神々の戦争   作:tuki21

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第22話:守護の戦女神

 間にあってよかった、と和輝(かずき)は思った。

 正体不明の刺客を倒し、急いで向かった甲斐があったというものだ。

 あとは、と、和輝は眼前の神と、その契約者たちを睨みつけた。

 咲夜(さくや)とのデュエル中、問答無用で襲い掛かってきた連中だ。無関係な人や一般人に危害を加えてこなかったとは思えない。そもそも、こいつらは咲夜やアテナを一方的につけ狙い、襲い掛かっている連中だ。彼女たちが自分やロキを敵だと勘違いした元凶だと、そう言う確信があった。

 だったらやることは決まってる。ぶっ倒す。

 

 

咲夜LP1300手札0枚

ペンデュラムゾーン赤:なし青:なし

場 フィールド魔法:ネオスペース

伏せ なし

 

兵藤LP4400手札1枚

ペンデュラムゾーン赤:なし青:なし

場 裏守備モンスター×1

伏せ 1枚

 

オデッサLP6000手札4枚

ペンデュラムゾーン赤:なし青:なし

場 戦慄の凶皇-ジェネシス・デーモン(攻撃表示)、ヘル・エンプレス・デーモン(攻撃表示)、E・HERO(エレメンタルヒーロー) グラン・ネオス(攻撃表示、堕落装備)、永続魔法:デーモンの宣告、補給部隊、フィールド魔法:伏魔殿(デーモンパレス)-悪魔の迷宮-、永続罠:デモンズ・チェーン(対象なし)

伏せ 1枚

 

和輝LP8000手札4枚

ペンデュラムゾーン赤:なし青:なし

場 バトルフェーダー(守備表示)、

伏せ なし

 

 

ネオスペース:フィールド魔法

このカードがフィールド上に存在する限り、「E・HERO ネオス」及び「E・HERO ネオス」を融合素材とする融合モンスターの攻撃力は500ポイントアップする。また、「E・HERO ネオス」を融合素材とする融合モンスターは、エンドフェイズ時にエクストラデッキに戻る効果を発動しなくてもよい。

 

デーモンの宣告:永続魔法

1ターンに1度だけ、500ライフポイントを払いカード名を宣言する事ができる。その場合、自分のデッキの一番上のカードをめくり、宣言したカードだった場合手札に加える。違った場合はめくったカードを墓地へ送る。

 

伏魔殿-悪魔の迷宮-:フィールド魔法

このカードがフィールド上に存在する限り、自分フィールド上の悪魔族モンスターの攻撃力は500ポイントアップする。また、自分フィールド上の「デーモン」と名のついたモンスター1体を選択して発動できる。選択したモンスター以外の自分フィールド上の悪魔族モンスター1体を選んでゲームから除外し、自分の手札・デッキ・墓地から選択したモンスターと同じレベルの「デーモン」と名のついたモンスター1体を選んで特殊召喚する。「伏魔殿-悪魔の迷宮-」のこの効果は1ターンに1度しか使用できない。

 

戦慄の凶皇-ジェネシス・デーモン 闇属性 ☆8 悪魔族:効果

ATK3000 DEF2000

このカードはリリースなしで召喚できる。この方法で召喚したこのカードの元々の攻撃力・守備力は半分になり、エンドフェイズ時に破壊される。このカードがフィールド上に表側表示で存在する限り、自分は悪魔族以外のモンスターを特殊召喚できない。また、1ターンに1度、自分の手札・墓地の「デーモン」と名のついたカード1枚をゲームから除外して発動できる。フィールド上のカード1枚を選択して破壊する。

 

ヘル・エンプレス・デーモン 闇属性 ☆8 悪魔族:効果

ATK2900 DEF2100

このカード以外のフィールド上に表側表示で存在する悪魔族・闇属性モンスター1体が破壊される場合、代わりに自分の墓地に存在する悪魔族・闇属性モンスター1体をゲームから除外する事ができる。また、フィールド上に存在するこのカードが破壊され墓地へ送られた時、「ヘル・エンプレス・デーモン」以外の自分の墓地に存在する悪魔族・闇属性・レベル6以上のモンスター1体を選択して特殊召喚する事ができる。

 

E・HERO グラン・ネオス 地属性 ☆7 戦士族:融合

ATK2500 DEF2000

「E・HERO ネオス」+「N・グラン・モール」

自分フィールド上の上記のカードをデッキに戻した場合のみ、エクストラデッキから特殊召喚できる(「融合」魔法カードは必要としない)。1ターンに1度、相手フィールド上のモンスター1体を選択して持ち主の手札に戻す事ができる。また、エンドフェイズ時、このカードはエクストラデッキに戻る。

 

堕落:装備魔法

自分フィールド上に「デーモン」という名のついたカードが存在しなければこのカードを破壊する。このカードを装備した相手モンスターのコントロールを得る。相手のスタンバイフェイズ毎に、自分は800ポイントダメージを受ける。

 

補給部隊:永続魔法

(1):1ターンに1度、自分フィールドのモンスターが戦闘・効果で破壊された場合にこの効果を発動する。自分はデッキから1枚ドローする。

 

バトルフェーダー 闇属性 ☆1 悪魔族:効果

ATK0 DEF0

(1):相手モンスターの直接攻撃宣言時に発動できる。このカードを手札から特殊召喚し、その後バトルフェイズを終了する。この効果で特殊召喚したこのカードは、フィールドから離れた場合に除外される。

 

戦慄の凶皇-ジェネシス・デーモン攻撃力3000→3500

ヘル・エンプレス・デーモン攻撃力2900→3400

E・HERO グラン・ネオス攻撃力2500→3000

 

 

 現在、オデッサのメインフェイズ2

 

 

「乱入者、か。まさかさっきまでアテナと戦っていたやつだとはな」

「初めまして、アレス、エリス。北欧神話のトリックスター、ロキだよ。てゆーかアレスにエリスか、最悪なところが揃ったね」

「契約者の岡崎(おかざき)和輝だ。てめぇらをぶっ倒す」

 

 ふむ、とエリスは頷いた。半透明なまま、ロキと和輝を見る。そして口角を吊り上げた。

 乱入者には驚かされたが問題はない。引き込めばいい。

 

「元気な子。いいわねぇ」

 

 妖艶なエリスの笑み。和輝の背筋に冷たい電流が流れた。

 

「ねぇ貴方。貴方は彼女の味方をするの?」

「状況を見ろ。既にアテナの契約者のライフは風前の灯火、それなのに加勢することに意味があるのか? 貧乏くじを引くだけだぞ」

 

 神たちが口々に和輝の不利を炙りだしてくる。

 狙いは明白。二対二を三対一にしようとしているのだ。

 和輝、ロキは無言。咲夜、アテナ組もまた無言。

 エリスは笑みを深くする。そして思った。突然の乱入には正直面くらったし、アテナたちを守ったのは予想外だったが、この状況そのものは面白い。彼らを自分たちの側に抱き込めば、アテナたちにより深い絶望を叩き付けることができる。

 

「よく考えてみて? 神々の戦争の参加者は全て敵同士。今助けたところでいずれ闘う運命。寧ろ、この戦いの間に救われた恩も忘れて後ろから斬りかかってくるかもしれないわ?」

 

 エリスの言葉はねっとりと、それでいて抗いがたい快楽を伴って、毒のように和輝の心に沁みよった。和輝の身体が僅かに揺れる。まるで彼の内面の葛藤を現しているかのようだ。

 

「和輝、エリスの言葉に耳を貸すな。エリスは不和と争いの女神。ああやって人間同士の疑心暗鬼を煽り、殺し合いをさせて楽しむ最低な奴だ」

 

 ロキの――若干自分を棚上げにした――忠告にも和輝は反応しない。どころか、どこかぼーっとしてるように見える。エリスの言葉が彼の心に侵入し、蹂躙しているのかもしれない。

 

「エリス! 貴様――――」

「おっと、アテナ。貴様の出番はないぞ。今、オレたちはロキとその契約者と話しているのだ」

 

 話を遮ろうとするアテナを、アレスが抑える。夫のアシストに内心にんまりと笑うエリス。

 己の言葉はそれ自体が不和をもたらす毒。人間風情が無防備に浴びれば瞬く間に疑心暗鬼が芽生え、不和に広がり、最終的に殺し合いに発展する。

 その様を見るのがたまらなく心地よいのだ。

 

「だから、提案よ、ロキの契約者。(わたくし)たち三組で、アテナたちを倒しましょう?」

「――――――」

 

 和輝は無言。だがその内面は非常に冷静で、凪いでいた。

 確かに一時(いっとき)、和輝の心にエリスの言葉が忍び寄ってきた。

 だがそれ以上に今、彼の脳裏によぎるのは、ある声だった。

 ――――――楽しいなぁ、楽しいなぁ。あの女の言う通りにすれば、きっととっても楽しいぞ?

