神々の戦争   作:tuki21

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今回のデュエルは2016年3月31日までのリミットレギュレーション採用の構成となっております。ご了承ください。


第30話:餓えた虫達

 飛翔する、星屑のような光を散らす巨竜の姿。

 和輝(かずき)が召喚、実体化させた閃珖竜(せんこうりゅう) スターダストだ。

 

「いた! そこだ!」

 

 ロキの報告に頷く暇も惜しく、和輝は綺羅(きら)(さら)った男たち――ロキの術によって、追跡は可能だ――の頭上を一度通過。急カーブをし、急降下。実体化を消す過程で飛び降りた。

 ダン! と音を立てて、和輝は男たちの眼前に立ちはだかった。

 

「綺羅を返せ、糞野郎ども」 

 

 怒気も露わな和輝の声音。ほのかな殺気さえ混じっている。

 

「………………」

 

 無言の男たち。だが痩身の方の男は綺羅を離そうとしない。

 

「力づくだな」

 

 和輝は一切躊躇しなかった。交渉の余地などない。要求が通らなければ実力行使。実に短絡的で、和輝らしくない。ただし、その身体の内側からあふれている圧倒的な闘志を除けば、だが。

 

(綺羅ちゃんの身の安全の確保のためならほかのリスクなんて投げ捨てろ、ってことかな。怖いね。視野が狭くなってるけど、その分、心の持ちようがまるで違う)

 

 和輝の背後で実体化したロキは、内心そんなことを考えていた。

 男たちは沈黙を通す。かと思えば、肥満体の男が一歩前に出た。

 

「バトルフィールド、展開」

「ッ!? おいおい、こっちからじゃなくて、向こうからバトルフィールドを展開したぞ!?」

「神々の戦争の参加者じゃないのに、か!」

 

 肥満体の男を中心に、夜の静けさが異なるものに変化した。家々から人の気配がなくなり、その場にいるのは和輝とロキ、そして痩身と肥満体の男二人のみ。

 

「和輝、こいつらが何者かわからない。倒しても()()何も覚えていないだろう。昨日やアテナたちの時と同じように」

「だが、倒さなければ、そもそも綺羅を救えない! やるぞ!」

 

 三人がそれぞれデュエルディスクを起動させる。二対一の変則デュエルだが構うものか。やってやる。

 

決闘(デュエル)!』

 

 

 

 

 

◆◆◆◆◆◆

 

 

 

 

 

 洋館表口。烈震(れっしん)とアイーダは互いに距離をとりながら、油断のならない眼差しを投げつけ合っていた。

 もちろん場所はバトルフィールド内。神々の戦争は、既に始まっているのだ。

 烈震は緑、アイーダはハシバミ色の宝珠を胸元に輝かせた。まるで二人の戦意の高鳴りのように。

 

 

烈震LP8000手札5枚

アイーダLP8000手札5枚

 

 

(オレ)の先攻でいかせてもらう。モンスターをセット、カードを二枚セットし、ターンエンドだ」

 

 烈震が敷いた布陣は手堅い守備のもの。情報を一切与えず、それでいて二枚のバックで攻めにくさを強調している。

 

「けど、そんなのすぐに()()()()()()()()()。あたしのターン!」

 

 ターンはアイーダに移る。彼女はドローカードを確認し、笑みを浮かべた。不気味な笑みだ。もしも昆虫が笑うのならば、こんな顔になるだろうか。

 

「あたしは、甲虫装機(インゼクター) ダンセルを召喚!」

 

 アイーダのフィールドに、モンスターが現れる。

 人型のモンスター。黒い上下一体型の全身スーツを身に纏い、その「素体」から、赤い、イトトンボをモチーフにしたと思われる、四枚羽根の装甲を装着。スコープ付きの銃を装備し、片膝を立てた姿勢で制止した。

 

「甲虫装機、だと?」

 

 烈震の表情が険しげに歪む。彼の脳裏に甲虫装機デッキのデータが検索される。

 ヒット。その特性はまさしく飢餓のイナゴの如し。わらわらと湧き出て相手のフィールドを食い荒らし、最終的に数の暴力と一撃の火力で仕留める、危険なデッキだ。

 

「ダンセルの効果発動! 手札の甲虫装機 ホーネットをダンセルに装備! フォームチェンジ・ホーネット!」

 

 アイーダの手札からカードが一枚、デュエルディスクにセットされる。次の瞬間、ダンセルのアーマーが自動的にパージ。パージされたアーマーパーツは即座に粘土の様に形を歪ませ、別のアーマーに変化、再び「素体」に装着された。

 トンボを思わせる赤いアーマーは、今やスズメバチをモチーフにした黄色と黒のアーマーとなった。

 

「これにより、ダンセルはレベルが3上がり、ホーネットの攻守分、攻守がアップする。けどまー、これはおまけ。ホーネットの効果発動! 装備状態のこのカードを墓地に送って、あんたの右側の伏せカードを破壊するよ!」

 

 パチン。アイーダが指を鳴らす。次の瞬間、ダンセルに装備されていたホーネットのアーマーがパージ。パーツは弾丸のように烈震の伏せカードに向けて殺到した。そして、「素体」となったダンセルには再びどこからともなく現れたトンボのアーマーが装備された。

 

「狙いは、外れだ。リバースカード、ダブルオープン。針虫の巣窟、そしてセメタリー・パーティ」

 

 烈震の足元のカードが二枚とも勢いよく翻る。次の瞬間、翻った一枚、針虫の巣窟がアーマーの弾丸に貫かれた。

 

「外れだ。フリーチェーンを射抜いても意味はない。そして針虫の巣窟の効果で、己はデッキトップから五枚のカードを墓地に送る」

 

 烈震が己のデッキトップから五枚のカードを抜き、扇状に開いたうえで墓地に落としていく。

 落ちたのはレベル・スティーラー、ドッペル・ウォリアー、ボルト・ヘッジホッグ、サイクロン、デブリ・ドラゴン。

 

