四つの咆哮が空気を震わせる。
バトルフィールド内、安アパートの駐車場。烈震は相対するAランクプロ、レイシス・ラーズウォードの実力を肌で感じていた。
攻撃力3000、強大な力が今、烈震を襲う。
一体目の
壮絶な
視界が白く染まる中、烈震は冷静にデュエルディスクのボタンを押した。
「リバースカードオープン! ガード・ブロック! 戦闘ダメージを0にし、一枚ドロー!」
青眼の白龍の一撃は烈震に届くことなく、途中で激流が岩にぶつかったように枝分かれし、烈震の背後の地面に着弾。次々に地面に穴をあけていく。
がら空きになった烈震のフィールドを見て、レイシスはふむと一つ頷いた。
「じゃあ一つ、試してみよう。ロード・オブ・ドラゴンでダイレクトアタック」
追撃はドラゴンではなく、魔法使いの方。ロード・オブ・ドラゴンが放った漆黒の光球が弾丸のように烈震に迫る。
蹴りはらうことは簡単だ。だが烈震はそうしなかった。
残る青眼の白龍は
なので烈震は腰を落とし、正拳突きのように拳を放ち、黒球を迎撃した。
衝撃。だがそれだけだ。烈震はまっすぐレイシスを見据えた。
そしてレイシスの方も、生身でモンスターの攻撃を撃ち落とした烈震に対して何の驚愕もない。ただ烈震の減ったライフを見据え、
「次に行こうか。二体目の青眼の白龍でダイレクトアタック!」
龍の進撃が再開する。
二体目の青眼の白龍が放つ極光の一撃。烈震は避けきれぬと判断。吹き飛ばされぬように地面を踏みしめて、両手をクロスさせて宝珠を守る形をとった。
次の瞬間、衝撃が烈震の全身を襲った。
「ぐ――――――がああああああああああああ!」
絶叫はしかし、極光の轟音にかき消された。
全身が軋むような痛み。しかし意識は飛ばない。青眼の白龍の攻撃が終わったと同時に、手札からカードを一枚抜き放っていた。
「この、瞬間! 手札の冥府の使者ゴーズの効果発動! このカードを守備表示で特殊召喚する! さらに冥府の使者カイエントークンを守備表示で特殊召喚する!」
烈震のフィールドに現れる、黒曜石のような漆黒の軽装鎧を持ち、バイザーで顔を隠した赤髪の騎士と、同じく漆黒の鎧を身にまとい、剣を携えた金髪の女騎士。
冥府の使者、ゴーズとカイエン。今回、カイエンの攻守は3000。青眼の白龍達でも突破できない。
「やっぱりゴーズを握っていたね。ならば三体の青眼の白龍で冥府の使者ゴーズを攻撃しよう」
だがレイシスは止まらない。三体目の青眼の白龍が青白い極光の一撃を放つ。
「そう何度も殴られっぱなしではない! ダメージ計算時、墓地のシールド・ウォリアーの効果発動! このカードを除外し、この戦闘のみゴーズに戦闘態勢を付与する!」
「おっし! これで壁はできた!」
半透明のトールがガッツポーズをとる。その眼前で、ドラゴンの一撃を受け切った冥府の使者が誇らしげに仁王立ちしていた。
「なるほど。カードガンナーのコストの時に、墓地に送っていたのか。ならばバトルフェイズは終了。メインフェイズ2に入り、青眼の亜白龍の効果発動! カイエントークンを破壊する!」
青眼の亜白龍の全身が光輝いた。
太陽を思わせる白く、激しい光。その光を浴びた冥府の女騎士の身体が、まるでガラスのように罅割れ、砕けてしまった。
「ターン終了だ」
ガード・ブロック:通常罠
相手ターンの戦闘ダメージ計算時に発動する事ができる。その戦闘によって発生する自分への戦闘ダメージは0になり、自分のデッキからカードを1枚ドローする。
冥府の使者ゴーズ 闇属性 ☆7 悪魔族:効果
ATK2700 DEF2500
