神々の戦争   作:tuki21

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第51話:繋ぐ道筋

「ぼくのターン! 幻影トークンを攻撃表示に変更し、バトル! 行きなさい、ぼくのモンスターたち!」

 

 平月(ひらつき)の攻撃命令が下る。号令一下、彼のモンスターが一斉に和輝(かずき)のモンスターに殺到する。

 マエストロークの指揮棒(タクト)型の剣が時読みの魔術師を切り裂き、シャドー・リッチの大鎌が慧眼の魔術師を両断し、ブレイクソードの剣が曲芸の魔術師の首を落とした。

 そして極めつけ、ダーク・レクイエム・エクシーズ・ドラゴンが放った紫の光の奔流がオッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴンを飲み込み、消滅させた。

 

「糞ったれ! 補給部隊の効果で一枚ドローだ!」

 

 全滅だ。全て守備表示でP召喚していたので問題ないが、戦況は確実に和輝に不利に働いていた。

 

「最後です。幻影トークンで、岡崎(おかざき)さんにダイレクトアタック!」

 

 がら空きになった和輝のフィールドを、出来損ないの影絵のようなモンスター――幻影トークン――が疾走。鉤爪のように見える右腕らしき部分を振り下ろした。

 

「くっ!」

 

 とっさのバックステップで回避。着地と同時に視線を幻影トークンへ。追撃が来るかと身構えたが、トークンはその場でくるりと反転、ふわふわと浮遊して平月のフィールドに戻っていった。

 

「メインフェイズ2に入ります。ブレイクソードの効果を発動。ORU(オーバーレイユニット)を一つ取り除き、ぼくの場の幻影トークンと、岡崎さんの竜穴の魔術師を破壊します」

 

 ブレイクソードの二度目の効果が発動。翻った剣の一閃が、平月のフィールドの幻影トークンと、和輝のPゾーンにあった竜穴の魔術師を両断、破壊した。

 

「ターン終了です」

 

 

 平月の猛攻により、和輝の壁はあっさりと瓦解した。和輝は苦虫をかみ殺したような表情を浮かべる。

 戦況は、はっきり言って和輝に不利だ。ついにライフは三桁に突入したし、Pスケールも崩された。これでは次のターン、壁を呼んで命をつなぐこともできない。

 絶体絶命の四文字が頭をちらつく。

 それでも和輝は膝を折らない。いつしか口の端に笑みが浮かんだ。

 これはエーデルワイスを不安にさせてはならないという心持に加え、相手に与えるプレッシャーでもある。

 俺はまだ戦える。俺はまだ、力を残しているぞ。そう訴えているかのようだった。

 

 

和輝LP1400→900手札2枚

ペンデュラムゾーン赤:星読みの魔術師、青:なし

場 永続魔法:補給部隊

伏せ なし

 

平月LP5700手札1枚

ペンデュラムゾーン赤:なし青:なし

場 交響魔人マエストローク(攻撃表示、ORU:なし)、幻影騎士団ブレイクソード(攻撃表示、攻撃力2000→3000、ORU:なし)、ダーク・レクイエム・エクシーズ・ドラゴン(攻撃表示、攻撃力3000→5500、ORU:ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン)、No.48 シャドー・リッチ(攻撃表示、ORU:幻影騎士団サイレントブーツ、)、

伏せ なし

 

星読みの魔術師 闇属性 ☆5 魔法使い族:ペンデュラム

ATK1200 DEF2400

Pスケール赤1/青1

P効果

(1):自分のPモンスターが戦闘を行う場合、相手はダメージステップ終了時まで魔法カードを発動できない。(2):もう片方の自分のPゾーンに「魔術師」カードまたは「オッドアイズ」カードが存在しない場合、このカードのPスケールは4になる。

モンスター効果

(1):1ターンに1度、自分フィールドのPモンスター1体のみが相手の効果で自分の手札に戻った時に発動できる。その同名モンスター1体を手札から特殊召喚する。

 

補給部隊:永続魔法

(1):1ターンに1度、自分フィールドのモンスターが戦闘・効果で破壊された場合にこの効果を発動する。自分はデッキから1枚ドローする。

 

交響魔人マエストローク 闇属性 ランク4 悪魔族:エクシーズ

ATK1800 DEF2300

レベル4モンスター×2

1ターンに1度、このカードのエクシーズ素材を1つ取り除き、相手フィールド上に表側攻撃表示で存在するモンスター1体を選択して発動できる。選択したモンスターを裏側守備表示にする。また、このカードがフィールド上に表側表示で存在する限り、自分フィールド上の「魔人」と名のついたエクシーズモンスターが破壊される場合、代わりにそのモンスターのエクシーズ素材を1つ取り除く事ができる。