「そして、己のデッキからカードが墓地に送られたことにより、セメタリー・パーティの強制効果が発動。カードを一枚ドローする」

「デッキ圧縮に、ドローブースト。あたしのホーネットの弾丸を躱しただけじゃなくて、リカバリーもしっかりか。抜け目ないねー。

 けどこっちだって抜け目ないさ! ダンセルの効果発動! デッキから新たな甲虫装機、甲虫装機 センチピードを特殊召喚!」

 

 新たに現れる「素体」。その素体に装着される昆虫型のアーマーは、茶色を基調にしたムカデをモチーフとしたもの。

 

「当然、センチピードにも甲虫装機(なかま)を装備する効果が備わっている! あたしは墓地のホーネットを装備! もう一度ホーネットの効果発動! このカードを墓地に送って、あんたの守備モンスターを破壊!」

 

 先ほどの焼廻し。アーマーパージ、変化、再装着。そしてアーマー弾丸の掃射。烈震の守備モンスター、ライトロード・ハンター ライコウを撃ち抜いた。

 

「ライコウか。危ないカードを仕込んでるね。ま、もうその危険もなくなったけど。

 

 この瞬間、センチピードの効果発動! デッキから二枚目のセンチピードを手札に加えるね。

 さ、場を食い荒らしたことだし、次は火力を整えようか! ダンセルとセンチピードでオーバーレイ!」

 エクシーズ召喚。アイーダが右手を勢いよく天へとかざす。次の瞬間、彼女の頭上に渦を巻く宇宙空間を思わせる、煌めきの空間が出現。その渦の中心に、紫の光となった二体の甲虫装機が飛び込んでいく。

 

「二体のモンスターで、オーバーレイネットワークを構築! エクシーズ召喚!」

 

 虹色の爆発が頭上の空間から発生。そして、新たなモンスターを誕生させる。

 

此岸(しがん)と彼岸の旅人よ、天国への道筋をたどり、その瞳に何を映す? おいで、彼岸の旅人 ダンテ!」

 

 爆発の向こうから現れたのは、青年の姿をしたモンスター。赤い、軽装服に、腰には鞘に収まった短剣。青い髪のてっぺんにかかっているのは月桂樹。

 精悍な顔つきは、彼がこれから辿ることになる遥かなる旅路をしっかりと見据えているように見える。その周囲を衛星のように旋回する二つの光球、即ちORU(オーバーレイユニット)

 

「ここでダンテの効果発動! ORUを一つ取り除き、デッキトップからカードを三枚まで墓地送り! そして墓地に送ったカード一枚につき、500、攻撃力アップ! とーぜん、あたしは三枚のカードを墓地送り!」

「カードガンナーと同じ効果か」

 

 烈震の表情に険しいものが走る。彼岸、というモンスターカテゴリーはよく知らないが、カードガンナーを愛用している烈震だ。その効果の有用性は分かる。デッキ圧縮、墓地肥し。多少運が絡むがマイナスに働くことはほとんどないと言っていい。

 アイーダのデッキから落ちたカードは甲虫装機 ギガマンティス、アーマーブラスト、甲虫装機 グルフの三枚だった。同時に、ダンテの攻撃力は1500アップし2500。最上級レベルに跳ね上がった。

 

「うわっち。アーマーブラストが落ちたか。まーしゃーない。こういうこともあるよね。じゃ、バトル! ダンテでダイレクトアタック!」

 

 ダンテはアイーダの命令を受け、右手を烈震に向けて突き出した。

 

「なんだ?」

 

 半透明のトールの疑問符。次の瞬間、疑問は氷解した。ダンテが翳した右掌から、金色の光線が烈震の胸の宝珠に向けて撃ちだされたのだ。

 

「ビームとな!?」

「む!」

 

 驚くトール。烈震は動揺を押し殺し、普段通り、腰を落とした。

 

「?」 

 

 怪訝顔のアイーダ。そして次の瞬間、烈震は自身の宝珠めがけて伸びてきた光の一撃に合わせて、右拳の甲を光線の側面――こう言う表現が正しいかどうかは疑問が残るが――に当て、そのまま右手に滑らせた。

 そらされた直線の一撃はわずかに軌道を変え、烈震の右手をレールとして滑り、あらぬ方向に飛んで行った。

 驚愕するアイーダ。「はぁ!?」

 困惑のトラソルテオトル「なんだ今のは……、人間が行ったのか……?」

 だが烈震本人はいたって平静。トールもだ。

 

「やはり、攻撃力2000オーバーの一撃を完全に回避することは難しいか」と顔をしかめる烈震。今の一撃は彼の技術でも完全にダメージをそらしきれなかったのか。

「くっ、そ、そんな、つまらない一発芸で……ッ!」

 

 だがアイーダの声は震えている。先ほどの驚愕から、まだ完全に立ち戻っていないのだ。

 

「落ち着けアイーダ。今のは確かに我も驚かされたが、ダメージは通っている。そしてあんな無茶を続けていられるわけがない。いずれ宝珠に直撃する」

 

 トラソルテオトルの指摘が、アイーダを正気に立ち返らせる。はーと一度大きく息を吐き、平静を取り戻すアイーダ。

 

「バトルフェイズを終了。ダンテは自分の効果で守備表示になる。カードを二枚セットして、ターンエンドだよ」

 

 

甲虫装機 ダンセル 闇属性 ☆3 昆虫族:効果

ATK1000 DEF1800

1ターンに1度、自分の手札・墓地から「甲虫装機」と名のついたモンスター1体を装備カード扱いとしてこのカードに装備できる。このカードに装備された装備カードが自分の墓地へ送られた場合、デッキから「甲虫装機 ダンセル」以外の「甲虫装機」と名のついたモンスター1体を特殊召喚できる。また、このカードが装備カード扱いとして装備されている場合、装備モンスターのレベルは3つ上がる。

 

甲虫装機 ホーネット 闇属性 ☆3 昆虫族:効果

ATK500 DEF200

1ターンに1度、自分の手札・墓地から「甲虫装機」と名のついたモンスター1体を装備カード扱いとしてこのカードに装備できる。このカードが装備カード扱いとして装備されている場合、装備モンスターのレベルは3つ上がり、攻撃力・守備力はこのカードのそれぞれの数値分アップする。また、装備カード扱いとして装備されているこのカードを墓地へ送る事で、フィールド上のカード1枚を選択して破壊する。

