文字通り絵に描いたような、あくまでドラゴンメインの高校生活   作:ぐにょり

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三十話 魔眼とメガネと、時々女装

放課後、一人旧校舎へ続く道を歩く。

いつも通りの放課後、いつも通りの部活動の時間がやってきた。

最近はなんだかんだで部室に遊びに来る読手さんと一緒の時が多いけれど、彼が道同しないのなら、部で学校に通う唯一の一年である私の部室への移動風景はこんなもの。

頻度で言えばむしろこの少し寂しげな時間の方が多いかもしれない。

 

こうして歩いていて思うのだけど、彼は友人の数こそ少ない(私が言えた義理じゃあないけれど)が、友人に対しては割と口数が多い方だ。

なんでだろう、と考え、彼の母親の顔が浮かび、恋人の顔が浮かんだ。

理屈っぽい母親に、無口でマイペースな恋人。

なるほど、考えてみれば口数は自然と多くなりそうだ。遺伝的にも環境的にも。

 

そんな事も考えながら新校舎から出て、雑草の生えた土の地面を歩き、怪しげな雰囲気を発しつつも新築同然の綺麗さを保つ旧校舎に入る。

夏のじっとりとした暑さも相まって、旧校舎の薄暗い雰囲気は往年の怪談映画を思い出させる。

まぁ、私だって元を正せば怪談で語られる方なのだけど。

実際、旧校舎の一室を根城にする悪魔の一団なんて、怪談を通り越して有りがちな現代バトルファンタジーに出てきそうではある。

中途半端に家電やシャワーで近代化してあるところもそれっぽい。

 

だけど、あえて現状一番近代化っぽさというか、有りがちな要素を抜き出すとしたら、やはり冷蔵庫を推させて貰いたい。

冷蔵庫それ自体は、応用次第で普通にホラー演出にだって使える代物だ。

でも、その冷蔵庫の中にホラー要素を遥か彼方に置き去りにした普通の中身を詰め込む事で解りやすく俗っぽさを演出できる。

そう、例えばこの間スーパーで買った保存料バリバリのスイーツとか。

 

今日の部活はこのスイーツを食べてから始めたいなと思う。

どうせ、近々行われる会合を警戒していつも通りの悪魔活動なんてできやしない。

ここは半ばプライベートに入っているものと考えて、よりリラックスしたオカ研タイムを楽しむのがベスト。

 

「お疲れ様、で、す……?」

 

静かにオカ研の入り口を開け、視界に飛び込んだ映像を理解しきれず、思考が鈍化する。

深呼吸。

視界の端に映るその他諸々を除外することで乱れた思考を整頓。

もう一度、目の前の光景を頭の中で咀嚼する。

 

金髪ショートの女の子にしか見えない男子──ギャーくんの顎を、真剣な表情の読手さんが掴んで、上を向かせて、顔を覗き込んでいる。

心なしかギャーくんの頬が紅く染まっていて、真剣な表情で顔を覗き込んでいる読手さんに向けられた視線は何処か期待を孕み、薄っすらと潤んでいた。

 

「どう、ですか」

 

ギャーくんの不安げな声。

どうって、何が。

 

「安心して。それほど難しいことじゃない」

 

難易度(意味深)とは。

リードするから、みたいな……?

いや、考えている場合じゃない。

状況はよくわからないけど、たぶんいろいろなものの危険が危い(あぶい)……!

