神々の戦争   作:tuki21

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第57話:横浜竜決戦

 十六年前。

 李趙鮮(りちょうせん)がその声を聴きつけたのは本当に偶然だった。

 当時彼女は人里離れた中国の山奥で暮らしており、そんなところにはありえない声だった。

 赤ん坊の泣き声だった。

 当時を振り返って、趙鮮が思うことは、この泣き声は母恋しさに、寂しさに泣いているのではない。生きたいと願い、自分はここにいるのだと誰かに知らせるためのものだったと、そう思っている。

 だから声のする方に歩いていき、そして見つけた。

 毛布にくるまれて、泣き続ける赤ん坊。

 赤ん坊の素性を示すものは何もなかった。ただ、赤ん坊は日本人らしいこと。前日に麓の村に日本人の女が滞在しており、早朝に立ち去ったのだということ。そしてその女は、確かに赤ん坊を連れていたこと。それらを根拠に、その女が捨てた赤ん坊だろうと結論付け、その女のの苗字、黒神(くろかみ)をもらい、名前は師父と相談して、烈震(れっしん)とつけた。

 日本人である烈震が生きていけるように、趙鮮と師父は武術を教えた。

 食事を管理し、日々のスケジュールを管理し、徹底的に肉体を作り上げた。

 烈震は一言も弱音を吐かなかった。ただ黙々と、水を吸う布のように、教えた武を吸収していった。

 烈震は強くなった。そしてただただストイックに強さを求め続けた。

 師父が病死した後も、それは変わらなかった。勉学に打ち込んでも、彼の基本は武術にあり、己を強くすることにあったと、趙鮮はそう見ている。

 

「そして烈震は、今では神々の戦争と言う超常の戦いに繰り出した……」

 

 一人。隠れ家の安アパートの一室で、趙鮮は誰にともなくそう呟いて、咥えていた煙管を離して、肺いっぱいに溜め込んだ紫煙を吐き出した。

 紫煙をくゆらせて、趙鮮は退廃的な雰囲気を纏う。

 

「烈震。お前が強くなったのは生きるためか? それとも、師父や私に、筋がいいと褒められたからか? どちらにせよ、一途というか、愚直というか……。難儀だよお前は。本当に……」

 

 誰もいない一室で、趙鮮はそう言い果てて、新たな紫煙を吐き出した。

 

 

 

 

 

◆◆◆◆◆◆

 

 

 

 

 

 横浜中華街。夜のバトルフィールド内で、誰もない戦場で、烈震と小雪(シャオシュエ)は対峙していた。

 

「黒髪烈震だ」

「くろかみか。覚えたぞ」

 

 互いに名乗りは上げた。胸元の宝珠を輝かせて。既に準備は万端。あとは雌雄を決するのみ。

 

 

烈震LP8000手札5枚

小雪LP8000手札5枚

 

 

(オレ)の先攻。永続魔法、天輪(てんりん)の鐘楼を発動」

 発動された永続魔法。烈震のフィールドには、下半身と両腕が鐘楼になっている少女像が出現する。これは(シンクロ)召喚が行われる度、そのプレイヤーに一枚ドローの恩恵を与える永続魔法だ。TG(テックジーナス) ハイパー・ライブラリアンと違い、相手にも恩恵を与えてしまうのが難点だが、烈震のデッキの回転数を上げる重要なカードでもある。

 

「飛ばすな、烈震」と半透明のトール。そういえばと彼は言葉を紡ぐ。

「ここに殴り込む前に趙鮮の姉ちゃんからカードもらったろ? あれデッキに入れたんか?」

「ああ。使う機会があるかどうかわからないがな。決まれば悪くないカードだ。

 ――――クリッターを召喚。さらに速攻魔法、緊急テレポートを発動し、デッキからクレボンスを特殊召喚する」

 

 烈震のフィールドに現れる二体のモンスター。三つ目の悪魔と、目を隠し、道化じみた笑いを浮かべるサイキックモンスター。早速烈震のフィールドにチューナーと非チューナーが揃った。

 

「レベル3のクリッターに、レベル2のクレボンスをチューニング」

 

 烈震の太い右腕が天へと(かざ)される。彼の頭上、星空の下で二つの緑の光輪となるクレボンス。その輪をくぐったクリッターが、三つの白い光星へと変じる。

 

「連星集結、輪廻流転。シンクロ召喚、生命(いのち)を紡げ、転生竜サンサーラ」

 

 光が辺りに満ちて、現れたのは紫の体躯をし、その身に生命の鼓動を宿した翼竜型ドラゴンモンスター。破壊された際に効果を発動し、墓地から新たなモンスターを蘇生させる、ステータスも効果も守備的なモンスター。当然守備表示でのS召喚だ。

 まずは様子見、というところか。

 

「天輪の鐘楼の効果で一枚ドロー。さらにクリッターの効果で、デッキからジャンク・シンクロンを手札に加える。カードを二枚セットし、ターンエンドだ」

 

