小説書き始めて三年目(ハーメルンではもうすぐ二年目)にして、やっと一次作品を思いついて衝動的に書いてしまった次第でありまして…
劇中の博多弁は出来るだけ合わせたつもりではありますが、僕は博多の人間では無いのでご容赦下さい。
気に入ってくれたら幸いです。お楽しみくださいませ。
それは、偶然見つけた隠し部屋だった。元々この家は、安い物件を親が買った古めかしい二階建ての洋館で、興味本位で引っ越した直後に探検したのだ。でも小学一年生だった私は迷ってしまった。
当り前だ、前も横も知らない場所なのだから。無駄に広くて、二階の奥の部屋で私は寂しくてもどかしくて、一人で泣いた。その時、貴方の声を聞いた。
「泣かないで。こっちにおいで、一人じゃないよ」
その声は優しくて、聞いた事のないはずなのに安心できて、私はすがる様な思いでその声に導かれてその部屋の、奥の方にあった隠し扉に入った。そこに居たのが、貴方だった。
「やあツクモ、初めまして…だね。僕の名は
「キョーくん…?」
「そう、呼んでくれても構わないよ」
天窓からの光で幻想的な雰囲気なその部屋の中央にある、黄金で出来た波の様な淵が特徴の巨大な鏡の前に、私の第一声に苦笑する貴方は居た。綺麗な金色の尖った髪をした、青い瞳でどこかの学生服を着たキョーくん。よく分からない懐かしさを感じた。
その後少し談笑した後、私は彼に連れられ、両親の元に戻る事が出来た。だけどキョーくんを紹介しようとしたその時には誰も居らず、隠し部屋に行こうとしても隠し扉なんて無くて、幻覚もしくは夢でも見たのだろうと言われた。
でも、確かに私は彼と出会ったのだ。そう思い後日、一人で行ってみたら隠し部屋が開いた。そして私はやっぱりそこにいた彼に言ったのだ。
「やあツクモ。今日はどうしたんだい?」
「キョーくん、友達になってください!」
「…ゑ?」
その時の、彼のポカンと呆けた顔をよく覚えている。前髪に隠れた目が点になって、口元を引き攣らせた彼を。
私の名前は
それから9年。私は高校生になった。あの時と違って今の私には、いっぱい友達がいる。それは両親に隠れて毎日キョーくんに会いに行くのが日常になった小学二年生の時、他愛もない話をしていたある日の事だ。
「何時も思うんだがツクモ?毎日学校が終わると僕の所に遊びに来るけど、他に友達はいないのかい?」
「うん?キョーくんが友達だよ!」
「あ、いやそうじゃなくて…そうだった、君は人と交友するのが苦手な人見知りだったね。なら、手を貸してあげるよ。僕は君の味方だからね」
そんな事を言っていたキョーくん。私は疑問に思いながらも次の日、学校に歩いて向かっていた時にその意味が分かった。ショーウィンドウのガラスに、映る私と重なる様にキョーくんは居たのだ。慌てて周りを見るけど、歩いていく人たちは気付かない。恐らく私にしか見えないんだ、と悟った。
「ツクモ、申し訳ないけど…――――――」
その後の言葉は覚えてない。だけど、気付いた時には友達ができていた。当時は魔法なのかな?とほんわか考えていたが、今思うと本当にどうしたんだろう…とにかく、友達はいるのだ。
だけど私はキョーくんとやるみたいな他愛な話をしたり、それだけだ。でも何時の間にか友達とカラオケに行っていたり、ショッピングに行っていたり、他にも色々付き合ったらしい。覚えていないのに、その証拠に新しい服やアクセサリーが増えていた。…記憶が所々飛んでいるのだ。夜はしょうがないと思うが、昼時も覚えていないなんて何かが可笑しい。時々かすり傷などもできたりした日もある。
でも些細な事だ。キョーくんが大丈夫だと言うのなら大丈夫なのだろう。それに、何故だか知らないが何の不安も無い。根拠無しに安心できるのだ。多分私は馬鹿なのだろう。それでもいい。
「キョーくん、ここ教えてくれない?」
「宿題は友達とすればいいものを…まだ、人見知りは治らないかい?」
「うん…。でも、友達の皆とは仲良くできているよ?ただやっぱり、私はキョーくんがいいよ」
「まったくツクモと言う奴は…いいよ、どこだい?」
「えっとここの公式なんだけど…」
「…ごめん、僕は文系なんだ…でも一緒に考えるから」
「ううん、いいよキョーくん。私もごめんね?」
何でもできると思っていたキョーくんにも苦手なことが合った。それを知れただけでもかなり嬉しかった。そんな高校生活を続けている内…四月半ばでその事件は起きた。