 

幻影騎士団ブレイクソード 闇属性 ランク3 戦士族:エクシーズ

ATK2000 DEF1000

レベル3モンスター×2

(1):1ターンに1度、このカードのX素材を1つ取り除き、自分及び相手フィールドのカードを1枚ずつ対象として発動できる。そのカードを破壊する。(2):X召喚されたこのカードが破壊された場合、自分の墓地の同じレベルの「幻影騎士団」モンスター2体を対象として発動できる。そのモンスターを特殊召喚する。この効果で特殊召喚したモンスターのレベルは1つ上がる。この効果の発動後、ターン終了時まで自分は闇属性モンスターしか特殊召喚できない。

 

ダーク・レクイエム・エクシーズ・ドラゴン 闇属性 ランク5 ドラゴン族:エクシーズ

ATK3000 DEF2500

レベル5モンスター×3

(1):このカードが「ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン」をX素材としている場合、以下の効果を得る。●1ターンに1度、このカードのX素材を1つ取り除き、相手フィールドの表側表示モンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターの攻撃力を0にし、その元々の攻撃力分このカードの攻撃力をアップする。●相手がモンスターの効果を発動した時、このカードのX素材を1つ取り除いて発動できる。その発動を無効にし破壊する。その後、自分の墓地のXモンスター1体を選んで特殊召喚できる。

 

No.48 シャドー・リッチ 闇属性 ランク3 アンデット族:エクシーズ

ATK1800 DEF0

レベル3モンスター×2

相手ターンに1度、このカードのエクシーズ素材を1つ取り除いて発動できる。自分フィールド上に「幻影トークン」(悪魔族・闇・星1・攻/守500)1体を特殊召喚する。また、自分フィールド上に「幻影トークン」が存在する限り、相手はこのカードを攻撃対象にできない。このカードの攻撃力は、自分フィールド上の「幻影トークン」の数×500ポイントアップする。

 

 

「俺のターンだ、ドロー!」

 

 和輝はドローカードを一瞥で確認。すぐさまそのカードをデュエルディスクにセットした。

 

「闇の誘惑を発動。カードを二枚ドローし、暗黒竜コラプサーペンを除外する。さらに調和の宝札を発動。ガード・オブ・フレムベルを捨てて、二枚ドロー」

 

 立て続けに発動されるドローカード。それだけ和輝が手詰まりであり、逆転のカードを手にしようと足掻いているのが分かった。

 

「ここにきてドローブーストの連続かぁ。残念だ。ここは一発で決めてほしい。そんなに可能性とやらに縋りたいのかね? みっともない。無様だ。醜い。哀れだ。そういうのを、悪あがきというのではないかね?」

 

 ナイアルラトホテップのヤジが飛ぶ。だがエーデルワイスは、ドローして、ドローを積み重ねて、可能性に縋る和輝の姿をみっともないとは思わなかった。

 和輝の目に絶望はない。彼は信じているのだ。可能性を突き詰めていけば、必ず勝利への道筋が見えるのだと。

 勝利。そのために今できる事を精一杯やって、足掻いているその姿を、エーデルワイスはナイアルラトホテップが言うように醜いものだとは思わない。寧ろ、可能性という、先の見えない暗闇に必死に手を伸ばし続けるその姿は勇気に触れていた。

 ひたむきに、ただ前だけを見据えて可能性を掴みにかかり続けるその姿を――――

 

「貪欲な壺発動。墓地のスターダスト、覚醒の魔導剣士、ダンディライオン、相克の魔術師、クリボーンをデッキに戻して二枚ドロー!」

 

 美しいと思った。

 

 

 貪欲な壺によるドローカードを確認し、和輝の動きが止まった。

 静かに目を閉じる。和輝の頭を駆け巡るのは、今の手札で取れる戦術。

 どう展開し、どう攻撃し、相手がどう対処するのかをシミュレーションする。

 こちらの攻撃に対して、相手の防御手段は何か。思考し、想定し、そして確定させる。

 その結果、勝利までたどり着けるか否か。

 勝利は是か非か。

 和輝の結論は、是だった。

 

「さてさてさーて。三連続ドローして、可能性に縋って、果たして勝利への道は見えたかね?」

 

 にやにや笑いで、ナイアルラトホテップが言う。ポップコーンを頬張るその姿に、和輝は不敵な笑みで答えた。

 

「ご期待に応えてやるよ。ここからは俺のステージだ!」

 