自分フィールド上にカードが存在しない場合、相手がコントロールするカードによってダメージを受けた時、このカードを手札から特殊召喚する事ができる。この方法で特殊召喚に成功した時、受けたダメージの種類により以下の効果を発動する。●戦闘ダメージの場合、自分フィールド上に「冥府の使者カイエントークン」(天使族・光・星7・攻/守?)を1体特殊召喚する。このトークンの攻撃力・守備力は、この時受けた戦闘ダメージと同じ数値になる。●カードの効果によるダメージの場合、受けたダメージと同じダメージを相手ライフに与える。
シールド・ウォリアー 地属性 ☆3 戦士族:効果
ATK800 DEF1600
戦闘ダメージ計算時、自分の墓地に存在するこのカードをゲームから除外して発動する事ができる。自分フィールド上に存在するモンスターはその戦闘では破壊されない。
烈震LP8000→6800→3800手札3枚
ペンデュラムゾーン赤:なし青:なし
モンスターゾーン 冥府の使者ゴーズ(守備表示)、
魔法・罠ゾーン
フィールドゾーン なし
レイシスLP8000手札1枚
ペンデュラムゾーン赤:なし青:なし
モンスターゾーン 青眼の白龍(攻撃表示)、青眼の亜白龍(攻撃表示)、青眼の白龍(攻撃表示)、青眼の白龍(攻撃表示)、ロード・オブ・ドラゴン-ドラゴンの支配者-(攻撃表示)
魔法・罠ゾーン 永続魔法:補給部隊、
フィールドゾーン なし
「
「さすがブルーアイズ。一気にこちらを切り崩しに来たな」
トールの言う通り、烈震のライフはすでに半分を切った。そしてレイシスのフィールドには攻撃力3000のモンスターが四体も存在しており、しかもそれらのモンスターはカード効果の対象にならない。
「だからこそ、面白いのだ、トール。このような強敵に出会えた。それだけで、猛るというものだ!
己は墓地のグローアップ・バルブの効果発動! デッキトップを墓地に送り、このカードを特殊召喚する!」
烈震の足元の地面を突き破り、花芽吹くように顔を出したのは縦になった種。その中央が割れて眼球が覗いていた。
グローアップ・バルブ。このカードもまた、カードガンナーのコストで墓地に送った一枚だった。
ただし、レイシスもまた、烈震の展開、その始点をただ眺めているだけではなかった。
「では、グローアップ・バルブの効果にチェーン。手札から増殖するGの効果発動だ。これでこのターン、君がモンスターを特殊召喚するたび、俺はカードを一枚ドローできる。もっとも、グローアップ・バルブの特殊召喚で、すでに一枚ドローするけどね」
「今更止まれん。むしろ、止まれば己が敗北するだけだ! レベル7の冥府の使者ゴーズに、レベル1のグローアップ・バルブをチューニング!」
牽制とも取れるレイシスのカード発動にも、烈震は動じない。その大きな右腕が力強く天へと振り上げられた。
そして叫ぶ。
「連星集結、星屑飛翔。シンクロ召喚、出でよスターダスト・ドラゴン!」
烈震のフィールドのうち、グローアップ・バルブが緑の光の輪となり、その輪を潜った冥府の使者ゴーズが七つの光輝く星となる。
七つの星が一列に並んだ時、一筋の光の道が星々を貫いた。
光が、満ちる。
光の向こうから現れたのは、細身のフォルムを持つドラゴン。雄大な翼に、長い首、人に近い胴体の形状に、鞭の様の振るわれる尻尾。咆哮とともに、光の破片が粉雪のように周囲に舞い散った。
「スターダスト・ドラゴンか。確かに強力なカードだが、その効果は防御型。それでは俺のブルーアイズたちを打倒できないよ?」
「問題ない。ここから、先を行くからだ!
レベル1の金華猫に、同じくレベル1のグローアップ・バルブをチューニング!
