漆黒の矢   作:392


原作:ゾイド
タグ:ゾイド
 アルトフォルト基地。比較的海岸に近いガイロス帝国戦略空軍の中規模軍事施設にヘリック共和国戦略空軍の爆撃隊が迫っているとの情報が哨戒任務中の偵察機から入った。
 時は夜明け前。目視の難しい夜間に戦闘ができるのは基地に3個小隊しかいない。そのうち1つ、第223小隊は試作品のブースタをテスト中。しかも6機中1機が事故で行動不能だった。


 ゾイドの二次小説です。
 pixivにも同じものを投稿しています。

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 初めまして、こちらでは初投稿となります、392と申します。
 この小説はまだこちらだけの投稿ですが、そのうちPixivにも投稿しようと考えています。
 一人称視点でなく、三人称視点で書いており、台詞を除いて登場人物の感情はあまり描写していないので、読みづらいかもしれませんが、どうかご了承ください。
 執筆中、スカイ・クロラのゲームの実況動画を見ていたこともあり、森作品の特徴的な表現(末尾の長音を省く)を取り入れたので余計に読みづらくなった気がしますが、Pixivに投稿する時は一般的な表記を使おうと思います。アクセントや綴りをきちんと調べていない、猿真似ですし。
 句読点が多いのはクセです。

追記:Pixivにも投稿しました。


漆黒の矢

 新開発の装備というものは、ただ造って終わりではなく実際に使ってみて初めて不具合がわかるということが非常によくある。そのためテストが必要ということはわかるのだが、何も最前線の基地に送り届けてさらに実戦テストを行うのは如何なものだろうか。

 敵機襲来の警報が響く中、ガイロス帝国戦略空軍アルトフォルト基地の司令官アンドレアス・ハルトマン少将は頭の中で深い溜息を吐いた。

「敵航空部隊さらに接近中、目標は本基地またはギプスゴルフ海軍基地と思われます!」

「ギプスゴルフ基地に飛行ゾイドの反応、迎撃のシンカー部隊と思われます。ただ、基地の上空に留まっているもよう」

「第221小隊出撃完了! 第222小隊、滑走路に並べ!」

 ガション、ガション、と足音を鳴らしながら狭い滑走路へ這い出てくる竜の背中をモニター越しに眺めながら、傍らの大佐に視線を投げた。

「では、第223小隊は試験装備のまま出撃ですか?」

「外す時間がない。うちで夜間戦闘ができるのは3個小隊しかいないからな。もちろん、ペイント弾は実弾に替えてあるな?」

「はっ、第223小隊は現在6機中5機が出撃準備完了。5番カタヤイネン曹長機が昼間のトラブルにより出撃不可です」

「またカタヤイネンか……しかたない、第223小隊は5機で敵第3波へ向け出撃せよ。管制官、聞こえたな」

「はっ、第222小隊出撃完了! 第223小隊、滑走路へ並べ!」

 管制官の声に従い、新たに滑走路へ進み出たレドラーの腰には、尾部を挟む形でゾイドの追加兵装としては珍しく、滑らかな流線型のブースタが接続されていた。

「第223小隊より管制室、出撃準備完了」

「管制室了解。出撃せよ!」

 その声に5機全てが両翼のマグネッサシステムを作動させ、バサリ、と翼を羽ばたかせると同時に浮かび上がり、前方斜め上を目指し編隊の形を保ったまま上昇、高度800で編隊が整っているのを確認すると一気に加速、戦域を目指す。

「こちら管制室。そちらに情報部から偵察機が向かっている。できれば戦う前に合流してくれ。あと、上から追加注文。ぜひ新装備での戦闘の感想を聞かせてくれだとさ」

「とんだテストだな、おい!」

 通信から3分後、さっそく1機の見方機がレーダに映り、あっという間に編隊に追いついた。

「こちら第19戦術偵察隊6番機、アオローラ。こちらの仕事は情報収集、武装は自衛用だ。期待はするなよ?」

「そうかい、見物野郎(ワルキューレ)。こっちだってお前が敵に追いかけられてたって、助ける気はないからな。ついでにもう一つ、置いてきぼりを食っても知らないからな!」

 言うなり部下にブースタ使用を指示、機体と同様黒く塗られた追加装備、開発コード「プファイル」の吸気口が解放され、侵入した高速空気流は狭い内部空間により圧縮、吸気口からの衝撃波により亜音速まで減速しつつ燃焼室に送られ燃焼、体積が増大し、燃焼ガスとして排気口から噴出する。

