神々の戦争   作:tuki21

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第27話:激情の炎

 楽しい。神々の戦争という、通常のデュエルとは違う状況にありながら、和輝(かずき)は素直にそう思った。

 龍次(りゅうじ)とのデュエルはいつもそうだ。烈震(れっしん)とのデュエルにも高揚感を覚えたが、龍次はまた違う。何しろ相手の手が分かる。

 デッキが分かるから、戦術も、繰り出すカードも予測できる。

 お互いに相手の手を読みながらカードを操る様は将棋やチェスに通ずる。

 ありていに言って、テンションが上がってきた和輝は、口の端が笑みに吊り上がるのを自覚しながら、デュエルに没頭した。

 

 

和輝LP2000手札2枚(うち1枚は黒・魔・導(ブラック・マジック))

ペンデュラムゾーン赤:なし青:なし

場 永続罠:永遠の魂、

伏せ なし

 

龍次LP3500手札1枚

ペンデュラムゾーン赤:なし青:なし

場 機甲忍者ブレード・ハート(攻撃表示、攻撃力2200→3200、ORU(オーバーレイユニット):H・Cエクストラ・ソード)、H-C(ヒロイック―チャンピオン) エクスカリバー(攻撃表示、攻撃力4000、ORU:)、No.(ナンバーズ)39 希望皇ホープ(攻撃表示、ORU:H・Cダブル・ランス、H・Cダブル・ランス)、

伏せ なし

 

 

永遠の魂:永続罠

「永遠の魂」の(1)の効果は1ターンに1度しか使用できない。(1):以下から1つを選択してこの効果を発動できる。●自分の手札・墓地から「ブラック・マジシャン」1体を選んで特殊召喚する。●デッキから「黒・魔・導」または「千本ナイフ」1枚を手札に加える。(2):このカードが魔法&罠ゾーンに存在する限り、自分のモンスターゾーンの「ブラック・マジシャン」は相手の効果を受けない。(3):表側表示のこのカードがフィールドから離れた場合に発動する。自分フィールドのモンスターを全て破壊する。

 

機甲忍者ブレード・ハート 風属性 ランク4 戦士族:エクシーズ

ATK2200 DEF1000

戦士族レベル4モンスター×2

1ターンに1度、このカードのエクシーズ素材を1つ取り除き、自分フィールド上の「忍者」と名のついたモンスター1体を選択して発動できる。このターン、選択したモンスターは1度のバトルフェイズ中に2回攻撃する事ができる。

 

H-C エクスカリバー 光属性 ランク4 戦士族:エクシーズ

ATK2000 DEF2000

戦士族レベル4モンスター×2

1ターンに1度、このカードのエクシーズ素材を2つ取り除いて発動できる。このカードの攻撃力は、次の相手のエンドフェイズ時まで元々の攻撃力の倍になる。

 

No.39 希望皇ホープ 光属性 ランク4 戦士族:エクシーズ

ATK2500 DEF2000

レベル4モンスター×2

(1):自分または相手のモンスターの攻撃宣言時、このカードのX素材を1つ取り除いて発動できる。そのモンスターの攻撃を無効にする。(2):このカードがX素材の無い状態で攻撃対象に選択された場合に発動する。このカードを破壊する。

 

機甲忍者ブレード・ハート攻撃力2200→3200、ORU×1

H-C エクスカリバー攻撃力2000→4000、ORU×0

No.39 希望皇ホープORU×2

 

 

「俺のターンだ、ドロー!」

 

 和輝と龍次。二人の戦意の効用を証明するように、それぞれの胸元で輝く宝珠がその光を強めた。和輝が赤、龍次が銀灰色(ぎんかいしょく)だ。

 ドローカードを確認する和輝。ドローしたカードはダーク・バースト。墓地の攻撃力1500以下の闇属性モンスター一体を回収できる魔法カードだ。

 和輝は無言で己の手札、三枚のカードを見据えた。

 永遠の魂の効果でサーチした黒・魔・導、今引いたダーク・バースト。そして、先程のガード・ブロックの効果でドローした希望の宝札。

 希望の宝札は互いの手札が少ない場合、相手にも大量のドローを許してしまう欠点があるが――――

 

「そんなことで立ち止まるのはつまらない(、、、、、)よなぁ?」

「君の好きなように」

 

 にやりと笑う和輝、肩をすくめたロキ。一人と一柱はクスリと笑い、和輝が動いた。

 

「カードを一枚セットして、手札から希望の宝札を発動! おら龍次! お前もドローしな!」

 

 互いの手札が潤っていく。

 

「相手の有利を呼び込むリスクを飲み込んで、使ってきましたか。君の友人は、なかなかの胆力の持ち主の様ですね」

「単に楽しみたいだけかもしれねーけどな」

 

 そして互いの手札が六枚になった。和輝はドローしたカードを一枚一枚吟味し、このターンの戦術を組み立てた。

 

「ふむふむ。この手札だと、カードの効果で希望皇ホープを突破するのは難しいかな?」

「なら、正面から殴り壊すだけだ。手札のブラック・マジシャンを捨てて、ワン・フォー・ワン発動! デッキからレベル1チューナー、ガード・オブ・フレムベルを特殊召喚! さらに永遠の魂の効果で、ブラック・マジシャンを蘇生させる!」

 

 和輝のデッキから飛び出したのは、硬い甲殻によって全身から燃え出す炎からも身を守っているドラゴンと、数多のサポートカードを持つ黒衣の魔術師。だがこれで終わらない。そもそも、今伏せたカードはまだなんの効力も発揮していないのだ。

 

「リバースカード、ダーク・バースト発動! 墓地の召喚僧サモンプリーストを回収して召喚。効果でサモンプリーストは守備表示になる。

 そしてサモンプリーストのもう一つの効果を発動! 手札の黒・魔・導を捨てて、デッキから黒白(こくびゃく)の魔導師を特殊召喚!」

 

 和輝のフィールドに新たに追加されたモンスター、紫の衣に全身を包んだ老人、サモンプリースト。彼がぶつぶつと何事か呪文を唱えると、幾何学模様の魔法陣が展開。その中から現れたのは、やはり全身をローブで包んだ男。ローブはゼブラカラーで、手にした杖は漆黒。両手を保護するガントレットは純白の魔導師。

 

「何が来る……?」

 

 身構える龍次。その眼前で、和輝は右手を力強く天に向かって突き出した。

 

「レベル7のブラック・マジシャンに、レベル1のガード・オブ・フレムベルをチューニング!」

 

 シンクロ召喚。ガード・オブ・フレムベルが一つの緑の光の輪に変じ、その輪をくぐったブラック・マジシャンが一つの白く輝く光星(こうせい)となった。

 

「集いし八星(はっせい)が、星海切り裂く光の竜を紡ぎだす! 光さす道となれ! シンクロ召喚、響け、閃珖竜(せんこうりゅう) スターダスト!」

 