 

「そこまでです。グッドルッキングなニンジャと吸血鬼の顔が近いなんて、世が許しても日影さんが許しませんよ……!」

 

たぶん許さないと思う。

許さないでいて欲しいなぁと思う。

…………でもニンジャだし、任務の為に同性同士の耐性とかもつけてる可能性も……。

 

「……許しませんよね?」

 

「聞いちゃったよこの子……」

 

「むしろ誰に聞いてるのかしら」

 

「当事者に聞いてるとしたら、かなりシュールな状態ですね」

 

たぶん視界の端で意識の外に弾かれていたイッセー先輩と部長と祐斗先輩が何か言っている。

でもリアクションはできない。

何故って、今この時点でいっぱいいっぱいだからだ。内容は後で思い返して吟味しておこうと思う。

 

「そうですね……。たぶん、日影さんならそれくらい許してくれますよ」

 

「そんにゃぁ……」

 

少し予想しつつも外れて欲しかった答えを聞き、膝から崩折れる。

望みが絶たれた。

女じゃなくて男なら浮気じゃない的な抜け道的思考なのだろうか。

しかも日影さん相手じゃなくて読手さん相手だから、

 

《ギャーくん→日影さん←読手さん》

ではなく、

《ギャーくん←読手さん》

《読手さん←ギャーくん》

《日影さん←読手さん←ギャーくん》

みたいな背徳感溢れる組み合わせになってしまうのか。

それはあんまりじゃないかと思う。

 

と、ここで、既に瞼を閉じた読手さんがギャーくんの顎から手を離して距離を取っている事に気が付く。

読手さんも別に邪魔されたから手を離したとかそういうのではなく、もう用事は終わったとばかりの態度だ。

……一方のギャーくんの顔が何処か不安と期待に満ちている辺り、未だ怪しくはあるのだけど。

 

「……で、どういう状況なんですか、これ」

 

誰でもいいから説明して欲しい。

そう思っていると、ほぼ毎日見ている筈なのになぜだか記憶から薄れ気味の副部長がここぞとばかりに前に出て説明を始めてくれた。

 

妙に長く身振り手振りの加えられた画面的に動きのある副部長の説明を要約するとつまり、ギャーくんの暴走気味の神器を、読手さんの持つ手段で制御できるかどうかを、実物と本人を見て確認していたらしい。

はっきり言って猥褻は一切ない。

顔が近いからって猥褻な考えを浮かべる輩も居るらしいけど、とんでもない話だ。

 

「信じてました」

 

胸元でぐっと拳を握って断言。

無償で困っている悪魔を助けようと態々急いで部室に駆けつける読手さんはニンジャの鑑。

さすよみです。マジリスペクト。

 

「本当に信じていた人は態々『信じてた』なんて言葉にする事は無いんですよねぇ……」

 

何故か読手さんが瞼を閉じたままジト目っぽい表情をしているけれど、視線が無いからきっと気のせいですね。

それにほら、私は妖怪から悪魔になったので普通の人とは違うので、そういうこともありうるのです。

いやでも、なんというか、凄く安心した。

……いや、変な意味ではなくて、そういう事があったら恋人の日影さんが可哀想だなーっていう話ですよ?

 

「はいはい、コントはそこまでにしておいてね。……それで、どう?」

 

「……そうですね、最初に立てた努力目標は直ぐにクリアできる、ってくらいですか」

 

「努力目標?」

 

「暴走を防ぐ、というか、発動を防ぐとこまでですかね。できれば完全制御まで持って行きたかったんですが……そこまで行くと、一種の人体改造になっちゃいますから」

 

逆に、制御不可能で部屋ごと封印しておくしかなかったギャーくんの神器の発動を肉体に手を入れれば制御可能にできるって言ってますよね。

十分凄いじゃないですか、と、言おうとして言葉を止める。

軽めの口調に対して、読手さんの表情は少しだけ暗く重い。

読手さんは鞄から三つの包みを取り出した。

 

「これと、これが、魔眼殺しの眼鏡。こっちは魔眼殺しのコンタクトレンズ。どっちも付けてる間は余程意識を集中しない限りはその眼の神器は発動できない」

 

「……つまり、神器を封じれる程の力があるのよね」

 

「元は歴史のあるアーティファクトらしいですよ。まぁ、此方が持っているのは加工後のこれらだけですから元の素材に関しては詳しくないですが」

 

「十分よ。対価は……どうする? 小猫が欲しいなら、交渉くらいはさせてあげるけど」

 

「んぐっ」

 

