文字通り絵に描いたような、あくまでドラゴンメインの高校生活   作:ぐにょり

36 / 65
冥界合宿のヘルキャット
三十五話 夏の決心


残り少ない一学期を消化するために、ジリジリと照りつける太陽の下、通学路を歩く。

隣にはいつもの様に読手さん。

思えば、一学期の間はかなりの頻度で彼と一緒に過ごしていた気がする。

部活の外、というか、クラスの中では一番に付き合いのある友人だし、通学路も途中から合流するから必然とも言えるのかもしれない。

でも、もう数日で夏休み。

 

「部長から話を聞いたんですけど、夏休みの間は眷属全員で冥界に行く事になるそうです」

 

「そうなんですか。まぁ、グレモリー先輩も元々は冥界の住人でしょうし、長期の休みに里帰りするのは自然ではありますよね。眷属が付きそうのはともかく」

 

「です。……冥界戻っても、私はやることが無いのですが」

 

実際、この世界は住みやすい。

悪魔だけの世界でなく、今では主に人間たちの世界と言っていい世界ではあるけれど。

それでも、元いたところに比べればマシだろう。

はっきり言ってしまうと、冥界は文化的に遅れている。

魔王様が日本の視察を楽しそうに行っていた事から解ると思うけれど、基本的に住みよい場所とは言えない。

それにこの世界で、人間の間で、私は塔城小猫だ。

犯罪者の身内、という認識で見られないのは気楽でいい。

だから、正直なところを言えば、夏休みの間中ずっと冥界、というのは少しでなくかなり気が滅入る。

勿論、私だけ置いていってもらう、という訳にはいかないだろうから、そういう考えは表に出さずにいる訳だけれど。

 

「まー、戻りたくない場所ってのはあるもんですよ」

 

「読手さんも、ですか?」

 

「いや、父さんがね、帰りたがらないんですよ。実家に。お盆とかも此方単独で行くか、さもなけりゃ母さんが父さんを引っ張っていく形になりますしね」

 

「……なんだか、ちょっと想像できませんね」

 

思えば読手さんの父親を見たことがないのだけど、それでもあのクールそうなお母さんが旦那さんを引っ張って動く、というのは。

行きたくないなら行かなくていい、くらいに考えてそう。

 

「あー、母さんあれで結構アグレッシブだから、父さんが動かないとそれ見てイライラして動き出すんですよ。いちゃつく時は父さんが攻めみたいですけど」

 

「なるほど」

 

そういう夫婦関係もあるらしい。

……私はまともな父母というものを覚えていないから、変わっているのか良くあるのかは分からないけれど。

 

「しかし、冥界ですか。そうなると、一ヶ月くらいは会えない感じになるんですかね」

 

「夏休みの間丸々、って訳じゃないみたいですけど、そうなります」

 

「寂しくなりますねぇ……」

 

反射的に、え? と声が出かけて、別に深い意味は無いのだろうと引っ込める。

自慢になるけど、入学してからクラスの中で読手さんと一番仲良くなったのは私だという自負はある。

そんな毎日顔を合わせている友人と一月近く合わないというのは、まぁ、普通に考えて寂しいと言って差し支えない筈だ。

 

「でも、日影さんが居るなら大丈夫じゃないですか?」

 

「それとこれとは話が別でしょう。塔城さんは違いますか?」

 

「そう、ですね。……少し、少しだけ、寂しいかもです」

 

だから私の方のこの感想だって、友人として素直な気持ちで間違いない。

入学してから読手さんと一番仲良くなったのが私なら、私が入学してから一番仲良くなった相手だって読手さんで。

ほぼ毎日顔を合わせて、良くメールや電話でやり取りをして。

そんな相手と暫く顔を合わせられない、というのは、寂しさを感じても仕方がないし、特に不自然も問題もない正常な感情の働きだと思う。

 

少し、と言ったのは。

やっぱり、素直に『暫く会えないのが寂しい』と相手に伝えるのが恥ずかしいという、お、乙女心的な、ねぇ?

