神々の戦争   作:tuki21

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第68話:千里眼の番神

 和輝の眼前で展開されるモンスターたち。

 ロード・ウォリアーとジェット・ウォリアー。その合計攻撃力は5100。二体のダイレクトアタックをまともに受ければライフ3900の和輝のライフは根こそぎ吹き飛ばされる。

 悪いことに和輝のフィールドにはもうカードがない。絶体絶命というやつだった。

 

「さて、いよいよバトルフェイズに入ろうか! 覚悟はいいかね岡崎君? この攻撃、躱せなければそこで終わると思いたまえよ。ジェット・ウォリアーでダイレクトアタック!」

 

 無論、相手のダイレクトアタックを前にして、和輝が油断していたわけでなはい。

 むしろこれ以上ないほど警戒し、身構えていた。

 にも拘らず、()()()()()()

 ジェット・ウォリアーの初動を感じ取れず、気付いた時、和輝は腹部に激痛を感じていた。

 

「が……!」

 

 呼気が漏れる。視線を下に向ければ、ジェット・ウォリアーの右足が槍のように伸ばされ和樹の右わき腹に突き刺さっていた。

 衝撃が遅れてやってくる。和輝の身体が後ろに吹っ飛ばされる。一度床に背中から激突し、バウンド。今度はうつ伏せ状態で倒れた。

 

「ぐ……お……」

 

 まったく予想外の一撃。しかしそれでも和輝はさすがといえた。宝珠狙いを蹴りに対してわずかに体をそらし、バックステップによって宝珠への直撃は回避した。気付き、気付かずを超えた、戦いの経験から来る反射の領域の行動。それが和輝を救ったのだった。

 

「なんだ……今のは……」

「レッスン1。神々の戦争において、相手へのダイレクトアタックは特別な意味を持っている」

 

 驚愕と疑問が脳裏に渦巻く中、和輝の耳朶をフレデリックの言葉が叩いた。

 

「何?」

「モンスターの動き、攻撃の激しさ、鋭さ。それらは全て、プレイヤーの意志、つまり精神の力に左右される。これもその応用だよ。大事なのは精神の力。激情に任せて攻撃するのではなく、ね」

「……神々の戦争は奥が深いな。闇のカードや、こんな戦い方もあるとはね」

「確かに。そして分かったことが一つ。あの男、こっちの宝珠をわざと外しやがった」

 

 苦い表情の和輝。フレデリックは相変わらず内面を知らせない笑みを浮かべたままだ。

 

「ちなみに精神の力は防御にも転用できるよ。試してみるかな? ロード・ウォリアーでダイレクトアタック!」

 

 ロード・ウォリアーがマントパーツを取り外す。光が走り、今度作り出したのは道ではなく、巨大な剣。光の剣を、大上段から振り下ろす。

 速く、重い。だが今度は和輝も動けた。モンスターの攻撃を感じ取れないなら、プレイヤーの行動を観察すればいい。和輝はフレデリックの攻撃宣言が終わるより速く、手札からカードを抜き放っていた。

 

「手札の虹クリボーの効果発動! このカードをロード・ウォリアーに装備する!」

 

 剣を振り下ろしたはずのロード・ウォリアーの動きが止まる。戦士の眼前に小さな悪魔が現れ、必死に主人である和輝を守るようにロード・ウォリアーにまとわりつく。

 

「おっと、生命線は確保していたか。それでこそ。私は、カードを四枚セットして、ターンエンドだ」

 

 

虹クリボー 光属性 ☆1 悪魔族:効果

ATK100 DEF100

「虹クリボー」の(1)(2)の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。(1):相手モンスターの攻撃宣言時に、その攻撃モンスター1体を対象として発動できる。このカードを手札から装備カード扱いとしてそのモンスターに装備する。装備モンスターは攻撃できない。(2):このカードが墓地に存在する場合、相手モンスターの直接攻撃宣言時に発動できる。このカードを墓地から特殊召喚する。この効果で特殊召喚したこのカードは、フィールドから離れた場合に除外される。

 

 

和輝LP3900→1800手札7枚

フレデリックLP5000手札6枚(うち1枚は暗黒竜コラプサーペント)

 

 

「俺のターンだ、ドロー!」

 

 和輝がカードをドローする様子を観察しながら、フレデリックは隣で新たな気配が立つのを感じていた。

 見なくてもわかる。そこに立っているのは男。

 縦にも横にもでかい大柄な男。短めの銀髪に赤い瞳。左目は黒い眼帯をつけており、銀の鋲が入った黒の革製ジャケット、黒のレザーパンツのパンクルック。

 無論、フレデリックが契約を交わした神、ヘイムダルであった。

 

「おやヘイムダル。ついに姿を現したかね」

「ああ」

 

 笑みを浮かべたフレデリックの問いかけに対し、ヘイムダルは巌のように表情を変えず、ただ首肯した。

 

「ロキは相変わらず本気なんだかそうじゃないのかわからんが、少なくとも契約者の少年に対しては本気が伝わってきた。そこに敬意を払うのはおれとしては当然のことだ」

 

 ロキとヘイムダル。この二柱の因縁は神話の時代から続いている。

 北欧神話。ロキは悪戯の神として多くの悪事をこなし、オーディンの息子であるトールと多くの冒険を経験した。

 ヘイムダルは神々の国、アースガルズの門番でもあった。

 本来なら交わらない関係だったが、ロキの悪戯が度々度を越し、ヘイムダルと相対することもあった。

 例えば、ロキが愛の女神フレイヤから秘宝、ブリージンガメンの首飾りを盗んだ際、これを奪還しに出動したヘイムダルと散々()()()()()

