神々の戦争   作:tuki21

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第64話:不変なる法定巨神

 東京都内某所。誰もいなくなったバトルフィールド内で、対峙する男が二人。

 アメフト選手を思わせるがっしりとした体つきの男、鷹山勇次(たかやまゆうじ)

 対するは対照的に針金のようにひょろりと細長い体格の男。山羊孝(やぎまなぶ)

 二人の戦いは始まったばかりで、山羊が言うような運命はまだ確定していない。

 ゆえに鷹山は不敵に笑う。敗北な運命など笑い飛ばしてやると言わんばかりに。

 

 

鷹山LP8000手札5枚

ペンデュラムゾーン赤:なし青:なし

場 なし

伏せ なし

 

山羊LP8000手札1枚

場 D-HERO ドグマガイ(攻撃表示)

伏せ 1枚

 

 

「俺のターンだな、ドロー!」

「スタンバイフェイズ、ドグマガイの効果が発動。貴方のライフを半分にしますよ」

 

 瞬間、鷹山を強烈な倦怠感と脱力感が襲う。

 呻く鷹山。巨体がぐらりと傾く。だが踏みとどまった。脂汗を流しながらも不敵に笑ってみせる。

 

「この程度、軽い軽い」

「しかし失ったライフは軽くないのでは?」

「確かにこの序盤から4000ビハインドは痛いが、なに、そんな状況からの逆転もまた燃えるものだ。俺はゴブリンドバーグを召喚! ゴブリンドバーグ効果発動! 手札からジュッテ・ナイトを特殊召喚!」

 

 鷹山のフィールドに、三機編隊のプロペラ機に乗ったゴブリンたちが現れる。三機の飛行機は協力して下部からワイヤーでコンテナを一個吊っていた。

 コンテナが投下される。

 着地するコンテナ。その中身が開かれ、現れたのは岡っ引きをデフォルメしたようなモンスター。

 あっという間にチューナーと非チューナーが鷹山のフィールドに揃う。しかも、ジュッテ・ナイトの効果はドグマガイに対して有効だ。

 

「ジュッテ・ナイト効果発動! ドグマガイの表示形式を守備表示に変更するぜ」

 

 ねばつくような倦怠感を跳ね除けるように、声を張り上げる鷹山。彼の気迫に答えたか、ジュッテ・ナイトが大声を上げて投げ縄を投擲。縄のわっか部分がドグマガイの首に掛かる。

 力の限り縄を引くジュッテ・ナイト。空中のドグマガイを引きずり下ろし、無理矢理守備表示に変更させた。

 

「ここからだ! レベル4のゴブリンドバーグに、レベル2のジュッテ・ナイトをチューニング!」

 

 鷹山の右腕が振り上げられる。宙に飛び立つ二体のモンスター。ジュッテ・ナイトが光を放つ緑の輪となり、その輪をくぐったゴブリンドバーグが四つの白く輝く光星となった。

 光星を光の道が貫く。

 

「御用改めである! 神妙にお縄につけぃ! シンクロ召喚、ゴヨウ・ガーディアン、参上!」

 

 光の向こうから現れるモンスター。

 歌舞伎役者のような衣装とメイク、背にはバックパック、両手には十手を括り付けた投げ縄。召喚と同時に「御用だ!」と自身の存在意義そのものを叫び、盛大に見えを切る。

 

「ほう、来ましたか、ゴヨウ・ガーディアン。確かに、ジュッテ・ナイトの効果で私のドグマガイは守備表示に変更され、その守備力は2400。攻撃力2800のゴヨウ・ガーディアンならば打倒できますね。ですがドグマガイは特殊召喚モンスター。一度墓地を経由し、特殊召喚するゴヨウ・ガーディアンの効果ではその特性上、ドグマガイのコントロールを得ることはできませんよ」

「慌てんなよ。俺のメインフェイズ1はまだ終了しちゃいないぜ。手札から魔法カード、岡っ引き参上! を発動!

 こいつは俺の場に攻撃力2800以上の地属性、戦士族Sモンスターが存在する時、俺の墓地から地属性、戦士族チューナーとチューナー以外の地属性、戦士族モンスターを一体ずつ特殊召喚できるのさ。俺はゴブリンドバーグとジュッテ・ナイトを特殊召喚。

 もう一度この組み合わせだ! レベル4のゴブリンドバーグに、レベル2のジュッテ・ナイトをチューニング!

 異形の身体に正義の魂。悲哀も憤怒も踏み越えて、進め己の信じる道を! シンクロ召喚。出あえ、、ゴヨウ・プレデター!」

 

 光の向こうから現れるは悪魔じみた容貌に羽衣じみた帯を纏い、十手を手にした異形の戦士。獣、悪魔じみた姿だが、ゴヨウ・ガーディアンと同じく、正義の心は失ってはいない。

 

「バトルだ! ゴヨウ・ガーディアンでドグマガイを攻撃!」

 

 バトルフェイズ突入。まず一手目。ゴヨウ・ガーディアンが縄付き十手を鎖鎌か鎖付きの鉄球のように投擲、十手の先端が見事ドグマガイを捕え、粉砕する。

 がら空きのフィールド。肩をすくめる山羊。「ですがドグマガイは自身の召喚条件以外では特殊召喚できません。先ほども言いましたが、ゴヨウ・ガーディアンと言えども、特殊召喚できなければ奪えません」

 委細構わずウェスタが声を張り上げる。

 

「たとえモンスターを奪えずとも、相手の場はがら空きだ! 今だ勇次! 攻めろ攻めろ!」

「あいよ。ゴヨウ・プレデターでダイレクトアタック!」

 

 ゴヨウ・ガーディアンと同じ十手を振りぬくゴヨウ・プレデター。その一撃が、腕をクロスさせて宝珠を庇う山羊に直撃する。

 

「ぐ……!」

 

 吹っ飛ぶ痩身。背中から倒れて地面を滑る。

 

「きつい一撃ですね。ですが、私もやられてばかりではいませんよ。リバーストラップ、ダメージ・コンデンサー発動。手札を一枚捨て、デッキからV・HERO(ヴィジョンヒーロー) ヴァイオンを特殊召喚します」

 

 翻るリバースカード。後続として山羊のフィールドに現れたのは、ディープパープルのスーツに軽装アーマーを装着したモノアイレンズ装備のHERO。単眼がほのかに紫の光を発し、じっと鷹山を見つめる。