 

天輪の鐘楼:永続魔法

「天輪の鐘楼」はフィールドに1枚しか表側表示で存在できない。(1):自分または相手がS召喚に成功した場合に発動できる。そのプレイヤーはカードを1枚ドローする。

 

クリッター 闇属性 ☆3 悪魔族:効果

ATK1000 DEF600

このカード名の効果は1ターンに1度しか使用できない。(1):このカードがフィールドから墓地へ送られた場合に発動する。デッキから攻撃力1500以下のモンスター1体を手札に加える。このターン、自分はこの効果で手札に加えたカード及びその同名カードの発動ができない。

 

緊急テレポート:速攻魔法

(1):手札・デッキからレベル3以下のサイキック族モンスター1体を特殊召喚する。この効果で特殊召喚したモンスターは、このターンのエンドフェイズに除外される。

 

クレボンス 闇属性 ☆2 サイキック族:チューナー

ATK1200 DEF400

このカードが攻撃対象に選択された時、800ライフポイントを払って発動できる。その攻撃を無効にする。

 

転生竜サンサーラ 闇属性 ☆5 ドラゴン族:シンクロ

ATK100 DEF2600

チューナー+チューナー以外のモンスター1体以上

「転生竜サンサーラ」の効果は1ターンに1度しか使用できない。(1):フィールドのこのカードが相手の効果で墓地へ送られた場合、または戦闘で破壊され墓地へ送られた場合、「転生竜サンサーラ」以外の自分または相手の墓地のモンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターを特殊召喚する。

 

 

「わたしのターンだな。ドローするぞ」

 

 ターンは烈震から小雪に移る。彼女の耳に、半透明になった西王母(セイオウボ)の声が届いた。

 

虎虎(ココ)……。どうやら相手もまた、シンクロ使いの様子。これは好都合だわいな」

「うん。楽しくなりそうだ。わたしは手札の炎竜星―シュンゲイを捨てて、ワン・フォー・ワン発動。デッキから光竜星―リフンを特殊召喚するぞ」

 

 現れたのは、白地に金の縁取りの体躯を持つ、シャチホコみたいな外見をしたモンスター。見た目はドラゴン族に近いが、違う。

 ドラゴンより一段高みに至った種族、幻竜族だ。

 

「竜星、か……」

 

 小さく呟く烈震。そのまま頭の中で検索をかけてみる。

 ヒット。全てのカードを知っているわけではないが、カテゴリーの特徴は破壊されたことをトリガーに下リクルートや相手ターンでのS召喚など、転んでもただでは起きないカテゴリーだった。

 

「メンドクセー奴らってことか」

 

 半透明のトールの台詞は実際その通りだが、あまりにも飾らない。もっとも、烈震はこの好戦的で大雑把な神の性格を好んでいるが。

 

「死者蘇生を発動。墓地のシュンゲイを特殊召喚するぞ」

 

 金色のシャチホコ幻竜の傍らに現れたのは、獅子のような頭と(たてがみ)を持った赤い体躯の幻竜族。

 

「行くぞ! くろかみ! レベル4のシュンゲイに、レベル1のリフンをチューニング!」

 

 右手を勢いよく天へと掲げる小雪。彼女の頭上で、先ほどのターンの烈震の行動の焼廻しが起こる。

 一つの緑の輪、そして四つの白い光星。それらが光の道に貫かれる。

 

「天に輝く五つ星。集って混ざって上下に意思伝える咆竜とならん。星よ、堕ちよ。シンクロ召喚、源竜星―ボウテンコウ!」

 

 光の帳の向こうから現れたのは、金色に鈍く輝く体を持つ、狛犬のような幻竜族モンスター。攻撃力は0だがその分守備力が高い。さらにシンクロチューナーという特色を考えれば、さらなる展開をしてくると予想できた。

 

「S素材になったシュンゲイの効果で、ボウテンコウの攻守500アップ。さらにボウテンコウの特殊召喚に成功したから、効果が発動するぞ。デッキから竜星の具象化を手札に加えるぞ。あ、忘れるところだった。鐘楼の効果で、わたしも一枚ドローだ」

虎虎(ココ)。そちのおかげで小雪は手札が増強で来た。礼を言うぞ」

 

 西王母のあからさまな挑発。烈震は無言。もとより相手にもメリットがあることは承知の上で、天輪の鐘楼を発動したのだ。ドローしたければすればいい。相手が駆使する戦術を、此方のドラゴンが蹴散らす。烈震はいつだってそうしてきたし、これからもそうするつもりだ。

 

「水竜星―ビシキを召喚。そしてレベル2のビシキに、レベル5のボウテンコウをチューニング!