シリアスな場面での部長のいきなりの言葉に、口の中の唾と空気が逆流してむせた。

何言ってるんですかこの純情ロマンチカは。

 

「必要だと思ったら、契約無しでお話しますよ」

 

「それもそうね」

 

「ごっふぉっ!」

 

呼吸を整えていたら更に別方向から不意打ちを食らい咳き込んでしまった。

何、何ですか、部長と読手さんで示し合わせて私をはめてるんですか。

隙を生じぬ二段構えの口撃によってすっかり呼吸を狂わされた私がどうにか息を整えようとしていると、ギャーくんが読手さんに近付いて、部長とのやりとりで少し明るさを取り戻した読手さんを見上げて口を開いた。

 

「あ、あの、ありがとうございます! これで、安心して外に出られるんですよね!」

 

「まぁ、そうは言っても兵藤先輩が協力してくれてる時点で、外に出られる日は近かったしね。此方のしたことはちょっとしたお節介だから」

 

「でも! 本当に、嬉しいんです。これで、練習の時に迷惑をかけることもなくなるし、その、書主さんがくれたものだから……」

 

後半のセリフをもにょもにょと口の中で濁らせながら、頬を染めるギャーくん。

ん? あれ?

 

「大したものじゃない、とは言わないけど、それでギャスパーの悩みが軽くなるなら安いもんだよ」

 

言いながら、ギャーくんの金糸の髪を優しげな手つきで撫で付ける読手さん。

ん、んん?

なんだろう、なんだか、なんだか、こう。

いいんですか日影さん。この場面を見てるかどうかはわからないけど日影さん!

 

「に、似合いますか?」

 

「うん、ちょっと知的に見えていいと思う」

 

「え、えへ、えへへ……」

 

嬉しそうに、だらしない笑顔を浮かべるギャーくん。

決して猥褻も無い筈の光景に、私は何故か焦燥に駆られて仕方がないのでした……。

 

―――――――――――――――――――

 

善行を積んだ後は気持ちがいい。

特に、似たような悩みを持ち、それでいてどこかに八つ当たりするでもなく内罰的に閉じこもっていた子を助ける事ができた。

なんとも心地の良い話ではないか。

かの赤法師は無事に治った患者を見て『何故自分だけ治らないのか』と憤りを感じていたようではあるが、やはり、共感できる相手の幸福を喜べないのは嘘だろう。

自分が上手く行かなくて、自分以外の誰かが上手く行って。

それで、その誰かの成功を素直に祝福してあげられるなら、それはとても良い生き方だと思うのだ。

 

「とりあえず、この件は一先ずは解決という事で」

 

「そうね、試してみた感じじゃあ、外部から神器に対して直接強い干渉が行われない限りは問題ないみたいだし……」

 

と、考えこむ様に黙りこむグレモリー先輩。

が、どうせ碌な事を考えている訳でもないだろうからこれは放置でいい。

 

「それじゃあ、使う方の制御に関しては引き続き兵藤先輩が行って下さいね」

 

「え、いや、でも、いいのか? 魔眼とかに詳しいお前がやった方が」

 

「そりゃ、此方も手伝ってあげたいって気持ちはありますけどね。生憎と、此方が知る限りの地道な制御訓練だと、兵藤先輩が行ってる訓練とさして変わらないんですよ。それなら、眷属仲間としての絆を深める意味でも先輩がやった方がいいでしょう?」

 

実際問題、あの魔眼殺しの眼鏡(おしゃれバージョンと地味太フレームバージョン)とコンタクトを渡した時点で、此方の善意の範囲内で出来る協力は完了してしまっている。

神器の名前を事前に聞いておいたお陰で機能を限定した制御技術習熟速度上昇になりそうな記述はかなりの確率で正常に稼働する筈だ。

最初こそ、任意での発動にこれまでの何倍も気力が必要になるかもしれないが、そこを乗り越えれば後は完全制御までは時間の問題と言っても良い。

追加した記述はあの神器を持ったギャスパー相手に限定しているから、あの魔眼殺しが習熟速度を上げた原因であると特定する事は理屈の上では不可能の筈だ。

追求されてもしらを切り通せる。

 

