神々の戦争   作:tuki21

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第76話:岡崎綺羅の決意

 それは、まだ暦が八月に入ったばかりのころ。

 ドイツ、クラインヴェレ本社、社長室。

 照明の抑えられた薄暗がりの部屋の中、クラインヴェレ社CEO、ルートヴィヒ・クラインヴェレの前で、男が口元に笑みを浮かべて資料を差し出した。

 今時珍しい紙媒体の重要書類。ルートヴィヒはモノ言わず受け取り、封筒の中身を取り出した。

 中には年齢も国籍もバラバラな男女の顔写真と、簡単なプロフィールが記載されていた。

 

「どうでしょうか? アマチュアの中で、我がゾディアックが出資しているデュエルに力を入れている学校、塾、道場、その他施設から選りすぐった、招待客たちです」

 

 にこりと笑い、男は手を差し伸べた。

 四十代と思われる男だった。彫の深い顔立ち、撫でつけられた灰色の髪、底深い湖のようなブルーの双眸、グレイのスーツをぴしりと隙なく着込んだ男。長い年月をかけて研磨され、ついに命を持ったような石像の風情。

 経済に明るいものならば彼の顔を知っていよう。

 十二の複合企業からなるコングロマリット、ゾディアックのCEO、射手矢弦十郎(いでやげんじゅうろう)

 そして、ある戦いの参加者の一部は、彼の別面を知っている。

 即ち、神々の戦争。その参加者にして、現状最もイレギュラーな存在、クロノスの契約者。

 その射手矢と対面し、ルートヴィヒは資料の写真に目を通した。

 

「面白いメンバーだ。吟味しておこう」

「いずれも素晴らしい将来性を感じさせる若者たちです」

 

 射手矢の申し出に、ルートヴィヒは苦笑した。

 

「どうかな。明らかに中年のような男もいるが?」

 

 揶揄とも取れないルートヴィヒの言い草に、今度は射手矢が苦笑した。

 茶番である。互いに、この資料にある人選の基準などとうに分かっている。

 微苦笑を浮かべて、射手矢はこう言った。

 

「では言い直しましょう。そこに記載されているのは、全員神々の戦争の参加者です」

 

 部屋の空気に変化はない。ルートヴィヒは薄く笑った。

 

「七大大会という名目、スポンサー権限をフルに使っての招待者の選別。真の狙いは神々の戦争の参加者を一か所に集め、君の手駒、ティターン神族を用いて一気に潰すこと、かな?」

「ご想像にお任せします」

 

 沈黙。ルートヴィヒはゆっくりと相好(そうごう)を崩した。

 

「じっくりと目を通させてもらうよ。そのうえで、招待参加者決定の連絡をさせてもらおう」

「では、私どもの期待が通りますよう、祈らせていただきます」

 

 ソファから立ち上がって、一礼したうえで、射手矢は退室した。

 一人残ったルートヴィヒは、立ち上がってデスクの引き出しの中から万年筆を取り出し、ろくに見もせずにすべての資料の「承認」の文字を書き込んだ。

 それからデスクに備え付けられた電話を手に取った。

 

「ああ、私だ。至急、六道(りくどう)君を呼んでくれ」

 

 了解の応答を確認し、ルートヴィヒはデスクについた。

 

「ぐ……」

 

 その表情が苦し気に歪む。

 

「あまり時間が残されていないな……。だがまだだ。まだ持たせなければならない。せめて、せめてジェネックス杯が終わるまでは。でなければ、我が友に顔向けできん。フレデリックの働きに、報いなければ……」

 

 薄暗い部屋の中、ルートヴィヒは一人、己の中の邪悪に抗い続けた。

 

 

 

 

 

◆◆◆◆◆◆

 

 

 

 

 

『七大大会が一つ、ジェネックス杯! 今年開催されるこの大会は、今までのそれとは趣を異にします』

 