 以来二柱の関係はこじれにこじれ、事あるごとに衝突、または殺し合いの一歩手前まで行き、オーディンやトールに力づくで止められたこともある。もっとも、もともと冒険でも荒事をトールに任せていたロキは、まともに戦わず幻惑し、罠にはめてヘイムダルの戦力を削ぎにかかってきていたので、生粋の武人であるヘイムダルにはそれも気に入らない。

 何も正々堂々戦えとは言わないが、不意打ち、奇襲、罠があまりにも悪辣で、閉口する以外になかったのだ。

 北欧神話に語られる『ロキの口論』でも散々に侮辱され、そして人界に語られる北欧神話では、ついに最後の戦い、神々の黄昏(ラグナロク)にてロキとヘイムダルは雌雄を決することになった。

 ヘイムダル個人としては、人間の間で伝えられるこの物語の自分の役割がロキの宿敵なのはともかく、その結末が引き分けというのも面白くない。

 

「なーんか、気難しい顔して過去回想とかしてそうだなぁ」

 

 対するロキの方は、姿を現したヘイムダルに対して不平たらたらだった。この二柱仲悪いなと内心で思ったが、和輝は言葉には出さずにカードを操ることに集中した。余計なことを考えていては一瞬で()()()()()()()。フレデリックはそういう強敵だった。

 

「手札からガード・オブ・フレムベルを捨て、調和の宝札を発動。カードを二枚ドロー!

 よっし! 死者蘇生発動! 墓地より甦れ、ブラック・マジシャン!」

 

 和輝の墓地から再び現れる黒衣の魔術師。だが今更攻撃力2500の通常モンスターが出てきたところで、戦況を変化できるとは思えない。ジェット・ウォリアーはともかく、ロード・ウォリアーには敵わないし、そもそもフレデリックの場には四枚の伏せカードがある。やみくもに攻撃しても罠に嵌り、虎穴に入った哀れな獲物のように返り討ちに会うのが関の山だ。

 否。ブラック・マジシャンがいる。その事実がフレデリックのあるカードの存在を思い当たらせた。

 おりしも前のターン、ジャンク・デストロイヤーの効果で破壊した永続罠、永遠の魂。あのカードがあるならば、当然あの魔法カードもデッキに入っているはず。

 そしてフレデリックの懸念は次の瞬間、現実のものとなった。

 

「魔法カード、黒・魔・導(ブラック・マジック)発動! あんたの魔法、罠をすべて破壊する!」

 

 和輝がカードをデュエルディスクにセットした瞬間、ブラック・マジシャンが手にした杖を構えた。

 放たれたのは黒い球。紫色の雷を帯電させた球体はまっすぐ突き進み、ブラック・ホールのような引力でフレデリックの魔法・罠ゾーンにあるカードを飲み込み始めた。

 

「ただバックを割られただけにするのは嫌だね! チェーンして、伏せていた非常食を発動! 非常食を除く四枚の魔法、罠全てを墓地に送り、ライフを4000回復! さらに今墓地に送られた一枚はリミッター・ブレイク。その効果で、デッキからスピード・ウォリアーを守備表示で特殊召喚させてもらうよ」

 

 フレデリックのライフが大幅に回復し、さらに壁とはいえ、モンスターが一体増えた。決して望ましい成果ではなかったが、とにかくフレデリックのバックは剥がせた。つまり、

 

「攻勢の時間だね! 行っちゃいなよ、和輝」

「おうともよ! デブリ・ドラゴンを召喚し、効果発動! 墓地から増殖するGを特殊召喚する。そして、レベル2の増殖するGに、レベル4のデブリ・ドラゴンをチューニング!」

 

 和輝の右手が力強く天を衝く。彼のフィールドに、四つの緑の輪となったデブリ・ドラゴンとその輪を潜って二つの白い星となった増殖するGが光に包まれる。

 

「集いし六星が、神秘を内包せし東洋龍を紡ぎ出す! 光さす道となれ! シンクロ召喚、荒波立てろ、オリエント・ドラゴン!」

 

 現れたのは、どことなく孔雀や鳳凰を思わせる翼の形状をした、鋭い爪もつドラゴン。その名の通り、オリエンタルな香り漂う姿をしている。

 

「オリエント・ドラゴン効果発動! あんたの場にいるジェット・ウォリアーを除外する!」

「おっと、それは困るな。手札のエフェクト・ヴェーラーの効果発動! オリエント・ドラゴンの効果を無効にしよう!」

 

 止められた。ジェット・ウォリアーは墓地から自己再生できるので、できれば除外しておきたかったが、事はそう簡単に運ばないようだ。

 

「止まるなよ和輝! 今攻めないと、次のミスターのターンでぶっ叩かれるぞ!」

「わかってる! 魔法カード、融合発動! 俺の場にいるブラック・マジシャンとオリエント・ドラゴンを融合!」

 

 和輝の頭上の空間が歪み、渦を作る。そして和輝のフィールドに存在していたブラック・マジシャンとオリエント・ドラゴンが、その渦に向かって飛び込んだ。

 二体のモンスターが渦の中で溶け合い、混ざり合う。

 