「……読手君、やっぱり、一度話を通すべきだと思うわ」

 

「はい?」

 

案の定、どうしようもない事を考えていたらしいグレモリー先輩が真剣な声色で話を切り出してきた。

 

「この間の聖剣もそうだけど、それに加えて制御不能だった神器をほぼ完全に封じる事が出来るアーティファクト……。そうでなくても、コカビエルを殺害した人間だなんて、あらゆる勢力からちょっかいを出される可能性があるわ」

 

「はぁ、まぁ、言いたいことはわかりますがね」

 

気のない返事をしてはいるが、少なくともこの時点でグレモリー先輩の内心には打算を大きく上回る純粋な此方の身を案じる気持ちがあること位は解る。

普通に考えて、このトラブル続きの駒王学園での学生生活数ヶ月で起きた諸々の出来事は、何処かの組織に捕捉されてしまえば目をつけられること請け合いだ。

……ここで、『貴方方が此方の存在に関して完璧に口を噤んでいてくれればこうはなりませんでしたよね』と言うのは意味が無い。

教会で堕天使とはぐれエクソシストを使って気分よく遊んだ時も特に口止めをしなかったのは此方も同じだ。

だが、考えて欲しい。

 

「……此方、この『力』……と言って良いのか、『これ』と付き合ってもう十数年になる訳ですが。例えば、はぐれ悪魔を相手にし始めたのは数年前からでして」

 

「そうね、これまで正確に捕捉できなかったのは、流石の隠蔽能力だと思うわ。でも、ここ最近のは規模が違う」

 

瞼の下の目を指さしながらの此方の言葉に首を振る先輩。

まぁ、解る。

野良の悪魔を殺すのと、たとえ救いようのない逆噴射式期待外れ羽虫であったとしても、組織の中では割と偉い立場に居たらしい馬鹿を殺したとなれば話は違ってくる。

 

が、グレモリー先輩は一つ思い違いをしている。

此方が、習得した忍術や魔術だけで殺害の痕跡や足跡を消し続けていたと思っているのであれば、それは買いかぶりだ。

派手にやり過ぎた場合、此方の処理能力を超える場合もある。

まして、この世に産まれ堕ちて十数年、親に様々な迷惑をかけつつもしっかりと話し合いを重ねてきた此方なのだ。

一体何故、此方の後ろに何らかの組織的バックアップ(・・・・・・・・・・・・・)が無いと思えるのだろう。

もしかして、社交性が無くて反社会的な行動しかできない輩だとでも思われているのだろうか。

 

だとすれば悲しい。

此方も、苦手なりに友人を作る努力は日々怠っていないのだ。

もうこの部室の中でメアドを交換していないのはグレモリー先輩と姫島先輩だけだというのに、何故この不器用なりに社交性を得ようとする努力が理解されないのか。

 

「んー、そういう事でもない、んですが……」

 

が、残念な事に此方もその組織に表立って力を貸してもらっている訳ではないのだ。

その組織にも表向きの世界での立場というものがあり、此方の持ち込む裏側の問題を処理できるという事実を迂闊に外に漏らす訳にもいかない。

あくまでも、親の……父のツテを頼って力を貸してもらっているだけで、まだ正式に卒業後の就職先として決っている訳でもない。

そして何より、此方にはスネオの如き親の七光りを自慢する時用のBGMが存在しない……。

バックアップしてくれる組織があるから大丈夫、と、この場で公言するわけにはいかないのが現状という事になる。

 

「別に、眷属になれとも悪魔に与しろとも言わない。でも、これからもある程度平穏に生きて行こうと思うなら、何処かでハッキリと貴方の立場を表明しておくべきだわ。これは、あくまでも小猫の保護者として、小猫の友人の身を案じての話だと思って頂戴」

 

