ジェネックス杯二日目、時刻は午前九時三十七分。後二十分少々で二日目が始まる。
その少女は彼女に注がれる注目の視線を意に介さず、ただじっと待っている。
十七か八歳の少女、背中にかかるかかからないかという長さの薄茶色の髪をポニーテールにし、青みがかった瞳、白い、背中を見せるカットの入ったタンクトップに、その上に青のジャケット、動きやすさを重視した藍色のジーンズにスニーカー。
年齢にしては豊満なバストも隠す必要などないとばかりに強調したボディラインは扇情的でありながら、彼女の自信がにじみ出ていた。
ボーイッシュな雰囲気でありながら非常に女性的なボディラインを持つ少女の魅力を発散させながらも、その身に秘めた「陽」の気配が活力を与える。
神々の戦争の参加者の一人、
咲夜は黙って左手首に巻いた腕時計を見た。
時刻はさっきから大して過ぎていない。まだ十時にならないのかと、若干じれてきた。
「落ち着け、咲夜」
そんな彼女にかけられる子供の声。
目線を下に向ければ、十歳ほどの子供がいた。
こちらも美しい少女だった。まだ子供ながらも、素敵な将来を感じさせる、花の蕾のごとき美しさ。
上質なルビーのような赤い髪、金色の瞳。髪と対照的な、日焼けやシミなど無縁といわんばかりの白い肌、白のワンピース。
咲夜が契約を交わした神、アテナ。今はクロノスによって子供の姿にさせられてしまっていた。
「険しい表情は、注目を浴びる若手プロのものとは思えないな」
「う……」
パートナーに指摘されて、咲夜はさすがに鼻白んだ。頬に手を当て、アテナを見る。
「怖い顔してた?」
「張り詰めた顔をしていた。確かに、仲間が倒れ、しかも意識が戻らんときている。心配するのは当然だろう。不安を感じるのも当然だ。
だが我々はまだ戦っているのだ。戦いに押し潰されるな」
アテナが言わんとすることは分かる。この子、腕を組んでいっつも偉そうねと思いながら、息を吐いた。
確かに、戦いが始まってしまえば病床の仲間のことよりも、敵を倒すこと、誰かを守ることの方が重要だ。そして何より――――
「自分を守ること。自分が守れなければ他者を救えない。不幸を減らせないぞ、咲夜」
その通りだった。大事なことを見失っていた自身に、咲夜は苦笑。その後微笑を浮かべた。
「ありがとうね、アテナ」
「頭を撫でるな!」
都合のいい時は子供ぶるくせに、子ども扱いされることを嫌う女神は、頭を撫でられたことに対してがなり立てた。
「そーそー、女の子は笑顔が一番よ♪」
「!?」
第三の声がかけられた。アテナは弾かれたように声の方を振り返り、咲夜も警戒を込めて振り向いた。
そこに立っていたのは男が一人。
身体にぴったりと合った細身のシャツ、スリムなブーツカットのパンツ。髪を紫に染め、唇にも紫のルージュを引き、そして、細められた黄色の双眸は、何処か猫を連想させる。
目の周りにもアイシャドウを施しており、首からはシルバーのネックレス。指にもいくつかリングを嵌めていた。
髪の色から考えても、派手で、しかも奇形でありながら、全体的に見るとどことなく調和が取れている。圧倒的な存在感。
その口元には余裕めいた笑み。咲夜は男を見て、警戒を緩めた。直接会った回数は少ないが、知っている相手だったからだ。
「
「ヤッホー、咲夜ちゃん。おひさしぶりー」
ニコニコと、海棠と呼ばれた男は右手の五指を開いて小さく手を振った。
気づけばギャラリーたちが咲夜たちに注目している。
当然といえば当然、バトルロイヤルのジェネックス杯で、プロ同士が邂逅しているのだ。
海棠
ただし、現在は、と付く。前シーズンのランクはA。