 ――――天に輝く七つ星。集って混ざって凶暴極まる殺戮竜とならん。星よ、堕ちよ。シンクロ召喚、邪竜星―ガイザー!」

 

 新たに現れたのは、紫色の体躯をした見るからに凶暴で禍々しい幻竜族。攻撃力は2600。レベル7のSモンスターとしては合格点。だが烈震のサンサーラの守備力と同じ。これでは破壊できない。

 

「鐘楼の効果で一枚ドロー。ボウテンコウの効果で、デッキから秘竜星-セフィラシウゴを特殊召喚するぞ」

「フィールドを離れただけでデッキから特殊召喚。おまけに特殊召喚だけでサーチ、だと? なんという効果を詰め込んだモンスターだ……」

「凄いだろ? 竜星の回転エンジンだぞ。ここで、ガイザーの効果発動だ。わたしの場のセフィラシウゴと、おまえの場に伏せてあるカード、わたしから見て左側のカードを破壊する」

「スクラップ・ドラゴンと同じ効果か……」

「自分の対象が竜星族で限定されてしまっているけどな。さ、いけ、ガイザー。同胞を喰らって敵に害を成せ」

 

 パチンと小雪が指を鳴らすと、それを合図としたガイザーが咆哮を上げる。

 まず、先程特殊召喚されたばかりのセフィラシウゴをその手で鷲掴みにし、大口を開ける。

 次の瞬間に起こることは予定調和だ。ガイザーがその牙をセフィラシウゴに突き立て、同胞の肉を引き千切る。

 セフィラシウゴを喰らってエネルギーに変換。そのままに解き放つ。

 解き放たれたエネルギーは紫色の怨霊弾と化し、烈震が伏せていた次元幽閉を吹き飛ばす。

 

「……次元幽閉ならば、竜星のリクルート効果を抑制できると思ったが……。無駄だったか」

「もともとガイザーは相手カードの対象にならないから、無駄だぞ。そして、(ペンデュラム)モンスターのセフィラシウゴは表側のままエクストラデッキに行く。

 永続魔法、竜星の気脈発動。わたしの墓地には二種類以上の竜星がいるから、竜星の攻撃力は500アップ。バトルだ。ガイザーでサンサーラを攻撃」

 

 今やガイザーの攻撃力は3100。烈震の伏せカードは沈黙し、邪竜の爪の一撃を受けたサンサーラは断末魔の咆哮を上げながら引き裂かれた。

 

「この瞬間、サンサーラの効果発動。墓地からクリッターを守備表示で特殊召喚する」

 

 サンサーラの命が輪廻の輪に加わり、流転し転生する。墓地から復活したのはサーチ効果を持つ三つ目悪魔。烈震も、転んでもただでは起きない。

 

「カードを二枚セットして、ターン終了」

 

 

ワン・フォー・ワン:通常魔法

(1):手札からモンスター1体を墓地へ送って発動できる。手札・デッキからレベル1モンスター1体を特殊召喚する。

 

光竜星―リフン 光属性 ☆1 幻竜族:チューナー

ATK0 DEF0

「光竜星-リフン」の(1)(2)の効果は1ターンに1度、いずれか1つしか使用できない。(1):自分フィールドのこのカードが戦闘・効果で破壊され墓地へ送られた時に発動できる。デッキから「光竜星-リフン」以外の「竜星」モンスター1体を特殊召喚する。(2):このカードが墓地に存在し、自分フィールドの「竜星」モンスターが戦闘・効果で破壊され墓地へ送られた時に発動できる。このカードを墓地から特殊召喚する。この効果で特殊召喚したこのカードは、フィールドから離れた場合除外される。

 

死者蘇生:通常魔法

(1):自分または相手の墓地のモンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターを自分フィールドに特殊召喚する。

 

炎竜星―シュンゲイ 炎属性 ☆4 幻竜族:効果

ATK1900 DEF0

「炎竜星-シュンゲイ」の(1)の効果は1ターンに1度しか使用できない。(1):自分フィールドのこのカードが戦闘・効果で破壊され墓地へ送られた時に発動できる。デッキから「炎竜星-シュンゲイ」以外の「竜星」モンスター1体を守備表示で特殊召喚する。(2):1ターンに1度、相手のメインフェイズ及びバトルフェイズに発動できる。自分フィールドの「竜星」モンスターのみをS素材としてS召喚する。(3):このカードをS素材としたSモンスターは、攻撃力・守備力が500アップする。

 

源竜星―ボウテンコウ 光属性 ☆5 幻竜族:シンクロチューナー

ATK0 DEF2800

チューナー+チューナー以外のモンスター1体以上

自分は「源竜星-ボウテンコウ」を1ターンに1度しか特殊召喚できない。

(1):このカードが特殊召喚に成功した場合に発動できる。デッキから「竜星」カード1枚を手札に加える。(2):1ターンに1度、デッキから幻竜族モンスター1体を墓地へ送って発動できる。このカードのレベルは、墓地へ送ったモンスターと同じになる。(3):表側表示のこのカードがフィールドから離れた場合に発動できる。デッキから「竜星」モンスター1体を特殊召喚する。

 