「部長……」

 

塔城さんが僅かに感嘆の声を上げた。

普段はグレ森先輩に対して、自分の尻尾を追いかけてぐるぐる回り続けるコーギーを見るような感情ばかり向けている塔城さんが感激して思わず尊敬の感情を向けてしまう程度には、今のグレモリー先輩の発言は真っ当なものだ。

さて、では、此方はどう返すか、と、そんな思考を遮る様に肩を叩かれた。

 

「もしも、君に不都合になりそうな話の流れになったら、僕達もできうる限りのフォローはするつもりだよ。……君には、随分と助けられたからね」

 

肩を叩いてきたのは木場先輩だった。

少し意外だと思う。鞘のお陰でパワーアップはしただろうけど、そこまで此方に肩入れするような出来事だったろうか。

 

「俺も! ……って言っても、そういう場で俺に発言権とかあるかわからないけど、出来る限りの事はする。何だかんだで、結構な付き合いになるしな」

 

「言うほど長く無いと思うんですが」

 

「長さだけで言えばグレモリー眷属の仲間と同じくらいだぜ?」

 

木場先輩の言葉にのっかる形で、兵藤先輩まで何か言い出してくるし。

次いで、眼鏡とコンタクトの入った包みを抱えたギャスパーがうんうんと力強く頷いている。

今日初めて会ったのにこの子も嫌に此方に肯定的だな、此方にはそうする理由もあるが、なんだろうこの子の妙な信頼は。

 

「読手さん」

 

部室の中に流れ始めて妙な空気に辟易していると、塔城さんがこちらの名前を呼んだ。

真剣そうな、と言うには少し足りない、いつも通り、静かで感情が解り難い気がする抑え気味の声。

 

「部長はああ言ってますけど、嫌なら嫌で、いいと思います。それで立場が悪くなっても……、私は、読手さんの友達ですから」

 

「う、ん」

 

……。

うっわぁ……何、この状況と空気と会話の流れ。

かゆい、背中がと言わず全身が超絶痒いんですけど。

夕飯に遅れるから後日改めて返事しますね、とか言って帰ったら、もう完全に此方が悪者というか、空気の読めないお馬鹿みたいな流れ、本当に止めて欲しい。

いや、そういう風に思われてる事が嬉しくないとは言わないけれども。

 

「慕われてますわね」

 

「ありがたい話ではありますけどね」

 

ありがた迷惑という言葉があるから、少なくともありがたいという部分は間違いない。

 

「それで、どうするの?」

 

ああ、クソ、見れないけどグレ森先輩がどういう顔しているか凄く簡単に想像できる。

ドヤァ……って感じの表情で此方に返答を促しているだろう先輩に、内心で頭からかけてみそつけてみそをぶちまけていると、懐からメールの短い着信音。

失礼、と、一度その他全員に手を翳し、メールの内容を確認。

送り主は……。

 

―――――――――――――――――――

 

「……………………」

 

どことなくうんざりとした表情で応対していた読手さんの表情が、メールの文面を目で追う内に、真顔に、そして顰めっ面に変化していく。

 

「……………………今度の休みの日、偉い方々が集まる会合があるんですよね」

 

「ええ、どうせ貴方にも話は行ってるでしょうけど……って、まさか」

 

何かに気付き、驚愕の表情を浮かべる部長に、読手さんは苦虫を五十匹ほどまとめて噛み潰したような表情で頷く。

 

「はい、……出ます、その会合。そこでついでにナシ付けさせて貰います」

 

「……熱でもあるのか? 保健室に小猫ちゃんと一緒に行くか? 同衾するか?」

 

イッセー先輩ドサクサで何を言ってるんですか恥骨蹴り砕きますよ。

 

「ここにこの間保健室から借りてきた体温計があるよ。まずは熱を測らなきゃ」

 

それ私が入学した頃から既に部室に置いてあったんですけど何時返すんですか祐斗先輩。

 

「小猫ちゃん、ここに何故か長ネギがあるわ。これを読手君に」

 

