今回は半分ぐらいアカネが主役です。お楽しみください。
深夜10時程、ツクモ達の住む町の路地裏で。
「「「ギャアァァァァァッ!?」」」
「…七分の一蹴…!馬鹿共め。この私に不埒を行うからだ」
その少女の足技が冴え渡り、不良らしき男三人が吹き飛ばされた。彼らは少女にナンパをし、丁寧に断る彼女に痴漢を働いたのだ。
「す、すまなかった!もう、絡んだりしないから!」
「ゆ、許してくれぇ…」
「な、ナンパしただけで殺されてたまるかよ!」
「この私の尻を撫でて来たのは貴様等だろうが。万死に値するに決まっている」
「「「ヒィィィィッ!?」」」
少女は175㎝の長身で藍色の長髪をサイドテールにした金眼でGカップはあろう胸を持ち、白のタンクトップと右足の太腿部分から破れてすらりとした右脚が露出したジーパンと草臥れたスニーカーを着用していた。一目だとスタイルのいいだけの普通の少女だが、彼女の放つ覇気はまさしく妖怪のそれであった。
「五月蠅い」
「「「ギャッ!?」」」
目にも止まらぬ、三連撃。ビシュビシュビシュッ!と空気を切る音と共に彼女の右足が不良三人の首を捉え、叩き折っていた。彼女は目の前に在る死体三つに、どうするか考える。
「…騒ぐのが悪い。まあちょうどいいと言えばちょうどいいか…おい、飯が出来たぞ!」
「待っておったぞ、妾はもう腹ペコじゃ」
彼女の呼び声に反応し、すぐ傍のマンホールの蓋を押し退け中から出て来たのは、沢山の足を持つ巨大な影。少なくとも、全長20メートルで幅2メートルはある怪獣と言ってもいいサイズだ。そいつはシャカシャカと路地を挟んでいる建物の壁を這い回り、その影は鎌首をもたげて少女に了承を得ると、頭部の二本ある紅い触角を伸ばして不良三人のうち二人に巻き付いて背中に乗せると長い体でとぐろを巻いて固定、それでも大量にある足をワシャワシャさせて路地裏の先に進み出す。
「さすがの妾でも、この二匹を担いで下水道を抜けるのは無理があるのでな。もう一匹は頼むぞ」
「分かっている、ルームメイトの餌だ。ちゃんと運ぶさ、証拠を残さないためにもな。…ここを片付けたら追いかける、先にアパートに帰っておけ。くれぐれも…」
「人間に見つかるなよ?だろ。分かっておるわ、妾とて馬鹿ではない。少なくとも、痴漢されて衝動的に殺してしまったお前とは違うのじゃ」
「…すまなかった」
「飯が出来たから結果オーライじゃ」
そう言った影は路地裏のすぐ先にあった現在夜の為無人の建築現場の鉄柱に這い付いて上がって行き、鉄骨の足場を夜の闇に隠れる様に這って行く。己の牙から、体液を垂らしながら…その数分後、凄い風が建築現場の鉄骨の足場を駆け抜けて行った。それが、大の男一人を担いだ細身の少女とは誰も思うまい。
そして数時間後。明朝、濃い霧が出ていた時間帯に、事件が起きた。
「う、うわーっ!」
数時間前に影が這っていた鉄骨の足場から、命綱を付けていたはずの作業員の男が足場の鉄柱が綺麗に取れて落下、何故か命綱も切れておりそのまま命を落としたのだ。さらに不可解な事に、首の骨が背中側に折れていた。公園での白骨死体事件は未解決事件として片付けられ、警察はその新たな事件の捜査に乗り出した。…だが、正直彼らにはどうする事もできないであろう。ただの人間に手がかりを見つける事など不可能だ。しかし、妖の者ならばそれも可能である。
さて、物語は昨日の夜…白骨死体事件から三日後に遡る。例の隠し部屋にて、自身が妖怪「雲外鏡」である事を明かしたキョウに対し、ツクモは怒っていた。それはキョウが妖怪だからではない、そもそも人間じゃないとは気付いていたのだ、今更それがなんだ。彼女が怒っているのは、キョウが9年もの間その事を隠していたからだ。
「キョーくんは友達でしょ!何で私に内緒にしていたの?!」
「え、えっと…人間じゃないなんて言ったら嫌われると思いまして…?」