 宣言と同時、和輝はデュエルディスクにカードをセットした。

 

「まずは墓地の強欲なカケラとワンダー・ワンドを除外して、黒魔術の継承を発動。デッキから黒の魔導陣を手札に加える。

 そしてペンデュラム・コールを発動! 二枚目の代償の宝札を捨てて、デッキから過去視の魔術師と降竜の魔術師を手札に加える! さらに代償の宝札の効果で二枚ドロー!」

「ほう。ここにきてさらにサーチカードを二連発ですか。おまけに更なるドロー」

 

 顎先に指をあて、鑑賞するかのように平月が言う。ナイアルラトホテップは無言だが、ポップコーンを頬張り、コーラを飲んで興味津々といった風に和輝の一挙手一投足を観察している。まるで面白い映画を鑑賞しているかのようだ。

 和輝はそれらをすべて無視し、手を推し進める。

 

「スケール8の過去視の魔術師を、Pゾーンにセッティング! これで俺は再び、レベル2から7のモンスターを同時に召喚可能となった!」

 

 和輝のPスケールが再び完成する。星読みの魔術師の相方に選ばれたのは、左目に金属製の眼帯をした、黒いローブを身にまとった浅黒い肌の老魔術師。白い髭が口元を隠し、露わになっている銀色の瞳が鋭い眼差しで平月を見据える。

 

 

「振り子は揺れる。避けえぬ宿命を乗せて! 天空に描かれる光のアークが、異界への門へと変じる! ペンデュラム召喚! エクストラデッキから現れろ、オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン、竜穴の魔術師、時読みの魔術師! 手札からはせ参じよ、降竜の魔術師、バスター・ブレイダー!」

 

 天空に描かれた光のアークが、異界への門を作りだす。

 門を通じて現れる五つの光。

 光が晴れた時、そこにはこれまで登場した一体のドラゴンに二体の魔術師に加え、黒鉄(くろがね)色の鎧に身を包んだ竜破壊の剣士と、まるでベルトを紡ぎ合わせたような独特な形状の衣装に、同じく独特な形状の魔女帽子、杖姿の魔術師が現れた。

 平月たちが何かを言うよりも早く、和輝は手を推し進める。もうこれ以上、あのコンビに余計な口は挟ませない。

 

「黒の魔導陣を発動。発動時の効果でデッキトップ三枚を確認する。――――俺は、カードテキストにブラック・マジシャンの表記がある、ティマイオスの眼を手札に加える。

 竜穴の魔術師とバスター・ブレイダーでオーバーレイ! 二体のモンスターで、オーバーレイネットワークを構築! エクシーズ召喚!」

 

 このデュエル初の、和輝によるエクシーズ召喚。和輝の頭上に、平月が何度も展開させた渦巻く銀河を思わせる空間が展開。その空間に、降竜の魔術師が紫の、バスター・ブレイダーが黄色の光になって飛び込んだ。

 

(うつつ)と幻想の操り手よ、色褪せぬ忠義の持ち主よ。今こそ出でよ! 幻想の黒魔導師!」

 

 虹色の爆発が起こり、現れたのはブラック・マジシャンに酷似した、しかしブラック・マジシャンとは違う、青みがかったローブを纏った褐色の肌をした魔導師。その周囲を衛星のように線化する二つの光球は、ORUだ。

 

「幻想の黒魔導師の効果発動! ORUを一つ取り除き、デッキから二枚目のブラック・マジシャンを特殊召喚する!」

「おっと、そうはさせませんよ! ダーク・レクイエム・エクシーズ・ドラゴンの効果発動! ORUを一つ取り除き、幻想の黒魔導師の効果を無効にし、さらに墓地からダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴンを守備表示で特殊召喚します!」

 

 和輝のカードさばきに、平月が待ったをかけた。同時、ダーク・レクイエム・エクシーズ・ドラゴンのステンドグラス状の翼が怪しげな光を放つ。

 光を受けた幻想の黒魔導は苦しげに胸を抑えて呻きだし、やがて硝子が砕けるような音を立てて破壊されてしまった。

 そして破壊された幻想の黒魔導の転生体とでもいうように、平月の墓地から、彼のダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴンが復活してしまった。

 また、補給部隊の効果で、和輝も一枚のドローを得た。

 

「モンスター効果の妨害だけじゃなくて、墓地からのモンスター蘇生効果も持っていたのか……」と苦い表情のロキ。

「俺のエクシーズ召喚は実質無駄うちか」と、同じく表情を歪める和輝。

「貴方の場には黒の魔導陣がある。あれはブラック・マジシャンが場に出るたびに、こちらの戦力を削ってくる。残念ながら、ぼくの場に魔法、罠を除去するカードはありませんので、こうしてブラック・マジシャンを呼び出す危険性のあるモンスター効果を潰させてもらいます」