その日、私は急いで街の辺境の森の中にある屋敷へ帰路に着いていた。
「今日は皆でスイーツ食べに行くんだっけ…早く着替えて待ち合わせの場所に行かないと…」
「そうだね。急いで帰ろうか」
傍のショーウィンドウに私と並行して映るキョーくんに私は頷く。そして先を歩いていた同じ制服を着た女子高生二人(あんまり面識の無い人達だ)とすれ違った時に、その噂を聞いた。
「ねぇ聞いた?この間、駅前近くに建つ六道コンポレーション支社ビル前の公園でホームレスの白骨死体が発見されたって」
「知ってる知ってる、確かその白骨死体は前日まで生きていたって話でしょ?怖いよね~」
「…?」
確か長い年月が経たないと白骨死体は出来ないはずなのに…何なんだろう?疑問に思ってキョーくんの方を向いてみると、何やらシリアスムードの彼がいた。
「…キョーくん?」
「うん?ああ、ごめんごめん。少し気になることが合ってね…それより、早くしないと怒られるよ?」
「あ、そうだった!」
私は再び急いで帰路に着くも、その間もキョーくんはずっとシリアスムードな表情を浮かべていた。
それから。6時頃に私(と皆には分からないけどキョーくん)は駅前の時計前に到着、すると既に赤髪を肩まで伸ばし緑を基調としたゆったりとした服装でヘッドホンと黒いキャップ帽を被った少女「
ちなみに私は生まれつき白く長い髪を(ちなみにアルビノと言うそうで瞳も赤い)ポニーテールに纏めてハンチング帽を被り、青いパーカーと水色のホットパンツ、黒いニーソックスと茶色いブーツと言った服装だ。
これから、駅前にあると言う美味しいと評判のケーキ屋に行く予定だ。
「ごめん、待った?」
「アタシは待ったけどホタルはアンタと同じでつい今よ」
「アカネちゃんは早すぎると思うよ10分前に着いたって…」
「何言うとっばアンタは。普通約束事ったら早めに来るのがマナーじゃなかと!?」
「は、はいでふ…」
「アカネちゃん、博多弁になってるよ」
「おっ!…こりゃ失敬」
アカネちゃんは今年の三月末からこの街に来たらしく、京都生まれなのにここに来る前の10年くらい博多にいたらしくていつもは標準語なのに時々博多弁が出て来る。彼女はそれを恥ずかしく思っていて、時折感情を昂らせたときに出てしまうらしく時折私(と本当に時々ホタルちゃんが)指摘するのだ。
「じゃあ早速行こうよ、ケーキ屋さんに!」
「ツクモちゃんて可愛らしいよね、その言い方とか」
「そうね。高校生でここまで可愛らしいのはツクモだけじゃなか…じゃない?」
今、博多弁が出そうで押し止めたね。と傍の窓ガラスに映るキョーくんは笑い、私も釣られて笑う。それを見て怒るアカネちゃん。可笑しいのか笑うホタルちゃん。平和な時間が続く物だと、そう思っていた。
その後訪れたケーキ屋…じゃなくて洋菓子店で。人気店の筈だけど普通に入れた私達。私は大好物のチーズケーキを、アカネちゃんは少し迷って「たまには甘い物もいいか」とクレームブリュレを、ホタルちゃんは全く迷わずにイチゴのショートケーキを購入。
店内の空いてる席に座って早速食べる事に。あ、何かキョーくんが羨ましそうに見ていたので、「家族用のお土産」と言う名目でホールのチーズケーキを買ってあげた。何故ホールのチーズケーキなのかって?私も食べるからだ。
食べてみたチーズケーキの感想は…評判通り、とっても美味しかった。味も舌触りも後味も全てが全て、パーフェクトである。私たち三人は幸せそうな表情をしていたと後からキョーくんに聞いた。本当に美味しい、また来ようかな。
本来の目的も終わり、私達は軽くショッピングして帰る事になった。問題はその帰り道で起きた。また、あの噂を聞いてしまったのだ。しかも噂好きのホタルちゃんが興味を持ってしまい、私達はそのビル前まで行くことになった。…正直怖いんだけどなぁ…
「だって興味でない?謎の白骨化事件!多分ビルの建っている土地に呪いとかあるんだよ!」
「でもホタル、胡散臭くない?」
「そうだよ、もしかしたらあの六道コーポレーションの顧客を奪うために他社が流した嘘の噂かも…」
「それがそうじゃないかもよ?」
反対しながらも付いていく私達二人に、そう言ってホタルちゃんが見せたのは先程購入していた今日の夕刊。そこには、確かにその事件の詳細が書かれていた。…マジなの…?
