神々の戦争   作:tuki21

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第77話:兄妹対決、開始

 昼食後の午後。和輝(かずき)綺羅(きら)は馴染みのカードショップ――龍次(りゅうじ)がバイトをしている店だった――を訪れていた。

 ここは品揃えも豊富で、デュエルスペースも確保しており、デュエルディスクを用いた全力のデュエルも十分にできる店だった。

 夏休みであることもあって、冷房の効いた店内には何人か先客がいたが、幸いにも、皆カードを買ったり、自分のデッキを調整していたので、デュエルスペースは空いていた

 店長に断って、デュエルスペースに入る二人。

 デュエルディスクを起動。勝負前の緊張感が兄妹を包み込んだ。

 

「行きますよ、兄さん。全力です!」

「俺も手加減はしない」

 

 ただならぬ雰囲気の二人に、客たちも注目し始めた。

 そして――――

 

決闘(デュエル)!』

 

 お互いに譲れないもののため、戦いの火蓋が切って落とされた。

 

 

和輝LP8000手札5枚

綺羅LP8000手札5枚

 

 

「私の先攻です。モンスターをセット、それから、カードを一枚伏せて、ターン終了です」

 

 先攻を勝ち取った綺羅は、ほとんど迷いなく手札からカードを抜き、場に出して終わった。一切の情報を与えないが、代わりに自由に動けない。大人しい立ち上がりだった。

 

「俺のターンだな、ドローだ」

 

 ドローカードを確認した和輝は少し考える。

 綺羅の以前のデッキはレベル1の天使族を出し、コート・オブ・ジャスティスで後続を呼び出すスタイルだった。そのため、いかにしてレベル1天使を守り、コート・オブ・ジャスティスを維持するかが鍵だった。

 だが今もそのデッキを使っているのかはわからない。イギリスで和輝が多くのカードを手に入れたように、綺羅もまた、和輝の師でありカウンセラーのクリノからカードをもらっている。ウェールズの森を出るときに土産として和輝に渡され、綺羅の手にわたっているのだ。

 

「突いてみるか。マジシャンズ・ロッドを召喚」

 

 現れたのは、ブルーに薄く輝く燐光が、ブラック・マジシャンの姿を取ったモンスター。ただ、手にした杖のみ実体で、それはブラック・マジシャンと同じものだった。

 

「マジシャンズ・ロッドの召喚に成功したので、効果発動だ。デッキから、永遠の魂を手札に加える。

 ワンダー・ワンドを装備、攻撃力を500アップ。バトルだ、マジシャンズ・ロッドで攻撃!」

 

 マジシャンズ・ロッドは召喚に成功した時点で仕事を果たしたので、攻撃して、綺羅の出方を伺う。たとえカウンターの罠が発動しようがリカバリーは効くのだ。

 放たれる青白い稲妻。雷が鞭のようにしなり、綺羅の裏守備モンスターに迫る。

 

「リバースカードオープン! 神の桎梏(しっこく)グレイプニル発動! デッキから、極星獣タングニョーストを手札に加えます」

 

 翻ったリバースカード。綺羅の手札に新たなカードが加わった。

 だが攻撃は止まらない。青白い稲妻は寸分たがわず綺羅の守備モンスターを粉砕した。……綺羅の狙い通りに。

 

「この瞬間、破壊された極星獣タングリスニの効果が発動。さらにそれにチェーンして、手札の極星獣タングニョーストの効果を発動です! タングニョーストを守備表示で特殊召喚し、さらに極星獣トークン二体を特殊召喚です!」

 

 一体のモンスターを破壊したら三体のモンスターが現れた。明らかに反撃のための準備を揃えた綺羅に対して、見物客から歓声とため息が漏れた。

 

「藪蛇だったか。まぁそんなこともあるわな。メインフェイズ2、ワンダー・ワンドの効果発動だ。このカードとマジシャンズ・ロッドを墓地に送って、二枚ドロー。さらにオッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴンを(ペンデュラム)ゾーンレフトにセット」