 光り輝く(とばり)が、夜の無人街を照らすように降り、その中から現れたのは、スターダスト・ドラゴンに酷似した外見のドラゴン。違うのは、月華竜と同じく、オリジナルにはないラインが入っていることくらいか。

 

「まだだ! 黒白の魔導師とサモンプリーストをオーバーレイ!」

 

 エクシーズ召喚。和輝の頭上に、渦巻く銀河を思わせる空間が展開。その空間に二体のモンスターが紫色の光となって飛翔。空間に飛び込んだ。

 

「二体のモンスターで、オーバーレイネットワークを構築! エクシーズ召喚!」

 

 空間から、虹色の爆発が起こる。

 

「研ぎ澄まされた反逆の牙、屈せぬ心! 吠えろダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン!」

 

 虹色の爆発の向こうから、新たな黒影が現れた。

 歪な牙のような形状の翼に、下顎から突き出した、鋭い爪とも、剣の切っ先、槍の穂先とも見える突起物。そして全身から迸らせる稲妻。

 バリバリという音と共にあげられる咆哮は空気を震わせ、龍次を、伊邪那岐を、その(しもべ)たちを威圧する。

 

「そいつは――――」

「覚えてるか? 俺たちが初めて出会ったあのカードショップで、互いに取り合ったカードだ! ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン効果発動! ORUを二つ取り除き、エクスカリバーの攻撃力を吸収する!」

 

 和輝の宣言とともに、ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴンの周囲を衛星のように旋回していた二つの光球――ORU――が二つとも消失。次の瞬間、龍次の場のエクスカリバーが苦しげな呻き声を上げて膝をつき、地面に剣を突き立てた。それと反比例するように、和輝のダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴンは歓喜の咆哮を天に向かってあげた。

 

「これでダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴンの攻撃力は4500、反対にエクスカリバーの攻撃力は2000にまでダウンだ。さらに今墓地に送られた黒白の魔導師の効果発動。このカードをゲームから除外し、墓地からバスター・ブレイダーを特殊召喚する」

 

 三体目。墓地から蘇るは竜破壊の剣士。全身に固めた鎧姿、肩に担いだ大剣。

 

「これで揃った。バトルだ! ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴンでブレード・ハートを攻撃!」

 

 全身から紫の稲妻を放出し、飛翔する反逆の黒竜。

 一直線に、矢のようにブレード・ハートに向かって飛来するダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン。その下顎の突起が一際強力な光を放ち、稲妻を纏う。まるで(やじり)のように。

 

「させるか! 希望皇ホープの効果発動! ORUを一つ取り除き、その攻撃を無効にする!」

 

 ブレード・ハートとダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴンの間に割り込む希望皇ホープ。ウィングパーツを前に畳む様に展開する。

 激突。反逆の黒竜の雷の一撃が、矢のように希望皇の盾に突き刺さる。

 衝撃が駆け抜け、閃光が周囲を照らす。

 衝撃に弾き飛ばされる希望皇ホープ。だが地面に激突する前にウィングパーツをはばたかせて体勢を整え、そのまま着地。盾にしたウィングパーツも無傷だ。

 

「凌がれた!」

「予測済みだ! まだまだ行くぜ! バスター・ブレイダーで希望皇ホープを攻撃!」

「ホープの効果は一ターンに何度でも使える! もう一度効果を発動し、その攻撃を無効!」

 

 和輝と龍次の叫びがほぼ同時に飛ぶ。バスター・ブレイダーの竜破壊の一撃も、再び希望皇の盾によって阻まれる。

 

「まずいですね。希望皇ホープはORUを使いきった。これでは――――」

 

 伊邪那岐の懸念通りのことが起こる。和輝が、畳みかけるように宣言したのだ。

 

「スターダストで、希望皇ホープを攻撃!」

 

 スターダストとホープの攻撃力は同じ2500。通常は相討ちだがスターダストには己を含め、カードを破壊から守る効果を持っている。

 もっとも、今回はその効果を使うまでもない。

 

「……希望皇ホープのデメリット効果。攻撃の対象になった時点で、このカードは破壊される」

 

 苦々しい表情の龍次。その眼前で、自壊効果を発動したホープの姿が光の粒子となって消えていく。

 

「希望皇ホープの自壊攻撃は、戦闘を介したものではない。戦闘に入る前に発動する。つまり、この時点で相手モンスターの数に変動が起こったわけだ」

「ああ。じゃあ――――」

 

 納得顔のロキ。和輝はここぞとばかりに、もう一歩踏み込んだ。

 

「俺のスターダストは、戦闘の巻き戻しが起こり、攻撃対象を選びなおせるってことだ! スターダストでエクスカリバーを攻撃!」

 

 もう、龍次に防御の手段はない。閃コウ竜が放った光の息吹(ブレス)が大気を焼き突き進み、エクスカリバーに直撃。その身を焼き焦がした。

 

「ぐぅ……ッ! だがこの瞬間、墓地のH・C(ヒロイック・チャレンジャー) サウザンド・ブレードの効果発動! 墓地からこのカードを攻撃表示で特殊召喚する!」

 

 龍次のフィールドに、もう何度も現れている刀剣類を背負った僧兵風の戦士。このデュエルで幾度となく龍次の展開の基盤となったモンスターだ。

 和輝のフィールドに、もう攻撃できるモンスターはいない。それに龍次のフィールドにはまだ攻撃力3200のブレード・ハートが残っている。反撃は十分可能だし、そのままゲームエンドまで持って行ける可能性もある。

 だが龍次は、その考えが浅はかであり、サウザンド・ブレードの効果を発動し、特殊召喚してしまったことを直後に後悔した。

 和輝が、不敵に笑っていたのだ。思い通りに行ったと、そう感じているように。

 その証拠に、彼は手札からカードを一枚抜き放ち、デュエルディスクにセットした。

 

「速攻魔法、瞬間融合! 俺の場のスターダストとバスター・ブレイダーを融合!」

「ッ! 攻撃の手が、増えた……ッ!」

 

 愕然とする龍次の眼前、和輝のフィールド。そこの空間が歪み、渦を作りだし、和輝が指定した二体のモンスターがその渦に飛び込んだ。

 

「星屑の竜よ、竜破壊の剣士よ。今一つとなって波動の竜騎士へと変じよ! 融合召喚、現れろ、波動竜騎士 ドラゴエクィテス!」

 

 渦の中から現れる新たなモンスター。

 金の淵が入った青い鎧を身に纏い、力強く翼を広げ、手にした突撃槍(ランス)を操る竜人型の騎士モンスター。その眼光が龍次を射抜く。

 

「まだバトルは続いている。ドラゴエクィテスでサウザンド・ブレードを攻撃!」

 

 和輝の攻撃宣言を受け、波動竜騎士は手にした突撃槍を構え、突撃(チャージ)。大気の壁を突き穿って突き進み、サウザンド・ブレードに激突、衝撃でその身体を真っ二つにしてしまった。