副部長、ここぞとばかりに前に出るとかひな壇の若手芸人みたいなはしたない真似は止めて下さい。

そのネギ絶対こういうタイミング待って用意してたでしょう。

しかし、みんなのリアクションも尤もだ。

この話題、悪魔や堕天使、天使の三すくみに、その他様々な神話勢力に対する読手さんの在り方。

それは、最初にその話題で地雷を踏み抜いた事もあって、今まで誰もが意識的に避けてきた話になる。

そこに、仕方がないとはいえ改めて触れた部長。

そしてそれに、渋々ながらも答えた読手さん。

どちらも予想外、この状況を、私は一切想定していない。

想定はしていないけれど、読手さんが無理をしているのではないか、と、想像する事は十分にできた。

 

「無理なら無理って、断った方がいいですよ。逃げるのも手です」

 

まぁ、断っても追求がなくなる訳でもないけれど、最悪、姿を暗ます事くらいはできるんじゃないかと思う。

ニンジャスキルを親から仕込まれたにしても、その親が所属している組織的な……、ニンジャの里とか、忍者の里とか、こう、他にはその……そう、色んな忍者系の組織は存在している筈なんだし。

あそこまで嫌悪する悪魔とか神話関係のいざこざに組み込まれるくらいなら、そういう道を取るのもありじゃないかな、と、そう思う。

……それで、読手さんに会えなくなるのは、少し寂しいけれど。

 

「確かに、巻き込まれるのは嫌です。でもそれ以前に、厄介事が来るからって、此方が逃げて場所を譲るのはもっと嫌です。……立ち塞がる物は蹂躙制圧、舗装して平らで平和な道を楽しく歩くのが、此方の忍道……!」

 

「それ忍者って言っていいのかしら……」

 

「舗装工事重機系忍者という新たな可能性……、やはり君は私と相性が良い気がするな! どうだ、セックスしないか?」

 

「ゼノヴィアさんは後で気分が落ち着く系のお薬出すからちょっと黙ってて下さいね。……まぁ、色々言われましたけど、今回はそれほど無理して受けるわけじゃないですから、安心して下さい。此方にも利がある話ですから、そのついでです」

 

「利のある話、ですか?」

 

アーシア先輩の首を傾げながらの疑問に、

 

「貴方方にとっても、実のある時間になるのでしょうが……。まぁ、当日を待ちましょう。何、嫌な時間を乗り越えてしまえば、後は楽しい楽しいパーティー・タイムです」

 

読手さんはニッコリと笑顔を浮かべ、意味深な事を言うのであった。

 

 

 

 




全く後ろ暗いところのない悪気も悪意も無い大天使様「襲撃があるかも、と言えば来ると聞きましたが……まぁ、試しにメールしておきましょうか」

禍の団の魔術師「今回の襲撃が終われば、理想の世界がまた一歩近づく……。いいタイミングだし、終わったらプロポーズしようと思うんだ。ほら、指輪も用意してある」

主人公とかいう忍者「世界平和を阻むテロリストだって!? 仕方ないにゃぁ……」

主人公による楽しいスプラトゥーンタイムが近い
毎巻恒例と書こうとしたけど、ここまでで派手にインクを作れたのが一巻のみというこの体たらく
書き始めた頃はもう少しスプラッタな場面多めになりそうな予感がしていたのですが、世の中わからないものです

★ギャスパーくん
初登場だが主人公からの感情移入度では一番高い
苗字が知らされているがこの時点で名前呼びな時点でお察し
万が一性別が女だったらこの時点でルート入ってED直行レベル
怖がらせまいと主人公が忍術を多用した状態で接触した為、初遭遇ながらも怯えずに済んでいる
出会いの場面に関しては後々書けたらいいなぁと思う
男の子だからヒロインではないし、主人公の能力的にやろうと思えば直ぐにTSできるけど別にそういう展開はないから安心していいですよ小猫さん!
主人公に対しては共感以上ぼく男の子なのにこんなこと考えるなんておかしいよぉ未満