 

 和輝の左隣に青白い光の円柱が屹立した。円柱の中には二色(ふたいろ)の眼を持つドラゴンが納められた。

 

「カードを一枚伏せる。それから永続魔法、補充部隊を発動。これでターンエンドだが、ターン終了時に、オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴンのP効果発動。自身を破壊して、デッキから慧眼の魔術師を手札に加える」

 

 和輝も負けてない。綺羅が反撃の手段を整えるならば、和輝もまた、綺羅の反撃に備えるだけだ。

 

 

マジシャンズ・ロッド 闇属性 ☆3 魔法使い族:効果

ATK1600 DEF100

「マジシャンズ・ロッド」の(1)(2)の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。(1):このカードが召喚に成功した時に発動できる。「ブラック・マジシャン」のカード名が記された魔法・罠カード1枚をデッキから手札に加える。(2):このカードが墓地に存在する状態で、自分が相手ターンに魔法・罠カードの効果を発動した場合、自分フィールドの魔法使い族モンスター1体をリリースして発動できる。墓地のこのカードを手札に加える。

 

ワンダー・ワンド:装備魔法

魔法使い族モンスターにのみ装備可能。装備モンスターの攻撃力は500ポイントアップする。また、自分フィールド上のこのカードを装備したモンスターとこのカードを墓地へ送る事で、デッキからカードを2枚ドローする。

 

神の桎梏グレイプニル:通常罠

自分のデッキから「極星」と名のついたモンスター1体を手札に加える。

 

極星獣タングリスニ 地属性 ☆3 獣族:効果

ATK1200 DEF800

このカードが戦闘によって破壊され墓地へ送られた時、自分フィールド上に「極星獣トークン」(獣族・地・星3・攻/守0)2体を特殊召喚する。

 

極星獣タングニョースト 地属性 ☆3 獣族:効果

ATK800 DEF1100

自分フィールド上に存在するモンスターが戦闘によって破壊され墓地へ送られた時、このカードを手札から特殊召喚する事ができる。1ターンに1度、フィールド上に守備表示で存在するこのカードが表側攻撃表示になった時、自分のデッキから「極星獣タングニョースト」以外の「極星獣」と名のついたモンスター1体を表側守備表示で特殊召喚する事ができる。

 

補充部隊:永続魔法

(1):相手モンスターの攻撃または相手の効果で自分が1000以上のダメージを受ける度に発動する。そのダメージ1000につき1枚、自分はデッキからドローする。

 

オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン 闇属性 ☆7 ドラゴン族:ペンデュラム

ATK2500 DEF2000

Pスケール赤4/青4

P効果

「オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン」の(1)(2)のP効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。(1):自分のPモンスターの戦闘で発生する自分への戦闘ダメージを0にできる。(2):自分エンドフェイズに発動できる。このカードを破壊し、デッキから攻撃力1500以下のPモンスター1体を手札に加える。

モンスター効果

(1):このカードが相手モンスターと戦闘を行う場合、このカードが相手に与える戦闘ダメージは倍になる。

 

 

「私のターンです、ドロー!」

 

 ふぅと、綺羅は緊張から息を吐き出した。

 実のところ、このデッキを回すのはこれが初めてだ。数日前に完成して、昨日の夜、和輝とデュエルをすることを決めてから、さらに調整した。

 和輝経由でクリノから貰ったカードたちを使った、新しいデッキ。その真価を発揮し、兄にぶつけるのだ。

 

「行きます! 私はタングニョーストを攻撃表示に変更し、効果を発動します! デッキから、極星獣グルファクシを特殊召喚します!」

 

 力強い(いなな)きとともに現れたのは、顔に赤い稲妻のようなペイントを施された黒馬。引き締まった筋肉は美しさと雄々しさを両立させ、立体映像(ソリットビジョン)の演出か、金の(たてがみ)が風を受けたようになびいていた。

