といっても、彼の生い立ちが壮絶であったわけではない。ただ、実家が葬儀屋だっただけだ。
子供のころから親や従業員たちの仕事を何をするでもなく眺めていた。自然、誰かの遺体を見る機会も、クラスメイトとかよりは多かった。
成長するにしたがって、近所の人たちも時々運び込まれてきた。
先週挨拶を交わしたおばあさんが、心臓発作で死亡した。
三日前に喧嘩した同級生の母親が、事故で死んだ。
よくお菓子をくれたおじいさんが老衰で逝った。
様々な死を見てきた。それらに対して山羊が感じたのは、運命の存在だった。
人の身体に巻き付き、生の道を進ませている運命の赤い糸。それが当然に切られること。
恐怖は感じなかった。ただ、粛々と受け入れた。
やがて兄が実家の家業を継いだので、自分は仕事を眺める以外の趣味だったデュエルモンスターズの世界に足を踏み入れ、プロになった。
それからも彼の性質は変わらない。
自分も、相手も。ただ運命を見据えて、受け入れるだけだった。
そんなある意味ニュートラルな在り方が、天秤、法廷、定理を司るテミスと波長が合ったのかもしれない。山羊は自分が意識していないところで、漠然とそう考えていた。
和輝LP5300手札1枚
ペンデュラムゾーン赤:なし青:なし
モンスターゾーン ブラック・マジシャン(攻撃表示)、
魔法・罠ゾーン 伏せ3枚、永遠の魂、
フィールドゾーン なし
山羊LP4800手札1枚
ペンデュラムゾーン赤:なし青:なし
モンスターゾーン
魔法・罠ゾーン
フィールドゾーン なし
「私のターンですね、ドローします」
ドローカードを確認後、山羊は僅かに己の隣にいる気配に注意を払った。
そこにはさっきから黙したままのテミスがいる。
彼女は基本、デュエルで場に出されない限り喋らない。デュエル以外では、こちらから話しかけられれば応えるが、自分から物を語ることがない。
それでいいとも思う。運命を見定めるだけの自分と、天秤の支柱のようにニュートラルなテミス。それ以上何を求めようか。
「――――――」
益体もないことを考えたと、僅かに
「さて、貴方の運命はどちらに向かっていますかね。敗北か、勝利か。もう一度試してみましょうか。カードを一枚伏せて、再びD-HERO ダイヤモンドガイを召喚します」
再び現れる、山羊風に言えばデッキトップで運命を占う戦士。
山羊は即座にダイヤモンドガイの効果を発動した。デッキトップがめくられる。その内容は――和輝の運命の行く末は――、終わりの始まり。
「ふむ、これで次のターン、私は何らカードを除外することなく、三枚のドローが確定しました。やはり運命は、貴方の敗北に傾いているのでしょうかね?」
「どうかな? 終わりの始まりってのは、あんたのことかもしれないぜ?」
微笑む山羊に対して、和輝は不敵に笑い返した。そこに敗北への恐怖はない。ただ、敵に対する身構えのみがあった。
そんな和輝の様子を見ながら、山羊が考えるのは相手のことではなく、自分のプレイング。
ただ淡々と、粛々と。己のなすべきプレイングを続ける。その果てにある勝敗にもあまり興味はない。ただただニュートラルに、受け入れるだけだ。
無論、だからといって手を抜くつもりは一切ない。それは運命に対してあまりにも真摯さを欠いている。
「墓地のディアボリックガイの効果を発動します。このカードをゲームから除外して、デッキから二体目のディアボリックガイを特殊召喚します」
ダイヤモンドガイの隣に現れる新たなD-HERO。レベルがあっていないのでX召喚ではない。あるとすれば融合。だが山羊の手札はゼロ。考えられるのは――――
(あの伏せカードか……)
和輝の予測は当たっていたが、それを知るのはもう少し後のことになる。
「墓地のディバインガイの効果発動です。このカードとディスクガイを除外し、二枚ドロー。さらに伏せていた置換融合を発動します。場のダイヤモンドガイとディアボリックガイを融合!」
山羊の頭上に、空間のねじれが造り出す渦が現れる。その渦に二体のD-HEROが飛び込んだ。
「運命を司る戦士たちよ、今ここに一つに交わり、宿業を率いる新たな運命を現出させよ! 来なさい、D-HERO ディストピアガイ!」