 

「がああ!」

 

 ダメージのフィードバックに、苦悶の声を上げる龍次。だが膝はつかない。にやりと不敵に笑い、まっすぐ和輝を見据える。

 和輝もまた、そんな龍次の姿勢に応えるように、笑った。

 

「メインフェイズ2、ドラゴエクィテスの効果発動。墓地のダークエンド・ドラゴンを除外し、その名前と効果を得る。そして効果発動! 攻守を500ダウンするし、ブレード・ハートを墓地に送る!」

 

 ダークエンド・ドラゴンの名前と能力を得たドラゴエクィテスが、手にした槍を風車のように回転させて、切っ先をブレード・ハートに突き付けた。

 次の瞬間、槍の穂先から暗黒の奔流が溢れ出し、一気にブレード・ハートを闇の深淵へと飲み込んでしまった。

 

「カードを一枚セットし、エンドフェイズ、瞬間融合の効果でドラゴエクィテスは破壊される。ターンエンドだ」

 

 

希望の宝札:通常魔法

(1):互いのプレイヤーは手札が6枚になるようにカードをドロー、または手札のカードを捨てる。このカードを発動するターン、自分は他のカード効果でデッキからカードをドローできない。

 

ワン・フォー・ワン:通常魔法

(1):手札からモンスター1体を墓地へ送って発動できる。手札・デッキからレベル1モンスター1体を特殊召喚する。

 

ガード・オブ・フレムベル 炎属性 ☆1 ドラゴン族:チューナー

ATK100 DEF2000

 

ブラック・マジシャン 闇属性 ☆7 魔法使い族:通常モンスター

ATK2500 DEF2100

 

ダーク・バースト:通常魔法

(1):自分の墓地の攻撃力1500以下の闇属性モンスター1体を対象として発動できる。その闇属性モンスターを手札に加える。

 

召喚僧サモンプリースト 闇属性 ☆4 魔法使い族:効果

ATK800 DEF1600

(1):このカードが召喚・反転召喚に成功した場合に発動する。このカードを守備表示にする。(2):このカードがモンスターゾーンに存在する限り、このカードはリリースできない。(3):1ターンに1度、手札から魔法カード1枚を捨てて発動できる。デッキからレベル4モンスター1体を特殊召喚する。この効果で特殊召喚したモンスターはこのターン攻撃できない。

 

黒白の魔導師 闇属性 ☆4 魔法使い族:効果

ATK1700 DEF1600

(1):墓地のこのカードをゲームから除外し、自分の手札、または墓地から「ブラック・マジシャン」、または「バスター・ブレイダー」1体を選択して発動できる。選択したモンスターを特殊召喚する。(2):???

 

閃珖竜 スターダスト 光属性 ☆8 ドラゴン族:シンクロ

ATK2500 DEF2000

チューナー+チューナー以外のモンスター1体以上

1ターンに1度、自分フィールド上に表側表示で存在するカード1枚を選択して発動できる。選択したカードは、このターンに1度だけ戦闘及びカードの効果では破壊されない。この効果は相手ターンでも発動できる。

 

ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン 闇属性 ランク4 ドラゴン族:エクシーズ

ATK2500 DEF2000

レベル4モンスター×2

(1):このカードのX素材を2つ取り除き、相手フィールドの表側表示モンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターの攻撃力を半分にし、その数値分このカードの攻撃力をアップする。

 

バスター・ブレイダー 地属性 ☆7 戦士族:効果

ATK2600 DEF2300

(1):このカードの攻撃力は、相手のフィールド・墓地のドラゴン族モンスターの数×500アップする。

 

H・C サウザンド・ブレード 地属性 ☆4 戦士族:効果

ATK1300 DEF1100

「H・C サウザンド・ブレード」の(2)の効果は1ターンに1度しか使用できない。(1):1ターンに1度、手札から「ヒロイック」カード1枚を捨てて発動できる。デッキから「ヒロイック」モンスター1体を特殊召喚し、このカードを守備表示にする。この効果の発動後、ターン終了時まで自分は「ヒロイック」モンスターしか特殊召喚できない。(2):このカードが墓地に存在し、戦闘・効果で自分がダメージを受けた時に発動できる。このカードを墓地から攻撃表示で特殊召喚する。

 

瞬間融合:速攻魔法

(1):自分フィールドから融合モンスターカードによって決められた融合素材モンスターを墓地へ送り、その融合モンスター1体をエクストラデッキから融合召喚する。この効果で融合召喚したモンスターはエンドフェイズに破壊される。

 

波動騎士ドラゴエクィテス 風属性 ☆10 ドラゴン族:融合

ATK3200 DEF2000

ドラゴン族シンクロモンスター+戦士族モンスター

このカードは融合召喚でのみエクストラデッキから特殊召喚する事ができる。1ターンに1度、墓地に存在するドラゴン族のシンクロモンスター1体をゲームから除外し、エンドフェイズ時までそのモンスターと同名カードとして扱い、同じ効果を得る事ができる。また、このカードがフィールド上に表側攻撃表示で存在する限り、相手のカードの効果によって発生する自分への効果ダメージは代わりに相手が受ける。

 

 

ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン攻撃力2500→4500、ORU×0

 

 

和輝LP2000手札1枚

龍次LP3500→3000→1100手札6枚

 

 

「やってくれるぜ」

 

 いいながらも、龍次は口の端が釣りがるのを自覚していた。ここから逆転してやる。幸い手札はいい。やってやる。

 

「俺の――――」

「オレのターンだ!」

 

 だが、そんな龍次の勢いを削ぐように、新たな声がこの場に響いた。

 

「え?」

「何!?」

 

 あっけにとられる龍次と、緊迫した表情の和輝。対照的な二人の視線の先に、新たな登場人物の姿があった。

 褐色の肌、ぼさぼさの、汚れた金髪、ギラギラと、獣のように輝く緑の瞳、黒のタンクトップの上にフライトジャケットを羽織った姿で、左腕には機動済みのデュエルディスク。そして胸元にはカーキ色の輝き。即ち宝珠。

 この男もまた、神々の戦争の参加者だ。

 

「乱入者、ですか」

 

 伊邪那岐が険しい声音でそう言った。

 龍次ははっと気づく。そうだ、この戦いはバトルロイヤル方式。敵が、目の前で相対している一人だけとは限らないではないか。常に、漁夫の利を狙おうとしている第三者に気を配れと、ここに来るまでの注意事項で伊邪那岐から聞いていたというのに……ッ!