猫のように気まぐれな人物で、たとえ自身にとって大事な試合だろうと気が乗らなければ出場せずに不戦勝。実力は非常に高く、その戦いは華やかなので一定数のファンがいるが、その気まぐれな姿勢のせいでランクが安定しない。Aランク入りしたかと思えば次のシーズンではあっさり降格する。そしてまた昇格する。
気まぐれな実力者、それが彼だった。
「なんだかちょっと難しい顔してたわよ? 悩み事? 話して楽になるなら話してごらんなさい? 不安はお肌の天敵だから」
「はぁ……、いえ、そんな相談できることじゃないんですけど」
面倒見のいい男で、おまけに距離感を取るのがうまい青年であるが、海棠はこういう時ぐいぐい来る。そういう人でもある。咲夜は若干困ったような表情を浮かべた。
ちらりとアテナを見る。小さな女神はふるふると首を横に振った。神の気配は感じない、ということだ。
「海棠さんもジェネックス杯に参加しているんですか?」
「ええ。昨日はファンに追っかけられて大変だったわ。今日はちょっとこそこそしようかと思ったの」
こそこそ、その割にファッションは派手だ。「んー」と海棠は呟きながらじっと咲夜を見る。
唇に人差し指を当て、上半身だけを前に倒して咲夜の顔を穴が開くほど眺めやる。
その眼力に、思わず咲夜が後ずさった時、やっぱりと海棠は言った。
「悩みとか不安があるみたいねー。けどそれは他人には話せない。そんな感じかしら?」
「!」
言い当てられた。自分はそんな単純だろうか? そんなはずはない。すぐに顔に出るようならプロデュエリストで上には行けないはずだ。
咲夜がそんなことを考えていた時、海棠は体の位置をもとに戻していた。
「うーん、ま、ここで会ったのも何かの縁だし。デュエルをしましょっか?」
「え?」
「だってもうすぐ十時だし。悩みがあるなら思いっきりデュエルするのも一つの手よ? 少なくともその間はデュエルのこと以外何も考えられなくなるし」
悩みも薄まる、ということたしい。確かに周囲にティターン神族の気配もない。ならば、ここで戦うのはいいだろう。ジェネックス杯に参加している以上、デュエルしないという選択肢はない。
「分かりました」
「はい決まり♪」
パンと手を叩き、笑顔を浮かべる海棠。年齢不詳だが間違いなく咲夜より年上のはずなのに、妙に人懐っこい笑みだった。
プロデュエリスト同士の対決。何の宣伝もせずともギャラリーはすぐに沸いた。
二人から離れたところで観戦するアテナは、一流のプロデュエリストというのは相対するだけで人を集めるのだなと思った。
時間が進む、十時まであと五秒。
四、三、二、一……〇
『
咲夜LP8000手札5枚
海棠LP8000手札5枚
「アタシの先攻ね」
先攻は海棠。順調にドローフェイズ、スタンバイフェイズを消化し、メインフェイズ1に入る。
彼の洗練された動作を見る咲夜の脳裏に浮かぶのは、海棠のデッキ。
プロで活躍する彼のデッキは、レイシス・ラーズウォードに通じる。
メインとなる
そのモンスターは――――
「紅玉の宝札を発動するわ。手札の
「レッドアイズ……」
その通りだ。レベル7モンスターとしては決して強くない真紅眼の黒竜を主軸にし、専用カードを展開し、相手をかき乱す。
攻撃力3000という、有無を言わさぬパワーで圧倒するレイシスのブルーアイズと違い、低い攻撃力を補いつつモンスターを展開する、テクニカルなデッキだ。
「そして
海棠のフィールドに現れたのは、溶岩の熱を取り込み、ほのかに赤く発行する黒い石。
「伝説の黒石の効果発動よ♪ このカードをリリースして、デッキから真紅眼の黒竜を特殊召喚! さぁおいでなさい、アタシのフェイバリット!」