 

「捨てた手札は代償の宝札。よって二枚ドロー。さらにヴァイオンの効果により、デッキからE・HERO(エレメンタルヒーロー) シャドー・ミストを墓地に送ります。そしてこの瞬間、シャドー・ミストの効果により、デッキからE・HERO エアーマンを手札に加えますよ」

「……手札コストはそのままドローに利用し、実質マイナスをプラスへ変えたうえで、壁を用意したか」半透明のウェスタが唸る。

「それだけじゃない。ヴァイオンの効果でデッキ圧縮。さらに墓地に送ったシャドー・ミストの効果を利用して新たなモンスターをサーチ。実に無駄がないぜ」賛嘆の念を惜しまない鷹山。しかもと続ける。

「手札に加えたのはエアーマンだ。あいつはサーチ効果の方が主に脚光を浴びてるが、場にいる自分以外のHEROの数まで相手の魔法、罠を破壊できる。つまり俺は、カードのセットを牽制されたわけだ」

 

 口角をわずかに上げた笑みを浮かべる山羊。山羊の戦術、思考を鷹山がトレースしたことで、彼は満足感を得ていた。

 山羊孝。葬儀屋の生まれたゆえに、死生観が独特で、転じて人間の運命に分かれ方に興味を持った。

 運命を前に抗う人間に好感を抱いた。抗って運命を覆す姿に称賛を惜しまない。運命に敗れて失墜していく姿を愛おしさを込めて見送った。

 屈折した感情は胸の中に秘めたまま、山羊は鷹山を見据えていた。

 

()()()()()()()()()()()! カードを一枚セットし、ターンエンドだ!」

 

 

ゴブリンドバーグ 地属性 ☆4 戦士族:効果

ATK1400 DEF0

(1):このカードが召喚に成功した時に発動できる。手札からレベル4以下のモンスター1体を特殊召喚する。この効果を発動した場合、このカードは守備表示になる。

 

ジュッテ・ナイト 地属性 ☆2 戦士族:チューナー

ATK700 DEF900

1ターンに1度、自分のメインフェイズ時に発動できる。相手フィールド上に表側攻撃表示で存在するモンスター1体を選択して表側守備表示にする。

 

ゴヨウ・ガーディアン 地属性 ☆6 戦士族:シンクロ

ATK2800 DEF2000

地属性チューナー+チューナー以外のモンスター1体以上

(1):このカードが戦闘で相手モンスターを破壊し墓地へ送った時に発動できる。そのモンスターを自分フィールドに守備表示で特殊召喚する。

 

岡っ引き参上!:通常魔法

このカード名は1ターンに1枚しか発動できない。(1):自分フィールドに攻撃力2800以上の地属性、戦士族Sモンスター、または融合モンスターが存在する時に発動できる。墓地から地属性、戦士族のチューナーとチューナー以外のモンスター1体ずつを特殊召喚する。このカードを発動したターン、Sモンスター以外のモンスターは攻撃できない。

 

ゴヨウ・プレデター 地属性 ☆6 戦士族:シンクロ

ATK2400 DEF1200

チューナー+チューナー以外のモンスター1体以上

「ゴヨウ・プレデター」の効果は1ターンに1度しか使用できない。(1):このカードが戦闘で相手モンスターを破壊し墓地へ送った時に発動できる。そのモンスターを自分フィールドに特殊召喚する。この効果で特殊召喚したモンスターがプレイヤーに与える戦闘ダメージは半分になる。

 

ダメージ・コンデンサー:通常罠

自分が戦闘ダメージを受けた時、手札を1枚捨てて発動できる。受けたそのダメージの数値以下の攻撃力を持つモンスター1体をデッキから表側攻撃表示で特殊召喚する。

 

代償の宝札:通常魔法

(1):手札からこのカードが墓地に送られた時に発動する。カードを2枚ドローする。

 

V・HERO ヴァイオン 闇属性 ☆4 戦士族:効果

ATK1000 DEF1200

「V・HERO ヴァイオン」の(1)の効果は1ターンに1度しか使用できない。(1):このカードが召喚・特殊召喚に成功した場合に発動できる。デッキから「HERO」モンスター1体を墓地へ送る。(2):1ターンに1度、自分の墓地から「HERO」モンスター1体を除外して発動できる。デッキから「融合」1枚を手札に加える。

 

E・HERO シャドー・ミスト 闇属性 ☆4 戦士族:効果

ATK1000 DEF1500

「V・HERO ヴァイオン」の(1)の効果は1ターンに1度しか使用できない。(1):このカードが召喚・特殊召喚に成功した場合に発動できる。デッキから「HERO」モンスター1体を墓地へ送る。(2):1ターンに1度、自分の墓地から「HERO」モンスター1体を除外して発動できる。デッキから「融合」1枚を手札に加える。

 

 

鷹山LP8000→4000手札2枚

山羊LP8000→5600手札3枚(うち1枚はE・HERO エアーマン)

 

「では、私のターンですね。ドロー。さて、前の私のターンに発動が確定していたデステニー・ドローの効果により、コストと制約を踏み倒し、二枚ドロー」

 

 通常のドローと合わせてこれで三枚のドロー。六枚に増えた手札を吟味し、山羊はこのターンの戦術を決めた。

 そして内心で思う。()()()()()()()()()()()()()()()。敗北の運命に、鷹山は抗えるだろうかと。

 そんな内心はおくびにも出さずにカードを繰り出した。

 

「墓地のドグマガイを対象に、オーバー・デステニーを発動。デッキから二体目のダイヤモンドガイを特殊召喚します。さらにダイヤモンドガイの特殊召喚にチェーンし、手札から速攻魔法、地獄の暴走召喚を発動。デッキと墓地から、残るダイヤモンドガイを特殊召喚しますよ」

 

 一気に展開してきた。ウェスタは唸り声を上げ、鷹山も渋面を造る。

 

「俺の場にもモンスターが二体いるが……、こいつらはSモンスターだから、特殊召喚できないな」

「つまり、私だけが特殊召喚できるわけです」

 

