ついに開催されたジェネックス杯。和輝の初戦は、ある意味彼の狙い通りだった。
イレギュラーな戦力増強に手を染めたクロノス。その配下のティターン神族、その一派。
残念ながらティターン神族そのものではなく、邂逅したのはギリシャ神話の怪物、オルトロスと、彼(?)に見いだされたCランクプロ、リック・ディートル。
大事な初戦。和輝は負けられないと心に感じた。
こんなところで躓いてなるものか。目的は大きく、最終地点は遠く。だからこそ、最初の一歩を力強く踏み出したいのだ。
和輝LP5500手札1枚
ペンデュラムゾーン赤:なし青:なし
モンスターゾーン ブラック・マジシャン(攻撃表示)、幻想の見習い魔導師(攻撃表示)、
魔法・罠ゾーン なし
フィールドゾーン なし
リックLP6800手札3枚
ペンデュラムゾーン赤:なし青:なし
モンスターゾーン
魔法・罠ゾーン
フィールドゾーン U.A.スタジアム
「俺のターンだ、ドロー!」
現状、和輝の手札はブラック・マジシャンのみ。幻想の見習い魔導師が存在するので、このターンのごり押しはできるだろうが、心もとない手札に変わりはない。
状況を進めるための一手を求めてのドロー。カードを確認した。
「よし! 闇の誘惑発動! カードを二枚ドローし、ブラック・マジシャンを除外! オーケイ、こいつはいい
「勿論、おれもドローさせてもらうよ」
互いの手札が一気に三枚も増えた。手札がそのまま予備戦力になるリックのU.A.に対してドローさせるのは危険だったが、その程度のリスクを飲み込めなくては勝利は手に入るまい。
「さて、一気に三枚ドローは豪勢だけれど、それは相手も同じ。小さくない危険を冒してまでドローした甲斐はあったかな?」
ロキの問いかけに、和輝は勿論とどう猛に笑って応じた。今にも獲物に飛び掛からんばかりの肉食獣の笑み。明確な敵に対して、容赦しないと宣言するような笑みだった。
「さぁ、回すぜ! ペンデュラムコール発動! 手札を一枚捨て、デッキから竜脈の魔術師、竜穴の魔術師を手札に加える。さらに捨てたカードは代償の宝札。よって二枚ドロー!」
ドローとサーチを同時にこなし、一気に和輝の手札が増えた。コストさえも利点に変える和輝のプレイングに、リックは小さく、感嘆の口笛を吹き、半透明のオルトロスは不快気に唸った。そういえば、この双頭の魔犬はリックのデュエルに一切口出ししていない。オルトロス自身が言ったように、デュエルの実力はリックが上なので、自身の命運も含めて全て任せているのかもしれない。
「俺は、スケール1の竜脈の魔術師と、スケール8の竜穴の魔術師を、Pゾーンにセッティング!」
和輝の両隣に、青白い円柱が屹立する。半透明の光の柱の中にはそれぞれ、一体ずつ魔術師が収まり、その足元に楔形文字にいた文字で「1」と、「8」の数字が刻印された。
「展開されたスケールは1から8、これで俺はレベル2から7のモンスターを同時に召喚可能になった。
振り子は揺れる。避けえぬ宿命を乗せて! 天空に描かれる光のアークが、異界への門へと変じる! ペンデュラム召喚! 手札から出でよ、調弦の魔術師!」
円柱の間を巨大な
ゲートから舞い降りる光が一つ。正体は光ピンクの髪に巨大な音叉を持ったサイバネティックな格好をした小柄な少女魔術師。
「調弦の魔術師のモンスター効果発動! デッキから時読みの魔術師を特殊召喚! そして、レベル3の時読みの魔術師に、レベル4の調弦の魔術師をチューニング!」
和輝の右手が天に向かって突き出される。彼のフィールドのモンスターのうち、調弦の魔術師が四つの緑の光の輪となり、その輪を潜った時読みの魔術師が三つの白い光の星となる。
三つの光星を光の道が貫いた。
「集いし
現れたのは、紫の意匠を施された白いローブに身を包んだ女魔術師。今まで登場した、幼かったり愛想を振りまいていたりしていた、純粋無垢な可憐さではなく。冷静で知的な、妙齢の美貌を備えた魔法使いだった。
