当方小五ロリ   作:真暇 日間

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 (見た目は)変わらない。


とある覚の怒りに触れて、しかし道士は変わらない

 

 繰り返す。幾度も繰り返す。幾度も幾度も繰り返す。

 それは一つの可能性。無数に存在し得た『過去』の一欠片。

 もしも、物部氏が蘇我氏に打ち勝っていたならば。

 もしも、物部氏が蘇我氏に根切りにされていたならば。

 もしも、聖徳太子が産まれていなかったなら。

 もしも、屠自古が産まれていなかったなら。

 ……もしも、自分が産まれていなかったなら。

 

 無数の世界にて体感した無数の感情が布都に流れ込む。

 無数の世界の自身の感情(絶望)が。感情(悲哀)が。感情(憤怒)が。感情(嫉妬)が。感情(狂気)が。感情(背徳)が。感情(慟哭)が。感情(懺悔)が。感情(悔恨)が。感情(怨嗟)が。感情(無感動)が。無限にも等しいと思えるほどに流れ込んでくる。

 目を覚ます。夢だった。いつもの通りに太子様は笑顔を向けてくれて、屠自古が腹立たしい。ひょっこりやってきた青娥が自分をからかい、そして青娥は笑う。そんないつも通りの世界。

 

 目を覚ます。夢だった。今日もまた私は敵を殺す。味方だったこともある敵も、ずっと敵だった敵も、そして味方も全て殺す。いくつか見たことのある顔があり、しかしそれに構わず殺す。

 

 目を覚ます。夢だった。今日は学校に行く日。太子様に抱き付こうとするが屠自古に止められ、喧嘩に発展。その間に青娥に取られてしまい、気付いた私達は青娥の魔の手から太子様を取り戻す。

 

 目を覚ます。夢だった。

 

 目を覚ます。夢だった。

 

 目を覚ます。夢だった。

 

 目を覚ます。夢だった。

 

 目を覚ます。夢だった。

 

 目を覚ます。夢だった。

 

 目を覚ます。夢だった。

 

 目を覚ます。夢だった。

 

 目を覚ます。夢だった。

 

 目を覚ます。夢だった。

 

 目を覚ます。夢だった。

 目を覚ます。夢だった。

 目を覚ます。夢だった。

 目を覚ます。夢だった。

 目を覚ます。夢だった。

 夢だった。

 夢だった。

 夢だった。

 夢だった。

 夢だった。

 夢だった。

 夢だった。

 夢だった。

 夢だった。

 夢だった。

 夢だった。

 夢だった。

 夢だった。

 夢だった。

 夢だった。

 夢だった。

 夢だった。

 夢だった。

 夢だった。

 夢だった。

 夢だった。

 夢だった。

 夢だった。

 夢だった。

 夢だった。

 夢だった。

 夢だった。

 夢だった。

 夢だった。

 夢だった。

 夢だった。

 夢だった。

 夢だった。

 夢だった。

 夢だった。

 夢だった。

 夢だった。

 夢だった。

 夢だった。

 夢だった。

 夢だった。

 夢だった。

 夢だった。

 夢だった。

 夢だった。

 夢だった。

 夢だった。

 夢だった。

 夢だった。

 夢だった。

 夢だった。

 夢だった。

 夢だった。

 夢だった。

 夢だった。

 夢だった。

 夢だった。

 夢だった。

 夢だった。

 夢だった。

 夢だった。夢だった。夢だった。夢だった。夢だった。夢だった。夢だった。夢だった。夢だった。夢だった。夢だった。夢だった。夢だった。夢だった。夢だった。夢だった。夢だった。夢だった。夢だった。夢だった。夢だった。夢だった。夢だった。夢だった。夢だった。夢だった。夢だった。夢だった。夢だった。夢だった。夢だった。夢だった。夢だった。夢だった。夢だった。夢だった。夢だった。夢だった。夢だった。夢だった。夢だった。夢だった。夢だった。夢だった。夢だった。夢だった。夢だった。夢だった。夢だった。夢だった。夢だった。夢だった。夢だった。夢だった。夢だった。夢だった。夢だった。夢だった。夢だった。夢だった。夢だった。夢だった。夢だった。夢だった。夢だった。夢だった。夢だった。夢だった。夢だった。夢だった。夢だった。夢だった。夢だった。夢だった。夢だった。夢だった。夢だった。夢だった。夢だった。夢だった。夢だった。夢だった。夢だった。夢だった。夢だった。夢だった。夢だった。夢だった。夢だった。夢だった。夢だった。夢だった。夢だった。夢だった。夢だった。夢だった。夢だった。夢だった。夢だった。