 大型スクリーンに、その男の姿が映った時、道を歩く誰もが目を奪われた。

 目の覚めるような青い、三つ揃いのスーツで身を包んだその体は、硬く、大きい筋肉でおおわれており、還暦近いはずの老いを全く感じさせない。

 白いものが混じっているものの、灰色の髪はやはりまだ若々しく、髪と同じ色をした鋭い双眸は力を失っていない。

 全身からみなぎる活力、ギラギラとした双眸。今なお森中を駆け、獲物を狩る瞬間を待ち望む灰色狼の風情。

 この、デュエルモンスターズが世界を席巻する現代で、彼を知らぬ者はおるまい。

 デュエルモンスターズの生みの親。クラインヴェレ社のCEO。

 本人はプロではないが、Aランカーを含めた多くのプロの上を行くと目される実力、一部では、あのデュエルキング、六道天(りくどうたかし)よりも強いのではないかと言われている。

 “帝王”、ルートヴィヒ・クラインヴェレ。

 彼は画面から、世界に向けて語り掛ける。

 

『今回のジェネックス杯に、参加資格は()()()()()

 

 敬語でありながら、天上からの託宣のように、男の声が響いていく。

 

『プロ、アマ参加型の大会! これこそが今回のテーマ! 対戦方式はトーナメントではなく、バトルロイヤル! 参加者は事前にデュエルディスクのIDを登録するだけで構いません。会場は東京都内全域。そこで、デュエリスト同士が戦い、勝利者にポイントが加算されます。このポイントは、勝利した対戦相手のレベルに応じて算出されます。

 また、同じ相手とは二度以上対戦してもポイントは加算されません。

 八月最後の金、土、日曜の三日間の開催期間中に、最もポイントの多かったデュエリストが優勝者です。優勝者には賞品のカードと、もう一つ、エキシビジョンマッチでの、デュエルキングとのデュエルが約束されます!』

 

 画面の向こう側が大きくざわついた。

 プロ、アマ合同の大会。それだけでもめったにないイベントだ。何しろ、アマチュアにプロと対戦できる機会など滅多にない。しかもこの方式なら、アマチュアでもプロを出し抜き、優勝できる可能性がある。

 画面のルートヴィヒがさらに続けた。

 

「また、我々クラインヴェレ社、およびそのスポンサーであるゾディアック社が、これはと思うデュエリストを事前にピックアップし、招待状を送っておきました。この招待状を手にしたデュエリストには、特別に、開催期間中の宿泊費、交通費等は全てこちらで負担いたします。

 さぁ――――」

 

 ゴクリと皆が固唾を飲んで見守る中、ルートヴィヒは宣言した。

 

「ジェネックス杯。楽しく、そして素晴らしいデュエルを致しましょう」

 

 画面の向こう側の会見会場も、そして街頭の民衆たちも、全てが歓声を上げた。

 

 

 こうして、デュエルモンスターズ七大大会の一つ、ジェネックス杯の開催が宣言された。その裏で起こっている、神々の暗躍、人間たちの思惑、邪悪の蠢きは、多くの人々に知られることはなかった。

 

 

 

 

 

◆◆◆◆◆◆

 

 

 

 

 

 真夏の夜が更ける頃、その少女は一人、ベッドの上で浮かない顔をしていた。

 肩にかかるかどうかの長さに切り揃えられた、オレンジ色の髪。暗がりでも目立つ黄色の瞳。今は寝間着となっている子猫のパジャマ姿で、ベッドの上に仰向けになっている。

 岡崎和輝(おかざきかずき)の義理の妹、綺羅(きら)だった。

 綺羅は思いつめた表情で天井を見つめていた。もっとも、彼女は天井に目をやりながら、その実どこも見てはいまい。

 隣の部屋。兄の部屋だ。まだ明かりがついている。きっと、今度行われる大会のために、入念にデッキを調整しているのだろう。

 昔から、兄はデュエルのことになると熱心だった。それは初めて会った頃も変わらない。

 暗い場所にいると思い出す。七年前だ。綺羅と和輝は初めて出会った。

 最初、綺羅は和輝のことが嫌いだった。

 今でこそそうでもないが、綺羅は昔は人見知りする子供だったし、いきなり知らない人――それも異性――と一緒に暮らすことに抵抗を覚えた。両親が、何かと兄に気を回すのも面白くなかった。