伝説の黒石の表面が罅割れた。罅はどんどん大きくなり、やがて石全体に広がった。
一瞬の沈黙。そして、黒石は内側から弾け飛んだ。
黒い破片が飛び、炎を思わせる赤い光があふれ出た。
その向こうで咆哮。
現れたのは鎧のような外骨格を持ち、溶岩を結晶化したような真紅の瞳のドラゴン。細身のシルエットだが貧弱な印象はまるでなく、むしろ鋭利な刃を思わせる。
「ここで、黒炎弾発動よ♪ 咲夜ちゃんに2400のダメージね」
にこりと笑って、海棠は更なるカードを繰り出してきた。
カードがデュエルディスクにセットされた瞬間、効果を発揮。真紅眼の黒竜が首をもたげ、口内に炎を生成、一気に解き放つ。
放たれた巨大な火球が咲夜に叩きつけられた。
「くぅ……! レッドアイズデッキを相手にする以上、分かっていたけど、いきなり2400のダメージはきついわね……!」
爆風が吹き荒れ、音が走る。全て
「カードを一枚伏せて、ターン終了ね。さ、どうぞ」
紅玉の宝札:通常魔法
「紅玉の宝札」は1ターンに1枚しか発動できない。(1):手札からレベル7の「レッドアイズ」モンスター1体を墓地へ送って発動できる。自分はデッキから2枚ドローする。その後、デッキからレベル7の「レッドアイズ」モンスター1体を墓地へ送る事ができる。
伝説の黒石 闇属性 ☆1 ドラゴン族:効果
ATK0 DEF0
「伝説の黒石」の(1)(2)の効果は1ターンに1度、いずれか1つしか使用できない。(1):このカードをリリースして発動できる。デッキからレベル7以下の「レッドアイズ」モンスター1体を特殊召喚する。(2):このカードが墓地に存在する場合、自分の墓地のレベル7以下の「レッドアイズ」モンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターをデッキに戻し、墓地のこのカードを手札に加える。
真紅眼の黒竜 闇属性 ☆7 ドラゴン族:通常モンスター
ATK2400 DEF2000
黒炎弾:通常魔法
このカードを発動するターン、「真紅眼の黒竜」は攻撃できない。(1):自分のモンスターゾーンの「真紅眼の黒竜」1体を対象として発動できる。その「真紅眼の黒竜」の元々の攻撃力分のダメージを相手に与える。
咲夜LP8000→5600手札5枚
海棠LP8000手札2枚
「あたしのターン、ドロー!」
いきなり先制ダメージを喰らってしまった。ちょっと痛いが仕方がない。相手が相手だ。このくらいはいきなり食らうと割り切るしかない。
「コンバート・コンタクト発動! 手札の
あたしは、ネオスペース・コネクターを召喚!」
咲夜のフィールドに現れたのは、ネオスやネオスペース・コンダクターに近い、白をメインに赤いラインが入り、胸元に青い宝玉を宿した姿。ただ前者二人との違いは、頭身が低く、まだ子供だということか。
「ネオスペース・コネクターの効果発動! デッキから、
勇ましい様しい掛け声とともに現れる、咲夜のフェイバリット。逞しい体躯に白いボディ、赤いライン、青い宝玉。ネオスペース・コネクターと違い、戦士の風格持つモンスター。
「ネオスペース・コネクターのもう一つの効果! このカードをリリースして、墓地のエア・ハミングバードを特殊召喚!」
ネオスペース・コネクターが光の粒子となって消え去り、代わりに赤い体躯を持つ超人型のモンスターが現れた。もっとも、頭部も鳥類なので異様な感じがする。
「そして、ネオスとエア・ハミングバードでコンタクト融合!」
咲夜が両手を広げて叫ぶ。その叫びに応え、彼女のモンスターたちが光に包まれる。
二体のモンスターは輪郭を失い、互いに一つに重なり、混ざり合う。
