神々の戦争   作:tuki21

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第80話:黒い敵手

 東京都内某所。ゾディアック社社長室。

 テレビのニュースで、ジェネックス杯が間もなく開始される旨が放送された。

 ニュースキャスターが興奮気味に話し、続々と東京都内に集まっている参加者たちの数人にインタビューを行っていた。

 これで、都内の経済効果は大きく上昇するだろう。スポンサーであるゾディアック社の評判も上がる。

 男は満足げに笑った。

 彫の深い顔つき、灰色の髪を撫でつけており、青い瞳。グレイのスーツを見事に着こなす壮年の男。長い年月をかけて研磨され、ついに命を持ったような石像の風情。

 ゾディアックCEO。射手矢弦十郎(いでやげんじゅうろう)

 今はクロノスの契約者。即ちアテナの宿敵にして、和輝たちの目下最大の敵だ。

 射手矢は手元のタブレットに、画像を表示させた。

 何人かの参加者の、簡単なプロフィールをまとめたものだった。

 無論、ジェネックス杯の参加者でもあり、神々の戦争の参加者だ。

 自身がスポンサーを買って出ている国守咲夜(くにもりさくや)。そして、出資学園の一つ、十二星高校の生徒たち。即ち、岡崎和輝(おかざきかずき)風間龍次(かざまりゅうじ)黒神烈震(くろかみれっしん)の三名。

 それだけでなく、フレデリック、カトレア、エーデルワイスなどの、入手可能な情報が明記されていた。

 

「残念ながら、一部のプロは参加を見合わせたか。まぁ仕方がない。メンツにこだわるスポンサーが、アマチュアに敗れたプロ、といった評価を嫌うだろう。

 それにしても、素晴らしいことだね。夢を持った若者が、こうして多く参加している。デュエルモンスターズ……。あの時私たちは家業を継ぐため、夢を諦めたが、その代わり今は、当時私たちが夢見た希望をそっくりそのまま持った若者たちを手助けできる」

「手助け、ですか」

 

 社長室内にいたもう一人の人物が口を開いた。

 射手矢と同じく、四十前後の男。グレイの髪、スーツ、青い瞳、長身痩躯、銀縁眼鏡。神経質に糸を張り巡らせる痩せ蜘蛛の風情。

 秤正治(はかりまさはる)。ゾディアック顧問弁護団のトップであり、現在はティターン神族の一柱、クロノスの妻、レア神と契約を結んだ男であった。

 

「ああ、その通りだとも、友よ。私も、君も。かつて夢を諦めざるを得なかった。抱いた希望を、捨てざるを得なかった」

 

 そう言って、射手矢は机の上に置いてあった己のデッキを手に取った。

 

「デュエルモンスターズ。世界を魅了しているね」

「我々も、その一人でしたな」

「過去形で語ってくれるなよ」苦笑して、射手矢は傍らの友人を見据えた。

「幼少より親同士で引き合わされて以来、我々は常に友の歩んできたな、秤」

「ハマった遊びも、同じでしたな」

 

 銀縁眼鏡の位置を指で神経質に調整しながら、秤はそう言った。幼馴染の神経質さに苦笑しながら、射手矢は言った。

 

「かつて魅了され、しかし捨て去って、置き去りにしてしまった夢。私はもう一度、手に入れてみせるよ」

「…………お供致しましょう」

 

 柔和な笑みを浮かべた射手矢の言葉に、秤は苦みを帯びた声音で応じた。

 

 

 

 

 

◆◆◆◆◆◆

 

 

 

 

 志を同じくして集まった仲間たちと別れて、和輝は一人、東京都内を歩いていた。

 ジェネックス杯開始まであと五分。どこかに適当な相手がいないかと、周囲を窺ってみる。

 

「んー。そんなに必死に探さなくてもいいと思うよ?」

 

 金髪碧眼の美丈夫、即ちロキが気楽そうにそう言った。なぜそんなことが言えるのか、視線で問いかけた和輝だったが、ロキはあっけらかんと答えた。

 

「だって、クロノス陣営にとって、君たちは懐に飛び込んできた敵だよ? ボクだったら余さず居場所を特定して、早速手駒を向かわせるね」

「つまり、黙っていれば向こうからやってくるってことか」

「ついでに、神や怪物に選ばれたデュエリストなら、技量も十分だろう。つまり、手に入るDPも多い」

「一石二鳥ってことな」

 