 山羊のフィールドに現れる三体のダイヤモンドガイ。すかさず効果を発動する山羊。デッキトップから三枚のカードがめくられる。

 一枚目、融合準備、二枚目、デステニー・ドロー、三枚目、終わりの始まり。二枚がヒット。しかもどちらもドロー強化。

 呻きを上げるウェスタ。「また当たりだと? 一体どうなっている」

 鷹揚に頷く鷹山。「奴曰く、運命が俺の敗北に傾いているんだろ。だから奴に流れが行く」

 微笑する山羊。「その通りです。そして、敗北の運命は今にも貴方の肩を叩こうとしている。彼の手から逃れられますか?E・HERO エアーマンを召喚します」

 

 山羊のフィールドに現れる、飛行型のバトルアーマーを装備したマスクヒーローが現れる。選択の瞬間が訪れた。

 

「エアーマンの効果を発動しますが、何かチェーンはありますか?」

「――――いいや、何もないぜ?」

「では、サーチ効果を選択します。デッキからD-HERO Bloo-Dを手札に加えますよ」

 

 目的のカードを手札に加えながら、山羊は意外な思いを禁じえなかった。

 てっきり鷹山はフリーチェーンのカードを伏せていると思ったのだ。山羊の手札に魔法、罠を破壊できるエアーマンがある以上、カードを伏せても破壊される危険が高い。

 ならばその破壊を躱せるフリーチェーンだと。

 あるいは、破壊されることをトリガーとして効果を発動するトラップかとも考えられるが、こうしてサーチ効果を選択した以上、それも無意味。

 

(まぁ、いずれにしろ、このターンの私の行動が変わるわけではありませんが)

 

 鷹山が何を思って何を仕掛けようと、自分は変わらない。ここで防がれるも反撃を受けるも、自分が勝つも負けるも、全ては運命が()()なっただけ。

 

「ヴァイオンの効果発動。墓地のドグマガイを除外し、デッキから融合のカードを手札に加えます。

 そして、融合発動! 私の場の二体のダイヤモンドガイを融合!」

 

 山羊のフィールド、その頭上に発生した空間の歪みが渦を描いた。その渦に二体のダイヤモンドガイが飛び込んだ。

 

「運命を司る戦士たちよ、今ここに一つに交わり、宿業を率いる新たな運命を現出させよ! 来なさい、D-HERO ディストピアガイ!」

 

 渦の中から現れる新たな戦士。

 青いバトルスーツ、黄色を基調にしたアーマー。マスクの額部分には赤い大きな「D」の文字。イギリスをイメージするカードの多いD-HEROの中では珍しい、アメコミチックな配色のスーツ姿のモンスター。

 

「ディストピアガイの効果発動。墓地のダイヤモンドガイを指定し、貴方に1400ポイントのダメージを与えます」

 

 ディストピアガイが右掌を大きく突き出す。次の瞬間、掌から放出される紫の波動。

 波動は一条のレーザーとなって鷹山に直撃。鷹山は左手を掲げてガード。宝珠を守る。

 

「ぐ……ッ! こ、これで俺のライフは残り2600か。だんだん、厳しくなってきたな」

「運命が、敗北という土産を持って貴方の肩を叩こうとしていますよ。私はエアーマン、ヴァイオン、ダイヤモンドガイの三体をリリースし、D-HERO Bloo-Dを特殊召喚します!」

 

 三体のモンスターが、まるで紙片のような粒子となって溶け消える。

 新たに現れたのは、HEROと言うにはあまりに禍々しい外見をしていた。

 悪魔のような翼、赤黒い鎧、ドラゴンの大顎(おおあぎと)を思わせる右手、悪魔の五指を思わせる巨大な左手、背から伸びる鋭利なパーツは何かをつかみ取らんとする三本爪の巨大な手を思わせる。

 Bloo-D。D-HEROの中でも極めつけに強力な一体とされているモンスター。

 

「Bloo-Dがいる限り、貴方のモンスター効果は無意味。さらにBloo-Dの効果発動。ゴヨウ・ガーディアンをこのカードに装備させます」

 

 ばさりと大きく翼を広げたBloo-D。そのまま宙に浮き、翼から異様な赤い光を放ち始める。

 光は触手のようにゴヨウ・ガーディアンへと伸び、その身体を捕え、引き寄せ、翼の中に吸収する。まるで喰らうように。

 翼に取り込まれたゴヨウ・ガーディアンは、顔の輪郭だけを翼の表面に浮き上がらせていた。苦悶の表情を。

 

「Bloo-Dはゴヨウ・ガーディアンの攻撃力の半分、つまり1400ポイント攻撃力がアップします。

 神剣-フェニックスブレードをディストピアガイに装備し、ディストピアガイの効果を発動。このカードのステータスをもとの数値に戻し、ゴヨウ・プレデターを破壊します」

 

 ディストピアガイの左手が突き出される。掌から放たれる黒い球体が弾丸のような勢いで放たれ、ゴヨウ・プレデターを直撃する。心臓を撃ち抜かれたゴヨウ・プレデターは苦痛の声を上げて膝をつき、消滅した。

 

「これで終わりですか? Bloo-Ddeダイレクトアタック」

 

 山羊の命令が走り、Bloo-Dの翼から針のように細く鋭い血のように赤い光が無数の放たれる。

 赤い雨が敵意を持って鷹山を襲う。

 

「勇次! なんとかしろ!」

「何とかしましょう。リバーストラップ! ピンポイント・ガード発動! 墓地からジュッテ・ナイトを守備表示で特殊召喚するぜ!」

 

 翻るリバースカード。山羊は驚きに目を丸くした。

 

()()()()()()

 

 発動したのはフリーチェーンでも破壊をトリガーにする罠でもなく、攻撃反応型。これではもしもエアーマンの効果で魔法、罠を選択されていたら、なすすべなく破壊されたはずだ。

 苦笑を浮かべる山羊。「てっきりフリーチェーンでないならば、破壊をトリガーにするカードを伏せていたと思っていましたよ」

 にやりと笑う鷹山。「言ったろ? あえて伏せるってよ。それと、ピンポイント・ガードで特殊召喚されたモンスターはこのターン、戦闘でも効果でも破壊されないぜ」

 ふふんと、笑って見せるウェスタ。「つまり防御は万全というわけだ。さぁどうする運命論者」

 山羊は苦笑を深めた。このターンでは決まらなかった。完全に裏をかかれたが悔しさはない。ただ、運命はまだ鷹山に敗北を突き付けなかった、それだけだ。

 敗北の手を逃れた鷹山。ならば、掴み損ねたその手はどこへ行くのか? 自分か? それもいい。それが運命ならば受け入れよう。

 