連星集結、新地平開拓。シンクロ召喚、駆け抜けろフォーミュラ・シンクロン!」
再びのS召喚。今度現れたのはF1カーをボディに、手足と頭の生えた機械族モンスター。レイシスにドローされることは覚悟のうえ。そのうえで、烈震はレイシスの布陣を崩すために最善を尽くすのだった。
「フォーミュラ・シンクロンの効果により、一枚ドロー。
レベル8のスターダスト・ドラゴンに、レベル2のフォーミュラ・シンクロンをチューニング!」
「連星集結、流星襲来! シンクロ召喚、現れろシューティング・スター・ドラゴン!」
輝きの向こうから、巨躯のドラゴンが現れる。
白く、ほのかに発光する鎧甲冑を思わせる外骨格、直線型の翼、しなる尻尾、雄々しく力強く、それでいながら美しさを備えたモンスター。
シューティング・スター・ドラゴン。その攻撃力は3300。レイシスの戦力を上回った。
「シューティング・スター・ドラゴンの効果発動! デッキトップをめくる!」
ここでのチューナーの数が、シューティング・スター・ドラゴンの攻撃回数となる。五枚出れば一気にレイシスのフィールドを壊滅させられる。
が、逆に一枚も出なければ攻撃事態ができない。
リスキーだが、そうでもしなければこの局面は打破できない。
「ここが勝負どころだな、烈震よぉ」
「応。これが、己の道筋。ここを超えられるか否か、勝負だ!」
一気に五枚のカードがめくられる。躊躇も逡巡もない。勿体ぶるなどもってのほかとばかりに開示する。
アンノウン・シンクロン、サイコ・コマンダー、デブリ・ドラゴン、ラブラドライ・ドラゴン、ジャンク・シンクロン。
「グゥレイトォ! 五枚すべてチューナー! これでシューティング・スター・ドラゴンは五回攻撃が可能だぜ!」
「シューティング・スター・ドラゴンの召喚に成功しただけでなく、さらに五回攻撃まで勝ち取ったか。若さゆえの爆発力か、黒神君自身が持ち合わせた運命力か。頼もしく、面白いね」
「そうしていられるのも今のうちだ。バトル! シューティング・スター・ドラゴンでラーズウォードプロのモンスターに攻撃!」
シューティング・スター・ドラゴンが手足を折りたたみ、飛行形態に移行し、天高く飛翔する。
夜空を切り裂く流星の光。シューティング・スター・ドラゴンが本体である白とは別に、赤、青、黄色、緑四つの幻影が出現。合計五つの流星のドラゴンが特大の砲撃となって飛来。レイシスの五体のモンスターを次々と撃墜、または圧壊していった。
「ぐ―――――」
ダメージのフィードバックがレイシスを襲う。
ぐらつく体。しかし踏みとどまる。今の攻撃でレイシスのライフは4700にまで減少した。
しかし増殖するGの効果により、手札は六枚まで増えている。シューティング・スター・ドラゴンがいるとはいえ、いまだ烈震の形勢逆転とはいいがたかった。
それが分かっているからだろう。烈震本人の表情は険しいままだ。
「カードを二枚伏せ、ターンエンドだ」
グローアップ・バルブ 地属性 ☆1 植物族:チューナー
ATK100 DEF100
「グローアップ・バルブ」の効果はデュエル中に1度しか使用できない。(1):このカードが墓地に存在する場合に発動できる。自分のデッキの一番上のカードを墓地へ送り、このカードを墓地から特殊召喚する。
増殖するG 地属性 ☆2 昆虫族:効果
ATK500 DEF200
このカード名の効果は1ターンに1度しか使用できず、相手ターンでも発動できる。①:このカードを手札から墓地へ送って発動できる。このターン、以下の効果を適用する。●相手がモンスターの特殊召喚に成功する度に、自分はデッキから1枚ドローしなければならない。
スターダスト・ドラゴン 風属性 ☆8 ドラゴン族:シンクロ
ATK2500 DEF2000
チューナー+チューナー以外のモンスター1体以上
(1):フィールドのカードを破壊する魔法・罠・モンスターの効果が発動した時、このカードをリリースして発動できる。その発動を無効にし破壊する。(2):このカードの(1)の効果を適用したターンのエンドフェイズに発動できる。その効果を発動するためにリリースしたこのカードを墓地から特殊召喚する。