 そういうこと、と笑みを浮かべて言うロキ。その視線が、流れるように和輝から離れ、前方で止まった。

 視線の先に、男が一人。

 黒い肌の男性。二十代前半、絞り込まれ、均整の取れた体つき。黒の肌に編み込んだ黒い髪、金色の瞳、だぼだぼのタンクトップにハーフパンツ、頭にはベースボールキャップ。このままバスケットボールでも持たせれば、ニューヨークの片隅あたりにいそうな青年にしか見えない。

 だがその左手につけられているデュエルディスクが、彼が何者であるかを語っていた。

 そして、男の容姿に、和輝は引っかかるものを感じた。見たことがある。そう、デュエル関係だ。

 

「自己紹介しようかな」

 

 よく通る声で、黒人男性は言った。

 

「リック・ディートルという。よろしく。神々の戦争の参加者さん」

「リック・ディートル。アメリカリーグにいる、Cランクプロの!?」

 

 まさかいきなりプロと当たるとは。否、今彼は、神々の戦争の参加者といった。ならば――――

 

「こいつの紹介もしておこう。見えるかな。オルトロスだ」

 

 言われて、和輝はリックの背後に目を凝らした。

 そこに、いた。

 ロキやほかの神のような存在感こそないが、大人三人分はありそうな巨体を持つ、双頭の犬の姿が。

 オルトロス。ギリシャ神話の怪物。つまり、クロノスの手下ということだ。

 和輝が神々の戦争の参加者だと知っていて立ちはだかっている。

 

「敵だね。しかし妙だね。ミスター・ディートル。君は特に洗脳されている様子もない。我の強い怪物が、人間に手綱を握らせとは思えないけれど?」

「決まってイル。こいつの方が、強いカらだ」

 

 唸り声に交じって、台詞が届いた。やや聞き取りづらいのは、そもそも声帯が人間と離れているからだろう。

 オルトロスだった。

 

「オレに共感シテもらった以上、意識を奪ウこともアルまい」

「彼らは、二度、迫害され、追いやられたらしいね」

 

 半透明のオルトロスの頭をなでながら、リックが言った。

 

「オリンポス十二神に戦争で負け、冥府の底のさらに底、奈落に失墜させられ、そして二度目は人間に。一神教による信仰の迫害。貶められた神々と、迫害され、住む場所から追いやられてしまった信仰者達……。おれと、似てる」

 

 確かな共感を交えた声音。そこで和輝もピンときた。

 

「だから、協力したと? 自分から? こいつらが何をやっているのか、承知の上で? 神々の悪意によって、取り返しのつかない理不尽が多くおこる。なのに!」

 

 言葉に感情が乗ってきた。熱くなるのを止められない。

 リックはあっさりと頷いた。

 

「その通りだ。勿論、あまりにも行き過ぎれば止めるがね。しかし、彼らの気持ちもわかる。だから、非道を許容しないことを条件に、手を貸すことにしたんだ。幸い、オルトロス(こいつ)は約定を守ってくれているしね」

「人間ハ気に入らんが、そんなのは神代のころからカワラン。イマさらだ。ならば、力を保持するための約定くらい、守ル。オレたちを叩きのめしたオリンポスの神々に復讐できるナラ。それで十分だ」

 

 なんでもないことのようにオルトロスは語った。和輝はオルトロスではなく、相対する相手を思う。その境遇を()()()()()()()

 リック・ディートル。アメリカリーグ所属のプロ。一時期はBランク。現在は少し負けが続いていたのでCランク。だが実力は間違いなくBランカークラス。

 黒人である彼がアメリカで暮らす際に生じる問題があった。

 今も根深く、人間社会に巣食う闇。

 人種差別。

 相当な苦労があったのだろう。根深く残る黒人差別。白人至上主義を例に挙げるまでもなく、宗教、立場、人種。あらゆることが差別の種になる。

 黒人であるリックにも、やはり相当な差別や苦労があったのだろう。だからこそ、同じく虐げられた存在である彼らに共感し、自分から手を貸しているのだ。心を歪ませることなく、自分自身の意志で。

 和輝は吐息を一つはいた。

 てっきり、敵は多くの人々を洗脳し、無理やり戦いに駆り立てているのだと思った。それこそティターン神族以外は洗脳された手駒だとしてもおかしくなかった。あるいはティターン神族のパートナーも。

 例外だってある。そのことを頭に入れていなかった事実を、和輝は恥じた。

 考えが足りない。だから、動揺する。

 

「なるほどね。まぁ、そういう人間もいるよね」

 

 そんな動揺と無縁のロキは、納得した、理解したというように頷いた。そして和輝の肩を軽く叩き、

 