 

 平月の言うことはもっともだ。みすみすアドバンテージを取られる様なカードを放置はしないだろう。ましてやブラック・マジシャンは和輝のデッキの主力モンスター。このカードの派生やコンボカードがデッキの中枢を担っているのだ。

 だから止めた。その判断は間違ってない。

 だが――――

 

「俺の策は一つじゃねぇんだよ! 墓地の黄泉路の魔術師の効果発動! このカードを除外し、墓地からブラック・マジシャンを特殊召喚! そしてこの瞬間、黒の魔導陣の効果で、ブレイクソードを除外する!」

「ッ!?」

 

 布石はすでに打たれていた。和輝の墓地から復活したブラック・マジシャン。次の瞬間、黒の魔導陣のカードの絵柄にある魔法陣が黒い光を放つ。

 光がどんどん強くなっていき、それが臨界に達した瞬間、平月のフィールドに異変が起こる。ブレイクソードの全身が突如として黒く変色していき、黒が全身を浸食した瞬間、ブレイクソードの体は塵のように崩れ落ちてしまった。

 

「ブレイクソードを……。攻撃力5500のダーク・レクイエム・エクシーズ・ドラゴンは脅威ではないと?」

「さてな。そいつを派手に倒した方が、盛り上がると思ってね。まず一体目だ。次はこいつだ! 手札から魔法カード、ティマイオスの眼を発動! ブラック・マジシャンを墓地に送り、呪符竜(アミュレット・ドラゴン)を融合召喚!

 黒衣の魔術師よ、伝説の竜の力を経て、魔導を司る竜へと変じよ!」

「ならば――――――、ぼくはティマイオスの眼にチェーンし、シャドー・リッチの効果を発動! ORUを一つ使い、幻影トークンを守備表示で特殊召喚します!」

 

 竜の咆哮が轟き渡る。森の中に現れたのは、緑の体躯に金色の魔術文字が浮かぶドラゴンと、その背に跨ったブラック・マジシャン。即ち呪符竜だ。

 

「呪符竜の効果発動。俺とあんたの墓地の魔法カードを全て除外する! 除外した枚数は全部で十二枚。よって呪符竜の攻撃力は1200アップし、4100になる」

「それでもぼくのダーク・レクイエムには及びませんよ?」と平月。

「そうそうその通り! さぁどうするのかねロキの契約者君! 君のステージはここで終わりかね?」とナイアルラトホテップ。どちらも和輝はにやりとした笑みで応じた。

 

「ああ。確かに今のままじゃ、俺のモンスターたちはダーク・リベリオンの進化体には勝てねぇ。だがな――――」

 

 一拍の沈黙。にこやかな笑みを崩さぬ平月に向けて、言い放つ。

 

「なら別のをもってくりゃいい。魔法カード、龍の鏡(ドラゴンズ・ミラー)発動! 場のオッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴンと、墓地の降竜の魔術師を除外融合!」

「これが勝利の鍵ってね!」

 

 和輝のフィールドに、空間の捻じれのような渦が展開され、彼の墓地とフィールドから飛び出した二体のモンスターが、その渦の中心に飛び込んだ。

 

「二色の眼持つ竜よ、竜の魂持つ魔術師よ! 今一つに交わり神秘の瞳持つ魔導竜へと変じよ! 融合召喚、ルーンアイズ・ペンデュラム・ドラゴン!」

 

 渦から現れる新たなモンスター。

 ベースはオッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴンに間違いない。赤を基調にした体躯に、角の代わりに体から金色のリング状のパーツを備え、右目は金属製の眼帯で隠し、首にもリングパーツが追加されている、全体的に、オッドアイズのフォルムよりもスマートな印象を受けた。

 

「ルーンアイズ・ペンデュラム・ドラゴン……。しかも素材に使ったのは――――!」

 

 平月の表情が変わる。にこやかな笑みを消し、険しいものになった。和輝は勝利を確信した笑みを浮かべる。その背後、半透明のロキも同じだ。

 

「バトル! まずは時読みの魔術師で幻影トークンを攻撃。そしてルーンアイズ・ペンデュラム・ドラゴンでダーク・レクイエム・エクシーズ・ドラゴンに攻撃!」

 