「私がキョーくんを嫌いになる訳ないよ!うんがいキョー?なんて事を知って、一番の友達の私がキョーくんを嫌いになるとお思いですか!」
「ごめん、ぶっちゃけそう思ってました」
「もう知らない!」
“友達”である自身を信じていない、そう思った彼女はお怒り気味に隠し部屋から出て行き、バタンッ!と扉が閉まる大きな音が響いた。ただただいつもとは違う、怒髪天と言ってもいいくらい怒っていたツクモの迫力に押されていたキョウは「ふぅ…」と溜め息を吐く。ツクモに知られてはいけない最重要機密事項である「多重人格」の存在を明かさずに済んだからだ。
「アカネの事も教えずに済んでよかったかな…でも、ツクモがあんなに怒るなんて…これは見つかっても無視される可能性が高いな…しょうがない、半ば強制的に交代させてもらおう」
少し卑怯な事を考える自分に、嫌悪感を覚えるキョウであった。
翌日、学校に向かうツクモが心配で着いて行くキョウ。いつもはあちらから話しかけて来るのに、今回はツーンとあからさまに無視している。やれやれ、大変だな…と苦笑するキョウだったが、目を放したその隙にツクモが擦れ違ったヤクザ風のスキンヘッドの男にぶつかってしまったらしく、もめていた。
「おいおいおい!ぶつかっといて謝礼も出ないのかァ!ええ?!」
「ふえぇぇ…」
「(…はぁ、やれやれ)。しょうがない…交代だ、
「…早く変わりなさい、下僕」
「聞いてんのかァ!」
瞳の色が緑に染まってタレ目となり朝だから良く分からないが銀髪となったツクモの様子に気付かないスキンヘッドの男は威圧する。が、ツクモに向けられたとつても無く冷めた目に怖気付いた。
「貴方こそ何馬鹿な事を言っているんですか?謝るのは貴方の方です、糞で塵で屑という言葉でさえ似合わない、最高なまでに阿呆な貴方がね」
「なんだと!」
「だってそうでしょう?何やら物思いに耽ってぶつかって来たのは貴方の方。私はちゃんと前を向いていたのに貴方がよろめいてぶつかって来たのですから。よかったですね、下僕が選んだのがわたくしで。もし暑苦しい一護でしたらフルボッコじゃすみませんでしたわよ?」
「な、何を言っているんだァ!」
「…はぁ、これだから阿呆は…!」
正論だったのか顔を赤くして完全に逆ギレしたスキンヘッドの男は両腕を振り上げて突進してくるが、今のツクモ…二藤は冷静に体を屈めてホールドを回避、横に飛び出すと足払いを掛けてその巨体を引っ繰り返し、倒れ込んだ男の背中を踵で踏みつけ、ギリギリと動かして恍惚な表情を浮かべる。
「ぐっ…ぎゃぁ…」
「貴方が悪いのですよ?大事な友達と喧嘩して傷心していた私にいちゃもんを付けて精神的に追い詰めるなんて。わたくし的にも許せない事なのですが、正直言って貴方みたいな阿呆で気が強い巨漢を虐めるのも楽しそうなのでこうしています」
「ふ、ざけんな…」
「どうですか豚さん、気持ちいいですか?それとも痛いですか?ほらほらほらほら。ごめんなさいを子供の頃に習いませんでした?ほらほらほらほら。あー、貴方が妖怪じゃなくて残念ですよ。人間なので殺しはしませんが缶蹴りで永遠に鬼役の刑で捏造したセクハラ写真をネットにばら撒いて素っ裸で遊園地十周させる何ていいかもですね」
「ご、めん…な、さい…かふっ」
もう執拗なほどに踏み躙られた男はあまりの痛さに涙やらの液体で顔をぐちゃぐちゃにしながら気絶、二藤はそれを確認すると今度は両足で男の背中に乗り踏み付けてから降りて近くの鏡に顔を向ける。
「もうめんどくさいのでこのまま学校に行きますよ、下僕。安心しなさい、わたくしは下僕の貴方を無視したりはしません」
「それはどうもありがとうございます…あっ」
「どうしたんですか下僕…あっ」
「お巡りさんこっちです!」