「アーカナイト・マジシャンのS召喚に成功したため、効果を――――」
発動。と言おうとした和輝に、静観していたリックが待ったをかけた。
「発動することはない! U.A.ストロングブロッカーの効果発動! 一ターンに一度、相手が特殊召喚に成功したモンスターの効果を無効にし、表示形式を変更させる!」
アーカナイト・マジシャンの効果発動を許せば、確実に二枚のカードが破壊される。リックはそれを嫌って抑えにかかった。
だが――――
「悪いけど、そう何度もブロックさせるわけにはいかない! 墓地のブレイクスルー・スキルの効果発動! このカードを除外して、ストロングブロッカーの効果を無効にする!」
「ブレイクスルー・スキルだト!? いツ墓地に!」オルトロスが驚愕の声を上げる。
「マジカルシルクハット、あの時に仕込んだ一枚だね」対してリックは冷静に状況を分析していた。
「ご名答。さぁ和輝、正解者に賞品は?」にやにや笑いのロキ。
「もちろんあるさ。アーカナイト・マジシャンに魔力カウンターが二つ乗る。そして、アーカナイト・マジシャンの効果発動! 二つの魔力カウンターを取り除き、ストロングブロッカーとU.A.スタジアムを破壊!」
今度は妨害はない。アーカナイト・マジシャンの効果が発動。魔力の波動が矢となってリックのフィールドにある二枚のカードを射抜いた。
消える
ロキが喝采を上げた。「よし。補給線とブーストを破壊し、盾も砕いた。ここが攻め時!」
和輝が一歩、踏み込んだ。「叩きこむ! 俺はブラック・マジシャンとアーカナイト・マジシャンをオーバーレイ! 二体のモンスターで、オーバーレイネットワークを構築! エクシーズ召喚!」
和輝の頭上に渦巻く銀河のような空間が展開され、その渦に向かって紫の光となったブラック・マジシャンと、白い光となったアーカナイト・マジシャンが飛び込んだ。
虹色の爆発が起こる。
「
現れたのは、ブラック・マジシャンに酷似した魔導師。浅黒い肌、ブラック・マジシャンよりもやや鋭く険しい顔つき、鎧をまとったようなごつい魔導装束姿が違いか。
「幻想の黒魔導師の効果発動!
ブラック・マジシャンの攻撃に合わせて、幻想の黒魔導師もまた杖を振るう。不意打ち気味の紫の光の矢がマイティースラッガーに直撃。その体を無視の標本のように中空に縫い留め、破砕した。
「対象変更! ブラック・マジシャンでダイレクトアタック!」
黒の魔法使いが杖を振るう。幾重にも枝分かれした黒い稲妻がリックに襲い掛かった。
無防備な状態からのダイレクトアタック。だがリックは至極冷静だった。
「手札のバトルフェーダーの効果発動。このカードを特殊召喚し、バトルフェイズを終了する」
防がれた。押し切れない。攻め切れない。この堅固さは厄介だ。派手なパフォーマンスが多かった
「分厚いね。プロってのはこんなのばっかりかい? 和輝、君が踏み込もうとしている世界は、随分戦い甲斐がありそうじゃないか?」
「だから目指すんだ。カードを二枚伏せて、ターンエンド」
闇の誘惑:通常魔法
(1):自分はデッキから2枚ドローし、その後手札の闇属性モンスター1体を除外する。手札に闇属性モンスターが無い場合、手札を全て墓地へ送る。
壺の中の魔術書:通常魔法
「壺の中の魔術書」は1ターンに1枚しか発動できない。(1):互いのプレイヤーはカードを3枚ドローする。
ペンデュラム・コール:通常魔法
「ペンデュラム・コール」は1ターンに1枚しか発動できず、「魔術師」PモンスターのP効果を発動したターンには発動できない。(1):手札を1枚捨てて発動できる。カード名が異なる「魔術師」Pモンスター2体をデッキから手札に加える。このカードの発動後、次の相手ターン終了時まで自分のPゾーンの「魔術師」カードは効果では破壊されない。
代償の宝札:通常魔法
(1):手札からこのカードが墓地に送られた時に発動する。カードを2枚ドローする。
竜脈の魔術師 地属性 ☆4 魔法使い族:ペンデュラム
ATK1800 DEF900
Pスケール1