「異星の戦士よ、風の力を得て、数多の障害を貫き穿つ銀の弾丸となれ! コンタクト融合、吹き荒れろ、E・HERO エアー・ネオス!」
光があふれ、人型を作った。
現れたのは、赤い身体に変色し、ネオスの元々の体色だった一対の白い翼を生やし、その翼を大きく羽ばたかせたネオスの別形態。頭部はエア・ハミングバードをほうふつとさせる形状に変化している。
「あたしと海藤さんのライフ差は2400! よってエアー・ネオスの攻撃力も2400アップ! バトル! エアー・ネオスで真紅眼の黒竜を攻撃!」
凛とした攻撃宣言が下る。エアー・ネオスが翼を広げて飛翔。羽ばたきを強くし、弾丸のごとき速度と硬度を備えた羽根が雨のように真紅眼の黒竜に降り注ぐ。
「じゃあ、アタシは伏せていた
「構わない! 攻撃は続行、真紅眼の黒竜を攻撃!」
咲夜は止まらない。新たに登場したドラゴンには目もくれず、羽根の雨が真紅眼の黒竜を打ち据えた。
「くぅ……! ダメージ分は返されちゃったわね。だ・け・ど。おかげでエアー・ネオスの攻撃力も下がったわ」
「言われなくても分かってますよ。バトルは終了、メインフェイズ2に入って、インスタント・ネオスペースをエアー・ネオスに装備、それからカードを一枚セットして、ターンエンド!」
コンバート・コンタクト:通常魔法
(1):自分フィールドにモンスターが存在しない場合に発動できる。手札及びデッキから「N」カードを1枚ずつ墓地へ送る。その後、自分はデッキから2枚ドローする。
ネオスペース・コネクター 光属性 ☆4 戦士族:効果
ATK800 DEF1800
このカード名の(1)(2)の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。(1):このカードが召喚に成功した時に発動できる。手札・デッキから「N」モンスターまたは「E・HERO ネオス」1体を守備表示で特殊召喚する。(2):このカードをリリースし、自分の墓地の、「N」モンスターまたは「E・HERO ネオス」1体を対象として発動できる。そのモンスターを守備表示で特殊召喚する。
E・HERO ネオス 光属性 ☆7 戦士族:通常モンスター
ATK2500 DEF2000
N・エア・ハミングバード 風属性 ☆3 鳥獣族:効果
ATK800 DEF600
1ターンに1度、自分のメインフェイズ時に発動できる。自分は相手の手札の数×500ライフポイント回復する。
E・HERO エアー・ネオス 風属性 ☆7 戦士族:融合
ATK2500 DEF2000
「E・HERO ネオス」+「N・エア・ハミングバード」
自分フィールド上に存在する上記のカードをデッキに戻した場合のみ、融合デッキから特殊召喚が可能(「融合」魔法カードは必要としない)。自分のライフポイントが相手のライフポイントよりも少ない場合、その数値だけこのカードの攻撃力がアップする。エンドフェイズ時にこのカードは融合デッキに戻る。
真紅眼の鎧旋:永続罠
「真紅眼の鎧旋」の(1)(2)の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。(1):自分フィールドに「レッドアイズ」モンスターが存在する場合、自分の墓地の通常モンスター1体を対象としてこの効果を発動できる。そのモンスターを特殊召喚する。(2):このカードが相手の効果で破壊され墓地へ送られた場合、自分の墓地の「レッドアイズ」モンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターを特殊召喚する。