……やっぱり、異性として意識しようがしまいが、それなりに親しい異性にそういうことをストレートに伝えるのは、恥ずかしさが勝ってしまうのも仕方がないんじゃないかな、と。

 

そういう意味で言えば、やっぱり読手さんは凄いというか。

女性に対して、こんな感じに素直に気持ちを伝えられる辺りかなりの耐性を感じる。

やっぱり彼女持ちは凄いなって思います。

そこんとこどうですか勝手にイッセー先輩の家のリフォーム計画立てた上で自分の部屋をイッセー先輩の部屋の隣にしたりできるのにいざとなると自分から手を出せない部長。

男に手を出させてこそ、みたいな変な拘りのお陰で最近副部長から激しくインターセプト食らってる部長!

 

と、内心でイッセー先輩にとってラストエリクサーみたいな扱いになりつつある部長に当たる事で恥ずかしいセリフを言ったストレスを打ち消して冷静になった頭で考える。

確かに、夏休みの大半は冥界で過ごす事になる。

でも、イッセー先輩のお家のリフォームとか、冥界に長期滞在する為のそれぞれの準備とかで、最初の一週間弱位はこっちに居られた筈……。

 

「……そういえば、読手さんは夏休み、何か予定とかあったりするんですか?」

 

とりあえず探りを入れてみる。

読手さんほどのリアルリア充なら、初日から恋人である日影さんとデート旅行の予定とかみっちり入れたりするのかもしれないけれど、念のためだ。

しかし、笑顔で夏休みのラブラブな予定でも話しだすものかと思われた読手さんの表情はイマイチぱっとしない。

 

「んー、いや、なんとなーく、あれやろうかな、これやろうかな、ってのはあるんですけど……、たぶん、なんだかんだ言って最初の一週間くらいは家でゴロゴロしながらラジオ聞くとかしかしないんじゃないですかね」

 

「そう、ですか」

 

よっし、と、ガッツポーズ。

……いや、ガッツポーズする程の事じゃないけど。

でも、実際都合がいい。

互いに暇な時間が同じような時期にあるなら、うん。

 

「それじゃあ」

 

ととっ、と、早足で読手さんの前に出て、振り向く。

隣で並んで歩きながらでも良かったかもしれないけど、こういう時は正面少し下から、相手の顔を少し上目で見上げる様にしながら告げるのがいいらしい。

今では会えない、大切だった肉親から教えて貰ったテクニックだ。

読手さんが、こっちの視線をどれくらい感じられるのかわからないけど。

 

「夏休みの最初の一週間、一緒に遊び回りませんか?」

 

―――――――――――――――――――

 

……というようなやり取りがあった事を、ついつい部室で漏らしてしまったのが運の尽き。

 

「くっ……」

 

「部長、なんですかその表情」

 

リアクション芸代表みたいになった部長が、トキメキと悔しさと申し訳無さと好奇心で顔面四分割という新たな芸を披露し始めた。

今は奇跡的に部室の中に男性陣が居ないけど、少なくともイッセー先輩の前でその顔をするのは止めたほうが良いんじゃないかなって思いますよ?

 

「一夏の淡い思い出つくりを冥界行きで潰してしまった事に申し訳無さもあるけど、時間が限られたからこそ小猫が大胆になれたんじゃないかと思うと私ナイスゥ! というか、夏の日差しで読手君が小猫に対して過ちを冒して、いえ、過ちで犯してくれるんじゃないかっていう事に気付けなかった私が愚かだったようで、結局オッケーして貰えたの!?」

 

「とりあえず部長は少し落ち着いた方がいいんじゃないですか」

 

あと、をとでは入れ替えなくていいです。

だけど、そんな冷静な私とは裏腹に、部室内に居るオカ研女性陣のテンションは変な方向に向かっている。

仮に今他の男性陣とかが部室の前、いや、旧校舎の入り口の前に居たとしても、部室から溢れだす女子が集まってとりとめもない話をする時特有の空気感をもろに食らって足踏みしてしまうのではないでしょうか。

実際、同性でもそういう姦しい感じの空気を作れないし別に作ろうとも思わない私は、この空気を意図せずに自ら作り上げてしまった事に果てしない程の後悔を感じている。

というか部長、こういう話題好きなら別に学園のお嬢様キャラを無理に維持せずに他の学生に混じればいいんじゃないですか? 言わないですけど。

 