渦の向こうから、新たな戦士が現れる。
現れたのは、 青いバトルスーツ、黄色を基調にしたアーマー。マスクの額部分には赤い大きな「D」の文字。どこか怪しげな印象があった従来のD-HEROの中から見れば異質な、アメコミチックな配色のスーツ姿のモンスター。
山羊の声が飛ぶ。
「ディストピアガイの効果発動! 墓地のドリルガイを選択し、その攻撃力分のダメージを与えます!」
つまり1600のダメージだ。ディストピアガイが右手を開いた状態で和輝に向かって突きつけた。
次の瞬間にはそこから黒い球が弾丸のように放たれた。それも一つではなく、マシンガンのようにいくつも、だ。
黒の弾丸の群。和輝は宝珠を庇って防御。全身に叩きつけられるダメージと衝撃に耐える。
「ぐぁ!」
耐えきったがガードは弾かれた。和輝の身体が宙を舞う。だが今度は空中で態勢を整え、着地に成功。崩れたバランスは地面に手をついて整えた。
「次です。手札から、禁じられた聖槍をディストピアガイに対して発動します。これでディストピアガイはこのターン、攻撃力が800ダウンする代わりに、魔法、罠の効果を受けません」
間髪入れずに和輝も動いた。彼の声が山羊に対抗するように飛んだ。
「禁じられた聖槍にチェーン! 永遠の魂の効果で、デッキから
和輝のデッキからカードが一枚飛び出した。空中にある状態で和輝は人差し指と中指を使ってキャッチ。手札に加えた。
「ここで、ディストピアガイの効果発動! 数値が変動したこのカードのステータスをもとに戻し、貴方の場にある永遠の魂を破壊します!」
ディスクガイの腕から、再び光が放たれる。今度は弾丸ではなく、矢。獲物を狙い、穿つためのもの。
「まずいですわ!」
カトレアが叫ぶ。その理由も明白だ。
「永遠の魂は破壊された時、自分の場のカードを全て破壊してしまう! いわばオカザキカズキの生命線! それを破壊されれば、最悪、ゲームエンドまで持ってかれますわ!」
カトレアの言うことは事実だ。だから和輝は叫ぶ。その懸念を打ち払うように。
「お前は俺を馬鹿だと思っているのか!? 永遠の魂を破壊しに来ることを、想定していないわけがない! リバースカードオープン! 超融合! 手札の黒・魔・導を捨てて、俺の場のブラック・マジシャンとプラネターを融合!」
直前の山羊のフィールドの焼き回しのように、和輝の頭上の空間に渦が生じる。渦に、和輝のモンスターたちが飛び込み、一つに混ざり合る。
「黒衣の魔術師よ、恒星を宿せし竜よ! 今一つに交わり竜を支配せし賢者へと変じよ! 融合召喚、竜騎士ブラック・マジシャン!」
渦の中から咆哮が轟いた。
現れたのは、呪符竜と同じく、ブラック・マジシャンが緑のドラゴンに跨った姿。ただ、ブラック・マジシャンの身を包んでいるのは魔導の衣装ではなく、それをモチーフにしたと思われる鎧。ドラゴンの頭を優しく撫でて、にやりと不敵に笑う。
次の瞬間、ディストピアガイが放った破壊の矢が和輝の永遠の魂に直撃したが、カード自体が破壊エネルギーをはじき返した。
「これは――――」
「竜騎士ブラック・マジシャンがいる限り、俺のフィールドの魔法、罠カードは相手効果に対象にならず、相手の効果で破壊されない! さらに竜騎士ブラック・マジシャンはフィールド、墓地にある限りブラック・マジシャンとして扱う」
うまくかわされた。しかも竜騎士ブラック・マジシャンの攻撃力は3000。ディストピアガイよりも上だ。
「攻撃はできませんね、これは。墓地の置換融合の効果を発動します。このカードを除外し、墓地のデッドリーガイをEXデッキに戻して、一枚ドロー。カードを二枚伏せてターン終了です」
D-HERO ディアボリックガイ 闇属性 ☆6 戦士族:効果
ATK800 DEF800
(1):墓地のこのカードを除外して発動できる。デッキから「D-HERO ディアボリックガイ」1体を特殊召喚する。
D-HERO ディバインガイ 闇属性 ☆4 戦士族:効果
ATK1600 DEF1400