「カードを二枚伏せて、ターン終了です」

 

 

デステニー・ドロー:通常魔法

(1):手札から「D-HERO」カード1枚を捨てて発動できる。自分はデッキから2枚ドローする。

 

オーバー・デステニー:通常魔法

(1):自分の墓地の「D-HERO」モンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターのレベルの半分以下のレベルを持つ「D-HERO」モンスター1体をデッキから特殊召喚する。この効果で特殊召喚したモンスターはこのターンのエンドフェイズに破壊される。

 

地獄の暴走召喚:速攻魔法

(1)」:相手フィールドに表側表示モンスターが存在し、自分フィールドに攻撃力1500以下のモンスター1体のみが特殊召喚された時に発動できる。その特殊召喚したモンスターの同名モンスターを自分の手札・デッキ・墓地から可能な限り攻撃表示で特殊召喚し、相手は自身のフィールドの表側表示モンスター1体を選び、そのモンスターの同名モンスターを自身の手札・デッキ・墓地から可能な限り特殊召喚する。

 

E・HERO エアーマン 風属性 ☆4 戦士族:効果

ATK1800 DEF300

(1):このカードが召喚・特殊召喚に成功した時、以下の効果から1つを選択して発動できる。●このカード以外の自分フィールドの「HERO」モンスターの数まで、フィールドの魔法・罠カードを選んで破壊する。●デッキから「HERO」モンスター1体を手札に加える。

 

融合:通常魔法

(1):自分の手札・フィールドから、融合モンスターカードによって決められた融合素材モンスターを墓地へ送り、その融合モンスター1体をエクストラデッキから融合召喚する。

 

D-HERO ディストピアガイ 闇属性 ☆8 戦士族:融合

ATK2800 DEF2400

「D-HERO」モンスター×2

「D-HERO ディストピアガイ」の(1)(2)の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。(1):このカードが特殊召喚に成功した場合、自分の墓地のレベル4以下の「D-HERO」モンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターの攻撃力分のダメージを相手に与える。(2):このカードの攻撃力が元々の攻撃力と異なる場合、フィールドのカード1枚を対象として発動できる。そのカードを破壊し、このカードの攻撃力は元々の数値になる。この効果は相手ターンでも発動できる。

 

D-HERO Bloo-D 闇属性 ☆8 戦士族:効果

ATK1900 DEF600

このカードは通常召喚できない。自分フィールドのモンスター3体をリリースした場合のみ特殊召喚できる。(1):このカードがモンスターゾーンに存在する限り、相手フィールドの表側表示モンスターの効果は無効化される。(2):1ターンに1度、相手フィールドのモンスター1体を対象として発動できる。その相手モンスターを装備カード扱いとしてこのカードに装備する(1体のみ装備可能)。(3):このカードの攻撃力は、このカードの効果で装備したモンスターの元々の攻撃力の半分だけアップする。

 

神剣-フェニックスブレード:装備魔法

戦士族モンスターにのみ装備可能。装備モンスターの攻撃力は300ポイントアップする。自分のメインフェイズ時、自分の墓地に存在する戦士族モンスター2体をゲームから除外する事で、このカードを自分の墓地から手札に加える。

 

ピンポイント・ガード:通常罠

(1):相手モンスターの攻撃宣言時、自分の墓地のレベル4以下のモンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターを守備表示で特殊召喚する。この効果で特殊召喚したモンスターはこのターン、戦闘・効果では破壊されない。

 

 

D-HERO Bloo-D攻撃力1900→3300

 

 

鷹山LP4000→2600手札2枚

山羊LP5600手札0枚

 

 

「俺のターンだ!」

 

 猛攻を防ぎはしたものの、鷹山が不利である現状は変わらない。

 

「凌ぎはしたが、まだ我々が不利だな。打開策はあるのか?」

「さてな」

 

 深刻そうなウェスタの声に反して、鷹山はどこか気楽だ。

 目くじらを立てるウェスタ(パートナー)をなだめるように、鷹山は「まぁまぁ」と言い、

 

「まずはこいつで運試しと行こうじゃないか。デッキトップからカードを十枚除外し、強欲で貪欲な壺発動。カードを二枚ドロー!」

 

 今、鷹山の手札に状況打開のすべはない。

 だが他ならぬ対戦相手の山羊が、この状況を覆してくるだろうと確信していた。

 先ほど鷹山は敗北の手を振り払った。ならば、ここからは逆転してくるだろう。そういう()()だ。

 

「よし。これならいけるな。まずは禁じられた聖杯を発動! Bloo-Dの攻撃力を400アップさせる代わりに、効果を無効にする!」

 

 穢れた聖杯の中身を浴びせかけられ、Bloo-Dは苦悶の呻きを零して失墜した。見ればBloo-Dのカードイラストは色を失ったモノクロになっていた。

 

「そして、Bloo-Dの効果によって装備されていたゴヨウ・ガーディアンは対象不適格なため、破壊される。これで準備は整った。死者蘇生発動! 墓地からゴヨウ・ガーディアンを特殊召喚。さらにレベル6のゴヨウ・ガーディアンに、レベル2のジュッテ・ナイトをチューニング!」

 

 天へと飛翔する二体のモンスター。先ほどと同じS召喚のためのエフェクトが走り、真昼の陽光のような白い光が辺りを満たす。

 

「その身に宿すは正義の心。不変不倒の意志を胸に、闇夜を進め! シンクロ召喚、ゴヨウ・キングここに見参!」

 

 光の向こうから現れるモンスター。

 歌舞伎のような白い髪、メイク、衣装を模したと思われるアーマー、手には十手を模した巨大な刀。大見得を切って場に降臨した。

 

「まだ行くぞ! 手札から魔法カード、ミラクルシンクロフュージョン発動! 墓地のゴヨウ・ガーディアンとゴヨウ・プレデターを除外融合!」

 

 先ほどの山羊のターンのコピーのように、今度は鷹山のフィールドに空間歪曲の渦が現れる。その中に飛び込む二体のゴヨウモンスター。

 

「正義を背負って夜を行け! その正義は玉座に会っても色あせない! 融合召喚、来たれゴヨウ・エンペラー!」

 

 現れた融合モンスター。

 玉座に座り、白化粧を施した古代中国の皇帝風モンスター。玉座に坐したまま山羊を見据える。

 