金華猫 闇属性 ☆1 獣族:スピリット
ATK400 DEF200
このカードは特殊召喚できない。(1):このカードが召喚・リバースした時、自分の墓地のレベル1モンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターを特殊召喚する。このカードがフィールドから離れた時にそのモンスターは除外される。(2):このカードが召喚・リバースしたターンのエンドフェイズに発動する。このカードを持ち主の手札に戻す。
フォーミュラ・シンクロン 光属性 ☆2 機械族:シンクロチューナー
ATK200 DEF1500
チューナー+チューナー以外のモンスター1体以上
(1):このカードがフィールドに存在し、自分または相手が、このカード以外のSモンスターのS召喚に成功した場合に発動する。このカードがフィールドに表側表示で存在する場合、自分はデッキから1枚ドローする。
シューティング・スター・ドラゴン 風属性 ☆10 ドラゴン族:シンクロ
ATK3300 DEF2500
シンクロモンスターのチューナー1体+「スターダスト・ドラゴン」
以下の効果をそれぞれ1ターンに1度ずつ使用できる。●自分のデッキの上からカードを5枚めくる。このターンこのカードはその中のチューナーの数まで1度のバトルフェイズ中に攻撃する事ができる。その後めくったカードをデッキに戻してシャッフルする。●フィールド上のカードを破壊する効果が発動した時、その効果を無効にし破壊する事ができる。●相手モンスターの攻撃宣言時、このカードをゲームから除外し、相手モンスター1体の攻撃を無効にする事ができる。エンドフェイズ時、この効果で除外したこのカードを特殊召喚する。
烈震LP3500手札2枚
レイシスLP8000→5900→5600→5300→5000→4700手札6枚
「俺のターンだ、ドロー。お」
ドローカードを見たレイシスの目が僅かに見開かれた。「ここで来たか」という呟きを、烈震は聞いた。
「来た。何か強力なカードが?」
「ああ。そうだね。実に面白いカードだ。何しろ、このカードは
「その条件は……まさか!?」
烈震の目が見開かれる。その条件に合致する魔法カードを、彼は知っていた。
そのカードは、かつての七大大会優勝者にのみ賞品として贈られたカードだ。
そして烈震は知っている。数年前の全米オープン。そこで彼は優勝し、手に入れたカード。それを、知っていた。
こくりとレイシスが頷いた。
「ここでこのカードが来たのもめぐりあわせだろう。俺は通常ドローした
ズン。空気が重くなる。天空に渦巻く銀河を思わせる空間が出現。そこから白い光が一筋の流星となって降り落ちた。
「時を逆巻き、空間の果てより飛来せよ、時空の竜よ! 来たれオーバーハンドレッド! NO.107
まず現れたのは、メタリックヴァイオレットの機械を彷彿とさせるドラゴン。腕はなく、翼だけを雄々しく翻す。
「まだだ。俺は銀河眼の時空竜をオーバーレイ! 一体のモンスターで、オーバーレイネットワークを再構築!
過去より来るは偉大なる力。時を支配せよ、戦場を支配せよ、そして、勝敗を支配せよ! 来たれカオスオーバーハンドレッド! CNo.107 |超銀河眼の時空竜《ネオ・ギャラクシーアイズ・タキオン・ドラゴン》!」
銀河眼の時空龍の身体から金色の罅が入った。
罅はどんどん広がっていき、ドラゴンの全身に至る。
直後、超新星の爆発のような金色の光が時空竜の中からあふれ、その外郭をはじけさせた。
銀河眼の時空龍の、進化した姿が現れる。
金色に輝く三つ首の龍。複雑怪奇なラインを組み合わせてなる、やはり機械を思わせる強大にして、畏敬の念すら抱かせるドラゴン。
「オーバハンドレッドナンバーズ……。この目で見ることになろうとはな……」
戦慄を滲ませて呟く烈震。だが対するレイシスは涼やかに微笑していた。
「超銀河眼の時空龍の効果発動!
