文字通り絵に描いたような、あくまでドラゴンメインの高校生活   作:ぐにょり

30 / 65
このSSで禍の団ジャンヌの出番が来るより先にジャンヌオルタ実装を希望します
そうしないと溺死からの泉の妖精ネタができないので


二十九話 肩透かしの教会

そんな訳で休日である。

朝も早くからの呼び出しではあるが、まぁまだまだ常識的な時間の呼び出しなので問題はない。

逆に、『今夜、影絵の街にて君を待つ』みたいな抽象的な場所時間指定だったりしない分よほど良い。

問題があるとしたら会談場所だろうか。

態々こんなうらぶれた場所での待ち合わせというのは、どうなのだろうか。

 

「ここかぁ」

 

待ち合わせの場所は隣町の小さな教会だった。

別に堕天使のねぐらでも無ければ、はぐれエクソシストの溜まり場でもない。

こじんまりとした教会の前にはアクリル張りの掲示板が立てられている。

町内会のお知らせと並べるように、ミサの日程お知らせの張り紙がされている。

敬虔な信徒が集まる場所、というよりは、地域の寄り合いの場所として使われていると考えたほうが良いのだろう。

 

入り口の前に立つ。

呼び鈴の類は無いようなので、戸を壊れない程度に拳で数回叩く。

戸を叩いた時の音、その反響が、この教会の内部構造を教えてくれる。

普通の、本当に普通の教会だ。

聞いた話ではクリスマスには恋人たちの集いがどうとかで一般開放されたりもしているらしく、怪しげな構造物は一切感知できなかった。

 

「たのもー」

 

再びごんごんと両開きの扉を叩きながら、ご近所迷惑にならない程度の声で呼び掛ける。

数秒待つ。

返事は無し。

鍵や閂の類は掛かっていないようなので、押し開く。

 

空気が変わった。

と言っても、別に結界に囚われたという訳でも、プレッシャーを感じるという訳でもない。

単純に、教会という建築物が持つ外界との遮蔽性が作用しての事だ。

未だ早朝、雀の鳴き声が爽やかに響き、登ったばかりの太陽から地球に垂れ流される眩しい光。

それらが遮断され、機械的な空調を動作させていないらしい教会の中は、夜の間に冷えきった涼やかな空気と静謐さだけが支配している。

かといって、寒くて無音なのかと言えばそうではなく、ステンドグラスから差し込んでいるであろう、少しだけ減衰した光が教会内に適度な明るさを齎し、空気も涼しい程度で寒さを感じる程ではない。

 

いい環境だ。

神が死んだのどうので騒いだり喚いたりしている連中も居るには居るが、そういう連中の事を脇に置いて考えれば、教会という建築方式を生み出したこの宗教には生まれてきた価値がある。

祈った所で碌に届くことは無いだろうが、この並べられた木製の椅子に座り読書に勤しんだり、何をするでもなくぼうっと呆けてみたら快適かもしれない。

 

歩く。

祭壇に掲げられた、十字に磔にされた神の子に向けて歩く。

……若いころに植物を一つ永遠に実がならないような呪いを掛けても、他で善行を積めば祀られたりできるんだよなぁ。

 

「意外と、こう、実利的というか」

 

口にして思い出すのは、何時ぞやの絶望アーシアさん。

方方に献身を繰り返して人々を救ってきた聖女と言っても過言ではない彼女は、神の死を知り、神の愛が存在しないという事実に心を折られた。

なんてことはない。

多くの献身や優しさの根底には、神が愛しているから、神が見ているから、何時か行いが報われるから、というバックボーンがあった。

無私、滅私の献身ではないのだ。

 

正直なところを言えば、あの場で神の死を知らされ絶望したアーシア先輩に、此方は少なくない失望を覚えていた。

有りもしないものを、見えず、感じられずとも有るのだと、心の底から信じられる心の強さ。

此方は、一般的に狂信者と言われる方々のそういう所には憧れてすら居た。

 