 怪物の声。いつも和輝が窮地に立つと聞こえてくる、楽しげな声。いつもは努めて無視するだけだったが、今、この瞬間に関しては話が違う。

 窮地に聞こえてくる、破滅を誘う声。逆説的に、エリスの言葉に頷いてはならないということだ。

 

「エリス、そんなことをしても、あまり意味はないよ?」

 

 和輝の内面を読み取ったかのようなロキの台詞。実際、契約を交わした人間と神は見えないパスで繋がっている(、、、、、、)。和輝からは話していないが、ロキは怪物の声についても知っているかもしれない。あるいは、その正体も。

 和輝は、はっと一つ息を吐き出し、

 

「お断りだ糞婆」

 

 思いっきり小馬鹿にするような声音でエリスの提案を却下した。しかも右手中指を立てるファックサインのおまけつきだ。

 

「な――――――」

 

 断られるばかりか婆扱いされて、さしものエリスも絶句する。くつくつと笑うロキ。

 

「残念だったね、エリス。君のこざかしい戯言は、ボクのパートナーには通用しなかったみたいだよ?」

 

 何か言いつのろうとしていたエリスの言葉に被せるように、ロキの挑発が飛ぶ。エリスの意識が一瞬、口をはさんだ邪神に向かった。

 すかさず切り込む和輝。「それより早くターンを再開しろよ。まだバトルフェイズが終了しただけだぞ? 勧誘が失敗したらせこい遅延行為か?」

 ロキに意識が向いた一瞬の隙を、和輝がつく。エリスの表情が屈辱と憤怒に染まる。

 

「落ち着け、エリス。誘いに乗らない愚か者(、、、)は、切って捨てればいい、そうだろ?」

 

 激昂しかけたエリスをアレスが取りなす。すぐさま態度を翻すエリス。「ええ、そうね、貴方。オデッサ?」

 

「……カードを一枚セットして、ターンエンド」

 

 

「俺のターンだ。乱入者の最初のターンはドローフェイズでドローは行えない。このままメインフェイズ1に入る」

 

 ちらりと和輝は、オデッサのフィールドのグラン・ネオスを見た。

 ネオスの融合進化体。咲夜のカードであることは疑う余地がない。

 

「堕落が装備されているから、あれでコントロールを奪われてるんだね。アレスのデッキはモンスターもカードもセット状態だからわからないけど、エリス――正確にはその契約者か――のデッキはデーモンっぽいね」

「グラン・ネオスを奪って、それで止めを刺そうってつもりだったのか。趣味が悪いぜ」

 

 吐き捨てる和輝。咲夜が僅かに肩を震わせた。おそらく、自分が信頼していたモンスターにとどめを刺されそうになった光景を思いだしているのだろう。

 

「気に入らねぇな……」

「え?」

 

 ぼそりと和輝は呟いた。心臓が、応じるようにドクンとはねた。怒りだ。

 

「グラン・ネオス。あの女が使ってていいカードじゃねぇ」

「あ―――――」

 

 咲夜が目を丸くする。アテナも呆然となった。和輝の怒りの原因が、オデッサ=エリスがグラン・ネオスのコントロールを得ていることに起因していると気付いたからだ。

 

「じゃ、どうする?」

 

 分かり切ったことを聞いてくるロキ。和輝は手札からカードを二枚、一気に引き抜いて答えた。

 

「取り返す、それだけだ! 手札を一枚捨て、THE() トリッキーを特殊召喚! さらに手札からモンスターの特殊召喚に成功したこの瞬間、今墓地に捨てたミスト・レディの効果発動! 墓地のこのカードを特殊召喚!」

 

 和輝のフィールドに、顔面に「?」マークがついた頭全体を覆うマスクをかぶった奇抜な衣装の奇術師が現れ、その傍らに霧でできた女のモンスターが現れる。一瞬でチューナーと非チューナーが並んだが、まだだ。

 

「さらに墓地からモンスターの特殊召喚に成功したこの瞬間、手札のドッペル・ウォリアーを、自身の効果で特殊召喚だ!」

 

 三連続特殊召喚。トリッキーとミスト・レディの中間地点に、野戦服に身を包み、顔を隠した状態でボーガンを手にした、姿が二重にぶれる(、、、)戦士、即ちドッペル・ウォリアーが現れる。

 

「一気にモンスターを展開してきた……」

「お前のデッキとは反対の性質だな、咲夜」

 

 アテナの言葉に頷く咲夜。彼女のデッキは融合召喚による大型モンスターを繰り出すことが主眼であるので、シンクロギミックはない。だからこそ、シンクロ召喚に必須な、小回りの利くモンスターの展開は難しい。

 ある意味、和輝のデッキは咲夜のデッキの足りない部分を補える、ともいえた。

 

「レベル2のドッペル・ウォリアーに、レベル3のミスト・レディをチューニング!」

 

 シンクロ召喚。三つの緑の輪となったミスト・レディ。輪が一列に並び、その輪をくぐったドッペル・ウォリアーが二つの白い光星(こうせい)となり、その光星を、一筋の光の道が貫いた。

 

「集いし五星(ごせい)が、知識と祝福の司書官を紡ぎだす! 光さす道となれ! シンクロ召喚、GO! TG(テックジーナス)ハイパー・ライブラリアン!」

 

 光の道はより強く輝き、白い(とばり)となる。

 帳の向こうから現れたのは、学士帽をかぶり、分厚いハードカバーの本を持ち、インバネスをマントのように翻した魔法使い。和輝のデュエルで何度も登場し、展開、ドロー増強の役に立ってきたカードだ。

 

「自身の効果で特殊召喚されたミスト・レディはフィールドを離れた時、ゲームから除外される。そしてこの瞬間、ドッペル・ウォリアーの効果発動。二体のドッペルトークンを攻撃表示で特殊召喚する」

 

 和輝のフィールドに、ドッペル・ウォリアーをスモールサイズにしてデフォルメしたようなモンスターが二体、現れる。これもまた、和輝の展開の基盤だ。

 

「さらに、俺は特殊召喚されたドッペルトークン一体をゲームから除外し、手札の異次元の精霊を特殊召喚する」

 

 さらなる展開。新たなチューナーの出現に、自然、敵の神たちの警戒心が一段階上がる。

 

「いきなり手札を全部使うとか、最初からクライマックスだね?」

「まだまだ続くさ、どこまでもな。俺はレベル1のドッペルトークン一号に、同じくレベル1の異次元の精霊をチューニング!」

 

 連続シンクロ。先ほどと同じシンクロエフェクトが走り、光が辺りを満たした。

 

「集いし二星(にせい)が、新たな地平の導き手を紡ぎだす! 光さす道となれ! シンクロ召喚、駆けろ、シンクロチューナー、フォーミュラ・シンクロン!」

 

 二体目のシンクロモンスター。F1カーに手足と頭をつけたような、玩具を思わせるモンスター。

 

「この瞬間、フォーミュラ・シンクロンとハイパー・ライブラリアンの効果が発動! 合計でカードを二枚ドロー!」

 

 0枚だった手札が二枚に増える。

 

「手札が増えた……」

「さらに、もう一枚増えるぞ、エリス。フォーミュラ・シンクロンはシンクロチューナー、ならばトリッキーとでレベル7のシンクロが可能だ。加えて言えば、あの男、まだ通常召喚を行っていない。それ以上(、、、、)が出るやも知れんぞ」