水竜星―ビシキ 水属性 ☆2 幻竜族:効果

「水竜星-ビシキ」の(1)の効果は1ターンに1度しか使用できない。

(1):自分フィールドのこのカードが戦闘・効果で破壊され墓地へ送られた時に発動できる。デッキから「水竜星-ビシキ」以外の「竜星」モンスター1体を攻撃表示で特殊召喚する。(2):1ターンに1度、相手のメインフェイズ及びバトルフェイズに発動できる。自分フィールドの「竜星」モンスターのみをS素材としてS召喚する。(3):このカードをS素材としたSモンスターは、罠カードの効果を受けない。

 

邪竜星―ガイザー 闇属性 ☆7 幻竜族:シンクロ

ATK2600 DEF2100

チューナー+チューナー以外のモンスター1体以上

「邪竜星-ガイザー」の(2)(3)の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。

(1):このカードは相手の効果の対象にならない。(2):自分フィールドの「竜星」モンスター1体と相手フィールドのカード1枚を対象として発動できる。そのカードを破壊する。(3):自分フィールドのこのカードが戦闘・効果で破壊され墓地へ送られた時に発動できる。デッキから幻竜族モンスター1体を守備表示で特殊召喚する。

 

秘竜星-セフィラシウゴ 地属性 ☆6 幻竜族:ペンデュラム

ATK0 DEF2600

Pスケール赤7/青7

P効果

(1):自分は「竜星」モンスター及び「セフィラ」モンスターしかP召喚できない。この効果は無効化されない。

モンスター効果

「秘竜星-セフィラシウゴ」のモンスター効果は1ターンに1度しか使用できない。(1):このカードがP召喚に成功した時、または自分のモンスターゾーンのこのカードが戦闘・効果で破壊された時に発動できる。デッキから「竜星」魔法・罠カードまたは「セフィラ」魔法・罠カード1枚を手札に加える。

 

竜星の気脈:永続魔法

(1):自分の墓地の「竜星」モンスターの属性の種類の数によって以下の効果を得る。

●2種類以上:自分フィールドの「竜星」モンスターの攻撃力は500ポイントアップする。

●3種類以上:自分フィールドの「竜星」モンスターが戦闘・効果で破壊される場合、代わりにこのカードを墓地へ送る事ができる。

●4種類以上:相手はモンスターをセットできず、相手フィールドの表側表示モンスターは全て攻撃表示になる。

●5種類以上:このカードを墓地へ送って発動できる。フィールドのカードを全て破壊する。

 

 

邪竜星―ガイザー攻撃力2600→3100

 

 

「己のターンだ。ドロー」

「あの嬢ちゃんも回してきたな」

「ああ。だが己も止まらん。リバーストラップ、強化蘇生発動。墓地のクレボンスをレベルとステータスをアップさせて特殊召喚する。さらに墓地からモンスターの特殊召喚に成功したため、手札のドッペル・ウォリアーを、自身の効果により特殊召喚する」

 

 まず烈震のフィールドに現れたのは、先程も登場したチューナーと、和輝(かずき)もよく使う戦士族モンスター。

 野戦服姿にボーガンに似たライフル装備の兵士(ソルジャー)。即ちドッペル・ウォリアー。

 

「レベル3のクリッターに、レベル3となったクレボンスをチューニング。

 連星集結、赤翼咆哮。シンクロ召喚。猛れ、レッド・ワイバーン!」

 

 現れたのは、炎の冠のようなトサカと翼を持った翼竜。その名の通り赤い体躯をし、身を逸らして夜空を彩る。

 

「天輪の鐘楼によって一枚ドロー。クリッターの効果により、デブリ・ドラゴンをサーチ。レッド・ワイバーン効果発動」

「よっし! レッド・ワイバーンの効果はフィールドで最も攻撃力の高いモンスターを破壊する! こいつは対象を取らないから、ガイザーの耐性も意味をなさないぜ!」

「そういうことだ。行け、レッド・ワイバーン!」

 

 烈震の咆哮のような命令が轟き、レッドワイバーンが答える。

 翼竜の咆哮。大気を震わせる衝撃とともに放たれた炎の一撃がガイザーを直撃。包み込んで焼き尽くし、その際の圧倒的な熱量が周囲のビルの窓ガラスを割り、破片を雪のように降らせた。

 月明かりに反射するガラスの破片群。幻想的だが危険な光景の、その直前、小雪は動いていた。

 

「レッド・ワイバーンの効果にチェーンだ。流星の具象化!」

 

 小雪の足元に伏せられた二枚のカードのうち、一枚が翻る。が、それだけだ。何のエフェクトもフィールドに現れていない。

 直後に炎がガイザーを焼き尽くす。……小雪の望んだ通りに。

 

「ガイザーの効果発動。それにチェーンして具象化の効果発動だ。まず具象化の効果で魔竜星―トウテツを、その後ガイザーの効果で宝竜星-セフィラフウシを、それぞれデッキから特殊召喚するぞ」