「気負うなよ、和輝。共感も理由も、千差万別。人間の美点で欠点だ。そして、一度決めたのなら、()()()。善性であれ悪性であれ、迷えば負ける。そして、ここで負ければ、君の目的も果たせなくなる」

 

 目的。わかっている。ここで、相手に動揺し、感情移入すれば、神々によって理不尽に奪われる命、傷つけられる人たちに手が伸ばせなくなる。

 ごめんだ。そんなのは。

 ()()()。思考が切り替わる。意識が切り替わる。戦うために、デュエルのものに。

 リックは微笑する。対峙する少年がやる気になったので、リックもまた、やる気になったのだ。敵意のない相手を一方的に、というのはリックとしても気分がよくない。

 十時三十秒前。二人のデュエルディスクが起動する。

 それぞれが気持ちを落ち着ける。デュエルを行うための準備。精神の統一。

 残り五秒。四、三、二、一。

 〇。世界が切り替わる。はたから見れば和輝たちが消えたように見えるだろう。

 現実世界から、少しだけ位相のずれた異空間。神々の戦争のための、バトルフィールド。

 和輝の胸に輝きが宿る。炎のような赤。宝珠の輝きだ。

 一方、リックの胸元には何の光もない。これは、彼が宝珠を持たないことを示していた。

 

「精霊、妖精、悪霊怪物。彼らは宝珠を持たない。だからデュエル中に宝珠が砕かれる危険はないけれど、反面、一度でも敗北すれば消滅してしまう」

「なるほどな」

「わかったかな? では、始めようか」

 

 頷く和輝。そして――――

 

決闘(デュエル)!』

 

 和輝にとってのジェネックス杯初戦の幕が、切って落とされた。

 

 

和輝LP8000手札5枚

リックLP8000手札5枚

 

「俺の先攻! 苦渋の決断を発動。デッキからギャラクシーサーペントを墓地に送り、二枚目を手札に加える。

 手札を一枚捨て、幻想の見習い魔導師を特殊召喚!」

 

 和輝のフィールドに現れたのは、ブラック・マジシャン・ガールによく似た少女モンスター。

 違うのは年齢が何歳か幼くなり、髪は白金色、肌は褐色に。衣装も装いは似ているがカラーリングが桃色がかった紫が多めの配色だ。

 

「幻想の見習い魔導師の特殊召喚に成功したため、効果発動。デッキからブラック・マジシャンを手札に加える」

「ふむふむ。早速来たね、君のデッキのエース。キーカード。あと過労死枠」茶かすロキ。

「うるさいぞ!」パートナーの軽口をたたき伏せる和輝。「さらにギャラクシーサーペントを召喚。行くぞ!」

 

 和輝の右手が勢いよく天に向かって掲げられた。握られていた手が開かれる。

 

「レベル6の幻想の見習い魔導師に、レベル2のギャラクシーサーペントをチューニング!」

 

 和輝の頭上。二体のモンスターが飛翔し、まずギャラクシーサーペントが二つの緑に輝く光の輪となる。その輪を潜った幻想の見習い魔導師が、六つの光の星となった。

 六つの光星を、白く輝く光の道が貫いた。

 

「集いし八星(はっせい)が、星海切り裂く光の竜を紡ぎだす! 光さす道となれ! シンクロ召喚、響け、閃珖竜(せんこうりゅう) スターダスト!」

 

 現れたのは、体にオリジナルにはない象徴的なラインが走ったスタダ―スト・ドラゴンの亜種モンスター。和輝のデュエルに過去何度も登場している、守りのドラゴン。

 

「カードを一枚セットして、ターンエンド」

 

 

苦渋の決断:通常魔法

「苦渋の決断」は1ターンに1枚しか発動できない。(1):デッキからレベル4以下の通常モンスター1体を墓地へ送り、その同名カード1枚をデッキから手札に加える。

 

幻想の見習い魔導師 闇属性 ☆6 魔法使い族:効果

ATK2000 DEF1700

(1):このカードは手札を1枚捨てて、手札から特殊召喚できる。(2):このカードが召喚・特殊召喚に成功した場合に発動できる。デッキから「ブラック・マジシャン」1体を手札に加える。(3):このカード以外の自分の魔法使い族・闇属性モンスターが相手モンスターと戦闘を行うダメージ計算時、手札・フィールドのこのカードを墓地へ送って発動できる。その自分のモンスターの攻撃力・守備力はそのダメージ計算時のみ2000アップする。