真紅眼の黒炎竜 闇属性 ☆7 ドラゴン族:デュアル
ATK2400 DEF2000
(1):このカードはフィールド・墓地に存在する限り、通常モンスターとして扱う。(2):フィールドの通常モンスター扱いのこのカードを通常召喚としてもう1度召喚できる。その場合このカードは効果モンスター扱いとなり以下の効果を得る。
●このカードが戦闘を行ったバトルフェイズ終了時に発動できる。このカードの元々の攻撃力分のダメージを相手に与える。「真紅眼の黒炎竜」のこの効果は1ターンに1度しか使用できない。
インスタント・ネオスペース:装備魔法
「E・HERO ネオス」を融合素材とする融合モンスターにのみ装備可能。装備モンスターはエンドフェイズ時にエクストラデッキに戻る効果を発動しなくてもよい。装備モンスターがフィールド上から離れた場合、自分の手札・デッキ・墓地から「E・HERO ネオス」1体を選んで特殊召喚できる。
咲夜LP5600手札3枚
海棠LP8000→5500手札2枚
「アタシのターンね、ドロー」
カードをドローする海棠を見ながら、咲夜は自分の唇がほころぶのを感じていた。
楽しい。ティターン神族率いる敵と戦っている時は感じなかった、清々しい高揚感が胸の奥から湧き上がってくる。
歓声が耳に届く。自分達のデュエルを見て、足を止めて歓声を上げてくれたのだ。
ああ、これはいい。あたしは今、彼らに笑顔を与えられている。
「真紅眼の鎧旋の効果発動ね。墓地から真紅眼の黒竜を特殊召喚するわ」
おっといけない。今はデュエルに集中しよう。
「黒炎竜を攻撃表示に変更して、召喚権を使って再度召喚。これで黒炎竜は効果を得るわ」
真紅眼の黒竜よりも、さらに細身なフォルムを持っていたドラゴンが咆哮を上げた。次の瞬間、翼から鮮やかな紅蓮の炎が噴出し、新たな翼となる。
「手札の
攻撃宣言とほぼ同時に、炎の黒竜が動く。
翼を一度羽ばたかせて空中で姿勢制御。直後に口腔から真っ赤な炎を放った。
炎は瞬く間にエアー・ネオスの身体にまとわりつき、その身の内外に燃え移り、炎上。消滅させた。
「う……」
「まーだよ。ここで黒炎竜の効果発動。咲夜ちゃんに、2400のダメージを与えるわ」
「くぅ……!」
直接浴びせかけられる炎は、例え本物ではないと分かっていても身構えてしまう。どうにもならない。
「だけど、あたしだってやられっぱなしじゃない! インスタント・ネオスペースの効果発動! デッキからE・HERO ネオスを特殊召喚!」
再び現れる、昔の特撮番組に出てくる光の巨人のような戦士。勇ましい掛け声とともに、咲夜を守るように彼女のフィールドに降り立った。
「バトル終了、それから真紅の財宝を発動。このカードは、アタシの場にいる「レッドアイズ」カード一種類につき、カードを一枚ドローできるの。アタシの場には三種類あるから、三枚ドローね。カードを一枚伏せるわ。これでターンエンド」
「待った!」
ビシっと右掌を突き付けて、咲夜は叫ぶ。突然叫ばれて、海棠がびくりと肩を震わせ、目をぱちくりと明けた。
「え、なになに?」
「このタイミングで、あたしは伏せていた
咲夜のデッキから、四つの色とりどりの輝きが飛び出し、それぞれが新たなネオスと、彼の仲間たちへと変わる。
一気に揃った咲夜のフィールドを見て、海棠は苦笑するしかなかった。
黒鋼竜 闇属性 ☆1 ドラゴン族:効果
ATK600 DEF600
(1):自分メインフェイズに自分フィールドの「レッドアイズ」モンスター1体を対象として発動できる。自分の手札・フィールドからこのモンスターを攻撃力600アップの装備カード扱いとしてその自分のモンスターに装備する。(2):このカードがフィールドから墓地へ送られた場合に発動できる。デッキから「レッドアイズ」カード1枚を手札に加える。