 

 沈黙を保っていた小雪の永続罠が効果を発動。ガイザー自身のリクルート効果と合わせて、一気に二体の流星が小雪のフィールドに現れる。

 一体目。赤い紋様の入った黒い体躯。四本脚に二本の腕と、ドラゴンとケンタウロスを掛け合わせたような姿。全体に“魔”を漂わせた幻竜族。即ち魔竜星―トウテツ。

 二体目。石造のような灰色の体。そこだけ生物的な白い両翼の幻竜。即ち宝竜星―セフィラフウシ。

 

「セフィラフウシの効果で、トウテツをチューナー化するぞ」

「おい烈震。オレ達はさっき一体倒したはずなのに、なんか二体に増えてんぞ。目の錯覚か?」

「現実だ。トール。己の目にも一体倒したら二体出てきた。リクルーターが主体なのだ。仕方がない。気にせず行くとしよう。一体ずつ潰していけばやがて零になる。

 ジャンク・シンクロン召喚。効果でクレボンスを特殊召喚。レベル2のドッペル・ウォリアーに、レベル2のクレボンスをチューニング」

 

 楽し気に烈震の様子を見守る小雪を無視し、烈震は己の戦術を展開する。

 二度目のS召喚のエフェクトが走り、光が辺りを照らし上げる。

 

「連星集結、魔剣士出現。シンクロ召喚、出でよ魔界闘士バルムンク!」

 

 光の向こうから現れる鎧状の黒い皮膚にマント姿、剣を備えた剣士。だがこれもまた、次なるシンクロのステップに過ぎない。

 バルムンクの傍らに、現れたのはドッペル・ウォリアーをデフォルメし、ミニマムにしたようなモンスターが二体。即ちドッペルトークン。

 

「天輪の鐘楼の効果で一枚ドロー」

「まだだ! いったれ烈震!」

「分かっている。レベル4のバルムンクとレベル1のドッペルトークンに、レベル3のジャンク・シンクロンをチューニング」

「三連続シンクロか!」

「ほう、こ奴、なかなかやりおるの」

 

 驚き、そしてどこか楽し気な雰囲気の小雪と西王母のコンビ。彼女たちはこの戦いを心底から楽しんでいる。命もかかっているのに。

 だがそれは、この場を修行と感じている自分も同じかと、烈震は内心で自重した。

 

「連星集結、廃棄竜起動。シンクロ召喚、出でよスクラップ・ドラゴン!」

 

 起動音とともに現れるは、廃材を組み合わせて出来上がった異形のドラゴン。赤く輝く発光体の双眸が小雪を睨み、どこか軋んだ咆哮が無人の横浜の夜に轟く。

 

「おー、三連続! すごいな!」

「その三連続の成果が、お前に牙を剥くのだ。まずは鐘楼の効果で一枚ドロー。スクラップ・ドラゴン、効果発動。己のドッペルトークンと、お前の伏せカードを破壊する」

 

 スクラップ・ドラゴンがその身にドッペルトークンを取り込み、体内で砲弾として成形、口腔から射出する。

 砲撃は大気の壁を突き破り、衝撃波(ソニックブーム)で周囲の電柱や無人の車を薙ぎ倒しながら小雪の伏せカードの向かって驀進する。

 

「対象となった竜魂の幻泉をチェーン発動だ。墓地のボウテンコウを復活させる」

虎虎(ココ)! これはこれは、厄介なものを踏んでしまったな。小僧っ子」

 

 険しい表情の烈震は何も言わない。トールもまた、歯噛みこそすれやはり何も言わない。今何を言っても意味はないからだ。

 復活するボウテンコウ。その際の効果が発動し、小雪はデッキから竜星の軌跡をサーチ。直後、スクラップ・ドラゴンが放った“砲弾”が竜魂の幻泉を破壊。轟音と共に永続罠が破壊され、対象となっていたボウテンコウも竜魂の幻泉の効果によって、破壊される。

 ()()()()()()()()()()()()()()()。当然効果が発動する。そしてもう一枚も。

 

「ボウテンコウの効果発動だが、今回はそれだけではないぞ。ボウテンコウの効果にチェーンして、墓地のリフンの効果も発動だ! わたしの場の竜星が戦闘やカード効果で破壊されたため、このカードを特殊召喚するぞ! さらにボウテンコウの効果で、デッキから二枚目のシュンゲイを特殊召喚だ」

「ぬぅ……!」

 

 烈震の表情が寄り険しくなる。カードを一枚破壊すれば相手モンスターが増えた。これが何度も続くのであれば、確かに鬱陶しい。

 

「だが進むしかない。己のやることは変わらない。バトルフェイズだ。レッド・ワイバーンでリフンを攻撃!」

 

 攻撃宣言が下る。同時、赤き翼竜が咆哮を上げ、翼をはばたかせて飛翔。上空から一気に降下し、口内に溜め込んだ炎を解き放とうとする。

 だがその刹那、小雪が笑顔と共に宣言する。

 