 

 手札の差から言っても、たとえ乱入されたとしても自分たちの有利は動かないと思っていたエリスの顔が曇る。反対に、軍神であるアレスの表情は(いわお)のように不動だ。

 

「レベル5のトリッキーに、レベル2のフォーミュラ・シンクロンをチューニング!」

 

 三度目のシンクロ召喚。今度はレベル7。二つの緑の輪と三つの白い光星、一筋の光の道。それらが白い輝きへと変じる。

 

「集いし七星(しちせい)が、魔石の力操りし女魔導師を紡ぎだす。光さす道となれ! シンクロ召喚、現れろ、アーカナイト・マジシャン!」

 

 現れたのは、紫の意匠を施された白いローブに身を包んだ女魔術師。その周囲を、ほのかに光るエメラルドグリーンの光が二つ、まるで蝶のように舞い踊る。

 

「アーカナイト・マジシャンとハイパー・ライブラリアンの効果発動。アーカナイトの上に魔力カウンターが二つ乗り、俺はカードを一枚ドロー。

 ここで、アーカナイト・マジシャンの効果を二回発動! このカードの上に載っている魔力カウンターを二つとも取り除き、堕落と伏魔殿を破壊する!」

 

 和輝の宣言の直後、美貌の魔術師の周囲を旋回していたエメラルドグリーンの光が、自立行動をとるビットと化して空中機動。曲芸並みの軌跡を描きながらオデッサのカードに迫る。

 

「グラン・ネオスはお前には似合わねぇよ! さっさとふさわしい持ち主に返しな!」

 

 アーカナイト・マジシャンの一撃が、堕落を破壊。直後、肌の色も元に戻り、引きずり込まれた悪の道から己を取り戻したグラン・ネオスが咲夜のフィールドに復帰した。

 

「あ……」

 

 取り戻されたグラン・ネオスを見て、咲夜の目が見開かれる。視線が感謝の意を伝えている。

 

「ありが、とう」

 

 まだ戸惑いのある咲夜の感謝。和輝が自分の窮地を救ってくれたこと、味方してくれたことは受け入れているだろうが、さすがにその真意を測りかねているのだろう。いうなれば、距離感がつかめないのだ。

 

(ここは、こっちから距離を詰めてあげようよ)

 

 ロキの念話によるアドバイス。従うことにする。

 

「気にしなくていい。俺自身、敵の戦力を減らしつつ、味方の戦力は増やせるし。何より、あいつらがネオスを使っていることがたまらなく許せない」

 

 あえて味方という言葉を使い、且つ自分の心情を偽ることなく吐露する和輝。そのまま次の行動を示す。

 眼前。二発目の破壊効果を食らった悪夢の迷宮が轟音を立てて瓦解していく中、さらにカードを手札から繰り出す。

 

「ワンダー・ワンドをアーカナイト・マジシャンに装備し、効果発動。このカードとアーカナイト・マジシャンを墓地に送り、カードを二枚ドロー」

 

 さらに手札を補充する和輝。険しい表情のエリス、泰然としたアレス、突き放した表情のオデッサ、無表情の兵藤。敵の反応はそれぞれ違う。

 そんな中、新たに二枚補充した手札を見て、和輝はにやりを笑みを浮かべた。

 

「どうやら、まだまだクライマックスは続くようだ。さぁショウタイムだ! 手札から魔法カード、ミラクルシンクロフュージョン発動! 墓地のアーカナイト・マジシャンとトリッキーを除外し、覇魔導士アーカナイト・マジシャンを除外融合!」

 

 和輝の頭上に空間の歪みが作りだした渦が出現。その渦に、彼の墓地から飛び出した二体のモンスターが飛び込んだ。

 

「魔石の力操りし女魔導師よ、軽快なる奇術師よ、今一つとなって覇道を納めし魔導師へと変じよ! 融合召喚、覇魔導士アーカナイト・マジシャン!」

 

 融合召喚。新たに現れたのは、白いローブを脱ぎ捨て、中の鎧をさらしたアーカナイト・マジシャン。凛々しい表にさらに漲る膨大な魔力が物言わずともその力を示していた。

 

「覇魔導士アーカナイト・マジシャンの上に魔力カウンターが二つ乗り、それに伴って攻撃力が2000上昇。さらに俺は、ライトロード・アサシンライデンを召喚し、効果を発動する。デッキトップからカードを二枚墓地に送る」

 

 褐色肌の光の暗殺者が出現後、即座に効果を発動。和輝のデッキから墓地へ落ちたのは召喚僧サモンプリーストとタスケルトン。「いい落ちだ」と和輝は笑った。

 

「レベル1のバトルフェーダーに、レベル4のライデンをチューニング!」

 

 四度目のシンクロ召喚。光の道が天に紡がれる。

 

「集いし五星が、癒しの(すべ)持つ自動人形(オートマタ)を紡ぎだす! 光さす道となれ! シンクロ召喚、出でよマジカル・アンドロイド!」

 

 光の向こうから現れる癒しの術を持った自動人形。これで布石はそろった。

 

「バトルフェーダーはフィールドを離れたことでゲームから除外される。そしてハイパー・ライブラリアンの効果で一枚ドロー。

 

 ここで俺は、墓地のライデンとサモンプリーストを除外し、カオス・ソーサラーを特殊召喚!」

 

「まだ出てくるの!?」

 

 エリスの驚愕、アレスの沈黙。どちらも無視して和輝は踏み込む。余力は考えない。とにかく、できる事をできるだけ、速やかにこなす。

 

「カオス・ソーサラー効果発動! ヘル・エンプレス・デーモンを除外する!」

 

 ヘル・エンプレス・デーモンの背後の空間が硝子が砕けるような音を断てて割れ、真っ黒な異空間が大口を開け、その中から黒くて細長い無数の手が出現、その鉤爪でヘル・エンプレス・デーモンを捕え、異空間に放逐してしまった。

 

「さらに覇魔導士アーカナイト・マジシャンの効果発動! 魔力カウンターを一つ取り除き、ジェネシス・デーモンを破壊!」

 

 覇魔導士が放つエメラルドグリーンの光の矢が、まっすぐ突き進んでジェネシス・デーモンの左胸の宝珠に命中。巨躯の悪魔は断末魔の咆哮を上げて消えていった。

 

「……ッ! 補給部隊の効果で一枚ドロー」

 

 手勢を全て破壊され、無人の野と化したオデッサのフィールド。まさに攻め込むタイミングだ。

 

「バトル! ハイパー・ライブラリアン、マジカル・アンドロイド、覇魔導士アーカナイト・マジシャンの順番でエリスのパートナーにダイレクトアタック!」

 

 三連撃。まず最初に、ハイパー・ライブラリアンが手にした本を開き、そこから漆黒の巨大な光球を放つ。光球は決して速い速度ではなかったが、まっすぐオデッサめがけて飛来する。

 

「躱して、オデッサ!」

 

 即座に反応するオデッサ。背後に向かって跳躍。バトルフィールド内によって飛躍的に上昇した身体能力によって、彼女は一気に十メートルほど後方に下がった。そこを狙いすましたかのように、マジカル・アンドロイドが放った白い光がオデッサを襲った。

 

「ッ!」 

 

 とっさに腕で宝珠を守る。次の瞬間、光が物理的衝撃を伴って直撃。ただし威力はさほどでもなかったらしく、オデッサの体躯は軽く突き飛ばされた。

 

「きゃっ」

 

 予想外に軽い衝撃に、かえって小さな悲鳴が漏れ、さらにバランスを崩した。

 尻餅をつき、僅かにあお向け気味になったオデッサの視界に広がったのは、幾筋にも別れたエメラルドグリーンの光線。光線は空中でカーブを描いて雨の様にオデッサに向かって降り注いだ。

 

「り、リバースカード、ガード・ブロック発動! 戦闘ダメージを0にして、カードを一枚ドロー!」

 