 爆発的……ではないが、通常のレドラーでは出せないマッハ3.3の速度まで加速し、一気に距離を開けた。

「隊長、置いて行っていいんですか?」

「いいんだよ。ちゃんと一度合流してやったんだから。いやな見物客(ワルキューレ)なんぞは遅刻してスタジアムに駆け込むのがお似合いさ」

「なんなんですか? その、ワルキィ、とかいうのは?」

「地球の神話に出てくる死神だよ。戦場に駆け付けるくせに高見の見物を決め込み、魂だけしっかり持って帰るいやな連中さ。おまけに立場は人類の味方と来ている。ちょうどあいつらみたいだからそう読んでんのさ」

 お前も使えよ、新入り。そう笑いかけた隊長だったが、不意に飛び込んだ冷たい声に表情が固まった。

「なるほど、データベースにはない貴重な情報だ。記録させてもらおう」

 すっ、と上空から声とともに先ほどのザバットが高度を落とし、姿を現す。

「そうだった、こいつら改造で高速巡航性能に特化しているんだった……」

「敵探知波感知、逆探知成功。ECM作動開始。アオローラより第223小隊、敵集団確認、情報を送る。では、最適の健闘を」

 それだけ伝えるとザバットは上昇を開始。第223小隊長フランツ=ウルリッヒ・シュナウファ大尉は舌打ちを飛ばすと、部下に散開の指示を飛ばした。

 

 

 

 

 

 惑星Ziの2つの月が照らす夜空を、ゆったりと飛竜の群れが飛んでいく。共和国戦略空軍の爆撃部隊は大きな円盤を背負ったプテラス・レドームを先頭に、プテラス・ボマーが12機、護衛のレイノス6機で構成されていた。

 目的の帝国軍基地まであと少し、両翼を黄色く塗装した空中管制機(プテラス・レドーム)から警告が出たのは敵哨戒機のレーダに捉えられてしばらくたってからだった。

「オウサムクイン3よりレッドキャップ、ブラックティアズ各隊。前方より迎撃部隊(インターセプタ)6、内1機は電子戦機。敵ECMにより現在詳細不明、ECCM実行……くそ、カウンタされた! 速度2,5、いや3。爆撃隊を離脱させての迎撃を推奨する」

「レッドキャップ・リーダ了解。迎撃戦闘に移る」

「ティアズ・リーダ了解。ここを離れ、第4波に合流する」

「オウサムクイン3より4、子供が起きた、サンタをそちらに移す、オーバ」

「4了解。ホテルに送れ、オーバ」

 別行動をとっていた部隊と連絡を取り、変針した爆撃隊(プテラス・ボマー)を置き去りにする勢いで増速する。お互いが戦闘速度だったため、すぐに互いの目視距離へと突入した。

「レッドキャップ・リーダより各機、敵はレドラー5、ザバット1。5と6はペア、他は散開して迎撃に移れ」

「2番機了解! 夜の舞踏会だ、相手を見失うなよ!」

「レドラーの背中に何かある……増加ブースタか?」

「レドラーは火器がないんだろ? 楽勝だぜ」

「アレックス、調子に乗らない。訓練通り、2人で仕留めましょう」

「虫のマーク……223小隊か。気を付けろ、エース部隊だ」

 編隊飛行からの散開、戦闘の流れは手綱から放たれた猟犬の群れを思わせた。それは帝国側も変わらない。

「アーペ、2機向かった、気を付けろ。ナハトファルタ、エンゲージ」

「よっしゃ来い! 新入り、先輩の戦いぶりをよく見とけよ!」

「無理です。ミュッケ、交戦に入ります」

「はっはっは。戦闘中によそ見ができたら一人前だぞ! リベレ、エンゲージ!」

「シュメッターリング、エンゲージ」

 レイノスの3連装ビーム砲を躱し、交差。旋回性能に優れるレイノスがレドラーを追う形になる。

 通常のスペックではレイノスはレドラーに速度と旋回性能で勝り、火器を装備しないレドラーと違って前方に3連装ビーム砲、後方に2基の72mmバルカン砲を持つ。空戦能力はレイノスが上だ。だが、今回のレドラーは後付けのブースタでレイノス以上の速度を持ち、なかなか思う位置に機体を運べない。変化はすぐに起きた。

 スズメガのエンブレムを付けたレドラーが加速し、宙返りをするように上昇、背面に移る直前鋭く横に捻り、向き直る。ハンマヘッド・ターン。

 そのままレイノスに急降下、ぶつかるように交差する。

 シュナウファ機は可変レーザブレードを収納し、ゆるやかに上昇。右翼を失ったレイノスは背部からコアを、コクピットからパイロットを放り出し、地面に吸い込まれていった。

「テディがやられた!」

「4! 前だ! 撃て!」

 あっさりと墜ちた僚機に目を奪われた4番機パイロット、ウィリアム・グレイ少尉に管制機から指示が飛ぶ。慌てて前を見ると敵機との距離が縮まっていた。相手が速度を落としたのだ。反射的に引き金を引くより早く、レドラーのブースタ上部がガバリと開く。エアブレーキは必要以上に大きく、レドラーはその抵抗で上を向き、レイノスに迫る。地球ではプガチョフ・コブラ、あるいは単にコブラと呼ばれる空戦機動だ。本来はエアブレーキではなく、推力偏向ノズルで行うのだが。