真紅の財宝:通常魔法
このカード名は1ターンに1枚しか発動できない。(1):自分フィールドの表側表示「レッドアイズ」カードの種類の数だけ、カードをドローする。このカードを発動後、自分はモンスターを特殊召喚できず、相手に与えるダメージは0になる。
NEXT:通常罠
このカード名のカードは1ターンに1枚しか発動できない。自分フィールドにカードが存在しない場合、このカードの発動は手札からもできる。(1):自分の手札・墓地から、「N」モンスター及び「E・HERO ネオス」を任意の数だけ選んで守備表示で特殊召喚する(同名カードは1枚まで)。この効果で特殊召喚したモンスターの効果は無効化される。この効果で特殊召喚したモンスターが自分フィールドに表側表示で存在する限り、自分は融合モンスターしかEXデッキから特殊召喚できない。
N・フレア・スカラベ 炎属性 ☆3 昆虫族:効果
ATK500 DEF500
このカードの攻撃力は、相手フィールド上の魔法・罠カードの数×400ポイントアップする。
N・グラン・モール 地属性 ☆3 岩石族:効果
ATK900 DEF300
(1):このカードが相手モンスターと戦闘を行うダメージステップ開始時に発動できる。その相手モンスターとこのカードを持ち主の手札に戻す。
N・ブラック・パンサー 闇属性 ☆3 獣族:効果
ATK1000 DEF500
1ターンに1度、相手フィールド上に表側表示で存在するモンスター1体を選択して発動できる。エンドフェイズ時まで、このカードは選択したモンスターと同名カードとして扱い、同じ効果を得る。
真紅眼の黒炎竜攻撃力2400→3000
咲夜LP5600→5100→2700手札3枚
海棠LP5500手札2枚
「あたしのターン、ドロー!」
ライフはまた差がつけられてしまったが、NEXTのおかげでフィールドは順調だ。これだけ揃えば連続でコンタクト融合もできる。
それが分かっているのだろう、ギャラリーも咲夜が繰り出すだろうモンスターの予感に、期待に満ちた眼差しを向けてくる。
「N・グラン・モール、N・ブラック・パンサーで、コンタクト融合!
異星の戦士よ、大地と闇の力をその身に受けて、星雲渦巻く重力を支配し、戦場を鎮めよ! トリプルコンタクト融合! E・HERO ネビュラ・ネオス!」
E・HERO ネオスを含めた三体のモンスターが、輪郭を崩した光となり、一つに集う。
新たに現れたのは、ネオスの進化系。
漆黒と白の体躯。その上にマグマ・ネオスも装備していたような緑のアーマー、巨大なウィング、右手には二連のドリル、そして左掌の上に重力の塊を持ち、鋭い眼光で海棠と、彼のモンスターたちを睨みつける。
「ネビュラ・ネオスの効果発動! カードを五枚ドロー! それからネビュラ・ネオスの効果を無効にする! さらにネオスとフレア・スカラベでコンタクト融合!」
咲夜の右手が振り上げられる。残った二体のネオスのその仲間、が光となって一つに重なり合う。
「異星の戦士よ、炎の力を得て悪を滅ぼす剣となれ! コンタクト融合! 燃え盛れ、E・HERO フレア・ネオス!」
炎が巻き上がる。それを振り払って現れるのは、ネオスを主体に、カラーリングをフレア・スカラベの物に一新。クワガタのような頭部の形状、昆虫のような翼、筋肉。まさにネオスとフレア・スカラベの融合体。
「フィールドの魔法、罠は二枚。よってフレア・ネオスの攻撃力は800アップ!