 

針虫の巣窟:通常罠

自分のデッキの上からカードを5枚墓地へ送る。

 

セメタリー・パーティ:永続罠

「セメタリー・パーティ」の効果は1ターンに1度しか使用できない。(1):自分のデッキからカードが墓地に送られた時に発動する。カードを1枚ドローする。

 

甲虫装機 センチピード 闇属性 ☆3 昆虫族:効果

ATK1600 DEF1200

1ターンに1度、自分の手札・墓地から「甲虫装機」と名のついたモンスター1体を装備カード扱いとしてこのカードに装備できる。このカードに装備された装備カードが自分の墓地へ送られた場合、デッキから「甲虫装機」と名のついたカード1枚を手札に加える事ができる。また、このカードが装備カード扱いとして装備されている場合、装備モンスターのレベルは3つ上がる。

 

彼岸の旅人 ダンテ 光属性 ランク3 戦士族:エクシーズ

ATK500 DEF2500

レベル3モンスター×2

(1):1ターンに1度、このカードのX素材を1つ取り除き、自分のデッキの上からカードを3枚まで墓地へ送って発動できる。このカードの攻撃力はターン終了時まで、この効果を発動するために墓地へ送ったカードの数×500アップする。(2):このカードは攻撃した場合、バトルフェイズ終了時に守備表示になる。(3):このカードが墓地へ送られた場合、このカード以外の自分の墓地の「彼岸」カード1枚を対象として発動できる。そのカードを手札に加える。

 

 

彼岸の旅人 ダンテORU×1

 

 

烈震LP8000→5500手札3枚

アイーダLP8000手札3枚(うち1枚は甲虫装機 センチピード)

 

 

「己のターンだ、ドロー!」

 

 一気に大ダメージを受けた烈震だったが、彼に動揺はない。ふっと短く呼気を吐き、一気に動く。

 

「さぁ、飛ばすぞ! 相手フィールドにのみモンスターが存在するため、手札より、TG(テックジーナス) ストライカーを特殊召喚! さらにモンスターの特殊召喚に成功したため、手札のTG ワーウルフを特殊召喚!」

 

 颯爽と現れたSF風バトルスーツに身を包んだ戦士。サイバー・ドラゴンに代表される手軽な特殊召喚モンスター。しかもチューナー。そしてその隣に、身体に機械を埋め込んだ人狼が現れる。

 一瞬にしてそろったチューナーと非チューナーに、アイーダの表情が自然、警戒に引き締まる。

 

「まだだ。マスマティシャンを召喚。効果を発動し、デッキからダンディライオンを墓地に送る。この瞬間、ダンディライオンとセメタリー・パーティの効果が発動。己のフィールドに綿毛トークン二体を守備表示で特殊召喚し、セメタリー・パーティの効果でカードを一枚ドローする。さらに、天輪の鐘楼を発動だ」

 

 あっという間に烈震のフィールドのモンスターゾーンが埋まった。さらに彼のフィールドに、手足と下半身が鐘となった少女像が現れる。

 準備は万端だ。加速が始まる。

 

「これは……、まずいかもね……」

「行っちまえ、烈震!」

「応! レベル3のワーウルフに、レベル2のストライカーをチューニング!」

 

 アイーダがエクシーズならば、自分はシンクロとばかりに、烈震が動く。彼の右腕が力強く天へとかざされる。それの呼応するように、ストライカーが二つの緑の光の輪となり、その輪をくぐったワーウルフが白く輝く三つの光星(こうせい)となった。

 

「連星集結、知識解放。シンクロ召喚、出でよTG ハイパー・ライブラリアン!」

 

 光が(とばり)となって辺りに降り注ぐ。その向こう側から現れたのは、和輝も使用していた、学資帽にインバネスのようなコートを纏った魔法使い。烈震のシンクロ主体のデッキには凄まじいターボになる。

 烈震は一度、アイーダの様子をうかがう。彼女の足元に伏せられた二枚のリバースカードはなんら反応を見せない。ここまで展開したのだから、召喚反応系の罠ならば既に使っているだろう。

 ブラフの可能性は除外。考えられる可能性は、フリーチェーン、攻撃反応系、そして次のターンの反撃に使う、リビングデッドの呼び声の様なカードか。

 いずれにせよ、妨害されないのなら突き進むだけだ。

 

「シンクロ召喚に成功したこの瞬間、天輪の鐘楼の効果より、カードを一枚ドロー。そして、俺のフィールドにある綿毛トークン一体をゲームから除外し、手札から異次元の精霊を特殊召喚。そしてレベル1の綿毛トークンに、レベル1の異次元の精霊をチューニング!」

 

 二回目のシンクロ召喚。今度は一つの光の輪と、一つの光星が踊る。

 

「連星集結。新地平開拓。シンクロ召喚、駆けろ、フォーミュラ・シンクロン!」

 

 現れたのは、これまた和輝も愛用している、F1カーに手足と頭が生えたような玩具(おもちゃ)のような外見のモンスター。

 

「フォーミュラ・シンクロン、ハイパー・ライブラリアン、天輪の鐘楼の効果が発動。合計三枚ドロー!