 

「いいぞいいぞ! 二人して消耗している現状、オレにとって最上だ! さぁ、始めるぞ! 相手フィールドにのみモンスターが存在するため、手札からアンノウン・シンクロンを特殊召喚!」

 

 龍次たちの戸惑いを無視して、男は己の戦術を展開する。現れたのは球体機械にひとつ目の奇妙なモンスター。さらに手札からカードを繰り出す。

 

「闇の誘惑を発動。カードを二枚ドローし、手札のThe big SATURNを除外! さらに手札の|D・D・R《ディファレント・ディメンション・リバイバル》を発動!! 手札を一枚捨て、今除外したThe big SATURNを特殊召喚し、このカードを装備!」

 

 男のフィールド、その空間がバリバリと派手な音を断てて割れた。その割れた向こう側、紫のたゆたう異空間から現れたのは、土星の輪のような光輪を備えた黒鉄(くろがね)色の巨大マシーン。

 

「まだまだぁ! D・D・R発動時に捨てたダンディライオンの効果発動! オレのフィールドに二体の綿毛トークンを特殊召喚! そしてぇ! レベル1の二体の綿毛トークンに、レベル1のアンノウン・シンクロンをチューニング!」

 

 シンクロ召喚。アンノウン・シンクロンが一つの緑の光の輪となり、その輪をくぐった綿毛トークン二体が一つずつの白い光星となる。

 

「さぁ、のこのこ出てきた間抜けどもを無力な間抜けにしてやれ! シンクロ召喚、霞鳥クラウソラス!」

 

 ケー! という奇声とともに現れる、緑の怪鳥。赤い眼光が鋭く和輝と龍次を睨みつける。

 

「クラウソラス効果発動! ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴンの攻撃力を0にする!」

 

 ノリに乗った男の叫び。クラウソラスの奇声が響き、空気を震わせ振動をダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴンに浴びせかける。反逆の竜は苦しげに悶え、そのまま地に伏してしまった。

 

「く……ッ! やべぇ!」

「クッハハハ! 最高だ! このタイミング、まさにオレのために世界は回っている! ゾンビキャリアを召喚し、レベル3のクラウソラスにレベル2のゾンビキャリアをチューニング!」

 

 二度目のシンクロ召喚。今度はレベル5。

 

「さぁ来い! 幻層の守護者アルマデス!」

 

 光の向こうから現れた新たなモンスター。

 半透明の体躯、白の軽装鎧とローブ。赤く燃え盛る右手に青く凍える左手。静かながらもどこか威圧感のある佇まいのモンスターだった。

 と、男が次の行動に出る前に、和輝が動いた。

 

「何もかもお前の思い通りになるかよ! リバーストラップ、デッドライン・リインカーネーション! このカードは、俺のフィールドのモンスター一体をリリースし、そのモンスターの元々の攻撃力より低い攻撃力のモンスター一体を、デッキから特殊召喚する! 俺がリリースするのは、もちろんダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン。だが! 俺は特殊召喚の権利を龍次に譲るぜ!」

「あぁ!?」

 

 敵を庇う。予想外の和輝の行動に、男は困惑と混乱が入り混じった声を上げた。

 だが龍次は反対に、にやりと笑った。

 以心伝心。和輝の考えが龍次には手に取るように分かった。

 

「そうだな……」

 

 自然、言葉がこぼれた。

 

「こんなわけのわからない奴に横やりされて、頭に来ないわけがねぇよな! こんな糞野郎に、やられるわけにはいかねぇよな! 俺は! デッドライン・リインカーネーションの効果でデッキからH・C ソード・ブレイカーを守備表示で特殊召喚!」

 

 龍次のデッキから、彼を守るために飛び出すモンスター。

 影に隠れるような漆黒のボディアーマーに、赤い眼光。そして両手に装備された普通の刃と櫛状の峰を持つ短剣(ソード・ブレイカー)。ただし今は膝を折って守備体勢だ。

 

「チィ! 何慣れ合ってやがるんだよぉ!」

 

 男は苛立ちを抑えようともせずにそう吐き捨てた。だがこれで、このターン、男は和輝、龍次の両名を仕留めることができなくなった。

 アルマデスの攻撃力では和輝が特殊召喚するブラック・マジシャンを打倒できない。守備表示で出して壁にするにしても、やはりダメージは与えられない。

 バトルフェイズに入ったところを永遠の魂の効果で特殊召喚されれば壁にされる。

 そしてソード・ブレイカーが守備表示でいる以上、The big SATURNで攻撃してもダメージはない。

 

「気に入らねぇ、気に入らねぇんだよ! 敵同士だったろうが!」

 

 男が叫ぶ。和輝は無視。龍次は「横からしゃしゃり出てきたやつが偉そうにしてんなよ!」と中指を立てて挑発する。

 

「くっそが! なんでオレの思い通りにならねぇ! しかたがねぇ。バトルフェイズだ!」

 

 すかさず和輝が言葉を挟んだ。

 

「お前のスタートステップに、永遠の魂の効果発動。墓地からブラック・マジシャンを守備表示で復活させる」

 

 主を守るため、黒衣の魔術師が死の淵から蘇る。予想通りの展開でも、鬱陶しいとばかりに男は地面に唾を吐き捨てた。

 

「うぜぇ、うぜんだよ! バトルだ! アルマデスでブラック・マジシャンをぶっ殺せ! サターン、ソード・ブレイカーを叩き潰せ!」

 

 精神的に幼稚で未熟な部分があるのか、男は髪を掻き毟りながら吠えたてる。

 男の戦意に感応したかのごとく、アルマデスが熾烈な炎と氷の連撃をブラック・マジシャンに叩き込み。The big SATURNがその両腕の剛腕をソード・ブレイカーに叩き込んだ。

 アルマデスの攻撃は成功した。だが、The big SATURNは両腕を振り下ろした姿勢で固まった。

 

「あ? サターン、何してる?」

 

 動かない自らのモンスターに、男は苛立ちまぎれに声をかける。次の瞬間、黒鉄の巨人兵の両腕に亀裂が走った。

 

「は?」

 

 男が呆然とした声を上げる眼前で、亀裂は次々に広がっていき、やがてThe big SATURNの両腕をつかいものにならなくした。見ればソード・ブレイカーは健在。両手の武器を構え、不敵にThe big SATURNを見上げていた。

 

「な、何が起こった!?」

「ソード・ブレイカーの効果だ。こいつは一ターンに一度、戦闘で破壊されず、戦闘ダメージも発生しない。そして、このカードと戦闘を行ったモンスターの攻撃力は半分になる」

 

 龍次の補足が入る。男は苦虫を噛み潰したような顔をした。

 

「しかたがねぇ。メインフェイズ2に入り、墓地のゾンビキャリアの効果を発動だ。手札一枚をデッキトップに置き、墓地からこいつを特殊召喚。そして俺はレベル5のアルマデスに、レベル2のゾンビキャリアをチューニング! 来いよ、スクラップ・デスデーモン!」

 

 三度目のシンクロ召喚。今度はレベル7。光の向こうから現れる巨躯。

 廃材の塊で作られた筋骨隆々とした悪魔。狂気の雄叫びを上げ、ほのかに赤く光る双眸で辺りを睥睨した。

 

「ターンエンドだ、糞ったれ!」

 

 