当然と言えば当然だが、見ていた人が通報したらしく警官が駆けつけてくる。ほぼ無傷の二藤の傍らには泣きながら気絶したスキンヘッド。どう見ても、女子学生がスキンヘッドを痛めつけたと見えるだろう。だとするならば、誤魔化すぐらいの巧みな話術と演技力が無ければならない、そう考えたキョウは二藤の返事も待たずに交代を告げる。
「交代だ、
「ちょっ、…任せて♪」
今度は黄緑色の瞳で無邪気な子供の様な笑みを浮かべるツクモ。今の彼女は先程までのドSな二藤でも、熱血漢の一護でもない。第三の人格、三好だ。彼女はブワッと涙を溢れさせ、警官に縋り付く。
「お巡りさん!ぶつかって来たあの人が私に言いがかりを付けて来て怖くて恐くて、あの人のあそこを蹴ってしまったんですぅ!」
「いや、通報だと女の子が大の男を痛めつけていたって…」
「私がそんなことをできそうに見えますか?怖かったんですよ!」
「ご、ごめんなさい!分かりました、男は捕まえておくから、君は学校だろ?急ぎなさい」
「はい、ありがとうございます!」
そう言うなり三好はダバダバ出していた涙を止めて満面の笑みを浮かべ、カバンを持つと目にも止まらぬ速さで学校に走って行った。…もちろん、嘘である。彼女は人を騙す事が出来る演技に長けている第三の人格で、実にあざとい。どんなに疑われてもすぐに切り抜けてしまう押しの強さを持っているのだ。
「ふふっ、これでよかったかな?キョーっち♪」
「あーうんありがとう三好。じゃあもう引っ込んで、ツクモは学校に行かないと…」
「いーやーだ!久々に出られたんだもん、たっぷり遊んで行くの!学校なんてやだやだー!キョーっちのケチ!一日ぐらい休んでもいいじゃん!ツクモだって疲れているに決まってるもん!」
「ツクモに別の人格がばれてしまうから駄目!ほら、さっさと引っ込んでくれ!交代だ、
「待てって言って…はい、代わりましたキョーさん」
駄々を捏ねる三好に有無も言わさず交代させるキョウ。現れたのは第四の人格にして、ツクモの中に居る人格の中で一番の常識人にして人格者、四季咲だった。瞳の色は蒼と翠のオッドアイに変化し静かな笑みを浮かべており、どこからか取り出した銀縁眼鏡をかけて見る者全てを恋に落としそうな笑みを浮かべる。
「他の「私」がお騒がせしました。さあ、早く行きましょう?」
「う、うん…」
物腰柔らかな態度ながらも有無を言わさず歩き出す四季咲に、少し調子が狂いながらも着いて行くキョウであった。
そして数分後、急ぎ足で歩いたその先にツクモ達の通う不知火高校があり、四季咲は難なく教室に入る事が出来た。廊下側の一番後ろにある自身の席に座り、溜め息を吐く四季咲。のんびりスローライフが信条である彼女には、急ぎ足はかなり堪えた。そこにアカネとホタルがやってくる。
「ツークモちゃん!おはよー!今日は眼鏡なんだ?」
「あ、おはようございます…」
「…今日は「よん」ね。お疲れさん」
「労いの言葉ありがとう、アカネ」
「え、何々ツクモちゃん疲れてんの?」
「いいえ、こちらの話ですわ。ふふっ♪」
何も知らないホタルに邪気の無い笑顔を向ける四季咲に、アカネは「相変わらず人付き合い得意だな」と隠れて溜め息を吐き、四季咲はのほほんと笑う。そんなツクモに首をかしげたホタルは、何かを思い出したように顔を輝かせた。
「? 変なツクモちゃん。あ、そうだ知ってる?!今アカネちゃんと話していたんだけどね!」
「いやいや、ホタルが勝手に話していただけでしょ」
「どうしたのですか?」
「それがね、また変死体が発見されたんだよ!今度は建築現場でね、鉄骨の足場が綺麗に切り取られて転落したらしいんだけど、首の骨が変な風に折れていたんだって。背中に反る様に…ね?変だよね!」
「確かに変ですね。でもまた行くのは勘弁ですわ。気絶したくはありませんし?」
「アレは多分、犯人に殴られたからだと思うんだよね!」
ホタルは赤波に襲われ気を失っていた件を、単に皆で気絶していたと思っている。…というかそう思わされてる、アカネの妖術で。しかしホタルは全然懲りてないらしい。