 そんな印象が変わったのは、兄がデュエルをしていた時だろう。

 当時から綺羅も友達の流行りに遅れなくないという理由からデュエルモンスターズをたしなんでいた。だから一度、対戦した。

 まだデュエルディスクも持っていなかったので、テーブルの上でお互い向かい合ってのデュエル。

 今よりも、もっと対戦相手との物理的な距離が近い場所。

 そこで綺羅は、初めて和輝とまっ正面から向かい合ったのかもしれない。

 兄は、とても楽しそうにデュエルしていた。

 ぎこちないながらも笑顔を浮かべ、こちらの視線に気づくとやっぱり不器用ににこりと笑ったのだ。

 このころからだと思う。綺羅の中で、和輝に対する壁がなくなったのは。

 同時に、彼のことをもっと知れた。

 ある日突然、本当に突然、兄は怯えた。何とかしてあげたくても、どうにもならなかった。

 結論から言えば、兄を救ったのは両親と、マクベス先生で、自分は何もできなかった。

 結局綺羅は、兄がなぜ、何に怯えていたのか、そんな様子はすっかり見せなくなった今でも、よく知らなかった。和輝は語りたがらなかったし、両親もまた、和輝が自分から喋らないことを、喋ろうとはしなかった。

 自分はいつも蚊帳の外にいる。綺羅はそう思った。

 今もそうだ。

 兄が何か隠しているのは分かっていた。それがやましいことではなく、和輝にとっては絶対に譲れない、信念を抱いたものであることも、分かっていた。

 両親も、和輝が何か隠していることは分かっていたが、それが何なのか知らなかった。マクベス先生は――――どうだろう、分からない。知っていても守秘義務とか言って教えてくれないに違いない。

 両親は兄が語らないことについて心配していないようだった。

 父さんは言った。「和輝が自分に恥じることをするはずがない」と。

 母さんは言った。「和輝さんも男の子。言えないことの一つや二つあります。それが人様に顔向けできないことでないならば、後悔しないようにしたらいいのです」

 

「……私は、お二人のように割り切れません」

 

 ずっと、いつも、近くにいるから。

 綺羅はそっと、部屋の扉を開けた。

 和輝の部屋から明かりが漏れている。話し声も聞こえた。内容は分からない。誰かと電話しているようだ。

 

「…………」

 

 そっと、部屋の扉を閉めて、電気をつけた。

 机の中から己のデッキを取り出した。

 

「よし」

 

 何かを決意したような顔つきで、綺羅はぐっと握り拳を作った。

 当たって砕けろ、だ。

 

 

 義妹の決意も、聞き耳を立てていたことにも気づかず、和輝は電話をしていた。

 

「ああ。俺のところにも来たよ、ジェネックスの紹介状」

 

 電話の向こうで、息を飲む気配があったので、和輝は苦笑した。

 

「どうやら、俺もクロノス達に目をつけられていたらしいよ、咲夜(さくや)さん。まぁ仕方がないか。射手矢弦十郎は十二星高校(うち)の出資者。生徒の情報くらい簡単に手に入る。俺のダチも神々の戦争の参加者だけど、そいつらにも招待状が届いたってさ」

『じゃあ、和輝君もジェネックス杯に出るんだ?』

「そのつもり。そのために、今デッキを調整してる。――――アテナの宿敵だもんな、咲夜さんも――――」

『当然、出るわ』

「あの胡散臭いおっさんからも忠告されたよ。間違いなく罠だってな」

 

 胡散臭いおっさんこと、フレデリックの情報から、ジェネックス杯のスポンサーにゾディアックが関わっていることが分かった。当然、射手矢、ひいてはクロノスとその配下、ティターン神族。そしてクロノスに呼応し、人間に干渉できるようになった、ギリシャ神話の悪霊、怪物たち。