 

ギャラクシーサーペント 光属性 ☆2 ドラゴン族:チューナー

ATK1000 DEF0

 

閃珖竜 スターダスト 光属性 ☆8 ドラゴン族:シンクロ

ATK2500 DEF2000

チューナー+チューナー以外のモンスター1体以上

1ターンに1度、自分フィールド上に表側表示で存在するカード1枚を選択して発動できる。選択したカードは、このターンに1度だけ戦闘及びカードの効果では破壊されない。この効果は相手ターンでも発動できる。

 

 

「おれのターンだ、ドロー」

 

 星宮(ほしみや)市は世界でも秀でたデュエル都市であり、当然、プロデュエリストのリーグ戦もほかの地域よりも多く放映している。

 だがそれでもメインの枠は日本リーグが多く、海外のリーグは数が少ない。そして、現在Cランクのリックのデュエルも、日本での放送機会はない。だから和輝も、リックのデッキは知らない。警戒心に身構えた。

 

「魔法カード、U.A.(ウルトラアスリート)フラグッシップ・ディール発動! デッキからU.A.ファンタジスタを特殊召喚!」

 

 発動する魔法カード。そして、リックのフィールドにサッカー選手を模したモンスターが現れた。

 近未来的なアーマー、顔のバイザー。SFチックな見た目だが、青白いエネルギー体のボールを器用に蹴り、リフティングしている。未来のスポーツ選手、といった趣だ。

 

「そして、フラッグシップ・ディールによってU.A.を特殊召喚したため、そのレベル×300ライフを失う」

「ファンタジスタのレベルは4、つまり、1200のライフを失うわけか」

「先行投資。安い代償さ」

 

 肩をすくめるリック。昨今、ライフなど0にならなければ安いとまで言われている現環境では、確かに1200程度は先行投資のうちに入るのかもしれない。

 

「ここで、フィールド魔法、U.A.スタジアムを発動!」

 

 リックの指が手札からカードを抜き取り、デュエルディスクにセットする。次の瞬間、フィールドゾーンにセットされたカードデータを読み込み、立体映像(ソリットビジョン)が投影された。

 広がった世界(フィールド)はまさにスポーツ観戦のスタジアム。観客席からの熱狂がここまで伝わってきそうだった。

 

「これが、あんたのホームグラウンド?」

「その通りだよ。さぁ、敵地(アウェイ)の怖さを知ってもらおうか。おれはフィールドのファンタジスタを手札に戻し、U.A.フィールドゼネラルを特殊召喚!」

「ッ!?」

 

 目を見開いた和輝の眼前で、リックのフィールドにいたファンタジスタは手札に戻り、代わりに現れたのはアメフトのアーマーを身にまとった戦士。メットとアイシールドでその顔は見えないが、全身から満ち溢れる自信が、彼がその名の通りの司令塔(フィールドゼネラル)だと知らせている。

 

「さらにファンタジスタを召喚。この瞬間に、U.A.スタジアムの効果発動だ。デッキからU.A.パーフェクトエースを手札に加える。

 そして再びファンタジスタを手札に戻し、U.A.マイティースラッガーを特殊召喚!」

 

 再び現れたファンタジスタが、先程の焼き回しのようにリックの手札に戻り、代わりの選手(モンスター)が特殊召喚される。

 赤光(しゃっこう)を放つバットを持った、メット、バイザー、アーマー姿の野球モンスター。ロキが納得したように頷いた。

 

「手札の交換。なるほど、U.A.とはその名の通りアスリート、スポーツを題材にしているようだね」

「手札からのモンスターの交換は、そのままずばり選手交代か。手札がそのまま控えのベンチ。いくらでも交換可能とか、ルールもくそもあったもんじゃないな」と和輝。遮るようにリックの叫びが飛ぶ。

「この瞬間、U.A.スタジアムの効果発動! おれのU.A.モンスターの攻撃力を500アップ!」

 

 これで悪態をついてばかりもいられなくなった。今の強化(ブースト)によって、リックのモンスターの攻撃力はスターダストの2500を超えた。

 

「さぁバトルだ! まずはフィールドゼネラルでスターダストに攻撃!」

「チッ。スターダストの効果発動! 自身に一度だけ、破壊耐性をつける!」

 

 バトルフェイズ突入。まずアメフト選手が重心を低く構え、重戦車のように突進。惚れ惚れするような見事なタックルが翼を使って滞空していたスターダストを捕え、空飛ぶドラゴンを大地に叩きつけた。