 攻撃宣言が下る。一撃目として、時読みの魔術師が放った光弾が幻影トークンを直撃。断末魔さえ上げさせずに消滅させた。

 そして動きだす神秘の眼持つドラゴン。跳躍し、リングパーツの中心部から虹色の光が放たれる。

 

「この瞬間、融合素材となった降竜の魔術師の効果発動! ルーンアイズの攻撃力を倍にする!」

 

 ルーンアイズ・ペンデュラム・ドラゴンの背後の輝きがさらに強くなる。

 虹色の光の奔流が、ダーク・レクイエム・エクシーズ・ドラゴンを飲み込まんと迫る。

 

「そうはさせませんよ。墓地のネクロ・ガードナー効果発動! 自身を除外して、ルーンアイズの攻撃を無効にします!」

「そうはさせねぇ! 過去視の魔術師のP効果発動! 一ターンに一度、相手の墓地で発動する効果を無効にする!」

 

 和輝と平月の攻防はあっけなく集結する。過去視の魔術師の眼光鋭く引かった瞬間、平月の墓地にて今にも効果を発動しようとしていたネクロ・ガードナーの姿が消失。ダーク・レクイエム・エクシーズ・ドラゴンを守る壁が消失した。

 直撃。

 復讐と鎮魂の黒竜の身体に、徐々に罅が入ってくる。罅はどんどん大きくなっていき、やがて全身に至った瞬間、ダーク・レクイエム・エクシーズ・ドラゴンの身体が硝子のように砕け散った。

 

「く……!」

「この程度で終わると思うなよ! レベル5以上の魔法使いを素材にしたルーンアイズは、相手モンスターに三回攻撃が可能となる! 俺はルーンアイズでシャドー・リッチとダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴンを攻撃!」

 

 ルーンアイズの両脇に、先程と同じ虹色の光が収束される。

 光が解き放たれ、虹色の奔流が二連で放たれる。

 光の二連撃が、シャドー・リッチとダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴンを飲み込んだ。

 

「ぐぁ……!」

「おっ。ダメージが通ったね」

「だから、ここで決める! 呪符竜でマエストロークを攻撃!」

 

 神秘眼の魔竜(ルーンアイズ・ペンデュラム・ドラゴン)と入れ替わりに前に出る竜を駆る魔術師(アミュレット・ドラゴン)

 ブラック・マジシャンの杖がマエストロークを指し示す。

 照準完了。次の瞬間、ドラゴンのアギトが開かれ、そこから黄金の奔流が放たれた。

 竜の息吹(ドラゴンブレス)の一撃がマエストロークに直撃する。マエストロークは断末魔の言葉を上げることもできずに消滅した。

 

「ぐ……。がは……!」

 

 連続攻撃によって、ついに平月が膝をついた。だが和輝のフィールドに、もう攻撃可能なモンスターはいない。

 一気呵成の攻めもここまでか。息を呑んで和輝のデュエルを見守っていたエーデルワイスも、彼女の背後で静観していたルーもそう思った。

 そしてそれは、対戦相手の平月とナイアルラトホテップもだった。

 だが和輝だけは違った。そして、彼の契約者であるロキも。

 ここで平月を逃がすという選択肢など、初めからなかったのだ。

 

「逃がさねぇ! 速攻魔法、次元誘爆! ルーンアイズ・ペンデュラム・ドラゴンをエクストラデッキに戻し、除外されている降竜の魔術師とオッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴンを特殊召喚!」

 

 ルーンアイズ・ペンデュラム・ドラゴンの姿が蜃気楼の様に消え去り、代わりに現れたのはルーンアイズの融合素材となったドラゴンと魔法使い。

 これで和輝に攻撃手段が増えた。だがゲームから除外されたモンスターを持っていたのは和輝だけではない。次元誘爆の効果はプレイヤー全てに及ぶ。当然、平月も、除外されているモンスターを特殊召喚する権利を有している。

 

「残念ですが、岡崎さん。貴方の槍が増えても、ぼくの盾も増えるんですよ、次元誘爆の効果で、除外されていたブレイクソードとサイレントブーツを、守備表示で特殊召喚します!」

 

 これで和輝の攻撃手に合わせ、平月の盾も二枚追加。これでは平月のライフを削れない。

 

「残念残念残念だなぁ! これでは君の剣は届かない。何枚も何枚も張られた平月の盾は分厚いぞ!」

 

 

 ナイアルラトホテップの嘲笑が響く。エーデルワイスはそんな中、怯えもせずに和輝の背中に見入っていた。

 不思議な少年だ。自分よりちょっとだけ年上の少年。彼はこんな状況でも諦めを知らず、恐れを知らず、困難に抗い続けた。

 今ならルーの言うこともわかる。これが勇気で、これが、邪悪と戦うということなのだ。

 ああ、ああ。散々逃げてきた私だけれど、今からでも、このように在ることができるだろうか? 彼のように、大切なものを害されまいと、立ちあがれるだろうか?