「D-HERO ディバインガイ」の(2)の効果は1ターンに1度しか使用できない。(1):このカードの攻撃宣言時に、相手フィールドの表側表示の魔法カード1枚を対象として発動できる。そのカードを破壊し、相手に500ダメージを与える。(2):自分の手札が0枚の場合、自分の墓地からこのカードと「D-HERO」モンスター1体を除外して発動できる。自分はデッキから2枚ドローする。この効果はこのカードが墓地へ送られたターンには発動できない。
置換融合:通常魔法
このカードのカード名はルール上「融合」として扱う。(1):自分フィールドから融合モンスターカードによって決められた融合素材モンスターを墓地へ送り、その融合モンスター1体をエクストラデッキから融合召喚する。(2):墓地のこのカードを除外し、自分の墓地の融合モンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターをエクストラデッキに戻す。その後、自分はデッキから1枚ドローする。
D-HERO ディストピアガイ 闇属性 ☆8 戦士族:融合
ATK2800 DEF2400
「D-HERO」モンスター×2
「D-HERO ディストピアガイ」の(1)(2)の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。(1):このカードが特殊召喚に成功した場合、自分の墓地のレベル4以下の「D-HERO」モンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターの攻撃力分のダメージを相手に与える。(2):このカードの攻撃力が元々の攻撃力と異なる場合、フィールドのカード1枚を対象として発動できる。そのカードを破壊し、このカードの攻撃力は元々の数値になる。この効果は相手ターンでも発動できる。
禁じられた聖槍:速攻魔法
(1):フィールドの表側表示モンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターはターン終了時まで、攻撃力が800ダウンし、このカード以外の魔法・罠カードの効果を受けない。
超融合:速攻魔法
このカードの発動に対して魔法・罠・モンスターの効果は発動できない。(1):手札を1枚捨てて発動できる。自分・相手フィールドから、融合モンスターカードによって決められた融合素材モンスターを墓地へ送り、その融合モンスター1体をエクストラデッキから融合召喚する。
竜騎士ブラック・マジシャン 闇属性 ☆8 ドラゴン族:融合
ATK3000 DEF2500
「ブラック・マジシャン」+ドラゴン族モンスター
(1):このカードのカード名は、フィールド・墓地に存在する限り「ブラック・マジシャン」として扱う。(2):このカードがモンスターゾーンに存在する限り、自分フィールドの魔法・罠カードは相手の効果の対象にならず、相手の効果では破壊されない。
和輝LP5300→3700手札1枚
山羊LP4800手札0枚
「俺のターンだ、ドロー!」
「さて、敵は強力なモンスターこそあるけど、こっちはそれ以上に強力なモンスターを従えた。つまり攻め時だよね?」
「勿論だ。伏せていたダーク・バーストを発動! 墓地からサモンプリーストを回収し、召喚! 効果で守備表示に変更される。そしてサモンプリーストのもう一つの効果発動! 手札の代償の宝札を捨て、デッキから聖鳥クレインを特殊召喚!」
ローブに身を包んだ老人が、再び呪文を唱え始める。
幾何学的な魔法陣が展開し、召喚されたのは白い翼を広げる大きな鳥。聖鳥の名に恥じぬ美しさと神聖さを持ったモンスター。その効果も結構
「クレインと代償の宝札の効果で、合計三枚ドロー! サモンプリーストとクレインでオーバーレイ! 二体のモンスターで、オーバーレイネットワークを構築! エクシーズ召喚! 来いよ、ダイガスタ・エメラル!」
虹色の爆発の向こうから降り立ったのは、翼を左右に広げたエメラルドの身体をした鉱石の戦士。間髪入れずに和輝は叫んだ。
「ダイガスタ・エメラルの効果発動!