 思わず声が上ずるオデッサ。彼女を囲む様に透明のドーム型の障壁が展開、エメラルドグリーンの雨を防ぐ傘となった。

 ロキの契約者の少年は、ここで自分を囲い込んで(、、、、、)倒すつもりだった。おそらく、宝珠を効率よく砕くつもりだった。何度も実戦を経た経験値の差。厄介で、危険な相手だ。

 

「攻撃失敗か。カードを二枚セットし、エンドフェイズにマジカル・アンドロイドの効果発動。俺のライフを600回復する。ターンエンドだ」

 

 

The トリッキー 風属性 ☆5 魔法使い族:効果

ATK2000 DEF1200

(1):このカードは手札を1枚捨てて、手札から特殊召喚できる。

 

ミスト・レディ 水属性 ☆3 魔法使い族:チューナー

ATK1300 DEF1000

(1):自分の手札、またはデッキからモンスターの特殊召喚に成功した場合に発動できる。墓地のこのカードを特殊召喚する。この効果によって特殊召喚されたこのカードがフィールドを離れた時、このカードをゲームから除外する。

 

ドッペル・ウォリアー 闇属性 ☆2 戦士族:効果

ATK800 DEF800

(1):自分の墓地のモンスターが特殊召喚に成功した時に発動できる。このカードを手札から特殊召喚する。(2):このカードがS素材として墓地へ送られた場合に発動できる。自分フィールドに「ドッペル・トークン」(戦士族・闇・星1・攻/守400)2体を攻撃表示で特殊召喚する。

 

TG ハイパー・ライブラリアン 闇属性 ☆5 魔法使い族:シンクロ

ATK2400 DEF1800

チューナー+チューナー以外のモンスター1体以上

(1):このカードがフィールドに存在し、自分または相手が、このカード以外のSモンスターのS召喚に成功した場合に発動する。このカードがフィールドに表側表示で存在する場合、自分はデッキから1枚ドローする。

 

異次元の精霊 光属性 ☆1 天使族:チューナー

ATK0 DEF100

このカードは自分フィールド上に表側表示で存在するモンスター1体をゲームから除外し、手札から特殊召喚する事ができる。次のスタンバイフェイズ時、この特殊召喚をするためにゲームから除外したモンスターをフィールド上に戻す。

 

フォーミュラ・シンクロン 光属性 ☆2 機械族:シンクロチューナー

ATK200 DEF1500

チューナー+チューナー以外のモンスター1体以上

(1):このカードがフィールドに存在し、自分または相手が、このカード以外のSモンスターのS召喚に成功した場合に発動する。このカードがフィールドに表側表示で存在する場合、自分はデッキから1枚ドローする。

 

アーカナイト・マジシャン 光属性 ☆7 魔法使い族:シンクロ

ATK400 DEF1800

チューナー+チューナー以外の魔法使い族モンスター1体以上

このカードがシンクロ召喚に成功した時、このカードに魔力カウンターを2つ置く。このカードの攻撃力は、このカードに乗っている魔力カウンターの数×1000ポイントアップする。また、自分フィールド上の魔力カウンターを1つ取り除く事で、相手フィールド上のカード1枚を選択して破壊する。

 

ワンダー・ワンド:装備魔法

魔法使い族モンスターにのみ装備可能。装備モンスターの攻撃力は500ポイントアップする。また、自分フィールド上のこのカードを装備したモンスターとこのカードを墓地へ送る事で、デッキからカードを2枚ドローする。

 

ミラクルシンクロフュージョン:通常魔法

(1):自分のフィールド・墓地から、融合モンスターカードによって決められた融合素材モンスターを除外し、Sモンスターを融合素材とするその融合モンスター1体をエクストラデッキから融合召喚する。(2):セットされたこのカードが相手の効果で破壊され墓地へ送られた場合に発動する。自分はデッキから1枚ドローする。

 

覇魔導士アーカナイト・マジシャン 光属性 ☆10 魔法使い族:融合

ATK1400 DEF2800

魔法使い族シンクロモンスター+魔法使い族モンスター

このカードは融合召喚でのみエクストラデッキから特殊召喚する事ができる。このカードが融合召喚に成功した時、このカードに魔力カウンターを2つ置く。このカードに乗っている魔力カウンター1つにつき、このカードの攻撃力は1000ポイントアップする。1ターンに1度、自分フィールド上に存在する魔力カウンターを1つ取り除く事で、以下の効果を発動する事ができる。●フィールド上に存在するカード1枚を選択して破壊する。●自分のデッキからカードを1枚ドローする。

 

ライトロード・アサシン ライデン 光属性 ☆4 戦士族:チューナー

ATK1700 DEF1000

自分のメインフェイズ時に発動できる。自分のデッキの上からカードを2枚墓地へ送る。この効果で墓地へ送ったカードの中に「ライトロード」と名のついたモンスターがあった場合、このカードの攻撃力は相手のエンドフェイズ時まで200ポイントアップする。「ライトロード・アサシン ライデン」のこの効果は1ターンに1度しか使用できない。また、自分のエンドフェイズ毎に発動する。自分のデッキの上からカードを2枚墓地へ送る。

 

マジカル・アンドロイド 光属性 ☆5 サイキック族:シンクロ

ATK2400 DEF1700

チューナー+チューナー以外のモンスター1体以上

自分のエンドフェイズ時、自分フィールド上のサイキック族モンスター1体につき、自分は600ライフポイント回復する。

 

カオス・ソーサラー 闇属性 ☆6 魔法使い族:効果

ATK2300 DEF2000

このカードは通常召喚できない。自分の墓地の光属性と闇属性のモンスターを1体ずつゲームから除外した場合に特殊召喚できる。1ターンに1度、フィールド上に表側表示で存在するモンスター1体を選択してゲームから除外できる。この効果を発動するターン、このカードは攻撃できない。

 

ガード・ブロック:通常罠

相手ターンの戦闘ダメージ計算時に発動する事ができる。その戦闘によって発生する自分への戦闘ダメージは0になり、自分のデッキからカードを1枚ドローする。

 

 

覇魔導士アーカナイト・マジシャン魔力カウンター×1、攻撃力1400→2400

 

 

咲夜LP1300手札0枚

兵藤LP4400手札1枚

オデッサLP6000→3600→1200手札6枚

和輝LP8000→8600手札0枚

 

 

「あたしのターン、ドロー!」

 

 思わぬ助っ人は、相手の布陣を崩し、あまつさえ、あの厄介過ぎるエリスの契約者を追い詰めてくれた。

 何という頼もしさ。共闘することが、背中を預けることが心地いい。

 同時に、負けていられないという対抗意識が湧く。自分だってプロなのだ。いつまでも不利なままで終わらせるものか。

 

「カードを一枚セットして、グラン・ネオスの効果発動! アレスのパートナーの場にいる守備モンスターを手札に戻す!」

 

 グラン・ネオスのドリルが空間を穿つ。穴の開いた空間から発生する吸引力が兵藤の守備モンスターを場外に引きずり込む。

 これで兵藤とオデッサ、双方のフィールドががら空きになった。攻めるなら今。問題は、どちらを攻めるか、だが。

 

「グラン・ネオスでエリスのパートナーにダイレクトアタック!」

 

 選んだのはオデッサ。理由は、先の和輝の攻撃の際にバトルフェーダーのような手札から発動できる防御系カードを発動しなかった。だから咲夜は、彼女の手札にもう防御手段はないと判断した。

 無論、先の攻撃でライフは0にならないのだから、温存した可能性もある。それならばそれで、敵の防御手段を削れる。いずれにしても損はない。

 グラン・ネオスのドリルが唸りを上げてオデッサに迫る。まるで、さきほど操られて己の主に攻撃させられた恨みを晴らすかのような突進。

 だがオデッサは冷静に応じた。

 

「手札のバトルフェーダーの効果発動。このカードを特殊召喚して、バトルフェイズを終了させる」

 

 止められた。だが相手の防御手段は失わせた。

 

「温存していたか、さっきのガード・ブロックで引き当てたか。いずれにしてもうまくはいかんか」

「仕方がないわ。寧ろ防御手段を削れたことを良しとするしかない。これでターンエンド」

 