「いや、確かに結果は重要だろう」

 

「ゼノヴィアさん……」

 

「いや、待て、何だその目は。別に私はまだおかしな事は言っていないぞ」

 

まだ、と言いましたか貴女。

でも、どうせ話の流れで言うか、いい話を最初に持ってきた上で台無しにする形でオチに持ってくるかの違い程度で何かしら言うだろうし。

 

「まぁ聞いてくれ。私がこの学園に入ってから集めた常識から言わせて貰いたいんだ」

 

悪魔になってから今日まで部内全員ドン引き通り越して精神耐性出来るレベルの痴女ぶりしか見せてくれてない人が何か言ってますね。

 

「小猫、疑わしい気持ちもわかるけれど、信じる心が大切な時もあるのよ?」

 

今がその時とも思えないんですが。

とはいえ、確かに発言する前に意見を潰すのは良くない。

とりあえず、聞くだけ聞いてみよう。

 

「いいか? 塔城小猫。君は、夏休みの間暫く会えない友人と、夏の思い出を予め作ることで寂しさとかを和らげたりしよう、と考えているんだろう?」

 

「そうですね。大体合ってます」

 

「これは、あくまでも、私がこれまで集めた一般常識の範囲内からの推測でしかないのだが」

 

それ、デートという奴なのではないか?

その言葉が私の頭の中をぐるりと一周して理解と結びつくまで、僅かばかりの時間が掛かった事は、たぶん、言うまでもないことなのでしょう。

 

―――――――――――――――――――

 

「デートか」

 

「デートだね」

 

「ええ、客観的に見ると、そうなっちゃうんですよ」

 

旧校舎の入り口付近でうろうろと入り難そうに屯している兵藤先輩と木場先輩を誘って、購買でアイスを買って校舎裏の日影で食べながら、今朝にした塔城さんとの会話内容についてなんとなく話し合う。

出た結論は、個人的には余り歓迎出来ないけれど、たぶんそうなってしまうんではないかなぁというものだった。

 

「でも実際、夏休みで予定が空いている内に友人と遊びに行く、なんて、そこらの誰もがやってる事でしょうに、なんでこんな事を気にしないとならんのでしょうねぇ……」

 

と、言っても、普段から塔城さんと度々遊びに行っているという訳ではない。

だけど一緒に飯を食べに行ったり買い食いしたりというのはよくしている。

だから、これもその延長線上にあると考えれば、デート、という事にはならないのではないか。

……という理屈が通じないのだろうなぁと、そう予想できるが故にこんな話をしている訳だが。

 

「うーん、まぁ、気持ちはわからんでもない」

 

「どっちの?」

 

「どっちも」

 

昔ながらの懐かしの味、本塁打棒を齧りながら、悩んでいる様にも妬んでいる様にも感じられる声色で木場先輩の問に答える兵藤先輩。

 

「学校で結構仲良くしてる男女が、休日に二人だけで遊びに行っていたら、リア充死ね! ってなるだろ? ……でも、例えば俺が部長とかアーシアと二人で出かけても、相手がそう思ってないからデートじゃない」

 

「あ、当たりだ」

 

「こっちも当たり……じゃない、当たれってなんですか当たれって」

 

木場先輩は薄利多売のゴリゴリ君だからたぶん当たりやすいんだろう。

でも此方のバラックモンブランだってさほど当たりをケチるような値段でもないと思う。

 

「いや聞けよ! 聞いてきたのそっちでこっちは答えてんだからさぁ!」

 

いや、余りにもツッコミ待ちみたいなネタ振ってくるからてっきりボケを殺して欲しかったのかと。

どうどう、と、兵藤先輩を落ち着かせている木場先輩の声を聞きながら、さっきの兵藤先輩のボケを考える。

考えるが……。

 

「結局、社会的な偏見の目からは逃れられない、って事ですか」

 

「いや、うん、なんか急に壮大な問題に聞こえてきた気がするけど、そうなんじゃないか? 大体、日影さんという恋人が居るのに小猫ちゃんという異性の友達と一週間も遊び呆けるのも確かに問題あるしな」

 

「むう」

 