「させん! 手札のエフェクト・ヴェーラーの効果発動! 超銀河眼の時空龍の効果を無効にする!」
一気に攻め落とそうとするレイシスに対して、烈震は喰らいつく。
まだだ。まだ終わるな。まだ戦っていたい。この強者と。めったにない戦いを満喫したい。だから、振り落とされないよう、必死に追いすがった。
レイシスの微笑は変わらない。
「せっかくの機会だ。今日はもう一体の、俺のドラゴンも出そう。手札から
X召喚の次は融合召喚。レイシスの頭上の空間がゆがみ、渦を作る。その渦に墓地から三体の青眼の白龍が飛び込み、一つに混ざりこむ。
「太古より息づく白龍の血筋よ。今ここに三位一体となり、究極へと至らん! 融合召喚、来たれ
現れたのは、より鋭い面立ちになった三つ首の青眼の白龍。三重の咆哮が大気を震わせ、見るものに圧倒的な力、そして畏怖をたたきつけた。
「攻撃力4500の二連続か!」
「しかも……これまたデュエルモンスターズ誕生当初から存在し、今なお最強の一角に食い込むモンスターのお出ましだ。トールよ、単純な攻撃力なら、お前よりも上だぞ」
窮地に立たされながらも精神的余裕を失わないため、烈震はあえて軽口を聞いた。だがトールからは面白くなさそうな息づきだけが帰ってきた。
相棒甲斐のない奴だ、そう思ったが、烈震は黙っていた。
「バトルだ。青眼の究極竜で、シューティング・スター・ドラゴンを攻撃!」
攻撃宣言が下る。二体のドラゴンのうち、白銀の三つ首竜が動きだす。
口を開き、三つの超高エネルギーを放出。それを眼前で混ぜ合わせ、収束していく。
凝縮された超エネルギーが放たれる。
怒涛の本流。極光が烈震の視界どころか、体全体を包み込む。狙いはシューティング・スター・ドラゴン。
「シューティング・スター・ドラゴンの効果発動! このカードを除外し、攻撃を無効にする!」
シューティング・スター・ドラゴンの姿が霞のように掻き消える。
攻撃目標を見失った
一撃目は凌いだ。だが攻撃力4500はもう一体いる。
超銀河眼の時空龍。
しかしシューティング・スター・ドラゴンでの防御は一度だけ。今度無防備の状態で攻撃を受ければ、烈震のライフは尽きる。
だが、烈震も承知。だからこそ、もう一枚のカードがあるのだ。
そのカードが今、翻る。
「シューティング・スター・ドラゴンが除外されたこの瞬間、ゼロ・フォース発動! ラーズウォードプロの場のモンスターの攻撃力は全て0になる!」
攻撃力4500は、この瞬間に全て無力化した。
これは烈震にとって大きく有利になる。
だがレイシスは相変わらず涼やかな微笑を浮かべていた。
訝し気に眉を顰める烈震。その理由はすぐにわかる。レイシスは手札から一枚のカードを引き抜いた。
「速攻魔法、大欲な壺を発動。除外されている、俺の青眼の白龍二体と、
「ッ!」
驚愕に目を見開く烈震。シューティング・スター・ドラゴンの弱点を突かれた。除外から形勢を逆転させたが、今ここでその除外が仇となって再逆転された。
「マジか。こっちが防ぐ手段を出したら、そのための行動を利用してこちらの切り札を封じてきやがった……」
「これがAランクプロの実力、か。どうにも掌の上から抜け出せていないな」
声に戦慄を滲ませる一柱と一人に対して、レイシスは苦笑した。
「なんでも掌の上、そう考えるほど俺は傲慢にはなれないな。カードを一枚伏せて、ターン終了だ」
「待ってもらおう。ターン終了時に、伏せていた裁きの天秤を発動。己の場と手札は全部で二枚。貴男のフィールドのカードは五枚。よって、その差三枚、カードをドローする」
烈震とて負けてられない。幸い次は自分のターンだ。レイシスのフィールドにいるモンスターはどちらも攻撃力0になっているのだから、逆転の目は十分にある。
「おっと。反撃の手段を手にさせてしまったかな? 改めて、ターンエンドだよ」
RUM-七皇の剣:通常魔法