「という訳でさっそく放課後に行こうよ!」
「本当にそう言うの好きですねホタルは…しょうがない、行きましょうか」
「えっ、行くの?」
「ええ行きましょう。勝手に死なれてはツクモが困ります」
「あ、なるほど」
放っておいたら間違いなくホタルは一人で行くだろう、そうなってもし命を落としたりしたなら、間違いなくツクモが悲しむ。だから四季咲は着いて行くことにした。尻目で窓ガラスに映るキョウを見ると、「しょうがないね」と肩をすくめている。それを見て、アカネは溜め息を吐く。
「はぁ…分かった、私も行くよ」
「そうこなくっちゃ、じゃあさっそく放課後行こう!」
「ホームルームだ、黙って席に着け馬鹿な餓鬼共ォ!」
と、三人で約束していた所にガララッ!と引き戸を開け入っていきなり罵倒して来たのは、紫色のジャージのズボンを着ていて白いシャツの上に紫ジャージの上着を袖に通さず背中にかけた、両腕に肩まで何やらお経が書かれた包帯を巻いている、医療用の眼帯を右目に付けた三白眼で、黒髪の揉み上げを腕に巻いている物と同じお経が書かれた包帯で長く纏めているために長髪が背中側に垂れずスタイルのいい胸元に流している、煙草を咥えた不良染みた雰囲気を持つ女性「
このクラス「1-D」の担任で古典の教師だ。不良染みているが大学の教授並に頭がよく、教え方も上手いために何だかんだで人気の教師だ。
しかしその覇気は極道と言っても通じる程で、そんな彼女に睨まれたホタルは慌ててツクモの隣の席に戻って行き、アカネはツクモの前の席に着く。すると教壇に立った杏林はうだーと正々堂々机に突っ伏し眠ろうとする四季咲を見て口を開く。
「おい影山ァ!何正々堂々眠ろうとしてんだ、ホームルームって言ったよな?」
「あ、すみません…ちょっと登校中に言いがかりを付けられまして…」
「それは難儀だな、だけど眠るのとは関係ないだろが。ほら、さっさと起きんとしばくぞコラ!」
「起きますからご勘弁をば、杏林先生」
慌てて起きて取り繕う四季咲。ツクモの知らないところで問題を起こす訳には行かず、疲れて眠い所を頑張る四季咲。しかし春の陽気と疲労感には敵わず、すぐさま目蓋を閉じて眠ろうと…
「起きろって言ってるだろうが!」
「はうっ!?」
直後飛んで来たチョークを額に諸に受け、ジンジンと痛む額を押さえて四季咲は涙目で杏林を睨んだ。
~お昼休み~アカネside
私達は食堂にて、それぞれ四季咲がカレーライス(山盛り)、ホタルが日替わり定食Aランチ(噂ではDランチを食べた物は一週間休んでしまうらしい。七不思議の一つだとホタルが言っていたがどうだか…)、私は鰻丼と言う具合に頼んで窓際の円い机の席のソファに座って昼食を取っていた。設備だけなら無駄に充実している高校である。
四季咲は未だに赤く腫れている額を左手で押さえながら器用に右手で皿を一切動かさずにスプーンを運んでいた。さすが、無駄に器用な奴だ。
「あいたた…まだ痛い…何なんですかあの教師、生徒に全力で手を出すとは…」
「教壇から一番後ろの、しかも廊下側の端っこの席の子の額に当てるって人間技なのかな?」
「さあ、ハハハ…」
言えない、まさかあの教師が妖怪「経凛々」などとは、絶対にこの馬鹿には言えない。四季咲も気づいていない様だ、この場合はキョーが気付いているのに危険性は無いからと言っていないからであろうが。…影山九十九の別人格達では、相手が妖怪だと気付く事が出来る者は「とある二人」を除いて居ないらしい。
「と、とりあえず食べるとね。腹が減っては戦は出来ぬって言うと」
「また出ていますよ、博多弁。中途半端に下手なの止めてくれませんか?」
「好きで下手なんじゃなかと!じゃなくて好きで下手な訳じゃないしうっかり喋りたくもない!」
「どの口が言う。もぐもぐ。うーん、この磯辺揚げ、地味に美味しくないなぁ…しけってる」
「そ、そうなの?ハハハ…」