和輝のフィールドに、次々と
「戦力はそろった。軍備も増えた。じゃ、攻めるでしょ?」
「そうだ! バトル! 竜騎士ブラック・マジシャンでディストピアガイを攻撃!」
攻撃宣言が下る。鎧を身に纏った魔導師が竜から跳躍。杖を振るい、頭上から七本の落雷をディストピアガイに向かって一気に落とした。
轟音、閃光。そしてすべてを覆いつくすかのような衝撃が迸る。これを喰らっては、ひとたまりもないはずだった。
だがカトレアが見たのは、そんな怒涛の攻撃の中心地点にいながら、なお消滅せず、ディストピアガイは立っていた。
「なぜ……?」
「見なさい、カトレア。テミスの契約者のフィールドを。いつの間にか新しいモンスターが増えているわ」
モリガンの言う通りだった。いつの間にかディストピアガイの隣に、新たなモンスターの姿があった。
全身を包むスーツ姿、胸には三日月のマーク、奇術師然とした立ち振る舞い。
「こいつは――――」
和輝の目が見開かれる。山羊の、落ち着いた声が彼の耳朶を討つ。
「墓地のD-HERO ドリームガイの効果を発動しました。ディストピアガイの破壊を無効にし、戦闘ダメージを0に。さらに墓地の
観客に挨拶する手品師のように一礼するドリームガイ。とにかく攻撃は失敗した。しかしまだ和輝のバトルフィフェイズは終わっていない。
「だから攻撃だ! ブラック・マジシャンでドリームガイを攻撃!」
ブラック・マジシャンの杖が振るわれ、黒い稲妻が枝分かれしてドリームガイに向かって殺到する。だが着弾の寸前、山羊が足元に伏せていたカードが一枚、翻った。
「トラップ発動。D-フュージョン。私の場にいるディストピアガイとドリームガイで、融合召喚を行います!」
サクリファイス・エスケープ。霞のように消えていくドリームガイ。見ればディストピアガイも同様で、二体のモンスターが混ざり合い、溶けあい、一つとなっていく。
「運命を司る戦士たちよ、今ここに一つに交わり、新たな世界を開闢する導き手となれ! 融合召喚、理想を開きなさい、D-HERO ダスクユートピアガイ!」
まず和輝の目についた色は金。黄金の輝きが山羊のフィールドを満たし、現れるモンスター。
目につくのは顔に大きく描かれた「D」の文字。翼の意匠を取り込んだアーマースーツに、太陽を思わせる輝き。空中でポーズをとって降り立った。
「なんか今までとは大きくデザインの違う金ぴかが来たね……」
「デザインが奇抜でもこの状況で出したモンスターだ。面倒に違いないさ」
苦い顔で言う和輝に応えるように、山羊が声を上げた。
「ダスクユートピアガイの効果発動。このターン、私は再び融合召喚が可能になります」
「融合召喚――――。だけど君の手札はないし、フィールドにもダスクユートピアガイだけ。これじゃあいくら何でも融合召喚はできないんじゃない?」
ロキの言っていることは正論だった。「確かにそうですね」と山羊も肯定した。
だが肯定し、頷きを送りながらも、山羊は「しかし」と前言を覆した。
「このカードがあれば、その前提が覆ります。リバースカードオープン! チェーン・マテリアル! これにより、私はこのターン、手札、フィールドのみならず、デッキ、墓地も含めて、融合素材とできます。
私は墓地のD-HERO ドグマガイと、D-HERO Bloo-dを除外融合! 来なさい、運命の終着点に佇む“終わりのD”! 融合召喚、Dragoon D-END!」
禍々しい咆哮とともに、異形の影が現れる。
ドラゴンの頭部を模した胸部装甲、同じくドラゴンの牙と上顎もした左手の盾、爪を模した右手の剣、翼も、冑も、全身のアーマーの意匠も、全てドラゴンを模している。その、人が思い浮かべる最強の幻想、ドラゴンは、まさに最後に「D」の名にふさわしい。
「Dragoon D-ENDか……」
ダスクユートピアガイとともに、どちらも和輝のモンスターの攻撃力を上回っている。
「攻撃は……無謀だね……」
「ああ。仕方がないな。攻撃は中断、バトルフェイズを終了する。カードを二枚伏せ、オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴンをライトPゾーンにセット! これでターンエンドだが、エンドフェイズにオッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴンのP効果発動! Pゾーンのこのカードを破壊し、デッキから白蛇の魔術を手札に加える。改めて、ターンエンドだ」
「この瞬間、チェーン・マテリアルの効果により、Dragoon D-ENDは破壊されますが、D-フュージョンの効果により、D-ENDは破壊されません」