自分のドローフェイズ時に通常のドローをしたこのカードを公開し続ける事で、そのターンのメインフェイズ1の開始時に発動できる。「CNo.」以外の「No.101」~「No.107」のいずれかをカード名に含むモンスター1体を、自分のエクストラデッキ・墓地から特殊召喚し、そのモンスターと同じ「No.」の数字を持つ「CNo.」と名のついたモンスターをその特殊召喚したモンスターの上に重ねてエクシーズ召喚扱いとしてエクストラデッキから特殊召喚する。「RUM-七皇の剣」の効果はデュエル中に1度しか適用できない。
No.107 銀河眼の時空竜 光属性 ランク8 ドラゴン族:エクシーズ
ATK3000 DEF2500
レベル8モンスター×2
自分のバトルフェイズ開始時に1度、このカードのエクシーズ素材を1つ取り除いて発動できる。このカード以外のフィールド上に表側表示で存在する全てのモンスターの効果は無効化され、その攻撃力・守備力は元々の数値になる。この効果を適用したターンのバトルフェイズ中に相手のカードの効果が発動する度に、このカードの攻撃力はバトルフェイズ終了時まで1000ポイントアップし、このターン、このカードは1度のバトルフェイズ中に2回攻撃する事ができる。
CNo.107 超銀河眼の時空龍 光属性 ランク9 ドラゴン族:エクシーズ
ATK4500 DEF3000
レベル9モンスター×3
1ターンに1度、このカードのエクシーズ素材を1つ取り除いて発動できる。このカード以外のフィールド上に表側表示で存在する全てのカードの効果はターン終了時まで無効になり、このターン、相手はフィールド上のカードの効果を発動できない。また、このカードが「No.107 銀河眼の時空竜」をエクシーズ素材としている場合、以下の効果を得る。●自分フィールド上のモンスター2体をリリースして発動できる。このターンこのカードは1度のバトルフェイズ中に3回までモンスターに攻撃できる。
龍の鏡:通常魔法
(1):自分のフィールド・墓地から、ドラゴン族の融合モンスターカードによって決められた融合素材モンスターを除外し、その融合モンスター1体をエクストラデッキから融合召喚する。
青眼の究極竜 光属性 レベル12 ドラゴン族:融合
ATK4500 DEF3800
エフェクト・ヴェーラー 光属性 ☆1 魔法使い族:チューナー
ATK0 DEF0
(1):相手メインフェイズにこのカードを手札から墓地へ送り、相手フィールドの効果モンスター1体を対象として発動できる。その相手モンスターの効果をターン終了時まで無効にする。
ゼロ・フォース:通常罠
自分フィールド上に表側表示で存在するモンスターがゲームから除外された時に発動する事ができる。フィールド上に表側表示で存在する全てのモンスターの攻撃力を0にする。
大欲な壺:速攻魔法
「大欲な壺」は1ターンに1枚しか発動できない。(1):除外されている自分及び相手のモンスターの中から合計3体を対象として発動できる。そのモンスター3体を持ち主のデッキに加えてシャッフルする。その後、自分はデッキから1枚ドローする。
裁きの天秤:通常罠
「裁きの天秤」は1ターンに1枚しか発動できない。(1):相手フィールドのカードの数が自分の手札・フィールドのカードの合計数より多い場合に発動できる。自分はその差の数だけデッキからドローする。
CNo.超銀河眼の時空龍CORU×0
「己のターン、ドロー!」
裂帛の気合を込めて、カードをドローする烈震。ドローカードを確認。その口角が笑みに吊り上がる。
「まだだ。まだ終わらん! 相手フィールドにのみモンスターが存在するため、手札のバイス・ドラゴンを攻守を半分にして特殊召喚する! さらにジャンク・シンクロンを召喚! 効果で、墓地のエフェクト・ヴェーラーを特殊召喚する!」
次々に現れるモンスターたち。まずは筋骨隆々な肉体を持つ紫のドラゴン。その傍らに、オレンジの耐火服を着たずんぐりとした愛嬌ある顔の戦士。そして、先ほど超銀河眼の時空龍の効果を阻害した少女。
「レベル5のバイス・ドラゴンに、レベル3のジャンク・シンクロンをチューニング!