 このままでは衝突するため、避ける。すれ違う瞬間、鮮やかなメタリックブルーの蝶のマーキングが目に飛び込んだ。追い越されたレドラーは高度を落としつつ態勢を立て直す。

「……なかなか痛いな。これ」

 蝶(シュメッターリング)のエンブレム、ミンナ・ユーティライネン少尉は全身の痛みに耐え、うめき声を漏らした。超音速から強引に失速寸前まで落としたため、地球人なら意識どころか命を落とすGに襲われたが、惑星Zi人である彼女はなんとか耐え抜く。

 速度が落ち、ブースタは使用不可。それがなくともマッハ3を叩き出すレドラー本来の飛行能力で増速。距離を置いて旋回し、正面から仕掛けるグレイ機の攻撃を回避。速度を上げ機体を宙返り、背面に移った瞬間機体を半回転させ正立。インメルマンターン。

 ブースタが稼働し、レイノスに追いつく。敵の72mmバルカン砲が火を噴くが、横方向には旋回しないため斜め後ろの位置に張り付いてやり過ごし、機銃のスイッチに指を置いた。

「な!? ば、火器だと!?」

 歩兵用の物を改造し、胴体内のスペースに押し込んだ38.1mm機関砲がグレイ機を撃墜する。

 脱出するパイロットには目もくれず、周囲を探る。

 2対1に持ち込まれたアーペ、カルロ・ヴィスコンティ少尉の飛んでいた辺りを見れば機影はなく、3機分のパラシュートが目に入る。相討ちに持ち込まれたらしい。

 リベレ、フリッツ・フランツ・ワイセンベルガ准尉機はブースタを失い、煙を吹いている。損傷を負わせた敵のリーダ機はシュナウファ機と激しいダンスの真っ最中だ。

 最後のミュッケ、ヴィルヘルム・レント機も、損傷らしい損傷もなく敵機と接戦を繰り広げているが、どうも機銃が使えないらしい。所詮正規の改装ではなく、現場での改造であるため装弾数は少なく、精度は悪い。もしかしたら故障しているのかもしれない。それでも蚊(ミュッケ)の名の通りうまく死角に潜り込み、ほぼ無傷な辺りは部隊中最年少とはいえ場数を踏んでいる証だ。

 レイノス、レッドキャップ隊3番機が機体を捻り、レント機のストライククローを蹴り飛ばす。背面のまま後ろを取り、射撃。レドラーは右へ回避し、離脱。

 レイノス、反時計回りに90°回転、追撃。

 レドラー、一度羽ばたいて向きをそのままに高度をわずかに上げ、ビームを回避。

 レイノス、同じく羽ばたき、追撃。

 レドラーは高度を落とし、バレルロール。

 レイノス、オーバシュート。

 レドラー、死角である腹部へ潜り込む。

 振りほどこうとするレイノスの前にユーティライネン機が滑り込む。ひらり、ひらりと機体を振り、挑発。余裕を失っていたレイノスのパイロットはこれに飛びつく。

 右に左に攻撃を躱し、速度をチェック、十分。回避を最小限に真っ直ぐ飛ぶ。敵もそれに釣られる。今。

 射撃スイッチを押し、エアブレーキを大きく展開。速度を落とすだけでなく、ブースタ接続部を中心に縦回転。上下前後に撒かれた機銃弾の1つ2つがレイノスのキャノピィを砕いた。

 レイノスは墜ち、レドラーはさらに2回転、踏ん張る。

「だ、大丈夫ですか!? あんな、無茶な動き!」

「あー……マネは勧めないよ。頭が痛い」

 機体に操縦権を渡し、額に手を当て、目を瞑る。レドラーは警告音の形で抗議の声を上げているが、無視。

「残りの敵は?」

「えっと、今、隊長が墜としました。プテラスは逃げていきます」

「そっか」

 夜明けまで、まだ少し。彼女の愛する青と白の世界まで、あと少し。

「こちらナハトファルタ。本空域での戦闘は終了。敵第4波がギプスゴルフ海軍基地に向かっている。これが本命らしい。すぐこれを叩くよう命令が来た。リベレは基地に帰投、シュメッターリング、ミュッケは俺に続け」