 スターダストは咆哮を上げて抵抗。人間のような腕を振るってフィールドゼネラルを振り払った。

 

「そう来るだろう。次だ。マイティースラッガーで攻撃! マイティースラッガーが攻撃する時、ダメージステップ終了時まで君は魔法、罠、モンスター効果を発動できない! さらにこの瞬間、フィールドゼネラルの効果発動! このカードの攻撃力を800ダウンし、マイティースラッガーの攻撃力を800アップ!」

 

 追撃。赤光を放つバットでフルスイングするマイティースラッガー。バットはスターダストの頭部に直撃。その頭を爆ぜさせる。破片はスタジアムの観客席に到来。ホームランだ。

 

「ぐ……!」ダメージのフィードバックが和輝を襲う。

「バトルフェイズを終了、メインフェイズ2に入る。ここでおれは、フィールドゼネラルを手札に戻し、代わりにU.A.パーフェクトエースを守備表示で特殊召喚する。ターン終了」

「この瞬間!」揚々と己のターンを終了させようとするリックに待ったをかける和輝。「リバーストラップ、マジシャンズ・ナビゲート発動! 手札のブラック・マジシャンを特殊召喚し、さらにデッキからブラック・マジシャン・ガールを特殊召喚する!」

 

 和輝のフィールドに、黒衣の魔導師とその弟子が現れる。魔法使いの師弟揃っての共演で、和輝のフィールドが一気に華やいだ。

 

「反撃準備、だね」

「そういうことだ」

 

 すでにリックはターンを終了していく。手放してしまったターンを見据えて、リックは僅かに下唇を噛んだ。

 

 

U.A.フラッグシップ・ディール:通常魔法

「U.A.フラッグシップ・ディール」は1ターンに1枚しか発動できない。

(1):デッキから「U.A.」モンスター1体を特殊召喚する。この効果で特殊召喚したモンスターはS・X召喚の素材にできず、効果は無効化される。その後、自分はそのモンスターのレベル×300LPを失う。

 

U.A.ファンタジスタ 地属性 ☆4 戦士族:効果

ATK1200 DEF1000

「U.A.ファンタジスタ」の、(1)の方法による特殊召喚は1ターンに1度しかできず、

(2)の効果は1ターンに1度しか使用できない。

(1):このカードは「U.A.ファンタジスタ」以外の自分フィールドの「U.A.」モンスター1体を手札に戻し、手札から特殊召喚できる。

(2):このカード以外の自分フィールドの「U.A.」モンスター1体を対象として発動できる。その表側表示モンスターを手札に戻し、その後そのモンスターとカード名が異なる「U.A.」モンスター1体を手札から特殊召喚する。この効果は相手ターンでも発動できる。

 

U.A.スタジアム:フィールド魔法

(1):自分フィールドに「U.A.」モンスターが召喚された場合に発動できる。デッキから「U.A.」モンスター1体を手札に加える。

(2):1ターンに1度、自分フィールドに「U.A.」モンスターが特殊召喚された場合に発動する。自分フィールドのモンスターの攻撃力は500アップする。

 

U.A. フィールドゼネラル 地属性 ☆8 戦士族:効果

ATK2600 DEF2000

「U.A.フィールドゼネラル」の(1)の方法による特殊召喚は1ターンに1度しかできない。

(1):このカードは「U.A.フィールドゼネラル」以外の自分フィールドの「U.A.」モンスター1体を手札に戻し、手札から特殊召喚できる。

(2):このカード以外の自分フィールドの「U.A.」モンスターの攻撃宣言時に発動できる。このカードの攻撃力を800ダウンし、自分の攻撃モンスターの攻撃力を800アップする。

 

U.A.マイティースラッガー 地属性 ☆5 戦士族:効果

ATK2300 DEF500

「U.A.マイティースラッガー」の(1)の方法による特殊召喚は1ターンに1度しかできない。

(1):このカードは「U.A.マイティースラッガー」以外の自分フィールドの「U.A.」モンスター1体を手札に戻し、手札から特殊召喚できる。

(2):このカードが攻撃する場合、相手はダメージステップ終了時まで魔法・罠・モンスターの効果を発動できない。

 

U.A.パーフェクトエース 地属性 ☆5 戦士族:効果

ATK1500 DEF1500

「U.A.パーフェクトエース」の(1)の方法による特殊召喚は1ターンに1度しかできない。

(1):このカードは「U.A.パーフェクトエース」以外の自分フィールドの「U.A.」モンスター1体を手札に戻し、手札から特殊召喚できる。(2):???