連星集結、
咆哮と、紅蓮の炎が夜を彩る。
現れたのはスマートでありながらも筋肉の付いたマッシブな体型をした、悪魔じみた要望と翼を広げたドラゴン。さらに! と烈震の叫ぶような声が続く。
「己のフィールドにレベル8以上のSモンスターが存在するため、手札のクリエイト・リゾネーターを特殊召喚する!」
パシン! と派手な音がするほどカードをデュエルディスクに叩きつけるようにセットする烈震。そのフィールドに現れるプロペラを背負った、音叉を持った小悪魔。悪魔らしく、悪戯じみた笑みを浮かべている。
「見るがいい! これが、己が奇龍にて手にした新たな力! 新しいシンクロの形! 己は! レベル8のレッド・デーモンズ・ドラゴンに、レベル3のクリエイト・リゾネーターと、レベル1のエフェクト・ヴェーラーを、ダブルチューニング!」
烈震が右手を大きく振り上げる。
彼のフィールドの三体のモンスターが天を舞う。
まず、クリエイト・リゾネーターが三つの、エフェクト・ヴェーラーが一つの黄金に輝く光の輪となり、その輪を潜ったレッド・デーモンズ・ドラゴンが八つの光の球となった。
輝く星々を、一筋の光の道が貫いた。
「連星集結、紅蓮悪魔龍激震! シンクロ召喚。降臨せよ、スカーレッド・ノヴァ・ドラゴン!」
現れたのは、炎を凝固させて造った鎧のような外骨格で身を纏った、悪魔のごとき禍々しさと、ドラゴンのごとき誇り高さを見事に同居させたドラゴン。
真紅に彩られた体。空気を孕み、爆発的な加速を見せる翼。睨みつける物理的な重圧さえ感じさせる双眸。
「ダブルチューニングによる新しいS召喚か。デュエルモンスターズのカードの中でも、その数はごく少ない、希少種だと聞く」
「伝手があってな。手に入れた。シューティング・スター・ドラゴンに並ぶ、己の最強の力だ! スカーレッド・ノヴァ・ドラゴンは己の墓地のチューナー一体につき、攻撃力が500アップする。己の墓地のチューナーは全部で五体。よって攻撃力は2500アップし、6000となる!」
攻撃力6000。この攻撃が通りさえすれば、レイシスのライフは尽きる。スカーレッド・ノヴァ・ドラゴンはカード効果では破壊されず、攻撃力6000なら戦闘破壊も容易ではないだろう。
だからこそ、烈震は踏み込んだ。自身も震脚で大地を踏みしめ、叫ぶ。
「バトルだ! スカーレッド・ノヴァ・ドラゴンで、青眼の究極竜に攻撃!」
スカーレッド・ノヴァ・ドラゴンが攻撃命令を受けて、手足を折りたたんだ飛行形態へと変形。そして、蓄えた空気を一気に放出し、炎を全身にまとって疾走開始。その身が一発の巨大な弾丸となり、一気に白銀の三つ首竜に向かう。
爆発音が連続して響いた。熱せられた空気が音を立てているのだ。
「通れ! この一撃が通れば、烈震の勝ちだ!」
トールの叫び。スカーレッド・ノヴァ・ドラゴンと青眼の究極竜。彼我の距離がどんどん短くなっていき、零に近づいていく。
青眼の究極竜が上体をそらして抵抗の証、攻撃を繰り出す。
三つの口から放たれる螺旋の極光。だが弱い。これではどれほど派手でも、見掛け倒した。
「いけ!」
拳を握り締め、烈震は叫んだ。
「君の気迫に答えてやりたい。このまま何もせずにいてやることも考えたけれど――――それは侮辱だな。リバースカードオープン! 聖なる鎧-ミラーメール-! この効果で、青眼の究極竜の攻撃力をスカーレッド・ノヴァ・ドラゴンと同じにする!」
「な―――――」
「んだとぉ!?」
驚愕は一人と一柱に等しく伝播した。
直後。三つ首竜の
スカーレッド・ノヴァ・ドラゴンは止まらない。物理的な圧力をも伴った光の波を切り分けて突き進むも、その体がどんどん傷つき、装甲が剥離していく。
激突。昼間を思わせる光が辺りを照らした。
スカーレッド・ノヴァ・ドラゴンは烈震の指令を完全にこなし、青眼の究極竜を打ち破った。だがそこで自身も力尽きてしまったのだった。
ズンと、地響きを立てて頽れる二体のドラゴン。
壮絶な相討ち。
レイシスのもう一つの伏せカードが翻った。
「奇跡の残照発動。今破壊された青眼の究極竜を特殊召喚する」
再び現れる。しかも今度は完全な状態で召喚された、白銀の三つ首竜。