 

「オレのターンだ、兵藤、ドローしろ」

 

 アレスの命令に契約者にして人形の兵藤が従う。相変わらず無表情でカードをドロー。ドローカードを確認し、アレスはにやりと笑った。

 

「来たか。兵藤、伏せカードを発動しろ」

「はい、アレス様。リバースカード、リミット・リバース発動。墓地からジュラック・アウロを蘇生」

「効果を発動。ジュラック・アウロをリリースし、ジュラック・モノロフを特殊召喚。さらにリミット・リバースを墓地に送ってマジック・プランター発動。カードを二枚ドローだ」

 

 アレスの指示という名の操り糸が、兵藤を動かす。最後の指示に従った兵藤の指が、手札から一枚のカードを引き抜いた。

 

「真炎の爆発発動。墓地から、二体のジュラック・アウロを特殊召喚」

 

 新たに二体のジュラックが現れる。どちらも子供のジュラック。さっきから現れてはほかのジュラックを呼び出すためにリリースされる哀れなジュラック・アウロたち。

 

「ここからだ! 三体のモンスターをリリース!」

 

 アレスの咆哮。同時、彼のフィールドにいた三体のモンスターが白い光の粒子となる。粒子はその場にとどまり、一か所に集中。巨大な力を招き入れる“門”となる。

 

「さぁ! さぁさぁさぁ! ここからだ、ここからがオレの本当の戦いだ! いざ出陣! このオレ、侵略の戦争神アレス!」

 

 門が開かれる。

 (ゴウ)ッ! と炎が噴出し、それが四組の参加者を囲むようにぐるりと円を描く。炎はひとりでに回転し始め、ばっと宙に向かって霧散。炎の飛沫の歓迎を受けて現れたのは、絶句するほど強大な気配。

 三十代前半の外見を持つ大男。鉄錆色の冑、棘付スパイク鎧、黄色のマントを羽織った姿。

 褐色の肌、赤い双眸、左手に円形の盾を、右手に肉厚且つ両刃の大剣を装備し、そのどちらも血で汚れている。

 血と戦、そして侵略の神、アレス。ギリシャ神話の戦争の神。そして、同胞でありながらアテナを敵視する“外れた”神。その攻撃力は4000。

 

「神の登場か。和輝、アレスの言ったことは間違いじゃない。きっとここからが――――」

「本番、ってわけか」

 

 身構える和輝。咲夜とアテナも警戒心に満ちた表情で、アレス=兵藤の一挙手一投足を見守る。

 

「さぁ行くぞ! このオレの力を見せてやろう! 来るがいい、我が雑兵どもよ! オレの空いたモンスターゾーンに、炎隊トークンを特殊召喚!」

 

 アレスが両手を広げる。次の瞬間、彼の両隣に紅蓮の炎が四つ出現。ごうごうと燃え盛る炎は形を変え、やがて人型となった。

 人型はさらにその身に軽装の革鎧を装備し、手に手に武器を持つ。それぞれ剣、槍、斧、そして弓矢。四つの炎の塊は、瞬く間に四人の炎の兵士となった。

 

「兵隊、か。トークンを生み出す効果。攻撃力は――――2000か」

 

 ロキの表情が険しくなる。雑兵の召喚。何の制約もコストもない攻撃力2000のトークンの召喚。確かにそれは強力だが、それだけでこの状況を打破できるかは判断不能だ。だがアレスは自信満々だ。ならば、アレスの効果にはまだ先があるということか。

 

「バトルだ! アレス(このオレ)でグラン・ネオスを攻撃!」

 

 アレスの命令に、兵藤が忠実に応じる。攻撃宣言が下り、カードとしてのアレスが進軍を開始。一足でグラン・ネオスとの距離を詰め、右手の剣を一閃。グラン・ネオスは抵抗の(すべ)なく両断され、上半身と下半身が別れを告げた。

 

「グラン・ネオス!」

 

 ダメージのフィードバックが咲夜を襲う。彼女は顔をしかめながらも踏みとどまって、アレスを睨みつけた。

 だが更なる衝撃が、咲夜のみならず、和輝をも襲った。

 

「この瞬間、アレス(オレ)の効果発動! 戦闘破壊したモンスターよりも低い攻撃力の相手モンスターを全て破壊する! この場合、タッグパートナーである貴様のフィールドも範囲内だ、ロキのパートナー!」

「な!?」

 

 和輝の驚愕を置き去りに、アレスが左手の盾を掲げた。

 一瞬後、盾を中心に炎が放射状に広がる。炎は意志ある物のごとく蠢き、広がり、一瞬にして和輝のフィールドを蹂躙、モンスターたちを焼き払ってしまった。

 

「くっそ!」

「やばっ。がら空きだ!」

 

 和輝と咲夜、二人のフィールドがまっさらになる。しかも、まだ場には攻撃力2000のトークンが四体。

 

「まずは貴様からだ、アテナのパートナー! 炎隊トークン一号でダイレクトアタック!」

 

 咲夜に向かって、剣を手に取った炎の兵士が肉薄。和輝が即座にデュエルディスクに手を伸ばした。

 だが、

 

「待って! 大丈夫、このくらい、あたし一人で何とかなるから!」

 

 咲夜の制止の叫び。和輝の動きをとどめ、それとほぼ同時に自身のデュエルディスクのボタンを押した。

 

「リバーストラップ発動! リターン・オブ・ネオス! あたしの墓地からE・HERO ネオスを特殊召喚し、カードを二枚ドロー!」

 

 翻るリバースカード。そして、墓地にいたネオスが不屈の雄叫びとともに復活、炎隊トークンの前に立ちはだかる。

 

「足掻くか! ならば貴様へのとどめは我が妻、エリスに譲ろう。戦闘の巻き戻しが発生。炎隊トークン四体でロキのパートナーの小僧にダイレクトアタック!」

 

 四体の炎の兵士が一斉に和輝に向かって殺到する。

 

「凌ぎ切って見せるさ! リバースカード、ガード・ブロック発動!」

 

 一手目にして翻るリバースカード。不可視の壁が屹立し、一番先頭の、剣を持った炎隊トークンに激突する。剣の背に続いていた槍、斧の兵隊の進軍が滞る。その隙に和輝はバックステップで距離をとる。

 

「甘い! 二体目の炎隊トークンでダイレクトアタック!」

 

 詰め寄るアレス。空気を裂いて放たれた矢が和輝の足に直撃した。

 

「がっ!」

「和輝!? アレスのやつ、先に機動力を削ぎに来たか!」

 

 膝に矢を受け倒れる和輝。その身に覆いかぶさるように残った二体の炎隊トークンが襲来。斧を持った炎隊の振り下ろしの一撃を転がって辛うじて回避、転がる勢いを使って起き上ったところに、宝珠狙いの槍の刺突が来た。

 

「ッ!」

 

 これまた辛くもそらすことに成功。宝珠は守ったが、代わりに槍の穂先が左肩に激突した。

 

「がぁ!」

 

 跳ね上がる痛みに思わず苦悶の声が漏れた。が、和輝は踏んばり、倒れることはなかった。その瞳の戦意はいささかも陰らない。

 

「こ、この瞬間、リバースカードオープン! ダメージ・コンデンサー! 手札を一枚捨て、デッキからブラック・マジシャン・ガールを特殊召喚!」

 

 翻る和輝の二枚目の伏せカード。同時に現れたのは、青を基調にした、やや露出の高い衣装を着た可憐な魔術師の少女。愛想を振りまくようにウィンクをするが、哀しいかな、この戦場では誰も反応しなかった。痛みに耐えている和輝も含めて。

 

「さらに捨てたカードは代償の宝札。効果を発動し、二枚ドロー!」

「抜け目のない男だ。ターンエンド!」

 

 

リミット・リバース:永続罠

自分の墓地の攻撃力1000以下のモンスター1体を選択し、表側攻撃表示で特殊召喚する。そのモンスターが守備表示になった時、そのモンスターとこのカードを破壊する。このカードがフィールド上から離れた時、そのモンスターを破壊する。そのモンスターが破壊された時、このカードを破壊する。