 

マジシャンズ・ナビゲート:通常罠

(1):手札から「ブラック・マジシャン」1体を特殊召喚する。その後、デッキからレベル7以下の魔法使い族・闇属性モンスター1体を特殊召喚する。(2):自分フィールドに「ブラック・マジシャン」が存在する場合、墓地のこのカードを除外し、相手フィールドの表側表示の魔法・罠カード1枚を対象として発動できる。そのカードの効果をターン終了時まで無効にする。この効果はこのカードが墓地へ送られたターンには発動できない。

 

ブラック・マジシャン 闇属性 ☆7 魔法使い族:通常モンスター

ATK2500 DEF2100

 

ブラック・マジシャン・ガール 闇属性 ☆6 魔法使い族:効果

ATK2000 DEF1700

(1):このカードの攻撃力は、お互いの墓地の「ブラック・マジシャン」「マジシャン・オブ・ブラックカオス」の数×300アップする。

 

 

U.A.マイティースラッガー攻撃力2300→2800→3600

 

 

和輝LP8000→7400→6300手札2枚

リックLP8000→6800手札4枚

 

 

「俺のターン! ドロー!」

「さーて和輝、君のエースとその弟子のそろい踏みだ。どうする?」

「決まってるさ」にやりと笑う和輝。「全部吹っ飛ばす! 手札から黒・爆・裂・破・魔・導(ブラック・バーニング・マジック)発動! あんたのフィールドのカードを、全て破壊する!」

 

 和輝は間髪入れずにカードをデュエルディスクにセットした。これでリックのフィールドを破壊、とくにスタジアムを破壊できれば補給線を断てる。だが――――

 

「そうはさせない。パーフェクトエースの効果発動! 相手ターンに一度、手札を一枚捨て、相手が発動した魔法、罠を無効にできる! おれはU.A.ペナルティを捨てる!」

「何!?」

 

 和輝が発動したカードをデュエルディスクが認識し、投影した瞬間、リックのフィールドにいたパーフェクトエース――名前、発光するエネルギー体のグローブ、ボールと、モチーフは間違いなく野球――が素晴らしい肩を披露し、エネルギーボールを投擲。放たれた矢のようにまっすぐ飛んだボールは和輝が発動したカードを射抜いてしまった。

 

「防がれたか。見事なレーザービーム。てゆうか投球。まさにエースで、パーフェクトだ」

「戯言言ってる場合か、ロキ。まぁいい。全部吹っ飛ばせなかったなら、正面からぶつかるまでだ。

 ワンショット・ワンドをブラック・マジシャン・ガールに装備し、バトル! ブラック・マジシャン・ガールでパーフェクトエースを攻撃!」

 

 気を取り直し、和輝が一歩踏み込む。主の気合に答えるように、魔法使いの少女が力いっぱい杖を振るい、炎の魔法を放つ。

 炎と爆裂の魔法がパーフェクトエースを飲み込み、爆発四散される。

 

「この瞬間、ワンショット・ワンドの効果発動。このカードを墓地に送り、一枚ドロー。さらにブラック・マジシャンでマイティースラッガーを攻撃!」

 

 追撃。だがブラック・マジシャンの攻撃力はマイティースラッガーに劣る。にも拘らず攻撃したならば――――

 

「何を仕掛けてくるんだい?」問いかけるリックは悠然としていた。

「あんたに不利なことさ」応える和輝も不敵だった。手札からカードを引き抜く。「速攻魔法、エネミーコントローラー発動! マイティースラッガーを守備表示に変更し、バトルを続行する!」

 

 構えていた光のバットを急に取り落としてしまったマイティースラッガー。無防備となったその身に、ブラック・マジシャンが放った黒い稲妻が矢のように突き刺さる。

 衝撃、閃光、炎上。破壊されたマイティースラッガー。ダメージこそ与えられなかったが、相手の防御の要と、アタッカーを潰せたのは大きい。

 

「カードを一枚伏せて、ターンエンドだ」

 

 

黒・爆・裂・破・魔・導:速攻魔法

(1):元々のカード名が「ブラック・マジシャン」と「ブラック・マジシャン・ガール」となるモンスターがそれぞれ自分フィールドに存在する場合に発動できる。相手フィールドのカードを全て破壊する。

 