 そして、レベル3のマスマティシャンに、レベル2のフォーミュラ・シンクロンをチューニング!」

「三回目!」と驚愕するアイーダ。

「いや、まだ()()()()来るぞ」と冷静に指摘するトラソルテオトル。一人と一柱の眼前で星が踊る。

「連星集結、沈黙強制。シンクロ召喚、縛れ、シンクロチューナー、サイレント・ドラゴン!」

 

 新たに現れたのは紫色の外皮に体と同じくらいの大きさの翼を持ち、やけに長い尻尾と赤いベルトで口が開けないよう拘束されたワイバーン。両翼で力強くはばたき、アイーダを睥睨(へいげい)する。

 

「サイレント・ドラゴンのシンクロ召喚に成功したターン、相手は罠を発動できない。さらにハイパー・ライブラリアンと鐘楼の効果で二枚ドロー!」

 

 これで攻撃反応型の罠もない。残るは防御型の速攻魔法だが、そこまで来たらダメージは諦めるしかない。そういう流れもある。

 

「レベル5のハイパー・ライブラリアンに、レベル5のサイレント・ドラゴンをチューニング!」

 

 四回目。今度はレベル10、今までのような、小型の連続シンクロとは一線を画する大型モンスターの召喚。

 

「連星集結、覇龍降臨! シンクロ召喚、裁きを下せ、天穹覇龍ドラゴアセンション!」

 

 光の向こうから、咆哮とともに巨体が現れた。

 全体的に白い体躯、足はなく、下半身がそのまま尻尾になっている、どちらかといえば東洋の龍に近いフォルム、金色に縁どられた翼は鎧のようにも、マントのようにも見え、それを力強く広げている。

 

「ドラゴアセンションの効果が発動するが、それにチェーンし、天輪の鐘楼の効果により一枚ドロー。次にドラゴアセンションの効果。シンクロ召喚成功時、己の手札の数×800ポイント、攻撃力を上昇させる。今、己の手札は六枚。よって攻撃力は4800」

 

 咆哮が轟く。攻撃力4800という圧倒的数値がアイーダを覆う。

 

「ッ! 馬鹿みたいにドローしてたのは、ここでの大火力を出すのが目的ってわけね!」

「そう言うことだ。さらに己は墓地のレベル・スティーラーの効果を発動。ドラゴアセンションのレベルを一つ下げて、このカードを守備表示で特殊召喚する。

 バトルだ。ドラゴアセンションでダンテを攻撃!」

 

 攻撃宣言が下る。次の瞬間、ドラゴアセンションが全身を白く輝かせた。輝きはどんどん強くなり、物理的衝撃を持った極光の一撃へと変化。非常に攻撃的な太陽の光のような一撃をまともに受けて、彼岸の旅人はあっさりと消滅してしまった。

 

「け、けどいくら攻撃力が高くたって、これでもう攻撃は終わり! あたしにダメージはない!」

「その考えは脆い! 手札から速攻魔法、グリード・アタック発動! この効果により、ドラゴアセンションはもう一度だけ、続けて攻撃できる! ドラゴアセンションでダイレクトアタック!」

「え!?」

 

 まさかの追撃に、アイーダの表情に亀裂が走る。だが驚愕はさらに続く。何を思ったのか、烈震自身もまた、アイーダの懐に飛び込んできたのだ。

 

「え、何!?」

 

 訳が分からず、アイーダは自分を守るために身構える。が、烈震は彼女の手首を掴み、そのまま己の身体を沈め、背負い投げのようにしてアイーダの身体を放った。投げられた先には、極光を放つドラゴアセンションの姿。

 

「ッ!」

「アイーダ!」

 

 烈震の宝珠狙いの、行動。アイーダにできるのは辛うじて体を丸め、何とかして宝珠を守ることだけだった。

 

「きゃああああああああああああああああああ!」

 

 アイーダの絶叫が響き渡る。だが烈震もトールも特に反応しない。敵対者である以上に、彼もまた、綺羅に危害を加えられていることに加え、多くの少女をその毒牙に掛けたことに対して憤っているのだ。

 

「う……、くそ……、やってくれるじゃないの……ッ!」

 

 アイーダは立ち上がった。

 髪はぼさぼさ、化粧は剥がれ、服は汚れ、擦り剥けたのか、膝は肘に傷もあった。だが宝珠は守ったし、ギラギラと肉食獣の様に輝く双眸が烈震を睨みつけていた。

 

「メインフェイズ2、グリード・アタックの対象となったモンスターは、そのターンの終了時に破壊される。だがこのデメリットはこれで回避する。手札より禁じられた聖衣を発動。これにより、ドラゴアセンションは効果により破壊されない。カードを一枚セットし、ターンエンドだ」

 

 

TG ストライカー 地属性 ☆2 戦士族:チューナー

ATK800 DEF0

相手フィールド上にモンスターが存在し、自分フィールド上にモンスターが存在しない場合、このカードは手札から特殊召喚する事ができる。フィールド上に存在するこのカードが破壊され墓地へ送られたターンのエンドフェイズ時、自分のデッキから「TG ストライカー」以外の「TG」と名のついたモンスター1体を手札に加える事ができる。

 

TG ワーウルフ 闇属性 ☆3 獣戦士族:効果

ATk1200 DEF0

レベル4以下のモンスターが特殊召喚に成功した時、このカードを手札から特殊召喚する事ができる。フィールド上に存在するこのカードが破壊され墓地へ送られたターンのエンドフェイズ時、自分のデッキから「TG ワーウルフ」以外の「TG」と名のついたモンスター1体を手札に加える事ができる。

 

マスマティシャン 地属性 ☆3 魔法使い族:効果

ATK1500 DEF500

(1):このカードが召喚に成功した時に発動できる。デッキからレベル4以下のモンスター1体を墓地へ送る。(2):このカードが戦闘で破壊され墓地へ送られた時に発動できる。自分はデッキから1枚ドローする。

 

ダンディライオン 地属性 ☆3 獣族:効果

ATK300 DEF300

(1):このカードが墓地へ送られた場合に発動する。自分フィールドに「綿毛トークン」(植物族・風・星1・攻/守0)2体を守備表示で特殊召喚する。このトークンは特殊召喚されたターン、アドバンス召喚のためにはリリースできない。

 

天輪の鐘楼:永続魔法

「天輪の鐘楼」はフィールドに1枚しか表側表示で存在できない。(1):自分または相手がS召喚に成功した場合に発動できる。そのプレイヤーはカードを1枚ドローする。

 

異次元の精霊 光属性 ☆1 天使族:チューナー

ATK0 DEF100

このカードは自分フィールド上に表側表示で存在するモンスター1体をゲームから除外し、手札から特殊召喚する事ができる。次のスタンバイフェイズ時、この特殊召喚をするためにゲームから除外したモンスターをフィールド上に戻す。