「黒衣の魔術師よ、東洋の神秘龍よ。今一つとなって魔を断つ竜魔導士へと変じよ! 融合召喚、現れろ、呪符竜(アミュレット・ドラゴン)!」

 

 渦の中から新たなモンスターが現れる。

 それは体中に魔術文字が浮かび上がった、緑の体色のドラゴンと、その背に跨ったブラック・マジシャン。和輝のデュエルで度々登場する、彼の火力面を支える一体だ。

 

「呪符竜の効果発動! あんたの墓地にある死者蘇生を除外し、呪符竜の攻撃力を100アップさせる!」

 

 たった100ポイントの強化。これでは呪符竜の攻撃力は3000止まり。ロード・ウォリアーと相打ちだ。

 だがフレデリックは和輝の思考を読んでいた。なぜ彼がこのような中途半端な強化をしたのか、その理由を察していた。

 

「最大火力を捨ててまで、攻め手を増やすか……!」

「ただの力押しじゃあ、意味はなさそうだからな! 俺はスケール8の跳兎(はねうさぎ)の魔術師を、Pゾーンにセッティング!」

 

 和輝の右側には落龍の魔術師が収まった円柱があった。今、空だった左側に、再び光の円柱が立ち昇る。

 浮かび上がった数字は「8」、中に納まったのは白い肌、赤い瞳をした男の子。

 頭に白い兎の耳、背中にはウサギのしっぽを模したと思われる丸い、すっぽりと中に隠れられそうなほど大きな飾り。額にゴーグルをかけ、利発そうな笑みを浮かべ、簡略化された白に銀糸があしらわれたローブに、半分ほどに切り詰められた魔法の杖。

 魔術師であるが、活発な子供の面も残した少年だった。

 

「跳兎の魔術師のP効果。このカードがPゾーンにセットされたとき、反対のPゾーンにあるPカードを破壊できる。俺は落龍の魔術師を破壊する」

 

 ガガン。派手な音を立てて円柱が崩れ落ちる。フレデリックはややわざとらしく驚いて見せた。

 

「ふむ。わざわざ完成されたスケールを崩すとは。つまり君の手札には新たなPモンスターがいるということだね?」

「こたえる意味は感じないな。どうせ見せるし。俺はスケール1の白羊の魔術師をセット!」

 

 崩された円柱がまたしても立ち昇る。

 今度おさめられたのは、もこもこの羊の毛皮を全身にまとった、眠そうな顔をした少女。首には鈴を下げ、右手に樫の木でできた杖を、頭の羊の角に紫のとんがり帽子をひっかけている。

 

「刻まれたスケールは1と8。よって俺は、レベル2から7のモンスターを同時に召喚できる!

 振り子は揺れる。避けえぬ宿命を乗せて! 天空に描かれる光のアークが、異界への門へと変じる! ペンデュラム召喚! まずはエクストラデッキから猿渡の魔術師と牛刺の魔術師、さらに落龍の魔術師を。そして手札からオッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴンを俺の舞台に呼び込むぜ!」

 

 和輝の頭上に開いた光の門。そこから四つの輝きが地上、即ち和輝のフィールドに向かって降り立った。

 現れた三体の魔術師と、一体の地上疾走型のドラゴン。

 

「P召喚も交えて、一気に展開してきたか。この少年、やはり機を見ている。今が攻め込む最大の好機だと、確信しているようだぞ」

 

 満足げに語るヘイムダル。そうだろうとフレデリックは頷いた。

 そして和輝のこの展開を予想していた探偵と神と違い、カトレアは純粋に驚いていた。

 バック四枚というのはどうしても動くのに躊躇する布陣だ。それを吹き飛ばし、のみならず、自在にPカードを操り、S召喚から始まり融合召喚をしてのけた。

 であれば、ひょっとしたらもう一つ、X召喚の行えるかもしれない。

 P召喚は後に融合、シンクロ、エクシーズにつなげやすいが、そのすべてを一ターンでこなすというのか、この少年は。

 

「白羊の魔術師のP効果! このカードは一ターンに一度、俺の場の魔法使いかドラゴン族モンスター一体のレベルを一つ、上げるか下げることができる! 俺はレベル5の猿渡の魔術師のレベルを一つ下げて4にする。

 レベル4となった猿渡の魔術師と牛刺の魔術師をオーバーレイ! 二体のモンスターで、オーバーレイネットワークを構築! エクシーズ召喚!」

 

 カトレアの予想は的中した。和輝の頭上に、渦巻く銀河のような空間が展開され、その渦に紫の光となった二体の魔術師が飛び込んでいく。

 

「星を読む瞳。時を観る眼。大いなる彼方より、来たれ星刻の魔術師!」

 

 虹色の爆発が起こり、その粉塵の向こうから現れる新たな魔術師の姿。

 それは時読みの魔術師と星読みの魔術師がそれぞれ腕につけていた装具を左右の手に備えた、瞳のみが覗くフードで顔を隠した魔術師。その外見はまさしく時読みと星読み、二体の魔術師の特徴を合わせたようだ。

 

「バトルだ! 呪符竜でロード・ウォリアーを攻撃!」

 