「と言う訳でその公園にレッツゴー!気になるもんね!」
「人が死んでいるのに何たいその明るさ…」
「アカネちゃんまた出てるよ…」
でも、興味はあった。それにこのままだとホタルちゃん「一人で行く!」とか言いかねないし、アカネちゃんも何だかんだで着いていくみたいだし、三人なら大丈夫だよね?と思い私も付いて行く事にした。大丈夫、大丈夫。事件何てそう起こらないよ。そう考えていた時期が私にもありました。
桜城公園。今もその時期である春に咲く桜が綺麗だからと名付けられた公園。確かにもう7時前だと言うのに、夜桜が輝いていて綺麗だった。よく見ると奥の公衆便所付近にkeepoutと書かれたテープ(?)が張られていた。あそこで事件が在ったんだ…こんな綺麗な場所でなんて…酷い。
「えっと、被害者はここに住んでいたホームレス男性みたいだね。朝になって遊びに来た子供が、ホームレスの服を着た白骨遺体を見付けたんだって」
「何だそれ。子供にとってはトラウマだろうな…」
「うん、その子は怖くて外に出られないってコメントしたって…」
「そんな子を問い詰めるマスコミも嫌だね」
でも、それ以外に変なものは無い…かな?傍のカーブミラーに映っているキョーくんもじろじろ見ているけど、別に何もない…と私は思う。
「ねぇホタルちゃん。変なものは別段無いみたいだし、帰ろう?」
「嫌だ。私の勘が言っているもん、犯人はまたこの公園に来るって!」
「それ不味いだろうが!殺人犯と直面したいのかアンタは!?」
「うん」
「よしアンタ殴ってやると、歯ァ食い縛り…!」
「アカネちゃん落ち着いて!また出てるよ!博多弁!」
全く悪びれずに私達を巻き込もうとしていたホタルちゃんに殴りかかろうとするアカネちゃんを必死に止める私。すると、変なモノを見付けた。さっきは気付かなかったが、暗がりにあって分からなかったのだ。
「ねぇ、あれって…」
「うん?何々!」
「あれは…水たまり?でも最近雨、振ってないはずなのに…」
公衆便所の傍に立つ桜の根元に、何やら煌めく液体が溜まっていた。私達は喧嘩(?)を止めてそれを見ようと近付く。それは直径30センチの水溜りに見えるけど、これはどちらかと言うと粘ついていて…唾液?まさか、考え過ぎだよね…そう思ってキョーくんを見ようと入口の方に振り返ろうとすると、キョーくんの慌てた声が聞こえてきた。
「ツクモ!後ろだ!」
「え…?」
疑問に思いながら振り返ると、さっきまで居なかった誰かがいた。血の様に紅いざんばら髪の小柄な少女で、目が血走っていて爪が鋭く尖り、赤みを帯びた体に黒いタンクトップと白い半ズボンに草履と言う、田舎に居そうだけど都会でなくても異様な容姿。それにキョーくんが叫んでいる、これって…?
「あたちの唾液に気付くなんてやるね、お嬢ちゃん」
「は、はぁ・・・」
えっ?あの水たまりってやっぱり唾液なの?でも、直径30センチも溜まるなんて、普通の人間じゃない。いや、本当に人間じゃない…?