 

TG ハイパー・ライブラリアン 闇属性 ☆5 魔法使い族:シンクロ

ATK2400 DEF1800

チューナー+チューナー以外のモンスター1体以上

(1):このカードがフィールドに存在し、自分または相手が、このカード以外のSモンスターのS召喚に成功した場合に発動する。このカードがフィールドに表側表示で存在する場合、自分はデッキから1枚ドローする。

 

フォーミュラ・シンクロン 光属性 ☆2 機械族:シンクロチューナー

ATK200 DEF1500

チューナー+チューナー以外のモンスター1体以上

(1):このカードがフィールドに存在し、自分または相手が、このカード以外のSモンスターのS召喚に成功した場合に発動する。このカードがフィールドに表側表示で存在する場合、自分はデッキから1枚ドローする。

 

サイレント・ドラゴン 闇属性 ☆5 ドラゴン族:シンクロチューナー

ATK500 DEF2000

チューナー+チューナー以外のモンスター1体以上

このカードをS素材とする場合、ドラゴン族モンスターのS召喚にしか使用できず、「サイレント・ドラゴン」の特殊召喚は1ターンに1度しかできない。(1):このカードのS召喚に成功した時、相手は罠カードを発動できず、このカードのS召喚に対してカードを発動できない。(2):自分の手札のモンスター1枚を墓地に送り、以下の効果から1つを選択して発動できる。●墓地へ送ったそのモンスターのレベル分だけ、このカードのレベルを上げる。●墓地へ送ったそのモンスターのレベル分だけ、このカードのレベルを下げる。

 

天穹覇龍ドラゴアセンション 光属性 ☆10 ドラゴン族:シンクロ

ATK? DEF3000

チューナー+チューナー以外のモンスター1体以上

このカードがシンクロ召喚に成功した時、このカードの攻撃力は自分の手札の数×800ポイントアップする。フィールド上のこのカードが相手によって破壊され墓地へ送られた時、このカードのシンクロ召喚に使用したシンクロ素材モンスター一組が自分の墓地に揃っていれば、その一組を特殊召喚できる。この効果で特殊召喚したモンスターの効果は無効化される。「天穹覇龍ドラゴアセンション」のこの効果は1ターンに1度しか使用できない。

 

レベル・スティーラー 闇属性 ☆1 昆虫族:効果

ATK600 DEF0

(1):このカードはモンスターゾーンに存在する限り、アドバンス召喚以外のためにはリリースできない。(2):このカードが墓地に存在する場合、自分フィールドのレベル5以上のモンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターのレベルを1つ下げ、このカードを墓地から特殊召喚する。

 

グリード・アタック:速攻魔法

(1):自分フィールドのレベル8以上のモンスター1体を対象にして発動できる。そのモンスターが戦闘で相手モンスターを破壊した時、そのモンスターは続けてもう1度だけ攻撃できる。バトルフェイズ終了時に、そのモンスターを破壊する。

 

禁じられた聖衣:速攻魔法

(1):フィールドの表側表示モンスター1体を対象として発動できる。ターン終了時までそのモンスターは、攻撃力が600ダウンし、効果の対象にならず、効果では破壊されない。

 

 

天穹覇龍ドラゴアセンション攻撃力4800、レベル10→9

 

 

烈震LP5500手札3枚

アイーダLP8000→3200手札3枚(うち1枚は甲虫装機 センチピード)

 

 

「やって、くれるよ本当に……ッ! あたしのターン、ドロー!」

 

 裂帛の気合いとともにドローするアイーダ。その内面はぐちゃぐちゃだ。

 参った。まさか一撃でライフを半分以上持って行かれるとは。おまけに今の一撃はかなり効いた。体中が痛い。もっとも、おかげで気絶せずに済んでいるが。

 

「けどね、邪魔はさせないよ! クーデリアは綺麗になるんだ! 誰よりも、何よりも! どこの馬の骨とも知れない奴らが、邪魔すんな! リバースカード、強化蘇生! これでダンセルを攻守を100、レベルを一つ上げた状態で蘇生させる!」

 

 再び現れるアイーダのデッキの展開の起点。だが今回はそれだけではない。強化蘇生はほかの類似する蘇生型の永続罠にはない利点がある。

 

「ここで、強化蘇生を墓地に送って、マジック・プランター発動! カードを二枚ドロー!」

 

 強化蘇生はリビングデッドの呼び声などと違い、永続罠が除去されても対象となったモンスターはステータスが元に戻るだけで破壊されない。

 

「さぁどんどん行くよ! ダンセル効果発動! 墓地からホーネットを装備! そして装備状態のホーネットの効果発動! 自身を墓地に送って、天輪の鐘楼を破壊!」

 

 先ほどの焼廻し。自らが装備したアーマーをパージ、変化、再装着したダンセルが、再びアーマーをパージ。パージされたアーマーは弾丸となって烈震の大量ドローを支えていた永続魔法を破壊。さらにどこからともなく飛来した新たなアーマーがダンセルの「素体」に装備された。

 なぜ伏せカードではなく、天輪の鐘楼を破壊したのか。理由は簡単だ。アイーダは考える。烈震が伏せたのはまず確実にフリーチェーンだろうと。アイーダの墓地にホーネットがいる以上、最悪一ターンに一度以上は彼のカードは破壊される。ならばその効果を少しでも躱すために、伏せカードは狙われても問題ないフリーチェーンの罠か速攻魔法を伏せるはずだ。

 

「くっそ! やっぱダンセルからホーネットはやべぇな! マジで飢餓のイナゴかよ!」

 

 トールの悪態も無理はない。しかも、ここで終わらないのだ。寧ろここからだ。虫達はここから群れる。

 

「ダンセル効果発動! デッキから甲虫装機 ギガグリオルを特殊召喚!」

 

 現れる新たな「素体」、そこに装着されるバトルアーマーは、黒鉄(くろがね)色。ケラをモチーフにしているが五指は全てドリルに変わり、貫通力、というよりは、削岩機のような様相を呈している。

 