 

ジュラック・アウロ 炎属性 ☆1 恐竜族:チューナー

ATK200 DEF200

このカードをリリースして発動できる。自分の墓地から「ジュラック・アウロ」以外のレベル4以下の「ジュラック」と名のついたモンスター1体を選択して特殊召喚する。

 

ジュラック・モノロフ 炎属性 ☆3 恐竜族:チューナー

ATK1500 DEF1200

このカードは相手フィールド上の全てのモンスターに1回ずつ攻撃できる。

 

真炎の爆発:通常魔法

自分の墓地から守備力200の炎属性モンスターを可能な限り特殊召喚する。この効果で特殊召喚したモンスターはこのターンのエンドフェイズ時にゲームから除外される。

 

侵略の戦争神アレス 神属性 ☆10 幻神獣族:効果

ATK4000 DEF2000

このカードは特殊召喚できない。このカードは3体のモンスターをリリースしてのみ通常召喚できる。(1):このカードは神属性、幻神獣族モンスターの効果以外のカード効果ではフィールドを離れず、コントロールも変更されない。(2):このカードが相手のカードの効果を受けた時、エンドフェイズにこのカードに対するそのカード効果を無効にする。(3):1ターンに1度、自分フィールドの空いたモンスターゾーン全てに炎隊トークン(炎族・炎・攻/守2000)を特殊召喚する。このトークンはリリースできない。(4):このカードが相手モンスターを戦闘で破壊した時に発動する。相手モンスターゾーンに表側表示で存在する破壊されたモンスターよりも攻撃力の低いモンスターを全て破壊する。

 

リターン・オブ・ネオス:通常罠

「リターン・オブ・ネオス」は1ターンに1枚しか発動できない。(1):自分の墓地の「E・HERO ネオス」1体を特殊召喚する。その後、カードを2枚ドローする。

 

E・HERO ネオス 光属性 ☆7 戦士族:通常モンスター

ATK2500 DEF2000

 

ダメージ・コンデンサー:通常罠

自分が戦闘ダメージを受けた時、手札を1枚捨てて発動できる。受けたそのダメージの数値以下の攻撃力を持つモンスター1体をデッキから表側攻撃表示で特殊召喚する。

 

代償の宝札:通常魔法

(1):手札からこのカードが墓地に送られた時に発動する。カードを2枚ドローする。

 

ブラック・マジシャン・ガール 闇属性 ☆6 魔法使い族:効果

ATK2000 DEF1700

(1):このカードの攻撃力は、お互いの墓地の「ブラック・マジシャン」「マジシャン・オブ・ブラックカオス」の数×300アップする。

 

 

E・HERO ネオス攻撃力2500→3000

 

 

咲夜LP1300→300手札2枚

兵藤LP4400手札2枚

オデッサLP1200手札5枚

和輝LP8600→6600→4600→2600手札2枚

 

 

「あたしのターン、ドロー」

 

 ドローカードを一瞥で確認し、オデッサはそのカードを手札に加え、しばらく吟味するように己の手札を眺めていた。

 

「そっか。じゃ、行き時かな。デーモンの宣告効果発動。500ライフを払って、カードを宣言。あたしは、デーモン・ソルジャーを宣言」

「? ピーピングカードもなく、そんなことをして当たるのか?」

「当たるわ。超能力だって。今まで百発百中よ」

「神の力の残滓、か。たまにいるけど、神々の戦争の参加者にもいたとはね」

「マジか……」

 

 咲夜の言葉に呆れを含みながらも黙る和輝。その眼前、オデッサのデッキトップが露わになる。当然正解かと思いきや――――

 

「デッキトップはヘルウェイ・パトロール。外れたから、墓地に送る」 

 

 外れ。露わになったカードは特に停滞なく墓地へ送られた。

 

「外れた、いや、外したのか?」

「だと思うわ。だってヘルウェイ・パトロールは墓地で効果を発揮するカード。手札に加えるより墓地にいてもらった方がいい」

「で、だ。ここでそんなカードが来たってことは、流れとしては来る(、、)な」

 

 警戒心をむき出しにした表情の和輝。ロキも首肯する。「神が、来るよ」

 さっと全員の顔が引き締まる。二体目の神の気配を感じ、全員が緊張を漲らせた。

 

「墓地のヘルウェイ・パトロール効果発動。このカードを除外して、手札のデーモン・ソルジャーを特殊召喚。さらに手札のデーモンの将星を捨てて、ワン・フォー・ワン発動。デッキからヘル・セキュリティを特殊召喚」

 

 三体目のモンスター。これで、神召喚の地盤は整った。

 

「三体のモンスターをリリース」

 

 そして来る瞬間がやってくる。オデッサのフィールドの三体のモンスターが光の粒子となり世界に溶け込むように消えていく。

 そして、“門”が出現、開かれる。

 

「おいで、不和と争いの女神エリス」

 

 力が顕現する。形容しがたい圧迫感、力の奔流が一気に和輝と咲夜の全身を叩いた。

 

「ッ!」

「二体目か!」

 

 現れる神。

 足まで届く銀髪、右が金、左が銀のオッドアイ、血と埃に塗れた黒い鎧姿、手に身の丈ほどの長さの赤い槍。人々の間に不和をもたらし、闘争を巻き起こし、それを眺めて笑う悪辣な女神の戦闘形態。

 

「うふふ。オデッサ、(わたくし)を存分に使ってみなさいな」

「そうね、そうさせてもらう。エリスの効果発動。相手モンスター一体のコントロールを得る。対象はネオス」

「さぁお嬢さん。再び貴方の大切なカードをいただくわ?」

「ッ!」

 

 再びネオスを奪い咲夜に大きな精神的ダメージを与えようと画策するエリスの笑み。そして、エリスが手にした槍を振り被った。

 

「絆とか、想いとか、そんな不確かで脆い物、簡単に壊せるわねぇ!」

 

 嘲笑と共に槍を一閃。が、次の瞬間、エリスの動きを拘束するように、その全身にエメラルドグリーンの光の鎖が巻き付いた。

 

「え!?」

 

 驚愕のエリス。何が何だかわからない困惑が顔全体に浮かぶ。

 

「その効果、やらせるわけにはいかない。手札から閉ざせし悪戯神ロキの効果発動! このカードを墓地に捨て、エリスの効果を無効にする!」

「何度も君の思い通りにはさせないよ、エリス!」

 

 光の鎖によってエリスの拘束に成功したロキが、にこりと笑って言った。あからさまな挑発だが、エリスはやはり面白くなさそうに、不機嫌そうな表情を浮かべた。

 

「ならば、防御手段だけ奪っておきましょうか。オデッサ」

「そう、エリスがそうしたいならそうすればいい。エリスでネオスに攻撃」

「今度は俺に防がせてもらおう。墓地のタスケルトン効果発動! このカードを除外し、攻撃を無効!」

 

 予定調和的に攻撃は防がれた。だがこれで和輝の墓地にもう防御手段はない。エリスの狙いはそこだった。

 それにしても効果を無効化されたのは忌々しい。エリスは戦闘破壊したモンスターのコントトールを奪う。これさえ無効となったのだ。

 

「ターンエンド」

 

 

ヘルウェイ・パトロール 闇属性 ☆4 悪魔族:効果

ATK1600 DEF1200

(1):このカードが戦闘でモンスターを破壊し墓地へ送った場合に発動する。そのモンスターの元々のレベル×100ダメージを相手に与える。(2):墓地のこのカードを除外して発動できる。手札から攻撃力2000以下の悪魔族モンスター1体を特殊召喚する。

 

デーモン・ソルジャー 闇属性 ☆4 悪魔族:通常モンスター

ATK1900 DEF1500

 

ワン・フォー・ワン:通常魔法

(1):手札からモンスター1体を墓地へ送って発動できる。手札・デッキからレベル1モンスター1体を特殊召喚する。

 