 ついに下される和輝の攻撃命令。呪符竜、正確にはブラック・マジシャンが乗ったドラゴンが大口を開き、そこから金色の炎を放つ。

 対してロード・ウォリアーは巨大なドラゴンに臆することなく地を蹴り、マントパーツを外し、光の剣を形成。一気に躍りかかった。

 炎を切り裂く光の剣。だが炎もまたロード・ウォリアーを飲み込み、その身を苛み続ける。

 ついに光の剣が炎を貫いて呪符竜に届いた。

 喉を貫かれたドラゴンは苦痛の絶叫を上げて地に倒れ伏す。だがそこで、戦士もまた地面に膝をつき、がくりと力尽きた。

 壮絶な相打ち。だが、モンスターの数が減ったのはフレデリックのフィールドだけだった。

 和輝のフィールド、そこにはさっきまでドラゴンの上に乗っていたブラック・マジシャンの姿があった。

 

「呪符竜の効果発動! 破壊されたため、墓地からブラック・マジシャンを特殊召喚する!」

 

 チッチッチと舌を鳴らし、指を振る黒魔術師。

 

「まだバトルは続いている。オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴンでジェット・ウォリアーを、星刻の魔術師でスピード・ウォリアーを攻撃!」

 

 怒涛の攻撃宣言。オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴンが地を蹴って疾走、跳躍。滞空するジェット・ウォリアーの上を取って、螺旋を描く炎を吐き出した。

 ガードするジェット・ウォリアー。だが螺旋の炎はジェット・ウォリアーの体内に潜航し、貫通し、爆散させる。

 

「ぐふぅ! 戦闘ダメージの倍加は殺意マシマシだね!」

 

 ふざけた物言いのフレデリックの眼前で、光の矢を雨のように放つ星刻の魔術師の攻撃が、スピード・ウォリアーを穿つ。

 がら空きのフィールド。しかし和輝のフィールドにはまだ、ブラック・マジシャン、落龍の魔術師が攻撃の権利を残している。

 

「ブラック・マジシャンでダイレクトアタック!」

 

 一瞬、和輝は先ほどフレデリックがやったように、精神を研ぎ澄ましたあの一撃ができないかと考え、やめた。今いきなり新しい概念を取り入れたところで、ぶっつけ本番だ。うまくいくほど世界は都合がよくはない。それに、余計なことを考えながらの攻撃はそれこそ威力減衰につながる。

 ゆえに、和輝はいつも通り、攻撃を宣言した。

 一撃目。黒衣の魔術師が無手の左手をフレデリックへと掲げ、黒い波動を放つ。

 フレデリックはよけるそぶりは見せず、ブラック・マジシャンの攻撃を受けた。

 衝撃が轟音となってデュエル場内を駆け抜け、紳士の身体が後方に後ずさった。

 が、杜若色の宝珠は無傷。

 

「罅さえ入ってない? 和輝、手加減した?」

「なわけあるか」

「レッスン2。言ったろう? 精神の力は防壁にも転用できると。宝珠の強度もまた、プレイヤー次第さ。動揺し、追い詰められれば脆く、山のように泰然自若としているのならば、硬くなる。

 ちなみに私程度では神のダイレクトをまともに受ける自信はないが、飛びぬけた資質や肉体強度の持ち主なら、神のダイレクトでさえも防いでしまうかもね。例えば――――デュエルキングのように」

「ッ!」

 

 和輝の脳裏をよぎったのは、六道天とのデュエル。確かに彼は3500のバーンダメージに対して小動(こゆるぎ)もしなかった。残り五十組。ああいうのがごろごろいるのだろうか。

 考える和輝の耳朶を、フレデリックの声が叩いた。

 

「立ち止まっている暇があるのかね? 私のフィールドにカードが存在しない時に戦闘ダメージを受けたため、手札の冥府の使者ゴーズを特殊召喚! さらに冥府の使者カイエントークンを、守備表示で特殊召喚だ!」

 

 フレデリックを守るように和輝の前に立ちはだかる男女の騎士。男の方は赤い髪に黒のバイザー、防御力よりも敏捷性を重視したと思われる軽装鎧に身を包み、肉厚の片刃の大剣を携えていた。

 対して女の方は素顔を晒し、冑、鎧、長剣姿。静かな、しかし冷たい表情で和輝を見据える。

 

「やっぱり、防御札を隠し持ってたよこの紳士!」

「覚悟の上だ。落龍の魔術師でゴーズを攻撃! さらにこの瞬間、俺は星刻の魔術師の効果を発動! デッキからライトロード・メイデンミネルバを墓地に送り、落龍の魔術師に破壊耐性を付加する! さらにミネルバの効果で、デッキトップ一枚を墓地に送る!」

 

 星刻の魔術師が、落龍の魔術師に対して薄緑色のヴェールのようなバリアーを貼る。落龍の魔術師は杖をふるい、激流を発生させた。

 激流は荒ぶる龍のようにくねり、唸りを上げて冥府の使者の傍らに迫る。

 ゴーズは大剣を投擲したが、直後に激流に流されてしまった。ゴーズが投げ放った剣の一撃は、しかし星刻の魔術師が張ったバリアーによって落龍の魔術師には届かない。

 

「メインフェイズ2に入り、星刻の魔術師のもう一つの効果を発動。ORUを一つ使い、デッキから三枚目のブラック・マジシャンを手札に加える。そして闇の誘惑を発動、カードを二枚ドローし、ブラック・マジシャンを除外する。カードを一枚セットして、ターンエンドだ」

 

 

調和の宝札:通常魔法

手札から攻撃力1000以下のドラゴン族チューナー1体を捨てて発動できる。デッキからカードを2枚ドローする。

 