P効果
(1):1ターンに1度、もう片方の自分のPゾーンに「魔術師」カードが存在する場合、手札のPモンスター1体を捨て、フィールドの表側表示モンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターを破壊する。
モンスター効果
なし
竜穴の魔術師 地属性 ☆7 魔法使い族:ペンデュラム
ATK700 DEF2700
Pスケール8
P効果
(1):1ターンに1度、もう片方の自分のPゾーンに「魔術師」カードが存在する場合、手札のPモンスター1体を捨て、フィールドの魔法・罠カード1枚を対象として発動できる。そのカードを破壊する。
モンスター効果
なし
調弦の魔術師 闇属性 ☆4 魔法使い族:ペンデュラムチューナー
ATK0 DEF0
Pスケール8
P効果
(1):このカードがPゾーンに存在する限り、自分フィールドのモンスターの攻撃力・守備力は、自分のEXデッキの表側表示の「魔術師」Pモンスターの種類×100アップする。
モンスター効果
このカードはEXデッキからの特殊召喚はできず、このカードを融合・S・X召喚の素材とする場合、他の素材は全て「魔術師」Pモンスターでなければならない。このカード名のモンスター効果は1ターンに1度しか使用できない。(1):このカードが手札からのP召喚に成功した時に発動できる。デッキから「調弦の魔術師」以外の「魔術師」Pモンスター1体を守備表示で特殊召喚する。この効果で特殊召喚したモンスターの効果は無効化され、フィールドから離れた場合に除外される。
時読みの魔術師 闇属性 ☆3 魔法使い族:ペンデュラム
ATK1200 DEF600
Pスケール赤8/青8
P効果
自分フィールドにモンスターが存在しない場合にこのカードを発動できる。(1):自分のPモンスターが戦闘を行う場合、相手はダメージステップ終了時まで罠カードを発動できない。(2):もう片方の自分のPゾーンに「魔術師」カードまたは「オッドアイズ」カードが存在しない場合、このカードのPスケールは4になる。
モンスター効果
(1):このカードがモンスターゾーンに存在する限り、1ターンに1度、自分のPゾーンのカードは相手の効果では破壊されない。
アーカナイト・マジシャン 光属性 ☆7 魔法使い族:シンクロ
ATK400 DEF1800
チューナー+チューナー以外の魔法使い族モンスター1体以上
このカードがシンクロ召喚に成功した時、このカードに魔力カウンターを2つ置く。このカードの攻撃力は、このカードに乗っている魔力カウンターの数×1000ポイントアップする。また、自分フィールド上の魔力カウンターを1つ取り除く事で、相手フィールド上のカード1枚を選択して破壊する。
U.A.ストロングブロッカー 地属性 ☆7 戦士族:効果
ATK1600 DEF2700
「U.A.ストロングブロッカー」の(1)の方法による特殊召喚は1ターンに1度しかできない。(1):このカードは「U.A.ストロングブロッカー」以外の自分フィールドの「U.A.」モンスター1体を手札に戻し、手札から特殊召喚できる。(2):1ターンに1度、相手がモンスターの特殊召喚に成功した時に発動できる。そのモンスターの表示形式を変更し、その効果を無効にする。
ブレイクスルー・スキル:通常罠
(1):相手フィールドの効果モンスター1体を対象として発動できる。その相手モンスターの効果をターン終了時まで無効にする。(2):自分ターンに墓地のこのカードを除外し、相手フィールドの効果モンスター1体を対象として発動できる。その相手の効果モンスターの効果をターン終了時まで無効にする。この効果はこのカードが墓地へ送られたターンには発動できない。
幻想の黒魔導師 闇属性 ランク7 魔法使い族:エクシーズ
ATK2500 DEF2100
レベル7モンスター×2