「甘いぞくろかみ! この瞬間、わたしはトウテツの効果を発動する! セフィラフウシに、チューナーとなったトウテツをチューニング!」

「相手ターンでのS召喚か!」

「これが、竜星のもう一つの真骨頂……ッ!」

 

 トールが驚愕し、烈震がぎしりと歯を軋ませる。扇子で口元を隠して笑う西王母。そして小雪が天高らかに、声高く叫ぶ。

 

「天に輝く八つ星。集って混ざって水天逆巻く輝竜とならん。星よ、堕ちよ。シンクロ召喚。輝竜星―ショウフク!」

 

 烈震のターンにもかかわらず、新たに現れる竜星。

 黄土色の体躯、獅子を思わせる顔面、そして雄々しく太い角をした幻竜。低く唸り声を上げ、烈震、トール。そして彼のモンスターたちを威嚇する。

 なお、セフィラフウシは自身の効果により、小雪のデッキボトムに戻った。

 

「なんだ……このモンスターは」知らぬモンスターの召喚に自然、警戒心をあらわにする烈震。

「この瞬間、ショウフクの効果発動だ。

 このカードのS素材の元々の属性の数まで、フィールドのカードをデッキバウンスできる。ショウフクの素材は地属性のセフィラフウシと闇属性のトウテツ。よって二種類までバウンスできる。

 わたしは、スクラップ・ドラゴンとレッド・ワイバーンをバウンスするぞ。あと、トウテツを素材にしたから、コントロールも変更されないぞ」

「な――――――――」

 

 烈震のドラゴンたちが、夢幻のように消えうせる。自身の主力があっさりと除去されて、烈震は愕然とした。

 

「やべぇぜ烈震。壁がなくなっちまった」

「……だが、耐えるしかない。それに、反撃の機会は必ず来る。己はカードを三枚セットし、ターンエンドだ」

 

 

強化蘇生:永続罠

(1):自分の墓地のレベル4以下のモンスター1体を対象としてこのカードを発動できる。そのモンスターを特殊召喚する。そのモンスターは、レベルが1つ上がり、攻撃力・守備力が100アップする。そのモンスターが破壊された時にこのカードは破壊される。

 

ドッペル・ウォリアー 闇属性 ☆2 戦士族:効果

ATK800 DEF800

(1):自分の墓地のモンスターが特殊召喚に成功した時に発動できる。このカードを手札から特殊召喚する。(2):このカードがS素材として墓地へ送られた場合に発動できる。自分フィールドに「ドッペル・トークン」(戦士族・闇・星1・攻/守400)2体を攻撃表示で特殊召喚する。

 

レッド・ワイバーン 炎属性 ☆6 ドラゴン族:シンクロ

ATK2400 DEF2000

チューナー+チューナー以外のモンスター1体以上

(1):S召喚したこのカードがフィールドに表側表示で存在する限り1度だけ、このカードより攻撃力が高いモンスターがフィールドに存在する場合に発動できる。フィールドの攻撃力が一番高いモンスター1体を破壊する。この効果は相手ターンでも発動できる。

 

竜星の具象化:永続罠

(1):1ターンに1度、自分フィールドのモンスターが戦闘・効果で破壊された場合にこの効果を発動できる。デッキから「竜星」モンスター1体を特殊召喚する。(2):このカードが魔法&罠ゾーンに存在する限り、自分はSモンスター以外のモンスターをエクストラデッキから特殊召喚できない。

 

宝竜星-セフィラフウシ 地属性 ☆3 幻竜族:ペンデュラム

ATK1500 DEF0

Pスケール赤1/青1

P効果

(1):自分は「竜星」モンスター及び「セフィラ」モンスターしかP召喚できない。この効果は無効化されない。

モンスター効果

「宝竜星-セフィラフウシ」のモンスター効果は1ターンに1度しか使用できない。(1):このカードがP召喚またはデッキからの特殊召喚に成功した場合、「宝竜星-セフィラフウシ」以外の自分フィールドの、「竜星」モンスターまたは「セフィラ」モンスター1体を対象として発動できる。このターン、その表側表示モンスターをチューナーとして扱う。この効果を発動したこのカードは、フィールドから離れた場合に持ち主のデッキの一番下に戻る。

 

魔竜星―トウテツ 闇属性 ☆5 幻竜族:効果

ATK2200 DEF0

「魔竜星-トウテツ」の(1)の効果は1ターンに1度しか使用できない。(1):自分フィールドのこのカードが戦闘・効果で破壊され墓地へ送られた時に発動できる。デッキから「魔竜星-トウテツ」以外の「竜星」モンスター1体を守備表示で特殊召喚する。(2):1ターンに1度、相手のメインフェイズ及びバトルフェイズに発動できる。自分フィールドの「竜星」モンスターのみをS素材としてS召喚する。(3):このカードをS素材としたSモンスターは、コントロールを変更できない。