U.A.パーフェクトエース 地属性 ☆5 戦士族:効果

ATK1500 DEF1500

「U.A.パーフェクトエース」の(1)の方法による特殊召喚は1ターンに1度しかできない。

(1):このカードは「U.A.パーフェクトエース」以外の自分フィールドの「U.A.」モンスター1体を手札に戻し、手札から特殊召喚できる。(2):相手ターンに1度、魔法・罠・モンスターの効果が発動した時、手札を1枚捨てて発動できる。その発動を無効にし破壊する。

 

ワンショット・ワンド:装備魔法

魔法使い族モンスターにのみ装備可能。装備モンスターの攻撃力は800ポイントアップする。また、装備モンスターが戦闘を行ったダメージ計算後、このカードを破壊してデッキからカードを1枚ドローできる。

 

エネミーコントローラー:速攻魔法

(1):以下の効果から1つを選択して発動できる。

●相手フィールドの表側表示モンスター1体を対象として発動できる。その相手の表側表示モンスターの表示形式を変更する。

●自分フィールドのモンスター1体をリリースし、相手フィールドの表側表示モンスター1体を対象として発動できる。その表側表示モンスターのコントロールをエンドフェイズまで得る。

 

 

「おれのターンだ。墓地のU.A.ペナルティの効果発動! このカードを除外して、二枚目のU.A.フラッグシップ・ディールを手札に加え、発動!」

 

 コストがそのままリカバリーの手段になっていた。このあたりの無駄のないプレイングはさすがはプロというところだ。ライフなど0にならなければ安い。そのまえにU.A.の選手交代を駆使して和輝を仕留めるつもりだ。

 だが――――

 

「墓地発動は、あんただけの特権じゃない! 俺は墓地のマジシャンズ・ナビゲートの効果発動! このカードを除外し、フラッグシップ・ディールを無効にする!」

 

 動き出しに対して鼻っ面を殴られた和輝は、ここで逆襲した。フラッグシップ・ディールは効力を失い、ただ墓地に落ちる。

 リックは苦笑した。

 

「防いできたね。だが、これでおれのリカバリーが途切れたわけじゃない。死者蘇生を発動。墓地からマイティースラッガーを特殊召喚。さらにマイティースラッガーをリリースし、U.A.コリバルリバウンダーをアドバンス召喚!」

 

 現れる新たなU.A.。青白いエネルギー体のボールを持ち、バスケットのユニフォームにバイザーをつけたモンスター。言うまでもなく、モチーフはバスケットだろう。

 

「U.A.スタジアムと、コリバルリバウンダーの効果発動。まず、スタジアムの効果でU.A.ストロングブロッカーを手札に加える。さらにリバウンダーの効果で、墓地のマイティースラッガーを特殊召喚する!」

 

 再び現れる野球のU.A.、バスケットと合わせ、実にアメリカンだ。

 

「U.A.が特殊召喚されたため、スタジアムの効果が発動。おれのU.A.を強化する」

 

 スタジアムの効果は厄介だ。サーチに全体のバンプアップ。これがある限りリックの戦線は崩れない。補給路を断たなければならないが、今の和輝にはその手段がない。

 

「バトルだ! マイティースラッガーでブラック・マジシャン・ガールに攻撃!」

 

 切り返しは素早く。リックの命令を受けて、マイティースラッガーが掌中に出現された青いエネルギーボールをバットで打ち出した。

 小気味のいい音とともに放たれたボールが魔法使いの少女に直撃。蹴散らした。

 

「ぐ……」

 

 ダメージのフィードバックが和輝を襲う。だがここで倒れるわけにはいかない。次が来る。

 

「コリバルリバウンダーでブラック・マジシャンを攻撃!」

「させない! リバーストラップ、マジカルシルクハット発動!」

 

 和輝の眼前、彼のフィールドに唯一残ったブラック・マジシャンを守るように、巨大なシルクハットが三つ現れ、その一つがブラック・マジシャンの姿を隠し、高速でシャッフルされた。これでブラック・マジシャンの居場所は分からない。

 

「なるほど。これでは狙いを絞れないな。仕方がない。おれから見て右側のシルクハットを攻撃だ」

 

 増えた標的(ゴール)に戸惑っていたコリバルリバウンダーだったが、主からの命令を受けて、一気呵成に疾走、跳躍。まるでダンクシュートのように、両手でエネルギーボールをシルクハットに向けて叩きつけた。

 結果は――――

 

「当たりだ。ただし、俺にとってのな。破壊されたのはマジシャンズ・プロテクション。効果が発動し、墓地から幻想の見習い魔導師を特殊召喚! その効果で、デッキから二枚目のブラック・マジシャンを手札に加える!」

 