烈震は青眼の究極竜を見上げ、笑みを浮かべていた。
「凄いな。トール。Aランクプロというのは、こちらの悉くを上回っている」
その声音には、どこか清々しさがあった。
「悔しくねぇのか?」
「悔しいさ。だがそれ以上に嬉しいのだ。目の前にある高い、高い壁。実に――――超え甲斐がある」
烈震の目はギラギラと輝いていた。超えるべき障害を目の前にし、彼の心は折れるどころかより強靭に、よりふてぶてしく、熱く燃え上がっていたのだ。
「ラーズウォードプロ。己の負けだ。これ以上の対抗手段はない。だが―――――この借りは、いずれ必ず返す」
そう言って、烈震はターンを終了した。
サレンダーはしない。それが烈震のちっぽけな、しかし何より大事なプライドだった。
「俺のターンだ。……もう、ドローカードさえ必要ないね。けれど、黒神君。俺も楽しかったよ。こんな楽しいデュエルなら、いつでも大歓迎だ」
「――――その言葉は救われる」
お互いに微笑が浮かんだ。
そして――――
「バトルだ。青眼の究極竜でダイレクトアタック!」
バイス・ドラゴン 闇属性 ☆5 ドラゴン族:効果
ATK2000 DEF2400
(1):相手フィールドにモンスターが存在し、自分フィールドにモンスターが存在しない場合、このカードは手札から特殊召喚できる。この方法で特殊召喚したこのカードの元々の攻撃力・守備力は半分になる。
ジャンク・シンクロン 闇属性 ☆3 戦士族:チューナー
ATK1300 DEF500
(1):このカードが召喚に成功した時、自分の墓地のレベル2以下のモンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターを守備表示で特殊召喚する。この効果で特殊召喚したモンスターの効果は無効化される。
レッド・デーモンズ・ドラゴン 闇属性 ☆8 ドラゴン族:シンクロ
ATK3000 DEF2000
チューナー+チューナー以外のモンスター1体以上
(1):このカードが相手の守備表示モンスターを攻撃したダメージ計算後に発動する。相手フィールドの守備表示モンスターを全て破壊する。(2):自分エンドフェイズに発動する。このカードがフィールドに表側表示で存在する場合、このカード以外のこのターン攻撃宣言をしていない自分フィールドのモンスターを全て破壊する。
クリエイト・リゾネーター 風属性 ☆3 悪魔族:チューナー
ATK800 DEF600
自分フィールド上にレベル8以上のシンクロモンスターが表側表示で存在する場合、このカードは手札から特殊召喚する事ができる。
スカーレッド・ノヴァ・ドラゴン 闇属性 ☆12 ドラゴン族:シンクロ
ATK3500 DEF3000
チューナー2体+「レッド・デーモンズ・ドラゴン」
(1):このカードの攻撃力は自分の墓地のチューナーの数×500アップする。(2):このカードは相手の効果では破壊されない。(3):相手モンスターの攻撃宣言時にその攻撃モンスター1体を対象として発動できる。フィールドのこのカードを除外し、その攻撃を無効にする。(4):このカードの(3)の効果でこのカードが除外されたターンのエンドフェイズに発動する。その効果で除外されているこのカードを特殊召喚する。
聖なる鎧-ミラーメール-:通常罠
自分フィールド上に表側表示で存在するモンスターが攻撃対象に選択された時に発動する事ができる。攻撃対象モンスターの攻撃力は、攻撃モンスターの攻撃力と同じになる。
奇跡の残照:通常罠
(1):このターン戦闘で破壊され自分の墓地へ送られたモンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターを特殊召喚する。
烈震LP0
この夜、烈震は大敗を喫した。他の誰がどう言おうと、烈震の中では完敗だった。
天の高みを知った気分だった。それでも心は折れない。手を伸ばす。星に届けと。
今弱いなら、もっと強くなろう。もっと、もっと。見果てぬ先まで。
これから大きな戦いが起こる。烈震の心は決まっていた。
クロノス、ティターン神族。いずれ劣らぬ強敵たち。
上等だ。それらを倒してこそ、上を目指せるというものだ。