黒・魔・導:通常魔法

(1):自分フィールドに「ブラック・マジシャン」が存在する場合に発動できる。相手フィールドの魔法・罠カードを全て破壊する。

 

非常食:速攻魔法

(1):このカード以外の自分フィールドの魔法・罠カードを任意の数だけ墓地へ送って発動できる。自分はこのカードを発動するために墓地へ送ったカードの数×1000LP回復する。

 

リミッター・ブレイク:通常罠

(1):このカードが墓地へ送られた場合に発動する。自分の手札・デッキ・墓地から「スピード・ウォリアー」1体を選んで特殊召喚する。

 

スピード・ウォリアー 風属性 ☆2 戦士族:効果

ATK900 DEF400

(1):このカードの召喚に成功したターンのバトルステップに発動できる。このカードの攻撃力はバトルフェイズ終了時まで元々の攻撃力の倍になる。

 

デブリ・ドラゴン 風属性 ☆4 ドラゴン族:チューナー

ATK1000 DEF2000

このカードをS素材とする場合、ドラゴン族モンスターのS召喚にしか使用できず、他のS素材モンスターは全てレベル4以外のモンスターでなければならない。(1):このカードが召喚に成功した時、自分の墓地の攻撃力500以下のモンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターを攻撃表示で特殊召喚する。この効果で特殊召喚したモンスターの効果は無効化される。

 

オリエント・ドラゴン 風属性 ☆6 ドラゴン族:シンクロ

ATK2300 DEF1000

チューナー+チューナー以外のモンスター1体以上

このカードがシンクロ召喚に成功した時、相手フィールド上のシンクロモンスター1体を選択してゲームから除外する。

 

エフェクト・ヴェーラー 光属性 ☆1 魔法使い族:チューナー

ATK0 DEF0

(1):相手メインフェイズにこのカードを手札から墓地へ送り、相手フィールドの効果モンスター1体を対象として発動できる。その相手モンスターの効果をターン終了時まで無効にする。

 

融合:通常魔法

(1):自分の手札・フィールドから、融合モンスターカードによって決められた融合素材モンスターを墓地へ送り、その融合モンスター1体をエクストラデッキから融合召喚する。

 

呪符竜 闇属性 ☆8 ドラゴン族:融合

ATK2900 DEF2500

「ブラック・マジシャン」+ドラゴン族モンスター

このカードは上記カードを融合素材にした融合召喚または「ティマイオスの眼」の効果でのみ特殊召喚できる。(1):このカードが特殊召喚に成功した場合、自分・相手の墓地の魔法カードを任意の数だけ対象として発動する。そのカードを除外し、このカードの攻撃力はその除外したカードの数×100アップする。(2):このカードが破壊された場合、自分の墓地の魔法使い族モンスター1体を対象として発動できる。その魔法使い族モンスターを特殊召喚する。

 

跳兎の魔術師 闇属性 ☆4 魔法使い族:ペンデュラム

ATK1300 DEF2100

Pスケール8

P効果

(1):このカードがPゾーンにセットされた時に発動できる。反対側のPゾーンのPカードを破壊できる。(2):???

モンスター効果

なし

 

白羊の魔術師 闇属性 ☆2 魔法使い族:チューナー・ペンデュラム

ATK900 DEF1300

Pスケール1

P効果

(1):1ターンに1度、自分の表側魔法使い族モンスターまたはドラゴン族モンスター1体を対象に発動できる。そのモンスターのレベルを1つ上げるか下げる。

モンスター効果

(1):???

 

オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン 闇属性 ☆7 ドラゴン族:ペンデュラム

ATK2500 DEF2000

Pスケール赤4/青4

P効果

「オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン」の(1)(2)のP効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。(1):自分のPモンスターの戦闘で発生する自分への戦闘ダメージを0にできる。(2):自分エンドフェイズに発動できる。このカードを破壊し、デッキから攻撃力1500以下のPモンスター1体を手札に加える。

モンスター効果

(1):このカードが相手モンスターと戦闘を行う場合、このカードが相手に与える戦闘ダメージは倍になる。

 

星刻の魔術師 闇属性 ランク4 魔法使い族:エクシーズ

ATK2400 DEF1200

レベル4「魔術師」Pモンスター×2

このカードは上記のカードをX素材にしたX召喚でのみエクストラデッキから特殊召喚できる。(1):1ターンに1度、このカードのX素材を1つ取り除いて発動できる。自分のデッキ・墓地のモンスター及び自分のエクストラデッキの表側表示のPモンスターの中から、魔法使い族・闇属性モンスター1体を選んで手札に加える。(2):1ターンに1度、自分のモンスターゾーン・PゾーンのPモンスターカードが戦闘・効果で破壊される場合、代わりに自分のデッキから魔法使い族モンスター1体を墓地へ送る事ができる。

 

冥府の使者ゴーズ 闇属性 ☆7 悪魔族:効果

ATK2700 DEF2500

自分フィールド上にカードが存在しない場合、相手がコントロールするカードによってダメージを受けた時、このカードを手札から特殊召喚する事ができる。この方法で特殊召喚に成功した時、受けたダメージの種類により以下の効果を発動する。●戦闘ダメージの場合、自分フィールド上に「冥府の使者カイエントークン」(天使族・光・星7・攻/守?)を1体特殊召喚する。このトークンの攻撃力・守備力は、この時受けた戦闘ダメージと同じ数値になる。●カードの効果によるダメージの場合、受けたダメージと同じダメージを相手ライフに与える。

 