「どうしたのおチビちゃん。こんな夜更けにこんなところに居ちゃ危ないよ、お母さんは何所?」
「…あたちをチビと言ったな?あたちよりも年下の癖に…」
「え?だって小さいでしょ?」
「ホタル!そいつは危険ばい!」
「この赤波しゃまを、チビって言ったなぁ!」
ホタルちゃんがその子の頭を撫でて注意し、アカネちゃんが叫んだその時だった。赤波と名乗ったその少女はあんぐりと口を開けると途轍もなく長い舌が螺旋を描いて飛び出し、私は咄嗟にホタルちゃんに向けて跳躍、ホタルちゃんを押し退け倒れ込むと、頭上をその長い舌がビンッとしなり、その方向に在った木に叩き付ける。
すると舌が触れた部分からシューシューと熔ける様な音が鳴り響き、桜の木が倒れて来て私は立ち上がって駆けつけてくれたアカネちゃんと一緒に気絶したホタルちゃんは引っ張り、押し潰されるのだけは回避する。い、一体何なの!?
「出てきよったな!人間を一晩で骨だけにするなんてどんな大食漢な妖怪でも無理だと思うとったが、アンタなら別やけんね!妖怪「垢嘗め」!」
「あたちの正体を見破るとは…そう言うお前は鬼か?人間と慣れ合うなんて天下の勇名妖怪も堕ちたみたいだの」
「五月蠅いとよ。人間を骨になるまでしゃぶりつくしたアンタに馬鹿にされたくなかと」
「えっとアカネちゃん…何の話をしてるの?」
もうなんか、私じゃさっぱり分からない話になってきた。助けを求めようとキョーくんの方を見ると、何時の間にか傍の公衆便所の窓まで移動していた。
「きょ、キョーくん!一体これ、どういうことなの!?」
「まさか君の方から妖怪に近付くなんて、さすがに思わなかったよ…とりあえず話は後で。ごめんねツクモ…交代だ…一護」
まるで意味が分からない言葉。そう、その言葉を聞くと「私」の記憶は飛んでしまうのだ。そして、別の自分が浮上する。
「呼ぶのが遅いぞ、キョー助」
キョーくんside
僕の声で目を瞑ったツクモの意識が沈み、目を開いた時代わりに浮上して来たのは、別の君。赤かった瞳が空の様に澄んだ蒼色に変化して切れ長となり、ポニーテールに括っていたリボンを外して腰までのロングヘアーにして白髪を銀髪に
彼女は僕を見ると笑い、アカネと対峙しながら一護を見た妖怪垢嘗めの少女、赤波は目を見開いた。
「なん…だと…!?」
「今更気づいても遅いとよ」
「おいどうした酒呑童子。どうせ人間は我らを見ておらん、さっさと正体を現さんか」
「言われなくても分かっとると!」
そう言って耳に付けていたヘッドホンを首にかけ、帽子を外すアカネ。彼女の耳は鋭く尖り、帽子で隠れていた頭頂部には金色の角が生えていた。彼女も妖怪、それも京都で名を馳せた大妖怪「酒呑童子」…即ち鬼だ。彼女は以前、ツクモが中学三年生の時に修学旅行で訪れた博多で出会い、僕と一護からツクモの境遇を聞いて味方になりわざわざこの街まで来てくれたいい奴だ。
ただの俄の鬼と思っていたアカネが酒呑童子で、さらにただの人間だと思っていたツクモまでそうじゃなかった事に気付いた赤波はダラダラと冷や汗を流しながらも、どうせ逃げられないと覚ったのか咆哮する。
「な、何が悪いんだよ!あたちをチビって馬鹿にするのが悪いんだ!あたちはただ、この公園にある人間の穢れを嘗めに来ただけなのに!ぽっと出で住み着いてたアイツが絡んで来たから…」
「激情して舌を出して殺してしまったと。さっきもただ心配しただけの人間の餓鬼を殺そうとした様だし、とんでもない激情家のチビ殺人鬼が居たもんだなァ、赤波さんよォ?」
「ち、チビって言ったな!どうなるか分かってんのか!」
「そっちこそ分かってんのか?お前が相手にしてんのは天下の酒呑童子と、この一護様だぞ?」
「し、知るかァァァァァァッ!」
「ちっ!」
やけくそとばかりに両手の鉤爪を振り上げて突進してきた赤波。アカネは飛び退いて拳を振り抜こうとするも咄嗟に四つん這いになって跳躍した赤波は天高く舞い、桜の木に乗るとさらに超高速で動き回り四方八方から舌を伸ばしてくる。触れたら穢れを舐めてしまう舌に当たるまいと体を捩じらせ回避するアカネ。
「っ、ならば!」