このカードは自分フィールドのランク6の魔法使い族Xモンスターの上に重ねてX召喚する事もできる。「幻想の黒魔導師」の(2)の効果は1ターンに1度しか使用できない。(1):1ターンに1度、このカードのX素材を1つ取り除いて発動できる。手札・デッキから魔法使い族の通常モンスター1体を特殊召喚する。(2):魔法使い族の通常モンスターの攻撃宣言時、相手フィールドのカード1枚を対象として発動できる。そのカードを除外する。
バトルフェーダー 闇属性 ☆1 悪魔族:効果
ATK0 DEF0
(1):相手モンスターの直接攻撃宣言時に発動できる。このカードを手札から特殊召喚し、その後バトルフェイズを終了する。この効果で特殊召喚したこのカードは、フィールドから離れた場合に除外される。
「おれのターンだね。ドロー。バトルフェーダーをリリースし、U.A.コリバルリバウンダーをアドバンス召喚。この瞬間、フィールドを離れたバトルフェーダーは除外される。コリバルリバウンダーの効果を発動し、墓地からU.A.ストロングブロッカーを特殊召喚!」
立て直しが速い。一気に並ぶ二体のU.A.モンスター。
「ねぇ和輝。ボクの記憶が確かならば、ミスター・ディートルの手札のU.A.には、当然攻撃型のもいたよね?」
「コリバルリバウンダーが出てきた。あと確定しているのはフィールドゼネラルだ。どちらにしろ、俺のモンスターよりも攻撃力が高い」
「ストロングブロッカーを手札に戻し、フィールドジェネラルを特殊召喚するよ」
予想通りだ。フィールドジェネラルの攻撃力ならば、和輝喉のモンスターよりも高い。このまま押し切るつもりか。そう思ったが、甘かった。
「永続魔法、一族の結束を発動!」
「なっ!」
発動された永続魔法に、和輝は目を見開いた。発動されたのは、単一種族デッキのパワーを大幅に底上げする永続魔法だった。
「そうか。バトルフェーダーはフィールドを離れた時に除外される。一族の結束とも相性はいいってわけか」
和輝の表情が苦い。リックのU.A.は全体的にパワーアップを果たしている。戦闘に破壊するには難しいほどに。
「バトルと行こう。フィールドゼネラルで幻想の見習い魔導師を攻撃!」
踏み込むリック。一撃目、フィールドゼネラルのタックルが幻想の見習い魔導師を圧し潰してしまう。ダメージのフィードバックが和輝を襲い、一瞬動きが鈍る。
「さらにコリバルリバウンダーで幻想の黒魔導師を攻撃! この瞬間、フィールドゼネラルの効果発動! 自身の攻撃力を800ダウンさせ、コリバルリバウンダーの攻撃力を800アップ!」
追撃。エネルギーボールを使ったダンクシュートを叩き込まれた幻想の黒魔導師が粉砕された。
「メインフェイズ2、フィールドゼネラルとコリバルリバウンダーを手札に戻し、U.A.ファンタジスタとU.A.ストロングブロッカーを、どちらも守備表示で特殊召喚する。カードを二枚伏せて、ターンエンド」
一族の結束:永続魔法
(1):自分の墓地の全てのモンスターの元々の種族が同じ場合、自分フィールドのその種族のモンスターの攻撃力は800アップする。
和輝LP5500→4100→2800手札1枚
リックLP6800手札2枚
「俺のターンだ、ドロー!」
堅実だが容赦なく攻めてくるリックのU.A.に、次第に和輝は追い詰められてきた。
「さて、ここらで逆転したいところだけれど。旨く行くかね?」
言葉とは裏腹に、ロキに不安げな様子はない。和輝はさてなと気軽に答えて肩をすくめた。
「まずは、
ドローカードを確認した和輝は、一つ頷いた。
半透明のオルトロスが鼻を引きつかせた。警戒しているのだと、リックには分かった。リックは分かっているというように、そっとオルトロスの右の頭に手を添えた。触れられないが、それでもいいだろう。こちらがオルトロスの警戒を理解していることは伝わったはずだ。あまり長い時間一緒にいるわけではないが、それくらいは分かる付き合いだ。
「俺はグローアップ・バルブを召喚! レベル7のブラック・マジシャンに、レベル1のグローアップ・バルブをチューニング!
