現れた景色は非常におどろおどろしい漆黒の城。

 

「この効果で悪魔族の攻撃力が500アップ。さらにマッド・デーモンを召喚」

 

 悪魔の城から悪魔が現れる。

 爆発したような赤髪、痩身、骨のような外装、そして腹部にあるずらりと牙が並んだ大きな口とその口の中にある人間の頭蓋骨。

 

「バトル。マッド・デーモンでブレイズマンを攻撃」

 

 投げやりで突き放した、どーでもよさそうな声音で、オデッサは攻撃を宣言。彼女の命令を受けたマッド・デーモンが腹の口の中にある髑髏をかみ砕き、その破片を弾丸のようにブレイズマンに向けて発射した。

 

「リバーストラップ発動! 攻撃の無敵化! これでこのターン、ブレイズマンを破壊から守る!」

 

 翻る咲夜の伏せカード。直後、防護の力を付与されたブレイズマンが、髑髏の散弾を耐えきった。

 

「くぅ……ッ!」

 

 ダメージのフィードバックが咲夜を襲う。500程度の低いダメージだが、慣れない痛みに彼女は顔をしかめた。

 

「逃げてばかりの貴様には辛かろうな」

 

 アレスの嘲笑、エリスの微笑。何ほどのこともない。アテナを安心させてやるため、咲夜もふてぶてしく笑う。自分が憧れたヒーローは、ピンチの時に弱気なんか吐かなかった。常に弱者の視線を背中に受けて、それでも強気に笑って見せたのだ。自分だってそれくらいはやってやる。守るべきものがある今は、特に。

 

「カードを二枚セットして、ターンエンド」

 

 

おろかな埋葬:通常魔法

(1):デッキからモンスター1体を墓地へ送る。

 

トリック・デーモン 闇属性 ☆3 悪魔族:効果

ATK1000 DEF0

このカードがカードの効果によって墓地へ送られた場合、または戦闘によって破壊され墓地へ送られた場合、デッキから「トリック・デーモン」以外の「デーモン」と名のついたカード1枚を手札に加える事ができる。「トリック・デーモン」の効果は1ターンに1度しか使用できない。

 

デーモンの宣告:永続魔法

1ターンに1度だけ、500ライフポイントを払いカード名を宣言する事ができる。その場合、自分のデッキの一番上のカードをめくり、宣言したカードだった場合手札に加える。違った場合はめくったカードを墓地へ送る。

 

伏魔殿-悪魔の迷宮-:フィールド魔法

このカードがフィールド上に存在する限り、自分フィールド上の悪魔族モンスターの攻撃力は500ポイントアップする。また、自分フィールド上の「デーモン」と名のついたモンスター1体を選択して発動できる。選択したモンスター以外の自分フィールド上の悪魔族モンスター1体を選んでゲームから除外し、自分の手札・デッキ・墓地から選択したモンスターと同じレベルの「デーモン」と名のついたモンスター1体を選んで特殊召喚する。「伏魔殿-悪魔の迷宮-」のこの効果は1ターンに1度しか使用できない。

 

マッド・デーモン 闇属性 ☆4 悪魔族:効果

ATK1800 DEF0

(1):このカードが守備表示モンスターを攻撃した場合、その守備力を攻撃力が超えた分だけ戦闘ダメージを与える。②:攻撃表示のこのカードが攻撃対象に選択された場合に発動する。このカードを守備表示にする。

 

攻撃の無敵化:通常罠

バトルフェイズ時にのみ、以下の効果から1つを選択して発動できる。

●フィールド上のモンスター1体を選択して発動できる。選択したモンスターはこのバトルフェイズ中、戦闘及びカードの効果では破壊されない。

●このバトルフェイズ中、自分への戦闘ダメージは0になる。

 

 

マッド・デーモン攻撃力1800→2300

 

 

咲夜LP8000→7500手札4枚(うち2枚は融合、E・HERO エアーマン)

兵藤LP8000手札4枚

オデッサLP8000→7500手札2枚

 

 

「あたしのターン、ドロー!」

 

 ドローカードを鋭い眼差しで確認し、咲夜は即座に動いた。

 

「E・HERO エアーマンを召喚!」

 

 新たに現れたヒーロー。飛行型のバトルアーマーにマスク、鍛え上げられた肉体を持ち、空中で一回点の宙返りを決めて咲夜のフィールドに舞い降りる。

 

「エアーマンの効果発ど――――」

 

 発動、と、最後まで言い切ることはできなかった。その前に、エアーマンの全身に漆黒の鎖が巻き付き、雁字搦めにしてしまったのだ。

 

「これは――――――」

「残念でねぇ。(わたくし)のパートナー、オデッサはちゃんと罠を張っていたのよ」

 

 くすくす笑うエリス。投げやりな表情のオデッサ。彼女の足元には、露わになった永続罠、デモンズ・チェーンの姿があった。

 

「デモンズ・チェーン……、それでエアーマンの攻撃と効果を無効にしたってわけね」

「エアーマンの魔法・罠破壊効果でデーモンの宣告でも破壊したかったんだろうけど、そうはさせない」

 