言えない、この厨房のおばちゃん(と言うにはとんでもない美人。海に入ってそのまま放っといた様な湿り気を持つ黒髪で目元が隠れていなければ普通に美女である)、
「もう勘弁してくれったい…誰が尻拭いしてると思てると…」
「いつもご苦労様、アカネ」
何か窓ガラスにツクモと並行して映っている少年が何か言っているが気にしない。面倒な事後処理を押し付けてくる馬鹿など無視に徹する事にする。ホタルもいるし、四季咲も無視しているし。
「では、詳しく教えてもらいましょうか」
「おkおk、被害者は六道コーポレーション名義の高層ビルを建てていた建築現場の作業員の一人、田中徹さん35歳。ローン持ち。誰よりも早く来て作業していたらしいんだけど、付けていた命綱が何故か切れていて、同時に乗っていた鉄骨の足場が2メートル程の長さで綺麗に取れて、数十メートル下の鉄骨の山に落ちたんだって。死因は落ちた衝撃じゃなくて、恐らく落ちた時に真上を見ていたためになったと思われる背中側に折れていた首の頸髄の圧迫とかなんとか…他には、硫酸みたいな酸性の水滴で零れ落ちたみたいな切断面で、酸性雨が降った訳でもないので原因不明の事故もしくは、命綱が人為的に切られた殺人の線がある、って警察は朝8時半頃に発表してたよ。…そう言えば見つかる早さも何か可笑しいね、匿名で通報があったって言うからもしかしたら殺した張本人がかけてきたのかも」
「長台詞乙です、ホタル。確かに奇妙な事件ですね。…酸性、つまりは毒…?しかし今朝起きたばかりの事件だとしたら、この間の白骨事件見たく現場に行っても入れないのでは?」
「それに限っては問題ないのです!何故なら!私のパパは…」
「刑事だから、って言うつもりじゃないですよねホタル?」
「警部だか…って何で分かったのツクモちゃん!?」
「「警部!?」」
初耳だ。普通に警察の情報を手に入れているからただの一般人じゃない事は分かっていたけど、まさか本当に警察…しかも刑事じゃなくて警部の娘とは。…多分機密情報なのにそれを高校生の、しかも口の軽い噂好きの娘に話すなんて駄目だと思うけど。
「そ。木下
「もしかしてこの間の白骨事件の情報も今回の情報も、そのお父さんから?」
「ううん。手帳を盗み見て」
「何やっとるたいアンタはァァァァァッ!」
「悪いとは思っている反省はしていない。へぶっ!?」
「ホタルが悪いですねこれは」
思わず、全く悪びれず犯罪を話すホタルに鉄拳(もちろん手加減した上での)制裁を浴びせてしまう。こいつ…面白ければ何でもいいのか。注意しないと、色んな意味で。
「だ、大丈夫だよ…パパにはバレてはないからさ…」
「それでも十分犯罪ですよホタル…まあいいです。で?」
「パパに頼まれた物持ってきましたー、この二人はただの付き添いでーすとか言えば?」
「うーん、それは無理だと思います」
「同感。詳しく調べるのは無理だと思う。諦めた方がいい」
「ええー」
正直な気持ちだった。正直、私達だけならともかくホタルまで連れて行ったら犯人と思われる妖怪と戦う際に邪魔になるどころか私達の正体までバレてしまいそうだ。すると、ホタルは諦めたのかぶーたれていた顔をすぐさま何時ものハツラツとした笑顔に変え、メモ帳を取り出して何やら言い始めた。
「もういいよ。だったらさ!他にもその付近で不良三人組が行方不明になったって話もあって…」
「あーああー!もう怪事件の話はやめい!せっかくの昼食が不味くなる!」
「そうですよ。それより早く食べないと、五時限目の杏林先生の授業に遅れますよ」
「そーだった!?はよ食べな!」
「「何故に関西弁?」」
…もしかしてホタルも、関西の生まれなのか?まあいいか、知ったことじゃないし。…あーあ、話している間に鰻丼が冷めちゃってる。しょうがない…私は両掌を妖術で熱し、お椀に両掌を押し付け、熱して電子レンジの如く温める。よし、ちょうどいいかな?