ヘル・セキュリティ 闇属性 ☆1 悪魔族:チューナー

ATK100 DEF600

(1):このカードが戦闘で破壊され墓地へ送られた場合に発動する。デッキから悪魔族・レベル1モンスター1体を特殊召喚する。

 

不和と争いの女神エリス 神属性 ☆10 幻獣族:効果

ATK3500 DEF3500

このカードは特殊召喚できない。このカードは3体のモンスターをリリースしてのみ通常召喚できる。(1):このカードは神属性、幻神獣族モンスターの効果以外のカード効果ではフィールドを離れず、コントロールも変更されない。(2):このカードが相手のカードの効果を受けた時、エンドフェイズにこのカードに対するそのカード効果を無効にする。(3):1ターンに1度、相手モンスターゾーンのモンスター1体を選択して発動することができる。選択したモンスターのコントロールを得る。(4):このカードが戦闘で相手モンスターを破壊し、墓地に送った時に発動できる。そのモンスターを召喚条件を無視して表側攻撃表示で特殊召喚する。

 

閉ざせし悪戯神ロキ 神属性 ☆10 幻神獣族:効果

ATK2500 DEF2500

このカードは特殊召喚できない。このカードは3体のモンスターをリリースしてのみ通常召喚できる。(1):このカードは神属性、幻神獣族モンスターの効果以外のカード効果ではフィールドを離れず、コントロールも変更されない。(2):このカードが相手のカードの効果を受けた時、エンドフェイズにこのカードに対するそのカード効果を無効にする(3):このカードの召喚に成功した時発動できる。自分のデッキの上からカードを5枚めくる。その中からカードを1枚選んで手札に加えることができる。残りのカードは墓地に送る。(4):このカードを手札から墓地へ送り、相手フィールドの効果モンスター1体を対象として発動できる。その相手モンスターの効果をターン終了時まで無効にする。この効果は相手ターンでも発動できる。

 

タスケルトン 闇属性 ☆2 アンデット族:効果

ATK700 DEF600

モンスターが戦闘を行うバトルステップ時、墓地のこのカードをゲームから除外して発動できる。そのモンスターの攻撃を無効にする。この効果は相手ターンでも発動できる。「タスケルトン」の効果はデュエル中に1度しか使用できない。

 

 

咲夜LP300手札2枚

兵藤LP4400手札2枚

オデッサLP1200→700手札2枚

和輝LP2600手札1枚

 

 

「俺のターン、ドロー!

 

 二体の神と相対して、和輝はわずかに身を震わせる。恐怖からではない。心の底からやってやる(、、、、、)という気概が湧いてくる。いわばこれは、武者震いだ。

 ただし手札が心もとない。だから、このカードだ。

 

「カードを一枚セットし、希望の宝札発動! 全てのプレイヤーは手札が六枚になるよう、カードをドローする!」

 

 デュエルモンスターズ中、最強のドローブーストカードの発動。乏しかった手札が一気に潤う。もっとも、それは敵も同じだが。

 

「よっし! 俺は手札から死者転生を発動。手札を一枚捨て、墓地のロキを回収。そして魔法カード、ソウル・チャージを発動! 墓地から二体のモンスターを復活させ、2000ライフを払う!」

「ッ! ここにきて、神召喚のための地盤を揃えたの……!」

 

 忌々しさと驚愕を合わせたエリスの声音。アレスは沈黙。巌のように動かず、和輝の出方を窺っている。

 

「三体のモンスターをリリースし、閉ざせし悪戯神ロキを召喚!」

 

 和輝の場の三体のモンスターが光の粒子となって消えていく。

 そして、三度目の神召喚のための“場”と“門”が形成され、凄まじい力が辺りに荒れ狂った。

 そして、三体目の神が現れる。

 金髪碧眼の美丈夫。幾重にも白のローブを纏い、その下には闇を凝縮したかのような紫の鎧、両腕に複雑な刻印が刻まれた金の腕輪、ローブ中心部、ちょうど胸に当たる部分に拳大の紫の宝珠。

 北欧神話にその名を轟かせるトリックスター、ロキの登場だった。

 

「アレス、エリス、悪いけど、今回ボクは戯言抜きでいかせてもらおうか。さすがに、ちょっと頭にきているからね」

 

 ロキの笑みを伴った台詞に、エリスは不快げに、アレスは「小癪な台詞をほざく」と吐き捨てた表情を作る。

 

「ロキの効果発動。デッキからカードを五枚めくり、そのうち一枚を手札に、残りを墓地に送る」

 

 和輝が己のデッキトップから五枚のカードを一気に引き抜き、提示する。提示されたのはダンディライオン、ダブル・アップ・チャンス、巨大化、クリバンデット、ブラック・マジシャン。

 

「巨大化を手札に加える。残りは墓地送り。この瞬間、墓地に送られたダンディライオンの効果発動。俺のフィールドに綿毛トークンを二体特殊召喚する。カードを一枚セットして、ターンエンドだ」

 

 和輝のエンド宣言に、ロキががっくりと体を(くずお)れさせた。その表情に苦笑が浮かび、和輝を振り返った。

 

「あらら。和輝、ボクの活躍はこれで終わりなの? 啖呵切っておいてこれって、すっごい恥ずかしいよ」

「ソウル・チャージ使ったから攻撃できないんだ。それに今回主役は俺たちじゃない(、、、、、、、、、、、、)。だろ?」

 

 肩をすくめる和輝の抗弁に、ロキはあっさりと納得した。

 そう、この戦いを締めくくるのは和輝ではない。今までずっと闘ってきた小さな女神とその契約者であるべきだ。

 

 

希望の宝札:通常魔法

(1):互いのプレイヤーは手札が6枚になるようにカードをドロー、または手札のカードを捨てる。このカードを発動するターン、自分は他のカード効果でデッキからカードをドローできない。

 

死者転生:通常魔法

(1):手札を1枚捨て、自分の墓地のモンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターを手札に加える。

 

ソウル・チャージ:通常魔法

「ソウル・チャージ」は1ターンに1枚しか発動できず、このカードを発動するターン、自分はバトルフェイズを行えない。(1):自分の墓地のモンスターを任意の数だけ対象として発動できる。そのモンスターを特殊召喚し、自分はこの効果で特殊召喚したモンスターの数×1000LPを失う。

 

ダンディライオン 地属性 ☆3 植物族:効果

ATK300 DEF300

(1):このカードが墓地へ送られた場合に発動する。自分フィールドに「綿毛トークン」(植物族・風・星1・攻/守0)2体を守備表示で特殊召喚する。このトークンは特殊召喚されたターン、アドバンス召喚のためにはリリースできない。

 

 

咲夜LP300手札6枚

兵藤LP4400手札6枚

オデッサLP700手札6枚

和輝LP2600→600手札3枚

 

 

「あたしのターン、ドロー!」

 

 ターンは移行し、咲夜の元に。彼女は熾烈な意思を込めた瞳でカードをドロー。ドローカードを一瞥し、軽く息を呑んだ。

 (アテナ)のカード。子供になってしまい碌に力も振るえないが、デュエルでならばその本来の姿を見せることができる。これで決めろということか。

 そして今は何故か信じられた。ロキのパートナーの少年が伏せたカードは、こちらをサポートするものだと。彼らの心意気が自然と伝わってきた。アテナも何も言わない。彼女もわかっているのかもしれない。彼らは信頼できる。今自分たちは、彼らを信頼していいんだと。(、、、、、、、、、)

 

「魔法カード、コール・ネオスペーシアン発動! あたしのフィールドにネオスがいる時、デッキから二種類の(ネオスペーシアン)を特殊召喚できる! N・フレア・スカラベとN・グローモスを特殊召喚!」

 

 ネオスを支えるように。彼女のデッキからネオスの仲間たちが現れる。炎をまとった昆虫戦士と、白く発行する人型。

 三体のモンスターが揃う。神召喚の準備が終わった。

 

「あたしの場の三体のモンスターをリリース! 来て、守護の戦女神アテナ!」

 