 

 

「俺の剣が届かない? そんなわけがない。寧ろお前の盾の脆さを心配するんだな! 速攻魔法、エネミーコントローラー! サイレントブーツを攻撃表示に変更する!」

「なんと―――――!?」

 

 これぞ勝利の鍵。コネクターを接続され、コントロールを強制的に奪われたサイレントブーツが攻撃表示に変更させられた。その前に立つ、オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン。

 

「これで終わりだ! オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴンでサイレントブーツを攻撃! オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴンの効果で、あんたへの戦闘ダメージは倍になる!」

 

 無防備なサイレントブーツめがけて放たれる螺旋の炎。一切の停滞がない灼熱の一撃がサイレントブーツを貫き、その背後にいた平月さえも飲み込んでいった。

 4600もの超過ダメージが平月を襲う。

 

「ああああああああああああああ!」

 

 あげられた絶叫は、あたかも断末魔のようだった。

 

 

闇の誘惑:通常魔法

(1):自分はデッキから2枚ドローし、その後手札の闇属性モンスター1体を除外する。手札に闇属性モンスターが無い場合、手札を全て墓地へ送る。

 

調和の宝札:通常魔法

手札から攻撃力1000以下のドラゴン族チューナー1体を捨てて発動できる。デッキからカードを2枚ドローする。

 

貪欲な壺:通常魔法

(1):自分の墓地のモンスター5体を対象として発動できる。そのモンスター5体をデッキに加えてシャッフルする。その後、自分はデッキから2枚ドローする。

 

黒魔術の継承:速攻魔法

「黒魔術の継承」は1ターンに1枚しか発動できない。(1):自分の墓地から魔法カード2枚を除外して発動できる。「黒魔術の継承」以外の、「ブラック・マジシャン」のカード名または「ブラック・マジシャン・ガール」のカード名が記された魔法・罠カード1枚をデッキから手札に加える。

 

ペンデュラム・コール:通常魔法

「ペンデュラム・コール」は1ターンに1枚しか発動できず、「魔術師」PモンスターのP効果を発動したターンには発動できない。(1):手札を1枚捨てて発動できる。カード名が異なる「魔術師」Pモンスター2体をデッキから手札に加える。このカードの発動後、次の相手ターン終了時まで自分のPゾーンの「魔術師」カードは効果では破壊されない。

 

代償の宝札:通常魔法

(1):手札からこのカードが墓地に送られた時に発動する。カードを2枚ドローする。

 

オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン 闇属性 ☆7 ドラゴン族:ペンデュラム

ATK2500 DEF2000

Pスケール赤4/青4

P効果

「オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン」の(1)(2)のP効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。(1):自分のPモンスターの戦闘で発生する自分への戦闘ダメージを0にできる。(2):自分エンドフェイズに発動できる。このカードを破壊し、デッキから攻撃力1500以下のPモンスター1体を手札に加える。

モンスター効果

(1):このカードが相手モンスターと戦闘を行う場合、このカードが相手に与える戦闘ダメージは倍になる。

 

時読みの魔術師 闇属性 ☆3 魔法使い族:ペンデュラム

ATK1200 DEF600

Pスケール赤8/青8

P効果

自分フィールドにモンスターが存在しない場合にこのカードを発動できる。(1):自分のPモンスターが戦闘を行う場合、相手はダメージステップ終了時まで罠カードを発動できない。(2):もう片方の自分のPゾーンに「魔術師」カードまたは「オッドアイズ」カードが存在しない場合、このカードのPスケールは4になる。

モンスター効果

(1):このカードがモンスターゾーンに存在する限り、1ターンに1度、自分のPゾーンのカードは相手の効果では破壊されない。

 

竜穴の魔術師 水属性 ☆7 魔法使い族:ペンデュラム

ATK900 DEF2700

Pスケール赤8青8

P効果

(1):1ターンに1度、もう片方の自分のPゾーンに「魔術師」カードが存在する場合、手札のPモンスター1体を捨て、フィールドの魔法・罠カード1枚を対象として発動できる。そのカードを破壊する。

モンスター効果

なし

 

バスター・ブレイダー 地属性 ☆7 戦士族:効果

ATK2600 DEF2300

(1):このカードの攻撃力は、相手のフィールド・墓地のドラゴン族モンスターの数×500アップする。

 