「ッ! 相手ターンに発動することで、チェーン・マテリアルのバトルできない制約を潜り抜けたことといい、つくづく無駄がないな……!」
ダーク・バースト:通常魔法
(1):自分の墓地の攻撃力1500以下の闇属性モンスター1体を対象として発動できる。その闇属性モンスターを手札に加える。
聖鳥クレイン 光属性 ☆4 鳥獣族:効果
ATK1600 DEF400
このカードが特殊召喚した時、このカードのコントローラーはカードを1枚ドローする。
代償の宝札:通常魔法
(1):手札からこのカードが墓地に送られた時に発動する。カードを2枚ドローする。
ダイガスタ・エメラル 風属性 ランク4 岩石族:エクシーズ
ATK1800 DEF800
レベル4モンスター×2
1ターンに1度、このカードのエクシーズ素材を1つ取り除き、以下の効果から1つを選択して発動できる。●自分の墓地のモンスター3体を選択して発動できる。選択したモンスター3体をデッキに加えてシャッフルする。その後、デッキからカードを1枚ドローする。●効果モンスター以外の自分の墓地のモンスター1体を選択して特殊召喚する。
D-HERO ドリームガイ 闇属性 ☆1 戦士族:効果
ATK0 DEF600
このカード名の効果は1ターンに1度しか使用できない。(1):このカードが墓地に存在し、自分の「D-HERO」モンスターが戦闘を行うダメージ計算時に発動できる。このカードを墓地から特殊召喚し、その自分のモンスターはその戦闘では破壊されず、その戦闘で発生する自分への戦闘ダメージは0になる。この効果で特殊召喚したこのカードは、フィールドから離れた場合に除外される。
D-フュージョン:通常罠
このカードの効果で融合召喚する場合、「D-HERO」モンスターしか融合素材にできない。①:自分フィールドから、融合モンスターカードによって決められた融合素材モンスターを墓地へ送り、その融合モンスター1体をエクストラデッキから融合召喚する。この効果で特殊召喚したモンスターはこのターン、戦闘・効果では破壊されない。
D-HERO ダスクユートピアガイ 闇属性 ☆10 戦士族:融合
ATK3000 DEF3000
「D-HERO」融合モンスター+「D-HERO」モンスター
(1):このカードが融合召喚に成功した場合に発動できる。自分の手札・フィールドから、融合モンスターカードによって決められた融合素材モンスターを墓地へ送り、その融合モンスター1体をEXデッキから融合召喚する。(2):1ターンに1度、フィールドのモンスター1体を対象として発動できる。このターン、そのモンスターは戦闘・効果では破壊されず、そのモンスターの戦闘で発生するお互いの戦闘ダメージは0になる。この効果は相手ターンでも発動できる。
チェーン・マテリアル:通常罠
このカードの発動ターンに自分が融合召喚をする場合、融合モンスターカードによって決められた融合素材モンスターを自分の手札・デッキ・フィールド上・墓地から選んでゲームから除外し、これらを融合素材にできる。このカードを発動するターン、自分は攻撃する事ができず、この効果で融合召喚したモンスターはエンドフェイズ時に破壊される。
Dragoon D-END 闇属性 ☆10 戦士族:融合
ATK3000 DEF3000
「D-HERO Bloo-D」+「D-HERO ドグマガイ」
このカードの融合召喚は上記のカードでしか行えない。(1):1ターンに1度、相手フィールドのモンスター1体を対象として発動できる。その相手モンスターを破壊し、表側表示モンスターを破壊した場合、その攻撃力分のダメージを相手に与える。この効果を発動するターン、自分はバトルフェイズを行えない。(2):このカードが墓地に存在する場合、自分スタンバイフェイズに自分の墓地の「D-HERO」カード1枚を除外して発動できる。このカードを墓地から特殊召喚する。
オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン 闇属性 ☆7 ドラゴン族:ペンデュラム
ATK2500 DEF2000
Pスケール赤4/青4
P効果
「オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン」の(1)(2)のP効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。(1):自分のPモンスターの戦闘で発生する自分への戦闘ダメージを0にできる。(2):自分エンドフェイズに発動できる。このカードを破壊し、デッキから攻撃力1500以下のPモンスター1体を手札に加える。