集いし
S召喚。光の向こうから現れた、腹部にも醜悪な顔を持つ異形の闇の竜。二重の咆哮が轟き、フィールドを震わせる。
ストロングブロッカーの効果を発動するならこのタイミングだ。和輝は身構えた。だがリックの行動は和輝の予想を超えた。
伏せカードが翻る。
「リバース速攻魔法、U.A.ターンオーバー・タクティクス発動! おれと君のモンスターを全てデッキに戻し、その後、おれ、君の順でデッキから戻った数までモンスターを特殊召喚する!」
「なんだとぉ!?」と驚愕する和輝。
「何そのパワーカード!?」同じく驚愕するロキ。次いでリックが発動したカードの危険性に気づいた。
「まずいよ和輝! あのカードによって特殊召喚できる数は、
「当然、ある! リバーストラップ、リビングデッドの呼び声!」
和輝の足元の伏せカードが翻った。露わになったのは墓地のモンスター一体を特殊召喚する永続罠。確かに、これでメインデッキに入るモンスターを特殊召喚できれば和輝もU.A.ターンオーバー・タクティクスの効果を使える。
そう、特殊召喚、
「読んでいたとも! カウンター罠、ギャクタン発動! リビングデッドの呼び声を無効にし、デッキに戻す!」
対策は十分だった。リックの足元の、二枚目の伏せカードが翻った。次の瞬間、和輝が発動したカードは色を失い、無効化されたうえデッキに引っ込んでいった。
結果、U.A.ターンオーバー・タクティクスの効果はリックのフィールドにのみ適用された。
「おれはデッキからU.A.コリバルリバウンダーとU.A.ドレッドノートダンカーを特殊召喚! コリバルリバウンダーの効果で、手札からU.A.フィールドゼネラルを特殊召喚!」
次々に並ぶリックのU.A.モンスター。一族の結束の効果と相まって、全てのモンスターが軒並み攻撃力3000を超えていた。
「さて、これで状況はますます不利になったわけだ」
先ほどの驚愕はどこへやら。ロキはいつものにやにや笑いに戻ってそう言った。和輝は憮然とした表情のまま、言う。「なんてことないさ、これくらい」
言いながらデュエルディスクのボタンを押した。足元に投影されていた、二枚目の伏せカードが翻る。
「活路への希望発動。1000ライフを払い、二枚ドロー! カードを二枚セットし、ターンエンド!」
貪欲な壺:通常魔法
(1):自分の墓地のモンスター5体を対象として発動できる。そのモンスター5体をデッキに加えてシャッフルする。その後、自分はデッキから2枚ドローする。
グローアップ・バルブ 地属性 ☆1 植物族:チューナー
ATK100 DEF100
「グローアップ・バルブ」の効果はデュエル中に1度しか使用できない。(1):このカードが墓地に存在する場合に発動できる。自分のデッキの一番上のカードを墓地へ送り、このカードを墓地から特殊召喚する。
ダークエンド・ドラゴン 闇属性 ☆8 ドラゴン族:シンクロ
ATK2600 DEF2100
チューナー+チューナー以外の闇属性モンスター1体以上
1ターンに1度、このカードの攻撃力・守備力を500ポイントダウンし、相手フィールド上に存在するモンスター1体を墓地へ送る事ができる。
U.A.ターンオーバー・タクティクス:速攻魔法
「U.A.ターンオーバー・タクティクス」は1ターンに1枚しか発動できない。(1):自分フィールドに「U.A.」モンスターが2種類以上存在する場合に発動できる。フィールドのモンスターを全て持ち主のデッキに戻す。その後、自分はこの効果で自分のデッキに戻ったカードの数まで、デッキから「U.A.」モンスターを特殊召喚する(同名カードは1枚まで)。この効果で自分が特殊召喚したモンスターはこのターン攻撃できない。その後、相手はこの効果で相手のデッキに戻ったカードの数まで、デッキからモンスターを特殊召喚できる。
リビングデッドの呼び声:永続罠
(1):自分の墓地のモンスター1体を対象としてこのカードを発動できる。そのモンスターを攻撃表示で特殊召喚する。このカードがフィールドから離れた時にそのモンスターは破壊される。そのモンスターが破壊された時にこのカードは破壊される。
ギャクタン:カウンター罠
(1):罠カードが発動した時に発動できる。その発動を無効にし、そのカードを持ち主のデッキに戻す。
U.A.ドレッドノートダンカー 地属性 ☆7 戦士族:効果
ATK2500 DEF1800
「U.A.ドレッドノートダンカー」の(1)の方法による特殊召喚は1ターンに1度しかできない。(1):このカードは「U.A.ドレッドノートダンカー」以外の自分フィールドの「U.A.」モンスター1体を手札に戻し、手札から特殊召喚できる。(2):このカードが守備表示モンスターを攻撃した場合、その守備力を攻撃力が超えた分だけ戦闘ダメージを与える。③:このカードが相手に戦闘ダメージを与えた時、フィールドのカード1枚を対象として発動できる。そのカードを破壊する。