 

魔界闘士 バルムンク 闇属性 ☆4 戦士族:シンクロ

ATK2100 DEF800

チューナー+チューナー以外のモンスター1体以上

このカードがカードの効果によって破壊され墓地へ送られた時、自分の墓地からこのカード以外のレベル4以下のモンスター1体を選択して特殊召喚できる。

 

スクラップ・ドラゴン 地属性 ☆8 ドラゴン族:シンクロ

ATK2800 DEF2000

チューナー+チューナー以外のモンスター1体以上

1ターンに1度、自分及び相手フィールド上に存在するカードを1枚ずつ選択して発動する事ができる。選択したカードを破壊する。このカードが相手によって破壊され墓地へ送られた時、シンクロモンスター以外の自分の墓地に存在する「スクラップ」と名のついたモンスター1体を選択して特殊召喚する。

 

竜魂の幻泉:永続罠

(1):自分の墓地のモンスター1体を対象としてこのカードを発動できる。そのモンスターを守備表示で特殊召喚する。特殊召喚したそのモンスターの種族は幻竜族になる。このカードがフィールドから離れた時にそのモンスターは破壊される。そのモンスターがフィールドから離れた時にこのカードは破壊される。

 

輝竜星―ショウフク 光属性 ☆8 幻竜族:シンクロ

ATK2300 DEF2600

チューナー+チューナー以外の幻竜族モンスター1体以上

(1):このカードがS召喚に成功した時、このカードのS素材とした幻竜族モンスターの元々の属性の種類の数まで、フィールドのカードを対象として発動できる。そのカードを持ち主のデッキに戻す。(2):1ターンに1度、自分フィールドのカード1枚と自分の墓地のレベル4以下のモンスター1体を対象として発動できる。そのフィールドのカードを破壊し、その墓地のモンスターを特殊召喚する。

 

輝竜星―ショウフク攻撃力2300→2800

 

 

「わたしのターンだな。ドローだ」

 今、烈震のフィールドにモンスターはいない。伏せカードが三枚あるのが気になるが――――

 

虎虎虎(コココ)……。ここが攻め時なのは変わらぬ。で、あれば。踏み込むしかあるまい?」

「うん、そうだな。くろかみがどう動くか、興味があるぞ。

 わたしレベル4のシュンゲイに、レベル1のリフンをチューニングし、二枚目のボウテンコウをS召喚だ! ボウテンコウの効果で、デッキから竜星の凶暴化を手札に加えるぞ。さらに鐘楼の効果で一枚ドローだ。

 さっきは使わなかったが、ボウテンコウのもう一つの効果だ。デッキからチューナーモンスター、獄落鳥を墓地に送るぞ。これでボウテンコウのレベルは8になる。

 風竜星-ホロウを召喚。レベル1のホロウに、レベル8になったボウテンコウをチューニングだ!」

 

 鮮やかに、流れるように捌かれるカードたち。そして、八つの光の輪を通って一つの光星となった九つの輝きが光の道によって貫かれる。

 

「天に輝く九星(ここのほし)。集って混ざって天翔ける鳳凰竜とならん。星よ、堕ちよ。シンクロ召喚。幻竜星―チョウホウ!」

 

 現れたのは、鳳凰を思わせる姿をした幻竜。今まで出たどの竜星よりもレベルの高い、レベル9のSモンスター。その動きに合わせて、身体から光の粒子が粉雪のように散る。

 

「くろかみ、一つ教えておくぞ。チョウホウがいる限り、お前はチョウホウのS素材竜星。即ち風と光属性モンスターの効果は使えない。そしてホロウを素材にしたため、お前から魔法の効果も受けない。

 そしてボウテンコウと鐘楼の効果だ。鐘楼の効果で一枚ドロー。ボウテンコウの効果でデッキから宝竜星-セフィラフウシを特殊召喚。

 ここで、ショウフクの効果発動だ。セフィラフウシを破壊し、墓地のシュンゲイを特殊召喚。さらに竜星の具象化の効果で、デッキから闇竜星―ジョクトを特殊召喚するぞ」

「まずいぞ烈震。敵の手が止まらねぇ。このままじゃ、サンドバッグだ」

「……だが、現状己に妨害の手段はない。ならば迎え撃つのみだ」

 

 二枚――うち一枚はデブリ・ドラゴン確定――を見据え、烈震は鋭い眼差しで小雪と、彼女のフィールドを見据える。その心には細波ひとつ立っていない。

 そんな烈震を、西王母は生きのいい獲物を見る料理人のような目で見つめ、小雪は純粋な喜びを前面に押し出した表情で迎えた。

 次々に現れる竜星たち。何度も復活している炎の流星に加え、新たに現れたのはチューナーでもある闇の竜星。

 貝とカエルの中間点のような姿で、四肢で大地を踏みしめ、威嚇の唸り声をあげる。

 