ぐうの音も出ない。

神器の文字列の赤を全て乳に置き換える様な世界級エロスの癖にこういう時にする発言がまともなのはずっこいのではないか。

 

「そういえば、日影さんはなんて?」

 

「いや、勿論一緒に来ない? って誘ったんですけど」

 

「誘ったのか……」

 

「そりゃ誘いますよ」

 

女の子と二人で一週間連続でお出かけ、という時点で、これまでの此方の人生には無かった大事件でもあるのだ。

いや、嘘だ。

実の所を言えば日影さん以外の女の子の友人と二人でお出かけ、という程度の話なら多少ある。従姪の亜里須とか。

でも、ほら、滅多にあるわけではない重大な事件である事には変わりない訳だし。

その時はまだ肉体年齢的に幼かったから全然セーフだと思ってたっていうか。

……そのあと、日影さんが暫くそっけなかったのがかなり堪えたから、その時の反省を十二分に活かした選択を取ろうとするのは当然ではないだろうか。

 

「で、なんて言われたんだい?」

 

「ええんやない、って」

 

「ええんか」

 

「ええらしいんです……」

 

瞼を閉じたまま空を見上げる。

校舎で出来た影が日差しを遮り、瞼越しに届く光は薄い。

程よい薄暗さは今の此方の心の様だ。

 

「此方、なんか機嫌損ねる事したかなぁ……って」

 

因みに日常的に日影さんと接していない人では少し理解が追いつかないかもしれないので解説すると、このええんやないは『(そんな無理にわし誘わんでも、二人で行ってきたら)ええんやない(か。別にわしは気にせんよ)』という意味になる。

理解するには声のニュアンスとかを上手く汲み取る必要があるが、慣れれば然程難しい話ではない。

 

「……ギャスパーの件がバレたとか?」

 

「いや、ギャスパーの事は関係ないでしょう」

 

兵藤先輩はおっぱい聖人の癖に平時はまともな事も言うが、おっぱいに関わらない部分での思考能力は常人の八かけ程度な部分も在るため、時々こういう的はずれな事を言う。

ギャスパーは確かに可愛らしい声をしているし、肌もスベスベ、髪もさらさらで撫で心地も良いし、何故か体臭すら同世代の同性と思えない程良い匂いだが、男だ。

この間の休みに一緒に隣町のショッピングモールに行って夏休みに使う水着を新調したりもしたが、別に休みの日に男友達と出かけるのは普通の事だろう。

ギャスパーが女物の水着を買った事も、どんな水着が好きか参考として聞かれた事も些細な事だ。

ギャスパーはホモやオカマでなく、あくまでも女の子の衣装の方が可愛くて好きだから着ているだけなのだから、自分以外から見て可愛らしく見えるか気にするのは当然の事だろう。

まぁ流石に挿絵になる程の絵ではないだろうから見ては居ないけれど、ギャスパーは肌が綺麗だからお腹も背中も見せるタイプの方がいいだろう、というアドバイスに留めたが。

 

「ショッピングの帰りに映画を一緒に見に行ったり、昼食を一緒に摂ったり、その間手を繋いでいたりしても?」

 

「いや、隣町まで行って買い物だけして戻ってくるのは勿体無いですし、手を離してはぐれたら大変でしょう?」

 

ギャスパーは吸血鬼に力に覚醒こそしているけれど、これまでの引きこもり生活で体力的には最低値な上、身体の動かし方もなっていない。

人混みの中でははぐれてしまうかもしれない、という、ギャスパーの自己申告から手を繋ぐ事に何の不思議があるのだろうか。

 

「あと、手を繋いだ云々は言ってあげないで下さいな。本人も恥ずかしがっていましたから」

 

手を繋いで欲しい、と言う時の、ギャスパーの消え入りそうな程に恥ずかしがっている様子は、なんだか此方が申し訳なくなってしまう程だった。

自分の体力と人間的身体能力が成虫になった蚕蛾レベルであるという自覚はあっても、それを踏まえて誰かに頼るのはとても恥ずかしく感じてしまってもおかしくない。

自らの欠点を自覚しさらけ出し、誰かに助力を願う。

勇気の必要な行為だ。

尊敬に値するし、友人として誇りに思う。

 

「木場ぁ……」

 