闇の誘惑:通常魔法

(1):自分はデッキから2枚ドローし、その後手札の闇属性モンスター1体を除外する。手札に闇属性モンスターが無い場合、手札を全て墓地へ送る。

 

星刻の魔術師ORU×1

冥府の使者カイエントークン攻撃力・守備力2500

 

 

和輝LP1800手札1枚

フレデリックLP5000→9000→8200→5700手札4枚(うち1枚は暗黒竜コラプサーペント)

 

「私のターンだね、ドローしよう!」

 

 

 テンションがどんどん上がっているフレデリックを見つめながら、カトレアはやや呆然としていた。

 驚いた。あの少年、オカザキカズキ。彼は何度窮地に立たされても、そのたびに反撃し、盛り返してきた。

 プレイスキル、というよりは、プレイヤー本人の人間力によるものか。

 フレデリックは探偵で、その情報収集能力は群を抜いている。それはカトレア自体、彼女自身の経験からよくわかっている。

 

「オカザキカズキ……。七年前の生き残り」

 

 東京大火災と呼ばれる災害。この世全ての悪、アンラマンユと神々との戦闘行為。

 激化する戦いは位相の異なる空間、バトルフィールドを崩壊させ、その余波で東京都内に未曽有の大火災を引き起こした。

 もしもこの世全ての善、スプンタマンユ女神がアンラマンユの災厄を一身に引き受けなければ、被害はもっと広がっていただろう。

 多くの被災者が自殺したり発狂する中、ただ一人、今もまっとうな日常生活を送れている少年、それが和輝だった。

 カウンセリングが功を奏したのだろう、良き家族に拾ってもらえたのだろう。偽りのない、真実の愛情を長年にわたって受けたのだろう。

 しかしそれらは立ち直るための手助けにはなるが、全てではない。

 和輝が今こうして立ち直っているのは、彼自身の精神的な強さ。

 心の強さ。認めざるをえまい。

 

「しかしそれとデュエルの実力はまた別、このターン、ウェザースプーン卿は神を召喚してきますわ」

(わかるの?)

 

 脳裏に、自分だけに聞こえる神の声。それに頷きながら、カトレアは自信をもって言い放った。

 

「流れが、そうと告げていますので」

 

 

「では行くよ岡崎君! まずは希望の宝札を発動だ! 互いに手札が六枚になるよう、カードをドロー!」

 

 テンションに任せて、フレデリックはカードをドローする。同時に、彼は鼓動を感じていた。

 

「来たかね、ヘイムダル」

 

 神の鼓動。確認するまでもないことだったが、ほかのドローカードも知りたかったので、引いたカードたちに目を向ける。

 予想――フレデリックにとっては事実確認だ――通り、神のカードが舞い込んだ。このデュエル全体の流れが、神を呼ぶ方向に行っていたのだ、ここで来るのは必然といえた。

 

「フレデリック。もういいだろう。おれを出せ。ロキと決着をつける」

「高ぶっているね、ヘイムダル。まぁいいさ。私は墓地のワイバースターを除外し、暗黒竜 コラプサーペントを特殊召喚する。さらに墓地のジェット・シンクロンの効果発動! 手札を一枚捨て、このカードを特殊召喚だ!」

「来るね、これは……」

 

 揃う生贄たちを前にして、ロキが呟いた。和輝も同意を示すように頷く。

 三体のモンスター。即ち三体の生贄。

 神が来る。ロキの宿縁の相手、ヘイムダルが。

 フレデリックが告げる。

 

「さて岡崎君。せっかく私の戦いに付き合ってくれたのだ。最後まで見て行ってくれたまえ。これが最後のレッスンだ! 私の場の三体のモンスターをリリース!」

 

 フレデリックのフィールド、三体のモンスターが光の粒子となって世界に溶け込むように消えていく。直後、まるで見えない手で押さえつけられたかのような重圧が和輝を襲った。

 

「な、なんだ!?」

 

 それが神降臨の前触れなのだと。気付いたの時には、フレデリックの声が朗々と響いていた。

 

「来るがいい、見るがいい、そして勝つがいい! 君こそが、神々の国より地平を見定める番神! 角笛を鳴らせ、戦の時はきた! 降臨せよ、千里眼の番神ヘイムダル!」

 

 神が現れる。

 レザー製品のパンツルックは解除され、代わりに全身を包むのは黒塗りに金の縁取りがなされた全身甲冑。左目の眼帯は外されており、赤、青、黄、金、銀など、刹那ごとに色の変わる複雑な色彩の左目が露出していた。

 背には武骨そのものといった大剣を背負い、右腰に下げているのは小振りな角笛。

 北欧神話の門番、ヘイムダルの降臨だった。

 神の出現によって、バトルフィールド全体が呼応するように鳴動する。

 

「く……! さすがは神、召喚されただけでこの威圧感か!」

「元が堅物だからね! それにしてもヘイムダルの奴、ボクの記憶よりもずいぶん力を高めているじゃないか!」

「当然だ、ロキ。おれとて北欧の神。不死を捨てた代わりに高みに登れる可能性を手にしている。ロキ、貴様もそれを求めているのだろう?」

 

 和輝は困惑したような眼差しでロキを見た。ロキは沈黙。

 ほかの多くの神話の神々と違い、北欧神話の神は不死ではない。死んでも自力で復活できるわけではない。その不完全性ゆえに、成長の可能性があるのだ。

 

「君は、進化を可能にしたのか」

 