 

 ……目が覚めた。何度も繰り返した夢の世界。布都はまた始まったと目を開く。

 

「……」

「!?」

 

 目の前に、燃えるように輝く三つの目を持つナニカがいた。

 

「貴様、何者!?」

「……」

「……答えるつもりはないということか!」

 

 ナニカは布都の声をすべて無視しながら、舌打ちを一つ。罠を仕掛けた猟師が罠にかかった動物が弱るまで周りを見て回り、そろそろかと思って様子を見に来たらまだまだ元気が有り余る状態だったのを見るような態度。明らかに布都を下に見たその態度に、布都は怒りと憤りを覚える。

 

 しかし、布都が牽制に皿を投げつけようとした瞬間に、皿が勝手に手から飛び出し自分の顎に直撃して視界を揺らした。

 意識を失う直前。布都は自分の頭に何かが触れたのを感じ取った。

 

 そしてまた繰り返される夢。神子と反目し合い、殺される。蘇我氏と戦い、殺される。物部氏に裏切られ、殺される。何度も何度も繰り返される『自身の死ぬ一日』。その一日を精一杯に生きて、そして最後には死ぬ。

 尸解仙となることなく老いて死ぬ事があった。

 自身を狙った矢に貫かれて死んだことがあった。

 嫉妬に狂った屠自古に首を絞められて死んだことがあった。

 邪魔になったからと神子に殺されたことがあった。

 青娥が手を回して殺されたことがあった。

 神子に出会うより早く死んだことがあった。

 何も知らないままに死んだことがあった。

 母親の胎内から出ることなく死んだことがあった。

 蘇我氏に攫われ、犯し殺されたことがあった。

 神子を救うために自殺したことがあった。

 青娥に騙され、神子や屠自古諸共に殺されたことがあった。

 異なる時代で、神という存在に触れることなく死んだことがあった。

 異なる世界で、化生に食われて死んだことがあった。

 希望を抱いたまま、盛られた毒を気付かず呷って死ぬことがあった。

 病に侵され、隔離されたまま孤独に死んでいくことがあった。

 

 無数の死が布都の思考を襲う。しかし、それでも布都は耐えることができていた。布都の奥底に存在していた記憶が、思い出が、布都が壊れる事を防いでいた。

 それが、さらなる地獄に通じるとも知らずに。

 

 

 

 ■

 

 

 

 記憶を解体し、分割し、そしてその記憶そのものを邪神達が侵食し始める。

 神子の姿は黄衣の王に。屠自古の姿はおぞましき蟇に似たものに。青娥の姿は黒い肌をした牧師に。

 記憶が徐々に改竄されていく。それを止めようとする意識がどこかにあるが、その意識は即座に燃えるように輝く三眼を持つ怪物に踏み潰され、消えてしまう。そして潰された処に現れた邪神達が移動を始め、記憶にある姿と交じり合っていく。