「まだまだぁ! 二体目のセンチピードを召喚して、効果発動! 墓地の甲虫装機 グルフを装備! フォームチェンジ・グルフ!」

 

 現れたセンチピードのアーマーがパージ。アーマーが変形、再装着。テントウムシがモチーフと思われる、赤いアーマー姿。

 

「まーすぐにパージしちゃうけどね。グルフ効果発動! 自身を墓地に送って、ダンセルのレベルを二つアップ! ここでセンチピードの効果発動! デッキから甲虫装機 ギガウイービルサーチ!」

 

 グルフのアーマーは即座にパージされ、元のムカデを模したアーマーが装備される。

 

「さぁ行こうか! お次はこいつ! レベル5になったダンセルと、ギガグリオルでオーバーレイ! 二体のモンスターで、オーバーレイネットワークを構築! エクシーズ召喚!」

 

 再びのエクシーズ召喚。先ほどダンテをエクシーズ召喚した時と同じ空間エフェクトが展開。二つの紫の光となった甲虫装機が渦巻く銀河の中心天に向かって飛翔する。

 

「大自然の強者! 弱肉強食の上に、その白銀(しろがね)の体躯を君臨させよ! 食い尽くせ! 甲虫装機 エクサスタッグ!」

 

 虹色の爆発が起こり、その向こうから現れる新たなモンスター。

 「素体」がまず最初に現れ、次に装着されたのはそれまでのモンスター群とは一線を画するマッシブな白銀のバトルアーマー。モチーフはクワガタで、クワガタムシ最大の特徴である鋏型の顎は両腕に装備された武器として、そして頭部の二本角として再現。雄々しい雄叫びを上げるその姿は「ボス」の風格だ。

 

「エクシーズ召喚した割に、攻撃力は低いな。もっとも、それは甲虫装機全てに言えることだ。厄介な能力を持っていることも含めて、な」

「その通り! エクサスタッグの効果発動! ORUを一つ取り除いて、あんたのドラゴアセンションをエクサスタッグに装備させる!」

「ッ!」

 

 エクサスタッグの周囲を衛星のように旋回していたORUの一つが消失。次の瞬間、エクサスタッグのアーマー各所が展開、そこから強烈な吸引力が発生。吸引の力に捕えられたドラゴアセンションが、細かな光の粒子に変換、どんどんエクサスタッグのアーマーに吸い込まれていく。

 

「く……ッ!」

「ドラゴアセンションはたとえ破壊しても素材を復活させる厄介な効果があるからねー。こうすれば除外完了。まー本来なら、エクサスタッグはこの効果で吸収したモンスターの攻撃力の半分を得るんだけど、元が?じゃ無理だねー。

 でもま、関係ないけどね。手札からRUM(ランクアップマジック)-リミット・オーバー発動! エクサスタッグのORUを一つ取り除き、一つランクが上の同種族モンスターにランクアップ!」

「ランクアップか! しかも、No.(ナンバーズ)のような特定カードではなく、か!」

 

 驚愕に目を見開く烈震の眼前、再びエクシーズ召喚の空間が展開し、一つの紫の光と化したエクサスタッグが空間に向かって飛びこんだ。

 

「モンスター一体で、オーバーレイネットワークを再構築! ランクアップ・エクシーズチェンジ!」

 

 虹色の爆発。そして現れる新たなエクシーズモンスター。

 

「大自然の強者! 弱肉強食の上に、その黒金の体躯で君臨せよ! 屠れ、甲虫装機 エクサビートル!」

 

 現れたのは、エクサスタッグと同じく、「素体」にマッシブなアーマーを装備させたモンスター。モチーフは昆虫の王者、カブトムシ。アーマーは黒を下地に金で装甲を増強させた姿。右手にカブトムシ最大の特徴である角を模した思しきランス。羽根はウィングブレードに変更され、無手の左手を力強く握りしめた。その周囲を衛星のように旋回するORUは一つ。ランクアップ前のエクサスタッグのみ。

 

「リミット・オーバーで特殊召喚されたモンスターはエクシーズ召喚扱い。よってエクサビートルの効果発動! あたしは墓地のギガマンティスを装備!

 ついでに言っておくけど、装備状態のドラゴアセンションは相手(あたし)に破壊された。けどさー、間にエクシーズ召喚を挟んでるから、効果発動のタイミングを逃すんだよね! さぁエクサビートル、墓地からギガマンティスをプットオン!」

 

 エクサビートルの咆哮。それに応えるように、アイーダの墓地から這い出してきたのは、緑の、カマキリを模したアーマーを装着した甲虫装機。今回は今までと違い、エクサビートルのアーマーはパージされない。ギガマンティスのアーマーが粒子状に変換。その粒子を吸収したエクサビートルが、ギガマンティスの力も吸収した。

 

「装備状態となったギガマンティスは、装備モンスターの元々の攻撃力を2400にする。さらにエクサビートルは自身の効果で装備したモンスターの攻撃力の半分、攻撃力がアップする。つまり、今のエクサビートルはギガマンティス装備による2400に、その攻撃力の半分1200が追加」

「3600か」

 

 烈震の受け継ぎの台詞に、アイーダは正解とばかりににやりと笑った。

 

「まだまだいくよ! 手札の甲虫装機 ギガウイービルをエクサビートルに装備! これでエクサビートルの元々の守備力は2600になったけど、それは関係ないね。エクサビートルの効果発動! ORUを一つ取り除いて、あたしのギガウイービルとあんたのセメタリー・パーティを破壊する!」

 

 エクサビートルのORUが消失。次の瞬間、装備されていたギガウイービルのアーマーと、烈震の場にあった永続罠が何の前触れもなく硝子が砕けるような音を立てて破壊された。これで烈震は己のドローブーストを全て失ったことになる。

 

「いいねいいね乗ってきた! ギガウイービルの効果発動! 装備状態のこのカードが破壊された場合、あたしの墓地から甲虫装機一体を特殊召喚できる! 蘇らせるのはもちろんこれ! さぁダンセル! もっともっと、あたしのために働くの!」

 

 もう何度目か。何度も何度も呼び出されるダンセル。それでも嫌な顔一つせず、粛々と己の役割を全うする。

 