アンノウン・シンクロン 闇属性 ☆1 機械族:チューナー

ATK0 DEF0

「アンノウン・シンクロン」の(1)の方法による特殊召喚はデュエル中に1度しかできない。(1):相手フィールドにモンスターが存在し、自分フィールドにモンスターが存在しない場合、このカードは手札から特殊召喚できる。

 

闇の誘惑:通常魔法

(1):自分はデッキから2枚ドローし、その後手札の闇属性モンスター1体を除外する。手札に闇属性モンスターが無い場合、手札を全て墓地へ送る。

 

D・D・R:装備魔法

手札を1枚捨て、ゲームから除外されている自分のモンスター1体を選択して発動できる。選択したモンスターを表側攻撃表示で特殊召喚し、このカードを装備する。このカードがフィールド上から離れた時、そのモンスターを破壊する。

 

ダンディライオン 地属性 ☆3 植物族:効果

ATK300 DEF300

(1):このカードが墓地へ送られた場合に発動する。自分フィールドに「綿毛トークン」(植物族・風・星1・攻/守0)2体を守備表示で特殊召喚する。このトークンは特殊召喚されたターン、アドバンス召喚のためにはリリースできない。

 

The big SATURN 闇属性 ☆8 機械族:効果

ATK2800 DEF2200

このカードは手札またはデッキからの特殊召喚はできない。手札を1枚捨てて1000ライフポイントを払う。エンドフェイズ時までこのカードの攻撃力は1000ポイントアップする。この効果は1ターンに1度だけ自分のメインフェイズに使用する事ができる。相手がコントロールするカードの効果によってこのカードが破壊され墓地へ送られた時、お互いにその攻撃力分のダメージを受ける。

 

霞鳥クラウソラス 風属性 ☆3 鳥獣族:シンクロ

ATK0 DEF2300

チューナー+チューナー以外のモンスター1体以上

1ターンに1度、相手フィールド上に表側表示で存在するモンスター1体を選択して発動できる。ターン終了時まで選択したモンスターの攻撃力を0にし、その効果を無効にする。

 

ゾンビキャリア 闇属性 ☆2 アンデット族:チューナー

ATK400 DEF200

(1):このカードが墓地に存在する場合、手札を1枚デッキの一番上に戻して発動できる。このカードを墓地から特殊召喚する。この効果で特殊召喚したこのカードは、フィールドから離れた場合に除外される。

 

幻層の守護者アルマデス 光属性 ☆5 悪魔族:シンクロ

ATK2300 DEF1500

チューナー+チューナー以外のモンスター1体以上

このカードが戦闘を行う場合、相手はダメージステップ終了時まで魔法・罠・効果モンスターの効果を発動できない。

 

デッドライン・リインカーネーション:通常罠

「デッドライン・リインカーネーション」の(2)の効果は1ターンに1度しか発動できない。(1):自分フィールドのモンスター1体をリリースして発動する。リリースしたモンスターの元々の攻撃力よりも低い攻撃力のモンスター1体を自分のデッキから特殊召喚する。(2):???

 

H・C ソード・ブレイカー 地属性 ☆4 戦士族:効果

ATK1500 DEF1700

(1):このカードは1ターンに1度、戦闘では破壊されない。(2):このカードの戦闘で発生するコントローラーへの戦闘ダメージは全て0になる。(3):このカードが相手モンスターと戦闘を行ったダメージステップ終了時に発動する。そのモンスターの攻撃力を半分にする。

 

スクラップ・デスデーモン 地属性 ☆7 悪魔族:シンクロ

ATK2700 DEF1800

チューナー+チューナー以外のモンスター1体以上

 

 

The big SATURN攻撃力2800→1400

 

 

和輝LP2000手札1枚

龍次LP1100手札6枚

男LP8000手札0枚

 

 

「俺のターン、ドロー!」

 

 ドローカードを確認する龍次の心の内側に、ふつふつと湧き上がるものがあった。

 怒りだ。この戦いを邪魔したこの男を、徹底的にぶちのめさないと気が済まない(、、、、、、、、、、、、、、、、、、)

 

「貪欲な壺発動! 墓地のエクスカリバー、クサナギ、アンブッシュ・ソルジャー、ブレード・ハート、ソード・シールドをデッキに戻し、二枚ドロー!」

 

 ドローしたカードを確認し、龍次の頭の中には乱入してきた男を仕留める戦術が描かれていた。

 

「龍次、君はどちらを相手にするつもりですか? さっきまで戦っていた岡崎(おかざき)少年? それとも――――――」

 

 試すような伊邪那岐の問いかけ。龍次は苦笑した。彼の台詞を受け取るならば、答えなんて決まっているのに。

 

「伊邪那岐。分かり切ったことを聞くなよ、てゆーかお前だってわかってるだろ? さっきまで戦っていた。そんな言い方をしている時点で、お前の中で()和輝は敵じゃないってことだ。

 俺が今、怒りに任してブッ飛ばしたい相手は一人! 俺たちの戦いに下らねぇ横槍を入れた、せこくて卑しいあの男だけだ! 傷だらけの蘇生発動! こいつは俺の墓地のモンスター一体を蘇生し、俺自身は1000ポイントのダメージを受ける! 俺が復活させるのは、希望皇ホープ!」

 

 龍次の墓地から復活する、守りの力を持つ希望の戦士。だがその代償に、龍次自身は1000ポイントのダメージを受けた。

 が、これは龍次にとってすれば望むところだ。このデメリットも、メリットになるのだ。

 

「この瞬間、墓地のサウザンド・ブレードの効果発動! このカードを攻撃表示で特殊召喚!」

 

 新たなモンスターが龍次のフィールドに現れる。場にすでに出ていたソード・ブレイカーと合わせれば、エクスカリバーを召喚できる。

 だが龍次はその前に、カードを一枚繰り出し、デュエルディスクにセットした。

 

RUM(ランクアップマジック)-リミテッド・バリアンズ・フォース発動! 希望皇ホープ一体で、オーバーレイネットワークを再構築!」

 

 龍次の頭上の空間に、赤い稲妻を迸らせる紫色をした雲のような空間が展開。その空間中心部に開いた黒い穴に、希望皇ホープが白い光となって飛び込んだ。

 

「赤き異界の力、敵を焼き滅ぼす炎となる! 今、希望は進化する! カオス・エクシーズ・チェンジ! CNo.(カオスナンバーズ)39 希望皇ホープレイV!」

 

 虹色の爆発が起こり、そこから降りたつ影が一つ。

 着地と同時にズシンと重々しい音が響く。

 現れたのは、希望皇ホープの新しい姿。

 希望皇ホープをより鋭角的にしたシャープなデザインだが、カラーリングは白と金を基調としていた姿から一変。黒を基調に、赤のアーマーを装着し、赤く輝く各所の身体を持った、禍々しさと刺々しさが大きく向上されたデザインの、まったく新しい姿の希望皇ホープだった。その足元に突き刺さるように現れたのは、赤い棘十字。これが、CORU(カオスオーバーレイユニット)だ。

