わたしはあと1ヶ月で85歳。
わたしはシワだらけのおばあちゃん。
よぼよぼなおばあちゃん。
85歳の前に旅に出ようと思っているの。
なぜかって?
わたしの旦那さまとの約束なの。
旦那さまはとっくに空のお星さまになってしまったのよ。
旦那さまがお星さまになる前に、わたしと約束をしたの。
「僕はもう空へ旅立ってしまう。僕は、君と最初に旅した場所でまっているよ。そこに、君へのプレゼントがあるからね」
そうわたしに言って、旅立ってしまったの。
だからね、わたしは旅に出ようと思うの。
いつでも良かったのだせれど、いつでもは行けなくなってしなまったの。
わたしの足は、もう動かないの。
今のわたしの足は車椅子。
椅子をクルクル回して、歩いてく。
てくてくはダメでも、クルクルっと歩いてく。
さて、旦那さまの待つ場所へ行きましょう。
旦那さまがもう待ちくたびれてしまう。
そうそう、忘れていたわ。
わたしの名前は、「歩道」と言うの。「ほみち」よ。
おかしな名前を旦那さまが褒めてくれて、それから歩くのが大好きなの。
さてさて、旅を始めましょうか。
クルクル。クルクル。
わたしは足を進めてく。
わたしの足は、車椅子。
クルクル、クルクル、進んで行きます。
車椅子はでこぼこ道はちょっと辛いの。
ガタガタガタガタと体が揺れて、転びそう。
年寄りの体には、足を動かすのは疲れてしまう。
それでも、わたしの旅だから進んで行きます。
挫折は絶対しません。
人生の中で、最後の頑張りなのでしょうから。
わたしと旦那さまの最初に旅した場所は、公園なの。
家から少し離れてますが、歩いて行けてしまいます。
てくてく、てくてく。
わたしと旦那さまは手を繋いで歩いたの。
公園には、桜の花が満開に咲いてました。
ここから旅が始まって、2人でいろんな場所へ行ったのよ。
歩いて行けた道だけど、今はこんなにも遠いわ。
クルクル。クルクル。
休みながらになってしまう。
それでも前へ、進みましょう。
私の旅の終着点。
そこには満開の桜の花。
床はピンク色のカーペット。
きっと、この先に旦那さまは待っているわ。
クルクル。クルクル。
旦那さまとの思い出の場所。
わたしの目の前には、大きな桜の木。
1番大きな桜の木。
始めての旅の記念に、旦那さまと一緒に植えたのよ。
わたしが桜の木を見上げると、ふわっと桜の花びらがわたしを包む。
今、わたしの目の前には愛しい旦那さま。
「やっときたのだね、待っていたよ。さぁ行こう。また2人で旅をしよう。新たな旅さ。大丈夫、一歩を踏み出してごらん」
わたしは旦那さまの手を取り、一歩を踏み出します。
おばあちゃんは車椅子を離れます。
今桜の前を、若い男女が歩いています。