だが逆に、失望したが故に親しみを抱きもした。

自分が未だ成し得ていない強い心のあり方を体現する人格者ではなく、歳相応の少女であるという事実は、彼女を身近な人間として見せるには十分だった。

それに信仰を失い、何時か訪れる確実な報いが無いと知った少女の見せる優しさは、真実彼女の心根の優しさを証明する。

アーシア・アルジェントという少女は、神の死を知り、信仰を失い、それが故に真の慈しみを覚えるに至ったのだ。

まぁ、だからといってアーシア先輩と交流が生まれる訳ではないのだが。

だがそれでいい、それがいい。

彼女の慈しみは万人に向けられるものでは無くなった。

それこそ、彼女の中では明確なランク分けが無意識の内に行われているだろう。

それが、人間が本来持ちうる愛なのだ。彼女が悪魔と化していたとしてもそれは変わらない。

 

万人に向けられる愛。

常にあり続ける愛。

そんなものは無と変わらない。

人間が持つべきものではない。

……まぁ、元の教えからして、愛すべき汝の隣人という枠は酷く限定されたものではあった気がするのだが、そこは解釈次第というものだ。

ただ、言える事が一つある。

 

神は死んだ。万人に与えられる救いは無くなり、非業の運命に晒される人の何と多いことか。

だが、だからこそ、そこには人の本質が現れる。

善でも悪でも、ただ純粋に人の中から生まれた輝きが、今、この世界を照らしているのだ。

 

此方()は、神には救われなかった。

此方()を救ったのは、父さんに母さん、そして、それを支える多くの友人や仲間達。

人に救われた。

今、この世界最新の流行は人による人の救済だ。

神に縋るなんてもう古い。

フランダースの犬を見よ。

教会でなく女友達の家にでも行って土下座でもなんでもして一晩泊めて貰えば、それだけでネロは救われたのだ。

この宗教に馴染みの深い海外で作られた実写版映画ですら生存エンドを選んでいる。

 

そして、この世界に居るのは人だけではない。

声なき獣達だけでもない。

悪魔はどうだ。

堕天使はどうだ。

神の元に居た訳ではないだろう。

悪魔を救うのは?

堕天使を救うのは?

 

「神は死んだ。みんな生きていくのに必死だ。だから、そこで力を合わせて生きていこうと努力できるなら、それはとても素晴らしい事だ。愛がある。神の愛が無くても、此方には、愛がある。誰にも彼にも愛はある」

 

悪魔も堕天使も天使も妖怪も忍者も宇宙人も関係なく、愛は誰もが持つ。

仮に世界に未だ全能の神とやらが居たとして、それが全てを救い、正しき行いに正しき報いと救いを与えたとして、人と人はここまで愛で繋がれただろうか。

堕天使と人のハーフが居るという。

悪魔と人のハーフが居るという。

聖と魔の交じり合いは正常な世界ではありえないという。

世界に神の愛があれば、異なる者共が交じり合う愛も繋ぎ合う愛も無く、世界は正常に回っていたという。

 

なんと寒々しい、なんと理路整然として、なんとつまらない、なんと単調で浅はかな世界だろうか。

今の、この素晴らしい世界とは大違いだ。

だから、言える。

不用意に目を開ければ目を潰したくなるような、そんな形でしか世界を見れない此方ですら言える真理だ。

 

「神は死んだ。故に、世界は真に愛で包まれたのだ」

 

くるり、と、祭壇の前で振り返る。

そこに気配があった。

威圧するでなく、人を包み込むが如き寛容のオーラを纏う気配だ。

眩く輝く何かが舞い、瞼越しに光を目に叩きつけてくる。

輝く人。

土塊から作られた人でなく、火から作られた存在があった。

 

「……それもまた、信仰。貴方の中の信仰なのですね」

 

「ええ、これが、此方の信じる世界の理です。初めまして、もう死んだ誰かに似た者、剣と秤を持つ者、天使の王子、大天使ミカエルさん?」

 

にこり、と、テンプレートとして教科書に載せられるレベルの笑み。

自らの肉体を完全に制御下に置くのは忍者の必須スキル、最高で最適な表情を常に創りだすこの機能はあらゆる行動を補助する事ができる。

懐から手紙を、招待状を取り出す。

 

「今日はご招待いただき誠にありがとうございます。それで、ご用向きの方はこちらで?」

 

―――――――――――――――――――

 