 

「ランクアップマジック。ホープレイVか。ずいぶん刺々しいデザインじゃないか」

「さっき言ったろ? 希望皇ホープ、あれこそが龍次の切り札だって。あれがその理由さ、ランクアップマジックによって、最強の盾はその外装を引き剥がし、最強の武器になる」

 

 ロキの声に和輝が応える。その視線の先、誇らしげな笑みを浮かべた龍次の姿があった。

 

「ここで、ホープレイVの効果発動! CORUを一つ取り除き、お前の場にいるスクラップ・デスデーモンを破壊し、その攻撃力分のダメージを与える!」

 

 龍次の叫び。ホープレイVのCORUが消失し、次の瞬間、ホープレイVが手にした剣を投擲。剣は唸りを上げ、回転しながらスクラップ・デスデーモンを捕えた。

 断末魔の咆哮。体を真っ二つにされた廃棄品の悪魔が爆散。投擲された剣は勢いを減じさせずに男へと迫った。

 

「くっそが!」

 

 悪態をつきながら、男は横っ飛びに跳躍。剣を躱す。男の代わりに地面に激突した剣はアスファルトを砕き、破片を飛礫(つぶて)として男に浴びせかけた。

 

「まだだ! 魔法カード、希望再誕発動! 墓地のホープを復活させ、希望再誕(このカード)をORUに!」

 

 墓地から雄々しい声を上げて復活する希望皇ホープ。その周囲を衛星の様に、一つの光球が旋回する。ORUとなった希望再誕だ。

 

「くっそがぁ! さっきから鬱陶しいぞ! なんでオレに気持ちよくてめぇらを倒させねぇ!」

「やられるわけにはいかねぇからだ! お前みたいな三下野郎にはな!」

 

 龍次が感情に任せて叫び、

 

「俺たちの戦いはこれからが盛り上がりどころだったんだ。それを邪魔したあんたを、許す理由が地の果てまで行っても存在しない」

 

 和輝が冷淡な、しかし凍える怒りを乗せて言った。

 二人の怒りを受けて、男が僅かにたじろぐ。その隙を強引につくように、龍次が動いた。

 

「俺は、希望皇ホープ一体でオーバーレイネットワークを再構築!」

 

 希望皇ホープが白い光となって、前方に広がるエクシーズエフェクトの空間に飛び込んだ。

 

「混沌の力、黒鉄の鎧となって困難を断ち切る力となる! 今、希望は進化する! カオス・エクシーズ・チェンジ! CNo.39 希望皇ホープレイ!」

 

 虹色の爆発。その向こうから現れるマッシブな影。

 鎧の色が銀と黒に変質し、フォルムがよりマッシブに、力強くなった希望皇ホープ。混沌の力をその身に取り込み、さらに強化された希望皇ホープの姿。その周囲を、二つの光球が旋回している。

 

「ここで、ホープレイの効果発動! ORUを二つ取り除き、サターンの攻撃力を2000ダウンさせ、ホープレイの攻撃力を1000アップ!

 さらに! 俺は残ったサウザンド・ブレードとソード・ブレイカーでオーバーレイ! 二体のモンスターで、オーバーレイネットワークを構築! エクシーズ召喚! 聖剣は折れない、砕けない。何度でも光り輝く! H-C エクスカリバー!」

 

 三度目の登場。龍次の攻めの切り札にして、最も頼りになる相棒の姿。

 和輝と出会い、ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴンをまんまと取られ、そのことを悔し気に(あかね)に喋った時、彼女が「しょうがないなあ、りゅーじ君は」と苦笑して、渡してきたのだ。自分のデッキには合わないから、と。

 以来、このカードは龍次のデッキの切り札(フェイバリット)。決して色褪せない、美しく、力強い輝きだ。勇ましく、雄々しい英雄たち。いいだろう、こいつらのように、俺も困難を乗り越えてやる。そしてきっと、茜を救って見せる。

 

「エクスカリバーの効果発動! ORU二つを取り除き、攻撃力を4000に!」

 

 龍次の陣営は、今や非常に大きく膨らんだ。

 

「う、嘘だ。こんなことが……ッ! 世界は、オレのために廻ってるんじゃなかったのかよぉ!」

「終わりだ! ホープレイ、エクスカリバーで攻撃!」

 

 龍次の怒りに任せた攻撃宣言が下る。

 まず、ホープレイが背中のサブアームを使い巨大な両刃剣を天に向かって掲げ、両手に片刃の剣を一本ずつ、三本の剣を自在に操るホープレイ。両手の剣でThe big SATURNをX字に切り裂き、止めとばかりにその四片を大剣の一撃で両断した。

 爆発炎上する黒鉄の機械兵。その黒煙を突き破り、エクスカリバーが男に肉薄。振りかぶった剣の一撃から放たれる光の奔流が、彼を飲み込んだ。

 

「ぎ――――あああああああああああああああああああああああああ!」

 

 男の身体が奔流に飲み込まれ、胸元のカーキ色の宝珠が砕け散った。

 

 

貪欲な壺:通常魔法

(1):自分の墓地のモンスター5体を対象として発動できる。そのモンスター5体をデッキに加えてシャッフルする。その後、自分はデッキから2枚ドローする。

 

傷だらけの蘇生:通常魔法

(1):自分の墓地のモンスター1体を対象に発動できる。そのモンスターを特殊召喚し、自分は1000ポイントのダメージを受ける。

 

H・C サウザンド・ブレード 地属性 ☆4 戦士族:効果

ATK1300 DEF1100

「H・C サウザンド・ブレード」の(2)の効果は1ターンに1度しか使用できない。(1):1ターンに1度、手札から「ヒロイック」カード1枚を捨てて発動できる。デッキから「ヒロイック」モンスター1体を特殊召喚し、このカードを守備表示にする。この効果の発動後、ターン終了時まで自分は「ヒロイック」モンスターしか特殊召喚できない。(2):このカードが墓地に存在し、戦闘・効果で自分がダメージを受けた時に発動できる。このカードを墓地から攻撃表示で特殊召喚する。

 

RUM-リミテッド・バリアンズ・フォース:通常魔法

自分フィールド上のランク4のエクシーズモンスター1体を選択して発動できる。選択したモンスターよりランクが1つ高い「CNo.」と名のついたモンスター1体を、選択した自分のモンスターの上に重ねてエクシーズ召喚扱いとしてエクストラデッキから特殊召喚する。

 

CNo.39 希望皇ホープレイV 光属性 ランク5 戦士族:エクシーズ

ATK2600 DEF2000

レベル5モンスター×3

このカードが相手によって破壊された時、自分の墓地のエクシーズモンスター1体を選択してエクストラデッキに戻す事ができる。また、このカードが「希望皇ホープ」と名のついたモンスターをエクシーズ素材としている場合、以下の効果を得る。●1ターンに1度、このカードのエクシーズ素材を1つ取り除き、相手フィールド上のモンスター1体を選択して発動できる。選択したモンスターを破壊し、破壊したモンスターの攻撃力分のダメージを相手ライフに与える。

 

希望再誕:通常魔法

(1):自分の墓地の「希望皇ホープ」モンスター1体を対象として発動する。そのモンスターを自分フィールドに特殊召喚し、このカードを下に重ねてエクシーズ素材とする。(2):???