「改めまして…いただきます」
「礼儀正しい人ですねアカネは。ご馳走様」
「「喋りながら食べていただと…!?」」
「いや、カレーライスぐらい3分で食べれますし」
ウェットティッシュで口元を拭う四季咲に、思わず呆れる私達。いや、それは多分ツクモだけだ。…結局、私と四季咲は間に合ったが全力で話していたホタルは間に合わず、杏林先生に絞られた。
その夜10時頃、私は私服姿で四季咲と(ついでにキョウと)共に件の建築現場に来ていた。なるほど、keepoutはされている物の警察は誰も居ないな。とりあえずと私は妖術で自身と四季咲の姿を妖力を持つ者以外には見えなくし、四季咲と一緒にkeepoutのテープを跨いで現場に忍び込む。しかし、首の骨が折れて死亡、か…
「やっぱり、気になるよね」
「不自然な首の折れ方の事?確かに…」
「そうですね。そんな死因は普通ならばありえません、妖怪の関与が高いと思われます。それと、固定されている二メートルの鉄骨が簡単に取れたってのも気になります。…これですね」
そう言ってキョウの言葉に応えた四季咲が指差したのは、被害者を表す白線が重なった赤い鉄骨。確かに側面が熔けた様に歪んでいる。試しにその表面を人差指でなぞり、それを口まで持って行き舌で舐めると、強烈な痺れと辛み、その他諸々刺激的な物に混じる甘味と言った味が走る。これは…
「…大百足の毒だ」
「大百足ですって?」
「平安時代に京の都でその名を轟かせた、大妖怪だね。陰陽師に封印されたって最期と聞いたけど…」
「その封印が解けて、人を襲ったって事ですか?」
「いやいや、大百足は人喰い妖怪、死体が残っているのは不自然よ」
「そう言えば不良三人組がちょうど事件の起きた昨夜に行方不明になったって最後にホタルが言ってたね」
「そちらは大百足の仕業で間違いないでしょうね。では、何故この鉄骨に大百足の毒が…」
「…その答えは、本人達が教えてくれそうだ。隠れるぞ!」
「「え?」」
私は四季咲の袖を引っ張り、慌てて山になっている鉄骨資材の物陰に隠れると同時に、それに気付いたキョウは近くのガードミラーから姿を消す。…便利だなオイ。よく見たら靄みたくなっているが。それよりこっちだ。何か、奥の街灯により照らされている地面で人影が動いているのだ。どんどん近づいてくることから見て、恐らく警察か…犯人か、どちらかのはずだ。と、その瞬間。人影が二つに増えた。唐突にだ。耳を澄ませると、二つの声が聞こえてくる。
「…双方、女の様ですね」
「警察じゃ、なさそうだ」
「しっ、何か…!?」
瞬間、目にも止まらぬ斬撃が私達の隠れている鉄骨資材に放たれ、私は咄嗟に四季咲をお姫様抱っこして飛び出し、斬撃は鉄骨資材を両断していた。あ、危なかった…今のは、戟か?