 

「レベル3の極星獣トークン二体に、レベル4の極星獣グルファクシをチューニング!」

 

 間髪入れずに(シンクロ)召喚に移る綺羅。右手をかざしたその先に、四つの緑の光の輪となたグルファクシ。その輪を潜った二体の極星獣トークンが、それぞれ三つの、計六つの光の玉となる。

 光の道筋が光星を貫く。

 稲妻が室内に轟き、観客がどよめいた。

 

「星界の扉開く時、(いにしえ)戦神(いくさがみ)が、雷鳴纏いて降臨せん。その力を振るい、大地を砕かん! シンクロ召喚、極神皇トール!」

 

 光の中から現れたのは、古い北欧、ヴァイキングが身に着けていたような角の付いた鎧冑を身に纏い、青いマントを翻した巨躯を持つ男。否、神。

 その手には巨大な魔鎚が握られていた。

 

「トール、か……」

 

 和輝は複雑そうな表情をした。トールと聞いて思い出すのは、やはり友人の烈震(れっしん)と、彼と契約した神、トールだろう。ロキの昔馴染みなこともあって、時々一緒に冒険した時なんかの話を聞いたことがある。

 今はいない相棒のことを思い、和輝は複雑な思いに駆られた。

 ロキがいない中、自分は重大なことを決めようとしている。一切の相談もなしに。

 タイミング悪い相棒への苛立ちもあったが、どことなく後ろ暗い。

 

「兄さん?」

 

 綺羅が訝し気に眉を寄せたので、和輝は試行をデュエルに戻した。

 

「何でもない。しかし、星界の三極神か。先生もずいぶん大盤振る舞いしたもんだ」

「兄さんだって、Pカードをはじめ、たくさんカードをもらったじゃありませんか。それに、私のメインフェイズはまだ終わってはいません。手札から魔法カード、極星宝スットゥングを発動します。私の場に極神モンスターがいるため、カードを二枚ドローします。

 さらに極星天ヴァルキュリアを召喚!」

 

 追加されたモンスターは白い翼を広げ、赤い鎧を身に着けた可憐な戦乙女。レベル3のモンスターと、レベル2のチューナー。ならば次の行動は一つ。

 

「レベル3の極星獣タングニョーストに、レベル2の極星天ヴァルキュリアをチューニング!」

 

 レベル5のS召喚。先ほどと同じエフェクトが走り、光の向こうから新たなモンスターが現れた。

 

「星界の門の向こうから、現れるのは魔物たちの大いなる母! 来たれ神に弓引く魔嬢! シンクロ召喚、極星魔嬢アングルボダ!」

 

 現れたのは、漆黒の魔女衣装に身を包んだ美女。赤いルージュを引いた唇、白い肌、ローブから漏れる紫の髪、金の瞳。嫣然な微笑を浮かべ、黒いマニキュアを爪を伸ばし、ゆっくりと手招きした。

 アングルボダ。その名前に、和輝は聞き覚えがあった。

 調べた北欧神話の話にあった。そう、確かロキの妻――の一人――だった。彼女との間に、世界に巻き付いた大いなる蛇竜、ヨルムンガルドと、世界を飲み込む狼、フェンリル、そして死者の国の女王、ヘルが生まれたのだ。

 知った名前の連続に意識を持っていかれそうになったが、すぐに元に戻る。今は目の前のデュエルの集中する時だ。でなければ、この戦いに思いを伝えにきている綺羅に失礼だ。

 

「バトルです! トールでダイレクトアタック!」

 

 綺羅の良く響く声が店内を通り抜ける。命令を受けたトールが地響きとともに一歩踏み出し、手にした魔鎚を振り下ろした。

 稲妻を纏った鉄槌。和輝はそれをまともに受けた。光と音のエフェクトが店内を荒れ狂った。

 

「ぐお……ッ!」

 