 表情を動かさず、気だるげな声音でオデッサは言った。咲夜は歯噛みし、即座に次の戦術を展開する。

 

「融合発動! 場のエアーマンとブレイズマンを融合!」

 

 咲夜の頭上の空間が歪み、渦を作る。その渦に二体のヒーローが飛び込み、一つに混ざり合った。

 

「燃えろ炎のヒーロー! 熱き心と拳で敵を焼き尽くせ! 融合召喚、E・HERO ノヴァマスター!」

 

 現れた融合ヒーロー、ノヴァマスター。

 赤いマントをはためかせ、炎を思わせる鎧に身を包んだ真紅のヒーロー。大地に着地し気合の声と共に熱波を噴出、気合十分をアピールする。

 

「さらにアサルト・アーマーをノヴァマスターに装備。そしてアサルト・アーマーの効果! アサルト・アーマー(このカード)を墓地に送って、このターン、ノヴァマスターに二回攻撃を付与する!」

 

 気合の雄たけびをあげるノヴァマスター。その全身から炎が闘気となって吹き上がる。

 

「バトル! ノヴァマスターでマッド・デーモンとジュラック・ギガノトを攻撃!」

 

 攻撃宣言が下り、ノヴァマスターが跳躍。上空から炎の奔流を発射。奔流は途中でY字に分かれ、それぞれのモンスターに狙いを変更、直撃した。もっとも、ジュラック・ギガノトはともかく、マッド・デーモンは自身の効果で守備表示に変更さえたため、オデッサにダメージはなかったが。

 

「……ッ!」

 

 無言で、かすかに体を震わせる兵藤。だがすぐに体勢を立て直した。

 

「ノヴァマスターの効果でカードを二枚ドロー! カードを一枚セットして、ターン――――――」

 

 エンド、といおうとした。だがそこに、オデッサが待ったをかけた。

 

「待った。きみのエンドフェイズ、あたしは伏せていたデーモンの雄叫びを発動、500ライフを払い、墓地からトリック・デーモンを特殊召喚する」

 

 オデッサの足元にあったもう一枚の伏せカードも翻る。そして墓地から復活するのは小柄な少女型悪魔。キャハハハハと甲高い笑い声を上げてくるりと一回点、着地する。

 

「けどデーモンの雄叫びによって特殊召喚されたトリック・デーモンは何もできずに破壊される。この瞬間、トリック・デーモンの効果発動。デッキからデーモンの将星を手札に加える」

 

 断末魔の寄生を発して、トリック・デーモンの身体が崩壊する。その末期の叫びがデーモンに届き、オデッサのデッキからカードが一枚、彼女の手札に加えられた。

 

「ただでは転ばないのは、向こうも同じか……」

「上等よ。あたしは改めてターンエンド!」

 

 

E・HERO エアーマン 風属性 ☆4 戦士族:効果

ATK1800 DEF300

(1):このカードが召喚・特殊召喚に成功した時、以下の効果から1つを選択して発動できる。●このカード以外の自分フィールドの「HERO」モンスターの数まで、フィールドの魔法・罠カードを選んで破壊する。●デッキから「HERO」モンスター1体を手札に加える。

 

デモンズチェーン:永続罠

フィールドの効果モンスター1体を対象としてこのカードを発動できる。(1):このカードが魔法&罠ゾーンに存在する限り、その表側表示モンスターは攻撃できず、効果は無効化される。そのモンスターが破壊された時にこのカードは破壊される。

 

融合:通常魔法

(1):自分の手札・フィールドから、融合モンスターカードによって決められた融合素材モンスターを墓地へ送り、その融合モンスター1体をエクストラデッキから融合召喚する。

 

E・HERO ノヴァマスター 炎属性 ☆8 戦士族:融合

ATK2600 DEF2100

「E・HERO」モンスター+炎属性モンスター

このカードは融合召喚でしか特殊召喚できない。(1):このカードが戦闘で相手モンスターを破壊した場合に発動する。自分はデッキから1枚ドローする。

 

アサルト・アーマー:装備魔法

自分フィールド上に存在するモンスターが戦士族モンスター1体のみの場合、そのモンスターに装備する事ができる。装備モンスターの攻撃力は300ポイントアップする。装備されているこのカードを墓地へ送る事で、このターン装備モンスターは1度のバトルフェイズ中に2回攻撃する事ができる。

 

デーモンの雄叫び:通常罠

500ライフポイントを払い発動する。自分の墓地から「デーモン」という名のついたモンスターカード1枚を自分のフィールド上に特殊召喚する。このモンスターは、いかなる場合にも生け贄にする事はできず、このターンのエンドフェイズに破壊される。

 

 

咲夜LP7500手札3枚

兵藤LP8000→7900手札4枚

オデッサLP7500→7000手札3枚(うち1枚はデーモンの将星)

 

 

 咲夜は一切余力を残すようなことはせず、最初から全力でカードを操る。二対一という絶対的に不利な状況を覆すには、それくらいしなければならない。胸に秘めた誓いを抱きよせながら、咲夜はそう思った。

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