「はは、大丈夫だよイッセー君。(僕達には)害はないから」

 

情けない声で木場先輩の名を呼ぶ兵藤先輩に木場先輩が朗らかに答えた。

不思議なやり取りだが、少々話が脱線しすぎている。

 

「話を戻すとですね。変な噂が立たないようにするための案はあるんですよ。実のところ」

 

「どんなのよ?」

 

「忍者技能を駆使しての女装。精度は控えめに言ってノレパン三世顔負けレベルの」

 

因みに変装技術はまぁまぁだけど、そこは九ノ一術でカバーだ。

女装状態ならひん剥かれて薬打たれて犯されて理性を失っても股間を見せない限り相手は此方が女装した男だという事に気づけないレベルと言えばどれくらい得意か解るだろう。

……まぁ、股間に関しては男根やら陰嚢を内臓操作で体内に引っ込めるまでしかできないから、完全にひん剥かれたら流石にバレるのだが。

 

「精度にはもう突っ込まないけど、なんで女装?」

 

「いや、ほら、此方と歩いてなかったとしても、見知らぬ男と歩いていたら、塔城さんにだけ一方的に変な噂が付いちゃうじゃないですか」

 

「理屈が通ってるだけに一際面倒臭いなお前」

 

め、面倒くさくなんて無いし。

これくらい普通は考えて対策立てるレベルでしかないから神経質でもなんでもないし。

 

「忍術としては基礎レベルのものですけど、割と自信ありますよ。仕事用の別顔で何度かオカ研のメンバーと話したりしてたんですけど、気付かなかったでしょう?」

 

「……この間、ゼノヴィアが街で綺麗なイルカの絵を買わされたとか言ってたけど」

 

「それがこの話題に何か関係あるかは置いておくとして」

 

いやぁ、ちゃんと社会に適合した悪魔って、金持ってるんだなぁ、って。

臨時収入があるのは嬉しい限りだ。

その分ゼノヴィア先輩にはコンビニで投げ売りされていた千歳飴とか風呂に浮かべると垢が取れたりする玩具をあげたから多分プラマイはゼロになってるだろうし。

あ、あと100円ショップで買った肩揉み器もいらないから譲ったんだっけ。

つまり此方が一方的に貸しを作っているという形になるな。

次はかけると何でも美味しくなる魔法の粉(鰹節粉)でも買ってくる事になるかもな。10万くらいで。

 

「でも読手君、やっぱり女装とかそういう小細工は無しで行った方が良いと思うよ」

 

会話の合間に騎士特有の高速移動で当たり棒を交換してきた木場先輩が袋を開けながらそんな事を言う。

ちゃっかり自分だけコカじゃない方のコーラを買ってきている辺り実に抜け目が無い。

……あ、此方達にも一本ずつあるの?

木場先輩はいい人だ。エクスカリバーの主となるとやっぱり人格からして一味違う。

 

「それはまた、何故に?」

 

コーラを受け取りながら尋ねる。

 

「それが普通だからだよ。普通、友人と遊びに行くのに、他人に噂を立てられたくないからって変装までするものかな?」

 

「まぁ、時と場合によるとは思いますが……しないんじゃないですかね。基本的には」

 

「そう。それに、噂を立てそうな相手はクラスメイト達だろう? それなら、後々で普通に遊びに行っただけ、とちゃんと説明すればわかってもらえる筈だよ」

 

「むむ」

 

一理ある。

ウチのクラスは多少そういう部分で悪乗りする連中が多いけど、きっちりメリハリは付けてくれる分別を持っている。

それ以外の噂となれば広めるのも受け取るのもそう多い数ではないのだから、気にする程の事ではないだろう。

日影さんは此方と塔城さんの間にある感情が友情でしかない事は知っている筈だし、此方が深刻に気にしなければならない程の問題ではない。

もしかしたら、神経質になりすぎたのかもしれない。

 

「小猫ちゃんも、普段は友達とそんなにたくさん遊びに行くわけじゃないから、きっと楽しみにしてると思うんだけどな」

 

……ふぅむ。

そこまで言われてしまえば、周囲に変な噂を立てられるかもしれないからこそこそ遊びに行こう、などというのは野暮の極みか。

 