無人の教会内部を、ミカエルさんの先導で歩く。

木造の床板が僅かに上げる軋みは、人間換算で二人分か。

少なくとも実体はあるらしい。

気配を探っても、肉体と魂にズレがなく、どちらもミカエル本人のものである事がわかる。

……やっぱり、依代となる人間に憑依しなくとも下界での活動に支障はないらしい。

割とミーハー心から招待に応じたところもあるだけに、こういう些細な情報も面白く感じる。

 

辿り着いたのは小さな部屋、教会の関係者の詰所、事務所のような場所か。

事務机にストーブ、僅かに残り香の漂うコーヒーメーカーに小さな冷蔵庫と生活感丸出し。

神聖さの欠片もない場所だが、ここは何らかの神聖な力で隔離されているようだ。

人の気配が無いのは早朝だから人が居ないというだけでなく、この力によるところもあるのだろう。

 

「どうぞ」

 

ソファに座り、テーブルクロスの上に茶菓子が乗せられた小さなテーブルの上に、今回の話の種を置く。

窓から差し込む朝の日差しに照らされ輝く大天使の剣だ。

 

「では」

 

受け取り、しげしげと眺めるミカエルさん。

古物商の如き視線で短い剣を観察していたミカエルさんの気配は、徐々に真剣なものに変わっていく。

 

「なるほど、確かに、これは……」

 

「貴方のものでしょう? 覚えはないでしょうが」

 

「何処でこれを?」

 

「それは、秘密です」

 

指を立て、笑顔で追求を断ち切る。

此方が描いた、なんて言ったら、面倒な事になりそうだし。

……こうして最初から一線を引いた状態での交流を予め行っておく事で、相手側が一線を超えた時に畳んで片付ける正当性を得る事ができる、かもしれない。

だが、まぁ、一言二言付け加えておく位はいいか。

 

「その剣は貴方のものです。ですが、神は生きている間に貴方にそれを、あなた達大天使達にそれを渡さなかった。その意味は、考えておくのもいいかもしれませんけどね」

 

そもそも神様こんなもん持ってなかっただろうけど。

というか先日作ったばっかでそんな意味が含まれてるわけも無いけど。

 

「……その言葉、受け取っておきましょう」

 

す、と、ミカエルさんが大天使の剣をテーブルに置こうとしたのを手で制する。

 

「それは、貴方のものですよ」

 

「ですが……。いえ、そう、ですね」

 

そのままローブの中に大天使の剣を仕舞うミカエルさん。

追求されそうな物は先に相手に渡しておく方が干渉が少なくなって良い。

そして、あちらにとっては亡き神の忘れ形見の様な剣を譲り受けたという事で多少の貸しにできる。

面倒な繋がりに成り得るだろうが、今更だ。

 

「……しかし、こうなると何かお返しをしなければなりませんか」

 

思案するミカエルさんの声。

その声を聞きながら、極自然に、なんでもない風に瞼を開く。

 

「いえ、今は天界もそれほど余裕があるわけではないでしょう。お気持ちだけで十分ですよ。それでなければ、そうですね……」

 

僅かに視線を逸らしながら思案するふりをして、対面に座るごちゃっとした文字列の内容を確認する。

目の前に対象が居て、此方が読むという意志の元にその内容を視界に入れたなら、文量も文字の位置も余り関係ない。

視界に偶然収まった時とも、文字列の塊であると認識して眺める時とも違う。

この世界とは異なる時間法則を用いて、此方はその内容を数秒の内に完全に確認し終える事ができる。

肉体の、魂の組成、積み上げてきた歴史、習得した技術、思考形態、人格傾向、記憶、知識。

その全てが丸裸になり……。

 

「……そうですね、貸し一つ、と覚えておくか、そうでなければ情報か」

 

瞼を閉じる。

会話を分割した思考の一つに任せ、読了したミカエルさんの文章を解析していた幾つかの思考が落胆した。

あるか無いかで言えばどうせ無いだろうと思いつつ、心の何処かで多少の希望を持っていたのかもしれない。

全知全能の神に最も近い位置に居たと思しき大天使なら何か知っているかもしれないと思ったが、そう上手くは行かないようだ。

全知全能本神であれば何かわかったかもしれないが、今は死んでしまっている以上どうしようもない。

まぁ、ダメ元で確認しにきただけだから、そこまでダメージも無い。

 

「情報?」

 