「おっ?」
アカネは後回しにするのか、今度は同じ手段で一護を狙う赤波。襲い来る舌に、何時ものツクモだったなら僕が対処していただろうけど、今は違う。妖怪じゃ触れないはずの舌を、一護はその動体視力で捉え、ガシッと掴むと両手で握りしめ力の限り引っ張る。
「んんんんんんんん!?」
「どうして触れるのかって顔だなァ。残念だが、今の体は妖怪じゃなくて人間なんでね。しかも何の穢れも無いとってもいい子だ。お前の汚らしい穢ればっかりを舐めて来た舌でも、握れるんだよ!」
「ん――――!?」
舌を引っ張られ、何とか木に鉤爪でしがみ付いていた四肢が外れ、ブンブン高速で振り回され公園中の遊具に頭から叩き付けられて行く赤波。傍から見たら可哀相だ。
「んんー!」
「おっ?何か言いたい様だなァ?」
「んぐーっ!?」
何か涙目で訴える赤波に一護は舌を放し、パチンッと嫌な音を響かせ戻る舌。彼女は涙目で口元を抑えていたが、すぐさま立ち直り、口を大きく開けて鋭い凶器と化した舌を伸ばす。
「死に耐えろ、馬鹿がーッ!」
「…キョー助」
「了解っ」
一護に言われ、僕は本体である隠し部屋の鏡を通じて取り出した、隠し部屋に置いてあったその武器を窓ガラスから投げ付け、一護はそれをキャッチ。赤波は窓ガラスから飛び出してきた「斬馬刀」を見て戸惑うが、一度出された舌は止まらない。
…この間、おおよそ舌が飛び出してから二秒。一秒経つより先に一護に届かないと、どんなに速い武器でも意味が無い。
「往生際が悪いぞ、チビが!」
「ギャアァァァァァァァァッ!?」
公園に響く断末魔。一護の言葉と共に、赤波は伸びた舌ごと一刀両断。斬り伏せられ、赤波は黒い霧と化して消えた。…死んでいないとは分かってはいるが、やはり後味が悪い「浄化」である。
何も、殺した訳ではない。赤波に満ちた邪念を斬り払っただけだ。一周間経った頃には、元の素直な綺麗好きの彼女がまた公園に現れるだろう。
「…相も変わらず強かとね、一護は」
「酒呑童子だって「殺さない」って手加減さえなければ簡単に捌けていたろう?ほら、帰るぞ。ツクモにはこの出来事は「夢」と言う事にしないといかん。この餓鬼も連れてここから去るぞ。さすがにあの断末魔だと、何事か誰かが見に来るかもしれぬ」
「…一護が振り回したせいで桜の木何本か折れてるけどいいのかな?」
僕はボロボロになった公園を見ながらそう言うと、ヘッドホンとキャップ帽を被り直したアカネは肩をすくめ、一護はホタルを担いだ姿でそっぽを向く。
「一本はアイツがやった、後は知らん。そうだ酒呑童子、この餓鬼を誤魔化すのは頼んだぞ。平時で後処理できるのはこの場で唯一人間の振りができるお前しか居ないからの」
「分かっておるとそんな事。何時もの事やけん、毎回聞くもんじゃなかよ!」
「…どうでもいいがお前、京都生まれなのに完全に染まってるな」
「…気にせんでほしか」
「京都妖怪だから十年足らずで博多に染まっている自分を嫌うのは分かるけどね」
僕達はそのまま、帰路に着く。駅辺りで一護はツクモに戻るようだ。さて、そろそろ僕の正体だけでも言わないとツクモに怪しまれるかな…嫌わないで欲しいなぁ…
そんな訳で後日。夢だと思っていたのにアカネが全然誤魔化し切れてなかったホタルの一言と、ホールのチーズケーキを入れていた箱が少し潰れていた(恐らくホタルを押し倒した時に持っていたからだろう)のを見て、赤波の件を思い出してしまったツクモに問いただされ、僕は答える事にした。
「どういう事なの、キョーくん!」
「…今まで黙っていてごめんね、ツクモ。もう分かっているとは思うけど、僕は人間じゃない…妖怪で、雲外鏡って言うんだ」
「うん…がい…キョー?」
…思ったより、ツクモはまだ幼い思考の様だ。彼女の呆けて目が点になって口を開けた表情を見て、僕はそう思った。
どうだったでしょうか?以下↓簡単なキャラ紹介。
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通称ツクモ。何故か複数の人格を持っている、自分の事をよく知らないため自信を持てない引っ込み思案なアルビノの少女。高校生にしては精神が少し幼いがしっかり者で基本ツッコミ役。無駄に鋭いが頭は悪い。キョーくんの事が大好きで、彼と出会ったことで人生が変わったという。