降竜の魔術師 闇属性 ☆7 魔法使い族:ペンデュラム

ATK2400 DEF1000

Pスケール赤2青2

P効果

(1):1ターンに1度、フィールドの表側表示モンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターの種族は相手ターン終了時までドラゴン族になる。

モンスター効果

(1):1ターンに1度、自分メインフェイズに発動できる。このカードの種族はターン終了時までドラゴン族になる。(2):フィールドのこのカードを素材として融合・S・X召喚したモンスターは以下の効果を得る。●このカードがドラゴン族モンスターと戦闘を行うダメージステップの間、このカードの攻撃力は元々の攻撃力の倍になる。

 

黒の魔導陣:永続魔法

「黒の魔導陣」の(1)(2)の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。(1):このカードの発動時の効果処理として、自分のデッキの上からカードを3枚確認する。その中に、「ブラック・マジシャン」のカード名が記された魔法・罠カードまたは「ブラック・マジシャン」があった場合、その1枚を相手に見せて手札に加える事ができる。残りのカードは好きな順番でデッキの上に戻す。(2):自分フィールドに「ブラック・マジシャン」が召喚・特殊召喚された場合、相手フィールドのカード1枚を対象として発動できる。そのカードを除外する。

 

幻想の黒魔導師 闇属性 ランク7 魔法使い族:エクシーズ

ATK2500 DEF2100

レベル7モンスター×2

このカードは自分フィールドのランク6の魔法使い族Xモンスターの上に重ねてX召喚する事もできる。「幻想の黒魔導師」の(2)の効果は1ターンに1度しか使用できない。(1):1ターンに1度、このカードのX素材を1つ取り除いて発動できる。手札・デッキから魔法使い族の通常モンスター1体を特殊召喚する。(2):魔法使い族の通常モンスターの攻撃宣言時、相手フィールドのカード1枚を対象として発動できる。そのカードを除外する。

 

黄泉路の魔術師 闇属性 ☆4 魔法使い族:効果

ATK1700 DEF1600

「黄泉路の魔術師」の効果は1ターンに1度しか使えない。(1):墓地のこのカードを除外して発動できる。自分の墓地から魔法使い族モンスター1体を特殊召喚する。

 

ブラック・マジシャン 闇属性 ☆7 魔法使い族:通常モンスター

ATK2500 DEF2100

 

ティマイオスの眼:通常魔法

このカードのカード名はルール上「伝説の竜 ティマイオス」としても扱う。「ティマイオスの眼」は1ターンに1枚しか発動できない。(1):自分フィールドの「ブラック・マジシャン」モンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターを融合素材として墓地へ送り、そのカード名が融合素材として記されている融合モンスター1体をエクストラデッキから融合召喚する。

 

呪符竜 闇属性 ☆8 ドラゴン族:融合

ATK2900 DEF2500

「ブラック・マジシャン」+ドラゴン族モンスター

このカードは上記カードを融合素材にした融合召喚または「ティマイオスの眼」の効果でのみ特殊召喚できる。(1):このカードが特殊召喚に成功した場合、自分・相手の墓地の魔法カードを任意の数だけ対象として発動する。そのカードを除外し、このカードの攻撃力はその除外したカードの数×100アップする。(2):このカードが破壊された場合、自分の墓地の魔法使い族モンスター1体を対象として発動できる。その魔法使い族モンスターを特殊召喚する。

 

龍の鏡:通常魔法

(1):自分のフィールド・墓地から、ドラゴン族の融合モンスターカードによって決められた融合素材モンスターを除外し、その融合モンスター1体をエクストラデッキから融合召喚する。

 

ルーンアイズ・ペンデュラム・ドラゴン 闇属性 ☆8 ドラゴン族:融合

AT3000 DEF2000

「オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン」+魔法使い族モンスター

(1):このカードは、「オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン」以外の融合素材としたモンスターの元々のレベルによって以下の効果を得る。●レベル4以下:このカードは1度のバトルフェイズ中に2回までモンスターに攻撃できる。●レベル5以上:このカードは1度のバトルフェイズ中に3回までモンスターに攻撃できる。(2):フィールドのP召喚されたモンスターを素材としてこのカードが融合召喚に成功したターン、このカードは相手の効果を受けない。

 

過去視の魔術師 闇属性 ☆4 魔法使い族:ペンデュラム

ATK1800 DEF900

Pスケール:赤8/青8

P効果

(1):1ターンに1度、相手が墓地からモンスター効果を発動した時に発動できる。その効果を無効にし、ゲームから除外する。

モンスター効果

(1):このカードが手札からのP召喚に成功した場合、自分の墓地のPモンスター1体を対象に発動できる。対象モンスターを手札に加える。

 