 これは神々の戦争ではないので、リアルダメージはない。しかし視覚情報からの脅威、それに音による聴覚への刺激が、ダメージを誤認させる。

 もっとも、わざわざ場を無防備にしたのだ。和輝もこのダメージは覚悟したものだった。

 

「補充部隊の効果により、カードを三枚ドロー!」

 

 ド派手な先制ダメージに、観客が沸き上がった。だが綺羅はこのダメージが和輝の目論見通りであることを見抜いていた。何しろ、補充部隊の効果によって三枚のドローがかなったのだ。ライフを半分近く持っていかれても、P召喚を使う兄のデッキなら、三枚のドローは大きい。

 とはいえ、綺羅も止まるつもりはない。当初の予定通り、攻めるだけだ。

 

「アングルボダでダイレクトアタックです!」

「さすがにそれは止めるか。リバースカード、永遠の魂発動! 手札のブラック・マジシャンを攻撃表示で特殊召喚する!」

 

 和輝の手札から出撃する、彼のデッキのエース。

 黒衣の衣装を身に包んだ、眉目秀麗な魔術師。指を振り、チチチと、「まだまだ甘い」とばかりに舌を鳴らす。

 攻撃力2500、アングルボダの攻撃力は2200なので、対抗できない。

 

「攻撃を中断して、バトルフェイズを終了します。メインフェイズ2、アングルボダの効果を発動します。一ターンに一度、デッキから極星モンスター一枚を墓地に送って、そのモンスターのレベル分、このカードのレベルを上げ下げできます。私は、二枚目のグルファクシを墓地に送り、レベルを4つ挙げます。カードを1枚伏せて、ターン終了です」

 

 

極星獣グルファクシ 地属性 ☆4 獣族:チューナー

ATK1600 DEF1000

相手フィールド上にシンクロモンスターが表側表示で存在し、自分フィールド上にモンスターが存在しない場合、このカードは手札から特殊召喚する事ができる。

 

極神皇トール 地属性 ☆10 獣戦士族:シンクロ

ATK3500 DEF2800

「極星獣」と名のついたチューナー+チューナー以外のモンスター2体以上

1ターンに1度、相手フィールド上に表側表示で存在するモンスターの効果をエンドフェイズ時まで無効化できる。フィールド上に表側表示で存在するこのカードが相手によって破壊され墓地へ送られた場合、そのターンのエンドフェイズ時に自分の墓地に存在する「極星獣」と名のついたチューナー1体をゲームから除外する事で、このカードを墓地から特殊召喚する。この効果で特殊召喚に成功した時、相手ライフに800ポイントダメージを与える。

 

極星宝スットゥング:通常魔法

このカード名は1ターンに1度しか発動できない。(1):自分フィールドに「極神」モンスターが存在するときに発動できる。カードを2枚ドローする。

 

極星天ヴァルキュリア 光属性 ☆2 天使族:チューナー

ATK400 DEF800

このカードが召喚に成功した時、相手フィールド上にモンスターが存在し、自分フィールド上にこのカード以外のカードが存在しない場合、手札の「極星」と名のついたモンスター2体をゲームから除外して発動する事ができる。自分フィールド上に「エインヘリアル・トークン」(戦士族・地・星4・攻/守1000)2体を守備表示で特殊召喚する。

 

極星魔嬢アングルボダ 闇属性 ☆5 魔法使い族:シンクロチューナー

ATK2200 DEF2000

チューナー+チューナー以外のモンスター1体以上

このカード名の(3)の効果は1ターンに1度しか発動できない。(1):???(2):1ターンに1度、デッキから「極星」モンスター1体を墓地へ送り、以下の効果から1つを選択して発動できる。●墓地へ送ったそのモンスターのレベル分だけ、このカードのレベルを上げる。●墓地へ送ったそのモンスターのレベル分だけ、このカードのレベルを下げる。(3):???