「そう、情報。どこそこに凶悪犯罪組織がありますよ、とか、テロリストが襲撃してくる可能性がありますよ、とか、そんなんでいいです」

 

知りたかった情報は間違いなく天界には無い。

なら次に欲しい情報を貰えるようにしておくのも悪く無い。

 

「余り無益な殺生は推奨したくないのですが」

 

「殺すと決まった訳ではありません。見てから決めるから安心して下さい。まあ、返事は後々でも構いませんよ。ここで即答したら逆に天使っぽく無いですしね」

 

まぁ、メガテン的な天使程過激でないのは今読み終えて理解できたし、ここで天界に都合の悪い勢力を犯罪組織と偽って情報を流すという事も無いだろう。

というか、そうで無ければこの提案もしなかったし。

場合によってはそういう選択ができるけど、損得を計算して此方には仕掛けてこないと見越しての提案なのだ。

 

「不躾ですが、返事をする前に、一つお聞かせ願えますか」

 

顔を上げたミカエルさんの声色は真剣なもの。

 

「内容によりますが」

 

「何故、貴方は殺すのですか」

 

ZENMONDOU的な問いだ。

糾弾するでもなく詰問するでもなく、静かな声色のそれは純粋な疑問であるとわかる。

 

「貴方は殺しすぎる。人間にしては異常な戦闘力は良い、貴方は忍者だ。しかし動機がない。正義感で殺しているようにも、快楽を感じている訳でもないのでしょう」

 

「それは誤解です。此方にも多少の正義感はあるし、暴力に悦びがないと言えば嘘になる」

 

「ですがそれが全てではない。それで全てとするには、君の殺しは執拗過ぎる。もはや殺しでなく破壊と言ってもいい。何故貴方は壊すのですか」

 

冷たくも強くもない。

ただただ疑問に思っている。

包容力すら感じる天使のオーラで隠し切れない、機械的な問いだ。

世界を回すための歯車に刻まれた正しい機能の現れなのだろう。

詰め込まれた方向性、積み重ねて形成した人格でも隠し切れない程の芯の部分。

出したい面ではないのだろう。彼の人格はそういう面を望んでいない。

だが出している。

 

何故か。

世界を回すためだ。

何故だ。

そうあれかし、と願った誰かが居たのだ。

今は居なくともかつて居た誰かが彼に望んだから、この問いは発せられたのだ。

強制力ではない。彼が望まれた役目を果たしたいと思ったからだ。

 

ただ一つの大いなる愛だけが包んでいた世界を愛していた者が居て。

その遺志を忘れていないから、彼はその機能を真っ当しているのだ。

 

「ああ……そうですね、何故か、と、問われたのは、久しぶりですが」

 

嫌いではない。

彼が邪魔になる日も来るかもしれない、そう思いつつ、彼のその在り方が好ましくも思える。

だから、懺悔ではないが、教えておくのも悪く無いかもしれない。

 

―――――――――――――――――――

 

少しだけ時間が過ぎ、昼の少し前。

心なしか気持ちが軽くなっているのは、普段誰に言うでもない事を誰かに言ったからだろうか。

別に秘密にしている訳でもないが、改めて聞かれる事もない様な事なのであまり話す機会が無かったのだ。

こうして考えると懺悔室というシステムは案外効果的なのかもしれないが、名称は悪いように思えてくる。

まず懺悔という言葉自体が重い。チラシの裏とか、ロバの耳と叫ぶ用のツボとか、そんな軽くて使いやすいネーミングに変える改革の時期が来ているのかもしれない。

 

「おーい!」

 

下らない事を考えながら家路に就いていると、駒王町に入って少しした辺りで覚えの有る声に呼び止められた。

オカ研の中では塔城さんの次、ゼノヴィアさんと並んで此方に対する警戒心が薄い兵藤先輩だ。

心なしか声が疲弊しているように思えるのは同棲している美少女二人と毎晩お楽しみだから……という訳ではないだろう。

先ほど見た記述の内容を鑑みるに、神社で聖剣を受け取った時に一悶着あったのかもしれない。

更に言えば、その神社の管理を任されている姫島先輩(姫神先輩だったかもしれない。どっちでもいいけど間違えると失礼なので後で塔城さんにメールで聞いてみよう)に迫られて、その場面をグレモリー先輩に見咎められて怒らせてしまったのかもしれない。