「まぁ、色々と気にしないといけないとこもありますけど、しっかり楽しんで来ますよ」

 

「それがいいね」

 

勿論、日影さんにはフォローを入れてどうにか機嫌を直して貰うけど、それとは別に、ちゃんと友達との夏休みを満喫するとしよう。

そう伝えると、嬉しそうに頷いた木場先輩の隣で本塁打棒の棒を地面に埋め終えた兵藤先輩が空を仰いで叫びだした。

 

「だな。……あー! 俺も部長とデートしてぇなぁ!」

 

先日一緒に買物行ったとか聞いたけど、どうやらこの暑さで脳味噌の中身が発酵してしまったらしい。

 

「あ、部室の方のピンクい雰囲気が薄まってきてますね」

 

「じゃあ戻ろうか。皆の分のジュースが温くなっちゃうしね」

 

「だからなんでそこでスルーするんだよ!」

 

だって返事するのが面倒な話なんだもん……。

そんな内心を押し殺し、何か言ってる兵藤先輩を適当に片手間で宥め、普段通りの空気に近付いたオカ研の部室に向けて歩き出す。

そこいら中からセミの鳴き声が響き、日差しは容赦なく大気と此方達を熱し続ける。

アイスとジュース一本づつでは誤魔化しきれない本格的な夏の始まりを四感で感じながら、塔城さんとのお出かけ先の候補を思い浮かべ始めるのだった。

 

 




一切予定に無かった小猫さんのヒロインイベントが始まる……
一応元からあったヒロインイベントもそのまま発動する予定

自分の書いたSSは、前の話のあとがきに書かれた予告が当てになりません
つまり主人公との別行動ルートは、デートが終わってからになります
因みに一週間と言っていますが一話の間でダイジェスト風に終わるのではないかなという希望的観測と
なんか無駄に色々考えた結果7日分で七話ほどデート回が続いてしまうのではないか、という真っ当な予測が浮かび上がりました
こういう時は希望的じゃないほうに結果が収束すると無限螺旋編を書いていた頃に学んでいるので、そこら辺の経験を活かしつつどうにか一話で終わらせるか、デート話を挟まずに別ルートに向かわせてデート話は回想をたびたび挟んでやるかになるんじゃないかなぁと思います
実際どうなるかは完成するまでわからないのですが


★小猫さん
デートじゃないです、一緒に遊びに行くだけです
という、頭痛じゃなくて頭が痛いだけです、みたいな事を言い出す
信じられるかはともかく、現状では誂われるから照れてるだけで恋愛感情の類は殆ど無い(意識していない訳ではないけど、このままでは友情エンドで終わるレベル)
そろそろあらすじのユウジョウ結ぶ云々は達成してると言っていいんじゃないかなと
とりあえず数年後に飛んで失明記憶喪失主人公が静養してるサナトリウムに白いワンピース着てお見舞いに行くバッド寄りノーマルエンドは消えた、かなぁ

★ギャスパーくん
小猫さん差し置いてテンプレなデートイベントの大半を消化、CG回収
目で見てもさほど精神的苦痛にならない、というだけで、普段から目で見る訳ではない
そんな訳で人気の少ない公園で階段登る時はしゃぐ感じで先行して密かに無意識にチラ見せした勝負下着は穿き損
偶に握っていた手を見つめてニヤニヤ笑いながら呆けている
本人は友達と一緒に遊びに行ったのは初めて、的な嬉しさだと思っているが……?
今回セリフは無かったが、密かに部室の方で小猫の話に興味津々で聞き入ってた
奇跡的に男性陣が居ないという小猫さんの意見は内心でのみだったが、仮に口に出しても突っ込まれなかったかもしれない
口に出しても突っ込まれないってなんか卑猥な意味に聞こえるけどそういう意図は一切ないので勘違いしてはいけない

★ゼノヴィアさん
ラッセンっぽい偽の絵のフルカラーコピーを買わされた
何かがおかしいと思いついたのは一晩たってから
「あの斑鳩という女性、信用できそうな気がしたのだが」
詐術による感情判定により斑鳩(偽)に怒りの感情を結ぶ
でもラッセンの絵のフルカラーコピーは壁に飾ってある