モンスター効果
(1):このカードが相手モンスターと戦闘を行う場合、このカードが相手に与える戦闘ダメージは倍になる。
「私のターンですね、ドローします。そしてここで、発動が確定している終わりの始まりの効果により、三枚ドローします。
現れたのは、モノアイのマスクをしたサイバネチックな衣装姿の新たなHERO。紫の下地に、桃紫色の発光ラインは未来的だ。
「イギリスチックなD-HEROに比べると、随分未来的だね」
「ヴァイオンの効果発動です」ロキの言葉を無視して、山羊は続ける。「デッキからD-HERO デビルガイを墓地に送ります。さらにヴァイオンのもう一つの効果発動。墓地のデビルガイを除外し、デッキから融合のカードを手札に加えます」
「また融合か……」
通常、融合召喚は手札やフィールドのカード消費が多いはずだ。だが山羊はそんなディスアドバンテージなど無いもののようにデッキを、手札を、カードを操っている。
これがプロ。その中でも上位に食い込む、Bランカーの実力。場合によっては、最高峰のAランカーさえ
「そして、融合発動です。場のヴァイオンと手札のD-HERO ディフェンドガイで、融合召喚!」
何度目かの融合エフェクトが走り、二体のモンスターが渦の中に消え、一つに混ぜられる。
混ざり合い、溶けあって、新たな存在へと昇華する。
「運命を司る戦士たちよ、今ここに一つに交わり、幻影より来る黒影へと変じよ! 来なさい、V・HERO アドレイション!」
新たに現れたHEROは、マントのように裾をはためかせる黒いコートを身に纏った、黒と薄紫に色分けされたモンスター。両腕を組み、仁王立ちして和輝を見据える。
「アドレイション効果発動! ダスクユートピアガイの攻撃力分、ダイガスタ・エメラルの攻撃力をダウンさせます」
ダスクユートピアガイの攻撃力は3000、攻撃力1800のダイガスタ・エメラルの攻撃力はこれで0だ。
「これでは大ダメージは必至ですわ!」
カトレアは叫びながら思う。オカザキカズキのライフはこのターン、大きく削られるだろう。
そのリカバリーはできるのだろうか? オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴンでPモンスターをサーチしているが、それは果たして、この状況で役に立つのだろうか?
そう思いながら眼前で展開されるデュエルを見つめた――――。
「バトルです。まずはダスクユートピアガイで竜騎士ブラック・マジシャンを攻撃します」
ついに始まるバトルフェイズ。
上から迫る金色に、黒い雷が立ち向かう。
両者の攻撃力は互角の3000。普通ならこれで相討ちだ。
だがここで、山羊の声が奔る。
「この瞬間、ダスクユートピアガイの効果発動! 自身に破壊に対する耐性を加えます!」
落下していくダスクユートピアガイの身体を、エメラルドグリーンの幕が覆った。これはバリアーだ。竜騎士が放った雷は、全てこの薄いヴェール一枚貫けず。そこだけを避けるようにそれていく。
「そりゃあ、そう来るよね……。和輝、対抗手段は?」
「残念だが、ない」
ロキに応える和輝の表情は忸怩たるものだ。彼らの眼前で、ついにダスクユートピアガイの爪先が竜騎士ブラック・マジシャンの胸板に接触する。
触れたような静かな衝突。だが内包する力はすさまじく、一瞬後には竜騎士ブラック・マジシャンの背中側から莫大なエネルギーがはじけ飛んだ。
またがったドラゴンごと消滅する竜騎士の姿をしり目に、山羊は更なる攻撃を、己のしもべたちに命じた。
「D-ENDでブラック・マジシャンを、アドレイションでダイガスタ・エメラルを攻撃です」
攻撃が迫る。D-ENDの竜の口から放たれた赤い砲弾がブラック・マジシャンを粉砕しようと飛来する。
「リバースカードオープン! マジシャンズ・プロテクション! 魔法使い族モンスターがいる限り、俺へのダメージは半分になる!」
「関係ありませんね。その魔法使いもここで潰えます」
山羊の言葉通りだった。赤い一撃を受けたブラック・マジシャンは、その影さえ残さず跡形もなく消え去ってしまった。
「ぐ……!」
痛みに顔をしかめる和輝。だがたかが500のダメージなど、次に来る一撃に比べれば軽い。
アドレイションの枝分かれしたコートの裾が、一斉にドリル状に変化。鋭い槍の穂先のように四方八方からダイガスタ・エメラルを襲った。