 

永遠の魂:永続罠

「永遠の魂」の(1)の効果は1ターンに1度しか使用できない。(1):以下から1つを選択してこの効果を発動できる。●自分の手札・墓地から「ブラック・マジシャン」1体を選んで特殊召喚する。●デッキから「黒・魔・導」または「千本ナイフ」1枚を手札に加える。(2):このカードが魔法&罠ゾーンに存在する限り、自分のモンスターゾーンの「ブラック・マジシャン」は相手の効果を受けない。(3):表側表示のこのカードがフィールドから離れた場合に発動する。自分フィールドのモンスターを全て破壊する。

 

ブラック・マジシャン 闇属性 ☆7 魔法使い族:通常モンスター

ATK2500 DEF2100

 

 

和輝LP8000→4500手札7枚

綺羅LP8000手札3枚

 

 

「俺のターンだ、ドロー」

 

 大ダメージを受けたが、和輝は冷静だ。ドローカードを一瞥し、即座に反撃に移る。

 

「三極神はすべて自己再生効果を持っている強力なカードだが、再生できるからこそ、カードに対する耐性を持たない。つまり脆いんだよ! 永遠の魂の効果で、デッキから千本(サウザンド)ナイフを手札に加え、発動! トールを破壊する!」

 

 ブラック・マジシャンの背後に、無数の――それこそ千に届きそうな――ナイフが出現、一斉に射出される。

 無数のナイフに抗うすべのないトールが、断末魔の咆哮を上げて破壊された。

 

「スケール2の降竜の魔術師と、スケール5の慧眼の魔術師をPゾーンにセッティング!」

 

 和輝のフィールド、彼の両隣りに青白い光の円柱が二本屹立する。その中に収められたにタイの魔術師。その下には降竜の魔術師には2、慧眼の魔術師には5の楔文字に似た文字が浮かび上がる。

 

「ここで、慧眼の魔術師のP効果発動! このカードを破壊し、デッキからスケール8の猪突の魔術師をPゾーンにセット!」

 

 慧眼の魔術師が、硝子のように破壊される。その代わりにセットされたのは、猪の被り物をした薄手の着物姿の男の魔術師が円柱にセットされた。スケールは8。

 

「これで、俺はレベル3から7のモンスターを同時に召喚できる。さぁ!」

 

 和輝の右手が天に向かって掲げられた。彼の頭上に、大きな振り子が現れ、2から8の間のスケールを行き来する。

 

「振り子は揺れる。避けえぬ宿命を乗せて! 天空に描かれる光のアークが、異界への門へと変じる! ペンデュラム召喚! 手札から出でよ、調弦の魔術師、エクストラデッキから来い、慧眼の魔術師、そしてオッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン!」

 

 振り子の向こうで、異界のゲートが開かれた。そこから三つの光が飛び出した。

 光はやがて実体化し、フードをかぶった褐色、白髪の男魔術師と、ピンクの髪に巨大な音叉を持ったサイバネティックな格好をした少女魔術師、そして、二色の眼持つ地上型のドラゴン。

 

「三体のモンスター……ッ!」

「驚くのはまだ早いぞ、綺羅。調弦の魔術師のモンスター効果。デッキから牛刺(ぎゅうし)の魔術師を守備表示で特殊召喚する」

 

 調弦の魔術師が、手にした巨大音叉を打ち鳴らす。澄んだ音が響き渡り、その音に誘われるように、新たな魔術師がデッキから出陣する。 

 現れたのは牛の角を模したアクセサリーを頭につけた長髪黒髪、金の瞳、臙脂色の着流し姿に閉じた扇子を手にした雅な雰囲気を醸し出す男魔術師。妙に色気のある流し目で綺羅を見つめた。

 

「次はこれだ。レベル4の牛刺の魔術師に、同じくレベル4の調弦の魔術師をチューニング!」

 

 綺羅に対抗するように、和輝もまた、S召喚を導く。和輝のフィールド、調弦の魔術師が四つの緑色をした光の輪となり、その輪を潜った慧眼の魔術師が四つの白い光星となる。

 光星を貫く一筋の道。光が満ちた。

 