 

CNo.39 希望皇ホープレイ 光属性 ランク4 戦士族:エクシーズ

ATK2500 DEF2000

光属性レベル4モンスター×3

このカードは自分フィールド上の「No.39 希望皇ホープ」の上にこのカードを重ねてエクシーズ召喚する事もできる。自分のライフポイントが1000以下の場合、このカードのエクシーズ素材を1つ取り除く事で、エンドフェイズ時までこのカードの攻撃力を500ポイントアップして相手フィールド上のモンスター1体の攻撃力を1000ポイントダウンする。

 

 

和輝LP2000手札1枚

龍次LP1100→100手札5枚

男LP8000→5300→2700→0手札0枚

 

 

 男の姿が青い燐光に包まれて消えた。宝珠を完全に破壊され、神々の戦争の参加資格を失ったため、このバトルフィールドから強制退去となったのだ。

 和輝は無言で龍次を見ている。まだこのターン、龍次のバトルフェイズは終わっていない。ホープレイVは、まだ攻撃できるのだ。

 

「さて、どうしますか、龍次?」

 

 穏やかな声で、伊邪那岐はそう語りかけた。

 

「まだ、戦いますか?」

「…………」

 

 龍次は無言で己の左胸、心臓の上辺りに手を当てた。

 さっきまでの高揚は、もうなくなっていた。ありていに言って、白けてしまった。

 

「あー」

 

 夜の風が頬を撫でる。六月で、夏が近づいてきている季節だが、夜に吹く風は冷たくて心地よかった。

 

「悪い、和輝。今夜はここまでにさせてくれ」

 

 あっさりと、龍次は戦いを切り上げた。

 和輝は苦笑を浮かべ、「いいぜ」と答えた。和輝には、龍次の回答が予測で来ていたらしい。

 

「あら、思ったよりあっさりと引き下がったね」

「決着つけるなら、もっとちゃんと、な。こんな下らねぇ横槍入ったら、不完全燃焼だしな」

 

 和輝は肩をすくめ、デュエルディスクを停止させた。龍次もまた、同じようにデュエルを中断した。

 乱入によって不完全燃焼、どこかやり切れない部分があるかと思いきや、乱入者を思いっきり叩きのめせた龍次はどこかすっきりしたような笑みを浮かべていた。

 

「悪い、伊邪那岐。神々の戦争を勝ち進むんだったら、俺は和輝と最後まで戦うべきだったかもしれねぇけど。俺は――――」

「分かっていますよ、龍次。君は恋人を救うことを優先したいのでしょう? そのために、友人とは争うよりも手を組みたい」

 

 龍次の意を汲んで、伊邪那岐はそう言った。手を組む。つまりは同盟で、こういうバトルロイヤルルールでは有効な手段だ。

 

「構いません。それに、私自身、君の恋人に呪いをかけた神について、引っ掛かりを覚えます。君の希望を優先しましょう」

 

 神の了承も得た。それから、龍次は己が戦う一番の理由。茜に掛けられた呪いの詳細について語った。魔術にも詳しいロキならば、ひょっとしたら呪いをかけた神について、心当たりがないかという期待もあった。

 

「厄介な呪いだね。その神はおそらく冥府に関係のある神だ。ふん、ボクの娘であるヘルも似たようなことができるだろうけど、彼女はないね。ヘルは神々の戦争に参加していない」

 

 龍次から説明を受けたロキは顎に指をあててそう言った。龍次はわずかな落胆を見せたが、すぐに気を取り直した。

 

「まっ。仕方がないさ。神々の戦争の参加者であることは分かっているんだ。生き残っていけば、いつかは戦うことになる」

 

 気を切り替えた龍次。和輝は龍次に対して、その呪いをかけた神について情報が手に入ったら教えると確約した。

 それから、二人は話を続けた。和輝が神々の戦争に参加してから出会った人のこと、戦った敵のことなど、色々と。

 夜は長い。話は、まだまだ続きそうだった。

 

 

 

 

 

◆◆◆◆◆◆

 

 

 

 

 

 革靴が立てる音が廊下に反響していく。 

 その男はただ歩いているだけでも、嫌でも人の視線を吸い寄せるような、そんな圧倒的な存在感を醸し出していた。

 薄暗い廊下を歩く男の姿。

 四十前後と思われる年齢。撫でつけられた藍色の髪、ブルーの双眸、グレイのスーツ、日本人離れした彫の深い顔つき。長い年月をかけて研磨され、ついに命を持ったような石像の風情。

 和輝たちも通う十二星(じゅうにせい)高校の出資者であり、国守咲夜(くにもりさくや)のスポンサーであり、十二の企業が合併した複合企業、ゾディアックの社長。

 射手矢弦十郎(いでやげんじゅうろう)であった。

 射手矢は最低限の電灯しか灯っていない薄暗い廊下を歩き、その先の扉を開いた。

 東京にあるゾディアック本社、その社長室だった。

 足音を完全に吸収する高級絨毯、落ち着いた色合いの壁紙、部屋の主はあくまでも社長であるとして、自己主張しない、シックな調度品。まさに射手矢という「王」を迎え入れる部屋だった。

 やはり照明は最低限に抑えられており、代わりに天井が採光をとりやすいような造りになっており、天窓から星の光が取り込まれていた。ゾディアック。その名が現すように。

 社長室。本来は射手矢のみが入れ、ほかの人間は許可がなければ入れない。そのはずだった。

 だが今夜、そこに一人、先客がいた。

 社長室にはやや似つかわしくない、神父だった。

 浅黒い肌、銀色の髪は撫でつけられ、一部の隙もなく身に着けられた聖職衣(カソック)は漆黒の銀のラインが入ったもの。金の瞳をらんらんと輝かせ――そして、その瞳の奥には、得体の知れない金色の炎、悪魔のごとき炎を垣間見た気にさせる――、精力と活力に満ちた笑顔で射手矢を出迎えた。

 

「星座たちを束ねし星の王! 十二の星々を従わせし若き社長に祝福を!」

 

 やたらハイテンションな声が射手矢を打つ。射手矢は苦笑。既に来客については事前にアポイントメントがあったのでわかっていた。だがまさか、秘書の案内もなしに社長室に一人入りこんでいるとは思わなかった。

 もっとも、この件について、秘書を責めるわけにはいくまい。目の前の男がその気になれば、今、社内に残っているガードマンや、射手矢の護衛者たち全てに悟られることなくここまで来るのはわけないことだ。

 