「繰り返させてもらうよ! ダンセル効果発動! 墓地のホーネットを装備し、ホーネットの効果で墓地送り。そしてレベル・スティーラーを破壊!」

 

 烈震の場の伏せカードには目もくれず、アイーダは最後の壁を破壊する。もはや烈震の伏せカードはフリーチェーンだと確信しているが故の行動だ。

 

「当然、ダンセルの効果を発動。デッキから甲虫装機 アーマイゼを特殊召喚! そして―――――」

 

 新たな甲虫装機を特殊召喚したアイーダが、右手を天に向かって突き上げる。次の瞬間、彼女の頭上にまたしてもエクシーズエフェクトが走った。

 

「ダンセルとアーマイゼでオーバーレイ! 二体のモンスターで、オーバーレイネットワークを構築! エクシーズ召喚!」

 

 虹色の爆発。そして現れる巨大な影。

 

「出でよNo.20! 輝ける魂を宿した岩土(がんど)の使徒よ! 蟻岩土ブリリアント!」

 

 現れたのは巨大な蟻の化け物。烈震から見て右羽に自身のナンバーである「20」を刻み、赤い瞳で威嚇するように烈震を睨みつける。

 

「さーてと。そろそろ攻めよっか。ブリリアント効果発動! ORUを一つ取り除いて、あたしモンスターたちの攻撃力を300アップ。

 そしてバトル! あたしのモンスター全てでダイレクトアタック! これで終わり!」

 

 アイーダのモンスターたちの総攻撃。確かにこれらの攻撃が全て通れば烈震のライフは尽きるだろう。

 

「ここで終わるなど、あるものか! リバーストラップ、ダメージ・ダイエット! このターン、己へのダメージを半減させる!」 

 

 烈震の伏せカードが翻る。アイーダの予想通りフリーチェーン。防御型なのも予想していたが、これで烈震の延命は確定してしまった。

 だが攻撃自体が止められたわけではない。そしてこれは神々の戦争。例え相手のライフが残っていようとも、宝珠を破壊できればこちらの勝利だ。

 一体目。まずエクサビートルが手にした右手のランスで突撃(チャージ)をかけてきた。

 弾丸を遥かに凌駕する速度と質量が合わさった超高速、超重量の一撃。烈震はその一撃をそらそうと身を傾ける。

 激突。烈震は左腕全体を使い、突きこまれたランスの側面を殴打。そのまま身を躱そうとしたが、衝撃は殺しきれず、吹き飛ばされた。

 

「がっ!」

 

 近くの民家に背中から突っ込む烈震。そのまま外壁を破壊し庭を突っ切り、最後に壁を破壊して室内に転がり込んでようやく止まった。普通なら死んでいるが、バトルフィールド内で強化された身体能力は体の上部さも強化。さらに参加者以外の「物」は全て――家の様な建造物も――現実空間よりも脆くなっている。その相乗効果で、烈震の身体が潰れた果実の様になることはなかった。

 起き上がった烈震が周囲を見る。どこかの民家のリビングのようで、今の衝撃で家具が散乱。高級そうなテレビが己の巨体の下敷きになってひしゃげてしまっていた。

 

「……ここがバトルフィールド内でよかったな。現実世界だったらとても弁償できん」

「ふざけたこと言ってる場合じゃねぇ! 次が来るぞ!」

 

 トールの警告が飛ぶ。間髪入れずに次の一撃が来た。

 天井をぶち破ってきたのはセンチピード。右拳を振り下ろした一撃を、転がって回避。床に穴が開いた。

 そして、最後の一撃がやってきた。壁を突き破って、ブリリアントが顎をむき出しにして突っ込んできた。

 

 

「どう……?」

 

 民家に突っ込んだ烈震を追って、己のモンスターたちもまた、民家に突っ込んだのを見届けて、アイーダは呟いた。これで相手の宝珠を砕いていればこちらの勝ちだ。

 こちらの攻撃で絶対に耐性を崩しているのだから、攻撃自体は通ったらまともに当たると思うのだが……。

 

「ッ!」

 

 その時、がん! という音ともに無事だった入口扉が内側からぶち破られた。

 なにが、と思ってみると、出てきたのは明らかに吹っ飛ばされたブリリアントだった。

 

「な、なに!?」

「やってくれたものだ。制服の弁償代は貴様当てでいいのか?」

 

 ゆっくりと、家の破片を踏みしめながら出てくる烈震。彼の制服は確かにところどころ敗れていたが、見たところ五体満足、動きに支障は見られない。

 

「化け物じみているね……」

 ひきつった表情で、アイーダはそう言った。一方、烈震のほうは相手にうまく心理的ダメージを与えられたようだと考察する。

 ブリリアントの一撃を躱し、カウンターで蹴りを叩き付けて体を浮き上がらせ、さらに追撃で一撃かましてやったのは、相手にとって予想外だったらしい。

 岡崎の時もそうだったが、モンスターの攻撃を人間が躱す、捌くというのはインパクトがでかいらしい。ならばと今回もやってみたが、思ったより効果が高そうだ。ついでに修行もできて一石二鳥。すばらしい。

 

「く……ッ! メインフェイズ2に、伏せていたもう一枚の永続罠、ヴァリュアブル・フォームを発動。その効果を使って、センチピードをエクサビートルに装備!」

 

 アイーダの陣営の中で最も攻撃力が低いセンチピード。このモンスターを攻撃表示で立たせていることに不安を感じたのか。あるいは烈震の明王のような佇まいに威圧され、圧倒されたのか。モンスターの数を減らしてでも、弱者を狙われることを防ぐことを目的としたか。

 

 

強化蘇生:永続罠

(1):自分の墓地のレベル4以下のモンスター1体を対象としてこのカードを発動できる。そのモンスターを特殊召喚する。そのモンスターは、レベルが1つ上がり、攻撃力・守備力が100アップする。そのモンスターが破壊された時にこのカードは破壊される。

 

マジック・プランター:通常魔法

自分フィールド上に表側表示で存在する永続罠カード1枚を墓地へ送って発動できる。デッキからカードを2枚ドローする。

 