「バトルだ! まずはゴヨウ・キングでBloo-Dを攻撃!」

 

 攻撃宣言が下り、ゴヨウ・キングが地を蹴って跳躍する。

 上空からの落下速度を加味した大上段の一撃がBloo-Dに直撃、頭頂部から股間まで一気に両断した。

 

「まだまだ! ゴヨウ・エンペラーでディストピアガイを攻撃!」

 

 一気呵成に攻め立てる鷹山。ゴヨウ・エンペラーが玉座に座ったまま空中浮遊で移動。その口から赤い炎を吐いた。

 

「おっと、此方の攻撃をただ受けるだけではいけませんね。というわけで、リバーストラップ、デストラクト・ポーション発動。ディストピアガイを破壊し、その攻撃力分、私のライフを回復します」

 

 翻るリバースカード。破壊されるディストピアガイ。回復する山羊のライフ。鷹山は口笛を吹いた。

 

「なるほど。ゴヨウ・エンペラーも勿論破壊したモンスターのコントロールを奪取する効果を持っている。俺のゴヨウモンスターに破壊されるくらいなら、自分から破壊して追撃を防ぐことを優先するわけだな。例えダイレクトアタックを受けても。ならその通りにするか! ゴヨウ・エンペラーでダイレクトアタック!」

 

 がら空きになった山羊のフィールドを、ゴヨウ・エンペラーの炎が舐める。山羊は地面を転がって回避。その際に背中を焼かれたがくぐもった声が漏れるだけだった。

 

「熱いですね……。ややつらいですよ。燃えていなくて幸いでしたが」

「それだけで済ますか。宝珠にも傷一つなしとはね」

「つまり、奴と奴の神を打倒するにはオーバーキルレベルのダメージか、(わたし)によるダイレクトアタックが理想だな」

 

 ウェスタの言葉に頷く鷹山。彼はカードを一枚伏せて、ターンを終えた。

 

 

強欲で貪欲な壺:通常魔法

「強欲で貪欲な壺」は1ターンに1枚しか発動できない。(1):自分のデッキの上からカード10枚を裏側表示で除外して発動できる。自分はデッキから2枚ドローする。

 

禁じられた聖杯:速攻魔法

(1):フィールドの表側表示モンスター1体を対象として発動できる。ターン終了時までそのモンスターは、攻撃力が400アップし、効果は無効化される。

 

死者蘇生:通常魔法

(1):自分または相手の墓地のモンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターを自分フィールドに特殊召喚する。

 

ゴヨウ・キング 地属性 ☆8 戦士族:シンクロ

ATK2800 DEF2000

チューナー+チューナー以外のSモンスター1体以上

(1):このカードが相手モンスターに攻撃する攻撃宣言時に発動する。このカードの攻撃力はダメージステップ終了時まで、自分フィールドの戦士族・地属性のSモンスターの数×400アップする。(2):このカードが戦闘で相手モンスターを破壊し墓地へ送った時、以下の効果から1つを選択して発動できる。●破壊したそのモンスターを自分フィールドに特殊召喚する。●相手フィールドの表側表示モンスター1体を選んでコントロールを得る。

 

ミラクルシンクロフュージョン:通常魔法

(1):自分のフィールド・墓地から、融合モンスターカードによって決められた融合素材モンスターを除外し、Sモンスターを融合素材とするその融合モンスター1体をエクストラデッキから融合召喚する。(2):セットされたこのカードが相手の効果で破壊され墓地へ送られた場合に発動する。自分はデッキから1枚ドローする。

 

ゴヨウ・エンペラー 地属性 ☆10 戦士族:融合

ATK3300 DEF2500

戦士族・地属性のSモンスター×2

(1):このカードまたは元々の持ち主が相手となる自分のモンスターが戦闘で相手モンスターを破壊し墓地へ送った時に発動できる。破壊したそのモンスターを自分フィールドに特殊召喚する。(2):相手がモンスターを特殊召喚した時、自分フィールドの戦士族・地属性のSモンスター1体をリリースして発動できる。そのモンスターのコントロールを得る。(3):表側表示のこのカードがフィールドから離れた場合に発動する。自分フィールドの全てのモンスターのコントロールは、元々の持ち主に戻る。

 

デストラクト・ポーション:通常罠

自分フィールド上に存在するモンスター1体を選択して発動する。選択したモンスターを破壊し、破壊したモンスターの攻撃力分だけ自分のライフポイントを回復する。

 

 

ゴヨウ・キング攻撃力2800→3200

 

 

鷹山LP2600手札0枚

山羊LP5600→8400→7500→4200手札0枚

 

 

「わたしのターン、ドロー。前のターンに発動が確定していたデステニー・ドローと終わりの始まりを、コストと制約を度外視して効果のみを発動。合計五枚、ドローします」

 

 ドローフェイズのドローも含めて合計六枚のドロー。鷹山とウェスタからすれば決して望ましい展開ではないが、どうあっても止められない以上挟む口も睨みつける目も必要ない。ただ粛々と事実を受け入れ、相手の行動に対してどう対処するかをシミュレーションし、実際に行動に移すだけだった。

 

「まずは下準備と行きましょう。墓地のフェニックスブレードの効果発動。私の墓地から二体のダイヤモンドガイを除外し、このカードを手札に戻します。

 大欲な壺を発動。除外されている二体のダイヤモンドガイとドグマガイをデッキに戻し、一枚ドロー」

 

 沈黙が両者の間に落ちる。ニコリと笑みを浮かべる山羊。身構える鷹山とウェスタ。鷹山は次に来るだろう山羊の攻勢に備え、山羊は次に展開する己の布陣、戦術を脳内で再確認する。

 

「フィールド魔法、フュージョン・ゲート発動。さらにリバースカード、チェーン・マテリアル発動。これで私はこのターン、戦闘の放棄と引き換えに手札、フィールドのみならず、デッキ、墓地のカードも融合素材にできます。さらにフュージョン・ゲートがある限り、融合のカードさえ必要ない。

 行きますよ。私はデッキのD-HERO ドグマガイと、墓地のD-HERO Bloo-Dを除外融合! 来なさい究極にして終焉のD! Dragoon D-END!]