次元誘爆:速攻魔法

自分フィールド上に表側表示で存在する融合モンスター1体を融合デッキに戻す事で発動する事ができる。お互いにゲームから除外されているモンスターを2体まで選択し、それぞれのフィールド上に特殊召喚する。

 

平月LP5700→5200→4000→1600→0

 

 

 デュエルの決着がつき、バトルフィールドが解除される。

 和輝たちは元のウェールズの森に戻ったことを確認し、倒れ伏したままの平月に歩み寄る。うつ伏せに倒れているので、宝珠が砕かれているのか確認できないため、じかに確認しようと思ったためだ。

 

「どうだロキ? 宝珠は割れているか?」

「さてどうだろう。ナイアルラトホテップの気配は感じないけれど、化身の多いあいつは元々気配を消すことに長けてるからなぁ」

 

 ぼやきつつ、ロキは平月の身体を「よっこらせ」と仰向けに変える。

 ゴロンと仰向けになった平月の身体。その顔が――――()()()()()()()

 

「え?」

「は?」

 

 困惑の和輝とロキ。だが変化はさらに続く。

 顔のない平月の身体が、次第に纏っていた衣服ごとドロドロと溶けだしていくではないか。

 

「これは――――」

「化身、だったのか?」

 

 驚いたのは和輝たちだけではなく、エーデルワイスやルーも同じだった。

 

「ハハハハハハハハ!」

 

 どこからともなく轟く哄笑は、ナイアルラトホテップのもの。

 声は続く。

 

「見事! 見事なり! だが残念。今君が倒した平月は平月にあらず! 化身に彼のガワをかぶせて遠距離から操作していたのさ! だが楽しめた。実に楽しめた! そしてここまでだ! ここは退こう! そして君たちはバロールと相対するだろう! せいぜい綺麗で魅力的で、どこか妖しげなマーブル模様を作りだしてくれたまえ!」

 

 ナイアルラトホテップの哄笑はそれっきり終わった。後には奇妙な静寂だけが残った。

 そんな中、いち早く立ち直ったのは和輝だった。

 思考をこの後のバロール戦へと切り替える。

 そう、平月との戦いはいわば余計な寄り道だったのだ。本命はまだ控えている。

 ケルトの邪神、バロール。直死の魔眼を持つこの魔神を打ち倒さなければ、この森に安息はない。

 

「行こう。バロールの許へ――――ッ!?」

 

 進もうとした時だった、和輝の全身に痺れるような痛みが走った。

 

「何……?」

 

 思わず膝をつく和輝。心配そうに駆け寄るエーデルワイス。その耳朶に、去ったはずのナイアルラトホテップの声が聞こえた。

 

「ああ、ああ、ああ! 言い忘れていたが、ロキの契約者君。君が喰らった闇のカードは特に力が強い一枚だ。デュエルが終わったくらいで回復はしないよ」

 

 置き土産のようなナイアルラトホテップの言葉。和輝は体中に力を込めて何とか立ち上がる。

 デュエル終了後、思いだしたかのように断続的なダメージが体を縛る。さらに麻痺したみたいに痺れが続いている。この状態でもう一戦は辛い。

 だがやるしかない。バロールを倒さない限り、クリノが危険にさらされる。

 

「じっとしていてください、岡崎さん」

 

 と、和輝が悲壮な覚悟を決めている傍らで、エーデルワイスが彼の肩をそっと抑えた。

 

「コナーさん?」

「お願いです。少し、じっとしていてください」

「あ、ああ」

 

 言われた通りじっとする和輝。エーデルワイスが目を瞑り、祈るように和輝の身体に手を添える。

 するとどうしたことか。和輝の身体に接触していたエーデルワイスの掌が、ほのかに光り始めたではないか。

 驚いた和輝の眼前で見られる輝きは、優しげな陽光に似ていた。

 そしてさらに驚いたことに、全身の痛みが徐々に引いていったのだ。

 

「これは……」

「治癒能力です。私が授かった、神の力」

 

 確かにこれで体は多少楽になった。だが痛みは引いても痺れは取れない。依然不利なのは間違いないが、さっきまでと比べればだいぶマシだ。

 

「助かった。これなら――――」

 

 戦える。そう言おうとした和輝を遮って、エーデルワイスが言った。

 

「岡崎さん、お願いがあるんです」

 

 そして少女は口にする。己の決意を。胸に秘めた、この思いを。

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