「アーペは?」

「ビーコンが確認された。朝には迎えが来る。御叮嚀に見張り野郎(ワルキューレ)が留まってくれるらしい。当てになるかわからんが、なってほしいものだ」

「親切ですね、偵察隊の人も」

「腹の中じゃ何考えてるかわからん連中だよ。急ぐぞ、朝になれば他の部隊も出撃できる。無理に勝とうとせず、粘ればいい」

「了解」

 1機が基地へ、3機がザバットから送信されたポイントへ向かう。

 第1波を退けた第221小隊と合流した3機は第222小隊を全滅させた敵第2波と当たりこれを撃破。その後シンカー部隊と合流し敵第4波を迎え撃った。

 6個爆撃隊、2個戦闘小隊で編成された第4波を前にシンカー部隊は全滅、第221小隊から1機が損傷のため離脱したがどうにか朝まで持ちこたえ、増援部隊と合わせた数の力で2つの基地はこの日の空襲を凌ぎ、ささやかな戦闘は幕を閉じた。

 

 

 

 

 

追加ブースタ 開発コード「プファイル」

 正体はラムジェットエンジン。マッハ3~5の高速域で効果を発揮するが、マッハ0.5以下の低速域では作動しない。効率が良く、ブースタ等の補助に頼らずに音速を出すレドラーとの相性はよかったが、今回の戦闘でマッハ4以上の速度は機体に大きな負荷が掛かり、期待した速度では機体設計的に本体が持たないことが判明した。

 それでもレイノス、ストームソーダーを超える速度のアドバンテージは大きく、機体設計の改良と本装備の量産が待たれる。

 また、上がり過ぎた速度を落としやすくするためか、このブースタには大きなエアブレーキが設けられている。しかしそれまでの飛行ゾイドの設計にスタビライザはあってもエアブレーキはなく、そのためか展開すると姿勢を崩しあっという間に失速するほどバランスの悪いものになっている。この点は改良が必要だが、パイロットのごく一部にこの失速やバランスの悪さを利用し格闘戦で戦果を挙げる猛者がいたことが記録されている。

 

38.1mm機関砲

 火器のないレドラーのためにアルトフォルト基地のメカニックが装備させた航空機銃。

 元は歩兵の対ゾイド用装備であり、ゾイド用と比べて非力だがコンパクトなため選択された。実体弾であるのは炸裂弾を装填することで対地戦の効果を上げられるからとされるが、レドラーのコアからレーザ、もしくはビーム機銃にエネルギィ回路を接続する技術や作業機械が彼らになかったのが真相らしい。

 装弾数は80発。高質量の徹甲弾を装填することで威力を上げているがその分機体が重くなるため、純粋な格闘戦を得意とするパイロットは装備しない。また、元々火器のないレドラーにFCSはなく、相手をロックオンすることができないため、当てるには努力と経験が必要。




 言いたいことはほぼ前書きで書いてしまいました。
 ゾイドの世界では、ミサイルより機銃や爪での空戦が印象に強いので、ジェット機よりレシプロ機での戦闘をイメージしました。参考元がスカイ・クロラですが。
 スカイ・クロラのゲームはぜひやってみたいのですが、僕の家にWiiがなく、現在実家暮らしなのでテレビに繋ぐゲームができません。
 オリシナの変態機動は小説で表現してみたいけど、無理そうだなぁ……
 後書きがスカイ・クロラだらけになりそうなのでゾイドについて。
 ブースター付きレドラーは農業大学校生だった頃に改造したレドラーが元になってます。ガンダムスローネドライの背中の奴を、基部を削ってレドラーの尻尾にフィットするようにしただけのとても改造と呼べるものではありませんが。しかも現在ブースターが行方不明。
 レイノスは持っておらず、公式ファンブックやゲーム攻略本、ゲーム、アニメなど見た目と速度しか知りません。尾部の機銃はステルスヴァイパーと同型と思ってたのでwikiで確認するまで40mmヘビーマシンガンと書いていたくらいです。しかもこいつミサイル持ってたんですね。格納ならパーツ見えないし、使ってるとこ見たことないけど。
 ザバットは改造途中で数年間放置してるもの。耳のレーダーをカナードに替えてて、あとは爆弾の替わりに腹に抱える戦術偵察ポッドがまだ……。イメージはスーパーシルフです。
 ラムジェットエンジンは「OVA戦闘妖精雪風」という作品で思いついたネタです。
 人物名はエースパイロットが元ネタ。コールサインはナハトファルタが蛾、リベレがトンボ、アーペが蜂です。カタヤイネン機はゴルトケーファ(コガネムシ)。
 本当はザバットがプテラスを墜としたり、なぜ海軍基地が狙われたのかを書いたりしたかったけど、組み込むのが面倒くs……技量不足だったので、そのうちに。
 それでは、また、いずれ。

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