活路への希望:通常罠
(1):自分のLPが相手より1000以上少ない場合、1000LPを払って発動できる。お互いのLPの差2000につき1枚、自分はデッキからドローする。
U.A.コリバルリバウンダー攻撃力2300→3100
U.A.ドレッドノートダンカー攻撃力2500→3300
U.A.フィールドゼネラル攻撃力2600→3400
和輝LP2800→1800手札2枚
リックLP6800手札1枚
「おれのターンだ、ドロー」
ドローカードもそこそこに、リックはすぐに行動に出た。その耳元で、オルトロスが叫ぶ。
「いけ、いけリック! ここは攻メ時ダ! オレの鼻モそういってイル!」
「そのようだね。おれはコリバルリバウンダーを手札に戻し、マイティースラッガーを特殊召喚! さらにフィールドゼネラルをリリースし、コリバルリバウンダーをアドバンス召喚! 効果を発動し、墓地のフィールドゼネラルを特殊召喚!」
瞬く間にリックのフィールドにモンスターが並ぶ。しかもマイティースラッガーを場に出したことで、和輝の反撃さえも封じようという腹だろう。
故に、攻め時なのだ。
「これを受けたら、負けるね」
「負けねぇよ! バトルフェイズのスタートステップ、リバースカードダブルオープン! 揺れる眼差し! それにチェーンして、強制終了!」
和輝の足元のカードが二枚とも翻る。それに伴って、今にも攻撃しようとしていたリックのモンスターの動きが止まった。
「逆順処理により、まず強制終了の効果! 揺れる眼差しを墓地に送り、バトルフェイズを終了! さらに揺れる眼差しの効果! 俺のPゾーンのカード二枚を破壊し、あんたに500のダメージを与え、デッキからオッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴンを手札に加える!」
凌いだ。攻撃を中断されたU.A.たちは不満げにリックのフィールドに戻っていく。
「ヌゥ……」
唸るオルトロス。微笑を崩さなかったリックも、ここにきて苦い表情を浮かべた。
リックの、プロとしての嗅覚が告げた。自分は今、機会を逃したのではないかと。
それでも、それ以上表情は崩さない。そのままターンエンドした。
強制終了:永続罠
自分フィールド上に存在するこのカード以外のカード1枚を墓地へ送る事で、このターンのバトルフェイズを終了する。この効果はバトルフェイズ時にのみ発動する事ができる。
揺れる眼差し:速攻魔法
(1):お互いのPゾーンのカードを全て破壊する。その後、この効果で破壊したカードの数によって以下の効果を適用する。
●1枚以上:相手に500ダメージを与える。
●2枚以上:デッキからPモンスター1体を手札に加える事ができる。
●3枚以上:フィールドのカード1枚を選んで除外できる。
●4枚:デッキから「揺れる眼差し」1枚を手札に加える事ができる。
U.A.ドレッドノートダンカー攻撃力2500→3300
U.A.フィールドゼネラル攻撃力2600→3400
U.A.マイティースラッガー攻撃力2300→3100
和輝LP1800手札3枚
リックLP6800→6300手札2枚
「俺のターンだ、ドロー!」
「和輝、ここまで終始ミスター・ディートルのペースだったこのデュエルだけれど、今、彼の流れは途切れた。さっきのターンで君をしとめられなかった時に。だからあとは――――」
「途切れた流れを、俺の方に引き寄せろってわけか。上等だ! ペンデュラム・ホルト発動! 二枚ドロー!」
鞘から研ぎ澄まされた刀を抜き放つような、裂帛の気合とともに和輝はドローした。二枚のドローカードを一瞥で確認した。
「よし、これならいける! 融合発動! 手札のオッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴンとジャンク・シンクロンを融合!」
手札融合。和輝の頭上の空間が歪み、渦を作る。その歪みの渦めがけて、和輝の手札から二体のモンスターが飛び出した。
「
渦から炎のように赤い光が迸り、それがリックのフィールドのモンスターたちを次々と打ち据えた。
落雷にも等しい轟音が空気を震わせ、そして、赤熱の光の中から現れたのは、オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴンに勇壮なる鎧を装着させたようなドラゴン。