 ロキの声音に忸怩たるものがあった。

 悔しいのだ。六道天とオーディンのコンビと戦い、敗北して以来、和輝は試行錯誤を繰り返し、デッキを強化、戦術も練り直している。

 だが自分はどうだろう? いまだに自分の境界から一歩も外へ行けない自分は――――――

 

「では行こうか! なぁヘイムダル!」

「ああ。フレデリック、まずは――――」

「わかっているよ。だが順番がある。まずはリリースされたコラプサーペントの効果を発動だ。デッキから二枚目のワイバースターを手札に加える」

「準備は整ったな?」

「段取りができてきて助かるよ。今手札に加えたワイバースターを墓地に送り、ヘイムダルの効果発動! 手札を一枚捨て、私のデッキ、墓地、エクストラデッキから、可能な限りモンスターを特殊召喚する!」

「な――――――」

「んてでたらめな効果!」

 

 絶句する和輝と驚愕の声を上げるロキ。一人と一柱の反応違いを楽しみながらも、フレデリックのフィールドに顕現したヘイムダルは、腰に下げた角笛を手に取った。

 角笛、神々の狼煙、ギャラルホルンは、ヘイムダルの手に移ると見る見るうちに巨大化していく。

 角笛に口をつけたヘイムダル。その見た目にふさわしい肺活量をもって、地の果てまで届けとばかりに大音量を轟かせる。

 

「ヘイムダルの効果により、墓地からロード・ウォリアーを、そしてエクストラデッキからニトロ・ウォリアー、マイティ・ウォリアー、そしてスターダスト・ウォリアーを特殊召喚しよう!」

 

 角笛の音色に率いられて、現れる戦士たち。ダメ押しとばかりに、フレデリックは手札からカードを繰り出した。

 

「永続魔法、連合軍を発動。さらに装備魔法、団結の力をヘイムダルに装備。これで、私の戦士たちの攻撃力は800アップし、ヘイムダルは4000アップだ」

 

 ギャラルホルンによって駆け付けた戦士たちの攻撃力は軒並み3000を超えた。そして、それらを率いるヘイムダルに至っては8000だ。

 

「さて、厳しいね」

「攻撃力だけならもっと上の神はいた。が、数ってのは厄介だな」

 

 神はただ場にいるだけで絶大な存在感を放つ。圧力、といってもいい。相対しているだけで神経が鑢に掛けられたような苦痛が続く。

 それに加え、フレデリックのフィールドには四体のSモンスターが存在している。この一斉攻撃を受ければ、和輝などひとたまりもあるまい。

 

「バトルだ! スターダスト・ウォリアー、ニトロ・ウォリアー、ロード・ウォリアー、マイティ・ウォリアーでそれぞれ君のモンスターを攻撃しよう!」

 

 進軍開始、和輝はいち早くデュエルディスクのボタンを押した。

 

「リバーストラップ発動! スピリット・バリア! モンスター同士で発生する俺への戦闘ダメージを0にする!」

「だがそれは、ダイレクトアタックのダメージを0にはできまい。私のモンスターの数は五体、君は四体。盾の数が足りないぞ!」

 

 分かっている。だがそれでも、ここで何もせず手をこまねいていては和輝のライフはダイレクトアタックを迎える前に尽きる。

 和輝の周囲を、薄緑色のバリアがドーム状に包み込む。

 直後、一方的な蹂躙が始まった。

 スターダスト・ウォリアーの拳がブラック・マジシャンを粉砕し、ニトロ・ウォリアーの鉄拳が星刻の魔術師を爆殺し、ロード・ウォリアーの光の大剣がオッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴンを両断し、最後に、マイティ・ウォリアーのガントレットが落龍の魔術師を叩き潰した。

 

「マイティ・ウォリアーの効果発動! 今戦闘破壊した落龍の攻撃力の半分、1350のダメージを受けてもらうよ!」

 

 フレデリックがぱちんと指を鳴らすと、マイティ・ウォリアーが巨大な腕であるガントレットの拳を和輝に向けて突き出した。

 すぐさまその場から飛びのく和輝。直後、マイティ・ウォリアーのガントレットがロケットのように発射され、さっきまで和輝が立っていた個所に激突。床に放射状に罅を作った。

 

「くそ……!」

「気を抜くな和輝! 次が来る!」

 

 ロキの警告が飛ぶ。分かっている。これでもう盾はない。次は、神の攻撃が来る。備えなければ。

 

「何か守備の手段があるかね? なければ君の負けだぞ! ヘイムダルでダイレクトアタック!」

 

 ヘイムダルが一歩前に出る。重々し音とともに大剣を右手に握りしめる。

 一歩一歩、大地を打ち鳴らすように歩む。

 

「ヘイムダルの千里眼は対象のあらゆる行動を見逃さない。ただ物理的に逃げるだけじゃ攻撃は躱せない。つまり、何らかのカードを使ってヘイムダルの攻撃事態を無効にしなければ、宝珠を砕かれるのは必至だ! さぁどう来るかね岡崎君!」

 

 ヘイムダルは何も言わない。ただわずかに口角を吊り上げる渋い微笑を浮かべた。

 そして、ついにヘイムダルの足裏が大地から離れた。

 爆発したかのような轟音が沸き起こり、空気を穿つ矢となって駆けるヘイムダル。空気の振動がデュエル場全体を震わせる。

 