「ほう、こんなところに人が居るとは…学生の身じゃろう?こんな時間に出歩いたら危ないぞ、小童共」
「夏目。どう見ても普通の人間じゃないぞ、片方は鬼だ。もしかしたら関与しているかもな」
「それは…妾達の敵、と言う事かの?」
現れたのは、藍色の髪をサイドテールに纏めた白のタンクトップと右足の太腿部分から破れてすらりとした右脚が露出したジーパンと草臥れたスニーカーを着用した長身金眼巨乳の少女(?)と、明らかに異質な女。
もう一人は黒緑色の腰まで伸びた長髪を首辺りで注連縄で括った部分から扇状に広がるロングヘアーと言った特徴的な髪型で、額に二本の赤い触角が生え、黒い瞳孔の赤い目で口元には牙が生えている、さらしを巻いた上半身の上に濃い緑の十二単を改造した軽装を身に纏い、素足に厚底下駄を穿いた正体隠して忍ぶつもりなんて全くない大胆すぎる服装の、異質な部分さえ除けば非の打ち所のない美女だ。…あの注連縄、確か封じの注連縄…?まさか。
「まずは自己紹介と行こうか。私は
「世を忍ぶ仮の名は
「…やっぱり大百足か、韋駄天までいるとは驚きたい。…天道寺朱。酒呑童子だ」
「…四季咲。他は語れませんがご容赦を」
「よいよい、死人に口なしと言うからの」
「気が早すぎるぞ、夏目」
しかし竜崎とか言うあの大百足、見た目は異質だが、それ以外はあまり強くないな。妖力で分かる、封印されているのか…それとも弱っているのか…どちらでもいいな。とにかく、まだキョウの存在は知られていない。何とかなる筈だ。とにかく、ツクモの体を守る!
「キョーさん、武器を」
「分かった」
瞬間、水たまりから出てきて四季咲の手に握られたのは、UZI…いわゆるサブマシンガンもしくは短機関銃、を二丁。四季咲はそれをガチャリと構え、いきなり登場した武器に驚く韋駄天と大百足に銃口を向ける。
「安心してください、降参させて話を聞くだけなので。あ、間違えて浄化してしまうかもしれませんが」
「邪の化身である大百足には効きそうたいね」
私も帽子とヘッドホンを外し、近くの鉄骨を軽々と持ち棍棒代わりに構える。すると竜崎夏目が笑い出した。
「アハハハッ、妾達を降参させる?それはお主らの間違いではないのか?本気でそう思っているのなら…甘いのじゃ!」
「ここまで馬鹿にされたのは初めてだ。万死に値する。安心しろ、死体は残さない」
そう言って荒木刹那は地面に置いていた戟…正確には方天戟の長柄を蹴り上げて構え、竜崎夏目は何所からともなくやって来た長い長い百足…いや、まるで生きている様にのた打ち回る黒緑色の百足を模した鞭を構える。…これ、前回の赤波より骨が折れるとね…絶対強いとよ、この二人。
次回に続く!
そんな訳で、ツクモとキョーくんの喧嘩回でした。よってツクモの出番は全くありません。これでも主役です。今回判明しましたがカレーライスが好物です。
以下↓簡単な(と言いながら濃い)キャラ紹介。
・二藤
ツクモの別人格の一つ。キョーくんを下僕と呼ぶ生粋のドSお嬢様。変化すると瞳が緑に染まってタレ目となり、白髪も銀髪に染まる。今回変えてはいないが縦巻きロールツインテールが好み。
とにかく相手を痛めつけたり拷問したりお仕置きを考えたりするのが大好きで、反論を許さない弾丸論破な「口撃」が得意。相手をとことん蔑むために問題ばかり起こすが、その分不良などへの対応はピカイチ。性質上あまり交代されない不憫さん。武器は大昔拷問器具として用いられたというメイス。頭部に決まれば一撃で浄化できる…が、とことんえぐい。
・三好
ツクモの人格の一つ。キョーくんをキョーっちと呼ぶ生粋の演技派。変化すると瞳が黄緑色に染まって無邪気な子供の様な笑みを浮かべる、子供っぽい雰囲気となり白髪も銀髪に染まる。今回変えてはいないが髪をキャップ帽に納めて男装するのが好み。