「集いし八星(はっせい)が、覚醒へと至った魔導の(ともがら)を紡ぎ出す! 光さす道となれ! シンクロ召喚、(まじな)いを唱えよ、覚醒の魔導剣士(エンライトメント・パラディン)!」

 

 光の向こうから、新たなモンスターが現れる。

 白い、ロングコートのような衣装に、白い鎧姿。時計の文字盤を二つに割ったような意匠の二振りの剣。涼やかで物静かな、覚者を思わせる佇まいの魔法使い。

 

「魔術師を素材にしてS召喚に成功したため、覚醒の魔導戦士の効果発動。墓地のワンダー・ワンドを回収し、ブラック・マジシャンに装備。

 置換融合発動。俺のフィールドのオッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴンと慧眼の魔術師を融合!」

 

 連続召喚に、観客が沸き上がる。歓声を聞きながら、和輝のテンションは高まっていった。

 ここに新たな召喚法が出現する。

 和輝のフィールドに空間の歪みが現出し、渦を作る。その渦に、彼のフィールドの二体のモンスターが飛び込んだ。

 

「二色の眼持つ竜よ、見極めの魔術師よ! 今一つに交わり神秘の瞳持つ魔導竜へと変じよ! 融合召喚、ルーンアイズ・ペンデュラム・ドラゴン!」

 

 渦の中から新たなドラゴンが現れる。

 ベースはオッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン。赤を基調にした体躯に、角の代わりに体から金色のリング状のパーツを備え、右目は金属製の眼帯で隠し、首にもリングパーツが追加されている、全体的に、オッドアイズのフォルムよりもスマートな印象を与えた。

 

「ペンデュラム、シンクロ、それから融合……。兄さん、ずいぶん派手に……!」

 

 慄く綺羅に対して、和輝は畳みかけるようにさらに重ねた。

 

「猪突の魔術師のP効果発動! ターン終了時まで、覚醒の魔導戦士の攻撃力を700アップ! バトルだ!」

「ッ!」

 

 和輝の気迫に押されるように、綺羅は一歩、後ずさった。綺羅の気後れに対し、和輝は一歩踏み込んだ。

 

「覚醒の魔導戦士でアングルボダを攻撃!」

 

 攻撃宣言を受け、白い魔導戦士が手にした剣をX字に構えて疾走。一瞬で距離を詰め、北欧の魔女に対して下段から剣を振るう。

 剣閃が走り、アングルボダの身体はX字に四分割されてしまった。

 

「くぅ!」

「この瞬間、覚醒の魔導戦士の効果発動! アングルボダの元々の攻撃力分、ダメージを与える!」

 

 パチンと和輝が指を鳴らす。気付いた時、綺羅の眼前に覚醒の魔導戦士が出現。長針と短針のような二振りの剣を掲げた。炎のような揺らめく白い光が放たれ、綺羅の身体の浴びせられた。

 

「きゃあ!」

 

 立体映像だと分かっていても、綺羅は悲鳴を上げてしまう。女の子に悲鳴を上げさせる和輝に対してブーイングが起こった。

 

「だまらっしゃい! さー続きだ! ルーンアイズ・ペンデュラム・ドラゴンでダイレクトアタック!」

 

 意外とノリノリで悪役(ヒール)を演じる和輝。それでいながらも、頭脳は冷静だ。

 ルーンアイズ・ペンデュラム・ドラゴンの複数攻撃はモンスターにしか攻撃できないが、P召喚されたモンスターを素材にした場合、相手のカード効果を受けない。綺羅がどんなカードを伏せていても問題ない。さらにブラック・マジシャンも、永遠の魂のおかげで相手のカード効果を受け付けない。