「まだ――――終わらねぇ! 跳兎の魔術師のP効果! 俺のライフが0になるダメージを受けるとき、Pゾーンのこのカードを破壊し、受けるダメージを0に! さらにカードを一枚ドローする!」

 

 和輝のPゾーン、即ち光の円柱の中にいた少年魔術師が、主の窮地にいてもたってもいられなくなったというように円柱から飛び出し、ヘイムダルの前に両手を広げて立ちはだかった。

 ヘイムダルの大剣が振り下ろされる。衝撃が走る。が、和輝は無傷。跳兎の魔術死の身を挺した献身が、彼を救ったのだ。

 

「さすが。しかしヘイムダルのもう一つの効果発動! ヘイムダルは一ターンに一度、相手のエクストラデッキを確認し、その中からカードを三種類まで、ゲームから除外できる!」

「なんだと!?」

 

 エクストラデッキへの干渉。しかもノーコスト。その希少な効果に、さしもの和輝も驚愕を隠せない。フレデリックの眼前に、和輝のエクストラデッキの情報が開示される。

 

「ふむ……。これにしようか。ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン、閃珖竜スターダスト、波動竜騎士ドラゴエクィテス。この三枚を除外するよ。カードを一枚伏せて、ターン終了だ」

 

 

希望の宝札:通常魔法

(1):互いのプレイヤーは手札が6枚になるようにカードをドロー、または手札のカードを捨てる。このカードを発動するターン、自分は他のカード効果でデッキからカードをドローできない。

 

千里眼の門戦神ヘイムダル 神属性 ☆10 幻獣神族:効果

ATK4000 DEF4000

このカードは特殊召喚できない。このカードは3体のモンスターをリリースしてのみ通常召喚できる。(1):このカードは神属性、幻神獣族モンスターの効果以外のカード効果ではフィールドを離れず、コントロールも変更されない。(2):このカードが相手のカードの効果を受けた時、エンドフェイズにこのカードに対するそのカード効果を無効にする。(3):1ターンに1度、手札を1枚捨てて発動できる。自分のデッキ、墓地、エクストラデッキからモンスターを可能な限り特殊召喚する。(4):1ターンに1度、相手のエクストラデッキのカード3種類まで選択して発動できる。選択したカードをゲームから除外する。

 

ニトロ・ウォリアー 炎属性 ☆7 戦士族:シンクロ

ATK2800 DEF1800

「ニトロ・シンクロン」+チューナー以外のモンスター1体以上

このカードがフィールド上に表側表示で存在する限り、自分のターンに自分が魔法カードを発動した場合、このカードの攻撃力はそのターンのダメージ計算時のみ1度だけ1000ポイントアップする。また、このカードの攻撃によって相手モンスターを破壊したダメージ計算後に発動できる。相手フィールド上に表側守備表示で存在するモンスター1体を選択して攻撃表示にし、そのモンスターにもう1度だけ続けて攻撃できる。

 

マイティ・ウォリアー 地属性 ☆6 戦士族:シンクロ

ATK2200 DEF2000

チューナー+チューナー以外のモンスター1体以上

このカードが戦闘によって相手モンスターを破壊した場合、破壊したモンスターの攻撃力の半分のダメージを相手ライフに与える。

 

スターダスト・ウォリアー 風属性 ☆10 戦士族:シンクロ

ATK3000 DEF2500

Sモンスターのチューナー+チューナー以外のSモンスター1体以上

(1):相手がモンスターを特殊召喚する際に、このカードをリリースして発動できる。それを無効にし、そのモンスターを破壊する。(2):このカードの(1)の効果を適用したターンのエンドフェイズに発動できる。その効果を発動するためにリリースしたこのカードを墓地から特殊召喚する。(3):戦闘または相手の効果で表側表示のこのカードがフィールドから離れた場合に発動できる。エクストラデッキからレベル8以下の「ウォリアー」Sモンスター1体をS召喚扱いで特殊召喚する。

 

連合軍:永続魔法

自分フィールド上の戦士族モンスターの攻撃力は、自分フィールド上の戦士族・魔法使い族モンスターの数×200ポイントアップする。

 

団結の力:装備魔法

(1):装備モンスターの攻撃力・守備力は、自分フィールドの表側表示モンスターの数×800アップする。

 

スピリットバリア:永続罠

自分フィールド上にモンスターが存在する限り、このカードのコントローラーへの戦闘ダメージは0になる。

 

跳兎の魔術師 闇属性 ☆4 魔法使い族:ペンデュラム

ATK1300 DEF2100

Pスケール8

P効果

(1):このカードがPゾーンにセットされた時に発動できる。反対側のPゾーンのPカードを破壊できる。(2):相手の攻撃、またはカード効果によって自分のライフが0になる場合にPゾーンのこのカードを破壊して発動できる。その攻撃または効果によって受けるダメージを0にし、カードを1枚ドローする。

モンスター効果

なし

 

 

和輝LP1800→450手札7枚

フレデリックLP5700手札0枚

 

 

 ヘイムダルの軍勢。それらを前にして、和輝の戦線はあまりに心もとない。しかも業腹なことに、ここにきて自分の、カードとしてのスペックにロキは強い不満を持っていた。

 自分がもっと強ければ、和輝ももっと楽ができるだろうに。自分がもっと頼れるのなら、和輝も戦術を組みやすいだろうに。

 己の非力を、ロキは誰にも言わず、薄笑いのような笑顔で鎧ったまま、心中で罵っていた。

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