普通の人生送ってたところで堕天使に殺されて龍適正のある肉体に作り変えられて悪魔になってと波乱万丈な人生を送っておいて、彼は中々に真っ当な青春を送っていると思う。

 

「おはようございます、兵藤先輩。朝のトレーニング……という訳でも無さそうですね。何か事件でも?」

 

少し近所迷惑でないかと心配する程の声量でかけられた声の振動から考えて、今の彼はトレーニング用のジャージを装着していない。

意識を彼の走ってきた元の位置に向けてみれば、同じくジャージではない服装のグレモリー先輩が複雑な表情ゆっくりと此方に歩いてきている。

 

「いや、事件は……無いと言えば嘘になるけど、そっちは今は良いんだ。重要なことじゃない」

 

こいつ口から霧を……!

と、内心でボケてから、改めて考える。

兵藤先輩は以前に書き込んだ【読手書主という人間への警戒心が薄い】という追記のおかげで此方に対して気軽に接してくる。

が、それは警戒していないというだけであって、深い友好関係にあるという訳でもない。

悪魔関係の話もできると言えばできるが、彼の生活はそれだけで構成されている訳ではない。

親密度で言えば噂の三馬鹿だか三変態だかの他二人とか、言うまでもなくオカ研のメンバーの方が圧倒的に高い。

言ってしまえば知り合い以上友人以下、或いは友人未満程度の仲でしか無い。

街ですれ違えば挨拶くらいはするだろうが、遠くに見つけたからといって駆け寄り挨拶をする程ではないのだ。

 

「お前さ、魔眼の制御法とか知ってるか?」

 

「魔眼とな」

 

気になるワードだ。

力の宿った左腕とかに並び、実に厨二度の高いワードである。

言ってしまえば悪魔とか妖怪とかドラゴンよりも十四歳にとって魅力的なワードだろう。

正直な話、個人的にも忍者的にもドラゴンよりも魔眼や邪眼や浄眼の方が因縁深い。

 

「ちょっとイッセー、その子に話す気?」

 

ゆっくりと歩いて追いついてきたグレモリーさんの不機嫌そうな声に、兵藤先輩が慌てて反論した。

 

「いや部長、割と目がある話なんですよ。俺の神器も前から知ってましたし、木場のエクスカリバーだってこいつの上げたアイテムが原因でしょ? 小猫ちゃんに魔術を教えたのだってこいつなんだし、何か手がかりとか持ってるかも」

 

「だからって、安易に外部の人間に頼るのはやめなさい。あの子の人見知りは十分理解したでしょう」

 

「そこら辺も徐々に慣らしていくんだから丁度いいじゃないですか。なぁ、どうなんだ? 別に一発で制御できるようにとかそういう話じゃなくてさ、聞いたことがある修行法とかでもいいんだよ」

 

「無いなら無いって言って良いのよ。これは私達の問題だし、散々世話になった部外者のあなたに更に無理を言うのは不義理だしね」

 

なんだこいつらの息のあった不仲……たまげたなぁ。

こういうやつらがまだ結婚してないのが不思議でしょうがない。はよ結婚しろ。あ、年齢的に無理なのか。

で、魔眼の制御法か。

実際、説明不足過ぎてどういうものなのかはわからない。

脳に原因がある『見えたものを認識する段階で発動する魔眼』と、眼球や視神経に原因がある『見るという行為だけで発動する魔眼』、更にこの世界特有の『神器の能力としての魔眼』の三つで大まかに分けられるとは思うのだが。

思うのだが……、本人に制御を学ばせるのでないなら幾らでも対処法はある。

 

「確実ではないけど、視覚を起点にして発動する能力なら高確率で対処できる器具はありますよ。外付けの制御装置みたいなものだからノーリスクですし」

 

「マジでか!?」

 

「大マジです。今は手元に無いから、試すにしても明日以降になると思いますが」

 

作るなら、家に帰って自室で作る方が気が休まる。

唯でさえ縋った藁が本気で役に立たない藁で、見てわからないだけで少し落ち込んではいるのだ。

帰って母さんの作った昼飯食べて、日影さんと一緒に午後の午睡を楽しんで心を癒やして、魔眼殺しを作るのはそれからになるだろう。

 