 四体目の神。

 今までの子供の姿ではなく、本来の姿での顕現。

 二十代後半ほどの美女、ウェーブがかかった赤髪、金の双眸、白い肌。その身に纏うは白のローブとその上に装備した朱金色のスカートパーツのある鎧。背中には収納状態のウィングパーツがあり、右手に黄金の槍、左手に十二星座の刻印が入った円形の盾。この盾はかなり大きく、前に突き出せば相手からはアテナの姿が完全に隠れてしまうほどだ。

 アテナ。ギリシャ神話で、アレスと同じく戦争の女神。ただしアレスが進軍のような“攻め”を現すならば、アテナは都市防衛などの“守り”を要とする。

 本来はアレスと同格、或は上回る神格の持ち主だ。だが――――

 

「く……ッ!」

 

 召喚されたアテナの表情は苦しげだ。力の大半を削られ、人間の少女よりも無力な存在となってしまった彼女にとって、デュエルの中限定とはいえ、本来の姿になるのはそれだけで多大な負担なのだ。

 勿論、アレスもエリスも、そのことを見抜いた。ゆえに二柱の神には明らかな嘲笑が浮かんでいた。

 

「無様だな、アテナ。かつて勇猛にして堅牢な守備を誇った貴様が、今では鎧姿で戦場に立つだけで息切れとは」

「あげくこうして今にも膝をつきそう。哀れね」

 

 敵の嘲笑に、アテナは歯噛みして耐える。咲夜は怒りに任せて何か言ってやろうと思い、一歩、僅かに前に出た。

 だが、一人と一柱は予期せぬ言葉に行動を制止させられた。

 

黙れ(、、)!」

 

 和輝の大喝(、、、、、)。神々がその剣幕を受け、ふと黙った。

 

「ぐちゃぐちゃとやかましい。だいたい、お前らは良く吠えられるな。これから負ける癖に」

 

 和輝の挑発と怒りを含んだ言葉が、二柱の神の視線を鋭く、怒りを含んだものに変えた。

 

「言ってくれるな小僧。だが、貴様のロキもまた、貧弱なステータス。一体何ができる? オレ達のターンが回った途端に瞬殺されるぞ」

「ま、確かにボクじゃ正面から殴り掛かっても、君たちには勝てないよね。だけど、さっきも言っただろ? このデュエルを決めるのは、小さくなってしまった女神と、彼女をずっと守ってきた勇敢な女の子だって」

国守(くにもり)プロ! こいつをアシストに使ってくれ!」

 

 肩をすくめるロキと、デュエルディスクのボタンを押し、伏せカードを翻す和輝。そのどちらの思いも受け取って、咲夜は笑った。安心であり、自信であり、そして確かに嬉々を含んだ笑みだった。

 

「咲夜でいいよ。和輝君。そう呼ばせてもらっていい?」

「光栄だね。リバースカードオープン! ミニマムガッツ! 俺の場の綿毛トークンをリリースし、アレスの攻撃力を0にする!」

 

 和輝の場にいた綿毛トークンが雄々しく燃え上がり、一個の弾丸となってアレスに突撃した。

 

「馬鹿な!」

 

 アレスは自分に向かってきた小さな存在に対して剣を振るったが、迎撃できない。弾丸綿毛はするりと剣の一撃を回避しそのままアレスの腹部に直撃、その腹に大きな風穴を上げた。

 

「があああああああああ! こ、こんな、雑魚モンスターに……ッ!」

「神は強力だが無敵じゃない。倒す方法は本人たちが思っているよりも多くあるってことだ!」

「そう、そうね。だからこそ、アテナだって戦える! 今は力も弱くても、ほかの仲間(カード)で補えばいい! O-オーバー・ソウル発動! 墓地のネオスを復活!」

 

 復活する咲夜のフェイバリットカード。ここぞとばかりに和輝のサポートが入る。

 

「リバースカード、巨大化発動! これをネオスに装備!」

 

 ネオスの攻撃力が元々の数値分強化され、5500に。今の咲夜の戦力ならば、二柱の神さえ打倒できる。咲夜が手札からカードを一枚抜き放った。

 

「さらにダメ押し! ニトロ・ユニットをエリスに装備!

 

 バトルよ! これで終わらせる、アテナの脅威を取り除く! アテナでアレスを攻撃!」

 このデュエルの幕を下ろす攻撃が、これから始まる。

 

「はぁ!」

 

 苦痛を押し殺しながらアテナが跳躍。右手の槍を旋回させ、穂先をアレスに。そして――――

 

「滅びろアレス、我が黄金の槍を受けて!」

 

 投擲。一瞬にして音速の壁をぶち抜いた黄金の槍はソニックブームを発生させながら突き進む。

 

「お、おのれ、アテナァ……ッ! ロキの、パートナーさえ現れなければ!」

 

 一転して優位から敗北に突き落とされたアレスは、この現実を認められないかのように恨みごとを漏らす。次の瞬間、黄金の槍が直撃。衝撃と熱波がその断末魔をもかき消した。

 間髪入れぬ和輝の声。「ここで、ミニマム・ガッツの効果発動! アレスの攻撃力分のダメージを与える!」

 アレスの爆発の炎が意志ある蛇のようにうねり、兵藤を襲う。兵藤はまるで人形のように微動だにせず、その一撃を受け入れた。

 胸の宝珠が砕け散る。その様を見て、エリスが悲鳴を上げた。

 

「貴方!」

「夫のところに行きなさい! ネオスでエリスに攻撃!」

 

 動揺が隙となった。隙だらけのエリス肉薄するネオス。光り輝く――まるでネオス自身の怒りをも込めたような――右ストレート。

 ドカン! とダイナマイトが爆発したような轟音とともに、その一撃がエリスの左胸、心臓を貫いた。

 

「か……ッ!」

 

 断末魔さえ短い消滅。咲夜の声が続く。

 

「ニトロユニットのダメージを、プレイヤーに与える!」

 

 ダメ押し。エリスに装備されたニトロ・ユニットに火が点き、エリスの身体が爆発炎上。炎が波となってオデッサに襲い掛かった。

 

「あ、これはダメね」

 

 最後まで茫洋としたオデッサの呟きも、あっさりと飲み込まれ、その宝珠が砕かれた。

 

 

コール・ネオスペーシアン:通常魔法

「コール・ネオスペーシアン」は1ターンに1枚しか発動できない。(1):自分フィールドに「E・HERO ネオス」または「E・HERO ネオス」を融合素材としたモンスターが存在する時に発動できる。デッキから「N」モンスター2種類を選択し、特殊召喚する。

 

守護の戦女神アテナ 神属性 ☆10 幻神獣族:効果

ATK3000 DEF4000

このカードは特殊召喚できない。このカードは3体のモンスターをリリースしてのみ通常召喚できる。(1):このカードは神属性、幻神獣族モンスターの効果以外のカード効果ではフィールドを離れず、コントロールも変更されない。(2):このカードが相手のカードの効果を受けた時、エンドフェイズにこのカードに対するそのカード効果を無効にする。(3):このカードの召喚に成功したターン終了時に発動する。このカードを持ち主のデッキに戻す。

 

O-オーバーソウル:通常魔法

(1):自分の墓地の「E・HERO」通常モンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターを特殊召喚する。

 

ミニマム・ガッツ:通常魔法

自分フィールド上のモンスター1体をリリースし、相手フィールド上に表側表示で存在するモンスター1体を選択して発動できる。選択したモンスターの攻撃力はエンドフェイズ時まで0になる。このターン、選択したモンスターが戦闘によって破壊され相手の墓地へ送られた時、そのモンスターの元々の攻撃力分のダメージを相手ライフに与える。

 

巨大化:装備魔法

自分のライフポイントが相手より少ない場合、装備モンスターの攻撃力は元々の攻撃力を倍にした数値になる。自分のライフポイントが相手より多い場合、装備モンスターの攻撃力は元々の攻撃力を半分にした数値になる。

 

ニトロユニット:装備魔法

相手フィールド上モンスターにのみ装備可能。装備モンスターを戦闘によって破壊し墓地へ送った時、装備モンスターの攻撃力分のダメージを相手ライフに与える。

 

 

兵藤LP0

オデッサLP0

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