 敵は多い。しかし臆する理由はなかった。

 

『アテナを子供にしたのが、ティターンの長の方のクロノスだったなんてね。アテナも迂闊だったって言ってる。奴はほかのティターン神族もろとも封印されたものだと思っていたみたい』

 

 咲夜のその言葉に、和輝は引っ掛かりを覚えた。

 

「ん? この戦いは神々の戦争の()()なんだろ? だったら、そこに至るまでの、百柱の神を決めるための予選があったはずだ。それはどうしたんだ?」

『予選って言っても、全部の神様が一堂に会したってわけじゃないみたい。だから、本戦出場の神の間でも面識がなかったりもしてるって。だから、アテナもクロノスの存在に気づかなかったみたい。それに――――』

 

 そこで咲夜は黙った。一瞬、和輝を気遣うような気配を感じた。

 先を促す和輝。「何? 言ってよ」

 なお逡巡していた咲夜だったが、覚悟を決めたように口にした。

 

『七年前、アンラ・マンユ討伐戦の時に、倒された神も大勢いて。そのせいで神々の戦争参加者のメンバーが入れ替わって、詳細が把握できなくなったんだって。一応、百柱すべてそろっていることは確認できているんだけど』

 

 七年前。今の自分のハジマリを突き付けられても、和輝に動揺はない。乗り越えるべき過去であり、倒すべきトラウマであっても、必要以上に恐れる必要はない。

 和輝はもうそれを知っているし、逆にそのことで他人に気を使われるほうが嫌だ。特に咲夜には。

 

「心配しないでくれよ、咲夜さん。俺は大丈夫だから」

『……ごめん。余計な気を回しちゃったね』

「気にしなくていい。それじゃあ、大会、お互いに勝ち残ろう」

『ティターン神族の打倒。それはもちろん重要だけど、それとは別に、大会優勝。これも大事だからね。あたしは、勝つつもりだよ』

「俺だって。負けるつもりで戦ったりなんかしない」

 

 互いに笑い合う気配が伝わってくる。大きな戦いを前にして、憶する気持ちは微塵もなかった。

 

 

 

 

 

◆◆◆◆◆◆

 

 

 

 

 

 翌日の昼。昼食の洗い物が終わった後、綺羅は覚悟を決めて切り出した。

 

「兄さん。兄さんは、ジェネックス杯に参加するんですか?」

 

 ちょうどテレビに流れているジェネックス杯のCMを見ていた和輝は、綺羅の切り出しに一瞬目を丸くして言った。

 

「ああ、出るぞ。せっかく招待状も来たんだしな」

 

 和輝は何でもない風に言った。実際は招待状が来なくても参加するつもりだったし、もちろん優勝を目標にしているが、その裏ではやはり神々の戦争、特にクロノスとティターン神族との戦いを念頭に置いていた。

 国守咲夜。彼女とアテナを追い回し、多くの無関係な人々を傷つける。その在り方は看過できない。

 

「そうですか。兄さん、私も出場します」

 

 和輝の表情が止まった。今ロキが趣味の旅に出ていて本当に良かったと思った。こんなところを見られたら、にやにや笑いで何を言われるかわからない。姿を消しているので反論さえもできない。

 そして綺羅の申し出は予想外だった。同じ七星高校に通ってはいるが、綺羅は前に、自分はプロを目指しているわけではなく、クラインヴェレやその関連会社、とにかくデュエルモンスターズに関わる仕事がしたいのだと語っていたからだ。てっきり、和輝は綺羅はこういう大会にあまり興味がないと思っていた。

 小石を飲み込んだような表情で、辛うじて和輝は言った。

 

「お前じゃ、出るだけ無駄だ」

 

 嘘だ。ムラがあっても綺羅だって同年代と比べれば十分強力なデュエリストだ。それがプロに通用するかどうかは別にして、アマチュアも参加できる今回のジェネックス杯でなら、それなりに勝ち星を挙げられると思っている。