「……これまで、色々出鱈目をしてきた貴方を今更疑うのもあれだけど、本当にどうにかできるものなの? その、少なくとも、一人はそれで駄目だった例があるんでしょう?」

 

やや躊躇いがちに、此方の策に懐疑的であると告げるグレモリー先輩。

なるほど、確かに。

此方が用意するものの中で、『視覚に関する能力を制御するアーティファクト』なんて、信用出来ないにも程があるだろう。

これまでに木場先輩に渡した鞘だの、塔城さんに教えた魔法だのが無ければもっと直接的に疑われていただろう事は想像に難くない。

 

「そうですね。大体の場合は対処できても、どうしたって例外はあります。でも、まぁ、その時は、話くらいは聞きます。人見知りに関しても対処はどうとでもなりますから」

 

「親切なのね。……一応言っておくけど、問題を抱えているのは、貴方の知らない相手よ?」

 

「そうですか。で、それが何か問題?」

 

「……いいえ。まぁ、期待はしておくわ。対価も、可能な限り用意する」

 

「そこまで気を使わなくても」

 

「メンツ、ってものがあるのよ。悪魔にもね」

 

じゃ、と、後ろ手に手を振り去っていくグレモリー先輩。

それに対し、此方に忙しなく別れの挨拶を済ませて付いて行く兵藤先輩。

 

「知らない相手、ね」

 

まぁ、知らない相手だろう。

少なくとも此方が見たオカ研の連中の中に制御出来ないレベルの魔眼を持つ悪魔は居なかった。

初対面ではある筈だ。

だが。

 

「知らないわけがあるか」

 

見知らぬ、会ったことがない相手だろう。

何かを通して話した事が有るわけでもないだろう。

だけど、知らない訳がないのだ。

その苦しみは知っている。

少なくとも、同類相憐れむ事ができる程度には。

 

 

 

 




最近ずっと出ずっぱりだったヒロイン不在で華やかさ激減
大きいメインどころか小さいサブすら居ない
悲しい
しかも話が進むわけでもないけど、こういう話も全体を進めるには必要なのです

★ミカエルさん
元から肉があるのでディーンの肉体は要らない
穏やかそうで暖かそうだけど、全体を考えて非常な思考も行動も可能
神は死んだし苦労もしてるけど頑張ってます
大天使の剣をほぼ無償で提供され戸惑う
主人公のアバレについてははぐれ悪魔相手にした時とか堕天使相手にした時とかのを知っているが、朝の知人の写しを使ってのアバレは知らない。違いは結界の有無
教会行ってから神社に行く神性ハシゴ

★欲しい情報
世界が文字に見えるとか、それをいじって色々できるとか
一応言っておくと神を読んでもこの件に関しては情報無し
ざぁんねんでしたぁ(ねっちょり)

★異なる時間法則
この世界(本の中)の時間法則でなく、外の世界(読者側)の時間法則
一冊の本の中で何万年時間が経過しても読む側にとってはそれほど時間がかからないって話
これの応用で戦闘速度に関しては一切気にしなくて良くなる

★魔眼の制御
主人公は眼に関する異能で苦労している相手には甘めになるって話
対価とか面倒になりそうとか考えずに魔眼殺しを提供するレベルで甘い
でも敵に居たら殺すんじゃないですかね

★兵藤先輩
読えもん! 魔眼制御する方法とエロいアイテム出してよ!
主人公に対して恐れを知らないのでまれにのび太る
エロいアイテムは出さない

★グレモリー先輩
魔眼制御できるならなんで目を閉じてるの
……って聞くのは流石にデリカシーに欠けるかしら……
本人もそれで苦労してるでしょうし、普段のおちゃらけた態度だけで判断したら不味いわよね……
という思考を巡らせたが結局殆どそのまんま言った。不器用
主人公の能力には一定の評価をしているけど、最近借りを作りすぎじゃないかと不安

★小猫さん
不在、家で暢気にトーストかじってる
たぶんTシャツに半ズボンとかラフな格好だと考えると可愛い

★日影さん
お留守番、朝食食べて運動して余裕の二度寝
午後? 主人公と一緒にまた寝ます
寝溜めとかできるかも


時系列的に神社でのアスカロン入手イベントに近いけど出てない人が居ますが無害です

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。