口から生まれた様な誤魔化し上手で実にあざとく、押しの強さも持ち合わせていて目薬なんて無くても何時でも涙を出せる、「即泣き落とし」が得意。彼女のおかげで警察のお世話にならない様な物。しかし子供っぽいからなのか我儘で自己中心的な性格でキョウは少し苦手意識を持っている模様。スリングショットにブーメランと、子供みたいな武器を用いる。腕力が無い為に銃や弓矢は苦手だが射撃スキルはピカイチ。しかし威力が弱いため、浄化には時間がかかると言う弱点がある。戦闘向きではない。
・四季咲
ツクモの人格の一つ。キョーくんをキョーさんと呼ぶ一番の常識人にして人格者。変化すると瞳が蒼と翠のオッドアイに染まって銀縁眼鏡をかけていて、白髪も銀髪に染まる。今回変えてはいないが好みはオールバックでおでこに自信あり。
見る者全てを恋に落としそうな笑みを自然にできる人格で、丁寧語で物腰柔らかな態度ながらも有無を言わさない委員長タイプ。人付き合いが得意で、ツクモが多くの友達を持てたのも彼女のおかげ。しっかり者で後先の事をよく考え行動できる。武器は二丁のUZIで、一切動かず銃撃で相手を追い込み降参させる戦法を信条とするが、頭部にヒットさせれば即浄化可能。ジークンドーも嗜んでおり、意外に一護に続いて武闘派だったりする。
・
ツクモのクラスの担任で古典の教師。極道と言っても通じる程の覇気を放ち、不良染みているが大学教授並に頭がよく、教え方も上手い為何だかんだで人気の教師。チョーク投げを得意としていて、その正確さはゴ〇ゴ並。生徒だからと言って容赦はしない人。
キョウとアカネだけが知っているその正体は妖怪「経凛々」簡単に言えば経文の記された巻物の付喪神である。その知識を生かして教職に就いた。名前の由来は経凛々の当て字。杏林なんて単語があって驚きました。…大学でしたっけ。
・
ツクモの通う不知火高校の食堂に務めるおばちゃん。40代だが美人の部類に入り男子生徒からは人気だが、何故か揚げ料理がしけってしまい揚げ料理は人気が無いが、それ以外の料理は得意らしい。アカネの古くからの知人で近畿地方の海辺の町出身。子供がいる。
その正体は妖怪「磯女」住処である浜に足を踏み入れ赤子を泣かせた人間を海に引きずり込むと言う妖怪なのだが、その赤子が成長しそんな心配も無くなったため働きに出た。ちなみに息子は小学生らしく親馬鹿でもある。名前の由来は磯辺→いそべ→五十部。
・木下
ホタルのパパで警視庁捜査一課の警部。娘に捜査資料を盗み見られ危険に巻き込んでいるが、それでも優秀な警察官で正義感も強く、近頃起こる怪事件の捜査に当たる。しかしどこか抜けている。イメージ容姿はザンキさん…じゃなくて松田賢二氏。
今回は名前だけで未登場だが、その内登場予定。名前の由来は木下藤吉郎→豊臣秀吉→ひでよし→英吉(ひでよし)→英吉(えいきち)。
・
四季咲たちが調べに来た建築現場に現れた、スタイルのいい謎の少女。その正体は最速の妖怪「韋駄天」多分誰も知らない。尻を撫でられるなどの痴漢行為他、自分を貶めるような行為が大嫌いな自信家で、冒頭にて痴漢を働いた不良三人組を蹴りで首を叩き折り殺害、それを謎の巨大な影に与えていた。常人には風にしか見えない速度で走る事が出来る。
夏目とはルームメイトで、武器は方天戟と目にも止まらぬ足技。一応人間世界に忍ぶつもりはあるらしいが(少なくとも夏目よりは)、無駄に目立つのを気付かない抜けた人でもある。詳しくは次回にて。
・
四季咲たちが調べに来た建築現場に現れた、スタイルのいい謎の少女(?)。その正体は平安時代の京都で名を轟かせた大妖怪「大百足」本来の伝承とは大きく異なる。正体隠して忍ぶつもりなんて全くない大胆すぎる服装で、職務質問されたことがある程。猛威を振るった大妖怪ではあるが陰陽師の手で封印されており、それを表す注連縄をリボン代わりにしている。
刹那とはルームメイトで、武器は生きている百足を模した鞭と己の牙。余興を楽しみたいと言う欲望が大きい様だ。詳しくは次回にて。
え?もう最後の二人十分詳しい説明だって?もっと濃いんです、何故なら主人公であるツクモよりも先にまとまったキャラだから。本来は前回のゲストは彼女達でした。
今回の事件が首の骨が背中側に折れていてさらに命綱も切られていたと言う奇妙な転落事件。その真相とは…次回、解決編。お楽しみに。