 だが今回は駄目だ。神々の戦争に巻き込まれる恐れがある。

 神々の戦争参加者に与えられる特権。神は己の力を振るえ、人間はデュエルモンスターズのカードを実体化できる。

 突然力を得た人間はそれを使いたがり、必然、多くの犠牲者が出るかもしれない。それでなくとも、東京中でバトルフィールドが展開されるだろう今回、もしもフィールドが崩壊すれば、東京大火災の二の舞だ。今度は、もっと規模が大きいかもしれない。

 綺羅がそれに巻き込まれる、和輝にはとても看過できなかった。

 だからきつい言葉を投げつけたのだが、綺羅は全く動じていなかった。

 

「それは、兄さんがやろうとしていることに、ジェネックス杯が関わっているからですか? そこに、私を巻き込みたくないからですか?」

「ッ!?」

 

 神々の戦争や、神の存在に気付いている様子はない。だが、和輝の普段の振舞いから、彼が何かを隠していることは気付いているようだ。

 それはそうだ。同じ家に住んでいるんだから、どうしたって秘密は綻んでくる。

 

「そんな――――」

「そんなことはない、ですか?」

 

 綺羅の言動が容赦ないものになってくる。和輝は逃げ道を探そうと必死だった。

 が、綺羅は先んじて和輝の逃げ道を塞いできた。

 

「兄さん、侮らないでください。家族なんです、私だって見る目があって、聞く耳があるんです。兄さんが何かを隠していることなんてとっくに知ってます。それが、絶対にやり遂げなければならない戦いだってことも」

 

 言葉もない和輝。綺羅はさらに言い募る。

 

「父さんも、母さんも、知っていても黙っています。兄さんの決めたことだから、きっと自分の心に従っている。だったら見守ろうと。そう言っていました。

 けれど私は無理です。兄さんの近くにいる私には、兄さんが危険なことをしているんじゃないか、とても、切羽詰まった状況に突っ込んでいっているのではないか。そんなことばかりが頭をよぎります」

 

 感情が爆発したように、綺羅の言葉は止まらない。

 

「兄さん、兄さんは、何をしているのですか? それは、私には話してくれないのですか?」

「それは――――」

 

 話せない。話せるわけがない。師匠のクリノ・マクベスのように、神の存在を感じられる特別な人間ならともかく、何も知らない人間に神を語っても意味はないだろう。

 まして、今ロキはいないのだ。信じられる要素、根拠、実体が何もない。

 それにそもそも、大人ぶっていても子供っぽくて、頑固な綺羅が、真実を話したところで自分の意見を曲げるかどうか――――

 そんな風に和輝が言葉に窮し、迷っていると、綺羅の方から意外な申し出があった。

 

「兄さん、デュエルしましょう」

 

 まるで予めそういう方向に話を持っていこうと決めていたかのように、綺羅はそう言った。

 

「何?」

「言葉で言っても、信じられないもの、伝わらないものはあります。行動を見ていても、誰かの内面なんて、容易に知れるものじゃありません。けれどデュエルなら、互いの内面を、胸の内を知ることだってできるはずです。

 百の言葉よりも、一のデュエルの方が、私の気持ちだって、決意だって、伝わると思うんです」

 

 こいつ最初からそうしようと決めていたな。和輝は義妹のひそやかな決意に舌を巻き、同時に、ここまで彼女を思いつめさせていた己を恥じた。

 大きなため息を一つ。

 

「分かった。デュエルをしよう。綺羅、いろいろ言葉に詰まった情けない兄だが、俺はお前がジェネックス杯に出場することに反対の立場だ。我を通したければ、力を示せ。そして俺の何かを知りたかったら、やはりデュエルで掬い取れ」

「はい。勿論です」

 

 いつ以来だろう、和輝はふとそう思った。こうして兄妹で、本気のデュエルを行うのは。神々の戦争の存在を知って、その戦いに身を投じてからはなかったとうに思う。そんな、兄妹の触れ合いは。

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