甲虫装機 ギガグリオル 闇属性 ☆5 昆虫族:効果

ATK2000 DEF1300

自分の墓地の昆虫族モンスター1体をゲームから除外する事で、墓地のこのカードを装備カード扱いとして自分フィールド上の「甲虫装機」と名のついたモンスター1体に装備する。「甲虫装機ギガグリオル」のこの効果は1ターンに1度しか使用できない。また、このカードが装備カード扱いとして装備されている場合、装備モンスターの元々の攻撃力は2000になる。装備モンスターが守備表示モンスターを攻撃した時、その守備力を攻撃力が超えていれば、その数値だけ相手ライフに戦闘ダメージを与える。

 

甲虫装機 グルフ 闇属性 ☆2 昆虫族:効果

ATK500 DEF100

1ターンに1度、自分の手札・墓地から「甲虫装機」と名のついたモンスター1体を装備カード扱いとしてこのカードに装備できる。このカードが装備カード扱いとして装備されている場合、装備モンスターのレベルは2つ上がり、攻撃力・守備力は、このカードのそれぞれの数値分アップする。また、装備カード扱いとして装備されているこのカードを墓地へ送る事で、自分フィールド上のモンスター1体を選択し、レベルを2つまで上げる。

 

甲虫装機 エクサスタッグ 闇属性 ランク5 昆虫族:エクシーズ

ATK800 DEF800

昆虫族レベル5モンスター×2

1ターンに1度、このカードのエクシーズ素材を1つ取り除く事で、相手のフィールド上・墓地のモンスター1体を選択して装備カード扱いとしてこのカードに装備する。このカードの攻撃力・守備力は、この効果で装備したモンスターのそれぞれの半分の数値分アップする。

 

RUM-リミット・オーバー:通常魔法

(1):自分フィールドのXモンスター1体を対象にして発動できる。そのモンスターのX素材を一つ取り除き、そのモンスターと同じ種族、族生で一つランクの高いXモンスター1体を、対象のモンスターの上に重ねてX召喚扱いとしてエクストラデッキから特殊召喚する。

 

甲虫装機 エクサビートル 闇属性 ランク6 昆虫族:エクシーズ

ATK1000 DEF1000

レベル6モンスター×2

このカードがエクシーズ召喚に成功した時、自分または相手の墓地のモンスター1体を選択し、装備カード扱いとしてこのカードに装備できる。このカードの攻撃力・守備力は、この効果で装備したモンスターのそれぞれの半分の数値分アップする。また、1ターンに1度、このカードのエクシーズ素材を1つ取り除く事で、自分及び相手フィールド上に表側表示で存在するカードを1枚ずつ選択して墓地へ送る。

 

甲虫装機 ギガマンティス 闇属性 ☆6 昆虫族:効果

ATK2400 DEF0

このカードは手札から装備カード扱いとして自分フィールド上の「甲虫装機」と名のついたモンスターに装備できる。このカードが装備カード扱いとして装備されている場合、装備モンスターの元々の攻撃力は2400になる。また、モンスターに装備されているこのカードが墓地へ送られた場合、自分の墓地から「甲虫装機ギガマンティス」以外の「甲虫装機」と名のついたモンスター1体を選択して特殊召喚できる。「甲虫装機ギガマンティス」のこの効果は1ターンに1度しか使用できない。

 

甲虫装機 ギガウイービル 闇属性 ☆6 昆虫族:効果

ATK0 DEF2600

このカードは手札から装備カード扱いとして自分フィールド上の「甲虫装機」と名のついたモンスターに装備できる。このカードが装備カード扱いとして装備されている場合、装備モンスターの元々の守備力は2600になる。また、モンスターに装備されているこのカードが墓地へ送られた場合、自分の墓地から「甲虫装機」と名のついたモンスター1体を選択して特殊召喚できる。「甲虫装機ギガウィービル」のこの効果は1ターンに1度しか使用できない。

 

甲虫装機 アーマイゼ 闇属性 ☆3 昆虫族:効果

ATK200 DEF600

1ターンに1度、自分の手札・墓地から「甲虫装機」と名のついたモンスター1体を装備カード扱いとしてこのカードに装備できる。このカードが装備カード扱いとして装備されている場合、装備モンスターのレベルは3つ上がり、攻撃力・守備力はこのカードのそれぞれの数値分アップする。装備モンスターが破壊される場合、代わりにこのカードを破壊できる。

 

No.20 蟻岩土ブリリアント 光属性 ランク3 昆虫族:エクシーズ

ATK1800 DEF1800

レベル3モンスター×2

1ターンに1度、このカードのエクシーズ素材を1つ取り除いて発動する事ができる。自分フィールド上に表側表示で存在する全てのモンスターの攻撃力は300ポイントアップする。

 

ダメージ・ダイエット:通常罠

このターン自分が受ける全てのダメージは半分になる。また、墓地に存在するこのカードをゲームから除外する事で、そのターン自分が受ける効果ダメージは半分になる。

 

ヴァリュアブル・フォーム:永続罠

1ターンに1度、以下の効果から1つを選択して発動できる。●自分フィールド上の「甲虫装機」と名のついたモンスター2体を選択し、選択したモンスター1体をもう1体のモンスターに装備する。●自分フィールド上の装備カード扱いの「甲虫装機」と名のついたモンスター1体を選択して自分フィールド上に表側守備表示で特殊召喚する。

 

 

甲虫装機 エクサビートル攻撃力1000→2400→3600→3900、ORUなし

No.20 蟻岩土ブリリアント攻撃力1800→2100、ORU×1

 

 

烈震LP5500→3550→2600→1550手札3枚

アイーダLP3200手札3枚

 

 

 戦況は不利だ。布陣は全滅、ライフは風前の灯火。おまけに相手の布陣は強力だ。だが負けるつもりはない。自分のドラゴンの群を前にしても、岡崎は一歩も退かなかった。ならば自分も、この程度で挫けるものか。

 

「さて――――、ここから覆して見せよう」

 

 烈震は、そう不敵に笑った。

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