★魔眼殺しの眼鏡とコンタクト
半死人の使う古めかしいバージョン、格好いいチャリラー仕様、チャリラーのプール仕様の三種を改造したもの
本編でも書いてある通り、魔眼……というか、ギャスパーがギャスパーの神器を使うのに必要な制御能力を鍛える場合に限り、習熟速度を早める記述が追記されている
なおコンタクトに関しては一日放置で機能が復活するようにされていたりと至れり尽くせり

★部長さん
主人公への好感度は高くないし、別に仲間とも思ってないけど敵とも思ってない
油断できないけど心配くらいはする仲、みたいな
実は話的にこのくらいの距離感のキャラは割と使いやすい
知り合い以上仲間未満

★副部長さん
立ち位置が立ち位置なので意識して書かないと存在が消える
でもこの人ヒロインじゃない場合どういう立ち位置にするのがベストなんですかね?
知り合い以上友人未満

★小猫さん
気が抜けると猫語が言葉の端にはみ出す
主人公との付き合いにもだいぶ慣れ、割と面の皮が厚くなってきたのかもしれない
因みにこの巻ではヒロインムーブするチャンスはもう殆ど無い
でもそろそろ黒歌さん出てくるからその時にあれこれする
そこで明確なフラグが一本立てば本格的にラブコメルートに入れるかも
親友以上吊橋未満

★メアド
ギャー君もさり気なく交換済み
オカ研メンバーでメールでのやり取り頻度では小猫さん貫禄のトップ、気後れしてないゼノヴィアさん二位、三位に割と時間のある木場くんがまさかのランクイン
イッセーは日夜家でラブコメしてるのでメールする機会自体が少ない
アーシアさんはあんまり接点が無い
部長は単純に好感度の問題で持ってない
副部長は交換するきっかけが無いので別にまぁいいかと思われてる

★主人公のバックアップ
極稀に主人公がやり過ぎた時などに手伝ってくれる
父親のコネなので、母親の方の原作とは欠片も関わりがない
たぶん実家が襲撃されたりしたら父親共々登場フラグが立つ

★メール
ミカエルさんも悪気は無かった
でも別にテロリストに容赦する理由も無かった
そしてテロリストに未来は無かった

★ゼノヴィアさん
メールは八割シモネタになっているお誘いのものを除くと微笑ましいものが残る
すげなく扱われているけれどまともなメールの内容が割と本気で微笑ましいので主人公からの好感度は割と高め
友人以上愛とまでは言わないけど種くれないかなぁ土下座して認知しなくていい感じの書類書けばいけないかなぁ未満

★木場くん
グレモリー眷属のSAKIMORIにしてkssm
眷属意外でそれなりに付き合いのある相手とメールでやり取りする時は少しハメを外していたりする
最近の趣味はモーニング騎士王タイム(鏡の前で黒カリバーを出していい感じのポーズを取る時間)
動きの邪魔にならない格好いい鎧とかいいよね、みたいな事をぽろっとメールに書いたりする
怪しい通販サイトでちょっとトゲトゲしたデザインの篭手とかを眺める習慣が出来た
ちょっとした友人以上マスターNINJA未満

★気分が落ち着く系のお薬
なんかむっちりしてる忍者の里直伝
飲むと頭がふわふわして幸せな気分になり、辛いことも忘れられる便利な薬
表面上は問題ないが、割と強い中毒性がある
体内への残留物が少なく、薬物検査に引っかからない

★忍者の里
夏休みに行く可能性がある
現在、対魔忍ルート、カグラ原作パラレルソシャゲ他校ルート、いがらしみきおルートがとりあえず存在する
因みに父親の生まれた里は上記の里とはそれほど関係ない渋い忍者の里
共通の脅威として神話勢力などが存在する為、ほとんどの里に横の繋がりがある




そろそろこの巻もクライマックス
気合を入れて行きましょう

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