 

 フィールド魔法の発動により、融合召喚のエフェクトであった空間の歪みによって生じた渦が常に山羊の頭上に展開する。その渦に飛び込む二体のD-HERO。そして新たなDが現れる。

 ドラゴンの頭部を模した胸部装甲、同じくドラゴンの牙と上顎もした左手の盾、爪を模した右手の剣、翼も、冑も、全身のアーマーの意匠も、全てドラゴンを模している。まさしく人が思い浮かべる最強の生物種、最高の「D」を表しているといえよう。

 その効果は強力で、チェーン・マテリアルのデメリットもものともしない。

 

「これはまずいぞ勇次!」

 

 ウェスタの叫び。以心伝心に鷹山(パートナー)が応じる。

 

「分かってるさ! ゴヨウ・エンペラーの効果発動! ゴヨウ・キングをリリースし、Dragoon D-ENDのコントロールを得る!」

 

 陣営を山羊から鷹山に移すDragoon D-END。その代償に鷹山のフィールドから消えるゴヨウ・キング。

 ゴヨウ・キングを失ったのは痛いが、代わりに相手の切り札の奪取に成功したのでこれで良しとすべきだ。鷹山は理屈でそう考えたが、やはり引っ掛かりを覚えた。

 Dragoon D-END。強力なモンスターだが、その存在は()()

 今日の環境ではまずでない素材師弟の融合モンスター。そして素材そのものも特殊召喚モンスターで、召喚条件が揃わなければ手札で腐るだけのモンスターだ。

 当然、D-ENDの素材モンスター二体はデッキに一組ずつしか入れられないはずだ。それ以上入れればデッキのバランスを崩してしまう。

 そのはずだった。

 鷹山の背筋に冷たい汗が伝わり落ちる。常識で、この痩身の死神、不吉が人の形をしたような男を計れるとは思えなかった。

 そしてそれは事実だった。

 

「確かに一組目は奪われてしまいましたね。ではもう一度フュージョン・ゲートの効果発動。デッキのBloo-Dとドグマガイを除外融合! 来なさい、二体目のDragoon D-END!」

 

 空間の歪みから現れる新たなDragoon D-END。まさかの二体目の超上級融合モンスター。

 

「二体目だと!? 馬鹿な、デッキのバランスを大きく崩すだろうに!」驚愕のウェスタ。

「そうでもありませんよ。そのバランスも含めて、全て運命の流れの中です」微笑する山羊。

「…………」鷹山は沈黙。心なしか口元に浮かべた不敵な笑みが引きつっている。

「なので、()()()()()()()。デッキからBloo-Dとドグマガイを除外融合! さぁ来るのです、三体目のDragoon D-END!」

 

 高らかに宣言する山羊。その頭上の空間が歪み、渦を造り、三体目のDを産み落とす。

 

「三体目、お前さん、ずいぶん重たいデッキをぶん回したもんだな」

「これもまた、運命の流れ、ですかね。Dragoon D-ENDの効果発動。貴方が奪い取った私のDragoon D-ENDを破壊します」

 

 山羊のフィールドに居座るDragoon D-ENDの胴体部にある竜の口が開かれる。

 覗く砲口。その向こう側から赤い輝きが蓄えられた。

 不吉と強大さ、何とも言えぬ破壊力を蓄えた一撃が放たれんとする刹那、鷹山は迅速に動いた。具体的にはデュエルディスクのボタンを押した。

 

「リバースカードオープン! エクストラ・コンバート! 俺の場のゴヨウ・エンペラーを破壊し、代わりにエクストラデッキからゴヨウ・ディフェンダーを守備表示で特殊召喚する!」

 

 翻るリバースカード。次の瞬間、玉座に坐したゴヨウ・エンペラーの姿が幻のように掻き消え、代わりに現れたのは歌舞伎化粧に丁髷、右手に十手、左手に身の丈ほどの大盾を備えた小柄な戦士。守備表示のため、身を縮めて盾を前面に押し出している。

 

「ゴヨウ・エンペラーが俺の場を離れたため、Dragoon D-ENDのコントトールはお前さんに戻る。そしてエクストラ・コンバートの効果で特殊召喚されたモンスターはこのターン、戦闘、カード効果では破壊されない。つまりDragoon D-ENDの効果も無意味ってわけだな」

「そしてマテリアル・チェーンの制約によって、私はこのターン、攻撃を行えない。であれば、仕方ありません。

 ()()()()()()()()()()()()()()() ()()()()()()()()()()()!」

 

 鷹山とウェスタの目が見開かれる。その眼前、変化が現れた。

 供物として捧げられる三体のモンスター。Dragoon D-END達はまるで子供がでたらめに紙を丸めたように()()()()()()になり、屑籠に放り込まれたように異空間――あるいは墓地――へと投げ捨てられた。

 

「来なさい、不変なる法廷巨神テミス!」

 

 そして現れる神。だがその姿はあまりに異端だった。

 十メートルを超える巨体なのは言い。確かに巨大だが、そういう神もいないわけではないだろうし、普段、人の姿を取っていてもいざその姿を解けば怪物めいた姿の神もいるだろう。

 だがどんな神も生物的なものだった。

 しかしこれは違う。

 女神であることは分かる。人間と同じ顔があるからだ。

 ただその顔は無機質だった。人間よりも陶器の人形という印象が近い。

 陶器のように白い肌、球体関節。裁判官が着るような黒い法衣で全身をすっぽり覆い、手以外の肌は見えない。銀色の冑、目にはグレイのバイザー。口元だけが唯一のおしゃれというようにピンクのルージュがひかれている。両肩に身の丈ほどのバカでかい円形の盾。その盾は背中から伸びる鈍色のロボットアームにつながっており、おそらくそれで自在に動かすのだろう。

 機械仕掛けの人形、そんな印象を抱かせる、あまりに異質、異端な神を前に、鷹山は絶句する。

 だが絶句し、さらに強烈なショックを受けていたのはパートナーのウェスタだった。

 

「馬鹿な……、ありえない……」

「ウェスタ?」

 

 鷹山の訝しげな呼びかけにも、ウェスタは答えない。半透明の姿のまま、わなわなと震えている。

 

「奴は、()()()()()()()()()()()()()!」

「どういうことだウェスタ?」相棒の困惑についていけず、問いただす鷹山。

 

 苦い表情を作って、ウェスタは語る。

 

「間違いない。神々の戦争の参加者の中に、テミスという名の神はいない。貴様、何者だ!?」

「テミスはテミス。それ以上のものではありません。それ以外のものでもありません」

 