 ある姿が水の大蜥蜴に変わる。ある姿が焔を焚きつけるものに変わる。ある姿が死喰鬼の頂点に変わる。ある姿が漆黒の粘液状生物に変わる。ある姿が顔の無い黒い肌の悪魔のようなものに変わる。ある姿が霜と硝石にまみれた馬面の鳥に変わる。ある姿が緑色の粘液を纏った犬に変わる。ある姿が顔と手だけが人間のそれである鼠に変わる。ある姿が呪詛を吐き出し続ける混沌に変わる。ある姿が象のような鼻を持つ石像のようなものに変わる。ある姿が顔のない黒いスフィンクスに変わる。ある姿が大いなる白き沈黙の神に変わる。ある二つの姿が双子の卑猥なるものに変わる。ある姿が彼方のものに変わる。ある姿が古ぶるしきものに変わる。ある姿が名状しがたきものに変わる。ある姿が魔物の神に変わる。ある姿が始原にして終末の混沌に変わる。ある姿があらゆる不浄の父にして母に変わる。ある姿が大いなる蛇の神に変わる。ある姿が血腥い猫の神に変わる。ある姿がルルイエの支配者に変わる。ある姿がテティスの支配者に変わる。ある姿がきたるべきものの騎士に変わる。ある姿が生ける炎に変わる。ある姿が外界での執拗なる待機者に変わる。ある姿がイイーキルスの白蛆に変わる。ある姿が極冷の灰炎に変わる。ある姿が両掌に口を持つ背徳の神に変わる。ある姿が深淵に住む大蜘蛛に変わる。ある姿が湖に棲む神に変わる。ある姿が形なき生きた音の塊に変わる。ある姿が緑に輝く炎の柱に変わる。ある姿が洞窟と暗黒の神に変わる。ある姿が花の中央に人の胴体を持った姿に変わる。ある姿が巨大な灰色の水溜まりに変わる。ある姿が千匹の仔を孕む森の黒山羊に変わる。ある姿が劫初の夜の不滅の空虚にして沈黙に変わる。ある姿がナイル川の豊穣の神に変わる。ある姿が魔の夜の末裔に変わる。ある姿が父なるダゴンに変わる。ある姿が知識を守るものに変わる。ある姿が原初の邪悪の落とし子に変わる。ある姿が不定形の黒いねばねばした塊 に変わる。ある姿が蟇に似た怪物に変わる。ある姿がありえざるものに変わる。ある姿が大いなる深淵の大帝に変わる。ある姿がバークリイの蟇に変わる。ある姿が千の貌持てる月霊に変わる。ある姿が貪欲無比な眠りの神に変わる。ある姿が超古代のものに変わる。ある姿が忌まわしい雪男に変わる。ある姿が色浅黒い異様な種族に変わる。ある姿が大いなる深淵の白痴の守護者に変わる。ある姿が双面の蝙蝠神に変わる。ある姿が星を踏み歩くものに変わる。ある姿がおぞましき触手の生えた球体に変わる。

 布都の記憶の中。そこに存在していた人間たち。

 しかし、今の布都の記憶には人の形をした存在など何一つ存在していなかった。

 記憶の全てを抜き出し、精査し、視界に入っていたが認識していなかった人間すらも、全てが異形の怪物へと姿を変えていた。

 それどころか、植物や建物すらも正気を疑うような色と形をした触手や視界に入れるだけで深淵に一歩近付いたような吐き気を催す質感へと変貌しており、あらゆる声が気色の悪い音としか認識できなくなっていた。

 

 ……それを確認してから、燃えるように輝く三眼を持つ影は慎重に精神を作り直していく。既に発狂し、けして戻らないようになってしまった布都の精神の表面に、薄く『今までの物部布都』を貼り付ける。

 あらゆる神話生物の情報を無理矢理脳に捩じ込まれた彼女が元通りになることはけして無い。だが、それを元に狂気神話について何も知らなかった頃の彼女を新しく再現するだけならば、他者の記憶や感情を操ることに長けた存在であれば不可能ではない。

 そして作り上げられた人格ならば、それを操ることなど造作もない。

 好きな時に壊し、好きな時に自由に動かし、()すにも手間のかからない、実に便利な人形(おともだち)の完成だ。

 

 燃えるように輝く三眼を持つその影は、納得したように一つ頷く。

 そして、初めからそんな存在なんて無かったかのように、まるで夢幻の如く、その場から音もなく消え去った。

 

 




 
 布都ちゃん、クトゥルフ神話技能100追加。新しいキャラシをさとりんが強制作成。気のいい友達(便利な人形)一つ追加。

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