「まだまだ行くぞ。レベル4のシュンゲイに、レベル2のジョクトをチューニング。来い、メタファイズ・ホルス・ドラゴン!」

 

 三回目のS召喚。現れたのはホルスの黒炎竜の身体が白銀に輝いた姿。黒炎竜が肉の身体を脱し、より高位の存在、幻竜へと至った姿だ。

 

「鐘楼の効果で一枚ドロー。さらにシュンゲイを素材にしたため、攻守500アップ。

 そして、メタファイズ・ホルス・ドラゴンの効果発動だ。くろかみ、散々使わせてもらったがもう十分だ。メタファイズ・ホルス・ドラゴンの効果で、天輪の鐘楼の効果を無効化する!」

「げっ!」

 

 嫌な顔をするトール。烈震は無言だが、険しい表情は変わらない。自分のデッキの回転の要が、相手に散々利用された挙句斬り捨てられたのだから当然だが。

 

 

風竜星―ホロウ 風属性 ☆1 幻竜族:効果

ATK0 DEF1800

「風竜星-ホロウ」の(1)の効果は1ターンに1度しか使用できない。(1):自分フィールドのこのカードが戦闘・効果で破壊され墓地へ送られた時に発動できる。デッキから「風竜星-ホロウ」以外の「竜星」モンスター1体を攻撃表示で特殊召喚する。(2):1ターンに1度、相手のメインフェイズ及びバトルフェイズに発動できる。自分フィールドの「竜星」モンスターのみをS素材としてS召喚する。(3):このカードをS素材としたSモンスターは、魔法カードの効果を受けない。

 

幻竜星―チョウホウ 光属性 ☆9 幻竜族:シンクロ

ATK2800 DEF2200

チューナー+チューナー以外のモンスター1体以上

(1):S召喚したこのカードがモンスターゾーンに存在する限り、相手はこのカードのS素材とした「竜星」モンスターと元々の属性が同じモンスターの効果を発動できない。(2):S召喚したこのカードが戦闘・効果で破壊され墓地へ送られた時に発動できる。デッキからチューナー1体を手札に加える。(3):1ターンに1度、相手フィールドのモンスターが戦闘・効果で破壊された時に発動できる。そのモンスター1体と元々の属性が同じ幻竜族モンスター1体を自分のデッキから守備表示で特殊召喚する。

 

闇竜星―ジョクト 闇属性 ☆2 幻竜族:チューナー

ATK0 DEF2000

「闇竜星-ジョクト」の(1)(2)の効果は1ターンに1度、いずれか1つしか使用できない。(1):自分フィールドのこのカードが戦闘・効果で破壊され墓地へ送られた時に発動できる。デッキから「闇竜星-ジョクト」以外の「竜星」モンスター1体を攻撃表示で特殊召喚する。(2):自分フィールドにこのカード以外のモンスターが存在しない場合、手札の「竜星」カード2枚を墓地へ送って発動できる。デッキから攻撃力0と守備力0の「竜星」モンスターを1体ずつ特殊召喚する。この効果で特殊召喚したモンスターはエンドフェイズに除外される。

 

メタファイズ・ホルス・ドラゴン 光属性 ☆6 幻竜族:シンクロ

ATK2300 DEF1600

チューナー+チューナー以外のモンスター1体以上

(1):このカードがS召喚に成功した場合、そのS素材としたチューナー以外のモンスターの種類によって、以下の効果をそれぞれ発動できる。

●通常モンスター:このターンこのカードは自身以外のカードの効果を受けない。

●効果モンスター:このカード以外のフィールドの表側表示のカード1枚を対象として発動できる。その効果を無効にする。

●Pモンスター:相手フィールドのモンスター1体を相手が選び、自分はそのコントロールを得る。このターンそのモンスターは攻撃できない。

 

 

幻竜星―チョウホウ攻撃力2800→3300

メタファイズ・ホルス・ドラゴン攻撃力2300→2800守備力1600→2100

 

 

 小雪のフィールドに存在する、三体の大型幻竜族モンスター。その牙が、爪が、烈震に対してさらされる。

 だが烈震は臆さない。彼は黙したままゆっくり足を肩幅まで開き、腰を落とす。

 迎え撃つ気だ。そのことに気づき、トールはにやりと笑う。この状況で、無防備を晒し、それでも心折れない。さすがだ。だからこそ、オレのパートナーに相応しい。彼と選んだことを誇りに思う。

 また、笑ったのはトールだけではなかった。

 小雪もまた、迎え撃つ大勢の烈震に対して、満面の笑みを浮かべた。

 

「すごい! すごいなくろかみ! おまえは強い。こんな状況でも心折れなかったことがその証明だ! だからくろかみ。()()()()。まだ終わってくれるな。もっと、もっと楽しもう! 三体のモンスターでダイレクトアタック!」

 

 小雪の腕が振るわれる。幻竜たちが咆哮を上げて、烈震に牙を剥いた。

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