 誰何の声への返答は清廉な音色のオルゴールが人語を話したような耳に心地よく、しかし機械的で冷たい声音。テミスと名乗る神がその唇を小さく動かしたのだ。

 激高するウェスタ。「聞きたいのはそういうことではない! 神々の戦争の参加者ではない、しかし神性存在である貴様。貴様は何故人界にいる!?」

 淡々と返答するテミス。「お答えする義務はありません」

 なおも言いつのろうとするウェスタを、山羊が遮った。

 

「埒があきませんね。ではこうしましょう。私はテミスがなぜここにいるのか応えることができます。私に勝てたならば、その答えをお教えしましょう」

「シンプルだな。そして手っ取り早い」

 

 応じたのはウェスタではなく、彼女のパートナーの鷹山。彼はにやりと笑い、

 

「そういうことだウェスタ。勝てば色々得られる。シンプルで、戦いの基本原則だ。ルールに従おうぜ?」

 

 不機嫌に唸るウェスタだったが、やがて了承した。テミスに語るつもりがない以上、パートナーから聞き出すしかない。例えテミスが脱落しようとも、なぜ彼女が人界にいるのか、その理由は知っておくべきだ。

 

「それで? お前さんのターンの途中だったが、終了かい?」

「いいえ。カードを一枚伏せます。これでターン終了です」

 

 

終わりの始まり:通常魔法

自分の墓地に闇属性モンスターが7体以上存在する場合に発動する事ができる。自分の墓地に存在する闇属性モンスター5体をゲームから除外する事で、自分のデッキからカードを3枚ドローする。

 

大欲な壺:速攻魔法

「大欲な壺」は1ターンに1枚しか発動できない。(1):除外されている自分及び相手のモンスターの中から合計3体を対象として発動できる。そのモンスター3体を持ち主のデッキに加えてシャッフルする。その後、自分はデッキから1枚ドローする。

 

フュージョン・ゲート:フィールド魔法

このカードがフィールド上に存在する限り、ターンプレイヤーは手札・自分フィールド上から融合モンスターカードによって決められた融合素材モンスターをゲームから除外し、その融合モンスター1体を融合召喚扱いとしてエクストラデッキから特殊召喚する事ができる。

 

チェーン・マテリアル:通常罠

このカードの発動ターンに自分が融合召喚をする場合、融合モンスターカードによって決められた融合素材モンスターを自分の手札・デッキ・フィールド上・墓地から選んでゲームから除外し、これらを融合素材にできる。このカードを発動するターン、自分は攻撃する事ができず、この効果で融合召喚したモンスターはエンドフェイズ時に破壊される。

 

Dragoon D-END 闇属性 ☆10 戦士族:融合

ATK3000 DEF3000

「D-HERO Bloo-D」+「D-HERO ドグマガイ」

このカードの融合召喚は上記のカードでしか行えない。(1):1ターンに1度、相手フィールドのモンスター1体を対象として発動できる。その相手モンスターを破壊し、表側表示モンスターを破壊した場合、その攻撃力分のダメージを相手に与える。この効果を発動するターン、自分はバトルフェイズを行えない。(2):このカードが墓地に存在する場合、自分スタンバイフェイズに自分の墓地の「D-HERO」カード1枚を除外して発動できる。このカードを墓地から特殊召喚する。

 

エクストラ・コンバート:通常罠

(1):自分モンスターゾーンに存在するエクストラデッキから特殊召喚されたモンスター1体を破壊し、そのモンスターよりもレベルの低いモンスター1体を、エクストラデッキから特殊召喚する。この効果によって特殊召喚されたモンスターはこのターン、戦闘、カードの効果によって破壊されない。

 

ゴヨウ・ディフェンダー 地属性 ☆3 戦士族:シンクロ

ATK1000 DEF1000

チューナー+チューナー以外のモンスター1体以上

(1):1ターンに1度、自分フィールドのモンスターが戦士族・地属性のSモンスターのみの場合に発動できる。エクストラデッキから「ゴヨウ・ディフェンダー」1体を特殊召喚する。(2):このカードが攻撃対象に選択された時に発動できる。このカードの攻撃力はそのダメージステップ終了時まで、このカード以外の自分フィールドの戦士族・地属性のSモンスターの数×1000アップする。

 

不変なる法定巨神テミス 神属性 ☆10 幻獣神族:効果

ATK3500 DEF4000

このカードは特殊召喚できない。このカードは3体のモンスターをリリースしてのみ通常召喚できる。(1):このカードは神属性、幻神獣族モンスターの効果以外のカード効果ではフィールドを離れず、コントロールも変更されない。(2):このカードが相手のカードの効果を受けた時、エンドフェイズにこのカードに対するそのカード効果を無効にする。(3):???(4):???

 

 

「俺のターン! ドロー!」

 

 神が出てきた以上、鷹山にはもう後がない。ライフも2000を切っているので、なおさらこのターンで何とかしなければならないだろう。何しろ次の山羊のターンには、ほぼ確実に三体のDragoon D-ENDが復活する。そうなれば物量で押し負ける。

 だが現状、鷹山の手札は0枚。このドローに文字通りすべてがかかっている。

 デッキトップからカードを引く。確認するまでの間が妙に長く感じられた。

 だが、次の瞬間、鷹山の胸に去来したのは確かな安心感だった。

 感じたのは神の気配。共に戦ったパートナーの現身であるカード。

 確認するまでもない。鷹山もまた、この土壇場で神を引き当てたのだ。

 

「ゴヨウ・ディフェンダーの効果発動! エクストラデッキから二体目のゴヨウ・ディフェンダーを特殊召喚! さらに二体目のゴヨウ・ディフェンダーの効果発動! 三体目のゴヨウ・ディフェンダーを特殊召喚!