★イルカの絵を売ってた人
斑鳩と名乗るロング黒髪ぱっつんの巨乳女性(?)
いったい何者なんだ……
関係無いがこの人が儲かると主人公の財布が潤う

★本塁打棒、ゴリゴリ君、バラック・モンブラン
ふと思い出したかのように元ネタから少し名前が変わっているアイス群
原作のドラグソボールの様にこの世界では似てるけど少しだけ違う物が多く存在している
ただし実写版デビルマンは似せる事が不可能なレベルのクソである為に世界の修正を受けずにそのまま降臨した
やはりサタンだからかもしれない

★木場先輩
良い空気吸ってる
アイスはそれぞれ自腹だけどジュースはこの人の奢り
いい人

★兵藤先輩
他所ではみんな文句言ってるけど
初めて出来た恋人が自分の中にあるお宝目当てで自分はゴミくらいにしか思ってなくて
一生懸命考えたデートコースも内心では鼻で笑われてた
自分はそいつに一度殺された
これを実際に体験した後、恩人である年上の女性とか保護欲掻き立てる妹系の女の子とか
……誘惑されたとして、素直に自分への好意であるって受け取れる?
冷静にこの辺の境遇考えるとこれくらいの鈍感とかヘタレとかは許されるんじゃないかなぁって

でも実際普段からそんなとこまで考えて会話しないし
日常会話でこんなボケされたらそらスルーしちゃうよねっていう話
肉体的に龍になったり龍を超えた救世主になったりしてるけど今の生活は幸せなんじゃないかな

★水着
平坦な女性がセクシー水着着ると逆に妙にエロくなる
具体的には小猫さんがエロ水着とか着たら凄く背徳的じゃないかなって話なんですがどうですか
でも話の流れ的に小猫さんが主人公に明確な恋愛感情を抱くのはもっと先で夏は終わってる
まぁ最近は温水プールとかあるから問題はない

★女装
閃乱カグラでは霧夜先生が焔ちゃんの変装とかしてくるので
エロ拷問訓練とかも受けてるんじゃないかな
ギャー君と一緒に薔薇で作った百合の花空間をつくることができる
肉体の成長過程で投与される幾つかの薬物と特殊な訓練により一時的に体内のホルモンバランスすら自在に操り、匂い、雰囲気に至るまで変える事が可能
近代においては日本陸軍に雇われていたハグレモノの忍者によりこの技術が一部流出
陸軍中野予備校なる教育機関にて当時の一部軍人達がこの技術を習得したと記録されている

なお、閃乱カグラ原作の霧夜先生の身長185センチ
変装先である焔ちゃんの身長163センチ
変装の精度は3Dグラをそのまま流用するレベル
忍者の変装は骨格すらどうにかできるのである

★貞操
主人公は非童貞かつ非処女
基本的にこの世界の忍者は訓練過程でどっちも失う
父親?叔父?
二人共正規の忍者教育を終えてますよ?
なお日影さんはオリジナルである閃乱カグラの日影さんが忍者教育を受けている為、この世界での忍者教育を受けていない
……でも蛇女だって悪忍育ててるんだからそういう過程くらいあるよね?
でも出自的に肉体はゼロから構成されてるし……
ヒロインの設定を非処女にした途端ファンが半分くらいアンチに変わったSSもあると聞くし……
読者太郎、君の意見を聞こう!

★エロ拷問訓練
エロ拷問に耐える訓練
……ではなく、エロ拷問で完オチしたとしても必要とあれば即座に正常な精神状態に戻る為の訓練
基本的に男も女も受けるぞ!
なお、他の悪い忍者勢力やら一般的な裏勢力やら神話勢力に囚われて洗脳されるのは、教育途中でこの訓練を受けていない忍者の卵までである
ドヤ顔で洗脳忍者を戦場に出した場合、未熟な忍者の卵である為に瞬殺されるか、洗脳されていない事が判明して痛い目に会うぞ!



因みにあとがきは読み飛ばされる事が多々ある事を想定している為割と適当です
ここの設定は変わったり変わらなかったりこれだけは絶対に変えないようにしようというものが入り乱れているので深く考える必要はありません
それではまた、次回を気長にお待ち下さい

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。