全身に刃を思わせるパーツが装着され、黄金の角のような背部パーツが二つ。咆哮が烈火のごとき勢いをもって轟いた。
「ブレイブアイズ・ペンデュラム・ドラゴンの効果により、あんたのモンスターの攻撃力は全て0になる! さらに効果も発動できない!」
「な――――」
絶句するリック。無理もあるまい。現状、これで和輝のモンスターには敵わない。
「このターンで終わりにする! 俺は巨大化をブレイブアイズ・ペンデュラム・ドラゴンに装備! 俺の方がライフは下回っているため、ブレイブアイズ・ペンデュラム・ドラゴンの攻撃力は倍になる! さらにアクションマジック-フルターンを発動! このターン、モンスター同士で発生するお互いへの戦闘ダメージは倍になる!」
つまり、元々の攻撃力3000のブレイブアイズ・ペンデュラム・ドラゴンの攻撃力は、巨大化によって倍の6000になり、さらにフルターンの効果により、戦闘ダメージは倍。
リックのフィールドに伏せカードはなく、手札二枚はどちらもコリバルリバウンダーで確定している。墓地で発動する攻撃を止めるカードもない。
詰みだった。リックは12000ものダメージを受ける。
リックは一つ、息を吐いた。疲れたようなため息だった。
「ごめん、オルトロス。もうおれに状況打開の策はない。できれば、迫害を受け、虐げられていた君たちの手助けを、もっとしていたかった」
「仕方あるまい。オマエが負けたということハ、オレがヤッテモ同じだったということだ」
口惜しいが仕方がない。オルトロスはそう言って結果を受け入れた。
そんな一人と一体の様子を見て、和輝は何とも言えない思いだった。
心の中に暗雲が立ち込めかけるのを、
神々の戦争に参加した時から、こういう、後味の悪い戦いを経験することもあると、覚悟していたはずだ。
それに、確かにティターン神族や怪物たちはオリンポス十二神や一神教によって虐げられただろうが、人を人とも、場合によっては契約者さえも無碍に扱うことに変わりはない。
迷って、やられてしまえば多くの人を助けられなくなる。神が巻き起こす理不尽を前に、拳を握るしかできなくなる。
「終わりだ! ブレイブアイズ・ペンデュラム・ドラゴンで、U.A.フィールドゼネラルを攻撃!」
ブレイブアイズ・ペンデュラム・ドラゴンの全身が赤く煌めく炎を放つ。炎はドラゴンの身体を包み込み、巨大な弾丸とせしめた。
唸りを上げて、ブレイブアイズ・ペンデュラム・ドラゴンが突進。全身を使った体当たりでフィールドゼネラルを粉々に吹き飛ばした。――――リックのライフとともに。
ペンデュラム・ホルト:通常魔法
(1):自分のEXデッキに表側表示のPモンスターが3種類以上存在する場合に発動できる。自分はデッキから2枚ドローする。このカードの発動後、ターン終了時まで自分はデッキからカードを手札に加える事はできない。
融合:通常魔法
(1):自分の手札・フィールドから、融合モンスターカードによって決められた融合素材モンスターを墓地へ送り、その融合モンスター1体をエクストラデッキから融合召喚する。
ブレイブアイズ・ペンデュラム・ドラゴン 闇属性 ☆8 ドラゴン族:融合
ATK3000 DEF2000
「ペンデュラム・ドラゴン」モンスター+戦士族モンスター
(1):このカードが融合召喚に成功した時に発動できる。相手フィールドの全てのモンスターの攻撃力は0になる。このターン、このカード以外の自分のモンスターは攻撃できない。(2):このカードがモンスターゾーンに存在する限り、攻撃力0のモンスターが発動した効果は無効化される。(3):このカードの攻撃によって相手モンスターが破壊されなかったダメージステップ終了時に発動できる。その相手モンスターを除外する。
巨大化:装備魔法
(1):自分のLPが相手より少ない場合、装備モンスターの攻撃力は元々の攻撃力の倍になる。自分のLPが相手より多い場合、装備モンスターの攻撃力は元々の攻撃力の半分になる。
アクションマジック-フルターン:速攻魔法
(1):このターン、モンスター同士の戦闘で発生するお互いの戦闘ダメージは倍になる。(2):このカードが墓地に存在する場合、自分メインフェイズに手札から魔法カード1枚を捨てて発動できる。このカードを自分の魔法&罠ゾーンにセットする。この効果はこのカードが墓地へ送られたターンには発動できない。
リックLP6800→0
和輝の勝利だ。こうして、彼はジェネックス杯初戦を勝利で飾った。デュエルディスクに、DP1500ポイントが振り分けられた。
だがこれは始まりに過ぎない。これから始まる、三日間の長い戦い。その、最初の一幕が終わったにすぎない。
和輝の、そして彼の仲間たちの戦いは、まだ始まったばかりだった。