「祝福か。うまくいかない状況でも、そうすることで状況好転を呼び込むこともできるわけか。

 ところで、そんなことを言いに来たわけじゃないだろう、ナイ神父?」

「勿論だとも! 実のところ、私は心配している。そして謝罪したい気持ちでいっぱいだ。

 残念なことにアレスとエリスは脱落してしまった。おまけに私が貸し出した私の化身も、あっさりとやられてしまった。戦力を提供できるといったにもかかわらずこの体たらく! 実に嘆かわしい! そして、これで、君たちの同志が消滅してしまったことが気がかりでね」

『貴様に心配されるいわれはない』

 

 と、その場にいるはずのない第三の声が、二人の会話を遮った。

 重厚な声だった。そして何故か二重にぶれた声だった。

 重厚なのは声だけではない。姿は見えぬが、その場にいるだけでわかる圧倒的な存在感。

 

『貴様の戯言繰り言を聞いている暇はない。早く本題に入れ』

 

 その声は天より轟く落雷のようでもあり、地より突き上げる地震のようでもあった。

 

『オレはそんなに気の長い方ではない。くだらない能書きは、自分の命を縮めると知れ』

「まぁ、落ち着き給えよ。クロノス(、、、、)

 

 声だけで圧倒的な「力」を発散する存在に対して、射手矢はそう言った。

 クロノス。それは、オリンポスの神々を襲撃し、アテナを子供の姿にし、止めを刺さんとアレス、エリスをさし向けた黒幕の名ではなかったか。

 ナイ神父と呼ばれた男は、まるでピエロの様におどけた仕草で肩をすくめ、

 

「では本題に入ろう。私の情報の精度はいかがだったかな? アテナのパートナーの割だし。そして乱入してきたロキと、そのパートナーの身元を提供した。

 またもう一つ、新規の情報がある。先ほど契約を済ませたチームなのだが、これがなかなか厄介そうでね。よろしければ、彼らの素性も提供しよう」

 

 ナイ神父は両手を広げ、まるで射手矢を迎え入れるかの様にそう言った。

 

『そして、自分の手を汚すことなく敵を減らそうというのか? そのような真似をされて、黙っていられると思っているのか、このオレが?』

 

 恫喝を含んだ声。だが神父は笑みを浮かべたままだ。

 

「それに君はまだ我々を信用してくれていないようだ。情報提供者。ビジネスをしようなどといっておきながら、商談相手のことは信用しないのかね?」

 

 声に追従する射手矢。ナイ神父は苦笑する。

 

「それはすまないね。何せ我が愛しいパートナーは、人前に出ることを好まない。パーティは隅っこに陣取り、そこで繰り広げられる人間関係のマーブル模様を眺めるのが大好きという変わりものなのだからね」

『それこそ信用ならん。いや、そもそも貴様がここにいること自体、オレは気に入らない。なぁ? 無貌の神』

 

 声から殺意が膨れ上がる。ナイ神父は物理的な圧力さえ伴いそうな殺気を全身に浴び、溶け崩れた(、、、、、)

 

「!?」

 

 予想外の事態に、射手矢の表情が僅かに強張る。それはまるで岩に走ったほんの小さな罅のようだった。

 

「驚いてくれたようで何より。そうでもしてくれないと、こんな小芝居を打った甲斐がない」

 

 溶け崩れ、なんだかよく分からないぶよぶよとした、粘土のような残骸と化したナイ神父。ふと、その残骸から声がした。ただし、聞こえた声は女性のものだ。

 ばっと残骸が飛び散る。そこから出てきたのは一人の女。

 後ろで束ねた黒髪、白い肌、赤い瞳、男物のワインレッドのスーツを着ているが、ネクタイを外し、胸元を大きく開けている。男装でありながらもどこまでも「女」を強調した、妖艶な姿だった。

 

「怒らないでくれ。ぼくのパートナーについては、もっと信頼関係が築けたら紹介するよ。それよりも、ぼくの提案、受けてくれないかな?」

「戦力を提供する代わり、我々にも奴ら(、、)に与してほしい、か」

「いかがだろうか? ぼくが言うのもなんだけれど、神々には人間を憎んでいるものが大勢いる。一神教によって信仰を阻まれ、貶められ、存在を歪められた神々。姿形まで変えられてしまったものは少なくとも、世界を席巻する幻想の教えに憤怒を抱いている神は大勢いる」

 

 そこで、ナイ神父と名乗っていた元男、“無貌の神”は射手矢と、彼の背後にいると思われる声の主を見据えた。

 

「クロノス。君だって、人間には思うところがあるんじゃないのかい?」

 

 無貌の神の問いかけに、声はすぐには答えなかった。

 しかし、

 

『下らんな。いまさらそんな恨みつらみを晴らそうとしてどうなる。やはり貴様とは合わん。情報も、戦力もいらん。オレが貴様に望むことはただ一つ。失せろ。今すぐにな。でなければ、次はパートナーがいようがいまいが、殺すぞ。這い寄る混沌、ナイアルラトホテップ』

 

 その声は今まで通りの重厚さを持っていたが、逆に殺意は込められていなかった。そのことが逆に恐ろしい。燃え盛る激情ではなく、氷点下の敵意が隠されているようで。

 その、言い知れぬ害意を感じ取ったのか、無貌の神ことナイアルラトホテップは肩をすくめた。

 

「残念。ふられちゃった。それじゃあぼくはこれで。武運と幸運を祈っているよ。星座の王、そして、クロノス」

 

 演技がかった一礼を残し、ナイアルラトホテップの姿がまるで幻だったかのように消えうせた。

 騒がしい来客のいなくなった社長室で、射手矢は一つ息を吐いた。

 

『弦十郎。奴は信用できん。ここで切って正解だった』

「君の意見に賛成だ。得体の知れない奴ほどやばい(、、、)。世界中に放った化身による情報収集は敵に回すとこの上なく恐ろしいが、獅子身中の虫になられるよりマシだ。

 なに、私の立場でも情報は集まる。そして戦力ももうすぐ整う」

 

 射手矢の言葉に声は笑う気配を落とした。

 

『そうだ。オレが出向けば必ず呼応する。そのために、ギリシャに行く必要があるがな』

「ちょうど商談がある。まさしく渡りに船だ」

『アテナとロキはどうする? ほとんど余った駒だったとはいえ、アレスとエリスを倒した実力は侮れん。オレがいくか?』

「放っておきなさい。しばらくはね。私怨に凝り固まっていたアレスとエリスは手綱を離したが、彼らももういない。ならば前途有望な若者を、そうやすやすと摘むことはない」

 

 射手矢の答えに「声」はわずかに嘆息した。

 

『弦十郎。オマエとは波長が合ったが、その辺の考えは合わないな。危険な芽は、早めに摘むに限るだろうに』

「私はその芽がつける花を見てみたいんだよ。無論、ついた花が毒花ならば、容赦なく刈り取るがね」

 

 そう言って射手矢は微笑んだ。表面上は柔和な笑みなのに、底の知れない、冷えるような笑みだった。

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