バトルよ! フレア・ネオスで真紅眼の黒炎竜を攻撃!」
炎と炎が激突する。フレア・ネオスが両手を頭上に掲げると、その先に太陽を思わせる巨大な火球が出現。一気に投擲した。
大気を焼いて突き進む炎の塊に、黒炎竜は口内で生成した炎で迎撃。だが火力が足りない。
黒炎竜の炎はフレア・ネオスの業火に飲み込まれ、黒炎竜本体に直撃、炎上、消滅させた。
「くぅぅ! 効くわねぇ。だけど、装備状態の黒鋼竜の効果発動! デッキから
新たな戦力が海棠の手に渡る。構うことはない、と観戦しているアテナは思った。このまま一気に攻めるべきタイミングだと。
その願いが届いたわけでもなかろうが、咲夜もまた、一気呵成に攻め立てる。
「ネビュラ・ネオスで真紅眼の黒竜を攻撃!」
「ま、ここは使っておくわ。凱旋の効果発動、墓地の真紅眼の黒炎竜を復活させるわね」
構うことはない。攻撃は続行、ネビュラ・ネオスが放った重力の塊が黒竜を直撃、捕えて四方八方全方向から一気に圧縮。断末魔の叫びをあげることもできず、黒竜は潰れた空き缶のように小さくなって消滅した。
「この瞬間、真紅眼の遡刻竜の効果発動! 手札からこの子を特殊召喚するわ! さらにこの子の効果で、今破壊された真紅眼の黒竜もふっかーつ♪」
新たなモンスターが現れた。やはりどうもうまく攻めきれない。必ずモンスターを残されてしまう。
「神秘の中華なべを発動。フレア・ネオスをリリースして、その攻撃力分、ライフを回復します。カードを三枚伏せて、ターン終了。効果が無効になっているから、ネビュラ・ネオスはEXデッキに戻らない」
E・HERO ネビュラ・ネオス 地属性 ☆9 戦士族:融合
ATK3000 DEF2500
「E・HERO ネオス」+「N・グラン・モール」+「N・ブラック・パンサー」
自分フィールドの上記カードをデッキに戻した場合のみ、EXデッキから特殊召喚できる(「融合」は必要としない)。(1):このカードがEXデッキからの特殊召喚に成功した場合に発動する。相手フィールドのカードの数だけ自分はデッキからドローする。その後、フィールドの表側表示のカード1枚を選び、その効果をターン終了時まで無効にする。(2):エンドフェイズに発動する。このカードをEXデッキに戻し、フィールドのカードを全て裏側表示で除外する。
E・HERO フレア・ネオス 炎属性 ☆7 戦士族:融合
ATK2500 DEF2000
「E・HERO ネオス」+「N・フレア・スカラベ」
自分フィールド上の上記のカードをデッキに戻した場合のみ、エクストラデッキから特殊召喚できる(「融合」魔法カードは必要としない)。このカードの攻撃力は、フィールド上の魔法・罠カードの数×400ポイントアップする。また、エンドフェイズ時、このカードはエクストラデッキに戻る。
真紅眼の遡刻竜 闇属性 ☆4 ドラゴン族:効果
ATK1700 DEF1600
(1):自分フィールドのレベル7以下の「レッドアイズ」モンスターが相手モンスターの攻撃または相手の効果で破壊され自分の墓地へ送られた場合に発動できる。このカードを手札から守備表示で特殊召喚し、可能な限りその破壊されたモンスターを破壊された時と同じ表示形式で特殊召喚する。(2):このカードをリリースして発動できる。このターン、自分は通常召喚に加えて1度だけ、自分メインフェイズに「レッドアイズ」モンスター1体を召喚できる。
神秘の中華なべ:速攻魔法
自分フィールド上のモンスター1体を生け贄に捧げる。生け贄に捧げたモンスターの攻撃力か守備力を選択し、その数値だけ自分のライフポイントを回復する。
咲夜LP2700→6000手札5枚
海棠LP5500→5200手札2枚
戦況は咲夜が有利だ。アテナはそう思ったが、どうやら咲夜はそう思ってはいないらしい。
咲夜の表情に油断はない。表情こそ楽しんでいることがわかる笑みだが――アテナの好きな笑みだ――、その眼差しは抜け目なく海棠を観察している。
次に彼がどういう戦術を繰り出してくるか、それに対処するにはどうすればいいか。常に考え続けている。
いいことだ。考えることをやめてはいけない。特に戦っている最中は。
不測の事態がいつ起こるか分からない。だから、油断なく、挑め。
パートナーの今の状態に頼もしさを感じながら、アテナは観戦を続けた。