「永遠の魂の効果発動! 墓地のブラック・マジシャンを、守備表示で特殊召喚する!」
魔法使いが、もう一度和輝のフィールドに降り立った。
これでマジシャンズ・プロテクションの効果が適用される。ダメージはまだ半減だ。
また、和輝のフィールドのモンスターの数が変わったので、戦闘の巻き戻しも起こったが、山羊は攻撃対象を変更せず、そのままダイガスタ・エメラルを攻撃。その鉱石の身体を軽々と砕き、斬り、粉みじんにしていった。
「ぐぁあああああああああ!」
ダメージのフィードバックが和輝を襲う。だが踏ん張る。膝を付くこともない。
「まだまだぁ!」
はっきりと声に出して、気合とともに前を見る。山羊を睨みつける。その様に、まだ運命を前に屈していないのだと、山羊は思った。
「まぁ、いいです。貴方の運命が敗北に向かっている。そのことだけは確かなのですから。カードを一枚伏せて、ターン終了です」
「いいや、俺の運命は俺が決める! リバース速攻魔法、イリュージョン・マジック発動! 俺の場のブラック・マジシャンをリリースし、デッキから二枚のブラック・マジシャンを手札に加える!」
終わりの始まり:通常魔法
自分の墓地に闇属性モンスターが7体以上存在する場合に発動する事ができる。自分の墓地に存在する闇属性モンスター5体をゲームから除外する事で、自分のデッキからカードを3枚ドローする。
V・HERO ヴァイオン 闇属性 ☆4 戦士族:効果
ATK1000 DEF1200
このカード名の(1)の効果は1ターンに1度しか使用できない。(1):このカードが召喚・特殊召喚に成功した場合に発動できる。デッキから「HERO」モンスター1体を墓地へ送る。(2):1ターンに1度、自分の墓地から「HERO」モンスター1体を除外して発動できる。デッキから「融合」1枚を手札に加える。
V・HERO アドレイション 闇属性 ☆8 戦士族:融合
ATK2800 DEF2100
「HERO」モンスター×2
(1):1ターンに1度、相手フィールドの表側表示モンスター1体と、このカード以外の自分フィールドの「HERO」モンスター1体を対象として発動できる。その相手モンスターの攻撃力・守備力はターン終了時まで、その自分のモンスターの攻撃力分ダウンする。
マジシャンズ・プロテクション:永続罠
(1):自分フィールドに魔法使い族モンスターが存在する限り、自分が受ける全てのダメージは半分になる。(2):このカードがフィールドから墓地へ送られた場合、自分の墓地の魔法使い族モンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターを特殊召喚する。
イリュージョン・マジック:速攻魔法
「イリュージョン・マジック」は1ターンに1枚しか発動できない。(1):自分フィールドの魔法使い族モンスター1体をリリースして発動できる。自分のデッキ・墓地から「ブラック・マジシャン」を2体まで選んで手札に加える。
和輝LP3700→3450→2050手札5枚
山羊LP4800手札1枚
「く、は……!」
和輝がよろめく。だが踏みとどまる。ダメージは大きいが、膝を付かず、山羊を睨みつける。
そんな様子を、テミスはじっと見つめていた。
テミスは言葉を発さず、しかし思考は続けていた。
考えるのは勿論、目の前の対戦相手。
岡崎和輝。北欧神話の悪戯の神にして終末を招く邪神、ロキの契約者。
悪神の契約者の割に、その心に洗脳の様子はない。
奇妙さを感じなくはないが、そういうこともあるだろう。事実、イレギュラーな存在である我々ティターン神族も、契約者を洗脳した神もいればそうせずに自由にさせている神もいる。自分も後者だ。
「――――――――――――」
テミスは沈黙のまま、対峙する少年を観察する。
彼は追い詰められた。ここから逆転するのか、ここで折れるのか。
(どちらでもいい、とテミスは判断します)
己は天秤に過ぎない。右左の皿に、敗北と勝利を乗せて、相手を見定める。
裁定の結果がどうなるのか、それはテミスにとってどうでもいい。
敵が勝利するならば、それでもいい。敗北するなら、それでもいい。
ティターン神族に属しながらも、その思考は神にも、人にも、復讐対象の者たちのどこにも傾くことはない。
完全なニュートラル。だからテミスは同じくニュートラルな山羊と契約した。
テミスは見据える。敵を、岡崎和輝という名の少年を。
勝利か、敗北か。彼の天秤は、どちらに触れるだろうか? かつて、ギガントマキアの時にも思った、戦いの行方を、テミスは何度も思いはせるのだった。