 攻撃を外したリックは参ったなと苦笑するだけで、そこに動揺はない。見習い魔導師は放置すれば厄介なのはわかっているだろうに、表情は変わらない。内心を決して表に出さないポーカーフェイス。常に安定している精神性。プロのプロたるゆえん、というわけか。和輝はプロの世界の深さに軽く舌を巻いていた。勿論、それは内心のことで、表情には出していなかったが。

 

「まぁ、攻撃が通らなかったのなら仕方がない。メインフェイズ2、コリバルリバウンダーを手札に戻し、U.A.ストロングブロッカーを守備表示で特殊召喚して、ターンエンドだ」

 

 今度現れたのはアメフトのプロテクターを着込んだ大柄な男。考えるまでもなく、アメフトモチーフのモンスター。

 

 

U.A.ペナルティ:永続罠

「U.A.ペナルティ」の(1)の効果は1ターンに1度しか使用できない。(1):自分の「U.A.」モンスターが相手モンスターと戦闘を行うダメージステップ開始時にこの効果を発動できる。その相手モンスターを、発動後2回目の相手エンドフェイズまで除外する。(2):墓地のこのカードを除外して発動できる。デッキから「U.A.」魔法カード1枚を手札に加える。

 

死者蘇生:通常魔法

(1):自分または相手の墓地のモンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターを自分フィールドに特殊召喚する。

 

U.A.コリバルリバウンダー 地属性 ☆6 戦士族:効果

ATK2200 DEF2300

「U.A.コリバルリバウンダー」の、(1)の方法による特殊召喚は1ターンに1度しかできず、(2)の効果は1ターンに1度しか使用できない。(1):このカードは「U.A.コリバルリバウンダー」以外の自分フィールドの「U.A.」モンスター1体を手札に戻し、手札から特殊召喚できる。(2):このカードが召喚または相手ターン中の特殊召喚に成功した場合に発動できる。自分の手札・墓地から「U.A.コリバルリバウンダー」以外の「U.A.」モンスター1体を選んで特殊召喚する。

 

マジカルシルクハット:通常罠

(1):相手バトルフェイズに発動できる。デッキから魔法・罠カード2枚を選び、そのカード2枚を通常モンスターカード扱い(攻/守0)として、自分のメインモンスターゾーンのモンスター1体と合わせてシャッフルして裏側守備表示でセットする。この効果でデッキから特殊召喚したカードはバトルフェイズの間しか存在できず、バトルフェイズ終了時に破壊される。

 

マジシャンズ・プロテクション:永続罠

(1):自分フィールドに魔法使い族モンスターが存在する限り、自分が受ける全てのダメージは半分になる。(2):このカードがフィールドから墓地へ送られた場合、自分の墓地の魔法使い族モンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターを特殊召喚する。

 

U.A.ストロングブロッカー 地属性 ☆7 戦士族:効果

ATK1600 DEF2700

「U.A.ストロングブロッカー」の(1)の方法による特殊召喚は1ターンに1度しかできない。(1):このカードは「U.A.ストロングブロッカー」以外の自分フィールドの「U.A.」モンスター1体を手札に戻し、手札から特殊召喚できる。 (2):???

 

 

U.A.マイティースラッガー攻撃力2300→2800

 

 

和輝LP6300→5500手札1枚

リックLP6800手札3枚

 

 

「このレベルでCランク? プロってのは本当に層が厚いね」

「世界レベルで見ればな。それに、リックプロはCランクの上。Bランカーだった時期もある。そして、プロだからこそ持ってるんだ。ここぞという時の引きの強さ。それに、一息に決められない粘り強さ」

「なるほど。一筋縄じゃ行かないってことか」

 

 ロキの言葉に、和輝は首肯した。やはりプロというのは凄まじい。この世界に足を踏み入れることの難しさを痛感させられる。

 同時に、クロノスは射手矢、ひいてはゾディアックにとって、このレベルが雑兵なのだ。挑む敵の強大さを痛感する。

 

「で、どうする和輝? 諦めるの?」

「馬鹿言うんじゃねぇ。俺は覚悟を決めてこの戦いに臨んでいるんだ。最初の一歩で躓いてたまるか!」

 

 和輝はそう吠えた。その意気を感じ、リックは一筋縄ではない相手を持ったのはこちらだと思った。

 リックを睨みつけ、和輝は言った。

 

「プロの戦い、上等! むしろ望むとことさ。これから歩く世界、足を踏み入れる戦場。そのレベルを、こうも身近に感じられる機会なんざ、そうそうないからな!」

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