 これで準備は整ったぜ! 三体のモンスターをリリース!」

 

 立て続けに特殊召喚されたモンスターたちが、次の瞬間には消えていく。

 光の粒子となって消えていくモンスターたち。モンスターの命が場を作り、門となる。

 そして、神が降臨する。

 燃え盛る炎の髪、金色の双眸に黄金の袖なしアーマー。肘部分には揺らめく炎。黒いスカートパーツで足は見えない。まさしく燃え盛る炎が人の形をとったが風情。

 降臨した神、即ちウェスタが叫ぶ。

 

「テミス!」

 

 テミスは沈黙。バイザーの向こうの瞳は何を思っているのか、まるで伺えない。鷹山はバイザーの奥にはガラス玉がはまっているのではないかと思った。

 沈黙にも構わず、ウェスタが続ける。

 

「貴様がなぜそこにいるのか、今はすべて心から追い出そう。我が一撃で、屠るまでだ! 勇次!」

「おう! ウェスタでテミスに攻撃!」

 

 パートナーの意を組んで鷹山の号令が飛ぶ。ウェスタは全身に炎を纏わせ、一気呵成に咆哮を上げて突進した。

 一個の弾丸と化したウェスタ。その超高熱、高質量、超加速の一撃に対して、テミスは背中のロボットアームを起動。左右の盾を前面に展開した。

 激突。轟音が迸り、熱波が目に見えぬ波となって放射状に放たれた。

 

 だが攻撃力はウェスタはテミスに劣っている。ウェスタの一撃はテミスの防御を抜けられず、逆に衝突のダメージでウェスタの炎は燃え散った。しかしウェスタ本人は無事だ。これはウェスタの効果による。

 

「この瞬間、ウェスタの効果発動! このターン、ウェスタの破壊を無効にする! ぐぅ!」

 

 痛みに顔を顰める鷹山。ウェスタを守れても、ダメージがなくなったわけではない。フィードバックは当然、鷹山を襲う。

 だが鷹山は痛みをねじ伏せ、吠えた。

 

「さらにこの瞬間、ウェスタのもう一つの効果発動! テミスを除外し、その攻撃力分のダメージを与える!」

 

 テミスの盾と盾の隙間に、ウェスタが手をかけた。

 徐々に盾の壁が左右に開かれる。開いた盾の間から顔を覗かせるウェスタ。その顔がにやりと笑みを浮かべた。

 

「消えろ、テミス!」

 

 ウェスタの全身から再び炎があふれる。炎はいくつも鎌首をもたげる蛇のようにテミスに襲い掛かり、次々にその身体に噛みついた。

 

「ッ! リバーストラップ、ダメージ・ダイエット発動! このターン、私へのあらゆるダメージを半減させます!」

「それがどうしたぁ!」

 

 小細工など意味はないとばかりに叫ぶウェスタ。炎が完全にテミスを飲み込んだ。

 一匹の大蛇となった炎が、今度は山羊を襲う。

 疾走、跳躍し、逃げる山羊。だが炎は追いかける。

 地表を舐める炎。山羊は間一髪、地面を転がって宝珠への攻撃は避けた。

 

「ぐぅ……!」

 

 ただし避けられたのはそこまで。炎の蛇の牙は確かに山羊の背中をかすめた。

 背中からはね起きた痛みに身悶えする山羊。ともあれ宝珠は無事だ。ならばまだ戦える。

 否――――

 ()()()()()()()()()()()()()()()

 

「鷹山勇次さん。敗北の運命が、貴方を捕まえました」

「ッ!?」

 

 驚愕に目を見開く鷹山。その胸の宝珠に今、深々と白銀の刃が突き立っていた。

 

「勇次!?」

 

 驚愕はウェスタも同じ。同時に疑問もあった。

 確かに自分はテミスを倒したはず、なのになぜ鷹山の宝珠に刃が突き刺さり、あまつさえ、彼のライフが0になっているのか。

 刃の正体は両刃の剣。使い手はいない。

 

「テミスは法と定理の神です。ゆえに、テミスを場から排除することは法の否定、理の破壊になります。それは決して許されない罪状です」

 

 人語を話すオルゴールのような耳に心地よく、しかし冷たい声音。テミスのものだ。

 テミスの姿は見えない。ただ声だけが響く。当然と言えば当然、テミスはウェスタによってゲームから除外されているのだ。フィールドにだっていやしない。

 

「テミスの効果ですよ」

 

 そして解説は山羊の役目。彼は薄い微笑を浮かべながら告げた。

 

「テミスはフィールドから離れた時、攻撃力分のダメージを与えます。つまり貴方は3500のダメージを受け、ライフは0になったのです」

「なるほど、な……」

 

 苦痛に脂汗を流す鷹山は、納得したように頷き、がっくりと膝をついた。

 

「勇次!」

 

 敗北のショックよりも、ウェスタはパートナーの身を案じた。

 鷹山は薄れゆく意識の中、ウェスタに大丈夫だと使えたかった。

 声を出したくて息を吸ったが、肺がうまく動かなかったから声が出なかった。そのことを残念だと思った。

 ガラスが割れるような音を立てて、宝珠が砕け散った。ウェスタは最後まで鷹山を気遣っていた。

 結局、パートナーに気の利いたことを言えずに別れることになってしまい、そのことを鷹山はひどく残念に思って、彼の意識は闇に堕ちた。

 

 

不変なる法定巨神テミス 神属性 ☆10 幻獣神族:効果

ATK3500 DEF4000

このカードは特殊召喚できない。このカードは3体のモンスターをリリースしてのみ通常召喚できる。(1):このカードは神属性、幻神獣族モンスターの効果以外のカード効果ではフィールドを離れず、コントロールも変更されない。(2):このカードが相手のカードの効果を受けた時、エンドフェイズにこのカードに対するそのカード効果を無効にする。(3):このカードがフィールドを離れた時に発動できる。このカードの攻撃力分のダメージを相手に与える。(4):???

 

 

守護の炎神ウェスタ 神属性 ☆10 幻神獣族:効果

ATK3000 DEF3000

このカードは特殊召喚できない。このカードは3体のモンスターをリリースしてのみ通常召喚できる。(1):このカードは神属性、幻神獣族モンスターの効果以外のカード効果ではフィールドを離れず、コントロールも変更されない。(2):このカードが相手のカードの効果を受けた時、エンドフェイズにこのカードに対するそのカード効果を無効にする。(3):1ターンに1度、自分フィールドのカード1枚を選択して発動できる。選択したカードはターン終了時まで戦闘及びカードの効果によって破壊されない。この効果は相手ターンでも発動できる。(4):このカードが戦闘で相手モンスターを破壊できなかったダメージステップ終了時に発動する。戦闘した相手モンスターをゲームから除外し、除外したモンスターの元々の攻撃力分のダメージを相手に与える。

 

 

鷹山LP0

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