名前の由来は百鬼夜行の百から一を抜いた九十九と、引っ込み思案な性格から。
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通称キョーくん。一護からはキョー助と呼ばれる。ツクモの家の隠し部屋にある巨大な鏡が本体で、基本普通の人間には見えない。本体の鏡から何か映る物を通じて移動でき、鏡の中からツクモを見守っているストーカーに近い人。本人曰く文系らしい。幼少期に出会う前からツクモの事を何か知っている様で、彼女に向かって「交代だ」と彼が言う事で人格を交換する事が出来る。
その正体は妖怪「雲外鏡」実体は鏡の中でしか保てないのだが、鏡を通じて物を運ぶことができる。名前の由来はその「外」の漢字を変えただけ。
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通称アカネ。ツクモが高校生になると同時、今年の三月末に博多からやって来た少女。京都生まれだが親の都合で10年間九州の博多で過ごしたため下手な博多弁が染み付いてしまっているのを恥だと思っているのだが、感情が昂るとすぐに下手な博多弁が出てきて恥じる。何時もヘッドホンとキャップ帽を着用している。
その正体は妖怪「酒呑童子」ヘッドホンとキャップ帽で角と尖った耳を隠していて、外した時には上機嫌になるためか常時下手な博多弁になり、パワー技を武器とする近接戦闘のプロ。一応未成年だが飲酒を好んでいる。ツクモの修学旅行の時に仲間になったらしい。名前はその漢字を変え名字と名前を引っ繰り返しただけ→
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通称ホタル。ツクモとは小学三年生からの親友。一言で言うなれば「THE普通」な少女だが、野次馬根性と言うのか無駄に好奇心旺盛で、ツクモを巻き込み怪事件に首を突っ込む為キョーくんとアカネからは問題視されている。危機感も全く無く責任感も無い、真性のアホである。ただの人間の様だが…?名前の由来は木下藤吉郎と何となくである。
・
今回のゲスト。一目では幼い人間の少女だが、桜城公園で一晩白骨化事件を引き起こした妖怪「垢嘗め」本来は風呂などに残る人間の垢、つまり「穢れ」を舐めとり掃除する妖怪だが、体内に溜めた穢れを外に出さないと時折邪気が出て暴走する。何時も通り桜城公園に溜まりやすい穢れを嘗めに来た際に、最近住み着き始めたホームレスに「チビ」と言われたために年上(?)のプライドが許せず、穢れに対しては酸よりも強力な唾液を出すその舌で穢れだらけのホームレスを嘗め取り白骨化させた。
その後、結局嘗められなかったらしい穢れを綺麗にするために桜城公園に訪れるが(数日の間は警察が来ていたため来れなかったようだ)、そこでツクモたちと遭遇。普通の人間には水溜りに見える自身の涎溜りを見抜かれた事で襲いかかるが自慢の舌を利用されて振り回され、弱ったところを浄化された。
キョーくん曰く、元々は素直で綺麗好きな性格の様だ。名前の由来はあかなめの「め」を「み」に変えた物を漢字にしただけ。
・一護
ツクモの別人格の一つ。キョーくんをキョー助と呼ぶ、彼曰く「彼女を守護する第一の人格」らしい。名前も由来もそこ。
普段は武将の様な古風な口調と性格だが、戦闘時には不良みたいな相手をとことん煽る口調と性格となる戦闘狂に近いナニカ。ツクモとキョーくんにしか興味が無いらしく、妖怪の事は種族名で、人間は第一印象(「餓鬼」など)で呼ぶ。斬馬刀が武器で、ほぼ一撃で邪気に染まった妖怪を浄化できる。ツクモ自身を守護する人格な為か滅法強いが基本馬鹿。
無駄に濃い設定に定評のある(らしい)放仮ごです。毎回こんな、奇妙な怪事件が起こります。
次回「鉄骨消失転落事件」どんな妖怪が登場するのかは、お楽しみに。感想もらえると嬉しいです。