 つまりこの攻撃は通る公算が高い。そしてこの攻撃がすべて通れば、綺羅のライフは0。かわいい女の子の敗北を見たくないギャラリーが色めきだった。

 和輝の予想通り、ルーンアイズ・ペンデュラム・ドラゴンが放った虹色の光が綺羅に直撃した。

 綺羅より先に、観客が悲鳴を上げる。立体映像の粉塵が巻き起こり、一瞬、綺羅の姿を隠した。

 

「リバースカード、オープンです!」

 

 その粉塵を振り払うように、綺羅が空いてる右手を振るった。

 

「フリッグのリンゴ! 今受けたダメージ分ライフを回復し、その数値分の攻守を持つ邪精トークンを、守備表示で特殊召喚します!」

「つまり攻守3000のトークンか。ワンダー・ワンドを装備したブラック・マジシャンじゃ突破できないな。仕方ない。メインフェイズ2、ワンダー・ワンドの効果発動。このカードとブラック・マジシャンを墓地に送り、二枚ドロー。カードを二枚伏せて、ターンエンドだ」

「兄さんのターン終了時、トールの効果発動! 墓地のグルファクシを除外し、特殊召喚! さらに兄さんに800ポイントのダメージを与えます!」

 

 雲海から光が差し込むように、一筋の光から復活するトール。その際に伴われた雷撃が和輝を襲う。

 

 

千本ナイフ:通常魔法

(1):自分フィールドに「ブラック・マジシャン」が存在する場合、相手フィールドのモンスター1体を対象として発動できる。その相手モンスターを破壊する。

 

降竜の魔術師 闇属性 ☆7 魔法使い族:ペンデュラム

ATK2400 DEF1000

Pスケール2

P効果

(1):1ターンに1度、フィールドの表側表示モンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターの種族は相手ターン終了時までドラゴン族になる。

モンスター効果

(1):1ターンに1度、自分メインフェイズに発動できる。このカードの種族はターン終了時までドラゴン族になる。(2):フィールドのこのカードを素材として融合・S・X召喚したモンスターは以下の効果を得る。●このカードがドラゴン族モンスターと戦闘を行うダメージステップの間、このカードの攻撃力は元々の攻撃力の倍になる。

 

慧眼の魔術師 光属性 ☆4 魔法使い族:ペンデュラム

ATK1500 DEF1500

Pスケール5

P効果

(1):もう片方の自分のPゾーンに「魔術師」カードまたは「EM」カードが存在する場合に発動できる。このカードを破壊し、デッキから「慧眼の魔術師」以外の「魔術師」Pモンスター1体を選び、自分のPゾーンに置く。

モンスター効果

(1):このカードを手札から捨て、自分のPゾーンの、Pスケールが元々の数値と異なるカード1枚を対象として発動できる。そのカードのPスケールはターン終了時まで元々の数値になる。

 

猪突の魔術師 闇属性 ☆4 魔法使い族:ペンデュラム

ATK1800 DEF1600

Pスケール8

P効果

(1):1ターンに1度、自分フィールドのモンスター1体を対象に発動できる。ターン終了時までそのモンスターの攻撃力を700アップする。(2):自分フィールドのモンスターが相手のカードの対象になった場合に発動できる。Pゾーンのこのカードを破壊して、その効果を無効にする。

モンスター効果

(1):このカードが戦闘を行うときに発動する。ダメージ計算終了時まで、このカードの攻撃力は600ポイントアップする。

 

調弦の魔術師 闇属性 ☆4 魔法使い族:ペンデュラムチューナー

ATK0 DEF0

Pスケール8

P効果

(1):このカードがPゾーンに存在する限り、自分フィールドのモンスターの攻撃力・守備力は、自分のEXデッキの表側表示の「魔術師」Pモンスターの種類×100アップする。

モンスター効果

このカードはEXデッキからの特殊召喚はできず、このカードを融合・S・X召喚の素材とする場合、他の素材は全て「魔術師」Pモンスターでなければならない。このカード名のモンスター効果は1ターンに1度しか使用できない。(1):このカードが手札からのP召喚に成功した時に発動できる。デッキから「調弦の魔術師」以外の「魔術師」Pモンスター1体を守備表示で特殊召喚する。この効果で特殊召喚したモンスターの効果は無効化され、フィールドから離れた場合に除外される。

 

牛刺の魔術師 闇属性 ☆4 魔法使い族:ペンデュラム

ATK1900 DEF1900

Pスケール8

P効果

(1):自分の魔法使い族モンスターが守備表示モンスターを攻撃した場合、その守備力を攻撃力が超えた分だけ相手に戦闘ダメージを与える。

モンスター効果

なし

 

覚醒の魔導剣士 闇属性 ☆8 魔法使い族:シンクロ

ATK2500 DEF2000

チューナー+チューナー以外のモンスター1体以上

「覚醒の魔導剣士」の(1)の効果は1ターンに1度しか使用できない。(1):「魔術師」Pモンスターを素材としてこのカードがS召喚に成功した場合、自分の墓地の魔法カード1枚を対象として発動できる。そのカードを手札に加える。(2):このカードが戦闘で相手モンスターを破壊した時に発動できる。そのモンスターの元々の攻撃力分のダメージを相手に与える。

 

置換融合:通常魔法

このカードのカード名はルール上「融合」として扱う。(1):自分フィールドから融合モンスターカードによって決められた融合素材モンスターを墓地へ送り、その融合モンスター1体をエクストラデッキから融合召喚する。(2):墓地のこのカードを除外し、自分の墓地の融合モンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターをエクストラデッキに戻す。その後、自分はデッキから1枚ドローする。

 

ルーンアイズ・ペンデュラム・ドラゴン 闇属性 ☆8 ドラゴン族:融合

AT3000 DEF2000

「オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン」+魔法使い族モンスター

(1):このカードは、「オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン」以外の融合素材としたモンスターの元々のレベルによって以下の効果を得る。●レベル4以下:このカードは1度のバトルフェイズ中に2回までモンスターに攻撃できる。●レベル5以上:このカードは1度のバトルフェイズ中に3回までモンスターに攻撃できる。(2):フィールドのP召喚されたモンスターを素材としてこのカードが融合召喚に成功したターン、このカードは相手の効果を受けない。

フリッグのリンゴ:通常罠

(1):自分フィールドにモンスターが存在せず、自分が戦闘ダメージを受けた時に発動できる。受けたダメージの数値分だけ自分のLPを回復し、自分フィールドに「邪精トークン」(悪魔族・闇・星1・攻/守?)1体を特殊召喚する。このトークンの攻撃力・守備力は、この効果で自分が回復した数値と同じになる。

 

 

和輝LP4500→3700手札4枚

綺羅LP8000→4800→1800→4800手札3枚

 

 

「く……。兄さん、やっぱり強いです!」

 

 綺羅は久々のデュエルで、兄の実力を痛感していた。

 元々同年代の中でも抜きんでた実力を持っていた和輝だったが、ここ数か月の間に飛躍的に実力を伸ばしている。

 綺羅はそれが、和輝が神々の戦争に参加し、強敵との場数を踏んだうえでの成長だと知らない。知らないが、兄が秘密にしていることが、実力向上に関係していると思っていた。そして妹の勘は当たっていた。

 そして()()()()()()

 兄は自分を遠ざけようとしている。それは疎ましく思ったからではなく、その逆。

 

(兄さんは、私を気遣っている……)

 

 そのことは素直に嬉しい。だが、自分をそんな庇護の必要な雛鳥だと、いつまでも思われるのは嫌だ。

 だから伝えるのだ。このデュエルで、自分の思いを。

 キッとまっすぐ前を向いて、綺羅は叫んだ。

 

「私だって、まだ終われません! まだ、何も兄さんに伝えていません!」

「なら来いよ。お前の中にあるもの。デュエルにぶつけて来い!」

 

 受けて立つ。和輝はそう応えた。

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